発展例題
発展例題43 平行電流がおよぼしあう力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 平行電流間に働く力の公式を用いる解法
- 模範解答が「(1)で求めた合成磁場」を用いて導線Cが受ける力を計算するのに対し、別解では「平行電流間に働く力」の公式を用いて、導線A、Bそれぞれから受ける力を個別に求め、それらを合成して答えを導きます。
- 設問(2)の別解: 平行電流間に働く力の公式を用いる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的視点の転換: 「磁場を介して力が働く(近接作用)」という視点と、「電流同士が直接力を及ぼし合う(遠隔作用的視点)」という2つのアプローチをつなげることができます。
- 公式の適用練習: 平行電流間に働く力の公式 \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}L\) の具体的な使用法と、逆向き電流では反発力が働くという性質を再確認できます。
- 検算としての有効性: 全く異なるルートで計算することで、(1)の磁場の計算が間違っていたとしても、(2)単独で正解にたどり着ける可能性があり、検算手段として強力です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる力の向きと大きさは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「電流がつくる磁場と、電流が磁場から受ける力」です。空間的なベクトルの合成が必要となるため、図を丁寧に描いて向きを把握することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 右ねじの法則: 直線電流がつくる磁場の向きを決める法則。
- 直線電流がつくる磁場: 距離 \(r\) に反比例する強さ \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) を持つこと。
- 磁場の重ね合わせ: 複数の電流がつくる磁場は、ベクトルとして合成できること。
- 電流が磁場から受ける力: \(F = \mu_0 I H L\) (または \(F = IBL\))の式と、フレミングの左手の法則。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず導線AとBそれぞれが点Cにつくる磁場の向きを「右ねじの法則」で決定し、図示します。次に、それぞれの磁場の強さを公式で計算し、幾何学的な関係(正三角形の性質)を利用してベクトル合成を行います。
- (2)では、(1)で求めた合成磁場の中に電流Cがあると考え、「フレミングの左手の法則」で力の向きを、「電流が磁場から受ける力の公式」で大きさを求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、導線AとBがそれぞれ点Cにつくる磁場ベクトル \(\vec{H}_A, \vec{H}_B\) を描きます。電流の向きが「紙面の裏向き」であることに注意して、右ねじの法則を適用します。2つのベクトルの大きさが等しいことと、なす角を幾何学的に読み取ることで、合成磁場 \(\vec{H}\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 直線電流がつくる磁場の磁力線は、電流を中心とする同心円状になる。
- 点Cにおける磁場の向きは、Cと電流を結ぶ線(半径)に対して接線方向(垂直)である。
- A、Bの電流はともに裏向きで大きさも等しく、距離も等しいため、磁場の強さは等しい。
具体的な解説と立式
まず、個々の磁場の強さを求めます。
導線A、Bを流れる電流の大きさは \(I = 2.0\,\text{A}\)、点Cまでの距離は \(r = 0.10\,\text{m}\) です。
直線電流がつくる磁場の強さの公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) より、Aがつくる磁場の強さ \(H_A\) とBがつくる磁場の強さ \(H_B\) は等しくなります。
$$
\begin{aligned}
H_A &= \frac{2.0}{2\pi \times 0.10} \\[2.0ex]
H_B &= \frac{2.0}{2\pi \times 0.10}
\end{aligned}
$$
次に、向きを考えます。
Aの電流(裏向き)に対して右ねじの法則を適用すると、磁力線は時計回りです。したがって、点Cにおける磁場 \(\vec{H}_A\) は、線分ACに垂直で、右下を向きます。
Bの電流(裏向き)に対しても同様に磁力線は時計回りです。点Cにおける磁場 \(\vec{H}_B\) は、線分BCに垂直で、右上を向きます。
図形の性質より、\(\triangle\text{ABC}\) は正三角形なので、内角はすべて \(60^\circ\) です。
線分ACと水平線のなす角は \(60^\circ\) なので、それに垂直な \(\vec{H}_A\) は水平線より \(30^\circ\) 下を向きます。
同様に、線分BCと水平線のなす角は \(60^\circ\) なので、それに垂直な \(\vec{H}_B\) は水平線より \(30^\circ\) 上を向きます。
合成磁場 \(\vec{H}\) の向きは、対称性より水平右向き(\(x\) 軸正の向き)となります。
大きさ \(H\) は、\(H_A\) と \(H_B\) の水平成分の和となります。
$$ H = H_A \cos 30^\circ + H_B \cos 30^\circ $$
\(H_A = H_B\) なので、
$$ H = 2 H_A \cos 30^\circ $$
使用した物理公式
- 直線電流がつくる磁場の強さ: \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\)
まず、\(H_A\) の値を計算します。
$$
\begin{aligned}
H_A &= \frac{2.0}{2\pi \times 0.10} \\[2.0ex]
&= \frac{20}{2\pi} \\[2.0ex]
&= \frac{10}{\pi}\,\text{A/m}
\end{aligned}
$$
次に、合成磁場の強さ \(H\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
H &= 2 \times \frac{10}{\pi} \times \cos 30^\circ \\[2.0ex]
&= \frac{20}{\pi} \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{10\sqrt{3}}{\pi}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{3} \approx 1.73\)、\(\pi \approx 3.14\) として数値を計算します。
$$
\begin{aligned}
H &\approx \frac{10 \times 1.73}{3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{17.3}{3.14} \\[2.0ex]
&\approx 5.509\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$ H \approx 5.5\,\text{A/m} $$
向きは、図より「図の右向き」です。
AとBの電流がそれぞれCの場所に「磁場の矢印」を作ります。Aの電流はCを右下方向に押すような磁場を作り、Bの電流はCを右上方向に押すような磁場を作ります。この2つの矢印は長さが同じで、ちょうど上下方向の成分が打ち消し合う角度になっています。その結果、残るのは右向きの成分だけで、2つの矢印が協力して真横(右)を向いた大きな磁場ができます。
向きは図の右向き、強さは \(5.5\,\text{A/m}\) です。
単位が \(\text{A/m}\) であること、向きが対称性から水平になることなど、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)で求めた合成磁場 \(\vec{H}\) の中に、電流Cが置かれていると考えます。電流Cの向きは「紙面の表向き」です。磁場の向き(右)と電流の向き(手前)がわかっているので、フレミングの左手の法則を使って力の向きを判断します。大きさは公式に代入して計算します。
この設問における重要なポイント
- 電流Cは紙面の表向き(手前向き)に流れている。
- 合成磁場 \(\vec{H}\) は紙面の右向きである。
- 透磁率 \(\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\,\text{N/A}^2\) が与えられているので、磁束密度 \(B = \mu_0 H\) の関係を用いる。
具体的な解説と立式
力の向きを決定します。
左手の人差し指(磁場 \(\vec{H}\))を右に向けます。
中指(電流 \(\vec{I}\))を手前に向けます。
すると、親指(力 \(\vec{F}\))は上を向きます。
したがって、力の向きは「図の上向き」です。
力の大きさ \(F\) を求める式を立てます。
電流が磁場から受ける力の公式 \(F = I B L\) において、\(B = \mu_0 H\) なので、
$$ F = \mu_0 I_C H L $$
ここで、\(I_C = 2.0\,\text{A}\)、\(L = 0.50\,\text{m}\) です。
使用した物理公式
- 電流が磁場から受ける力: \(F = \mu_0 I H L\) (または \(F = I B L\))
値を代入して計算します。(1)で求めた \(H = \displaystyle\frac{10\sqrt{3}}{\pi}\) を用いると計算が楽になります。
$$
\begin{aligned}
F &= (4\pi \times 10^{-7}) \times 2.0 \times \frac{10\sqrt{3}}{\pi} \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 4\pi \times 10^{-7} \times 2.0 \times 0.50 \times \frac{10\sqrt{3}}{\pi} \\[2.0ex]
&= 4\pi \times 10^{-7} \times 1.0 \times \frac{10\sqrt{3}}{\pi}
\end{aligned}
$$
\(\pi\) が約分されて消えます。
$$
\begin{aligned}
F &= 4 \times 10^{-7} \times 10\sqrt{3} \\[2.0ex]
&= 40\sqrt{3} \times 10^{-7} \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 1.73 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 6.92 \times 10^{-6}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$ F \approx 6.9 \times 10^{-6}\,\text{N} $$
(1)で、Cの場所には右向きの磁場の風が吹いていることがわかりました。そこに、手前向きに電流Cが流れています。フレミングの左手の法則(指鉄砲の形を作って中指を電流、人差し指を磁場に向ける)を使うと、親指が上を向くので、力は上向きにかかることがわかります。計算では、円周率 \(\pi\) がきれいに消えてくれるので、スッキリと答えが出ます。
向きは図の上向き、大きさは \(6.9 \times 10^{-6}\,\text{N}\) です。
非常に小さな力ですが、電流間の力としては妥当なオーダーです。
思考の道筋とポイント
「磁場」という仲介役を考えず、電流Aと電流Bが直接電流Cに及ぼす力を計算して合成する方法です。平行電流間には、電流が同じ向きなら引力、逆向きなら斥力(反発力)が働きます。
この設問における重要なポイント
- A(裏向き)とC(表向き)は逆向き電流なので、斥力(反発力)が働く。
- B(裏向き)とC(表向き)も逆向き電流なので、斥力(反発力)が働く。
- 2つの反発力をベクトル合成する。
具体的な解説と立式
まず、個々の力の大きさを求めます。
平行電流間に働く力の公式 \(f = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}L\) より、AがCに及ぼす力 \(f_A\) と、BがCに及ぼす力 \(f_B\) は大きさが等しくなります。
$$
\begin{aligned}
f_A &= \frac{\mu_0 I^2}{2\pi r}L \\[2.0ex]
f_B &= \frac{\mu_0 I^2}{2\pi r}L
\end{aligned}
$$
次に、向きを考えます。
AとCは逆向きなので反発します。CはAから遠ざかる方向、つまり線分ACの延長線上(右上方向)に力を受けます。
BとCも逆向きなので反発します。CはBから遠ざかる方向、つまり線分BCの延長線上(左上方向)に力を受けます。
図形の性質より、線分ACは水平から \(60^\circ\) 上がっています。\(f_A\) はその延長線上なので、やはり水平から \(60^\circ\) 上向き(右上)です。
線分BCは水平から \(60^\circ\) 上がっています(逆向きに見れば)。\(f_B\) はその延長線上なので、水平から \(60^\circ\) 上向き(左上)です。
正確には、\(f_A\) は右向き成分と上向き成分を持ち、\(f_B\) は左向き成分と上向き成分を持ちます。左右の成分は対称性により打ち消し合い、上向きの成分だけが残ります。
合成力 \(F\) は、\(f_A\) と \(f_B\) の鉛直成分(上向き成分)の和となります。
鉛直軸とのなす角は \(30^\circ\) なので、
$$ F = f_A \cos 30^\circ + f_B \cos 30^\circ $$
あるいは水平軸とのなす角 \(60^\circ\) を使って \(F = f_A \sin 60^\circ + f_B \sin 60^\circ\) としても同じです。
$$ F = 2 f_A \times \frac{\sqrt{3}}{2} = \sqrt{3} f_A $$
使用した物理公式
- 平行電流間に働く力: \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}L\)
まず、\(f_A\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_A &= \frac{4\pi \times 10^{-7} \times 2.0 \times 2.0}{2\pi \times 0.10} \times 0.50 \\[2.0ex]
&= \frac{2 \times 10^{-7} \times 4.0}{0.10} \times 0.50 \\[2.0ex]
&= \frac{8.0 \times 10^{-7}}{0.10} \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 80 \times 10^{-7} \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 40 \times 10^{-7}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
次に、合成力 \(F\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= \sqrt{3} \times (40 \times 10^{-7}) \\[2.0ex]
&= 1.73 \times 4.0 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 6.92 \times 10^{-6}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
これはメインの解法と完全に一致します。
「逆向きの電流は反発し合う」というシンプルなルールを使います。CはAから「あっち行け!」と右上に押され、Bからも「あっち行け!」と左上に押されます。右と左の力はケンカして消えますが、上向きの力は協力し合うので、結果としてCは真上に持ち上げられます。
全く異なる公式とアプローチを使いましたが、結果は完全に一致しました。これにより、計算の正しさが強く裏付けられます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 磁場のベクトル合成と空間認識
- 核心: この問題の最大のポイントは、複数の電流源がつくる磁場を、それぞれ独立したベクトルとして捉え、それらを幾何学的に合成する能力です。単に公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) に数値を代入するだけでなく、右ねじの法則を用いて空間的な向き(接線方向)を正確に特定し、図形的な対称性を利用して成分ごとに足し合わせるプロセスが不可欠です。
- 理解のポイント:
- 独立性の原理: Aがつくる磁場はAの電流だけで決まり、Bの存在には影響されません。まずは個別に考え、最後に足し合わせる(重ね合わせる)のが鉄則です。
- 接線方向の作図: 電流を中心とする円を描き、その接線方向に磁場が向くことをイメージします。特に正三角形のような対称性の高い配置では、幾何学的な角度(\(30^\circ, 60^\circ\) など)が計算の鍵となります。
- 電流と磁場の相互作用(ローレンツ力)
- 核心: 「電流が磁場をつくる」現象(問1)と、「磁場中の電流が力を受ける」現象(問2)は、電磁気学における車の両輪です。この2つを混同せず、順序立てて適用することが求められます。
- 理解のポイント:
- 因果関係の整理: まずAとBが「原因」となって磁場という「場」を作り、その「場」の中に置かれたCが「結果」として力を受ける、という因果関係を明確に意識しましょう。
- フレミングの左手の法則: 指の向き(電・磁・力)を正確に合わせる身体的な感覚と、それを数式 \(F = \mu_0 IHL\) で定量化する数学的な操作の両方が必要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 正方形配置の電流: 4本の導線が正方形の頂点にある場合。対角線上の電流同士のペアを作って合成すると、対称性から計算が楽になることが多いです。
- 直線電流と円形電流の組み合わせ: 直線電流がつくる磁場と、円形電流の中心磁場を合成する問題。それぞれの公式(\(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) と \(H = \displaystyle\frac{I}{2r}\))を使い分ける必要があります。
- 磁場がゼロになる点を探す問題: 複数の電流がつくる磁場が打ち消し合ってゼロになる座標を求める問題。ベクトルの大きさが等しく、向きが逆になる条件を立式します。
- 初見の問題での着眼点:
- 電流の向きをマークする: 図中の \(\otimes\)(裏向き)と \(\odot\)(表向き)を最初にはっきりと確認し、間違えないように強調しておきます。これが全ての出発点です。
- 観測点での「接線」を引く: 磁場を求めたい点と電流源を結ぶ線(半径)を引き、それに垂直な線(接線)を引いて磁場の向きの候補とします。
- 対称性を探す: 電流の大きさや配置に対称性があれば、必ず成分のキャンセル(打ち消し合い)が起こります。計算する前に「\(y\) 成分は消えるはずだ」と予測できれば、計算量を大幅に減らせます。
- 単位に注意する: 透磁率 \(\mu_0\) が与えられている場合、磁場の強さ \(H\) \([\text{A/m}]\) なのか、磁束密度 \(B\) \([\text{T}]\) なのかを意識します。力 \(F\) を求める際に \(\mu_0\) を掛ける必要があるかどうかは、ここにかかっています。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 磁場の向きの作図ミス:
- 誤解: 電流から遠ざかる向き(放射状)や、電流に吸い寄せられる向きに磁場を描いてしまう。
- 対策: 「磁力線は同心円」と唱えながら、必ず電流と観測点を結ぶ線に対して「直角」マークを作図する癖をつけましょう。右ねじを回す動作を実際の手で行うのも有効です。
- 公式の混同:
- 誤解: 直線電流の磁場 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) と、円形電流の中心磁場 \(H = \displaystyle\frac{I}{2r}\) の分母(\(\pi\) の有無)を逆にしてしまう。
- 対策: 直線電流の磁場は、円周の長さ \(2\pi r\) が関係している(アンペールの法則)と関連付けて覚えましょう。「直線には \(\pi\)(パイ)が入る」という語呂合わせも有効です。
- 合成時の成分分解忘れ:
- 誤解: ベクトルの向きを無視して、単に磁場の強さ \(H_A\) と \(H_B\) を足し算(スカラー和)してしまう。
- 対策: 矢印の向きが違うものを単純に足してはいけません。必ず \(x\) 成分、\(y\) 成分に分解してから足し合わせるか、余弦定理や図形的性質を使う必要があります。「ベクトルは成分で足す」を徹底してください。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1)での公式選択(ビオ・サバールの法則の積分形としての直線電流の式):
- 選定理由: 問題設定が「十分に長い直線状の導線」であるため、無限長直線電流がつくる磁場の公式 \(H = \displaystyle\frac{I}{2\pi r}\) が適用されます。
- 適用根拠: 電流 \(I\) と距離 \(r\) が与えられており、透磁率 \(\mu_0\) を使わずに「磁場の強さ \(H\)」を求める段階なので、\(B = \displaystyle\frac{\mu_0 I}{2\pi r}\) ではなく \(H\) の式を使います。
- (2)での公式選択(電流が磁場から受ける力):
- 選定理由: 「磁場 \(H\) の中にある電流 \(I\) が受ける力」を求める問題なので、\(F = IBL\) または \(F = \mu_0 IHL\) を選択します。
- 適用根拠: ここでは(1)で求めた \(H\) を使うのが自然な流れです。ただし、力の公式の基本形は磁束密度 \(B\) を使う \(F = IBL\) なので、\(B = \mu_0 H\) の関係式を用いて \(H\) を \(B\) に変換する必要があります。別解の「平行電流間の力」の公式 \(F = \displaystyle\frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi r}L\) は、実は \(H = \displaystyle\frac{I_1}{2\pi r}\) を \(F = \mu_0 I_2 H L\) に代入して作られたショートカット公式であり、本質的には同じ物理現象を見ています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- \(\pi\) の約分を見越す:
- 計算の途中で \(\pi \approx 3.14\) を代入してはいけません。特に電磁気の問題では、透磁率 \(\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\) や円周率を含む公式が多く、最終的に \(\pi\) が約分されて消えるケースが非常に多いです。最後まで \(\pi\) を記号のまま残し、最後にまとめて処理しましょう。
- 指数計算(\(10^n\))の管理:
- \(10^{-7}\) や \(10^{-6}\) といった小さな数が頻出します。これらを小数(\(0.0000001\))に直して計算するのはミスの元です。指数法則 \(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\) を活用し、係数部分(\(2.0 \times 2.0\) など)と指数部分(\(10^{-7}\) など)を分けて計算整理しましょう。
- ルートの近似は最後に:
- \(\sqrt{3}\) などの無理数も、計算途中では記号のまま扱い、最終的な数値解を求める直前で \(1.73\) などの近似値を代入します。これにより、途中計算の誤差の蓄積を防げます。
- 図形的な検算:
- (1)で求めた磁場の向きが「右向き」であることは、AとBの対称性から直感的に正しいと判断できます。もし計算結果に上下成分が残っていたら、どこかで計算ミスをしている証拠です。このように、対称性に基づいた定性的な予測と計算結果を照らし合わせる習慣が、ミス発見の感度を高めます。
発展例題44 電子のらせん運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 速度成分の比と幾何学的関係を用いた解法
- 模範解答が「時間を求めてから距離を計算する(\(L = v_{\parallel} T\))」のに対し、別解では「円運動の周長と進む距離の比は、速度成分の比に等しい」という幾何学的な関係を用いて、時間を明示的に計算せずに距離を導きます。
- 設問(2)の別解: 速度成分の比と幾何学的関係を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的直感の強化: 「同じ時間だけ運動するなら、距離の比は速さの比になる」というシンプルかつ強力な原理を確認できます。
- らせん運動の構造理解: らせん運動を展開図(直角三角形)として捉える視点を養い、空間的な運動のイメージを助けます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「磁場中を斜めに進む荷電粒子の運動(らせん運動)」です。速度を成分分解し、それぞれの方向でどのような運動になるかを独立して考えることがポイントです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度の分解: 速度ベクトルを、磁場に平行な成分 \(v_{\parallel}\) と垂直な成分 \(v_{\perp}\) に分解して考えること。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子は、磁場と垂直な速度成分に対してのみ力 \(f = qv_{\perp}B\) を受けること。
- 運動の独立性: 磁場に垂直な面内では「等速円運動」、磁場に平行な方向には「等速直線運動」をし、これらが組み合わさって「らせん運動」になること。
- 周期とピッチ: 円運動の周期 \(T\) で1回転する間に、軸方向に進む距離(ピッチ)を計算できること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、初速度 \(v\) を磁場(\(x\)軸)に平行な成分 \(v_x\) と、垂直な成分 \(v_y\) に分解します。
- 前半の問いでは、磁場に垂直な面内での運動に着目します。ローレンツ力を向心力とする等速円運動の運動方程式を立て、半径 \(r\) を求めた後、周期 \(T\) を計算します。
- 後半の問いでは、磁場に平行な方向の運動に着目します。力が働かないため等速直線運動となります。前半で求めた周期 \(T\) の間に進む距離を計算します。
電子が再びx軸上の点を通るまでの時間
思考の道筋とポイント
電子が再び \(x\) 軸上の点を通るということは、磁場に垂直な面内で見ると、電子がぐるっと1周して元の位置に戻ってくることを意味します。つまり、求める時間は等速円運動の周期 \(T\) です。
まず速度を分解し、垂直成分 \(v_{\perp}\) を使って円運動の運動方程式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 電子の電荷は \(-e\) ですが、ローレンツ力の大きさは \(f = |-e|v_{\perp}B = ev_{\perp}B\) となります。
- 磁場に垂直な方向の速さは \(v_{\perp} = v \sin \theta\) です。
- ローレンツ力は常に速度と垂直に働くため、仕事をしませず、速さは一定に保たれます。
具体的な解説と立式
初速度 \(v\) を分解します。
磁場(\(x\)軸)に平行な成分: \(v_{\parallel} = v \cos \theta\)
磁場に垂直な成分: \(v_{\perp} = v \sin \theta\)
磁場に垂直な面内での運動を考えます。
電子(質量 \(m\))は、速さ \(v_{\perp}\) で半径 \(r\) の等速円運動をします。
向心力となるのはローレンツ力 \(f = e v_{\perp} B\) です。
円運動の運動方程式 \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = F\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ m \frac{(v \sin \theta)^2}{r} = e (v \sin \theta) B \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 等速円運動の運動方程式: \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = F\)
- ローレンツ力の大きさ: \(f = qvB\)
- 円運動の周期: \(T = \displaystyle\frac{2\pi r}{v}\)
式①より、円運動の半径 \(r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{(v \sin \theta)^2}{r} &= e v B \sin \theta \\[2.0ex]
\frac{m v \sin \theta}{r} &= eB \\[2.0ex]
r &= \frac{m v \sin \theta}{eB}
\end{aligned}
$$
求める時間 \(T\) は、この円運動の周期です。円周の長さ \(2\pi r\) を速さ \(v_{\perp} = v \sin \theta\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi r}{v \sin \theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi}{v \sin \theta} \times \frac{m v \sin \theta}{eB} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi m}{eB}
\end{aligned}
$$
電子は磁場から力を受けてクルクル回りますが、その回る速さは「磁場に対して垂直なスピード成分」だけで決まります。運動方程式という「力のバランスの式」を作って計算すると、1周するのにかかる時間(周期)は、なんとスピード \(v\) や角度 \(\theta\) に関係なく、質量 \(m\) と磁場 \(B\) だけで決まる定数になることがわかります。これをサイクロトロン周期と呼びます。
時間は \(T = \displaystyle\frac{2\pi m}{eB}\) です。
この式に \(v\) や \(\theta\) が含まれていないことは重要です。速さが速くても、その分半径が大きくなるため、1周にかかる時間は変わらないという物理的性質を表しています。次元を確認すると、\([\text{kg}] / ([\text{C}] \cdot [\text{T}]) = [\text{s}]\) となり正しいです。
その点は点Oからどれだけはなれているか
思考の道筋とポイント
電子はクルクル回りながら、同時に \(x\) 軸方向にも進んでいます。この「進む動き」には力が働かないので、一定のスピード(等速直線運動)です。前半で求めた「1周する時間」の間に、横方向にどれだけ進んだかを計算します。
この設問における重要なポイント
- 磁場に平行な方向(\(x\)軸方向)にはローレンツ力は働かない。
- したがって、\(x\)軸方向の加速度は \(0\) であり、等速直線運動をする。
- \(x\)軸方向の速さは \(v_{\parallel} = v \cos \theta\) である。
具体的な解説と立式
求める距離を \(L\) とします。
電子は \(x\) 軸方向に速さ \(v_{\parallel} = v \cos \theta\) で等速直線運動をします。
再び \(x\) 軸上の点を通るまでの時間は、前半で求めた周期 \(T\) です。
距離 \(=\) 速さ \(\times\) 時間 より、
$$ L = v_{\parallel} \times T $$
使用した物理公式
- 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
L &= (v \cos \theta) \times \frac{2\pi m}{eB} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi m v \cos \theta}{eB}
\end{aligned}
$$
電子の動きを横(\(x\)軸方向)から見ると、ただ一定のスピードでスーッと進んでいるだけです。1回転して戻ってくるまでの時間 \(T\) の間、このスピードで進み続けた距離が答えになります。
距離は \(L = \displaystyle\frac{2\pi m v \cos \theta}{eB}\) です。
速さ \(v\) が大きいほど、また角度 \(\theta\) が小さい(\(\cos \theta\) が大きい=より水平に近い)ほど、遠くまで進むという結果は直感と一致します。
思考の道筋とポイント
時間を媒介せず、距離と速さの比例関係を使って解く方法です。
「円周方向」と「軸方向」の運動は、同じ時間 \(T\) だけ行われます。
よって、「進んだ距離の比」は「速さの比」に等しくなります。
この設問における重要なポイント
- 円運動の1周の距離(円周)は \(2\pi r\)。
- 軸方向に進む距離は \(L\)。
- 円周方向の速さは \(v_{\perp} = v \sin \theta\)。
- 軸方向の速さは \(v_{\parallel} = v \cos \theta\)。
具体的な解説と立式
同じ時間内に進む距離の比は、速さの比に等しいので、以下の比例式が成り立ちます。
$$ (\text{軸方向の距離}) : (\text{円周の長さ}) = (\text{軸方向の速さ}) : (\text{円周方向の速さ}) $$
すなわち、
$$ L : 2\pi r = v \cos \theta : v \sin \theta $$
これを \(L\) について解くと、
$$ L = 2\pi r \times \frac{v \cos \theta}{v \sin \theta} = 2\pi r \frac{\cos \theta}{\sin \theta} $$
使用した物理公式
- 等速運動における距離と速さの比例関係: \(x_1 : x_2 = v_1 : v_2\) (時間が共通の場合)
前半で求めた半径 \(r = \displaystyle\frac{m v \sin \theta}{eB}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= 2\pi \left( \frac{m v \sin \theta}{eB} \right) \times \frac{\cos \theta}{\sin \theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi m v}{eB} \times \sin \theta \times \frac{\cos \theta}{\sin \theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi m v \cos \theta}{eB}
\end{aligned}
$$
これはメインの解法と完全に一致します。
らせん運動をする電子の軌跡を、円筒のラベルを剥がすように平面に展開すると、直角三角形の斜辺になります。このとき、「横に進む距離」と「円周の長さ」の比率は、そのまま「横方向のスピード」と「回転方向のスピード」の比率と同じになります。この図形的な性質を使うと、時間を計算しなくても距離を求めることができます。
メインの解法と同じ結果が得られました。この方法は、らせん運動の幾何学的な構造(ピッチと円周の関係)を理解するのに非常に役立ちます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動の独立性と成分分解
- 核心: この問題の最大のポイントは、複雑に見える3次元的ならせん運動を、互いに影響し合わない2つの単純な運動(等速円運動と等速直線運動)に分解して考えることです。
- 理解のポイント:
- 磁場に垂直な成分 (\(v_{\perp}\)): ローレンツ力が働き、等速円運動を引き起こします。この運動が「周期」や「半径」を決定します。
- 磁場に平行な成分 (\(v_{\parallel}\)): 力が働かず、等速直線運動をします。この運動が「進む距離(ピッチ)」を決定します。
- 共通項は「時間」: 2つの運動は独立していますが、同じ時間軸を共有しています。円運動で1周する時間 \(T\) の間に、直線運動で距離 \(L\) だけ進む、という関係性が解法の鍵です。
- ローレンツ力の性質
- 核心: ローレンツ力 \(f = qvB \sin \theta\) は常に速度ベクトルと垂直な方向に働くため、仕事をしません。
- 理解のポイント:
- 速さ一定の法則: 仕事をしないということは、運動エネルギーを変化させない、つまり速さ \(v\) は常に一定に保たれることを意味します。
- 向心力としての役割: 速度の向きだけを変える力として働くため、円運動の向心力として機能します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 電場と磁場が共存する場での運動: 電場からは加速を受け、磁場からは回転を受ける運動。この場合も成分分解が有効ですが、電場方向には等加速度運動になる点に注意が必要です。
- サイクロトロン(加速器): らせん運動の周期 \(T\) が速さや半径によらない(等時性)という性質を利用して、荷電粒子を加速する装置の原理です。
- オーロラの原理: 地球の磁力線に巻き付くようにらせん運動しながら極地に降り注ぐ荷電粒子の運動も、この問題と同じ原理で説明されます。
- 初見の問題での着眼点:
- 速度と磁場のなす角 \(\theta\) を確認する: \(\theta = 90^\circ\) なら単純な円運動、\(\theta = 0^\circ\) なら直線運動、それ以外なららせん運動です。
- 座標軸を設定する: 磁場の方向を \(x\) 軸(または \(z\) 軸)とし、それに垂直な面を \(yz\) 平面(または \(xy\) 平面)と設定すると、成分分解がスムーズに行えます。
- 「1回転して戻る」の意味を翻訳する: 「再び \(x\) 軸を通る」「\(y\) 座標が再び \(0\) になる」といった表現は、すべて「時間が周期 \(T\) の整数倍である」ことを意味しています。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 周期の計算ミス:
- 誤解: 周期 \(T = \displaystyle\frac{2\pi r}{v}\) の分母に、全速力 \(v\) を代入してしまう。
- 対策: 円運動しているのはあくまで「垂直成分 \(v_{\perp} = v \sin \theta\)」です。円周 \(2\pi r\) を回る速さは \(v_{\perp}\) なので、\(T = \displaystyle\frac{2\pi r}{v \sin \theta}\) とするのが正解です。ただし、半径 \(r\) の式にも \(v \sin \theta\) が含まれているため、結果的に \(v\) が消えることに注目しましょう。
- 半径の式における速度成分の取り違え:
- 誤解: ローレンツ力の式 \(f = evB\) や運動方程式 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) に、そのまま \(v\) を使ってしまう。
- 対策: 常に「磁場に垂直な成分だけが力を受ける」「円運動の速さは垂直成分である」と意識し、\(v\) の代わりに \(v \sin \theta\) を代入する癖をつけましょう。
- 距離の計算での成分取り違え:
- 誤解: 距離 \(L\) を求める際に、円運動の速さ \(v \sin \theta\) を掛けてしまう。
- 対策: 「進む」のは平行成分 \(v \cos \theta\) の仕事です。役割分担を明確にし、図に矢印を描いて確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 円運動の運動方程式の選択:
- 選定理由: 荷電粒子が磁場中で曲線を描く場合、その駆動力はローレンツ力です。軌道が円(またはその射影)であることから、向心力をローレンツ力とする運動方程式 \(m\displaystyle\frac{v_{\perp}^2}{r} = ev_{\perp}B\) が第一選択となります。
- 適用根拠: この式から半径 \(r\) が求まり、そこから周期 \(T\) へと繋げることができます。
- 周期の公式の選択:
- 選定理由: 「再び軸上の点を通る」という条件は、時間的な周期性を問うものです。
- 適用根拠: 円運動の基本公式 \(T = \displaystyle\frac{\text{円周}}{\text{速さ}}\) を適用します。ここで速さに \(v_{\perp}\) を使うことが最大のポイントです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める:
- \(v_{\perp}\) や \(v_{\parallel}\) といった文字を定義して計算を進め、最後に \(v \sin \theta\) などを代入すると、式がスッキリしてミスが減ります。
- 三角関数の確認:
- \(\sin \theta\) と \(\cos \theta\) のどちらを使うか迷ったら、極端な場合を想定しましょう。\(\theta = 0\)(磁場と平行)のとき、回転しない(\(r=0\))はずなので、半径の式には \(\sin 0 = 0\) となる \(\sin \theta\) が入るはずです。逆に進む速度は最大(\(v\))になるはずなので、\(\cos 0 = 1\) となる \(\cos \theta\) が入るはずです。
- 次元の確認:
- 周期 \(T\) の単位は秒 \([\text{s}]\) です。結果の式 \(\displaystyle\frac{2\pi m}{eB}\) が時間を表しているか、単位を追って確認する習慣をつけましょう(\(B\) は \([\text{N}/(\text{A}\cdot\text{m})]\) などを利用)。
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発展問題
520 電流が磁場から受ける力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 全設問共通の別解: 「有効長さ(磁場への射影)」を用いた解法
- 模範解答が「電流と磁場のなす角 \(\theta\)」を求めて \(F = IBL \sin \theta\) の公式に代入しているのに対し、別解では「磁場に垂直な面への投影成分(有効長さ)」を考えることで、角度計算を一切行わずに力の大きさと向きを導きます。
- 全設問共通の別解: 「有効長さ(磁場への射影)」を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 計算の簡略化: 3次元空間での角度 \(\theta\) を求める幾何学的な手間が省け、計算ミスを大幅に減らせます。
- 物理的本質の理解: 「磁場に平行な電流成分は力を受けず、垂直な成分のみが力を受ける」というローレンツ力の性質を直感的に利用できます。
- 空間認識の補助: 3次元の問題を2次元(xy平面)の問題に帰着させて考えることができるため、空間図形が苦手な場合でも解きやすくなります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「3次元空間内で電流が磁場から受ける力」です。空間座標におけるベクトルの向きを正確に把握し、フレミングの左手の法則を適用する力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電流が磁場から受ける力: \(F = IBL \sin \theta\) の公式。ここで \(\theta\) は電流と磁場のなす角です。
- フレミングの左手の法則: 電流(中指)、磁場(人差し指)、力(親指)の向きの関係。
- 空間座標とベクトルの分解: 3次元的な位置関係を \(xy\), \(yz\), \(zx\) 平面などに投影して考える視点。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、各頂点の座標から、コイルの各辺(PQ, QR, RP)の長さと向きを把握します。
- 各辺について、電流の向きと磁場の向き(\(z\)軸正方向)とのなす角 \(\theta\) を幾何学的に求めます。
- 公式 \(F = IBL \sin \theta\) に値を代入して力の大きさを計算します。
- フレミングの左手の法則を用いて、力の向きを決定します。
辺PQが受ける力
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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