「物理重要問題集2026」徹底解説(94〜96問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題94 回折格子 (22 岡山大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)および(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法(光路長関数の微分)
      • 模範解答が図形的な幾何関係(直角三角形)から個別に経路差を求めているのに対し、別解では「光路長関数」を定義し、その位置微分(勾配)から一般的に経路差を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 透過型(問1)と反射型(問5)を、全く同じ「光路長の微分」という原理で統一的に理解できます。
    • 図形のパズルに頼らず、座標と角度の関係から機械的に導出できるため、複雑な配置(斜め入射など)にも応用が利きます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる関係式は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「回折格子による光の干渉」です。多数のスリットから出る光が干渉し合い、鋭い明線(スペクトル)を作る現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光の干渉条件: 複数の光波が重なり合うとき、経路差(光路差)が波長の整数倍であれば強め合い(明線)、半整数倍であれば弱め合います(暗線)。
  2. 回折格子の原理: 隣り合うスリットからの光の経路差 \(d\sin\theta\) が \(m\lambda\) になるとき、強い明線が生じます。
  3. 近似計算: 角度 \(\theta\) が小さいとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta \approx y/L\) の近似が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、幾何学的な作図から隣り合う光線の経路差を求め、干渉条件式を立てます。
  2. (2)では、小角近似を用いて角度 \(\theta\) を座標 \(y\) に変換し、明線の位置を導出します。
  3. (3)では、具体的な数値を代入して計算します。単位の換算に注意が必要です。
  4. (4)では、波長による回折角の違いからスペクトルの並び順と幅を考察します。
  5. (5)では、反射型回折格子における経路差を入射側と反射側に分けて考え、条件式を導きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
回折格子における明線の条件を求めます。
回折格子では、多数のスリットから出る光が互いに干渉し合います。特定の方向(角度 \(\theta\))において、隣り合うスリットからの光の「経路差(光路差)」が波長 \(\lambda\) の整数倍になるとき、波の山と山が重なり合って強め合い、明線が生じます。

この設問における重要なポイント

  • 平行光線の近似: スクリーンまでの距離 \(L\) がスリット間隔 \(d\) に比べて十分に大きい(\(L \gg d\))ため、スクリーン上の点Pに向かう光線は互いに平行であるとみなせます。
  • 経路差の作図: 隣り合う光線に対して垂線を下ろし、直角三角形を作ることで経路差を可視化します。

具体的な解説と立式
図aに着目します。
隣り合う2つのスリット(間隔 \(d\))から、角度 \(\theta\) の方向へ進む2つの光線を考えます。
入射光は格子面に垂直に入射しているため、スリットに到達するまでは位相が揃っています(経路差 \(0\))。
スリット通過後、上のスリットから出る光線に対して、下のスリットから出る光線から垂線を下ろします。
このときできる直角三角形の斜辺は \(d\) であり、鋭角の一つが \(\theta\) となります。

したがって、隣り合う光線の経路差 \(\Delta L\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= d \sin\theta
\end{aligned}
$$
1番目の明線(\(m=1\))となる条件は、この経路差が波長 \(\lambda\) のちょうど1倍になることです。
$$
\begin{aligned}
(\text{経路差}) &= 1 \times (\text{波長})
\end{aligned}
$$
これに \(\Delta L\) を代入して立式します。
$$
\begin{aligned}
d \sin\theta &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 回折格子の干渉条件: \(d \sin\theta = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
計算過程

立式した式そのものが答えとなります。
$$
\begin{aligned}
d \sin\theta &= \lambda
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

隣り合う穴から出た光は、斜め方向に進むと距離に差が生まれます。この距離のズレ(経路差)が、ちょうど波1つ分(\(\lambda\))になると、波の山同士がぴったり重なって強め合います。図の直角三角形を見ると、そのズレの長さは \(d \sin\theta\) であることがわかります。

結論と吟味

関係式は \(d \sin\theta = \lambda\) です。
\(\theta=0\) のときは経路差 \(0\) で \(0\) 次の明線となりますが、今回は「1番目の明線」なので右辺は \(\lambda\) となります。次元を確認すると、左辺は長さ \([\text{L}]\) 、右辺も長さ \([\text{L}]\) で一致しています。

解答 (1) \(d \sin\theta = \lambda\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(光路長関数の微分)

思考の道筋とポイント
幾何学的な作図に頼らず、座標を用いて光路長を関数化し、その微分から位相差を導きます。
スリットの位置を座標 \(y\) で表し、その位置を通る光の光路長 \(S(y)\) を定義します。
隣り合うスリット(間隔 \(d\))間の光路差は、光路長関数の変化率(微分)に \(d\) を掛けたものとして近似できます。

この設問における重要なポイント

  • 光路長関数 \(S(y)\): 基準点(原点)を通る光に対する、位置 \(y\) を通る光の光路差。
  • 微分の物理的意味: \(\displaystyle\frac{dS}{dy}\) は、スリット位置がずれたときの光路長の変化率を表します。

具体的な解説と立式
格子面に沿って上向きに \(y\) 軸をとります。原点 \(O\) を基準とします。
入射光は \(y\) 軸に垂直(\(x\) 軸方向)に進むため、すべての \(y\) において入射時の光路差はありません。
透過後、角度 \(\theta\)(\(x\) 軸から \(y\) 軸方向へ測る)で進む光を考えます。
位置 \(y\)(\(y>0\))にあるスリットを通る光は、原点 \(y=0\) を通る光に比べて、スクリーンまでの距離が短くなります。
図aを見ると、光線は上向きに進んでおり、上のスリットの方がスクリーンに近いことがわかります。
その短縮距離は \(y \sin\theta\) です。
よって、光路長関数 \(S(y)\)(原点基準の短縮分)は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
S(y) &= y \sin\theta
\end{aligned}
$$
隣り合うスリット間の距離は \(d\) なので、光路差 \(\Delta S\) は微分を用いて次のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\Delta S &\approx \frac{dS}{dy} \cdot d
\end{aligned}
$$
これが波長 \(\lambda\) の整数倍であれば強め合います。1番目の明線なので \(1 \cdot \lambda\) と等置します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dS}{dy} \cdot d &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 微分の定義: \(\Delta f \approx f'(x) \Delta x\)
計算過程

まず、\(S(y)\) を \(y\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dS}{dy} &= \frac{d}{dy}(y \sin\theta) \\[2.0ex]
&= \sin\theta
\end{aligned}
$$
これを立式した式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta \cdot d &= \lambda \\[2.0ex]
d \sin\theta &= \lambda
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「位置が \(y\) ずれると、光が進む距離はどう変わるか?」を数式(関数)で表しました。その変化の割合(傾き)を計算すると、ちょうど \(\sin\theta\) になります。スリットの間隔 \(d\) だけずれたときの距離の変化が、波長と一致する条件を求めました。

結論と吟味

幾何学的な解法と同じ結果が得られました。この考え方は、後の設問(5)で威力を発揮します。

解答 (1) \(d \sin\theta = \lambda\)

問(2)

思考の道筋とポイント
問(1)で求めた関係式と、問題文で与えられた近似式 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) を組み合わせて、スクリーン上の距離 \(y_1, y_2\) を求めます。
\(y_1\) は1番目の明線(\(m=1\))、\(y_2\) は2番目の明線(\(m=2\))に対応します。

この設問における重要なポイント

  • 小角近似: \(\theta\) が十分に小さいとき、\(\sin\theta \approx \tan\theta \approx \displaystyle\frac{y}{L}\) が成り立ちます。
  • 次数の対応: \(m=1\) が \(y_1\)、\(m=2\) が \(y_2\) に対応します。

具体的な解説と立式
図1より、原点 \(O\) から明線までの距離を \(y\)、スクリーンまでの距離を \(L\) とすると、幾何学的な関係から以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{y}{L}
\end{aligned}
$$
問題文の近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) を用いると、問(1)の条件式 \(d \sin\theta = m\lambda\) は次のように書き換えられます。
$$
\begin{aligned}
d \cdot \frac{y}{L} &= m\lambda \quad (m=1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
この式について、\(m=1\) のときの \(y\) を \(y_1\)、\(m=2\) のときの \(y\) を \(y_2\) とします。
$$
\begin{aligned}
d \cdot \frac{y_1}{L} &= 1 \cdot \lambda \quad \cdots ① \\[2.0ex]
d \cdot \frac{y_2}{L} &= 2 \cdot \lambda \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 近似式: \(\sin\theta \approx \tan\theta = \displaystyle\frac{y}{L}\)
計算過程

式①より \(y_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
式②より \(y_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y_2 &= \frac{2L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

角度 \(\theta\) が小さいとき、サインとタンジェントはほぼ同じ値になります。これを利用して、角度の式を長さ \(y\) と \(L\) の式に書き換えました。1番目の明線は波長1つ分、2番目の明線は波長2つ分のズレに対応するので、距離 \(y\) も単純に2倍になります。

結論と吟味

\(y_1 = \displaystyle\frac{L\lambda}{d}\)、\(y_2 = \displaystyle\frac{2L\lambda}{d}\) です。
波長 \(\lambda\) が長いほど、またスクリーン距離 \(L\) が遠いほど、明線の間隔は広がります。逆にスリット間隔 \(d\) が広いと明線間隔は狭くなります。これは回折の一般的性質と一致します。

解答 (2) \(\displaystyle y_1 = \frac{L\lambda}{d}, \quad y_2 = \frac{2L\lambda}{d}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
問(2)で導出した \(y_1\) の式に、具体的な数値を代入して計算します。
単位の変換(mm \(\to\) m)と有効数字(3桁)に注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 単位の統一: 格子定数 \(d\) が「1mm当たり20本」という形で与えられているため、これをメートル単位の長さ \(d\) に変換する必要があります。
  • 指数計算: \(10\) のべき乗の計算を正確に行います。

具体的な解説と立式
まず、格子定数(スリット間隔)\(d\) を求めます。
1mm(\(= 1.00 \times 10^{-3}\,\text{m}\))の中に20本の刻線があるため、1本あたりの間隔 \(d\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{1.00 \times 10^{-3}\,\text{m}}{20}
\end{aligned}
$$
これを問(2)の式 \(y_1 = \displaystyle\frac{L\lambda}{d}\) に代入します。
与えられた値は \(L = 1\,\text{m}\)、\(\lambda = 5.32 \times 10^{-7}\,\text{m}\) です。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{1 \cdot (5.32 \times 10^{-7})}{\frac{1.00 \times 10^{-3}}{20}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(代入計算)
計算過程

まず \(d\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{1.00 \times 10^{-3}}{20} \\[2.0ex]
&= 0.05 \times 10^{-3} \\[2.0ex]
&= 5.00 \times 10^{-5}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
これを \(y_1\) の式に代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{1 \times 5.32 \times 10^{-7}}{5.00 \times 10^{-5}} \\[2.0ex]
&= \frac{5.32}{5.00} \times 10^{-7 – (-5)} \\[2.0ex]
&= 1.064 \times 10^{-2}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えるため、4桁目を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
y_1 &\approx 1.06 \times 10^{-2}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

公式に数字を当てはめるだけの計算問題ですが、単位に罠があります。「1mmに20本」から「1本の間隔は何メートルか」を正しく計算するのがポイントです。あとは指数の計算ミスに気をつけて割り算を行います。

結論と吟味

答えは \(1.06 \times 10^{-2}\,\text{m}\)(約1cm)です。
実験室規模(1mのスクリーン)で1cm程度のズレというのは、観測しやすい妥当な数値です。

解答 (3) \(1.06 \times 10^{-2}\,\text{m}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
白色光を用いた場合のスペクトル(虹色)の並び順と、帯の幅の変化を考えます。
白色光は様々な波長の光を含んでおり、可視光では紫(波長が短い)から赤(波長が長い)までの範囲があります。

この設問における重要なポイント

  • 波長と位置の関係: \(y_1 = \displaystyle\frac{L\lambda}{d}\) より、位置 \(y\) は波長 \(\lambda\) に比例します。
  • 帯の幅: 帯の幅は、その次数の明線における「赤の波長の位置」と「紫の波長の位置」の差で決まります。

具体的な解説と立式
空欄 [ ア ] について
問(2)の結果 \(y = \displaystyle\frac{mL\lambda}{d}\) より、同じ次数 \(m\) であれば、波長 \(\lambda\) が小さいほど \(y\) は小さく(原点 \(O\) に近く)、波長 \(\lambda\) が大きいほど \(y\) は大きく(原点 \(O\) から遠く)なります。
可視光線において、紫色の波長は最も短く、赤色の波長は最も長いです。
したがって、点 \(O\) に近い内側から順に「紫 \(\to\) 赤」と並びます。これは選択肢の②に相当します。

空欄 [ イ ] について
白色光の波長範囲を \(\lambda_{\text{紫}} \le \lambda \le \lambda_{\text{赤}}\) とします。
\(m\) 番目の明線の帯の幅 \(w_m\) は、赤色の位置 \(y_{m,\text{赤}}\) と紫色の位置 \(y_{m,\text{紫}}\) の差です。
$$
\begin{aligned}
w_m &= y_{m,\text{赤}} – y_{m,\text{紫}} \\[2.0ex]
&= \frac{mL\lambda_{\text{赤}}}{d} – \frac{mL\lambda_{\text{紫}}}{d} \\[2.0ex]
&= \frac{mL}{d} (\lambda_{\text{赤}} – \lambda_{\text{紫}})
\end{aligned}
$$
これより、1番目の帯の幅 \(w_1\)(\(m=1\))と2番目の帯の幅 \(w_2\)(\(m=2\))の比を求めます。
$$
\begin{aligned}
w_1 &= \frac{1 \cdot L}{d} (\lambda_{\text{赤}} – \lambda_{\text{紫}}) \\[2.0ex]
w_2 &= \frac{2 \cdot L}{d} (\lambda_{\text{赤}} – \lambda_{\text{紫}})
\end{aligned}
$$
比をとると、
$$
\begin{aligned}
\frac{w_2}{w_1} &= 2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 明線の位置: \(y \propto m\lambda\)
計算過程

上記の立式過程で計算は完了しています。
\(w_2 = 2 w_1\) なので、倍率は \(2\) です。

この設問の平易な説明

回折格子による虹は、波長によって曲がる角度が違うためにできます。波長が長い赤色ほど大きく曲がるので、外側が赤、内側が紫になります。
また、2番目の虹は1番目の虹の2倍の位置にできますが、その「幅」も単純に2倍に引き伸ばされます。

結論と吟味

ア: ②、イ: 2。
次数が高くなるとスペクトルは広がり、やがて隣の次数のスペクトルと重なり合うようになります。

解答 (4) ア: ②, イ: 2

問(5)

思考の道筋とポイント
反射型回折格子の問題です。図2および図c, dを参考に、入射光と反射光(回折光)の経路差を幾何学的に求めます。
入射側での経路差と、反射側での経路差の「差」が波長の整数倍になる条件を探します。

この設問における重要なポイント

  • 入射側の経路差: 図cより、下の光線(II)の方が上の光線(I)より \(d \sin\alpha\) だけ長い距離を進みます。
  • 反射側の経路差: 図dより、上の光線(I)の方が下の光線(II)より \(d \sin\beta\) だけ長い距離を進みます。
  • 全経路差: 光線Iと光線IIのトータルの道のりの差を計算します。

具体的な解説と立式
隣り合う2つの溝(間隔 \(d\))に入射する光線I(上側)と光線II(下側)を考えます。
入射過程(図c):
波面(点線)から格子面までの距離を比較すると、光線IIは光線Iよりも余分に距離を進みます。その差 \(\Delta L_{\text{入}}\) は直角三角形より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_{\text{入}} &= d \sin\alpha
\end{aligned}
$$
反射過程(図d):
格子面から反射波面(点線)までの距離を比較すると、今度は光線Iの方が光線IIよりも余分に距離を進みます。その差 \(\Delta L_{\text{出}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_{\text{出}} &= d \sin\beta
\end{aligned}
$$
全経路差:
光線IIは入射時に \(d \sin\alpha\) 遅れましたが、光線Iは反射時に \(d \sin\beta\) 遅れました。
互いの遅れを相殺した残りが、最終的な経路差 \(\Delta L\) となります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= | \Delta L_{\text{出}} – \Delta L_{\text{入}} |
\end{aligned}
$$
これに各経路差を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= | d \sin\beta – d \sin\alpha |
\end{aligned}
$$
問題文より \(\beta > \alpha > 0\) なので、\(\sin\beta > \sin\alpha\) です。したがって絶対値を外すと以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= d(\sin\beta – \sin\alpha)
\end{aligned}
$$
これが1番目の明線(1波長分の差)となる条件なので、\(\lambda\) と等置します。
$$
\begin{aligned}
d(\sin\beta – \sin\alpha) &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 反射型回折格子の経路差: \(d(\sin\beta – \sin\alpha)\)
計算過程

立式した式がそのまま答えとなります。
$$
\begin{aligned}
d(\sin\beta – \sin\alpha) &= \lambda
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

光のレースを想像してください。
スタート(入射)では、下のコース(II)の方が距離が長く、\(d \sin\alpha\) だけ遅れをとります。
しかしゴール(反射)に向かうときは、上のコース(I)の方が距離が長く、\(d \sin\beta\) だけ遅れをとります。
最終的な勝負(位相差)は、この2つの遅れの「差引き」で決まります。反射角 \(\beta\) の方が大きいので、上のコースの遅れの方が大きく、トータルでは上のコースの方が長く走ったことになります。その差が波長1つ分になれば、ゴールで同時に到着(強め合い)します。

結論と吟味

答えは \(d(\sin\beta – \sin\alpha) = \lambda\) です。
もし \(\alpha = \beta\)(正反射)なら、左辺は \(0\) となり、経路差なし(\(0\) 次の明線)となります。これは鏡の反射の法則と一致しており、物理的に妥当です。

解答 (5) \(d(\sin\beta – \sin\alpha) = \lambda\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(光路長関数の微分)

思考の道筋とポイント
問(1)の別解と同様に、座標 \(y\) を用いて光路長関数 \(S(y)\) を定義し、その微分から経路差を導出します。
この方法を用いると、「どっちが長いか」という図形的なパズルに悩まされることなく、符号を含めて自動的に正しい式が得られます。

この設問における重要なポイント

  • 光路長関数 \(S(y)\): 入射光の光路長変化と、反射光の光路長変化の和として定義します。
  • 符号の定義: 座標軸の向きと光の進行方向の関係から、光路長の増減(符号)を慎重に決定します。

具体的な解説と立式
図2に合わせて、格子面に沿って下向きに \(y\) 軸をとります。原点 \(O\) を基準とします。
入射光:
右上から角度 \(\alpha\) で入射します。
位置 \(y\)(\(y>0\))の点は、原点よりも光源から遠い位置にあります。
波面は進行方向に垂直なので、\(y\) 軸上の点 \(y\) は原点に対して \(y \sin\alpha\) だけ「奥」にあります。
つまり、位置 \(y\) に到達するまでに、光は余分に \(y \sin\alpha\) の距離を進みます。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{入}}(y) &= + y \sin\alpha
\end{aligned}
$$
反射光:
右下へ角度 \(\beta\) で反射します。
位置 \(y\)(\(y>0\))の点から出る光は、原点から出る光に比べて、反射波面までの距離が短くなります。
図dを見ると、下側の光線(II)の方が反射波面に近いです。
その短縮距離は \(y \sin\beta\) です。つまり、光路長は短くなります。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{出}}(y) &= – y \sin\beta
\end{aligned}
$$
全光路長関数:
位置 \(y\) を経由する光の、原点経由に対する光路長差 \(S(y)\) は、これら2つの和です。
$$
\begin{aligned}
S(y) &= S_{\text{入}}(y) + S_{\text{出}}(y)
\end{aligned}
$$
これに各関数を代入します。
$$
\begin{aligned}
S(y) &= y \sin\alpha – y \sin\beta \\[2.0ex]
&= -y (\sin\beta – \sin\alpha)
\end{aligned}
$$
隣り合うスリット(\(y=d\))間の光路差の大きさ \(|\Delta S|\) が \(\lambda\) であればよいので、微分を用いて立式します。
$$
\begin{aligned}
|\Delta S| &\approx \left| \frac{dS}{dy} \cdot d \right|
\end{aligned}
$$
これを \(\lambda\) と等置します。
$$
\begin{aligned}
\left| \frac{dS}{dy} \cdot d \right| &= \lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光路長関数の微分: \(\Delta S \approx S'(y) d\)
計算過程

まず、\(S(y)\) を \(y\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dS}{dy} &= \frac{d}{dy} \{ -y (\sin\beta – \sin\alpha) \} \\[2.0ex]
&= -(\sin\beta – \sin\alpha)
\end{aligned}
$$
これを立式した式に代入し、絶対値をとります。
$$
\begin{aligned}
| -(\sin\beta – \sin\alpha) \cdot d | &= \lambda
\end{aligned}
$$
問題文より \(\beta > \alpha\) なので、\(\sin\beta > \sin\alpha\) です。したがって絶対値の中身は負の値となります。
$$
\begin{aligned}
(\sin\beta – \sin\alpha) \cdot d &= \lambda \\[2.0ex]
d(\sin\beta – \sin\alpha) &= \lambda
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「入射するときは下の方が \(y \sin\alpha\) だけ余計に歩く」「反射するときは下の方が \(y \sin\beta\) だけ近道できる」ということを数式にしました。
トータルで見ると、近道分の方が大きい(\(\beta > \alpha\))ので、下を通る光の方が距離が短くなります。その差が波長と一致する条件を計算しました。

結論と吟味

幾何学的な解法と完全に一致しました。
この「光路長関数」の考え方は、レンズや鏡の結像公式を導く際(フェルマーの原理)にも使われる、非常に強力で一般的な手法です。

解答 (5) \(d(\sin\beta – \sin\alpha) = \lambda\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 回折格子における光の干渉条件
    • 核心: 隣り合うスリットから出る光の経路差(光路差)が、波長の整数倍になるときに強め合い、明線が生じるという原理です。
    • 理解のポイント:
      • 経路差の幾何学的導出: 平行光線近似(\(L \gg d\))の下で、隣り合う光線に垂線を下ろして直角三角形を作り、経路差 \(d \sin\theta\) を求めます。
      • 次数の意味: \(m=0\) は経路差なし(中央明線)、\(m=1\) は1波長分のズレ、\(m=2\) は2波長分のズレに対応します。
  • 光路長関数と微分の関係(別解の視点)
    • 核心: 光路長を位置の関数 \(S(y)\) として捉えると、経路差はその微分(勾配)にスリット間隔 \(d\) を掛けたものとして統一的に理解できます。
    • 理解のポイント:
      • 一般化: 透過型でも反射型でも、あるいは斜め入射でも、「位置 \(y\) による光路長の変化率」を計算すれば、自動的に干渉条件が導かれます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 斜め入射の透過型回折格子: 入射光が角度を持って入ってくる場合、入射側の経路差と出射側の経路差の和(または差)を考える必要があります。問(5)の反射型と同じロジックで解けます。
    • 反射型回折格子(CD/DVDの表面など): 今回の問(5)そのものです。入射角と反射角が異なる場合の経路差を、幾何学的または関数的に処理します。
    • ヤングの実験: スリットが2つだけの場合ですが、原理は全く同じです。\(d \sin\theta \approx d \tan\theta = dy/L\) の近似式が頻出です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 経路差の作図: まずは隣り合う光線を描き、垂線を下ろして直角三角形を見つけます。「どこが余分に距離を走っているか」を視覚的に特定します。
    2. 近似の適用: \(\theta\) が小さいという記述があれば、迷わず \(\sin\theta \approx \tan\theta \approx y/L\) を使います。
    3. 単位の確認: 「1mmあたり何本」という表記は、必ず「1本あたりの間隔 \(d\) [\(\text{m}\)]」に変換してから計算に入ります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 格子定数 \(d\) の計算ミス:
    • 誤解: 「1mmに20本」を見て、\(d = 20\) や \(d = 1/20\) [\(\text{mm}\)] と計算し、メートルへの換算(\(\times 10^{-3}\))を忘れる。
    • 対策: 必ず単位を書きながら計算します。\(1\,\text{mm} = 10^{-3}\,\text{m}\) なので、\(d = (10^{-3}\,\text{m}) / 20\) と立式する癖をつけましょう。
  • 経路差の足し引きの判断ミス(問5など):
    • 誤解: 入射側の経路差と反射側の経路差を、常に足せばいい(または引けばいい)と思い込む。
    • 対策: 図を描いて、「下の光線が入射で遅れた分」と「上の光線が反射で遅れた分」が相殺し合うのか、助長し合うのかを確認します。あるいは、別解の「光路長関数」を使えば、符号のミスを自動的に防げます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)での近似式 \(\sin\theta \approx \tan\theta\) の利用:
    • 選定理由: 問題文で明示的に指示されているため、これに従うのが絶対です。また、\(y\) を求めたい場合、\(\sin\theta\) のままでは計算できないため、\(y/L\) を含む \(\tan\theta\) への変換が必須です。
    • 適用根拠: \(L \gg y\)(スクリーンまでの距離に対して明線の位置が十分に近い)という物理的条件が満たされているため、数学的に正当化されます。
  • 問(5)別解での光路長関数の微分:
    • 選定理由: 幾何学的なパズル(どっちが長いか)を避けて、機械的な計算で確実に正解を導くためです。特に符号のミスを防ぐのに有効です。
    • 適用根拠: 光路長の変化が連続的であり、スリット間隔 \(d\) が巨視的な変化に対して十分小さいとみなせるため、微分の定義 \(\Delta S \approx S’ d\) が適用可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数の計算管理:
    • 意識: \(10^{-7}\) や \(10^{-3}\) などの指数計算は、最もミスが起きやすい箇所です。
    • 実践: 数字部分(\(5.32/5.00\) など)と指数部分(\(10^{-7}/10^{-5}\) など)を分けて計算し、最後に合体させます。途中でごちゃ混ぜにしないことが鉄則です。
  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 求めた式の右辺と左辺で、単位が合っているかを常に確認します。
    • 実践: 例えば \(y = L\lambda/d\) なら、\([\text{m}] \cdot [\text{m}] / [\text{m}] = [\text{m}]\) となり、長さの次元になっているのでOKです。もし \(d\) が分子にあったら \([\text{m}]^{-1}\) になってしまい、間違いに気づけます。
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問題95 薄膜による光の干渉 (17 大阪府大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(8)の別解: 微積分を用いた体系的解法(位相差関数の解析)
      • 模範解答が個別の物理的考察(光路差の増減)から次数の変化を判断するのに対し、別解では位相差関数 \(\delta(d, \lambda, i)\) を定義し、その偏微分を用いて干渉条件の変化を数学的かつ体系的に導出します。
      • このアプローチにより、設問(2)、(3)、(8)で問われている「条件の変化」を一貫した論理で説明します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 「光路差が縮むから次数が下がる」といった定性的な直感を、微分の符号によって厳密に裏付けることができます。
    • 複数の変数が同時に変化するような複雑な応用問題に対しても、数式操作だけで確実に答えを導ける汎用性を持ちます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「薄膜による光の干渉」です。屈折率の異なる媒質(空気、薄膜、ガラス)が層状に重なっている系において、反射光同士が強め合ったり弱め合ったりする現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光路長(光学距離): 媒質中を進む光の「距離 \(\times\) 屈折率」で表される量。位相の進み具合を真空中の距離に換算したものです。
  2. 反射による位相の変化: 屈折率が小さい媒質から大きい媒質へ入射して反射する場合(固定端反射)、位相が \(\pi\)(半波長分)ずれます。逆の場合(自由端反射)はずれません。
  3. 干渉条件: 2つの光の光路差が波長の整数倍なら強め合い、半整数倍なら弱め合うというのが基本ですが、反射による位相のずれを考慮して最終的な条件式を立てる必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(4)では、垂直入射の場合を考えます。光路差は単純に往復距離となりますが、反射での位相変化に注意して干渉条件を立式します。
  2. (5)〜(8)では、斜め入射の場合を考えます。幾何学的な考察から光路差を導出し、入射角の変化が干渉条件にどう影響するかを解析します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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