「物理重要問題集2026」徹底解説(157〜159問):未来の得点力へ!完全マスター講座

11月、中間の×を生んだ考え方のクセは、期末にもついてきます。
範囲が変わっても、×を生んだ考え方のクセは次の単元へ持ち越されます。答案の×を1つずつ「どの順番で考えたか」に戻して、期末で同じ転び方をしない準備を。
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問題157 中性子による核反応 (18 同志社大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(エ)・(オ)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
      • 模範解答が運動量保存則を既知の公式として適用するのに対し、別解では分裂時の内力による運動方程式を立て、それを時間積分することで原理から運動量保存則とエネルギー比を一括して導出します。
    • 設問(ク)の別解: 微積分を用いた体系的解法(空間的減衰の微分方程式)
      • 模範解答が等比数列的な割合の計算で解くのに対し、別解では「減衰率が現在の値に比例する」という物理モデルから微分方程式を立て、それを積分して指数関数的な減衰則を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 運動方程式の積分: 「なぜ運動量が保存されるのか」という根本的な理由(内力の力積が相殺されること)を数式で確認でき、力学の体系的な理解が深まります。
    • 微分方程式による減衰モデル: 放射性崩壊や光の吸収など、自然界に広く見られる指数関数的な減衰現象の背後にある共通の数学的構造(微分方程式)を学ぶことができ、応用力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「中性子捕捉反応に伴う原子核の分裂と、エネルギー・運動量の保存」です。
核反応によって生じたエネルギーが、質量欠損、粒子の運動エネルギー、電磁波(\(\gamma\)線)のエネルギーにどのように分配されるかを追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量とエネルギーの等価性: アインシュタインの関係式 \(E = mc^2\) により、質量とエネルギーは互いに変換可能です。
  • 運動量保存則: 外力が働かない系(分裂反応など)では、反応の前後で系全体の運動量の和が保存されます。
  • 光子のエネルギーと運動量: 振動数 \(\nu\) の光子(\(\gamma\)線)は、エネルギー \(E = h\nu\)、運動量 \(p = \frac{h\nu}{c}\) を持ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (ア)〜(ウ)では、与えられたエネルギーの値を、質量、電場による仕事、静電気力による位置エネルギーの公式にそれぞれ当てはめて物理量を逆算します。
  • (エ)・(オ)では、分裂反応における運動量保存則を用いて速度の比を求め、そこから運動エネルギーの比を計算します。
  • (カ)・(キ)では、\(\gamma\)線のエネルギーから、光子の公式を用いて振動数と運動量を求めます。
  • (ク)では、一定距離ごとにエネルギーが半減するという性質を利用し、等比数列的に距離を計算します。

問(ア)

思考の道筋とポイント
反応によって発生したエネルギー \(E\) が、どれだけの質量 \(m\) に相当するかを求めます。アインシュタインの質量とエネルギーの等価性の公式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 質量とエネルギーの等価性: 質量 \(m\) が完全にエネルギーに変換された場合、そのエネルギー \(E\) は \(E = mc^2\) で表されます。

具体的な解説と立式
発生したエネルギーを \(E\)、相当する質量を \(m\)、光の速さを \(c\) とします。
質量とエネルギーの等価性の関係式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E &= mc^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E = mc^2\)
計算過程

式を変形して質量 \(m\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{E}{c^2}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(E = 4.0 \times 10^{-13}\,\text{J}\)、\(c = 3.0 \times 10^8\,\text{m}/\text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{4.0 \times 10^{-13}}{(3.0 \times 10^8)^2} \\[2.0ex] &= \frac{4.0 \times 10^{-13}}{9.0 \times 10^{16}} \\[2.0ex] &= \frac{4.0}{9.0} \times 10^{-29} \\[2.0ex] &\approx 0.444 \times 10^{-29} \\[2.0ex] &= 4.44 \times 10^{-30}\,\text{kg}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

アインシュタインの有名な公式 \(E=mc^2\) は、「質量とエネルギーは同じものの別の姿である」ということを示しています。今回発生した莫大なエネルギーも、質量に換算するとほんのわずかな量(\(10^{-30}\,\text{kg}\) のオーダー)にすぎないことがわかります。

結論と吟味

計算結果は \(4.4 \times 10^{-30}\,\text{kg}\) となりました。電子の質量が約 \(9.1 \times 10^{-31}\,\text{kg}\) であることを考えると、電子数個分程度の非常に小さな質量欠損によって、このエネルギーが生み出されていることがわかり、物理的に妥当なスケールです。

解答 (ア) \(4.4 \times 10^{-30}\)

問(イ)

思考の道筋とポイント
発生したエネルギー \(E\) と同じ大きさのエネルギーを、電場による加速で得るための電圧 \(V\) を求めます。電荷 \(q\) が電圧 \(V\) で加速されるときに得るエネルギー(電場がする仕事)の公式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 電場による仕事: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) を移動するとき、電場から受ける仕事(得る運動エネルギー)は \(W = qV\) となります。
  • 水素原子核の電荷: 水素原子核 \({}_1^2\text{H}\)(重水素)は陽子1個と中性子1個からなるため、その電荷は電気素量 \(+e\) と等しくなります。

具体的な解説と立式
水素原子核の電荷を \(e\)、加速電圧を \(V\) とします。
加速によって得るエネルギー \(E\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
E &= eV
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電場による仕事: \(W = qV\)
計算過程

式を変形して電圧 \(V\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{E}{e}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(E = 4.0 \times 10^{-13}\,\text{J}\)、\(e = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{C}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{4.0 \times 10^{-13}}{1.6 \times 10^{-19}} \\[2.0ex] &= \frac{4.0}{1.6} \times 10^6 \\[2.0ex] &= 2.5 \times 10^6\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電気を持った粒を電圧の坂道で転がすと、勢い(エネルギー)がつきます。今回は、水素の原子核(プラスの電気を1つ持つ)を転がして、先ほどと同じだけのエネルギーを持たせるには、どれくらい高い坂道(電圧)が必要かを計算しました。

結論と吟味

計算結果は \(2.5 \times 10^6\,\text{V}\)(\(2.5\,\text{MV}\))となりました。核反応で生じるエネルギーは数 \(\text{MeV}\)(メガ電子ボルト)のオーダーであることが多く、この結果は核物理学の一般的なスケールと完全に一致しています。

解答 (イ) \(2.5 \times 10^6\)

問(ウ)

思考の道筋とポイント
2つの原子核の間に働く静電気力(クーロン力)による位置エネルギー \(U\) が与えられているので、そこから原子核間の距離 \(r\) を逆算します。

この設問における重要なポイント

  • 静電気力による位置エネルギー: 電荷 \(q_1\) と \(q_2\) が距離 \(r\) 離れているときの位置エネルギーは \(U = k_0 \frac{q_1 q_2}{r}\) です。
  • 各原子核の電荷: \({}_3^7\text{Li}\) は原子番号が3なので電荷は \(+3e\)、\({}_2^4\text{He}\) は原子番号が2なので電荷は \(+2e\) です。

具体的な解説と立式
\({}_3^7\text{Li}\) の電荷を \(q_1 = +3e\)、\({}_2^4\text{He}\) の電荷を \(q_2 = +2e\) とします。
距離 \(r\) 離れたときの位置エネルギー \(U\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
U &= k_0 \frac{(+3e)(+2e)}{r}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 静電気力による位置エネルギー: \(U = k_0 \frac{q_1 q_2}{r}\)
計算過程

式を整理し、距離 \(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{6 k_0 e^2}{r}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{6 k_0 e^2}{U}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(k_0 = 9.0 \times 10^9\,\text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\)、\(e = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{C}\)、\(U = 6.4 \times 10^{-15}\,\text{J}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{6 \times 9.0 \times 10^9 \times (1.6 \times 10^{-19})^2}{6.4 \times 10^{-15}} \\[2.0ex] &= \frac{54.0 \times 10^9 \times 2.56 \times 10^{-38}}{6.4 \times 10^{-15}} \\[2.0ex] &= \frac{138.24 \times 10^{-29}}{6.4 \times 10^{-15}} \\[2.0ex] &= 21.6 \times 10^{-14} \\[2.0ex] &= 2.16 \times 10^{-13}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

プラスの電気を持った原子核同士は、磁石のN極同士のように反発し合います。無理やり近づけると、反発力に逆らって押し込むためのエネルギー(位置エネルギー)が蓄えられます。今回は「これだけのエネルギーが蓄えられているなら、2つの原子核はどれくらい近づいているか?」を計算しました。

結論と吟味

計算結果は \(2.2 \times 10^{-13}\,\text{m}\) となりました。原子核の大きさ(半径)はおよそ \(10^{-15}\,\text{m}\) のオーダーであり、原子の大きさはおよそ \(10^{-10}\,\text{m}\) のオーダーです。したがって、この距離は原子核同士が十分に離れて点電荷とみなせる距離であり、問題の設定と整合しています。

解答 (ウ) \(2.2 \times 10^{-13}\)

問(エ)

思考の道筋とポイント
中性子を吸収したホウ素原子核が、リチウム原子核とヘリウム原子核に分裂する過程を考えます。中性子の運動量を無視できるため、反応前の系全体の運動量は \(0\) です。外力が働かないため運動量保存則が成り立ち、反応後の2つの原子核の運動量の和も \(0\) になります。ここから速さの比を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 分裂反応のように内力のみが働く系では、系全体の運動量ベクトルは保存されます。
  • 質量の近似: 原子核の質量は、近似的に質量数(陽子と中性子の数の和)に比例するとみなすことができます。

具体的な解説と立式
問題の図aに合わせて、\({}_2^4\text{He}\) が右向きに速さ \(v_{\text{ヘリウム}}\) で、\({}_3^7\text{Li}\) が左向きに速さ \(v_{\text{リチウム}}\) で飛び出すとします。
右向きを正の向きとします。
反応前の系全体の運動量は \(0\) です。
反応後の \({}_2^4\text{He}\) の運動量は \(m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}}\)、\({}_3^7\text{Li}\) の運動量は \(m_{\text{リチウム}} (-v_{\text{リチウム}})\) です。
運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
0 &= m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}} – m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = \text{一定}\)
計算過程

式を変形して、速さの比 \(\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}} &= m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}
\end{aligned}
$$
質量は質量数に比例するとみなせるため、\(m_{\text{ヘリウム}} : m_{\text{リチウム}} = 4 : 7\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{4}{7} \\[2.0ex] &\approx 0.571
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

静止していたものが2つに割れて飛んでいくとき、両者は必ず反対方向に飛び出します。このとき、軽い破片ほど速く飛び、重い破片ほど遅く飛びます。ヘリウム(重さ4)とリチウム(重さ7)では、ヘリウムの方が軽いので速く飛びます。その速さの比は、重さの比の逆数になります。

結論と吟味

速さの比が質量の逆比になることは、運動量保存則からの直接的な帰結であり、物理的に妥当です。軽いヘリウムの方が速く飛ぶという直感とも一致しています。

解答 (エ) \(5.7 \times 10^{-1}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)

思考の道筋とポイント
運動量保存則を既知の公式として使うのではなく、分裂時に2つの原子核が互いに及ぼし合う力(内力)から出発し、運動方程式を立てて時間積分することで、原理から運動量保存則を導き出します。

この設問における重要なポイント

  • 作用反作用の法則: 分裂時、\({}_2^4\text{He}\) と \({}_3^7\text{Li}\) は互いに逆向きで同じ大きさの力を及ぼし合います。
  • 運動方程式と力積: 力を時間積分したものが力積であり、力積は運動量の変化に等しくなります。

具体的な解説と立式
図aのように、\({}_2^4\text{He}\) が右向きに、\({}_3^7\text{Li}\) が左向きに飛び出すとします。
分裂の瞬間、\({}_2^4\text{He}\) が受ける右向きの力を \(F(t)\) とします。作用反作用の法則により、\({}_3^7\text{Li}\) が受ける力は左向きに \(F(t)\) となります。
右向きを正の向きとします。
\({}_2^4\text{He}\) の加速度を \(a_{\text{ヘリウム}}\)、\({}_3^7\text{Li}\) の加速度を \(a_{\text{リチウム}}\) とすると、それぞれの運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{ヘリウム}} a_{\text{ヘリウム}} &= F(t)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
m_{\text{リチウム}} a_{\text{リチウム}} &= -F(t)
\end{aligned}
$$
加速度は速度の微分であるため、\({}_2^4\text{He}\) の速度を \(v_{\text{ヘリウム}}\)(右向きなので正)、\({}_3^7\text{Li}\) の速度を \(-v_{\text{リチウム}}\)(左向きなので負)として書き換えます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{ヘリウム}} \frac{dv_{\text{ヘリウム}}}{dt} &= F(t)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
m_{\text{リチウム}} \frac{d(-v_{\text{リチウム}})}{dt} &= -F(t)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 加速度の定義: \(a = \frac{dv}{dt}\)
計算過程

両辺を、分裂が始まる時刻 \(t=0\) から分裂が終わる時刻 \(t=t_1\) まで時間積分します。反応前の速度は共に \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t_1} m_{\text{ヘリウム}} \frac{dv_{\text{ヘリウム}}}{dt} dt &= \int_{0}^{t_1} F(t) dt
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t_1} m_{\text{リチウム}} \frac{d(-v_{\text{リチウム}})}{dt} dt &= \int_{0}^{t_1} -F(t) dt
\end{aligned}
$$
ここで、右辺の積分は \({}_2^4\text{He}\) が受けた力積を表すため、これを \(I\) とおきます。
$$
\begin{aligned}
I &= \int_{0}^{t_1} F(t) dt
\end{aligned}
$$
左辺の積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}} – 0 &= I
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
-m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}} – 0 &= -I
\end{aligned}
$$
下の式を変形します。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}} &= I
\end{aligned}
$$
上の式と等置して \(I\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}} &= m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}}
\end{aligned}
$$
これが運動量保存則です。この式から速さの比を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}
\end{aligned}
$$
質量比は質量数に等しいとみなせるため、\(m_{\text{ヘリウム}} : m_{\text{リチウム}} = 4 : 7\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{4}{7} \\[2.0ex] &\approx 0.571
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

分裂するとき、2つの原子核は互いに押し合います。このとき、押す力と押し返される力は常に同じ大きさで逆向きです(作用反作用)。同じ時間だけ同じ大きさの力を受け続けるので、2つの原子核が受け取る「勢い(力積)」の大きさは全く同じになります。勢い(運動量)が同じなら、軽い方(ヘリウム)は速く飛び、重い方(リチウム)は遅く飛ぶことになります。

結論と吟味

運動方程式から出発しても、運動量保存則を用いた場合と全く同じ結論が得られました。内力が相殺される系では運動量が保存されるという力学の基本原理が確認できます。

解答 (エ) \(5.7 \times 10^{-1}\)

問(オ)

思考の道筋とポイント
設問(エ)で求めた速さの比を用いて、運動エネルギーの比を計算します。運動エネルギーの定義式に代入して比をとるだけです。

この設問における重要なポイント

  • 運動エネルギーの定義: 質量 \(m\)、速さ \(v\) の粒子の運動エネルギーは \(K = \frac{1}{2}mv^2\) です。

具体的な解説と立式
\({}_3^7\text{Li}\) の運動エネルギーを \(K_{\text{リチウム}}\)、\({}_2^4\text{He}\) の運動エネルギーを \(K_{\text{ヘリウム}}\) とします。
それぞれの運動エネルギーは以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{リチウム}} &= \frac{1}{2} m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}}^2
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
K_{\text{ヘリウム}} &= \frac{1}{2} m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}}^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

運動エネルギーの比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{リチウム}}}{K_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{\frac{1}{2} m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}}^2}{\frac{1}{2} m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}}^2} \\[2.0ex] &= \frac{m_{\text{リチウム}}}{m_{\text{ヘリウム}}} \left(\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}}\right)^2
\end{aligned}
$$
設問(エ)より \(\frac{v_{\text{リチウム}}}{v_{\text{ヘリウム}}} = \frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}\) であるため、これを代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{リチウム}}}{K_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{m_{\text{リチウム}}}{m_{\text{ヘリウム}}} \left(\frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}\right)^2 \\[2.0ex] &= \frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}
\end{aligned}
$$
質量比 \(m_{\text{ヘリウム}} : m_{\text{リチウム}} = 4 : 7\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{リチウム}}}{K_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{4}{7} \\[2.0ex] &\approx 0.571
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

運動エネルギーは「重さ \(\times\) 速さの2乗」で決まります。リチウムはヘリウムより重いですが、その分だけ速さが遅くなっています。速さは2乗で効いてくるため、結果として遅いリチウムの方が運動エネルギーは小さくなります。

結論と吟味

計算の結果、運動エネルギーの比は質量の逆比になることがわかりました。これは、運動量が等しい2物体の運動エネルギーが質量に反比例するという一般的な性質と一致しており、妥当な結果です。

解答 (オ) \(5.7 \times 10^{-1}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)

思考の道筋とポイント
設問(エ)の別解で導出した、力積 \(I\) を用いた運動量の表現を利用して、運動エネルギーの比を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 運動エネルギーと運動量の関係: 運動エネルギー \(K\) は、運動量 \(p\) を用いて \(K = \frac{p^2}{2m}\) と表すことができます。

具体的な解説と立式
設問(エ)の別解より、それぞれの原子核が受けた力積の大きさを \(I\) とすると、反応後の運動量の大きさは共に \(I\) となります。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{ヘリウム}} v_{\text{ヘリウム}} &= I
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
m_{\text{リチウム}} v_{\text{リチウム}} &= I
\end{aligned}
$$
それぞれの運動エネルギー \(K_{\text{ヘリウム}}\)、\(K_{\text{リチウム}}\) は、この力積 \(I\) を用いて次のように表せます。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{ヘリウム}} &= \frac{I^2}{2 m_{\text{ヘリウム}}}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
K_{\text{リチウム}} &= \frac{I^2}{2 m_{\text{リチウム}}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動エネルギーと運動量の関係: \(K = \frac{p^2}{2m}\)
計算過程

運動エネルギーの比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{リチウム}}}{K_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{\frac{I^2}{2 m_{\text{リチウム}}}}{\frac{I^2}{2 m_{\text{ヘリウム}}}} \\[2.0ex] &= \frac{m_{\text{ヘリウム}}}{m_{\text{リチウム}}}
\end{aligned}
$$
質量比 \(m_{\text{ヘリウム}} : m_{\text{リチウム}} = 4 : 7\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{K_{\text{リチウム}}}{K_{\text{ヘリウム}}} &= \frac{4}{7} \\[2.0ex] &\approx 0.571
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの原子核は同じ大きさの「勢い(運動量)」を持っています。運動エネルギーは「勢いの2乗を質量の2倍で割ったもの」なので、勢いが同じなら、運動エネルギーは質量に反比例します。つまり、軽いヘリウムの方が大きなエネルギーを持ち、重いリチウムの方が小さなエネルギーを持つことになります。

結論と吟味

速度の比を2乗して計算するメイン解法と比べ、運動量が等しいことを利用すると、質量に反比例するという関係がより直接的に導かれます。結果も一致しており妥当です。

解答 (オ) \(5.7 \times 10^{-1}\)

問(カ)

思考の道筋とポイント
発生した\(\gamma\)線のエネルギー \(E_{\gamma}\) から、その振動数 \(\nu\) を求めます。光子のエネルギーと振動数を結びつけるプランクの公式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 光子のエネルギー: 振動数 \(\nu\) の光子(電磁波)が持つエネルギーは \(E = h\nu\) で表されます(\(h\) はプランク定数)。

具体的な解説と立式
\(\gamma\)線のエネルギーを \(E_{\gamma}\)、振動数を \(\nu\) とします。
光子のエネルギーの公式より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E_{\gamma} &= h\nu
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
計算過程

式を変形して振動数 \(\nu\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{E_{\gamma}}{h}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(E_{\gamma} = 7.7 \times 10^{-14}\,\text{J}\)、\(h = 6.6 \times 10^{-34}\,\text{J} \cdot \text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\nu &= \frac{7.7 \times 10^{-14}}{6.6 \times 10^{-34}} \\[2.0ex] &= \frac{7.7}{6.6} \times 10^{20} \\[2.0ex] &= \frac{7}{6} \times 10^{20} \\[2.0ex] &\approx 1.16 \times 10^{20}\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

光や\(\gamma\)線などの電磁波は、波であると同時に「光子」という粒の集まりでもあります。1つの粒が持つエネルギーは、波の「ブルブル震える回数(振動数)」に比例します。今回は、エネルギーの大きさから、1秒間に何回震えているかを逆算しました。

結論と吟味

計算結果は \(1.2 \times 10^{20}\,\text{Hz}\) となりました。可視光線の振動数が \(10^{14}\,\text{Hz}\) のオーダー、X線が \(10^{18}\,\text{Hz}\) のオーダーであることを考えると、\(\gamma\)線として非常に高い振動数(高いエネルギー)を持っていることがわかり、物理的に妥当です。

解答 (カ) \(1.2 \times 10^{20}\)

問(キ)

思考の道筋とポイント
発生した\(\gamma\)線のエネルギー \(E_{\gamma}\) から、その運動量 \(p\) を求めます。光子の運動量とエネルギーの関係式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 光子の運動量: 光子の運動量 \(p\) は、エネルギー \(E\) と光の速さ \(c\) を用いて \(p = \frac{E}{c}\) と表されます(または \(p = \frac{h\nu}{c} = \frac{h}{\lambda}\))。

具体的な解説と立式
\(\gamma\)線の運動量を \(p\) とします。
光子の運動量とエネルギーの関係式より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{E_{\gamma}}{c}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子の運動量: \(p = \frac{E}{c}\)
計算過程

与えられた数値 \(E_{\gamma} = 7.7 \times 10^{-14}\,\text{J}\)、\(c = 3.0 \times 10^8\,\text{m}/\text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{7.7 \times 10^{-14}}{3.0 \times 10^8} \\[2.0ex] &= \frac{7.7}{3.0} \times 10^{-22} \\[2.0ex] &\approx 2.56 \times 10^{-22}\,\text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。

この設問の平易な説明

光には質量がありませんが、「勢い(運動量)」は持っています。光の勢いは、光が持つエネルギーを光の速さで割ることで計算できます。

結論と吟味

計算結果は \(2.6 \times 10^{-22}\,\text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}\) となりました。これは非常に小さな値ですが、原子レベルの現象においては無視できない大きさであり、光子が物質に衝突した際に運動量を与える(コンプトン散乱など)原因となります。

解答 (キ) \(2.6 \times 10^{-22}\)

問(ク)

思考の道筋とポイント
「ある距離 \(L\) だけ移動すると運動エネルギーが半分になる」という性質から、放出されるエネルギーがもとの \(\frac{15}{16}\) になる(つまり、残りのエネルギーが \(\frac{1}{16}\) になる)までの距離を求めます。半減期と同じように、等比数列的に考えます。

この設問における重要なポイント

  • 半減の繰り返し: 距離 \(L\) 進むごとにエネルギーは \(\frac{1}{2}\) 倍になります。距離 \(2L\) なら \(\left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}\) 倍、距離 \(nL\) なら \(\left(\frac{1}{2}\right)^n\) 倍になります。

具体的な解説と立式
もとの運動エネルギーを \(K_0\)、エネルギーが半分になる距離を \(L = 2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\) とします。
距離 \(x\) 移動したときの残存運動エネルギー \(K(x)\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
K(x) &= K_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{L}}
\end{aligned}
$$
問題文より、もとの運動エネルギーの \(\frac{15}{16}\) が放出される距離を求めます。このとき、残っている運動エネルギーは \(K_0 – \frac{15}{16} K_0 = \frac{1}{16} K_0\) となります。
したがって、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{16} K_0 &= K_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{L}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(等比数列の考え方)
計算過程

両辺を \(K_0\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{16} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{L}}
\end{aligned}
$$
\(\frac{1}{16} = \left(\frac{1}{2}\right)^4\) であるため、これを代入します。
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{1}{2}\right)^4 &= \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{x}{L}}
\end{aligned}
$$
指数部分を比較します。
$$
\begin{aligned}
4 &= \frac{x}{L}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x &= 4L
\end{aligned}
$$
\(L = 2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 4 \times 2.0 \times 10^{-6} \\[2.0ex] &= 8.0 \times 10^{-6}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

距離 \(L\) 進むとエネルギーは半分(\(\frac{1}{2}\))になります。さらに距離 \(L\) 進むと、そのまた半分(\(\frac{1}{4}\))になります。エネルギーの \(\frac{15}{16}\) を放出したということは、残りが \(\frac{1}{16}\) になったということです。\(\frac{1}{16}\) は「半分」を4回繰り返した値なので、進んだ距離も \(L\) の4回分(4倍)になります。

結論と吟味

「半分になる距離」の整数倍でちょうど \(\frac{1}{16}\) になるという設定は、計算をシンプルにするための典型的な問題設定であり、結果の \(8.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\) も細胞の大きさ(数十 \(\mu\text{m}\))より小さく、細胞内でエネルギーを放出しきるというBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の原理と整合しています。

解答 (ク) \(8.0 \times 10^{-6}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(空間的減衰の微分方程式)

思考の道筋とポイント
「ある距離だけ移動すると運動エネルギーが半分になる」という現象を、微分方程式を用いて数学的にモデル化します。微小な距離を進む間に失われるエネルギーが、その時点でのエネルギーに比例すると仮定して式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 減衰の微分方程式: 変化率が現在の量に比例する現象は、\(\frac{dy}{dx} = -ky\) という微分方程式で表されます。
  • 指数関数的減衰: 上記の微分方程式を解くと、\(y = y_0 e^{-kx}\) という指数関数になります。

具体的な解説と立式
移動距離を \(x\)、その位置での運動エネルギーを \(K(x)\) とします。
微小距離 \(dx\) を移動する間に失われる運動エネルギー \(dK\) が、その時点の運動エネルギー \(K\) に比例すると仮定します。比例定数を \(\lambda\)(\(\lambda > 0\))とすると、以下の微分方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dK}{dx} &= -\lambda K
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(減衰現象の数学的モデル化)
計算過程

微分方程式を変数分離して積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \frac{1}{K} dK &= \int -\lambda dx
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\ln K &= -\lambda x + C \quad (\text{Cは積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件として、\(x=0\) のときの運動エネルギーを \(K_0\) とします。
$$
\begin{aligned}
\ln K_0 &= -\lambda \cdot 0 + C
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
C &= \ln K_0
\end{aligned}
$$
これを代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
\ln K &= -\lambda x + \ln K_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\ln \frac{K}{K_0} &= -\lambda x
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
K(x) &= K_0 e^{-\lambda x}
\end{aligned}
$$
問題文より、距離 \(L = 2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\) 移動すると運動エネルギーが半分になるため、\(K(L) = \frac{1}{2} K_0\) となります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} K_0 &= K_0 e^{-\lambda L}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
e^{-\lambda L} &= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
次に、もとの運動エネルギーの \(\frac{15}{16}\) が放出される距離 \(x\) を求めます。このとき、残っている運動エネルギーは \(K_0 – \frac{15}{16} K_0 = \frac{1}{16} K_0\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{16} K_0 &= K_0 e^{-\lambda x}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
e^{-\lambda x} &= \frac{1}{16}
\end{aligned}
$$
\(\frac{1}{16} = \left(\frac{1}{2}\right)^4\) であることを利用し、先ほど求めた \(e^{-\lambda L} = \frac{1}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
e^{-\lambda x} &= \left( e^{-\lambda L} \right)^4
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
e^{-\lambda x} &= e^{-4\lambda L}
\end{aligned}
$$
指数部分を比較します。
$$
\begin{aligned}
-\lambda x &= -4\lambda L
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x &= 4L
\end{aligned}
$$
\(L = 2.0 \times 10^{-6}\,\text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= 4 \times 2.0 \times 10^{-6} \\[2.0ex] &= 8.0 \times 10^{-6}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「進むごとに一定の割合でエネルギーが減る」というルールを、微分の式を使って表しました。これを計算して解くと、「距離が進むにつれて指数関数的に(カーブを描いて)減っていく」という式が得られます。半分になる距離を1セットと考えると、残りが \(\frac{1}{16}\) になるには「半分、そのまた半分…」と4回繰り返す必要があるため、距離は4セット分になります。

結論と吟味

微分方程式から出発しても、等比数列的に考えたメイン解法と全く同じ結論が得られました。放射性物質の半減期など、自然界の減衰現象が共通の数学的モデルで記述できることが確認できます。

解答 (ク) \(8.0 \times 10^{-6}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 質量とエネルギーの等価性
    • 核心: 質量とエネルギーは本質的に同じものであり、\(E = mc^2\) の関係式で互いに変換可能であること。
    • 理解のポイント:
      • 核反応において、反応前後の質量の差(質量欠損)が莫大なエネルギーとして放出されます。
      • 光の速さ \(c\) が非常に大きいため、わずかな質量変化でも大きなエネルギーになります。
  • 運動量保存則(内力のみが働く系)
    • 核心: 外力が働かない系(分裂や衝突など)では、系全体の運動量ベクトルは常に一定に保たれること。
    • 理解のポイント:
      • 静止した原子核が2つに分裂する場合、反応前の運動量は \(0\) なので、反応後の2つの破片の運動量ベクトルは互いに逆向きで大きさが等しくなります。
      • 運動量の大きさが等しいとき、速さは質量に反比例し、運動エネルギーも質量に反比例します。
  • 光子のエネルギーと運動量
    • 核心: 電磁波(\(\gamma\)線など)は波であると同時に「光子」という粒子の性質も持ち、そのエネルギーと運動量は振動数(または波長)で決まること。
    • 理解のポイント:
      • エネルギーは \(E = h\nu\)、運動量は \(p = \frac{E}{c} = \frac{h\nu}{c}\) で表されます。
      • 光子には質量がありませんが、運動量を持つため、物質と衝突した際に力積を与えます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 放射性崩壊(\(\alpha\)崩壊など): 静止した原子核が\(\alpha\)粒子と娘核に分裂する問題は、本問の(エ)・(オ)と全く同じ構造です。運動量保存則から速度比とエネルギー比を求めます。
    • コンプトン散乱: X線(光子)が電子に衝突して散乱される問題では、光子のエネルギー \(E=h\nu\) と運動量 \(p=\frac{h\nu}{c}\) を用いて、エネルギー保存則と運動量保存則を連立させます。
    • 半減期や吸収係数の問題: 放射性物質の崩壊や、物質中を進む放射線の減衰など、「一定の割合で減少する」現象は、本問の(ク)と同様に等比数列(または指数関数)として処理します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「静止した状態からの分裂」を見逃さない: 問題文に「静止した」や「運動量もないものとする」とあれば、反応前の運動量が \(0\) であることを確認し、直ちに「反応後の破片の運動量は大きさが等しく逆向き」と立式します。
    2. エネルギーの単位とスケールに注意する: 核物理の問題では、エネルギーが \(\text{J}\)(ジュール)だけでなく \(\text{eV}\)(電子ボルト)で与えられることもあります。本問のように \(\text{J}\) で計算する場合、質量は \(10^{-30}\,\text{kg}\) オーダー、距離は \(10^{-15}\,\text{m}\) オーダーなど、極端に小さな数値になることを意識して計算ミスを防ぎます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 運動エネルギーの比と質量の比の混同:
    • 誤解: 「重い粒子の方がエネルギーが大きい」と直感的に思い込んでしまい、運動エネルギーの比を質量の正比例(\(m_1 : m_2\))にしてしまう。
    • 対策: 分裂反応では「運動量が等しい」ことが大前提です。運動エネルギー \(K = \frac{p^2}{2m}\) の式を思い浮かべ、「\(p\) が一定なら \(K\) は \(m\) に反比例する」と論理的に導く癖をつけましょう。
  • 「放出されるエネルギー」と「残存するエネルギー」の取り違え:
    • 誤解: 設問(ク)で、「\(\frac{15}{16}\) が放出される」という文言を見て、そのまま \(\left(\frac{1}{2}\right)^n = \frac{15}{16}\) という式を立ててしまう。
    • 対策: 減衰の公式(半減期など)は常に「残っている量」を表します。「放出された分」が与えられたら、必ず「全体(\(1\))から引いて、残りはいくらか?」を計算してから式に代入してください。
  • 光子の公式の適用ミス:
    • 誤解: 光子の運動量を求める際に、古典力学の \(p = mv\) を使おうとして、光子の質量が \(0\) であることに混乱してしまう。
    • 対策: 光子(電磁波)に対しては古典力学の公式は使えません。必ず量子力学の公式 \(E = h\nu\)、\(p = \frac{E}{c}\) をセットで暗記し、適用してください。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動量保存則(設問エ・オ):
    • 選定理由: 分裂反応において、各粒子の速度やエネルギーを決定するための最も強力で汎用的な法則だからです。
    • 適用根拠: 反応に関与する粒子(中性子、ホウ素、リチウム、ヘリウム)の系に対して、外部から力が働いていない(内力のみで分裂した)ため、運動量保存則が厳密に成立します。
  • 微積分を用いた運動方程式の積分(設問エ・オの別解):
    • 選定理由: 運動量保存則という「結果」を暗記して使うのではなく、「なぜ保存されるのか」という物理的メカニズム(作用反作用と力積)を根本から理解するためです。
    • 適用根拠: ニュートンの運動方程式 \(ma=F\) と作用反作用の法則は古典力学の公理であり、分裂時の内力に対しても常に成立します。
  • 等比数列による減衰計算(設問ク):
    • 選定理由: 「ある距離で半分になる」という条件が明示されており、求める割合(\(\frac{1}{16}\))が \(\frac{1}{2}\) の整数乗で表せるため、最も素早く正確に計算できるからです。
    • 適用根拠: 放射線の物質中でのエネルギー減衰が、移動距離に対して指数関数的に減少するという物理的性質に基づいています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数(10のべき乗)の計算ルールの徹底:
    • 意識: 核物理の問題では、\(10^{-30}\) や \(10^{20}\) といった極端な指数が頻出します。指数の足し算・引き算と、掛け算・割り算のルールを混同しないことが重要です。
    • 実践: 計算の際は、必ず「仮数部(\(1.0\)〜\(9.9\)の数字)」と「指数部(\(10^n\))」を分けて計算します。例えば \(\frac{4.0 \times 10^{-13}}{1.6 \times 10^{-19}}\) なら、まず \(\frac{4.0}{1.6}\) を計算し、次に \(10^{-13 – (-19)} = 10^6\) を計算して、最後に合体させます。
  • 有効数字の処理タイミング:
    • 意識: 途中の計算で有効数字を丸めてしまうと、最終的な答えに誤差(丸め誤差)が生じる危険があります。
    • 実践: 割り切れない分数や無理数が出た場合、途中の計算は分数のまま、あるいは有効数字より1桁多く(本問なら3桁)残して計算を進め、一番最後の答えを出す直前に指定された桁数(本問なら2桁)に四捨五入します。

問題158 中性子の発見 (20 大阪工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)
      • 模範解答が運動量保存則とエネルギー保存則を既知として立式するのに対し、別解では粒子間に働く力積(力の時間積分)から原理的に保存則を導き出します。
    • 設問(4)の別解1: 重心系を用いた解法
      • 模範解答が実験室系での連立方程式を解くのに対し、別解1では「重心系」という相対的な視点を導入することで、弾性衝突の対称性を利用し、計算量を大幅に削減します。
    • 設問(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)
      • 粒子同士の衝突現象を、運動方程式と仕事・エネルギーの定理から微積分を用いて数学的に記述し、保存則を導出します。
    • 設問(5)の別解: 平方完成を用いた解法
      • 模範解答が「相加平均と相乗平均の大小関係」という特定の公式を用いるのに対し、別解では「実数の2乗は必ず0以上になる」というより根源的な数学的性質を用いて証明します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分解法: 「なぜ保存則が成り立つのか」という物理の根本原理に立ち返るため、公式の丸暗記から脱却し、未知の現象にも対応できる深い理解をもたらします。
    • 重心系解法: 2体問題の衝突において、視点を変えるだけで複雑な現象が極めて単純に記述できるという、物理学における「座標変換の威力」を体感できます。
    • 平方完成解法: 特定の公式を忘れてしまった場合でも、基本的な代数操作のみで確実に証明にたどり着けるため、実戦的な対応力が向上します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる数式や結論は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「未知の粒子の正体を突き止めるための衝突実験の解析」です。光子(ガンマ線)モデルと中性粒子モデルの2つの仮説を立て、衝突後の粒子の振る舞いから矛盾を洗い出し、中性子の発見に至る歴史的な思考プロセスを追体験します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動量保存則: 外力が働かない系において、衝突前後の運動量の総和は一定に保たれます。
  • エネルギー保存則(弾性衝突): 反発係数が \(1\) の完全弾性衝突において、力学的エネルギー(または運動エネルギーと光子のエネルギーの和)は保存されます。
  • 光子の運動量とエネルギー: 波長 \(\lambda\) の光子は、運動量 \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\)、エネルギー \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) を持ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • [A]では、ベリリウム線を光子と仮定し、陽子との衝突における保存則から光子のエネルギーを逆算し、実験事実との矛盾を確認します。
  • [B]では、ベリリウム線を質量 \(M\) の中性粒子と仮定し、陽子および窒素原子核との衝突における保存則から、質量 \(M\) を導き出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
ベリリウム線を波長 \(\lambda\) のガンマ線(光子)と仮定し、静止した陽子との衝突を考えます。
問題文の図より、衝突前は光子が右向きに進み、衝突後は光子が左向きにはねかえされ、陽子が右向きに弾き飛ばされます。
この系には外力が働かないため運動量が保存され、またエネルギーも保存されると仮定して立式します。

この設問における重要なポイント

  • 光子の運動量: 波長 \(\lambda\) の光子の運動量の大きさは \(\displaystyle\frac{h}{\lambda}\) です。向きを考慮して符号をつける必要があります。
  • 光子のエネルギー: 波長 \(\lambda\) の光子のエネルギーは \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) です。エネルギーはスカラー量なので向きは関係ありません。

具体的な解説と立式
右向きを正の向きとします。
衝突前の光子の運動量は \(+\displaystyle\frac{h}{\lambda}\)、陽子の運動量は \(0\) です。
衝突後の光子の運動量は \(-\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\)、陽子の運動量は \(+m_p v_p\) です。
運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。
(衝突前の右向き運動量の和)=(衝突後の右向き運動量の和)
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{\lambda} + 0 &= \left( -\frac{h}{\lambda’} \right) + m_p v_p
\end{aligned}
$$

次にエネルギーについて考えます。
衝突前の光子のエネルギーは \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda}\)、陽子の運動エネルギーは \(0\) です。
衝突後の光子のエネルギーは \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda’}\)、陽子の運動エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2} m_p v_p^2\) です。
エネルギー保存則より、以下の式が成り立ちます。
(衝突前のエネルギーの和)=(衝突後のエネルギーの和)
$$
\begin{aligned}
\frac{hc}{\lambda} + 0 &= \frac{hc}{\lambda’} + \frac{1}{2} m_p v_p^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子の運動量: \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\)
  • 光子のエネルギー: \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\)
  • 運動量保存則: \(p_{\text{前}} = p_{\text{後}}\)
  • エネルギー保存則: \(E_{\text{前}} = E_{\text{後}}\)
計算過程

運動量保存則の式を整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{\lambda} &= -\frac{h}{\lambda’} + m_p v_p
\end{aligned}
$$
これより、空欄アに入る数式は \(-\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\) となります。

エネルギー保存則の式を整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{hc}{\lambda} &= \frac{hc}{\lambda’} + \frac{1}{2} m_p v_p^2
\end{aligned}
$$
これより、空欄イに入る数式は \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda’}\) となります。

この設問の平易な説明

光の粒(ガンマ線)が、止まっている陽子に真正面からぶつかるビリヤードのような状況を想像してください。
ぶつかった後、光の粒は逆方向に跳ね返り、陽子は前方に弾き飛ばされます。
このとき、「勢いの合計(運動量)」と「持っているエネルギーの合計」は、ぶつかる前後で変わらないというルールをそのまま式に書き起こしただけです。光の勢いは波長で決まるという公式を使っています。

結論と吟味

運動量はベクトルであるため、左向きに跳ね返った光子の運動量にはマイナスがつくのが物理的に妥当です。一方、エネルギーはスカラーであるため、すべてプラスの項として足し合わされています。

解答 (1) (ア) \(-\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\) (イ) \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda’}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)

思考の道筋とポイント
光子と陽子の衝突において、衝突の瞬間に互いに及ぼし合う力(相互作用)に着目します。
光子が陽子に及ぼす力を \(F(t)\) とすると、作用・反作用の法則により、陽子が光子に及ぼす力は \(-F(t)\) となります。
これらの力を時間積分した「力積」が、それぞれの運動量変化に等しいという原理から出発します。

この設問における重要なポイント

  • 力積と運動量変化の関係: 物体の運動量の変化量は、その物体が受けた力積(力の時間積分)に等しくなります。

具体的な解説と立式
右向きを正とします。
衝突の短い時間 \(\Delta t\) の間に、光子が陽子から受ける力を \(-F(t)\)、陽子が光子から受ける力を \(F(t)\) とします。
光子の運動量変化は、受けた力積に等しいので、
(光子の衝突後の運動量)ー(光子の衝突前の運動量)=(光子が受けた力積)
$$
\begin{aligned}
\left( -\frac{h}{\lambda’} \right) – \frac{h}{\lambda} &= \int -F(t) dt \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
陽子の運動量変化も同様に、
(陽子の衝突後の運動量)ー(陽子の衝突前の運動量)=(陽子が受けた力積)
$$
\begin{aligned}
m_p v_p – 0 &= \int F(t) dt \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力積と運動量変化の関係: \(\Delta p = \int F(t) dt\)
  • 作用・反作用の法則
計算過程

式①と式②の辺々を足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
\left( -\frac{h}{\lambda’} – \frac{h}{\lambda} \right) + m_p v_p &= \int -F(t) dt + \int F(t) dt
\end{aligned}
$$
右辺の積分は互いに打ち消し合って \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
-\frac{h}{\lambda’} – \frac{h}{\lambda} + m_p v_p &= 0
\end{aligned}
$$
\(\displaystyle\frac{h}{\lambda}\) を左辺に残して移項します。
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{\lambda} &= -\frac{h}{\lambda’} + m_p v_p
\end{aligned}
$$
これにより、空欄アが \(-\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\) であることが導かれます。

この設問の平易な説明

ぶつかっている最中、光の粒と陽子は互いに押し合います。光の粒が陽子を右に押す力と、陽子が光の粒を左に押し返す力は、常に同じ大きさで逆向きです。
この力を時間で足し合わせたもの(力積)が、それぞれの勢い(運動量)の変化になります。
互いに与え合った力積はプラスマイナスゼロになるので、2つの粒をセットで考えると、勢いの合計は最初から最後まで変わらないことになります。

結論と吟味

作用・反作用の法則という力学の基本原理から、系全体の運動量保存則が自然に導出されました。結果はメインの解法と完全に一致します。

解答 (1) (ア) \(-\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\) (イ) \(\displaystyle\frac{hc}{\lambda’}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
陽子の運動エネルギー \(E_p = 4.5\,\text{MeV}\) と、陽子の静止エネルギー \(m_p c^2 = 900\,\text{MeV}\) の値が与えられています。
これらを用いて、陽子の速さ \(v_p\) が光速 \(c\) の何倍か、すなわち比 \(\displaystyle\frac{v_p}{c}\) を求めます。
\(E_p\) の定義式の中に \(v_p\) が含まれているため、式を変形して \(\displaystyle\frac{v_p}{c}\) の形を作り出します。

この設問における重要なポイント

  • 式の変形目標: 求めたいのは \(v_p\) 単独の値ではなく、比 \(\displaystyle\frac{v_p}{c}\) です。したがって、与えられた式から \(\left( \displaystyle\frac{v_p}{c} \right)^2\) の形を意図的に作り出すことが計算の近道となります。

具体的な解説と立式
陽子の運動エネルギーの定義式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_p &= \frac{1}{2} m_p v_p^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)
計算過程

立てた式の両辺を、与えられている静止エネルギー \(m_p c^2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{E_p}{m_p c^2} &= \frac{\frac{1}{2} m_p v_p^2}{m_p c^2} \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \frac{v_p^2}{c^2} \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \left( \frac{v_p}{c} \right)^2
\end{aligned}
$$
両辺を \(2\) 倍します。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{v_p}{c} \right)^2 &= \frac{2 E_p}{m_p c^2}
\end{aligned}
$$
問題文で与えられた数値 \(E_p = 4.5\,\text{MeV}\)、\(m_p c^2 = 900\,\text{MeV}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{v_p}{c} \right)^2 &= \frac{2 \times 4.5}{900} \\[2.0ex] &= \frac{9.0}{900} \\[2.0ex] &= \frac{1}{100}
\end{aligned}
$$
両辺の平方根をとります(速さは正なので正の平方根をとります)。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_p}{c} &= \sqrt{\frac{1}{100}} \\[2.0ex] &= \frac{1}{10} \\[2.0ex] &= 0.1
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

陽子の運動エネルギーの式と、静止エネルギーの式を見比べると、質量 \(m_p\) が共通しています。
そこで、運動エネルギーを静止エネルギーで割り算してやると、邪魔な質量が消えて、ちょうど「速さの2乗」と「光速の2乗」の割り算だけが残ります。
あとは与えられた数字を入れて計算するだけで、光速の何倍かが求まります。

結論と吟味

計算の結果、陽子の速さは光速の \(0.1\) 倍(\(10\%\))であることがわかりました。
光速の \(10\%\) 程度であれば、相対性理論の効果(質量の増加など)はまだ小さく、古典力学の運動エネルギーの式 \(E_p = \displaystyle\frac{1}{2} m_p v_p^2\) を用いた近似がギリギリ妥当であると言える範囲です。

解答 (2) \(0.1\) 倍

問(3)

思考の道筋とポイント
問題文で与えられたガンマ線のエネルギー \(\varepsilon_\lambda\) を表す式に、具体的な数値を代入して計算するだけの設問です。
ルートの中の計算を間違えないように、丁寧に処理することが求められます。

この設問における重要なポイント

  • 有効数字の処理: 最終的な答えは「有効数字1桁」で答えるよう指示されているため、計算の途中で丸めすぎないように注意し、最後に四捨五入します。

具体的な解説と立式
問題文で与えられた式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_\lambda &= \sqrt{\frac{m_p c^2 E_p}{2}} + \frac{E_p}{2}
\end{aligned}
$$
ここに、\(m_p c^2 = 900\,\text{MeV}\)、\(E_p = 4.5\,\text{MeV}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 特になし(与式の計算)
計算過程

数値を代入して計算を進めます。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_\lambda &= \sqrt{\frac{900 \times 4.5}{2}} + \frac{4.5}{2} \\[2.0ex] &= \sqrt{450 \times 4.5} + 2.25 \\[2.0ex] &= \sqrt{2025} + 2.25
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2025}\) を計算します。末尾が \(25\) なので、\(40^2 = 1600\)、\(50^2 = 2500\) の間にある \(45\) の2乗ではないかと推測できます。
実際に \(45 \times 45 = 2025\) となるため、\(\sqrt{2025} = 45\) です。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_\lambda &= 45 + 2.25 \\[2.0ex] &= 47.25
\end{aligned}
$$
問題の指示により、有効数字1桁で答えるため、小数第1位(この場合は一の位の \(7\))を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_\lambda &\approx 50 \\[2.0ex] &= 5 \times 10^1
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

与えられた複雑な式に、わかっている数字を当てはめて計算するだけです。
ルートの中の \(2025\) という数字に少し戸惑うかもしれませんが、「\(40 \times 40 = 1600\)」「\(50 \times 50 = 2500\)」だからその真ん中くらいだな、とアタリをつければ、\(45\) という数字が見つかります。
最後に「有効数字1桁」という指示を忘れないように丸めます。

結論と吟味

計算結果は約 \(50\,\text{MeV}\) となりました。
問題文には、実験から推定されたガンマ線のエネルギーが「\(15 \sim 20\,\text{MeV}\)」であり、この計算結果は「それよりさらに大きな値で、不可解である」と記述されています。
\(50\,\text{MeV}\) は確かに \(15 \sim 20\,\text{MeV}\) よりもはるかに大きく、問題文のストーリー展開(ガンマ線仮説の破綻)と完全に整合しています。

解答 (3) \(5 \times 10\,\text{MeV}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
ここからは仮説が変わり、ベリリウム線が「質量 \(M\) の未知の中性粒子」であると考えます。
中性粒子と陽子の弾性衝突における運動量保存則とエネルギー保存則から導かれた⑤式 \(V = \displaystyle\frac{M+m_p}{2M} v_p\) を用いて、中性粒子の初期エネルギー \(E_X\) を、陽子のエネルギー \(E_p\) と質量比で表す式の変形を行います。

この設問における重要なポイント

  • 目標の形を見据えた式変形: 最終的に示したい式には \(E_p\) がくくり出されており、括弧の中は質量比 \(\displaystyle\frac{m_p}{M}\) と \(\displaystyle\frac{M}{m_p}\) で構成されています。この形を目指して、代数計算を計画的に進める必要があります。

具体的な解説と立式
中性粒子の初期運動エネルギー \(E_X\) の定義式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \frac{1}{2} M V^2
\end{aligned}
$$
また、問題文で与えられている⑤式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{M+m_p}{2M} v_p
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2} m v^2\)
計算過程

\(E_X\) の式の \(V\) に⑤式を代入して計算を進めます。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \frac{1}{2} M \left( \frac{M+m_p}{2M} v_p \right)^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} M \frac{(M+m_p)^2}{4M^2} v_p^2
\end{aligned}
$$
目標の式には \(E_p = \displaystyle\frac{1}{2} m_p v_p^2\) が含まれているため、この形を意図的に作り出してくくり出します。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \left( \frac{1}{2} m_p v_p^2 \right) \cdot \frac{M}{m_p} \cdot \frac{(M+m_p)^2}{4M^2} \\[2.0ex] &= E_p \cdot \frac{M}{m_p} \cdot \frac{M^2 + 2M m_p + m_p^2}{4M^2} \\[2.0ex] &= E_p \cdot \frac{M(M^2 + 2M m_p + m_p^2)}{4 m_p M^2} \\[2.0ex] &= E_p \cdot \frac{M^2 + 2M m_p + m_p^2}{4 m_p M}
\end{aligned}
$$
分数を3つの項に分割し、それぞれ約分します。
$$
\begin{aligned}
E_X &= E_p \left( \frac{M^2}{4 m_p M} + \frac{2M m_p}{4 m_p M} + \frac{m_p^2}{4 m_p M} \right) \\[2.0ex] &= E_p \left( \frac{M}{4 m_p} + \frac{1}{2} + \frac{m_p}{4 M} \right)
\end{aligned}
$$
順番を入れ替え、\(\displaystyle\frac{1}{4}\) でくくって目標の形に整えます。
$$
\begin{aligned}
E_X &= E_p \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \left( \frac{M}{m_p} + \frac{m_p}{M} \right) \right\} \\[2.0ex] &= \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \left( \frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} \right) \right\} E_p
\end{aligned}
$$
これで示されました。

この設問の平易な説明

中性粒子のエネルギーの式の中にある「速さ \(V\)」の部分に、問題文で教えてもらった「陽子の速さ \(v_p\) を使った式」を代入します。
あとは、ひたすら括弧を展開して整理する数学のパズルです。最終的に「陽子のエネルギー \(E_p\)」の形を無理やり外に引っぱり出すと、残った部分がちょうど証明したい式の形になります。

結論と吟味

中性粒子の初期エネルギー \(E_X\) が、弾き飛ばされた陽子のエネルギー \(E_p\) と、2つの粒子の質量比のみで表されました。
これにより、未知の粒子の質量 \(M\) さえわかれば、実験で測定可能な \(E_p\) から元のエネルギー \(E_X\) を逆算できる強力な関係式が得られたことになります。

解答 (4) 略(上記計算過程の通り)
別解: 重心系を用いた解法

思考の道筋とポイント
2つの粒子の弾性衝突は、2つの粒子の「重心」に乗って観察する(重心系)と、非常に単純な現象になります。
重心系から見ると、2つの粒子は常に互いに逆向きに、運動量の大きさが等しい状態で近づき、衝突後はそのまま逆向きに同じ速さで遠ざかります。
この対称性を利用して、実験室系での陽子の衝突後の速さ \(v_p\) を求め、そこから \(V\) を逆算します。

この設問における重要なポイント

  • 重心速度: 質量 \(m_1, m_2\)、速度 \(v_1, v_2\) の2物体の重心速度は \(v_{\text{重心}} = \displaystyle\frac{m_1 v_1 + m_2 v_2}{m_1 + m_2}\) です。
  • 重心系での弾性衝突: 重心系から見た各粒子の速度(相対速度)は、弾性衝突の前後で向きが逆転するだけで、大きさは変わりません。

具体的な解説と立式
右向きを正とします。
衝突前の中性粒子の速度は \(V\)、陽子の速度は \(0\) です。
この2粒子系の重心速度 \(v_{\text{重心}}\) は以下のようになります。
(重心速度)=(運動量の和)/(質量の和)
$$
\begin{aligned}
v_{\text{重心}} &= \frac{M V + m_p \cdot 0}{M + m_p}
\end{aligned}
$$
重心系から見た、衝突前の陽子の速度 \(u_{\text{陽子}}\) は、実際の速度から重心速度を引いたものです。
(重心系での陽子の初速度)=(実際の陽子の初速度)ー(重心速度)
$$
\begin{aligned}
u_{\text{陽子}} &= 0 – v_{\text{重心}}
\end{aligned}
$$
弾性衝突であるため、衝突後の重心系での陽子の速度 \(u_{\text{陽子}}’\) は、衝突前の速度と向きが逆になります。
(重心系での陽子の衝突後の速度)=ー(重心系での陽子の初速度)
$$
\begin{aligned}
u_{\text{陽子}}’ &= -u_{\text{陽子}}
\end{aligned}
$$
実験室系(元の視点)での陽子の衝突後の速度 \(v_p\) は、重心系での速度に重心速度を足し戻したものです。
(実際の陽子の衝突後の速度)=(重心系での陽子の衝突後の速度)+(重心速度)
$$
\begin{aligned}
v_p &= u_{\text{陽子}}’ + v_{\text{重心}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 重心速度: \(v_{\text{重心}} = \displaystyle\frac{m_1 v_1 + m_2 v_2}{m_1 + m_2}\)
  • 相対速度: \(v_{\text{相対}} = v_B – v_A\)
計算過程

立てた式を順番に代入して \(v_p\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_p &= (-u_{\text{陽子}}) + v_{\text{重心}} \\[2.0ex] &= -(0 – v_{\text{重心}}) + v_{\text{重心}} \\[2.0ex] &= 2 v_{\text{重心}}
\end{aligned}
$$
ここに、最初に求めた重心速度 \(v_{\text{重心}} = \displaystyle\frac{M V}{M + m_p}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_p &= 2 \left( \frac{M V}{M + m_p} \right) \\[2.0ex] &= \frac{2M}{M + m_p} V
\end{aligned}
$$
この式を \(V\) について解きます。両辺に \(\displaystyle\frac{M + m_p}{2M}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{M + m_p}{2M} v_p
\end{aligned}
$$
これで問題文の⑤式が導出されました。
あとはメインの解法と全く同じ手順で、この \(V\) を \(E_X = \displaystyle\frac{1}{2} M V^2\) に代入して展開すれば、証明すべき式が得られます。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \frac{1}{2} M \left( \frac{M+m_p}{2M} v_p \right)^2
\end{aligned}
$$
(中略:メイン解法と同じ展開過程)
$$
\begin{aligned}
E_X &= \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \left( \frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} \right) \right\} E_p
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの粒がぶつかる現象を、2つの粒の「真ん中(重心)」を追いかけながら観察してみます。
真ん中から見ると、止まっていた陽子は自分に向かって近づいてきて、ぶつかった後は同じ速さで遠ざかっていくだけの単純な動きに見えます。
この「真ん中から見た動き」に、「真ん中自体の動く速さ」を足し合わせることで、外から見た陽子の本当の速さが簡単に計算できます。複雑な連立方程式を解く必要がありません。

結論と吟味

重心系という相対的な視点を導入することで、運動量保存則とエネルギー保存則の連立という煩雑な計算を回避し、極めて見通し良く⑤式を導出することができました。結果はメイン解法と完全に一致します。

解答 (4) 略(上記計算過程の通り)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)

思考の道筋とポイント
中性粒子と陽子の衝突において、衝突中に互いに及ぼし合う力を \(F(t)\) とします。
それぞれの粒子の運動方程式を立て、それを時間で積分することで運動量保存則を導きます。
さらに、運動方程式を空間(変位)で積分することで、仕事と運動エネルギーの関係を導き、弾性衝突の条件(非保存力が仕事をしない)からエネルギー保存則を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 運動方程式 \(ma = F\) を時間 \(t\) で積分すると運動量と力積の関係になり、位置 \(x\) で積分すると運動エネルギーと仕事の関係になります。

具体的な解説と立式
右向きを正とします。
衝突中、中性粒子が陽子から受ける力を \(-F(t)\)、陽子が中性粒子から受ける力を \(F(t)\) とします。
中性粒子の加速度を \(a_{\text{中性}}\)、陽子の加速度を \(a_{\text{陽子}}\) とすると、それぞれの運動方程式は以下のようになります。
(中性粒子の質量)×(加速度)=(受ける力)
$$
\begin{aligned}
M a_{\text{中性}} &= -F(t) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
(陽子の質量)×(加速度)=(受ける力)
$$
\begin{aligned}
m_p a_{\text{陽子}} &= F(t) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{dv}{dt}\)
  • 仕事と運動エネルギーの関係: \(\Delta K = \int F dx\)
計算過程

まず、運動量保存則を導きます。式③、④の両辺を衝突時間全体で時間積分します。
$$
\begin{aligned}
\int M a_{\text{中性}} dt &= \int -F(t) dt \\[2.0ex] M(-V’) – M V &= -\int F(t) dt \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\int m_p a_{\text{陽子}} dt &= \int F(t) dt \\[2.0ex] m_p v_p – 0 &= \int F(t) dt \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
式⑤と式⑥を辺々足し合わせると、右辺の力積が消去されます。
$$
\begin{aligned}
-M V’ – M V + m_p v_p &= 0 \\[2.0ex] M V &= -M V’ + m_p v_p \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
これが問題文の③式(運動量保存則)です。

次に、エネルギー保存則を導きます。式③、④の両辺をそれぞれの粒子の変位 \(dx\) で空間積分します。
$$
\begin{aligned}
\int M a_{\text{中性}} dx_{\text{中性}} &= \int -F(t) dx_{\text{中性}} \\[2.0ex] \frac{1}{2} M (-V’)^2 – \frac{1}{2} M V^2 &= \int -F(t) dx_{\text{中性}} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\int m_p a_{\text{陽子}} dx_{\text{陽子}} &= \int F(t) dx_{\text{陽子}} \\[2.0ex] \frac{1}{2} m_p v_p^2 – 0 &= \int F(t) dx_{\text{陽子}} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
式⑧と式⑨を辺々足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{1}{2} M V’^2 – \frac{1}{2} M V^2 \right) + \frac{1}{2} m_p v_p^2 &= \int F(t) (dx_{\text{陽子}} – dx_{\text{中性}})
\end{aligned}
$$
弾性衝突においては、衝突の前後で内部エネルギーの損失がなく、相互作用力 \(F(t)\) による正味の仕事(右辺)は \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M V’^2 – \frac{1}{2} M V^2 + \frac{1}{2} m_p v_p^2 &= 0 \\[2.0ex] \frac{1}{2} M V^2 &= \frac{1}{2} M V’^2 + \frac{1}{2} m_p v_p^2 \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
これが問題文の④式(エネルギー保存則)です。

導出した式⑦と式⑩から \(V’\) を消去して \(V\) を求めます。
式⑦より、
$$
\begin{aligned}
M V’ &= m_p v_p – M V \\[2.0ex] V’ &= \frac{m_p v_p – M V}{M}
\end{aligned}
$$
これを式⑩に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M V^2 &= \frac{1}{2} M \left( \frac{m_p v_p – M V}{M} \right)^2 + \frac{1}{2} m_p v_p^2 \\[2.0ex] M V^2 &= M \frac{m_p^2 v_p^2 – 2 M m_p V v_p + M^2 V^2}{M^2} + m_p v_p^2 \\[2.0ex] &= \frac{m_p^2 v_p^2}{M} – 2 m_p V v_p + M V^2 + m_p v_p^2
\end{aligned}
$$
両辺の \(M V^2\) が消去されます。
$$
\begin{aligned}
0 &= \frac{m_p^2 v_p^2}{M} – 2 m_p V v_p + m_p v_p^2 \\[2.0ex] 2 m_p V v_p &= \frac{m_p^2 v_p^2}{M} + m_p v_p^2 \\[2.0ex] 2 V &= \frac{m_p v_p}{M} + v_p \\[2.0ex] &= \left( \frac{m_p}{M} + 1 \right) v_p \\[2.0ex] &= \frac{m_p + M}{M} v_p \\[2.0ex] V &= \frac{M + m_p}{2M} v_p
\end{aligned}
$$
これで問題文の⑤式が導出されました。
あとはメインの解法と全く同じ手順で、この \(V\) を \(E_X = \displaystyle\frac{1}{2} M V^2\) に代入して展開すれば、証明すべき式が得られます。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \frac{1}{2} M \left( \frac{M+m_p}{2M} v_p \right)^2
\end{aligned}
$$
(中略:メイン解法と同じ展開過程)
$$
\begin{aligned}
E_X &= \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \left( \frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} \right) \right\} E_p
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

衝突という現象を、「運動量保存則」や「エネルギー保存則」という結果の公式から出発するのではなく、「ぶつかっている最中に互いに押し合う力」という原因から出発して計算しました。
力を時間で足し合わせると運動量の式になり、力を距離で足し合わせるとエネルギーの式になります。
根本的な力学のルールから出発しても、最終的には全く同じ結論にたどり着くことができます。

結論と吟味

運動方程式という力学の第一原理から出発し、微積分を用いて保存則を導出することで、現象の物理的背景をより深く理解できました。結果はメイン解法と完全に一致します。

解答 (4) 略(上記計算過程の通り)

問(5)

思考の道筋とポイント
(4)で導いた式 \(E_X = \left\{ \displaystyle\frac{1}{2} + \displaystyle\frac{1}{4} \left( \displaystyle\frac{m_p}{M} + \displaystyle\frac{M}{m_p} \right) \right\} E_p\) を用いて、\(E_X \ge E_p\) であることを証明します。
式の括弧の中にある \(\displaystyle\frac{m_p}{M} + \displaystyle\frac{M}{m_p}\) という「互いに逆数の関係にある2つの正の数の和」に着目し、数学の公式である「相加平均と相乗平均の大小関係」を適用して最小値を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 相加平均と相乗平均の大小関係: \(a > 0, b > 0\) のとき、\(a + b \ge 2\sqrt{ab}\) が成り立ちます。等号成立は \(a = b\) のときです。逆数同士の和の最小値を求める際の定石です。

具体的な解説と立式
質量 \(m_p\) と \(M\) はどちらも正の値であるため、\(\displaystyle\frac{m_p}{M} > 0\) かつ \(\displaystyle\frac{M}{m_p} > 0\) です。
したがって、この2つの項に対して相加平均と相乗平均の大小関係を適用できます。
(項1)+(項2)\(\ge\) \(2 \times \sqrt{(項1)\times(項2)}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} &\ge 2 \sqrt{\frac{m_p}{M} \cdot \frac{M}{m_p}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(数学の公式:相加平均と相乗平均の大小関係)
計算過程

ルートの中を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} &\ge 2 \sqrt{1} \\[2.0ex] &\ge 2
\end{aligned}
$$
この不等式を、(4)で求めた \(E_X\) の式に適用します。
括弧の中の \(\left( \displaystyle\frac{m_p}{M} + \displaystyle\frac{M}{m_p} \right)\) の部分が \(2\) 以上であるため、全体としては以下の不等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E_X &\ge \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \times 2 \right) E_p \\[2.0ex] &\ge \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \right) E_p \\[2.0ex] &\ge 1 \cdot E_p \\[2.0ex] &\ge E_p
\end{aligned}
$$
これで示されました。

この設問の平易な説明

「ある数」と「その逆数」を足し合わせると、どんな数を選んでも必ず \(2\) 以上になるという数学の面白い性質を使います。(例えば \(2 + 1/2 = 2.5\)、\(10 + 1/10 = 10.1\) など。一番小さくなるのは \(1 + 1 = 2\) のときです。)
(4)で作った式の中には、まさにこの「ある数とその逆数の足し算」が隠れていました。
その部分が一番小さい「\(2\)」だったとしても、計算するとちょうど \(E_X = E_p\) になります。それ以外の数字なら \(E_X\) はもっと大きくなるので、絶対に \(E_X\) は \(E_p\) 以上になることが証明できます。

結論と吟味

中性粒子の初期エネルギー \(E_X\) は、弾き飛ばされた陽子のエネルギー \(E_p\) 以上であることが数学的に証明されました。
物理的に見ても、衝突によって静止していた陽子にエネルギーを与えたのですから、元の粒子が持っていたエネルギーの方が大きい(あるいは等しい)というのは、エネルギー保存則の観点から極めて妥当な結論です。

解答 (5) 略(上記計算過程の通り)
別解: 平方完成を用いた解法

思考の道筋とポイント
\(\displaystyle\frac{m_p}{M} + \displaystyle\frac{M}{m_p} \ge 2\) を証明するために、相加相乗平均の公式に頼らず、代数的な式変形(平方完成)を行います。
「(実数)の2乗 \(\ge 0\)」という絶対的な真理を作り出すことで、不等式を証明します。

この設問における重要なポイント

  • 平方完成による不等式の証明: \(A^2 \ge 0\) の形を作り出すことで、最小値を論理的に導き出します。

具体的な解説と立式
証明したい不等式の左辺を通分し、平方完成を目指します。
(左辺)=(通分した式)
$$
\begin{aligned}
(\text{左辺}) &= \frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(代数計算)
計算過程

式を通分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} &= \frac{m_p^2 + M^2}{M m_p}
\end{aligned}
$$
分子に無理やり \((m_p – M)^2\) の形を作るために、\(-2 M m_p\) を足して引きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{m_p^2 + M^2}{M m_p} &= \frac{m_p^2 – 2 M m_p + M^2 + 2 M m_p}{M m_p} \\[2.0ex] &= \frac{(m_p – M)^2 + 2 M m_p}{M m_p} \\[2.0ex] &= \frac{(m_p – M)^2}{M m_p} + \frac{2 M m_p}{M m_p} \\[2.0ex] &= \frac{(m_p – M)^2}{M m_p} + 2
\end{aligned}
$$
ここで、質量 \(M, m_p\) は正の実数であるため、分母の \(M m_p > 0\) です。
また、実数の2乗は必ず \(0\) 以上になるため、分子の \((m_p – M)^2 \ge 0\) です。
したがって、第1項は必ず \(0\) 以上になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{(m_p – M)^2}{M m_p} &\ge 0
\end{aligned}
$$
よって、全体としては以下の不等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{(m_p – M)^2}{M m_p} + 2 &\ge 2
\end{aligned}
$$
すなわち、
$$
\begin{aligned}
\frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} &\ge 2
\end{aligned}
$$
が証明されました。
あとはメインの解法と全く同じ手順で、この結果を \(E_X\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
E_X &= \left\{ \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \left( \frac{m_p}{M} + \frac{M}{m_p} \right) \right\} E_p \\[2.0ex] &\ge \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4} \times 2 \right) E_p \\[2.0ex] &\ge E_p
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「相加平均と相乗平均」という公式を忘れてしまっても大丈夫です。
式を通分して、分子に「かっこの2乗」を無理やり作ってあげます。数学の世界では「実数を2乗したら絶対にマイナスにはならない(0以上になる)」という絶対のルールがあります。
このルールを使うと、式全体が「0以上の数 + 2」という形に変身するので、絶対に2以上になることが証明できます。

結論と吟味

特定の公式に依存せず、実数の基本性質のみから不等式を証明することができました。結果はメイン解法と完全に一致します。

解答 (5) 略(上記計算過程の通り)

問(6)

思考の道筋とポイント
中性粒子(のちに中性子と名付けられる粒子)の性質を調べるのがなぜ難しいのかを、その名前の由来である「中性(電荷を持たない)」という特徴から説明します。

この設問における重要なポイント

  • 荷電粒子の観測方法: 通常、電子や陽子などの粒子は、電場や磁場をかけてその軌跡を曲げる(ローレンツ力やクーロン力を働かせる)ことで、質量や速度を測定します。
  • 中性粒子の特徴: 電荷が \(0\) であるため、電磁気的な力を一切受けません。

具体的な解説と立式
立式はありません。
中性粒子は電荷を持たないため、電場の中に置いてもクーロン力 \(F = qE\) を受けず、磁場の中で動かしてもローレンツ力 \(F = qvB\) を受けません。
したがって、電場や磁場を用いて粒子の軌道を曲げたり、加速させたりすることができず、直接的な観測や制御が非常に困難になります。

使用した物理公式

  • 特になし
計算過程

なし

この設問の平易な説明

目に見えない小さな粒を調べる時、科学者はよく「磁石」や「電気」の力を使って粒の飛ぶ方向を曲げ、その曲がり具合から粒の重さなどを計算します。
しかし、中性粒子は電気を全く帯びていないため、磁石を近づけても電気をかけても、全く無視して真っ直ぐ飛んでいってしまいます。そのため、捕まえたり調べたりするのがとても難しいのです。

結論と吟味

電荷を持たないという物理的性質が、実験的な観測の困難さに直結しているという論理的な説明になっており、妥当です。

解答 (6) 中性粒子は電荷をもたないので、電場や磁場の影響を受けないから。

問(7)

思考の道筋とポイント
未知の中性粒子の質量 \(M\) を特定するために、チャドウィックが行った実験の解析です。
陽子にぶつけた場合と、窒素原子核にぶつけた場合の2つの実験結果を組み合わせます。
陽子の場合に成り立った⑤式 \(V = \displaystyle\frac{M+m_p}{2M} v_p\) は、的の粒子が窒素原子核に変わっても、質量と速度の記号を置き換えるだけでそのまま成り立ちます。
この2つの式から、未知の速度 \(V\) を消去し、質量比 \(\displaystyle\frac{M}{m_p}\) を導き出します。

この設問における重要なポイント

  • 式の再利用: 物理現象のモデル(弾性衝突)が同じであれば、対象となる物体が変わっても、同じ形の数式が適用できます。
  • 連立方程式の目的: 測定できない未知の量 \(V\) を消去し、測定可能な量(\(v_p, v_N\))と既知の量(\(m_p, m_N\))だけの関係式を作ることが目標です。

具体的な解説と立式
陽子との衝突において導かれた⑤式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{M+m_p}{2M} v_p \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
的が窒素原子核(質量 \(m_N\)、衝突後の速さ \(v_N\))に変わった場合も、全く同じ力学モデルが適用できるため、⑤式の \(m_p\) を \(m_N\) に、\(v_p\) を \(v_N\) に置き換えた式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{M+m_N}{2M} v_N \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
式⑤と式⑪の左辺は同じ中性粒子の初速度 \(V\) であるため、右辺同士を等置します。
(陽子から求めた \(V\))=(窒素から求めた \(V\))
$$
\begin{aligned}
\frac{M+m_p}{2M} v_p &= \frac{M+m_N}{2M} v_N
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(前問の結果の応用)
計算過程

立てた方程式から、質量比 \(\displaystyle\frac{M}{m_p}\) を求めます。
まず、両辺に \(2M\) を掛けて分母を払います。
$$
\begin{aligned}
(M+m_p) v_p &= (M+m_N) v_N
\end{aligned}
$$
括弧を展開します。
$$
\begin{aligned}
M v_p + m_p v_p &= M v_N + m_N v_N
\end{aligned}
$$
未知の質量 \(M\) を含む項を左辺に、それ以外を右辺に集めます。
$$
\begin{aligned}
M v_p – M v_N &= m_N v_N – m_p v_p
\end{aligned}
$$
左辺を \(M\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
M (v_p – v_N) &= m_N v_N – m_p v_p
\end{aligned}
$$
ここで、問題文で与えられた窒素原子核の質量 \(m_N = 14 m_p\) を右辺に代入します。
$$
\begin{aligned}
M (v_p – v_N) &= (14 m_p) v_N – m_p v_p \\[2.0ex] &= m_p (14 v_N – v_p)
\end{aligned}
$$
両辺を \(m_p\) と \((v_p – v_N)\) で割り、求める質量比 \(\displaystyle\frac{M}{m_p}\) の形にします。
$$
\begin{aligned}
\frac{M}{m_p} &= \frac{14 v_N – v_p}{v_p – v_N}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

正体のわからないボール(中性粒子)の重さを知るために、軽い的(陽子)と重い的(窒素)の2種類にぶつけてみました。
それぞれの的がどれくらいのスピードで弾き飛ばされたかを測り、「同じボールを同じスピードで投げたはずだ」という条件で2つの実験結果をドッキングさせます。
すると、測ることができない「ボールの最初のスピード」を計算式から消し去ることができ、弾き飛ばされた的のスピードのデータだけで、ボールの重さを割り出すことができるのです。

結論と吟味

未知の粒子の質量 \(M\) が、実験で測定可能な速度 \(v_p, v_N\) と既知の質量 \(m_p\) のみで表されました。
この式に実際の実験データを代入することで、チャドウィックは \(M\) が \(m_p\) とほぼ等しい(約 \(1.15\) 倍)ことを突き止め、中性子の発見に至りました。物理学の歴史を変えた見事な論理展開です。

解答 (7) \(\displaystyle\frac{14 v_N – v_p}{v_p – v_N}\)

問(8)

思考の道筋とポイント
アルファ粒子をベリリウム原子核に衝突させ、炭素原子核と中性子が生成される核反応式を完成させます。
核反応の前後において、「質量数の総和」と「原子番号(電荷)の総和」がそれぞれ保存されるというルールを適用します。

この設問における重要なポイント

  • 核反応式の表記: \({}_Z^A\text{X}\) において、左上の \(A\) は質量数(陽子+中性子の数)、左下の \(Z\) は原子番号(陽子の数=電荷)を表します。
  • 保存則: 反応の前後で、左上の数字の合計と、左下の数字の合計はそれぞれ等しくなります。

具体的な解説と立式
問題文より、反応に関わる粒子は以下の通りです。

  • アルファ粒子: \({}_2^4\text{He}\)
  • ベリリウム原子核: \({}_4^9\text{Be}\)
  • 炭素原子核: \({}_6^{12}\text{C}\)
  • 中性子: \({}_0^1\text{n}\)

反応前の粒子はアルファ粒子とベリリウム原子核、反応後の粒子は炭素原子核と中性子です。
これを化学反応式のように矢印で結びます。
(反応前の粒子)\(\rightarrow\)(反応後の粒子)
$$
\begin{aligned}
{}_2^4\text{He} + {}_4^9\text{Be} &\rightarrow {}_6^{12}\text{C} + {}_0^1\text{n}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量数の保存
  • 原子番号(電荷)の保存
計算過程

立てた式が保存則を満たしているか確認(検算)します。
質量数(左上の数字)の和を確認します。
$$
\begin{aligned}
(\text{左辺の質量数の和}) &= 4 + 9 \\[2.0ex] &= 13
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
(\text{右辺の質量数の和}) &= 12 + 1 \\[2.0ex] &= 13
\end{aligned}
$$
両辺で一致しています。

原子番号(左下の数字)の和を確認します。
$$
\begin{aligned}
(\text{左辺の原子番号の和}) &= 2 + 4 \\[2.0ex] &= 6
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
(\text{右辺の原子番号の和}) &= 6 + 0 \\[2.0ex] &= 6
\end{aligned}
$$
両辺で一致しています。

この設問の平易な説明

原子核の反応は、レゴブロックの組み替えのようなものです。
左上の数字は「ブロックの総数(重さ)」、左下の数字は「プラスの電気を持ったブロックの数」を表しています。
反応の前後でブロックが勝手に消えたり増えたりすることはないので、左辺と右辺でそれぞれの数字の合計がピッタリ合うように式を書けば完成です。

結論と吟味

質量数と原子番号の保存則を完全に満たしており、歴史的にも正しいチャドウィックの実験の核反応式が得られました。

解答 (8) \({}_2^4\text{He} + {}_4^9\text{Be} \rightarrow {}_6^{12}\text{C} + {}_0^1\text{n}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動量保存則とエネルギー保存則の連立
    • 核心: 2つの粒子が衝突する現象において、外力が働かない場合は運動量が保存され、弾性衝突の場合はエネルギーも保存されます。この2つの式を連立させることが、衝突問題の絶対的な基本です。
    • 理解のポイント:
      • 運動量は「ベクトル(向きがある)」、エネルギーは「スカラー(向きがない)」であることを強烈に意識してください。立式時の符号ミスは致命傷になります。
      • 未知の変数を消去して、目的の物理量を導き出す代数計算の力が問われます。
  • 光子(ガンマ線)の粒子性
    • 核心: 光は波としての性質だけでなく、粒子(光子)としての性質も持ち、物質と衝突して運動量やエネルギーをやり取りすることができます(コンプトン散乱の類似)。
    • 理解のポイント:
      • 光子の運動量 \(p = \displaystyle\frac{h}{\lambda}\) とエネルギー \(E = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) の公式は、原子物理分野において息をするように出てくる必須知識です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンプトン散乱: X線(光子)を電子に衝突させる問題です。本問の「陽子」が「電子」に変わっただけで、立式の構造(運動量保存とエネルギー保存)は全く同じです。ただし、電子が斜めに弾き飛ばされる2次元の衝突になることが多いため、ベクトルを成分分解する技術が必要になります。
    • 未知の粒子の質量決定: 霧箱や泡箱の飛跡から、未知の粒子の質量や電荷を特定する問題です。本問のように、異なる標的(陽子と窒素など)に衝突させた結果を連立させるアプローチは、素粒子物理学の実験解析の王道です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 衝突前後の状況を図示する: 誰がどちらの向きに、どれだけの速さで動いているかを、必ず自分で図を描いて整理します。
    2. 保存される物理量を見極める: 「外力がないか?(運動量保存)」「弾性衝突か?(エネルギー保存)」を問題文から読み取り、使える武器(公式)を確定させます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 運動量の符号忘れ:
    • 誤解: 衝突して逆向きに跳ね返った光子の運動量を、プラスのまま \(+\displaystyle\frac{h}{\lambda’}\) として立式してしまう。
    • 対策: 運動量保存則を立てる前に、必ず「右向きを正とする」のように座標軸(正の向き)を宣言し、逆向きに動く物体には機械的にマイナスをつける習慣を徹底してください。
  • エネルギーの式にマイナスをつけてしまう:
    • 誤解: 運動量と同じノリで、逆向きに跳ね返った光子のエネルギーを \(-\displaystyle\frac{hc}{\lambda’}\) としてしまう。
    • 対策: エネルギーは「量」であり、向きはありません。速さがマイナスでも、2乗されるため運動エネルギーは必ずプラスになります。エネルギー保存則の式にはマイナスは登場しないと覚えておきましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(4)別解1での重心系の選択:
    • 選定理由: 2体問題の弾性衝突において、実験室系で運動量保存とエネルギー保存の連立方程式を解くのは計算が煩雑になりがちです。重心系に視点を移すことで、「衝突前後で速さが変わらず向きが逆になるだけ」という極めて単純な現象に帰着でき、計算ミスを劇的に減らせるためです。
    • 適用根拠: 外力が働かない2粒子系であるため、重心速度が一定に保たれるという条件を満たしています。
  • 問(5)での相加相乗平均の選択:
    • 選定理由: 式の中に \(\displaystyle\frac{m_p}{M}\) と \(\displaystyle\frac{M}{m_p}\) という「逆数の和」が含まれており、その最小値を求める必要があったためです。逆数の和の最小値問題は、相加相乗平均の独壇場です。
    • 適用根拠: 質量 \(m_p\) と \(M\) が共に正の実数であるため、公式の適用条件(\(a>0, b>0\))を完全に満たしています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 意識: 複雑な文字式の変形を行った後は、必ず単位(次元)が合っているかを確認します。
    • 実践: 例えば問(4)の \(E_X = \dots E_p\) の式において、括弧の中は質量同士の割り算(\(\displaystyle\frac{m_p}{M}\) など)なので無次元(単位なし)になります。したがって、右辺全体は \(E_p\) と同じエネルギーの次元を持ち、左辺の \(E_X\) と一致するため、式変形が妥当であると自信を持てます。
  • ルートの近似計算の慣れ:
    • 意識: 問(3)のような \(\sqrt{2025}\) の計算でフリーズしないようにします。
    • 実践: \(10^2, 20^2, 30^2 \dots\) のキリの良い数字の2乗を頭に浮かべ、求めたい数字がどの間に挟まっているか(今回は \(40^2\) と \(50^2\) の間)を素早く見つける「アタリをつける」練習を日頃から行いましょう。末尾が \(25\) なら、元の数の末尾は \(5\) である可能性が高いという推測も重要です。
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問題159 ハンマー投げの力学モデル (24 名古屋市大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(極座標系の運動方程式からの遠心力の導出)
      • 模範解答が遠心力の公式 \(f = mr\omega^2\) を既知として用いるのに対し、別解では極座標系における運動方程式から向心力を導出し、非慣性系における慣性力として遠心力を原理的に導き出します。
    • 空欄(キ)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による放物運動の軌跡と飛距離の導出)
      • 模範解答が放物運動の公式を既知として用いるのに対し、別解ではニュートンの運動方程式を時間で2回積分することで、物体の位置座標を時間の関数として導出し、飛距離を数学的に求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 遠心力の導出: 「遠心力とは何か」という根本的な問いに対し、座標系の変換と慣性力という力学の深い概念を通じて答えることで、公式の丸暗記を防ぎます。
    • 放物運動の導出: 運動方程式という第一原理から出発し、微積分という数学的ツールを用いてあらゆる運動を予測できるという、古典力学の真髄を体感できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる数式や数値は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ハンマー投げの力学モデル(剛体のつりあいと円運動)」です。回転する系において、砲丸と棒にはたらく遠心力、張力、重力のモーメントのつりあいを考え、ハンマーをより遠くへ投げるための最適な条件を物理的に考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 遠心力: 角速度 \(\omega\) で回転する座標系から物体(質量 \(m\)、回転軸からの距離 \(r\))を観測したとき、回転軸から遠ざかる向きにはたらくように見える慣性力であり、大きさは \(mr\omega^2\) です。
  • 剛体の力のモーメントのつりあい: 回転しない(または一定の傾きを保つ)剛体においては、任意の点のまわりの力のモーメントの和が \(0\) になります。
  • 放物運動の運動方程式: 空中を飛ぶ物体は、水平方向には等速直線運動、鉛直方向には重力による等加速度運動を行います。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)〜(3)では、幾何学的な関係から各物体の回転半径を求め、遠心力の大きさを立式します。
  • (4)〜(6)では、砲丸の力のつりあいと棒のモーメントのつりあいを連立させ、角速度と傾き角の関係を導き出します。
  • 空欄補充では、導出した関係式に具体的な数値を代入し、ハンマー投げの限界値や飛距離を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
問題の図(模範解答の図a)をもとに、砲丸と回転軸(鉛直軸)の間の水平距離 \(l\) を幾何学的に求めます。
ワイヤの長さは \(L\) であり、常に水平に張られています。
棒の中心から回転軸までの水平距離を求め、それをワイヤの長さ \(L\) から引くことで \(l\) が求まります。

この設問における重要なポイント

  • 幾何学的な位置関係: 棒の長さは \(L\) であり、その中心は下端(支点)から \(\displaystyle\frac{L}{2}\) の位置にあります。棒は鉛直方向に対して角度 \(\theta\) 傾いています。

具体的な解説と立式
棒の中心から回転軸までの水平距離を \(x_{\text{中心}}\) とします。
直角三角形の辺の比より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{中心}} &= \frac{L}{2} \sin\theta
\end{aligned}
$$
砲丸は棒の中心から水平に長さ \(L\) のワイヤで繋がれており、回転軸を越えた反対側にあります。
したがって、砲丸と回転軸の間の距離 \(l\) は、ワイヤの長さ \(L\) から \(x_{\text{中心}}\) を引いたものになります。
$$
\begin{aligned}
l &= L – x_{\text{中心}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(三角比の定義)
計算過程

立てた式に \(x_{\text{中心}}\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
l &= L – \frac{L}{2} \sin\theta \\[2.0ex] &= \frac{2 – \sin\theta}{2} L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

図形の問題です。棒が斜めに傾いているため、棒の真ん中の部分は、まっすぐ立っている回転軸から少し横にズレています。そのズレの長さは三角比を使って計算できます。
ワイヤは棒の真ん中から水平に伸びているので、砲丸から回転軸までの距離は、「ワイヤの全長」から「棒の真ん中のズレ」を引き算すれば求まります。

結論と吟味

\(\theta = 0\)(棒がまっすぐ立っている)のとき、\(\sin 0 = 0\) となり、\(l = L\) となります。これはワイヤの長さがそのまま回転半径になることを意味し、直感と一致します。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{2 – \sin\theta}{2} L\)

問(2)

思考の道筋とポイント
砲丸とともに回転する観測者の立場で考えます。
この観測者から見ると、砲丸は静止しているように見えますが、実際には円運動をしているため、外向きの慣性力である「遠心力」がはたらいているように感じられます。
遠心力の公式に、(1)で求めた回転半径 \(l\) を代入します。

この設問における重要なポイント

  • 遠心力の公式: 質量 \(m\)、回転半径 \(r\)、角速度 \(\omega\) のとき、遠心力の大きさは \(mr\omega^2\) です。

具体的な解説と立式
砲丸の質量は \(m\)、回転半径は \(l\)、角速度は \(\omega\) です。
砲丸にはたらく遠心力の大きさ \(f_m\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f_m &= m l \omega^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力: \(F = mr\omega^2\)
計算過程

(1)で求めた \(l = \displaystyle\frac{2 – \sin\theta}{2} L\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_m &= m \left( \frac{2 – \sin\theta}{2} L \right) \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{2 – \sin\theta}{2} m L \omega^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

メリーゴーランドに乗っていると、外側に引っ張られるような力を感じます。これが遠心力です。
遠心力の強さは、「重さ」「中心からの距離」「回るスピードの2乗」をすべて掛け合わせたものになります。
(1)で「中心からの距離」がわかったので、あとは公式に当てはめるだけです。

結論と吟味

遠心力は質量、回転半径、角速度の2乗に比例するという物理的性質を正しく反映した式になっています。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{2 – \sin\theta}{2} m L \omega^2\)

問(3)

思考の道筋とポイント
棒にはたらく遠心力を考えます。
問題文に「棒の質量 \(M\) はすべて棒の中心に位置しているとする」とあるため、棒全体を「中心にある質量 \(M\) の質点」として扱うことができます。
棒の中心の回転半径を求め、遠心力の公式に代入します。

この設問における重要なポイント

  • 重心の円運動: 剛体の並進運動や遠心力を考える際、質量がすべて重心(この場合は中心)に集中しているとみなすことができます。

具体的な解説と立式
棒の質量は \(M\)、角速度は \(\omega\) です。
(1)の解説で求めたように、棒の中心から回転軸までの距離(回転半径)\(r_M\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
r_M &= \frac{L}{2} \sin\theta
\end{aligned}
$$
棒にはたらく遠心力の大きさ \(f_M\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f_M &= M r_M \omega^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力: \(F = mr\omega^2\)
計算過程

\(r_M\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_M &= M \left( \frac{L}{2} \sin\theta \right) \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

棒も一緒にグルグル回っているので、棒自身にも遠心力がはたらきます。
棒は長いですが、「重さはすべて真ん中に集まっている」と考えてよいと問題文に書いてあります。
なので、棒の真ん中がどれくらいの半径で回っているかを考え、(2)と同じように遠心力の公式に当てはめます。

結論と吟味

\(\theta = 0\) のとき、棒は回転軸と重なるため回転半径は \(0\) となり、遠心力 \(f_M\) も \(0\) になります。これは物理的に妥当な結果です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(極座標系の運動方程式からの遠心力の導出)

思考の道筋とポイント
円運動を極座標系 \((r, \phi)\) で記述し、ニュートンの運動方程式を立てます。
等速円運動の条件を適用することで、物体を中心に向かって引っ張る力(向心力)が必要であることを数学的に導きます。
その後、回転する観測者の視点(非慣性系)に切り替え、向心力とつりあう見かけの力として遠心力を定義します。このプロセスを(2)と(3)に一括して適用します。

この設問における重要なポイント

  • 極座標系の加速度: 極座標系における動径方向(中心から遠ざかる方向)の加速度は \(a_r = \displaystyle\frac{d^2r}{dt^2} – r\left(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\right)^2\) で与えられます。

具体的な解説と立式
質量 \(m_i\)、回転半径 \(r_i\) の質点が、一定の角速度 \(\omega\) で円運動している一般の状況を考えます。
極座標系 \((r, \phi)\) において、動径方向の運動方程式は以下のようになります。
(質量)×(動径方向の加速度)=(動径方向にはたらく力)
$$
\begin{aligned}
m_i \left\{ \frac{d^2r_i}{dt^2} – r_i\left(\frac{d\phi}{dt}\right)^2 \right\} &= F_r
\end{aligned}
$$
次に、この物体とともに回転する観測者(非慣性系)の立場に立ちます。
この観測者から見ると物体は静止している(加速度が \(0\))ため、見かけの力(慣性力)\(f_{\text{慣性}}\) を導入して力のつりあいを立てる必要があります。
(外向きの慣性力)+(実際の力)= \(0\)
$$
\begin{aligned}
f_{\text{慣性}} + F_r &= 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 極座標系の運動方程式: \(m(\ddot{r} – r\dot{\phi}^2) = F_r\)
  • 慣性力の定義
計算過程

等速円運動であるため、半径 \(r_i\) は一定(\(\displaystyle\frac{d^2r_i}{dt^2} = 0\))、角速度は一定(\(\displaystyle\frac{d\phi}{dt} = \omega\))です。
これを運動方程式に代入して \(F_r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m_i (0 – r_i \omega^2) &= F_r \\[2.0ex] F_r &= -m_i r_i \omega^2
\end{aligned}
$$
このマイナスの符号は、力が中心に向かっている(向心力である)ことを示しています。
これを慣性力の式に代入して \(f_{\text{慣性}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f_{\text{慣性}} + (-m_i r_i \omega^2) &= 0 \\[2.0ex] f_{\text{慣性}} &= m_i r_i \omega^2
\end{aligned}
$$
これが、外向きにはたらく「遠心力」の正体です。
この一般式に、(2)の砲丸の条件(質量 \(m\)、半径 \(l = \displaystyle\frac{2 – \sin\theta}{2} L\))を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_m &= m \left( \frac{2 – \sin\theta}{2} L \right) \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{2 – \sin\theta}{2} m L \omega^2
\end{aligned}
$$
同様に、(3)の棒の条件(質量 \(M\)、半径 \(r_M = \displaystyle\frac{L}{2} \sin\theta\))を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_M &= M \left( \frac{L}{2} \sin\theta \right) \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「遠心力」という公式を丸暗記するのではなく、運動の法則から導き出しました。
物体が円を描いて回るためには、常に中心に向かって引っ張る力(向心力)が必要です。
しかし、一緒に回っている人の目線で見ると、物体は止まっているように見えます。引っ張られているのに止まっているということは、それと反対向きに「見えない力」がはたらいていると解釈しなければ辻褄が合いません。この見えない力が遠心力です。

結論と吟味

極座標の運動方程式という力学の第一原理から出発し、慣性力としての遠心力を厳密に導出しました。結果はメイン解法と完全に一致します。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{2 – \sin\theta}{2} m L \omega^2\)
解答 (3) \(\displaystyle\frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2\)

問(4)

思考の道筋とポイント
回転する観測者の立場から、系全体が静止している(つりあっている)状態として立式します。
まず、砲丸にはたらく水平方向の力のつりあいから、ワイヤの張力 \(T\) を求めます。
次に、棒にはたらく力のモーメントのつりあいを考えます。支点を回転軸とすることで、支点からはたらく未知の抗力のモーメントを無視できます。

この設問における重要なポイント

  • 力のモーメント: 力の大きさ \(\times\) 支点からのうで(垂線)の長さで計算されます。
  • モーメントの向き: 支点を中心にして、棒を反時計回りに回そうとするモーメントと、時計回りに回そうとするモーメントに分類して等式を作ります。

具体的な解説と立式
まず、砲丸にはたらく力のつりあいを考えます(模範解答の図b)。
水平方向には、外向きの遠心力 \(f_m\) と、内向きのワイヤの張力 \(T\) がはたらいています。
(右向きの力の和)=(左向きの力の和)
$$
\begin{aligned}
T &= f_m
\end{aligned}
$$

次に、棒にはたらく力のモーメントのつりあいを考えます(模範解答の図c)。
支点まわりのモーメントを計算します。
棒にはたらく力は以下の3つです。
1. ワイヤの張力 \(T\): 棒の中心を左向きに引きます。支点からの鉛直距離(うでの長さ)は \(\displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta\) です。これは棒を反時計回りに回そうとします。
2. 棒の遠心力 \(f_M\): 棒の中心を右向きに引きます。うでの長さは \(\displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta\) です。これは棒を時計回りに回そうとします。
3. 棒の重力 \(Mg\): 棒の中心を真下に引きます。支点からの水平距離(うでの長さ)は \(\displaystyle\frac{L}{2}\sin\theta\) です。これも棒を時計回りに回そうとします。

力のモーメントのつりあいより、以下の式が成り立ちます。
(反時計回りのモーメントの和)=(時計回りのモーメントの和)
$$
\begin{aligned}
T \cdot \frac{L}{2}\cos\theta &= f_M \cdot \frac{L}{2}\cos\theta + Mg \cdot \frac{L}{2}\sin\theta
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい
  • 力のモーメントのつりあい: \(\sum M_{\text{反時計}} = \sum M_{\text{時計}}\)
  • 力のモーメント: \(M = F \times (\text{うでの長さ})\)
計算過程

モーメントのつりあいの式に、砲丸のつりあいから得られた \(T = f_m\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_m \cdot \frac{L}{2}\cos\theta &= f_M \cdot \frac{L}{2}\cos\theta + Mg \cdot \frac{L}{2}\sin\theta
\end{aligned}
$$
これが求めるつりあいの式です。

この設問の平易な説明

棒が倒れずに一定の角度を保っているということは、棒を左に倒そうとする働きと、右に倒そうとする働きが釣り合っているということです。
棒を左に倒そうとするのは、砲丸がワイヤを引っ張る力(張力)です。
棒を右に倒そうとするのは、棒自身の重さと、棒自身にはたらく遠心力です。
それぞれの力が「どれくらい棒を倒しやすいか(モーメント)」は、力に「支点からの距離」を掛けることで計算でき、それらが等しいという式を立てました。

結論と吟味

各項の次元を確認すると、すべて \([\text{力}] \times [\text{長さ}]\) となっており、モーメントの次元として正しく揃っています。

解答 (4) \(f_m \cdot \displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta = f_M \cdot \displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta + Mg \cdot \displaystyle\frac{L}{2}\sin\theta\)

問(5)

思考の道筋とポイント
(4)で立てたモーメントのつりあいの式に、(2)と(3)で求めた \(f_m\) と \(f_M\) の具体的な式を代入し、角速度の2乗 \(\omega^2\) について解きます。
その際、問題の指示に従い、質量 \(m\) と \(M\) を直接使うのではなく、質量比 \(\alpha = \displaystyle\frac{m}{M}\) を用いて式を整理します。

この設問における重要なポイント

  • 質量比の導入: \(\alpha = \displaystyle\frac{m}{M}\) より、\(m = \alpha M\) と置き換えることで、式の中から \(m\) を消去し、最終的に \(M\) も約分して消すことができます。

具体的な解説と立式
(4)で求めた式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
f_m \cdot \frac{L}{2}\cos\theta &= f_M \cdot \frac{L}{2}\cos\theta + Mg \cdot \frac{L}{2}\sin\theta
\end{aligned}
$$
また、質量比の定義より以下の関係を用います。
$$
\begin{aligned}
m &= \alpha M
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(代数計算)
計算過程

まず、(4)の式の両辺を \(\displaystyle\frac{L}{2}\) で割って簡略化します。
$$
\begin{aligned}
f_m \cos\theta &= f_M \cos\theta + Mg \sin\theta
\end{aligned}
$$
遠心力の項を左辺にまとめます。
$$
\begin{aligned}
f_m \cos\theta – f_M \cos\theta &= Mg \sin\theta \\[2.0ex] (f_m – f_M) \cos\theta &= Mg \sin\theta
\end{aligned}
$$
ここで、括弧の中の \(f_m – f_M\) を計算します。(2)、(3)の結果と \(m = \alpha M\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_m – f_M &= \frac{2 – \sin\theta}{2} m L \omega^2 – \frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{2 – \sin\theta}{2} (\alpha M) L \omega^2 – \frac{\sin\theta}{2} M L \omega^2 \\[2.0ex] &= \frac{M L \omega^2}{2} \{ (2 – \sin\theta)\alpha – \sin\theta \} \\[2.0ex] &= \frac{M L \omega^2}{2} ( 2\alpha – \alpha\sin\theta – \sin\theta ) \\[2.0ex] &= \frac{M L \omega^2}{2} \{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \}
\end{aligned}
$$
これを先ほどのモーメントの式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left[ \frac{M L \omega^2}{2} \{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} \right] \cos\theta &= Mg \sin\theta
\end{aligned}
$$
両辺の \(M\) を約分して消去します。
$$
\begin{aligned}
\frac{L \omega^2}{2} \{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} \cos\theta &= g \sin\theta
\end{aligned}
$$
\(\omega^2\) について解くため、両辺に \(\displaystyle\frac{2}{L \{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} \cos\theta}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{2g \sin\theta}{\{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} L \cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(4)で作ったシーソーの釣り合いの式に、(2)と(3)で計算した遠心力の具体的な中身を代入します。
式の中に砲丸の重さ \(m\) と棒の重さ \(M\) が混ざっていると計算しづらいので、「砲丸は棒の何倍の重さか(\(\alpha\))」という比率を使って、文字の種類を減らします。
あとは、ひたすら式を整理して「回転スピードの2乗(\(\omega^2\))=〜」という形に変形する数学のパズルです。

結論と吟味

得られた式を見ると、右辺の分母に \(\cos\theta\) があります。\(\theta\) が \(90^\circ\)(\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\))に近づくと \(\cos\theta\) は \(0\) に近づき、\(\omega^2\) は無限大に発散します。これは、棒を完全に水平に保つためには無限大の回転速度が必要であることを意味し、物理的直感と一致します。

解答 (5) \(\omega^2 = \displaystyle\frac{2g \sin\theta}{\{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} L \cos\theta}\)

問(6) 前半(\(\sin\theta_*\) の導出と空欄ア〜ウ)

思考の道筋とポイント
(5)で求めた \(\omega^2\) の式が、物理的に意味のある値(正の値)を持つための条件を考えます。
\(\omega^2 > 0\) でなければならないため、式の右辺が正になるような \(\theta\) の範囲を特定し、その限界値 \(\theta_*\) を求めます。
その後、具体的な数値を代入して空欄を埋めます。

この設問における重要なポイント

  • 物理的制約条件: 角速度 \(\omega\) は実数であるため、\(\omega^2 > 0\) が必須条件です。
  • 分母の符号: \(\theta\) の範囲(\(0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}\))において、分子と分母の一部(\(\cos\theta\))は常に正です。したがって、分母の括弧の中身が正であることが条件となります。

具体的な解説と立式
(5)で求めた式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{2g \sin\theta}{\{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \} L \cos\theta}
\end{aligned}
$$
物理的に \(\omega^2 > 0\) でなければなりません。
棒の傾き \(\theta\) は \(0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}\) の範囲で考えるため、分子の \(2g \sin\theta > 0\)、分母の \(L \cos\theta > 0\) は常に成り立ちます。
したがって、全体が正になるためには、分母の残りの部分が正でなければなりません。
$$
\begin{aligned}
2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta &> 0
\end{aligned}
$$
\(\theta\) が大きくなると \(\sin\theta\) も大きくなるため、この式の左辺は小さくなっていきます。
限界となる角度 \(\theta_*\) は、この式がちょうど \(0\) になるときです。
$$
\begin{aligned}
2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta_* &= 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(不等式の条件)
計算過程

限界の式から \(\sin\theta_*\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
(1 + \alpha)\sin\theta_* &= 2\alpha \\[2.0ex] \sin\theta_* &= \frac{2\alpha}{1 + \alpha}
\end{aligned}
$$

次に空欄(ア)を考えます。
\(\omega^2\) の式において、\(\theta\) を大きくすると、分子の \(\sin\theta\) は増加し、分母の \(\cos\theta\) と \(\{ 2\alpha – (1 + \alpha)\sin\theta \}\) は共に減少します。
分子が増え、分母が減るため、全体として \(\omega^2\) の値は大きくなります。
したがって、\(\theta\) を「大きく」するほど \(\omega\) が大きくなります。

空欄(イ)を計算します。
与えられた質量 \(m = 7.5\,\text{kg}\)、\(M = 100\,\text{kg}\) より、質量比 \(\alpha\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= \frac{7.5}{100} \\[2.0ex] &= 0.075
\end{aligned}
$$
これを \(\sin\theta_*\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta_* &= \frac{2 \times 0.075}{1 + 0.075} \\[2.0ex] &= \frac{0.15}{1.075}
\end{aligned}
$$
問題文の近似 \(\sin\theta_* \approx \theta_*\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
\theta_* &\approx \frac{0.15}{1.075} \\[2.0ex] &\approx 0.1395\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(0.14\,\text{rad}\) となります。

空欄(ウ)を計算します。
ラジアンから度数法への換算は、\(\displaystyle\frac{180}{\pi}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\theta_* [^\circ] &= 0.1395\dots \times \frac{180}{3.14} \\[2.0ex] &\approx 7.99\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(8.0^\circ\) となります。

この設問の平易な説明

(5)で作った式を見ると、棒を傾ければ傾けるほど(\(\theta\) を大きくするほど)、分母がどんどん小さくなっていきます。
分母が小さくなるということは、計算結果(必要な回転スピード)がどんどん大きくなるということです。
そして、ある角度(\(\theta_*\))まで傾けると、ついに分母がゼロになってしまいます。分母がゼロの割り算はできない(無限大のスピードが必要になる)ため、これ以上は棒を傾けたまま回ることは物理的に不可能です。
実際の選手の体重とハンマーの重さを入れて計算してみると、その限界の角度はわずか \(8^\circ\) 程度であることがわかります。

結論と吟味

限界角度が約 \(8^\circ\) というのは非常に小さい値ですが、ハンマー投げの選手が実際に体を大きく傾けているように見えるのは、このモデルのように「棒(体)の中心に重心がある」わけではなく、姿勢を工夫して重心位置をコントロールしているためです。単純な剛体モデルの限界を示す興味深い結果です。

解答 (6) 前半 \(\sin\theta_* = \displaystyle\frac{2\alpha}{1+\alpha}\)、(ア) 大きく、(イ) \(0.14\)、(ウ) \(8.0\)

問(6) 後半(空欄エ〜キ)

思考の道筋とポイント
選手の握力の限界から、ハンマーを回せる最大の角速度 \(\omega_{\text{最大}}\) と、そのときの砲丸の速さ \(v\) を求めます。
最後に、その速さで斜方投射された場合の飛距離を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 張力の限界: ワイヤの張力 \(T\) が、握力による限界値 \(Xg\) に達したときが、角速度の最大値 \(\omega_{\text{最大}}\) となります。
  • 近似の適用: 問題文の指示に従い、限界角度 \(\theta_*\) が十分に小さいため、\(\theta = 0\) とみなして計算を簡略化します。

具体的な解説と立式
空欄(エ)を考えます。
(4)の力のつりあいより、ワイヤの張力 \(T\) は砲丸の遠心力 \(f_m\) と等しいです。
$$
\begin{aligned}
T &= f_m
\end{aligned}
$$
張力が限界値 \(Xg\) に達したとき、角速度は \(\omega_{\text{最大}}\) となります。
$$
\begin{aligned}
Xg &= f_m(\omega_{\text{最大}})
\end{aligned}
$$

空欄(キ)を考えます。
砲丸は初速度 \(v_0\)(空欄カで求めた速さ)、角度 \(45^\circ\) で斜方投射されます。
水平方向(\(x\)軸)は等速直線運動、鉛直方向(\(y\)軸)は重力加速度 \(g\) の等加速度運動です。
時刻 \(t\) における位置座標は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x &= v_0 \cos 45^\circ \cdot t \\[2.0ex] y &= v_0 \sin 45^\circ \cdot t – \frac{1}{2} g t^2
\end{aligned}
$$
地面に落下する時刻 \(t_1\) は \(y = 0\) のときです。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_0 \sin 45^\circ \cdot t_1 – \frac{1}{2} g t_1^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 円運動の速さ: \(v = r\omega\)
  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
  • 等加速度運動の変位: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
計算過程

(2)で求めた \(f_m\) の式に \(\theta = 0\) を代入して近似します。
$$
\begin{aligned}
f_m(\omega_{\text{最大}}) &= \frac{2 – \sin 0}{2} m L \omega_{\text{最大}}^2 \\[2.0ex] &= m L \omega_{\text{最大}}^2
\end{aligned}
$$
これらを等置し、\(\omega_{\text{最大}}^2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
Xg &= m L \omega_{\text{最大}}^2 \\[2.0ex] \omega_{\text{最大}}^2 &= \frac{Xg}{mL}
\end{aligned}
$$

空欄(オ)を計算します。
与えられた数値 \(X = 300\,\text{kg}\)、\(g = 9.8\,\text{m/s}^2\)、\(m = 7.5\,\text{kg}\)、\(L = 2.0\,\text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\omega_{\text{最大}}^2 &= \frac{300 \times 9.8}{7.5 \times 2.0} \\[2.0ex] &= \frac{2940}{15} \\[2.0ex] &= 196
\end{aligned}
$$
平方根をとります。\(196 = 14^2\) であるため、
$$
\begin{aligned}
\omega_{\text{最大}} &= \sqrt{14^2} \\[2.0ex] &= 14\,\text{rad/s}
\end{aligned}
$$

空欄(カ)を計算します。
\(\theta = 0\) のとき、砲丸の回転半径 \(l\) は \(L\) に等しいです。
$$
\begin{aligned}
v_0 &= L \omega_{\text{最大}} \\[2.0ex] &= 2.0 \times 14 \\[2.0ex] &= 28\,\text{m/s}
\end{aligned}
$$

空欄(キ)を計算します。
落下時刻 \(t_1\) を求める式を解きます(\(t_1 > 0\))。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} g t_1^2 &= v_0 \sin 45^\circ \cdot t_1 \\[2.0ex] t_1 &= \frac{2 v_0 \sin 45^\circ}{g}
\end{aligned}
$$
これを \(x\) の式に代入して飛距離 \(x_{\text{最大}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{最大}} &= v_0 \cos 45^\circ \cdot \left( \frac{2 v_0 \sin 45^\circ}{g} \right) \\[2.0ex] &= \frac{v_0^2 \cdot 2 \sin 45^\circ \cos 45^\circ}{g}
\end{aligned}
$$
\(\sin 45^\circ = \cos 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{最大}} &= \frac{v_0^2 \cdot 2 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}}}{g} \\[2.0ex] &= \frac{v_0^2}{g}
\end{aligned}
$$
数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{最大}} &= \frac{28^2}{9.8} \\[2.0ex] &= \frac{784}{9.8} \\[2.0ex] &= 80\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ハンマーを速く回せば回すほど、遠心力が強くなり、ワイヤを引っ張る力(張力)も強くなります。
選手の握力には限界があるため、張力が握力の限界に達したときが、ハンマーを回せるスピードの限界(最高速度)になります。
その最高速度でハンマーから手を離すと、ハンマーは斜め上に向かって飛んでいきます。あとは高校物理で最初に習う「ボール投げ(放物運動)」の計算をするだけで、どこまで飛ぶかがわかります。

結論と吟味

計算された飛距離 \(80\,\text{m}\) は、問題文に記載されている室伏広治氏の日本記録 \(84.86\,\text{m}\) に非常に近い値です。
空気抵抗を無視し、剛体モデルという単純化を行っているにもかかわらず、現実のトップアスリートの記録を高い精度で再現できていることは、この力学モデルの妥当性と物理学の威力を示しています。

解答 (6) 後半 (エ) \(\displaystyle\frac{Xg}{mL}\)、(オ) \(14\)、(カ) \(28\)、(キ) \(80\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による放物運動の軌跡と飛距離の導出)

思考の道筋とポイント
空欄(キ)の飛距離を求める際、放物運動の公式を既知とせず、ニュートンの運動方程式から出発します。
空中を飛ぶ砲丸にはたらく力は重力のみです。この運動方程式を時間 \(t\) で2回積分することで、速度と位置の式を数学的に導出し、飛距離を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の積分: 加速度 \(a = \displaystyle\frac{d^2x}{dt^2}\) を時間で1回積分すると速度 \(v\) になり、もう1回積分すると位置 \(x\) になります。積分定数は初期条件から決定します。

具体的な解説と立式
水平方向を \(x\) 軸、鉛直上向きを \(y\) 軸とします。
砲丸にはたらく力は、鉛直下向きの重力 \(-mg\) のみです。
各成分の運動方程式は以下のようになります。
(質量)×(加速度)=(はたらく力)
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2x}{dt^2} &= 0 \\[2.0ex] m \frac{d^2y}{dt^2} &= -mg
\end{aligned}
$$
初期条件として、\(t=0\) のとき、原点にあり(\(x=0, y=0\))、初速度は \(v_0 = 28\,\text{m/s}\)、角度は \(45^\circ\) です。
$$
\begin{aligned}
v_{x\text{初}} &= v_0 \cos 45^\circ \\[2.0ex] v_{y\text{初}} &= v_0 \sin 45^\circ
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 加速度と速度、位置の微分関係: \(a = \displaystyle\frac{dv}{dt} = \displaystyle\frac{d^2x}{dt^2}\)
計算過程

運動方程式の両辺を \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= 0 \quad \cdots ① \\[2.0ex] \frac{d^2y}{dt^2} &= -g \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
式①を時間 \(t\) で積分して速度 \(v_x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_x &= \int 0 dt \\[2.0ex] &= C_1 \quad (C_1 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件 \(v_x(0) = v_0 \cos 45^\circ\) より、\(C_1 = v_0 \cos 45^\circ\) です。
$$
\begin{aligned}
v_x &= v_0 \cos 45^\circ
\end{aligned}
$$
これをさらに積分して位置 \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x &= \int v_0 \cos 45^\circ dt \\[2.0ex] &= (v_0 \cos 45^\circ) t + C_2
\end{aligned}
$$
初期条件 \(x(0) = 0\) より、\(C_2 = 0\) です。
$$
\begin{aligned}
x &= (v_0 \cos 45^\circ) t \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

同様に、式②を積分して \(y\) 方向の運動を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_y &= \int -g dt \\[2.0ex] &= -gt + C_3
\end{aligned}
$$
初期条件 \(v_y(0) = v_0 \sin 45^\circ\) より、\(C_3 = v_0 \sin 45^\circ\) です。
$$
\begin{aligned}
v_y &= -gt + v_0 \sin 45^\circ
\end{aligned}
$$
さらに積分します。
$$
\begin{aligned}
y &= \int (-gt + v_0 \sin 45^\circ) dt \\[2.0ex] &= -\frac{1}{2}gt^2 + (v_0 \sin 45^\circ) t + C_4
\end{aligned}
$$
初期条件 \(y(0) = 0\) より、\(C_4 = 0\) です。
$$
\begin{aligned}
y &= (v_0 \sin 45^\circ) t – \frac{1}{2}gt^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
式③と式④は、メイン解法で用いた公式と完全に一致します。
以降の計算(\(y=0\) となる \(t\) を求め、\(x\) に代入する手順)はメイン解法と同じであるため省略しますが、結果として飛距離 \(x_{\text{最大}} = 80\,\text{m}\) が得られます。

この設問の平易な説明

「放物運動の公式」を忘れてしまっても、力学の基本ルールである「運動方程式」さえ覚えていれば、自分で公式を作り出すことができます。
空を飛んでいる砲丸には、下向きの重力しかはたらいていません。横方向には力がはたらいていないので、横のスピードはずっと一定です。縦方向には重力がはたらいているので、だんだんスピードが落ちて、やがて落ちてきます。
この「力とスピードの変化」の関係を、微積分という数学の道具を使って解きほぐしていくと、自然と放物運動の公式が現れます。

結論と吟味

運動方程式の積分という第一原理から出発し、放物運動の軌跡を厳密に導出しました。公式の暗記に頼らずとも、現象の根本的な理解があればあらゆる運動を記述できることが確認できました。

解答 (6) 空欄(キ) \(80\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 非慣性系における力のつりあい(遠心力の導入)
    • 核心: 回転する物体とともに動く観測者の立場に立つことで、複雑な円運動の力学を、静止した物体の「力のつりあい」という単純な問題に帰着させることができます。その代償として、外向きの「遠心力」を導入する必要があります。
    • 理解のポイント:
      • 遠心力 \(F = mr\omega^2\) は、質量 \(m\)、回転半径 \(r\)、角速度 \(\omega\) の3つの要素で決まります。本問のように物体によって回転半径が異なる場合、それぞれの半径を正確に幾何学的に求めることが第一歩です。
  • 剛体の力のモーメントのつりあい
    • 核心: 大きさを持つ物体(剛体)が回転せずに姿勢を保つためには、力の合計がゼロであるだけでなく、物体を回そうとする働き(モーメント)の合計もゼロでなければなりません。
    • 理解のポイント:
      • モーメントは「力 \(\times\) 支点からのうでの長さ(垂線の長さ)」です。力が斜めにはたらいている場合、力を分解するか、支点から力の作用線に垂線を下ろして距離を測る必要があります。本問では後者のアプローチ(\(\displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta\) など)が有効でした。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 円錐振り子: 糸の先に重りをつけて水平面内で円運動させる問題です。本問のハンマー部分と全く同じ力学モデルであり、張力と重力、遠心力のつりあいで解くことができます。
    • カーブを曲がる車や自転車: 車体が傾く角度を求める問題です。重心にはたらく重力と遠心力のモーメントのつりあいを考える点で、本問の「棒」の力学モデルと共通しています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 観測者の立場を決める: 外から見て「運動方程式」を立てるか、一緒に動いて「遠心力を含めたつりあい」を立てるかを最初に決断します。回転問題では後者の方が圧倒的に立式しやすいことが多いです。
    2. 支点を賢く選ぶ: モーメントのつりあいを立てる際、未知の力(例えば地面からの抗力や摩擦力)がはたらいている点を支点に選ぶと、その力のモーメントがゼロになり、式から消去できるため計算が劇的に楽になります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 回転半径の取り違え:
    • 誤解: 遠心力の公式 \(mr\omega^2\) の \(r\) に、うっかりワイヤの長さ \(L\) や棒の長さ \(\displaystyle\frac{L}{2}\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 回転半径 \(r\) は、必ず「物体から回転軸(鉛直軸)に下ろした垂線の長さ」です。斜めになっている場合は、必ず三角比(\(\sin\theta\) など)が絡むことを意識し、図を描いて確認する癖をつけましょう。
  • モーメントのうでの長さのミス:
    • 誤解: 重力のモーメントを計算する際、うでの長さを \(\displaystyle\frac{L}{2}\cos\theta\) と間違えてしまう(正しくは \(\displaystyle\frac{L}{2}\sin\theta\))。
    • 対策: 力の矢印を延長した線(作用線)を引き、支点からその線に向かって垂直に交わる線を引きます。重力は縦方向なので、うでの長さは横方向(\(\sin\theta\) 側)になります。図形的に「縦の力には横の距離」「横の力には縦の距離」とペアで覚えましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(4)での支点まわりのモーメントの選択:
    • 選定理由: 棒の下端(地面との接点)には、地面からの垂直抗力や摩擦力など、大きさがわからない力が複数働いています。この点を支点に選ぶことで、これらの未知の力のうでの長さがゼロになり、式に登場させずに済むためです。
    • 適用根拠: 剛体が静止(または一定の姿勢を維持)している場合、空間内のどの点を支点に選んでもモーメントの和はゼロになるという物理法則に基づいています。
  • 問(6)空欄(キ)での放物運動の公式の選択:
    • 選定理由: 空中に飛び出した後の砲丸は、空気抵抗を無視すれば重力のみを受けるため、典型的な斜方投射のモデルが完全に適用できます。
    • 適用根拠: 投射角が \(45^\circ\) と与えられており、水平面上の飛距離を求めるという標準的な設定であるため、公式を直接適用するのが最速かつ確実です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の置き換えによる式の簡略化:
    • 意識: 問(5)のように、式の中に \(m\) と \(M\) が混在していると、展開や約分の際に見落としが発生しやすくなります。
    • 実践: 問題文の誘導に従い、\(\alpha = \displaystyle\frac{m}{M}\) のように比率を一つの文字に置き換えることで、式がスッキリし、計算ミスを大幅に減らすことができます。誘導がない場合でも、自分で比率を定義するテクニックは有効です。
  • 極限状態での検算:
    • 意識: 導出した複雑な文字式が正しいか不安なときは、極端なケースを代入して直感と合うか確認します。
    • 実践: 問(5)の \(\omega^2\) の式で、もし \(\theta = 0\)(棒がまっすぐ)だったらどうなるか? 分子の \(\sin 0 = 0\) となるため、\(\omega = 0\) となります。これは、棒がまっすぐなら遠心力は不要(回らなくてよい)という事実と一致し、式の妥当性を裏付けます。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

「暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

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