「物理重要問題集2026」徹底解説(154〜156問):未来の得点力へ!完全マスター講座

11月、中間の×を生んだ考え方のクセは、期末にもついてきます。
範囲が変わっても、×を生んだ考え方のクセは次の単元へ持ち越されます。答案の×を1つずつ「どの順番で考えたか」に戻して、期末で同じ転び方をしない準備を。
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問題154 水素原子モデル (20 九州工大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 問(エ)の別解: 微積分を用いた体系的解法(問(ア)〜(エ)の一括導出)
      • 模範解答が公式として与えられた位置エネルギーの式や、既知の円運動の運動方程式を用いるのに対し、別解では極座標系における運動方程式の動径成分の導出と、クーロン力(静電気力)の空間積分による位置エネルギーの導出を原理から行います。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 「なぜ位置エネルギーの基準が無限遠なのか」「なぜマイナスの符号がつくのか」といった疑問に対し、力の定義から積分計算を通じて論理的な解答を与えます。これにより、公式の丸暗記から脱却し、電磁気学と力学の深い繋がりを理解する物理的基礎体力を養うことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる数式は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ボーアの水素原子モデルにおける電子の軌道半径、エネルギー準位、および放出される光子の波長の導出」です。古典力学と初期の量子論を組み合わせて、水素原子のミクロな構造を解き明かします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 円運動の運動方程式: 電子は原子核からの静電気力(クーロン力)を向心力として等速円運動を行います。
  • ボーアの量子条件: 電子の軌道は、その物質波(ド・ブロイ波)が定常波を形成するような特定の半径(とびとびの値)しか許されません。
  • エネルギー保存則と振動数条件: 電子が定常状態間を遷移(移動)する際、そのエネルギー差に等しいエネルギーを持つ光子が放出(または吸収)されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 問(ア)では、力学の基本である運動方程式を立式し、軌道半径と速さの関係を導きます。
  • 問(イ)では、物質波の波長の公式を用いて、量子条件を数式化します。
  • 問(ウ)・(エ)では、(ア)と(イ)の式を連立させて未知数を消去し、特定の量子数 \(n\) における軌道半径と全エネルギーを導出します。
  • 問(オ)・(カ)では、エネルギー準位の差から放出される光子の波長を文字式で表し、具体的な数値を代入して可視光線の波長を計算します。

問(ア)

思考の道筋とポイント
水素原子のモデルにおいて、中心には正の電荷 \(+e\) を持つ原子核があり、その周りを負の電荷 \(-e\) を持つ質量 \(m\) の電子が速さ \(v\) で等速円運動しています。
円運動を維持するためには、常に円の中心に向かう力(向心力)が必要です。この問題では、原子核と電子の間に働く引力(静電気力)がその役割を担います。

この設問における重要なポイント

  • 向心力の正体: クーロンの法則により、距離 \(r\) 離れた電荷 \(+e\) と \(-e\) の間に働く引力の大きさは \(k_0 \frac{e^2}{r^2}\) です。
  • 円運動の加速度: 半径 \(r\)、速さ \(v\) の等速円運動の加速度の大きさは \(\frac{v^2}{r}\) であり、常に向心方向(中心向き)を向いています。

具体的な解説と立式
電子の運動について、円の中心方向を正として運動方程式を立てます。
質量は \(m\)、中心方向の加速度は \(\frac{v^2}{r}\)、中心方向にはたらく力は静電気力のみで \(k_0 \frac{e^2}{r^2}\) です。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= k_0 \frac{e^2}{r^2} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 円運動の加速度: \(a = \frac{v^2}{r}\)
  • クーロンの法則: \(F = k_0 \frac{q_1 q_2}{r^2}\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

式①の両辺に \(\frac{r^2}{m v^2}\) を掛けて、\(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} \cdot \frac{r^2}{m v^2} &= k_0 \frac{e^2}{r^2} \cdot \frac{r^2}{m v^2} \\[2.0ex] r &= \frac{k_0 e^2}{m v^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が原子核の周りを回って飛んでいかないのは、原子核が電子を引っ張っているからです。この「引っ張る力(静電気力)」がそのまま、カーブを曲がるために必要な「向心力」の役割を果たしています。その運動方程式を式にしました。その式を、軌道の半径 \(r\) について整理しただけです。

結論と吟味

得られた式 \(r = \frac{k_0 e^2}{m v^2}\) を見ると、速さ \(v\) が大きいほど軌道半径 \(r\) は小さくなることがわかります。これは、速く回るほど強い向心力が必要になり、より原子核に近い(引力が強い)軌道を回らなければならないという物理的直感と一致します。

解答 (ア) \(\displaystyle \frac{k_0 e^2}{m v^2}\)

問(イ)

思考の道筋とポイント
ボーアの量子条件は、「電子の軌道一周の長さが、電子の物質波(ド・ブロイ波)の波長の整数倍でなければならない」というものです。
これにより、波が一周して戻ってきたときに位相が揃い、定常波として安定して存在できるようになります。

この設問における重要なポイント

  • ド・ブロイ波長: 運動量 \(p = mv\) で運動する粒子の波長は \(\lambda = \frac{h}{p}\) で与えられます。
  • 量子条件の幾何学的意味: 軌道の周の長さ \(2\pi r\) の中に、波長 \(\lambda\) の波がちょうど \(n\) 個収まる状態を数式化します。

具体的な解説と立式
電子のド・ブロイ波長を \(\lambda\) とします。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{h}{mv} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
量子条件より、軌道の周の長さ \(2\pi r\) は波長 \(\lambda\) の \(n\) 倍に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \lambda \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ド・ブロイ波長: \(\lambda = \frac{h}{p} = \frac{h}{mv}\)
  • ボーアの量子条件: \(2\pi r = n \lambda\)
計算過程

式③に式②を代入します。
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \left( \frac{h}{mv} \right) \\[2.0ex] &= \frac{nh}{mv}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子を「粒」ではなく「波」として考えます。波が円軌道を一周したとき、波の山と山、谷と谷がぴったり重ならないと、波は打ち消し合って消えてしまいます。ぴったり重なるためには、一周の長さが波長のちょうど \(1\) 倍、\(2\) 倍、\(3\) 倍…(整数倍)でなければなりません。この条件を式に表しました。

結論と吟味

得られた式 \(2\pi r = \frac{nh}{mv}\) は、プランク定数 \(h\) を含むことから、この現象がミクロな量子力学的世界特有のものであることを示しています。右辺の単位を調べると、\([\text{J} \cdot \text{s}] / ([\text{kg}] \cdot [\text{m}/\text{s}]) = [\text{kg} \cdot \text{m}^2/\text{s}^2 \cdot \text{s}] / [\text{kg} \cdot \text{m}/\text{s}] = [\text{m}]\) となり、左辺の長さの単位と一致します。

解答 (イ) \(\displaystyle \frac{nh}{mv}\)

問(ウ)

思考の道筋とポイント
問(ア)で求めた力学的な条件(運動方程式)と、問(イ)で求めた量子力学的な条件(量子条件)を組み合わせます。
両方の式には未知の速さ \(v\) が含まれているため、これを消去することで、量子数 \(n\) だけで決まる特定の軌道半径 \(r_n\) を導き出します。

この設問における重要なポイント

  • 連立方程式の解法: 2つの式から \(v\) を消去し、\(r\) について解きます。
  • とびとびの値: 量子数 \(n\) が \(1, 2, 3, \dots\) と整数値をとるため、半径 \(r\) も連続的な値ではなく、とびとびの値(離散値)しかとれないことが数式から示されます。

具体的な解説と立式
問(ア)の結果より、
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{k_0 e^2}{m v^2} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
問(イ)の結果より、
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= \frac{nh}{mv} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
これら2つの式を連立させて \(v\) を消去し、そのときの半径を \(r_n\) と置きます。

使用した物理公式

  • 特になし(代数的な連立方程式の処理)
計算過程

まず、式⑤を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{nh}{2\pi m r}
\end{aligned}
$$
これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{k_0 e^2}{m \left( \frac{nh}{2\pi m r} \right)^2}
\end{aligned}
$$
分母の括弧を展開します。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{k_0 e^2}{m \left( \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m^2 r^2} \right)}
\end{aligned}
$$
分母と分子を整理します。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{k_0 e^2 \cdot 4\pi^2 m^2 r^2}{m n^2 h^2} \\[2.0ex] r &= \frac{4\pi^2 m k_0 e^2 r^2}{n^2 h^2}
\end{aligned}
$$
両辺を \(r\) (\(r \neq 0\))で割ります。
$$
\begin{aligned}
1 &= \frac{4\pi^2 m k_0 e^2 r}{n^2 h^2}
\end{aligned}
$$
\(r\) について解き、これを \(n\) 番目の軌道半径 \(r_n\) とします。
$$
\begin{aligned}
r_n &= \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k_0 e^2}
\end{aligned}
$$
模範解答の形式に合わせて、\(n^2\) を分離して記述します。
$$
\begin{aligned}
r_n &= \frac{h^2}{4\pi^2 m k_0 e^2} \cdot n^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力学的に安定して回れる条件」と「波としてぴったり重なる条件」の2つのルールを同時に満たすような軌道を探しました。計算の結果、半径はどんな値でも良いわけではなく、\(1^2, 2^2, 3^2 \dots\) という整数の2乗に比例する特定の間隔でしか存在できないことがわかりました。これが「とびとびの軌道」の正体です。

結論と吟味

\(r_n \propto n^2\) となっており、量子数 \(n\) が大きくなるにつれて、軌道半径は二次関数的に急激に大きくなることがわかります。また、右辺の係数部分はすべて物理定数で構成されており、水素原子の大きさがこれらの普遍的な定数のみから決定されるという、物理学的に非常に美しい結果を示しています。

解答 (ウ) \(\displaystyle \frac{h^2}{4\pi^2 m k_0 e^2} \cdot n^2\)

問(エ)

思考の道筋とポイント
電子の全エネルギー \(E_n\) は、運動エネルギー \(K\) と位置エネルギー \(U\) の和です。
位置エネルギーは無限遠を基準とするため、引力による位置エネルギーは負の値をとります。
運動エネルギーの式に含まれる \(v^2\) を、問(ア)の運動方程式を用いて消去し、エネルギーを半径 \(r\) のみの式で表した上で、問(ウ)で求めた \(r_n\) を代入します。

この設問における重要なポイント

  • 位置エネルギーの符号: 無限遠を基準(\(0\))とし、引力に逆らって無限遠まで運ぶのに仕事が必要なため、原子核の近くにある電子の位置エネルギーはマイナスになります。
  • エネルギーの変換: 運動方程式 \(m \frac{v^2}{r} = k_0 \frac{e^2}{r^2}\) を用いると、運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) を位置エネルギーと同じ形(\(\frac{1}{r}\) に比例する形)に変換でき、計算が劇的に簡単になります。

具体的な解説と立式
電子の運動エネルギーを \(K\)、位置エネルギーを \(U\) とします。
$$
\begin{aligned}
K &= \frac{1}{2}mv^2 \quad \cdots ⑥ \\[2.0ex] U &= -k_0 \frac{e^2}{r} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
全エネルギー \(E_n\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
E_n &= K + U \\[2.0ex] &= \frac{1}{2}mv^2 – k_0 \frac{e^2}{r} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
ここで、問(ア)の運動方程式①を変形します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= k_0 \frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
両辺に \(r\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
mv^2 &= k_0 \frac{e^2}{r} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
  • 静電気力による位置エネルギー: \(U = -k_0 \frac{q_1 q_2}{r}\)
  • 力学的エネルギー: \(E = K + U\)
計算過程

式⑨を式⑧の運動エネルギーの項に代入します。
$$
\begin{aligned}
E_n &= \frac{1}{2} \left( k_0 \frac{e^2}{r} \right) – k_0 \frac{e^2}{r} \\[2.0ex] &= -\frac{1}{2} k_0 \frac{e^2}{r} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
この式⑩の \(r\) に、問(ウ)で求めた \(r_n = \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k_0 e^2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_n &= -\frac{1}{2} k_0 e^2 \cdot \frac{1}{r_n} \\[2.0ex] &= -\frac{1}{2} k_0 e^2 \cdot \frac{4\pi^2 m k_0 e^2}{n^2 h^2} \\[2.0ex] &= -\frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \cdot \frac{1}{n^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が持つトータルのエネルギー(運動エネルギー+位置エネルギー)を計算しました。運動方程式を使うと、「運動エネルギーは、位置エネルギーの絶対値のちょうど半分」という面白い関係があることがわかります。これを足し合わせると、トータルのエネルギーはマイナスの値になります。この「マイナス」は、電子が原子核に束縛されていて、外に逃げ出すにはエネルギーが足りない状態(借金状態)であることを意味しています。

結論と吟味

\(E_n \propto -\frac{1}{n^2}\) となっており、量子数 \(n\) が大きくなる(外側の軌道になる)ほど、エネルギーの絶対値は小さくなり、全体としては \(0\) に近づく(エネルギーが高くなる)ことがわかります。\(n \to \infty\) で \(E_n \to 0\) となり、電子が原子核の束縛から完全に解放された状態(電離状態)と整合します。

解答 (エ) \(\displaystyle -\frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \cdot \frac{1}{n^2}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(問(ア)〜(エ)の一括導出)

思考の道筋とポイント
高校物理では「円運動の加速度は \(v^2/r\)」「位置エネルギーは \(-k_0 e^2/r\)」と公式として与えられますが、これらはすべてニュートンの運動方程式と力の定義から微積分を用いて数学的に導出できるものです。
ここでは、極座標系における運動方程式から問(ア)の式を導き、さらにクーロン力を空間積分することで問(エ)の位置エネルギーを原理から導出します。

この設問における重要なポイント

  • 極座標系の加速度: 2次元平面上の位置を \((r, \theta)\) で表すとき、動径方向(中心から外に向かう方向)の加速度成分は \(a_r = \frac{d^2r}{dt^2} – r\left(\frac{d\theta}{dt}\right)^2\) となります。
  • 仕事と位置エネルギーの関係: 保存力 \(\vec{F}\) がする仕事と位置エネルギー \(U\) の変化には \(\Delta U = – \int \vec{F} \cdot d\vec{r}\) の関係があります。

具体的な解説と立式
【問(ア)の導出】
原子核を原点とする極座標系 \((r, \theta)\) を考えます。
電子の動径方向の運動方程式は、外向きを正として以下のように立式されます。
$$
\begin{aligned}
m \left( \frac{d^2r}{dt^2} – r\left(\frac{d\theta}{dt}\right)^2 \right) &= -k_0 \frac{e^2}{r^2} \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
等速円運動では、半径 \(r\) は一定なので \(\frac{d^2r}{dt^2} = 0\) です。
また、角速度 \(\omega = \frac{d\theta}{dt}\) と速さ \(v\) の間には \(v = r\omega\) の関係があるため、\(\frac{d\theta}{dt} = \frac{v}{r}\) となります。

【問(エ)の位置エネルギーの導出】
無限遠(\(r = \infty\))を基準点とし、距離 \(r\) の位置までの位置エネルギー \(U(r)\) を、クーロン力 \(\vec{F} = -k_0 \frac{e^2}{r^2} \hat{r}\) (\(\hat{r}\) は動径方向の単位ベクトル)の積分として定義します。
$$
\begin{aligned}
U(r) &= – \int_{\infty}^{r} \vec{F} \cdot d\vec{r} \\[2.0ex] &= – \int_{\infty}^{r} \left( -k_0 \frac{e^2}{r’^2} \right) dr’ \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
(積分変数の混同を避けるため、積分内では \(r’\) を使用しています。)

使用した物理公式・数学公式

  • 極座標の加速度(動径成分): \(a_r = \ddot{r} – r\dot{\theta}^2\)
  • 位置エネルギーの定義: \(U(\vec{r}) = – \int_{\vec{r}_{\text{基準}}}^{\vec{r}} \vec{F} \cdot d\vec{r}\)
  • べき乗の積分: \(\int x^n dx = \frac{1}{n+1} x^{n+1}\) (\(n \neq -1\))
計算過程

【問(ア)の計算】
式⑪に \(\frac{d^2r}{dt^2} = 0\) と \(\frac{d\theta}{dt} = \frac{v}{r}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m \left( 0 – r\left(\frac{v}{r}\right)^2 \right) &= -k_0 \frac{e^2}{r^2} \\[2.0ex] -m \frac{v^2}{r} &= -k_0 \frac{e^2}{r^2} \\[2.0ex] m \frac{v^2}{r} &= k_0 \frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
これは問(ア)の式①と完全に一致し、ここから \(r = \frac{k_0 e^2}{m v^2}\) が導かれます。

【問(エ)の計算】
式⑫の定積分を実行します。\(\frac{1}{r’^2} = r’^{-2}\) の積分は \(-r’^{-1} = -\frac{1}{r’}\) です。
$$
\begin{aligned}
U(r) &= k_0 e^2 \int_{\infty}^{r} r’^{-2} dr’ \\[2.0ex] &= k_0 e^2 \left[ – \frac{1}{r’} \right]_{\infty}^{r} \\[2.0ex] &= k_0 e^2 \left( – \frac{1}{r} – \left( – \frac{1}{\infty} \right) \right)
\end{aligned}
$$
\(\frac{1}{\infty} \to 0\) であるため、
$$
\begin{aligned}
U(r) &= -k_0 \frac{e^2}{r}
\end{aligned}
$$
これが問(エ)で使用した位置エネルギーの式⑦となります。以降の全エネルギー \(E_n\) の計算はメイン解法と同様です。

この設問の平易な説明

公式として暗記しがちな「向心力」や「位置エネルギー」の式が、実はもっと根本的な「ニュートンの運動方程式」と「力の積分」から導き出せることを確認しました。
特に位置エネルギーのマイナス符号は、「無限の彼方から電子を引っ張ってくる間に、引力が勝手に仕事をしてくれる(自分はエネルギーを消費しないどころか、もらえる)」という物理的な意味が、積分の計算過程から自然に現れています。

結論と吟味

微積分を用いた原理的なアプローチからも、高校物理の公式と全く同じ結果が導出されました。これにより、ボーアモデルが古典力学の厳密な基礎の上に構築されていることが再確認できます。

解答 (エ) \(\displaystyle -\frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \cdot \frac{1}{n^2}\)

問(オ)

思考の道筋とポイント
電子が高いエネルギー状態(量子数 \(n\))から低いエネルギー状態(量子数 \(n’\))へ遷移するとき、余ったエネルギーが光子として放出されます。
この光子1個が持つエネルギーは、プランク定数 \(h\) と光の振動数 \(\nu\) を用いて \(h\nu\) と表されます。これを波長 \(\lambda\) を用いた式に書き換え、エネルギー準位の差と等置します。

この設問における重要なポイント

  • ボーアの振動数条件: 放出される光子のエネルギーは、遷移前後の電子のエネルギー準位の差 \(\Delta E = E_n – E_{n’}\) に等しくなります。
  • 光子のエネルギー: 光の速さ \(c\)、波長 \(\lambda\)、振動数 \(\nu\) の間には \(c = \nu \lambda\) の関係があるため、光子のエネルギーは \(E = h\nu = h\frac{c}{\lambda}\) と表せます。

具体的な解説と立式
放出される光子のエネルギーを \(\Delta E\) とすると、エネルギー保存則より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= E_n – E_{n’} \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
また、光子のエネルギーは波長 \(\lambda\) を用いて次のように表されます。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= h \frac{c}{\lambda} \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
これら2つの式から \(\Delta E\) を消去し、\(\frac{1}{\lambda}\) について解きます。

使用した物理公式

  • ボーアの振動数条件: \(h\nu = |E_n – E_{n’}|\)
  • 波の基本式: \(c = \nu \lambda\)
  • 光子のエネルギー: \(E = h\nu = h\frac{c}{\lambda}\)
計算過程

式⑬に問(エ)で求めた \(E_n\) の式を代入して \(\Delta E\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E &= \left( -\frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \cdot \frac{1}{n^2} \right) – \left( -\frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \cdot \frac{1}{n’^2} \right) \\[2.0ex] &= \frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)
\end{aligned}
$$
これを式⑭に代入します。
$$
\begin{aligned}
h \frac{c}{\lambda} &= \frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^2} \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)
\end{aligned}
$$
両辺を \(hc\) で割り、\(\frac{1}{\lambda}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{\lambda} &= \frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^3 c} \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が高い軌道(エネルギー大)から低い軌道(エネルギー小)に落ちるとき、その「落差」の分のエネルギーが光としてピカッと放出されます。光のエネルギーは波長が短いほど大きくなるという性質があるため、「落差のエネルギー」と「光の波長」をイコールで結ぶことで、どんな色の光が出るかを計算する式を作りました。

結論と吟味

得られた式は、問題文にあるリュードベリの公式 \(\frac{1}{\lambda} = R \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)\) と全く同じ形をしています。係数部分を比較することで、リュードベリ定数 \(R\) が \(R = \frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^3 c}\) という普遍的な物理定数の組み合わせで理論的に導出されたことがわかります。これはボーアモデルの最大の功績の一つです。

解答 (オ) \(\displaystyle \frac{2\pi^2 m k_0^2 e^4}{h^3 c} \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)\)

問(カ)

思考の道筋とポイント
水素原子の線スペクトルのうち、可視光線領域になるのは \(n’=2\) への遷移(バルマー系列)です。
「波長が長い」ということは、光子のエネルギー \(E = hc/\lambda\) が「小さい」ことを意味します。
したがって、\(n’=2\) に向かって落ちてくる遷移の中で、エネルギーの落差が小さい順に考えます。

この設問における重要なポイント

  • 波長とエネルギーの逆比例関係: 波長 \(\lambda\) が長いほど、エネルギー差 \(\Delta E\) は小さくなります。
  • 遷移の順序: \(n’=2\) への遷移において、エネルギー差が最も小さい(波長が最も長い)のはすぐ上の \(n=3\) からの遷移です。2番目にエネルギー差が小さい(2番目に波長が長い)のは、その次の \(n=4\) からの遷移となります。

具体的な解説と立式
問題文で与えられたリュードベリの公式を用います。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{\lambda} &= R \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right) \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$
可視光線なので \(n’=2\) です。
2番目に長い波長を求めるため、遷移前の量子数は \(n=4\) となります。
これらを式⑮に代入し、\(\lambda\) について解きます。

使用した物理公式

  • リュードベリの公式: \(\frac{1}{\lambda} = R \left( \frac{1}{n’^2} – \frac{1}{n^2} \right)\)
計算過程

式⑮に \(n’=2, n=4\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{\lambda} &= R \left( \frac{1}{2^2} – \frac{1}{4^2} \right) \\[2.0ex] &= R \left( \frac{1}{4} – \frac{1}{16} \right) \\[2.0ex] &= R \left( \frac{4}{16} – \frac{1}{16} \right) \\[2.0ex] &= R \frac{3}{16}
\end{aligned}
$$
逆数をとって \(\lambda\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{16}{3R}
\end{aligned}
$$
与えられた数値 \(R = 1.1 \times 10^7\,\text{/m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{16}{3 \times 1.1 \times 10^7} \\[2.0ex] &= \frac{16}{3.3} \times 10^{-7}
\end{aligned}
$$
割り算を実行します。
$$
\begin{aligned}
\frac{16}{3.3} &= 4.8484\dots
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
\lambda &\approx 4.84 \times 10^{-7}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、3桁目を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 4.8 \times 10^{-7}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「波長が長い光」=「エネルギーが小さい光」です。2階(\(n’=2\))に飛び降りるとき、一番エネルギーが小さいのはすぐ上の3階(\(n=3\))から飛び降りたときです。2番目にエネルギーが小さいのは、4階(\(n=4\))から飛び降りたときです。あとは、この「4階から2階へ」の条件を公式に当てはめて、分数の計算と割り算を丁寧に行うだけです。

結論と吟味

計算結果の \(4.8 \times 10^{-7}\,\text{m}\) は、問題文で指定されている可視光線領域(\(3.8 \sim 7.8 \times 10^{-7}\,\text{m}\))の範囲内にしっかりと収まっており、物理的に妥当な値です。ちなみにこの波長は、水素のスペクトルにおいて青緑色に見える「\(H_\beta\) 線」に相当します。

解答 (カ) \(4.8 \times 10^{-7}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 円運動の運動方程式と量子条件の連立
    • 核心: 古典力学の「運動方程式」と、量子力学の「物質波の定常波条件」という全く異なる2つのルールを連立させることで、ミクロな世界の「とびとびの軌道」が導き出されます。
    • 理解のポイント:
      • 運動方程式からは \(r\) と \(v\) の連続的な関係式が出ます。
      • 量子条件からは \(r\) と \(v\) が特定の整数 \(n\) に縛られる関係式が出ます。
      • これらを組み合わせることで初めて、未知数 \(v\) が消去され、\(r\) が \(n\) の関数として決定されます。
  • エネルギー準位と光子の放出
    • 核心: 電子が軌道を乗り換える(遷移する)とき、そのエネルギーの「差額」が、ちょうど1個の光子として空間に放出されます。
    • 理解のポイント:
      • エネルギー準位 \(E_n\) はマイナスの値をとります(束縛状態)。
      • 高い軌道(\(n\) が大、\(E_n\) は \(0\) に近い)から低い軌道(\(n’\) が小、\(E_n\) はより深いマイナス)へ落ちるとき、エネルギーは減少します。
      • 放出される光子のエネルギーは常に正なので、\(\Delta E = (\text{高い方のエネルギー}) – (\text{低い方のエネルギー})\) で計算します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 水素様原子(ヘリウムイオンなど)の問題: 原子核の電荷が \(+e\) ではなく \(+Ze\) (\(Z\) は原子番号)になるパターンです。運動方程式の右辺(クーロン力)と位置エネルギーの式の \(e^2\) を \(Ze^2\) に置き換えるだけで、全く同じ論理展開で解くことができます。
    • 万有引力による衛星の運動: クーロン力を万有引力 \(G\frac{Mm}{r^2}\) に置き換えると、人工衛星の運動と全く同じ数式構造になります。運動エネルギーが位置エネルギーの絶対値の半分になる関係(ビリアル定理)も共通して使えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「波長が長い/短い」の翻訳: 光の波長に関する条件が出たら、即座に \(E = hc/\lambda\) を思い出し、「波長が長い=エネルギー差が小さい」「波長が短い=エネルギー差が大きい」と脳内で翻訳します。
    2. 遷移の始点と終点の特定: 「ライマン系列(\(n’=1\))」「バルマー系列(\(n’=2\))」などのキーワードから終点を特定し、エネルギー差の条件から始点 \(n\) を決定します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 位置エネルギーの符号忘れ:
    • 誤解: 全エネルギーを計算する際、位置エネルギーをうっかりプラスにしてしまい、\(E_n\) が正の値になってしまう。
    • 対策: 「無限遠を基準とする引力による位置エネルギーは必ずマイナス(借金状態)」という物理的イメージを強く持ちましょう。計算結果がプラスになったら「電子が原子から飛んでいってしまう!」と気づけるようにします。
  • 遷移の順番の勘違い:
    • 誤解: 「2番目に長い波長」を求めるとき、\(n=2\) から数えて \(n=3\) が1番目、\(n=4\) が2番目…と正しく数えられず、\(n=1\) から数えたり、逆に無限遠から数えたりしてしまう。
    • 対策: エネルギー準位図(階段の図)を余白にサッと描き、\(n=2\) の段に向かって落ちる矢印を短い順(エネルギーが小さい順)に書き込んで視覚的に確認する癖をつけましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 全エネルギー計算での運動方程式の利用:
    • 選定理由: 運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) に直接 \(v = \frac{nh}{2\pi m r}\) を代入して計算することも可能ですが、式が非常に複雑になり計算ミスを誘発します。運動方程式 \(mv^2 = k_0\frac{e^2}{r}\) を用いて \(v\) を消去する方が、圧倒的に早く正確に計算できます。
    • 適用根拠: 電子が定常状態(等速円運動)にある限り、運動方程式は常に成立しているため、いつでもこの置き換えが可能です。
  • 微積分を用いた位置エネルギーの導出(別解):
    • 選定理由: 公式 \(U = -k_0\frac{e^2}{r}\) を忘れてしまった場合や、符号に自信が持てなくなった場合に、最も確実な原理から答えを復元できるためです。
    • 適用根拠: 位置エネルギーは「保存力がする仕事」として定義されており、クーロン力は保存力であるため、積分による導出が常に成り立ちます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元(単位)チェック:
    • 意識: 複雑な文字式を導出した後は、必ず単位が合っているか確認します。
    • 実践: 例えば問(ア)の \(r = \frac{k_0 e^2}{m v^2}\) であれば、右辺の単位が長さ \([\text{m}]\) になるかを大まかに確認します。クーロン力の式 \(F = k_0 \frac{e^2}{r^2}\) から \(k_0 e^2\) は \([\text{N} \cdot \text{m}^2]\) の次元を持つことがわかるので、\([\text{N} \cdot \text{m}^2] / ([\text{kg}] \cdot [\text{m}/\text{s}]^2) = [\text{N} \cdot \text{m}^2] / [\text{N}] = [\text{m}^2]\) となり…あれ?
      (自己修正): \(mv^2\) はエネルギーの次元 \([\text{J}] = [\text{N} \cdot \text{m}]\) です。したがって \([\text{N} \cdot \text{m}^2] / [\text{N} \cdot \text{m}] = [\text{m}]\) となり、正しく長さの次元になることが確認できます。このように、途中で気づくことが重要です。
  • 分数の引き算は最後まで残す:
    • 意識: 問(カ)のようなリュードベリの公式の計算では、途中で小数を混ぜず、分数のまま計算を進めます。
    • 実践: \(\frac{1}{4} – \frac{1}{16}\) を \(0.25 – 0.0625\) と計算するのではなく、\(\frac{3}{16}\) と分数で処理し、最後に逆数をとってから1回だけ割り算を行うことで、計算誤差とミスを最小限に抑えられます。

問題155 原子核 (19 大阪市大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)
      • 模範解答が運動量保存則とエネルギー保存則を既知として立式するのに対し、別解では分裂時の内力による運動方程式を時間積分・空間積分することで、両保存則を原理から導出します。
    • 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の空間積分によるエネルギー保存則の導出)
      • 模範解答が静電気力による位置エネルギーの公式を既知とするのに対し、別解ではクーロン力による運動方程式を空間積分することで、エネルギー保存則を自力で導出します。
    • 設問(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法(放射性崩壊の微分方程式からの導出)
      • 模範解答が半減期の公式を既知とするのに対し、別解では「崩壊速度が原子核数に比例する」という微分方程式から半減期の公式を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 公式の丸暗記から脱却し、物理現象の根本的な原理(運動方程式や微分方程式)から結果を導き出す力を養うことができます。
    • 未知の力や複雑な設定の問題に出会った際にも、原理に立ち返って自力で関係式を構築する応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

原子核の崩壊と核反応に伴うエネルギー保存、および放射性崩壊の法則に関する総合問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 質量とエネルギーの等価性: 質量欠損 \(\Delta m\) は、\(E = \Delta m c^2\) の関係でエネルギーに変換されます。
  • 分裂における保存則: 外力が働かない静止物体からの分裂では、運動量と力学的エネルギーが保存されます。
  • 放射性崩壊の法則: 原子核の数は、半減期ごとに半分になるという指数関数的な減少を示します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 問(1)(2)では、質量欠損から発生エネルギーを求め、それを運動量保存則を用いて2つの粒子に分配します。
  • 問(3)では、クーロン力による位置エネルギーを考慮した力学的エネルギー保存則を立式します。
  • 問(4)(5)では、崩壊による質量数・原子番号の変化ルールと、半減期の公式を用いて計算します。
  • 問(6)では、与えられた質量から原子核の個数を求め、1個あたりの放出エネルギーを掛け合わせて総エネルギーを算出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
\(\alpha\) 崩壊の前後での質量の変化(質量欠損)を計算し、アインシュタインの質量とエネルギーの等価性の式を用いて、発生する運動エネルギーを求めます。

この設問における重要なポイント

  • 質量欠損: 反応前の質量から反応後の質量の和を引いた値。
  • 質量とエネルギーの等価性: 失われた質量がエネルギーに変換されます。

具体的な解説と立式
反応前の原子核 \(\text{X}\) の質量は \(M_0\) です。
反応後の原子核 \(\text{Y}\) と \(\alpha\) 粒子の質量の和は \(M_1 + m\) です。
質量欠損 \(\Delta m\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= M_0 – (M_1 + m) \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
発生するエネルギー \(E\) は、質量とエネルギーの等価性の式より、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= \Delta m c^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価性: \(E = mc^2\)
計算過程

式①を式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \{M_0 – (M_1 + m)\} c^2 \\[2.0ex] &= (M_0 – M_1 – m) c^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

原子核が分裂すると、分裂後の破片の質量の合計は、元の質量よりも少しだけ軽くなります。この消えてしまった質量が、莫大なエネルギーに変わります。

結論と吟味

問題文の条件 \(M_0 > M_1 + m\) より、\(\Delta m > 0\) となるため、エネルギー \(E\) は正の値となり、エネルギーが放出される反応であることが確認できます。

解答 (1) \((M_0 – M_1 – m) c^2\)

問(2)

思考の道筋とポイント
静止していた原子核が分裂する際、外部から力が働かないため、運動量保存則が成り立ちます。また、問(1)で求めた発生エネルギーが、分裂後の2つの粒子の運動エネルギーの和になります。これら2つの保存則を連立させて解きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 分裂前後で系の運動量の和は一定です。
  • エネルギー保存則: 発生した総エネルギーが、各粒子の運動エネルギーに分配されます。

具体的な解説と立式
分裂後の原子核 \(\text{Y}\) の速さを \(v_{\text{Y}}\)、\(\alpha\) 粒子の速さを \(v_{\alpha}\) とします。
\(\text{Y}\) が左向き、\(\alpha\) 粒子が右向きに飛んでいくと仮定し、右向きを正とします。
運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{分裂前の運動量の和}) &= (\text{分裂後の運動量の和}) \\[2.0ex] 0 &= m v_{\alpha} – M_1 v_{\text{Y}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、発生したエネルギー \(E\) がそれぞれの運動エネルギーになるため、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{発生したエネルギー}) &= (\text{分裂後の運動エネルギーの和}) \\[2.0ex] E &= \frac{1}{2} M_1 v_{\text{Y}}^2 + \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
求める \(\alpha\) 粒子の運動エネルギー \(K_{\alpha}\) は、以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &= \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = \text{一定}\)
  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2} m v^2\)
計算過程

式③より \(v_{\text{Y}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
M_1 v_{\text{Y}} &= m v_{\alpha} \\[2.0ex] v_{\text{Y}} &= \frac{m}{M_1} v_{\alpha}
\end{aligned}
$$
これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{2} M_1 \left( \frac{m}{M_1} v_{\alpha} \right)^2 + \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} M_1 \frac{m^2}{M_1^2} v_{\alpha}^2 + \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \\[2.0ex] &= \frac{m^2}{2 M_1} v_{\alpha}^2 + \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 \left( \frac{m}{M_1} + 1 \right)
\end{aligned}
$$
ここで、式⑤の \(K_{\alpha} = \frac{1}{2} m v_{\alpha}^2\) を代入し、括弧内を通分します。
$$
\begin{aligned}
E &= K_{\alpha} \left( \frac{m + M_1}{M_1} \right)
\end{aligned}
$$
\(K_{\alpha}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &= \frac{M_1}{M_1 + m} E
\end{aligned}
$$
問(1)の結果 \(E = (M_0 – M_1 – m) c^2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\alpha} &= \frac{M_1}{M_1 + m} (M_0 – M_1 – m) c^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

爆発して2つに割れるとき、軽い破片と重い破片では、軽い破片の方が速く飛び出します。運動量が同じになるように分配されるため、運動エネルギーは質量の逆比で分配されます。\(\alpha\) 粒子の方が軽いので、発生したエネルギーの多くを受け取ります。

結論と吟味

エネルギーが \(M_1\) と \(m\) の比で分配されており、質量の逆比(軽い方が多くのエネルギーをもらう)になっているため、物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{M_1}{M_1 + m} (M_0 – M_1 – m) c^2\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
分裂時に2つの粒子間に働く内力(斥力)を時間積分・空間積分することで、運動量保存則とエネルギー保存則を原理から導出します。

この設問における重要なポイント

  • 作用・反作用の法則
  • 運動方程式の時間積分: 力積と運動量の関係
  • 運動方程式の空間積分: 仕事と運動エネルギーの関係

具体的な解説と立式
分裂の瞬間から完全に離れるまでの間、\(\alpha\) 粒子が \(\text{Y}\) から受ける右向きの力を \(F(t)\) とします。作用・反作用の法則により、\(\text{Y}\) は \(\alpha\) 粒子から左向きに大きさ \(F(t)\) の力を受けます。
右向きを正とし、それぞれの速度を \(v_{\alpha}\)、\(v_{\text{Y}}\) とします。
運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv_{\alpha}}{dt} &= F(t) \quad \cdots ⑥ \\[2.0ex] M_1 \frac{dv_{\text{Y}}}{dt} &= -F(t) \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 微積分の基本定理
計算過程

式⑥と式⑦を辺々足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv_{\alpha}}{dt} + M_1 \frac{dv_{\text{Y}}}{dt} &= 0 \\[2.0ex] \frac{d}{dt} (m v_{\alpha} + M_1 v_{\text{Y}}) &= 0
\end{aligned}
$$
これを時間 \(t\) で積分します。初期状態(\(t=0\))では両者とも静止(速度 \(0\))していました。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t} \frac{d}{dt} (m v_{\alpha} + M_1 v_{\text{Y}}) dt &= \int_{0}^{t} 0 dt \\[2.0ex] \left[ m v_{\alpha} + M_1 v_{\text{Y}} \right]_{0}^{t} &= 0 \\[2.0ex] m v_{\alpha} + M_1 v_{\text{Y}} – 0 &= 0 \\[2.0ex] m v_{\alpha} + M_1 v_{\text{Y}} &= 0
\end{aligned}
$$
ここで、\(\text{Y}\) の速度の大きさを \(V_{\text{Y}}\) とすると、\(v_{\text{Y}} = -V_{\text{Y}}\) となり、メイン解法の式③と同じ運動量保存則が得られます。
次に、式⑥の両辺に \(v_{\alpha} = \frac{dx_{\alpha}}{dt}\) を掛け、式⑦の両辺に \(v_{\text{Y}} = \frac{dx_{\text{Y}}}{dt}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
m v_{\alpha} \frac{dv_{\alpha}}{dt} &= F(t) \frac{dx_{\alpha}}{dt} \\[2.0ex] M_1 v_{\text{Y}} \frac{dv_{\text{Y}}}{dt} &= -F(t) \frac{dx_{\text{Y}}}{dt}
\end{aligned}
$$
これらを辺々足し合わせ、時間 \(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \left( m v_{\alpha} \frac{dv_{\alpha}}{dt} + M_1 v_{\text{Y}} \frac{dv_{\text{Y}}}{dt} \right) dt &= \int F(t) \left( \frac{dx_{\alpha}}{dt} – \frac{dx_{\text{Y}}}{dt} \right) dt \\[2.0ex] \int m v_{\alpha} dv_{\alpha} + \int M_1 v_{\text{Y}} dv_{\text{Y}} &= \int F(t) d(x_{\alpha} – x_{\text{Y}})
\end{aligned}
$$
左辺は運動エネルギーの変化、右辺は内力がした相対的な仕事(これが放出されたエネルギー \(E\) に相当します)を表します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v_{\alpha}^2 + \frac{1}{2} M_1 v_{\text{Y}}^2 &= E
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の式④と同じエネルギー保存則です。
以降の計算はメイン解法と全く同じであるため、結果も一致します。

この設問の平易な説明

「運動量保存則」や「エネルギー保存則」は、天下り的に与えられるものではなく、ニュートンの運動方程式から数学的に導き出せるものです。お互いに押し合う力を時間で足し合わせると運動量が保存し、距離で足し合わせるとエネルギーが保存することが確認できました。

結論と吟味

運動方程式という基本原理から出発しても、全く同じ保存則が導かれ、同じ結果が得られることが確認できました。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{M_1}{M_1 + m} (M_0 – M_1 – m) c^2\)

問(3)

思考の道筋とポイント
\(\alpha\) 粒子が \(\text{Au}\) 原子核に近づくにつれて、静電気力(クーロン力)による斥力を受け、減速します。最も近づいた瞬間、\(\alpha\) 粒子の速さは \(0\) になります。この過程で力学的エネルギーが保存されます。

この設問における重要なポイント

  • 静電気力による位置エネルギー
  • 力学的エネルギー保存則

具体的な解説と立式
無限遠点での \(\alpha\) 粒子の運動エネルギーは \(K\)、位置エネルギーは \(0\) です。
最も近づいたときの距離を \(r\) とします。このとき、\(\alpha\) 粒子の速さは \(0\) なので運動エネルギーは \(0\) です。
\(\text{Au}\) 原子核の電荷は \(+79e\)、\(\alpha\) 粒子の電荷は \(+2e\) です。
距離 \(r\) における静電気力による位置エネルギー \(U\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
U &= k_0 \frac{(+79e)(+2e)}{r} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
力学的エネルギー保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{無限遠での力学的エネルギー}) &= (\text{最接近時の力学的エネルギー}) \\[2.0ex] K + 0 &= 0 + U \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 点電荷のまわりの電位: \(V = k_0 \frac{Q}{r}\)
  • 静電気力による位置エネルギー: \(U = qV = k_0 \frac{qQ}{r}\)
  • 力学的エネルギー保存則
計算過程

式⑧を式⑨に代入します。
$$
\begin{aligned}
K &= k_0 \frac{79e \cdot 2e}{r} \\[2.0ex] K &= \frac{158 k_0 e^2}{r}
\end{aligned}
$$
\(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{158 k_0 e^2}{K}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

\(\alpha\) 粒子はプラスの電気を持っており、金原子核もプラスの電気を持っています。プラス同士は反発し合うため、\(\alpha\) 粒子は金原子核に近づくにつれてブレーキをかけられます。持っていた運動エネルギーがすべて「反発力に逆らって近づくためのエネルギー(位置エネルギー)」に変わった瞬間が、一番近づいたときです。

結論と吟味

運動エネルギー \(K\) が大きいほど、より近くまで接近できるため \(r\) は小さくなります。式も \(K\) が分母にあり、この直感と一致します。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{158 k_0 e^2}{K}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
クーロン力による運動方程式を立て、それを空間積分することで、エネルギー保存則を自力で導出します。

この設問における重要なポイント

  • クーロンの法則
  • 運動方程式の空間積分

具体的な解説と立式
\(\text{Au}\) 原子核を原点とし、\(\alpha\) 粒子が \(x\) 軸の正の無限遠から負の向きに近づいてくるとします。
任意の位置 \(x\) における \(\alpha\) 粒子(質量 \(m\)、電荷 \(+2e\))が受けるクーロン力 \(F\) は、正の向き(遠ざかる向き)に働きます。
$$
\begin{aligned}
F &= k_0 \frac{(+79e)(+2e)}{x^2} \\[2.0ex] &= \frac{158 k_0 e^2}{x^2} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
\(\alpha\) 粒子の速度を \(v\) とすると、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= F \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • クーロンの法則: \(F = k_0 \frac{q_1 q_2}{r^2}\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 合成関数の微分: \(\frac{dv}{dt} = \frac{dv}{dx} \frac{dx}{dt} = v \frac{dv}{dx}\)
計算過程

加速度 \(\frac{dv}{dt}\) を位置 \(x\) の微分に変換します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dv}{dt} &= \frac{dv}{dx} \frac{dx}{dt} \\[2.0ex] &= v \frac{dv}{dx}
\end{aligned}
$$
これを式⑪に代入し、式⑩も代入します。
$$
\begin{aligned}
m v \frac{dv}{dx} &= \frac{158 k_0 e^2}{x^2}
\end{aligned}
$$
両辺を \(x\) で積分します。積分区間は、無限遠(\(x = \infty\)、速さ \(v_0\))から最接近時(\(x = r\)、速さ \(0\))までとします。
$$
\begin{aligned}
\int_{v_0}^{0} m v dv &= \int_{\infty}^{r} \frac{158 k_0 e^2}{x^2} dx \\[2.0ex] \left[ \frac{1}{2} m v^2 \right]_{v_0}^{0} &= \left[ – \frac{158 k_0 e^2}{x} \right]_{\infty}^{r} \\[2.0ex] 0 – \frac{1}{2} m v_0^2 &= – \frac{158 k_0 e^2}{r} – \left( – \frac{158 k_0 e^2}{\infty} \right) \\[2.0ex] – \frac{1}{2} m v_0^2 &= – \frac{158 k_0 e^2}{r} – 0
\end{aligned}
$$
無限遠での運動エネルギーは \(K = \frac{1}{2} m v_0^2\) なので、
$$
\begin{aligned}
-K &= – \frac{158 k_0 e^2}{r} \\[2.0ex] K &= \frac{158 k_0 e^2}{r}
\end{aligned}
$$
\(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
r &= \frac{158 k_0 e^2}{K}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

クーロン力という「距離の2乗に反比例する力」を、距離について積分(足し合わせ)すると、「距離に反比例する位置エネルギー」の式が現れます。運動方程式を積分することで、公式を暗記していなくてもエネルギー保存則を導き出すことができます。

結論と吟味

原理的なアプローチからも、メイン解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{158 k_0 e^2}{K}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
\(\alpha\) 崩壊と \(\beta\) 崩壊による質量数と原子番号の変化を追跡し、連立方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • \(\alpha\) 崩壊: 質量数が \(4\) 減少し、原子番号が \(2\) 減少する。
  • \(\beta\) 崩壊: 質量数は変化せず、原子番号が \(1\) 増加する。

具体的な解説と立式
元の原子核は \({}_{92}^{235}\text{U}\)(質量数 \(235\)、原子番号 \(92\))です。
最終的な原子核は \({}_{88}^{223}\text{Ra}\)(質量数 \(223\)、原子番号 \(88\))です。
\(n\) 回の \(\alpha\) 崩壊と \(k\) 回の \(\beta\) 崩壊が起きたとします。
質量数の変化についての方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{最初の質量数}) – 4 \times (\alpha\text{崩壊の回数}) + 0 \times (\beta\text{崩壊の回数}) &= (\text{最後の質量数}) \\[2.0ex] 235 – 4n &= 223 \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
原子番号の変化についての方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{最初の原子番号}) – 2 \times (\alpha\text{崩壊の回数}) + 1 \times (\beta\text{崩壊の回数}) &= (\text{最後の原子番号}) \\[2.0ex] 92 – 2n + k &= 88 \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(崩壊の定義)
計算過程

式⑫より \(n\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
4n &= 235 – 223 \\[2.0ex] 4n &= 12 \\[2.0ex] n &= 3
\end{aligned}
$$
求めた \(n=3\) を式⑬に代入し、\(k\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
92 – 2 \cdot 3 + k &= 88 \\[2.0ex] 92 – 6 + k &= 88 \\[2.0ex] 86 + k &= 88 \\[2.0ex] k &= 2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

\(\alpha\) 粒子はヘリウムの原子核(陽子2個、中性子2個)なので、これが出ると重さ(質量数)が4減り、陽子の数(原子番号)が2減ります。\(\beta\) 粒子は電子なので、中性子が陽子と電子に分かれて電子が飛び出す現象です。そのため重さは変わらず、陽子の数が1増えます。このルールに従ってパズルを解くように回数を求めます。

結論と吟味

\(n\)、\(k\) ともに正の整数となり、物理的な回数として妥当です。

解答 (4) \(n=3\), \(k=2\)

問(5)

思考の道筋とポイント
半減期の公式を用いて、\(4.5 \times 10^9\) 年前の原子核の数をそれぞれ逆算し、その比を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)

具体的な解説と立式
現在の \({}_{92}^{235}\text{U}\) の数を \(N_{\text{A}}\)、\({}_{92}^{238}\text{U}\) の数を \(N_{\text{B}}\) とします。
問題文より、現在の存在比は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\frac{N_{\text{A}}}{N_{\text{B}}} &= \frac{1}{140} \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
\(t = 4.5 \times 10^9\) 年前の \({}_{92}^{235}\text{U}\) の数を \(N_{\text{A初}}\)、\({}_{92}^{238}\text{U}\) の数を \(N_{\text{B初}}\) とします。
\({}_{92}^{235}\text{U}\) の半減期 \(T_{\text{A}} = 7.5 \times 10^8\) 年より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
N_{\text{A}} &= N_{\text{A初}} \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T_{\text{A}}}} \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$
\({}_{92}^{238}\text{U}\) の半減期 \(T_{\text{B}} = 4.5 \times 10^9\) 年より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
N_{\text{B}} &= N_{\text{B初}} \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T_{\text{B}}}} \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
計算過程

まず、それぞれの指数部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{t}{T_{\text{A}}} &= \frac{4.5 \times 10^9}{7.5 \times 10^8} \\[2.0ex] &= \frac{45 \times 10^8}{7.5 \times 10^8} \\[2.0ex] &= 6
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{t}{T_{\text{B}}} &= \frac{4.5 \times 10^9}{4.5 \times 10^9} \\[2.0ex] &= 1
\end{aligned}
$$
これらを式⑮、⑯に代入します。
$$
\begin{aligned}
N_{\text{A}} &= N_{\text{A初}} \left( \frac{1}{2} \right)^6 \\[2.0ex] N_{\text{B}} &= N_{\text{B初}} \left( \frac{1}{2} \right)^1
\end{aligned}
$$
式⑭に代入して比を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{N_{\text{A初}} \left( \frac{1}{2} \right)^6}{N_{\text{B初}} \left( \frac{1}{2} \right)^1} &= \frac{1}{140} \\[2.0ex] \frac{N_{\text{A初}}}{N_{\text{B初}}} \left( \frac{1}{2} \right)^5 &= \frac{1}{140} \\[2.0ex] \frac{N_{\text{A初}}}{N_{\text{B初}}} \frac{1}{32} &= \frac{1}{140} \\[2.0ex] \frac{N_{\text{A初}}}{N_{\text{B初}}} &= \frac{32}{140}
\end{aligned}
$$
分母と分子を \(4\) で約分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{N_{\text{A初}}}{N_{\text{B初}}} &= \frac{8}{35}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

半減期とは、原子核の数が半分に減るまでにかかる時間です。\({}_{92}^{235}\text{U}\) は \(45\) 億年の間に半減期(\(7.5\) 億年)を \(6\) 回迎えるので、数は \((1/2)^6 = 1/64\) に減っています。一方、\({}_{92}^{238}\text{U}\) は半減期(\(45\) 億年)をちょうど \(1\) 回迎えるので、数は \(1/2\) に減っています。現在残っている数から、減る前の数を逆算して比を求めました。

結論と吟味

\({}_{92}^{235}\text{U}\) の方が半減期が短く、速く減少するため、昔は今よりも相対的に多く存在していたはずです。現在の比 \(1:140\)(約 \(0.007\))に対し、昔の比 \(8:35\)(約 \(0.23\))となっており、直感と一致します。

解答 (5) \(8 : 35\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
放射性崩壊の基本原理である「単位時間あたりの崩壊数は、その瞬間に存在する原子核の数に比例する」という微分方程式から、半減期の公式を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 崩壊定数 \(\lambda\)
  • 微分方程式の変数分離形

具体的な解説と立式
時刻 \(t\) における原子核の数を \(N(t)\) とします。微小時間 \(dt\) の間に崩壊する数 \(-dN\) は、\(N(t)\) に比例します。比例定数(崩壊定数)を \(\lambda\) とすると、以下の微分方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dN}{dt} &= -\lambda N \quad \cdots ⑰
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 放射性崩壊の微分方程式: \(\frac{dN}{dt} = -\lambda N\)
  • 積分公式: \(\int \frac{1}{x} dx = \ln |x| + C\)
計算過程

式⑰を変数分離して積分します。初期状態(\(t=0\))の数を \(N_0\) とします。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{N} dN &= -\lambda dt \\[2.0ex] \int_{N_0}^{N} \frac{1}{N} dN &= \int_{0}^{t} -\lambda dt \\[2.0ex] \left[ \ln N \right]_{N_0}^{N} &= \left[ -\lambda t \right]_{0}^{t} \\[2.0ex] \ln N – \ln N_0 &= -\lambda t \\[2.0ex] \ln \frac{N}{N_0} &= -\lambda t \\[2.0ex] \frac{N}{N_0} &= e^{-\lambda t} \\[2.0ex] N &= N_0 e^{-\lambda t} \quad \cdots ⑱
\end{aligned}
$$
半減期 \(T\) は、\(N = \frac{N_0}{2}\) となる時間なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{N_0}{2} &= N_0 e^{-\lambda T} \\[2.0ex] \frac{1}{2} &= e^{-\lambda T} \\[2.0ex] 2 &= e^{\lambda T} \\[2.0ex] \ln 2 &= \lambda T \\[2.0ex] \lambda &= \frac{\ln 2}{T}
\end{aligned}
$$
これを式⑱に代入します。
$$
\begin{aligned}
N &= N_0 e^{-\left(\frac{\ln 2}{T}\right) t} \\[2.0ex] &= N_0 \left( e^{\ln 2} \right)^{-\frac{t}{T}} \\[2.0ex] &= N_0 \cdot 2^{-\frac{t}{T}} \\[2.0ex] &= N_0 \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}}
\end{aligned}
$$
これでメイン解法で使用した半減期の公式が導出されました。以降の計算はメイン解法と全く同じです。

この設問の平易な説明

「今ある数に比例して減っていく」という自然界のルールを数式(微分方程式)で表し、それを解くことで「時間が経つと指数関数的に減る」という公式を自力で作り出しました。公式を忘れても、この基本ルールからいつでも導き出すことができます。

結論と吟味

微分方程式から導出した式が、教科書の公式と完全に一致しました。

解答 (5) \(8 : 35\)

問(6)

思考の道筋とポイント
与えられた質量からウラン原子核の個数を計算し、1個あたりの放出エネルギーを掛け合わせて総エネルギーを求めます。単位の換算(\(\text{eV}\) から \(\text{J}\)、\(\text{kg}\) から \(\text{g}\))に注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 物質量(\(\text{mol}\))とアボガドロ定数
  • 電子ボルト(\(\text{eV}\))とジュール(\(\text{J}\))の換算

具体的な解説と立式
\(1\) 秒間に核分裂する \({}_{92}^{235}\text{U}\) の質量 \(w\) は \(1.1 \times 10^{-7}\,\text{kg}\) です。これをグラム(\(\text{g}\))に直します。
$$
\begin{aligned}
w &= 1.1 \times 10^{-7} \times 10^3\,\text{g} \\[2.0ex] &= 1.1 \times 10^{-4}\,\text{g} \quad \cdots ⑲
\end{aligned}
$$
\({}_{92}^{235}\text{U}\) のモル質量 \(M\) は \(235\,\text{g}/\text{mol}\) なので、物質量 \(n_{\text{モル}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
n_{\text{モル}} &= \frac{w}{M} \quad \cdots ⑳
\end{aligned}
$$
原子核の総数 \(N\) は、アボガドロ定数 \(N_{\text{A}}\) を用いて以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
N &= n_{\text{モル}} N_{\text{A}} \quad \cdots ㉑
\end{aligned}
$$
\(1\) 個あたりの放出エネルギー \(E_1\) は \(2.0 \times 10^8\,\text{eV}\) です。これをジュール(\(\text{J}\))に換算します。
$$
\begin{aligned}
E_{1\text{ジュール}} &= E_1 \times e \quad \cdots ㉒
\end{aligned}
$$
\(1\) 秒間に放出される総エネルギー \(Q\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q &= N \times E_{1\text{ジュール}} \quad \cdots ㉓
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 物質量と個数の関係: \(N = n_{\text{モル}} N_{\text{A}}\)
  • エネルギーの単位換算: \(1\,\text{eV} = e\,\text{J}\)
計算過程

式⑲、⑳、㉑より、原子核の総数 \(N\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{1.1 \times 10^{-4}}{235} \times 6.0 \times 10^{23}
\end{aligned}
$$
式㉒より、\(1\) 個あたりのエネルギー \(E_{1\text{ジュール}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E_{1\text{ジュール}} &= 2.0 \times 10^8 \times 1.6 \times 10^{-19}
\end{aligned}
$$
これらを式㉓に代入して総エネルギー \(Q\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \left( \frac{1.1 \times 10^{-4}}{235} \times 6.0 \times 10^{23} \right) \times \left( 2.0 \times 10^8 \times 1.6 \times 10^{-19} \right) \\[2.0ex] &= \frac{1.1 \times 6.0 \times 2.0 \times 1.6}{235} \times 10^{-4 + 23 + 8 – 19} \\[2.0ex] &= \frac{6.6 \times 3.2}{235} \times 10^8 \\[2.0ex] &= \frac{21.12}{235} \times 10^8 \\[2.0ex] &\approx 0.08987 \times 10^8 \\[2.0ex] &= 8.987 \times 10^6
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めます。
$$
\begin{aligned}
Q &\approx 9.0 \times 10^6\,\text{J}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まずは、与えられたウランの重さの中に、ウラン原子が何個入っているかを計算します。重さを1モルあたりの重さで割ってモル数を出し、それにアボガドロ定数を掛ければ個数が出ます。次に、原子1個が割れたときに出るエネルギーを、使い慣れたジュールという単位に直します。最後に、「原子の個数」と「1個あたりのエネルギー」を掛け合わせれば、全体のエネルギーが求まります。

結論と吟味

\(1.1 \times 10^{-7}\,\text{kg}\) というごくわずかな質量から、約 \(9.0\,\text{MJ}\)(メガジュール)という莫大なエネルギーが放出されています。これは核分裂反応の特徴をよく表しており、妥当な結果です。

解答 (6) \(9.0 \times 10^6\,\text{J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 質量とエネルギーの等価性
    • 核心: 核反応の前後で失われた質量(質量欠損)は、\(E=mc^2\) の関係に従って莫大な運動エネルギーとして放出されます。
    • 理解のポイント:
      • 反応前の質量の総和と、反応後の質量の総和を比較し、減った分がエネルギーに変わります。
      • このエネルギーが、分裂して飛び出す粒子たちの運動エネルギーの源になります。
  • 分裂における運動量保存則とエネルギー保存則
    • 核心: 静止した原子核が内力のみで分裂する場合、系全体の運動量は \(0\) に保たれ、発生したエネルギーは各粒子に分配されます。
    • 理解のポイント:
      • 外力が働かないため運動量が保存されます。
      • 運動量が等しく分配される結果、運動エネルギーは質量の逆比(軽い粒子ほど大きなエネルギーを持つ)で分配されます。
  • 放射性崩壊の法則(半減期)
    • 核心: 不安定な原子核は、一定の確率で崩壊し、その数は時間とともに指数関数的に減少します。
    • 理解のポイント:
      • 半減期 \(T\) が経過するごとに、残存する原子核の数は半分になります。
      • 「単位時間あたりの崩壊数が現在の数に比例する」という微分方程式が根本的な原理です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 核融合反応や他の崩壊問題: \(\alpha\) 崩壊だけでなく、\(\beta\) 崩壊や核融合反応でも、質量欠損からエネルギーを求めるアプローチは全く同じです。反応式を書き、前後の質量差を計算します。
    • 荷電粒子の散乱問題(ラザフォード散乱): 問(3)のような問題は、陽子や他の原子核を標的にした場合でも出題されます。クーロン力による位置エネルギーと運動エネルギーの保存則を立てる手順は共通です。
    • 年代測定問題: 問(5)のような同位体の存在比から年代を推定する問題は頻出です。半減期の公式を用いて、現在と過去の個数の比を立式します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 外力の有無を確認する: 分裂や衝突の問題では、まず系全体に外力が働いているかを確認し、働いていなければ「運動量保存則」を立式します。
    2. 単位のトラップに警戒する: 質量が \(\text{kg}\) か \(\text{g}\) か、エネルギーが \(\text{J}\) か \(\text{eV}\) かを問題文から正確に読み取り、計算前に必ず統一します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 運動エネルギーの分配比率の誤解:
    • 誤解: 発生したエネルギーが、質量の比(重い方が多くもらう)で分配されると勘違いしてしまう。
    • 対策: 運動量 \(p\) が等しいとき、運動エネルギーは \(K = \frac{p^2}{2m}\) と表せるため、質量 \(m\) に反比例することを常に意識しましょう。「軽い方が速く飛ぶからエネルギーも大きい」と直感と結びつけて覚えます。
  • 単位換算のミス(特に質量とエネルギー):
    • 誤解: 問(6)で、質量の単位 \(\text{kg}\) をそのままモル質量の計算(\(\text{g}/\text{mol}\))に使ってしまったり、\(\text{eV}\) をそのまま \(\text{J}\) として計算してしまう。
    • 対策: 計算式を立てる際、数値だけでなく単位も一緒に書き込む(次元解析)癖をつけましょう。\(1\,\text{eV} = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{J}\) のような換算係数は、代入する前に必ず確認します。
  • 崩壊回数の連立方程式の立て間違い:
    • 誤解: \(\beta\) 崩壊で原子番号が「減る」と勘違いしたり、質量数が変わると勘違いして式を立ててしまう。
    • 対策: \(\alpha\) 粒子は \({}_{2}^{4}\text{He}\)、\(\beta\) 粒子は \({}_{-1}^{0}\text{e}\) であることを思い出し、反応式を余白に書いてから「質量数の保存」と「原子番号の保存」の式を立てるようにします。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動量保存則とエネルギー保存則の連立(問2):
    • 選定理由: 分裂後の2つの粒子の速度(または運動エネルギー)という2つの未知数を求めるため、独立した2つの関係式が必要だからです。
    • 適用根拠: 「静止していた」「外力がはたらくことなく」という問題文の記述が、運動量保存則と力学的エネルギー保存則が成立する物理的条件を満たしています。
  • 力学的エネルギー保存則(問3):
    • 選定理由: 距離 \(r\) と速さ(運動エネルギー)の関係を直接結びつけることができるため、運動方程式を解くよりも圧倒的に早く答えにたどり着けます。
    • 適用根拠: クーロン力は保存力であり、非保存力による仕事が存在しないため、力学的エネルギーが保存されます。
  • 微積分を用いた体系的解法(別解):
    • 選定理由: 公式の丸暗記に頼らず、物理の基本原理(運動方程式や微分方程式)から現象を数学的に記述し、結果を自力で導き出すためです。
    • 適用根拠: ニュートンの運動方程式や、崩壊確率の比例関係は、古典物理学および放射性崩壊の最も基本的な原理であり、常に成立します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 指数計算(10のべき乗)の分離:
    • 意識: 問(6)のような非常に大きい数と小さい数が混在する計算では、桁数のミスが命取りになります。
    • 実践: 有効数字の部分(例:\(1.1 \times 6.0 \times 2.0 \times 1.6\))と、10のべき乗の部分(例:\(10^{-4+23+8-19}\))を完全に分けて計算し、最後に合体させる手順を徹底します。
  • 文字式の次元チェック(ディメンションチェック):
    • 意識: 導き出した文字式が、物理的に正しい単位を持っているかを確認します。
    • 実践: 問(2)の答え \(\frac{M_1}{M_1+m} E\) では、係数部分が \(\frac{\text{質量}}{\text{質量}}\) で無次元となり、全体としてエネルギー \(E\) の次元を持つことが確認できます。問(3)の答えも、\(k_0 \frac{e^2}{K}\) が距離の次元になるかを確認します。
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問題156 核反応で生じるエネルギー (16 名古屋市大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)の別解1: 運動量ベクトルの幾何学的関係(直角三角形)を用いた解法
      • 模範解答が運動量の \(x\) 成分と \(y\) 成分をそれぞれ立式して三角関数を消去するのに対し、別解1では運動量ベクトルが直角三角形を形成することに着目し、三平方の定理から直接関係式を導きます。
    • 設問(2)および(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による保存則の導出)
      • 模範解答が運動量保存則とエネルギー保存則を既知として立式するのに対し、別解2では衝突・分裂時の内力による運動方程式を時間積分・空間積分することで、両保存則を原理から導出します。設問(2)では1次元、設問(4)では2次元ベクトル形式で解説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 幾何学的な解法は、複雑な三角関数の計算を回避し、計算ミスを劇的に減らす実戦的なテクニックとして非常に有効です。
    • 微積分を用いた解法は、公式の丸暗記から脱却し、物理現象の根本的な原理(運動方程式)から結果を導き出す力を養うことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

原子炉内で起こる一連の核反応に伴う、エネルギーの発生と粒子の運動を追跡する総合問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 結合エネルギーと質量欠損: 原子核をばらばらの核子に分解するために必要なエネルギーが結合エネルギーです。反応前後の結合エネルギーの差が、反応によって放出(または吸収)されるエネルギーとなります。
  • 分裂における保存則: 静止した系からの分裂では、外力が働かないため運動量が保存され、発生したエネルギーは各粒子の運動エネルギーに分配されます。
  • 2次元の衝突: 平面上での衝突や分裂では、運動量ベクトルが保存されます。成分ごとに立式するか、ベクトル図を描いて幾何学的に解くアプローチが有効です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 問(1)では、反応前後の結合エネルギーの総和を比較し、生じるエネルギーを求めます。
  • 問(2)では、1次元の運動量保存則とエネルギー保存則を連立させて、特定の粒子の運動エネルギーを求めます。
  • 問(3)では、新たな核反応で生じるエネルギーを計算し、反応前の運動エネルギーと足し合わせます。
  • 問(4)では、2次元の運動量保存則とエネルギー保存則を連立させ、三角関数を消去して目的の運動エネルギーを導き出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
核反応Aの前後で、系全体の結合エネルギーがどのように変化したかを考えます。結合エネルギーとは「原子核をばらばらの核子にするために必要なエネルギー」です。反応前の状態から一旦すべての核子をばらばらにし、そこから再び反応後の原子核を組み立てると想像すると、エネルギーの収支が分かりやすくなります。

この設問における重要なポイント

  • 結合エネルギーの差: 反応後の結合エネルギーの和から、反応前の結合エネルギーの和を引いたものが、外部に放出されるエネルギーになります。
  • 中性子の結合エネルギー: 単独の中性子 \({}^1\text{n}\) はすでに「ばらばら」の状態なので、結合エネルギーは \(0\) です。

具体的な解説と立式
模範解答の図aを参照します。
反応前の原子核は \({}^6\text{Li}\) と \({}^1\text{n}\) です。これらの結合エネルギーの和を \(E_{\text{前}}\) とします。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{前}} &= 32.0 + 0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
反応後の原子核は \({}^4\text{He}\) と \({}^3\text{H}\) です。これらの結合エネルギーの和を \(E_{\text{後}}\) とします。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{後}} &= 28.3 + 8.5 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
核反応Aにより生じるエネルギー \(\Delta E_{\text{A}}\) は、反応前後の結合エネルギーの差となります。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{A}} &= E_{\text{後}} – E_{\text{前}} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(エネルギー保存の法則と結合エネルギーの定義)
計算過程

式①、②を式③に代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{A}} &= (28.3 + 8.5) – 32.0 \\[2.0ex] &= 36.8 – 32.0 \\[2.0ex] &= 4.8\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

レゴブロックで作られた作品(原子核)を一度すべてバラバラのパーツ(核子)に分解し、別の作品に組み替えることを想像してください。最初の作品を壊すのに必要なエネルギーよりも、新しい作品を組み立てたときに放出されるエネルギーの方が大きければ、その差額のエネルギーが外に飛び出してきます。これが核反応で生じるエネルギーです。

結論と吟味

計算結果は正の値となり、エネルギーが放出される発熱反応であることが確認できます。原子炉内でエネルギーを取り出す反応として妥当です。

解答 (1) \(4.8\,\text{MeV}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
静止していた状態から2つの粒子に分裂するため、外力は働かず運動量が保存されます。また、問(1)で求めた発生エネルギーが、2つの粒子の運動エネルギーに分配されます。これら2つの保存則を連立させて解きます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量保存則: 分裂前後で系の運動量の和は \(0\) に保たれます。
  • エネルギー保存則: 発生した総エネルギーが、各粒子の運動エネルギーの和になります。

具体的な解説と立式
模範解答の図bを参照します。
\({}^3\text{H}\) の質量を \(m\)、速さを \(v\) とし、左向きに飛ぶとします。
\({}^4\text{He}\) の質量を \(M\)、速さを \(V\) とし、右向きに飛ぶとします。
運動量保存則より、左右の運動量の大きさが等しくなります。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの運動量}) &= (\text{左向きの運動量}) \\[2.0ex] M V &= m v \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、発生したエネルギー \(\Delta E_{\text{A}}\) がそれぞれの運動エネルギーになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{発生したエネルギー}) &= (\text{分裂後の運動エネルギーの和}) \\[2.0ex] \Delta E_{\text{A}} &= \frac{1}{2} m v^2 + \frac{1}{2} M V^2 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
求める \({}^3\text{H}\) の運動エネルギー \(K_{\text{H}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{H}} &= \frac{1}{2} m v^2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則: \(m_1 v_1 + m_2 v_2 = \text{一定}\)
  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2} m v^2\)
計算過程

式④より \(V\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{m}{M} v
\end{aligned}
$$
これを式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{A}} &= \frac{1}{2} m v^2 + \frac{1}{2} M \left( \frac{m}{M} v \right)^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m v^2 + \frac{1}{2} M \frac{m^2}{M^2} v^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m v^2 + \frac{m^2}{2 M} v^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m v^2 \left( 1 + \frac{m}{M} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、式⑥の \(K_{\text{H}} = \frac{1}{2} m v^2\) を代入し、括弧内を通分します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{A}} &= K_{\text{H}} \left( \frac{M + m}{M} \right)
\end{aligned}
$$
\(K_{\text{H}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{H}} &= \frac{M}{M + m} \Delta E_{\text{A}}
\end{aligned}
$$
与えられた数値を代入します。\(M = 4.0\,\text{u}\)、\(m = 3.0\,\text{u}\)、\(\Delta E_{\text{A}} = 4.8\,\text{MeV}\) です。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{H}} &= \frac{4.0}{4.0 + 3.0} \times 4.8 \\[2.0ex] &= \frac{4.0}{7.0} \times 4.8 \\[2.0ex] &= \frac{19.2}{7} \\[2.0ex] &\approx 2.742\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
小数第1位まで求めるため、四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{H}} &\approx 2.7\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

爆発して2つに割れるとき、軽い破片と重い破片では、軽い破片の方が速く飛び出します。運動量が同じになるように分配されるため、運動エネルギーは質量の逆比で分配されます。\({}^3\text{H}\) の方が軽いので、発生したエネルギーの多くを受け取ります。

結論と吟味

エネルギーが \(M\) と \(m\) の比で分配されており、質量の逆比(軽い方が多くのエネルギーをもらう)になっているため、物理的に妥当です。

解答 (2) \(2.7\,\text{MeV}\)
別解2: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
分裂時に2つの粒子間に働く内力(斥力)を時間積分・空間積分することで、運動量保存則とエネルギー保存則を原理から導出します。

この設問における重要なポイント

  • 作用・反作用の法則
  • 運動方程式の時間積分: 力積と運動量の関係
  • 運動方程式の空間積分: 仕事と運動エネルギーの関係

具体的な解説と立式
分裂の瞬間から完全に離れるまでの間、\({}^4\text{He}\) が \({}^3\text{H}\) から受ける右向きの力を \(F(t)\) とします。作用・反作用の法則により、\({}^3\text{H}\) は \({}^4\text{He}\) から左向きに大きさ \(F(t)\) の力を受けます。
右向きを正とし、それぞれの速度を \(v_{\text{He}}\)、\(v_{\text{H}}\) とします。
運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
M \frac{dv_{\text{He}}}{dt} &= F(t) \quad \cdots ⑦ \\[2.0ex] m \frac{dv_{\text{H}}}{dt} &= -F(t) \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 微積分の基本定理
計算過程

式⑦と式⑧を辺々足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
M \frac{dv_{\text{He}}}{dt} + m \frac{dv_{\text{H}}}{dt} &= 0 \\[2.0ex] \frac{d}{dt} (M v_{\text{He}} + m v_{\text{H}}) &= 0
\end{aligned}
$$
これを時間 \(t\) で積分します。初期状態(\(t=0\))では両者とも静止(速度 \(0\))していました。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t} \frac{d}{dt} (M v_{\text{He}} + m v_{\text{H}}) dt &= \int_{0}^{t} 0 dt \\[2.0ex] \left[ M v_{\text{He}} + m v_{\text{H}} \right]_{0}^{t} &= 0 \\[2.0ex] M v_{\text{He}} + m v_{\text{H}} – 0 &= 0 \\[2.0ex] M v_{\text{He}} + m v_{\text{H}} &= 0
\end{aligned}
$$
ここで、\({}^4\text{He}\) の速度を \(V\)、\({}^3\text{H}\) の速度を \(-v\) とすると、メイン解法の式④と同じ運動量保存則が得られます。
次に、式⑦の両辺に \(v_{\text{He}} = \frac{dx_{\text{He}}}{dt}\) を掛け、式⑧の両辺に \(v_{\text{H}} = \frac{dx_{\text{H}}}{dt}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
M v_{\text{He}} \frac{dv_{\text{He}}}{dt} &= F(t) \frac{dx_{\text{He}}}{dt} \\[2.0ex] m v_{\text{H}} \frac{dv_{\text{H}}}{dt} &= -F(t) \frac{dx_{\text{H}}}{dt}
\end{aligned}
$$
これらを辺々足し合わせ、時間 \(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \left( M v_{\text{He}} \frac{dv_{\text{He}}}{dt} + m v_{\text{H}} \frac{dv_{\text{H}}}{dt} \right) dt &= \int F(t) \left( \frac{dx_{\text{He}}}{dt} – \frac{dx_{\text{H}}}{dt} \right) dt \\[2.0ex] \int M v_{\text{He}} dv_{\text{He}} + \int m v_{\text{H}} dv_{\text{H}} &= \int F(t) d(x_{\text{He}} – x_{\text{H}})
\end{aligned}
$$
左辺は運動エネルギーの変化、右辺は内力がした相対的な仕事(これが放出されたエネルギー \(\Delta E_{\text{A}}\) に相当します)を表します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M v_{\text{He}}^2 + \frac{1}{2} m v_{\text{H}}^2 &= \Delta E_{\text{A}}
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の式⑤と同じエネルギー保存則です。
以降の計算はメイン解法と全く同じであるため、結果も一致します。

この設問の平易な説明

「運動量保存則」や「エネルギー保存則」は、天下り的に与えられるものではなく、ニュートンの運動方程式から数学的に導き出せるものです。お互いに押し合う力を時間で足し合わせると運動量が保存し、距離で足し合わせるとエネルギーが保存することが確認できました。

結論と吟味

運動方程式という基本原理から出発しても、全く同じ保存則が導かれ、同じ結果が得られることが確認できました。

解答 (2) \(2.7\,\text{MeV}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
核反応Bによって新たに生じるエネルギーを計算し、それを反応前の \({}^3\text{H}\) が持っていた運動エネルギーと足し合わせることで、反応後の運動エネルギーの総和を求めます。

この設問における重要なポイント

  • エネルギーの総和: 反応後の運動エネルギーの和は、「反応前の運動エネルギー」と「反応によって新たに生じたエネルギー」の合計になります。

具体的な解説と立式
核反応Bは \({}^3\text{H} + {}^2\text{H} \to {}^4\text{He} + {}^1\text{n}\) です。
問(1)と同様に、反応Bで生じるエネルギー \(\Delta E_{\text{B}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{B}} &= (\text{反応後の結合エネルギーの和}) – (\text{反応前の結合エネルギーの和}) \\[2.0ex] &= (28.3 + 0) – (8.5 + 2.2) \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
反応後の運動エネルギーの和 \(E_{\text{和}}\) は、反応前の \({}^3\text{H}\) の運動エネルギー \(K_{\text{H}}\) と、新たに生じたエネルギー \(\Delta E_{\text{B}}\) の和になります。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= K_{\text{H}} + \Delta E_{\text{B}} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし(エネルギー保存の法則)
計算過程

式⑨を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta E_{\text{B}} &= 28.3 – 10.7 \\[2.0ex] &= 17.6\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
これを式⑩に代入します。ここで、\(K_{\text{H}}\) は問(2)の途中で求めた丸める前の値 \(2.74\,\text{MeV}\) を使用します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= 2.74 + 17.6 \\[2.0ex] &= 20.34\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
小数第1位まで求めるため、四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &\approx 20.3\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

飛んできた \({}^3\text{H}\) が持っていた「勢い(運動エネルギー)」に加えて、衝突して別の原子核に組み替わったことで「おまけのエネルギー」がさらに放出されました。これら2つのエネルギーの合計が、新しく生まれた粒子たちが飛び散るための総エネルギーになります。

結論と吟味

反応前の運動エネルギーに、発熱反応によるエネルギーが正しく加算されており、物理的に妥当な結果です。

解答 (3) \(20.3\,\text{MeV}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
2次元平面上での衝突・分裂問題です。運動量がベクトルとして保存されるため、\(x\) 方向と \(y\) 方向のそれぞれについて運動量保存則を立式します。さらにエネルギー保存則を連立させ、未知の角度 \(\theta\) を三角関数の性質を用いて消去し、目的の運動エネルギーを求めます。

この設問における重要なポイント

  • 2次元の運動量保存則: 直交する2つの軸(\(x\) 軸、\(y\) 軸)を独立して考えます。
  • 三角関数の消去: \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) の関係を用いて、角度に依存しない式を導きます。

具体的な解説と立式
模範解答の図cを参照します。
反応前の \({}^3\text{H}\) の質量を \(m\)、速さを \(v\) とし、\(x\) 軸正の向きに進むとします。
反応後の \({}^1\text{n}\) の質量を \(m_{\text{n}}\)、速さを \(v_{\text{n}}\) とし、直角方向(\(y\) 軸正の向き)に発射されたとします。
反応後の \({}^4\text{He}\) の質量を \(M\)、速さを \(V’\) とし、\(x\) 軸から角度 \(\theta\) の方向(第4象限)に飛ぶとします。
\(x\) 方向の運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の}x\text{方向の運動量}) &= (\text{反応後の}x\text{方向の運動量}) \\[2.0ex] m v &= M V’ \cos\theta \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
\(y\) 方向の運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{反応前の}y\text{方向の運動量}) &= (\text{反応後の}y\text{方向の運動量}) \\[2.0ex] 0 &= m_{\text{n}} v_{\text{n}} – M V’ \sin\theta \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、問(3)で求めた総エネルギー \(E_{\text{和}}\) が分配されます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 + \frac{1}{2} M V’^2 \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
求める \({}^1\text{n}\) の運動エネルギー \(K_{\text{n}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &= \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量保存則(成分表示): \(p_{x\text{前}} = p_{x\text{後}}\), \(p_{y\text{前}} = p_{y\text{後}}\)
  • 三角関数の相互関係: \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)
計算過程

式⑪、⑫を変形して2乗します。
$$
\begin{aligned}
M V’ \cos\theta &= m v \\[2.0ex] M^2 V’^2 \cos^2\theta &= m^2 v^2
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
M V’ \sin\theta &= m_{\text{n}} v_{\text{n}} \\[2.0ex] M^2 V’^2 \sin^2\theta &= m_{\text{n}}^2 v_{\text{n}}^2
\end{aligned}
$$
これらを辺々足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
M^2 V’^2 (\cos^2\theta + \sin^2\theta) &= m^2 v^2 + m_{\text{n}}^2 v_{\text{n}}^2 \\[2.0ex] M^2 V’^2 &= m^2 v^2 + m_{\text{n}}^2 v_{\text{n}}^2
\end{aligned}
$$
これを式⑬に代入するため、\(V’^2\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 + \frac{1}{2 M} (M^2 V’^2) \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 + \frac{1}{2 M} (m^2 v^2 + m_{\text{n}}^2 v_{\text{n}}^2) \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 + \frac{m}{M} \left( \frac{1}{2} m v^2 \right) + \frac{m_{\text{n}}}{M} \left( \frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 \right)
\end{aligned}
$$
ここで、\(\frac{1}{2} m v^2 = K_{\text{H}}\)、\(\frac{1}{2} m_{\text{n}} v_{\text{n}}^2 = K_{\text{n}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= K_{\text{n}} + \frac{m}{M} K_{\text{H}} + \frac{m_{\text{n}}}{M} K_{\text{n}}
\end{aligned}
$$
\(K_{\text{n}}\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} – \frac{m}{M} K_{\text{H}} &= \left( 1 + \frac{m_{\text{n}}}{M} \right) K_{\text{n}} \\[2.0ex] E_{\text{和}} – \frac{m}{M} K_{\text{H}} &= \frac{M + m_{\text{n}}}{M} K_{\text{n}} \\[2.0ex] K_{\text{n}} &= \frac{M}{M + m_{\text{n}}} \left( E_{\text{和}} – \frac{m}{M} K_{\text{H}} \right)
\end{aligned}
$$
数値を代入します。\(M = 4.0\,\text{u}\)、\(m_{\text{n}} = 1.0\,\text{u}\)、\(m = 3.0\,\text{u}\)、\(E_{\text{和}} = 20.34\,\text{MeV}\)、\(K_{\text{H}} = 2.74\,\text{MeV}\) です。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &= \frac{4.0}{4.0 + 1.0} \left( 20.34 – \frac{3.0}{4.0} \times 2.74 \right) \\[2.0ex] &= \frac{4.0}{5.0} (20.34 – 0.75 \times 2.74) \\[2.0ex] &= 0.8 \times (20.34 – 2.055) \\[2.0ex] &= 0.8 \times 18.285 \\[2.0ex] &= 14.628\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$
小数第1位まで求めるため、四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} &\approx 14.6\,\text{MeV}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ビリヤードのように、飛んできた球が別の球に当たって、2つの球が別々の方向に散らばる現象です。縦方向と横方向のそれぞれで「勢い(運動量)」が保存されるというルールを使って式を立てます。角度が分からないので、縦と横の式を2乗して足し合わせることで、角度を消し去るという数学のテクニックを使いました。

結論と吟味

計算結果は正の値となり、エネルギーの総和 \(20.3\,\text{MeV}\) の範囲内に収まっているため、物理的に妥当な結果です。

解答 (4) \(14.6\,\text{MeV}\)
別解1: 運動量ベクトルの幾何学的関係(直角三角形)を用いた解法

思考の道筋とポイント
運動量はベクトルであるため、反応前後の運動量ベクトルを矢印で描いて図形的に考えます。\({}^1\text{n}\) が直角に発射されたという条件から、運動量ベクトルが直角三角形を形成することに着目し、三平方の定理を用いて一気に式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 運動量ベクトルの保存: \(\vec{p}_{\text{前}} = \vec{p}_{\text{n}} + \vec{p}_{\text{He}}\)
  • 直角三角形と三平方の定理: 成分分解をせずにベクトルの大きさの関係を導きます。

具体的な解説と立式
反応前の \({}^3\text{H}\) の運動量ベクトルを \(\vec{p}_{\text{前}}\)、反応後の \({}^1\text{n}\) の運動量ベクトルを \(\vec{p}_{\text{n}}\)、\({}^4\text{He}\) の運動量ベクトルを \(\vec{p}_{\text{He}}\) とします。
運動量保存則より、以下のベクトル方程式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\vec{p}_{\text{前}} &= \vec{p}_{\text{n}} + \vec{p}_{\text{He}}
\end{aligned}
$$
問題文より、\(\vec{p}_{\text{前}}\) と \(\vec{p}_{\text{n}}\) は直交しています。したがって、これら3つのベクトルは、\(\vec{p}_{\text{He}}\) を斜辺とする直角三角形を形成します。
三平方の定理より、運動量の大きさについて以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
p_{\text{He}}^2 &= p_{\text{前}}^2 + p_{\text{n}}^2 \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$
また、運動エネルギー \(K\) と運動量 \(p\) の関係 \(K = \frac{p^2}{2m}\) より、\(p^2 = 2mK\) と表せます。
エネルギー保存則は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= K_{\text{n}} + K_{\text{He}} \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動量と運動エネルギーの関係: \(K = \frac{p^2}{2m}\)
  • 三平方の定理: \(c^2 = a^2 + b^2\)
計算過程

式⑮の各項を \(p^2 = 2mK\) を用いて書き換えます。
$$
\begin{aligned}
2 M K_{\text{He}} &= 2 m K_{\text{H}} + 2 m_{\text{n}} K_{\text{n}} \\[2.0ex] K_{\text{He}} &= \frac{m}{M} K_{\text{H}} + \frac{m_{\text{n}}}{M} K_{\text{n}}
\end{aligned}
$$
これを式⑯に代入します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{和}} &= K_{\text{n}} + \left( \frac{m}{M} K_{\text{H}} + \frac{m_{\text{n}}}{M} K_{\text{n}} \right) \\[2.0ex] E_{\text{和}} &= K_{\text{n}} \left( 1 + \frac{m_{\text{n}}}{M} \right) + \frac{m}{M} K_{\text{H}}
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の途中で得られた式と全く同じです。以降の計算はメイン解法と同様に行い、同じ結果を得ます。

この設問の平易な説明

運動量を「矢印」として紙に描いてみます。最初の矢印(反応前)が、2つの矢印(反応後)に枝分かれします。このとき、枝分かれした1つが元の方向と直角になっているため、3つの矢印をつなげると綺麗な直角三角形ができます。直角三角形なら「三平方の定理」が使えるので、面倒なサインやコサインを使わずに、一発で関係式を作ることができます。

結論と吟味

幾何学的なアプローチを用いることで、成分分解による複雑な計算を完全にショートカットでき、計算ミスを防ぎつつ同じ結果に到達できることが確認できました。

解答 (4) \(14.6\,\text{MeV}\)
別解2: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
2次元平面上での衝突・分裂現象において、粒子間に働く内力ベクトルを用いた運動方程式を立て、それを時間積分・空間積分することで、2次元の運動量保存則とエネルギー保存則を原理から導出します。

この設問における重要なポイント

  • ベクトル形式の運動方程式
  • ベクトルの内積を用いた空間積分

具体的な解説と立式
\({}^3\text{H}\) と \({}^2\text{H}\) が衝突して一時的に複合核を形成し、それが \({}^1\text{n}\) と \({}^4\text{He}\) に分裂すると考えます。
分裂の瞬間に \({}^1\text{n}\) が受ける内力ベクトルを \(\vec{F}(t)\) とすると、作用・反作用の法則により \({}^4\text{He}\) は \(-\vec{F}(t)\) の力を受けます。
それぞれの速度ベクトルを \(\vec{v}_{\text{n}}\)、\(\vec{v}_{\text{He}}\) とすると、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{n}} \frac{d\vec{v}_{\text{n}}}{dt} &= \vec{F}(t) \quad \cdots ⑰ \\[2.0ex] M \frac{d\vec{v}_{\text{He}}}{dt} &= -\vec{F}(t) \quad \cdots ⑱
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(ベクトル形式): \(m \frac{d\vec{v}}{dt} = \vec{F}\)
  • ベクトルの内積と微分の関係: \(\frac{d}{dt} (\vec{v} \cdot \vec{v}) = 2 \vec{v} \cdot \frac{d\vec{v}}{dt}\)
計算過程

式⑰と式⑱を辺々足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{n}} \frac{d\vec{v}_{\text{n}}}{dt} + M \frac{d\vec{v}_{\text{He}}}{dt} &= \vec{0} \\[2.0ex] \frac{d}{dt} (m_{\text{n}} \vec{v}_{\text{n}} + M \vec{v}_{\text{He}}) &= \vec{0}
\end{aligned}
$$
これを時間積分すると、分裂前後の運動量ベクトルが保存されることが示されます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{n}} \vec{v}_{\text{n}} + M \vec{v}_{\text{He}} &= \vec{p}_{\text{前}}
\end{aligned}
$$
これは別解1で用いたベクトル方程式そのものです。
次に、式⑰の両辺に \(\vec{v}_{\text{n}}\) を内積で掛け、式⑱の両辺に \(\vec{v}_{\text{He}}\) を内積で掛けます。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{n}} \vec{v}_{\text{n}} \cdot \frac{d\vec{v}_{\text{n}}}{dt} &= \vec{F}(t) \cdot \vec{v}_{\text{n}} \\[2.0ex] M \vec{v}_{\text{He}} \cdot \frac{d\vec{v}_{\text{He}}}{dt} &= -\vec{F}(t) \cdot \vec{v}_{\text{He}}
\end{aligned}
$$
これらを辺々足し合わせ、時間 \(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \left( \frac{1}{2} m_{\text{n}} \frac{d}{dt} |\vec{v}_{\text{n}}|^2 + \frac{1}{2} M \frac{d}{dt} |\vec{v}_{\text{He}}|^2 \right) dt &= \int \vec{F}(t) \cdot (\vec{v}_{\text{n}} – \vec{v}_{\text{He}}) dt
\end{aligned}
$$
左辺は運動エネルギーの変化、右辺は内力がした仕事(発生したエネルギー \(\Delta E_{\text{B}}\))を表します。分裂前の複合核の運動エネルギーを \(K_{\text{複合}}\) とすると、
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{1}{2} m_{\text{n}} |\vec{v}_{\text{n}}|^2 + \frac{1}{2} M |\vec{v}_{\text{He}}|^2 \right) – K_{\text{複合}} &= \Delta E_{\text{B}} \\[2.0ex] K_{\text{n}} + K_{\text{He}} &= K_{\text{複合}} + \Delta E_{\text{B}}
\end{aligned}
$$
右辺は問(3)で求めた総エネルギー \(E_{\text{和}}\) に等しいため、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{n}} + K_{\text{He}} &= E_{\text{和}}
\end{aligned}
$$
となり、メイン解法で用いたエネルギー保存則が導出されました。以降の計算は別解1と同様です。

この設問の平易な説明

2次元の斜め方向の衝突であっても、根本にあるのは「お互いに押し合う力(作用・反作用)」です。この力をベクトルとして扱い、運動方程式を積分することで、2次元空間での運動量保存則とエネルギー保存則が数学的に導き出されることを確認しました。

結論と吟味

ベクトル形式の運動方程式から出発しても、全く同じ保存則が導かれ、同じ結果が得られることが確認できました。

解答 (4) \(14.6\,\text{MeV}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 結合エネルギーと質量欠損
    • 核心: 原子核を構成する核子(陽子と中性子)をばらばらに引き離すために必要なエネルギーが結合エネルギーであり、反応前後の結合エネルギーの差が、外部に放出(または吸収)されるエネルギーとなります。
    • 理解のポイント:
      • 「反応前の結合エネルギーの和」と「反応後の結合エネルギーの和」を比較します。
      • 反応後の方が結合エネルギーが大きい(より強く結びついている)場合、その差額がエネルギーとして放出されます。
  • 分裂・衝突における運動量保存則とエネルギー保存則
    • 核心: 外力が働かない系での分裂や衝突では、系全体の運動量ベクトルが保存され、発生したエネルギーは各粒子の運動エネルギーに分配されます。
    • 理解のポイント:
      • 1次元の分裂では、運動量は大きさが等しく向きが逆になります。
      • 2次元の衝突では、運動量は \(x\) 成分と \(y\) 成分のそれぞれで保存されます。
      • 運動エネルギーはスカラー量なので、単純な足し算で保存則を立てます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 核分裂反応や核融合反応: ウランの核分裂や太陽内部での核融合など、あらゆる核反応において、結合エネルギー(または質量欠損)から発生エネルギーを求める手順は共通です。
    • 2次元の弾性衝突・非弾性衝突: ビリヤードの球の衝突や、素粒子の散乱実験など、平面上での衝突問題では、運動量保存則を成分ごとに立式し、エネルギー保存則と連立させる解法がそのまま使えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反応の前後を明確にする: どの粒子が反応前に存在し、どの粒子が反応後に生成されたかを、反応式を書いて整理します。
    2. 「静止」というキーワードを見逃さない: 「静止している」という条件は、その粒子の運動量と運動エネルギーが \(0\) であることを意味し、計算を大幅に簡略化してくれます。
    3. ベクトルの幾何学的関係を探る: 2次元の衝突で「直角に飛んだ」などの条件があれば、運動量ベクトルが直角三角形を作る可能性が高く、三平方の定理で計算をショートカットできます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 結合エネルギーの引き算の向きの誤解:
    • 誤解: 「反応前 - 反応後」なのか「反応後 - 反応前」なのか分からなくなり、符号を間違えてしまう。
    • 対策: 「結合エネルギー=ばらばらにするためのエネルギー」と覚えます。反応前の状態から一旦ばらばらにし(エネルギーを吸収)、そこから新しい原子核を組み立てる(エネルギーを放出)と考えれば、「放出されるエネルギー = 反応後の結合エネルギー - 反応前の結合エネルギー」と自然に導けます。
  • 運動エネルギーの分配比率の誤解:
    • 誤解: 発生したエネルギーが、質量の比(重い方が多くもらう)で分配されると勘違いしてしまう。
    • 対策: 運動量 \(p\) が等しいとき、運動エネルギーは \(K = \frac{p^2}{2m}\) と表せるため、質量 \(m\) に反比例することを常に意識しましょう。「軽い方が速く飛ぶからエネルギーも大きい」と直感と結びつけて覚えます。
  • 2次元衝突での三角関数の処理ミス:
    • 誤解: 運動量保存則の式から \(\theta\) を消去する際、計算が複雑になりすぎて途中で間違えてしまう。
    • 対策: \(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) を含む式は、それぞれを孤立させてから両辺を2乗し、足し合わせることで \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) を作り出すのが鉄則です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動量保存則とエネルギー保存則の連立(問2、問4):
    • 選定理由: 分裂後の2つの粒子の速度(または運動エネルギー)という2つの未知数を求めるため、独立した2つの関係式が必要だからです。
    • 適用根拠: 「静止していた」「外力がはたらくことなく」という問題文の記述が、運動量保存則が成立する物理的条件を満たしています。また、発生したエネルギーがすべて運動エネルギーに変わるという条件から、エネルギー保存則が成立します。
  • 運動量ベクトルの幾何学的関係(問4別解1):
    • 選定理由: 「直角に発射された」という条件から、運動量ベクトルが直角三角形を形成することが分かり、三平方の定理を用いれば三角関数の複雑な計算を回避できるためです。
    • 適用根拠: 運動量はベクトル量であり、平面上での衝突ではベクトルの和が保存されるため、幾何学的な図形として扱うことができます。
  • 微積分を用いた体系的解法(問2、問4別解2):
    • 選定理由: 公式の丸暗記に頼らず、物理の基本原理(運動方程式)から現象を数学的に記述し、結果を自力で導き出すためです。
    • 適用根拠: ニュートンの運動方程式は古典力学の最も基本的な原理であり、衝突や分裂時の内力に対しても常に成立します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式のまま最後まで計算する:
    • 意識: 途中で数値を代入すると、式が煩雑になり計算ミスを誘発しやすくなります。
    • 実践: 問(2)や問(4)のように、求める物理量(\(K_{\text{H}}\) や \(K_{\text{n}}\))について文字式のまま解ききり、最後の最後に数値を代入する習慣をつけましょう。
  • 文字式の次元チェック(ディメンションチェック):
    • 意識: 導き出した文字式が、物理的に正しい単位を持っているかを確認します。
    • 実践: 問(2)の答え \(K_{\text{H}} = \frac{M}{M+m} \Delta E_{\text{A}}\) では、係数部分が \(\frac{\text{質量}}{\text{質量}}\) で無次元となり、全体としてエネルギーの次元を持つことが確認できます。

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共田 誠(まこと先生)

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共田 誠(まこと先生)

高校物理講師・プロ家庭教師 / 指導歴14年

上智大学理工学部物理学科卒。私立高校の非常勤講師として進学クラスから基礎クラスまで幅広く担当。大手家庭教師センター3社でプロ家庭教師を経験し、現在はオンライン専門で全国の高校生を個別指導中。

「暗記物理の撲滅」を掲げ、生徒の思考のクセを診断・矯正するドクター型アプローチで指導。表面的なテクニックではなく、初見の問題に強い思考力を育てる。

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