「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅴ 章 18】発展例題~発展問題472

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発展例題

発展例題37 充電されたコンデンサーの接続

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 電位を用いた解法(ノード解析)
      • 模範解答が「電気量 \(Q\)」を未知数として連立方程式を立てるのに対し、別解では回路内の接続点の「電位 \(x\)」を未知数として設定します。
      • 孤立部分の電気量保存則を、電位を用いて一本の方程式で表し、電位を求めてから電気量を計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 未知数の削減: 未知数が2つ(\(Q_1, Q_2\))から1つ(電位 \(x\))に減るため、計算の見通しが良くなります。
    • 汎用性の高さ: 複雑な回路網や、コンデンサーが3つ以上接続された問題でも、同じ手順(各点の電位を置く→保存則を立てる)で機械的に解くことができる強力な手法です。
  3. 結果への影響
    • どちらの方法でも、最終的に得られる電気量と電圧の値は完全に一致します。

この問題のテーマは「初期電荷を持つコンデンサーを含む回路の計算」です。スイッチを閉じた後の回路における電荷の移動と再配分を、保存則と電圧の関係から解き明かします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気量保存の法則(孤立部分の電荷保存): コンデンサーの極板を含む導線が他の部分と絶縁されている(孤立している)場合、その部分の電荷の総和は変化しません。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路を一周したときの電圧降下の和は、起電力の和に等しくなります。
  3. コンデンサーの基本式: \(Q = CV\) の関係式を用いて、電気量、電気容量、電圧を結びつけます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まずスイッチを閉じる前の初期電荷を確認します。次に、スイッチを閉じた後の電気量を \(Q_1, Q_2\) と置き、孤立部分に着目して電気量保存の式を立てます。さらに、回路一周の電圧の関係式を立て、これらを連立させて解きます。
  2. (2)では、(1)で求めた電気量 \(Q_1, Q_2\) を用いて、基本式 \(V = Q/C\) からそれぞれの電圧を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
この問題の最大のポイントは、コンデンサー \(C_1\) が最初から充電されていることです。そのため、単純な直列合成の公式(電気量が等しいとする考え方)は使えません。
以下の2つの物理法則に基づいて式を立て、連立方程式を解くのが王道です。
1. 電気量保存の法則: 破線で囲まれた部分は、スイッチや電池と直接つながっておらず「孤立」しています。この部分の電荷の合計は、スイッチを入れる前後で変わりません。
2. キルヒホッフの第2法則: 回路をぐるっと一周すると、電池で上がった電圧分だけ、各コンデンサーで電圧が下がります。

この設問における重要なポイント

  • \(C_1\) の初期電荷は \(3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}\) ですが、極板の正負(左が正、右が負)に注意が必要です。
  • 孤立部分(\(C_1\) の右側極板と \(C_2\) の左側極板)の初期電荷の総和を正しく計算すること。
  • スイッチを閉じた後の電荷の向きを仮定し、その向きに合わせて式を立てること。

具体的な解説と立式
まず、初期状態の電荷を確認します。
\(C_1\) は電圧 \(10\,\text{V}\) で充電されているので、蓄えられている電気量の大きさ \(Q_{\text{初}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{初}} &= C_1 \times 10 \\[2.0ex]
&= (3.0 \times 10^{-6}) \times 10 \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
図より、\(C_1\) の左側が正、右側が負に帯電しています。
したがって、孤立部分(\(C_1\) の右側極板と \(C_2\) の左側極板)にある初期電荷の総和は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{初期の総電荷}) &= (C_1\text{の右側}) + (C_2\text{の左側}) \\[2.0ex]
&= (-3.0 \times 10^{-5}) + 0 \\[2.0ex]
&= -3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
次に、スイッチを閉じた後の状態を考えます。
図のように、\(C_1\) に蓄えられる電気量を \(Q_1\)、\(C_2\) に蓄えられる電気量を \(Q_2\) とします。極板の符号は図に従い、\(C_1\) の右側を \(-Q_1\)、\(C_2\) の左側を \(+Q_2\) とします。

1. 電気量保存の法則
孤立部分の電荷の総和は保存されるので、以下の式が成り立ちます。
$$ -Q_1 + Q_2 = -3.0 \times 10^{-5} \quad \cdots ① $$
2. キルヒホッフの第2法則(電圧の関係)
回路を時計回りに一周考えます。電池で \(50\,\text{V}\) 上がり、\(C_1\) で \(V_1\) 下がり、\(C_2\) で \(V_2\) 下がって元に戻ります。
$$ V_1 + V_2 = 50 $$
ここで、\(V_1 = \frac{Q_1}{C_1}\)、\(V_2 = \frac{Q_2}{C_2}\) なので、これを代入すると以下のようになります。
$$ \frac{Q_1}{3.0 \times 10^{-6}} + \frac{Q_2}{2.0 \times 10^{-6}} = 50 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 電気量保存の法則: \((\text{電荷の総和})_{\text{前}} = (\text{電荷の総和})_{\text{後}}\)
  • コンデンサーの基本式: \(V = \frac{Q}{C}\)
  • キルヒホッフの第2法則: \((\text{起電力の和}) = (\text{電圧降下の和})\)
計算過程

式①と式②を連立して解きます。
まず、式②の両辺に \(6.0 \times 10^{-6}\) を掛けて分母を払います。
$$
\begin{aligned}
2.0 Q_1 + 3.0 Q_2 &= 50 \times (6.0 \times 10^{-6}) \\[2.0ex]
2Q_1 + 3Q_2 &= 300 \times 10^{-6} \quad \cdots ②’
\end{aligned}
$$
次に、式①を変形して \(Q_1\) について解きます。
$$ Q_1 = Q_2 + 3.0 \times 10^{-5} $$
これを式②’に代入します。ここで、\(3.0 \times 10^{-5} = 30 \times 10^{-6}\) と表記を合わせると計算しやすくなります。
$$
\begin{aligned}
2(Q_2 + 30 \times 10^{-6}) + 3Q_2 &= 300 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
2Q_2 + 60 \times 10^{-6} + 3Q_2 &= 300 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
5Q_2 &= 240 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
Q_2 &= \frac{240}{5} \times 10^{-6} \\[2.0ex]
Q_2 &= 48 \times 10^{-6}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
求めた \(Q_2\) を \(Q_1\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 48 \times 10^{-6} + 30 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
Q_1 &= 78 \times 10^{-6}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表記します。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C} \\[2.0ex]
Q_2 &= 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

\(C_1\) と \(C_2\) の間の導線は、まるで「離れ小島」のようにどこにもつながっていません。そのため、この島の中に最初にあった電気の粒(電荷)の合計数は、スイッチを入れて電気が流れた後も変わらないはずです。これを「電気量保存の法則」といいます。
最初は \(C_1\) の右側にマイナスの電気が溜まっていました。スイッチを入れると、電池の力で電気が押し動かされ、\(C_1\) と \(C_2\) に新たな電気が溜まりますが、「離れ小島」の中の合計はキープされます。このルールと、「回路全体の電圧は \(50\,\text{V}\) で分け合う」というルールを組み合わせることで、それぞれの電気量を計算できます。

結論と吟味

\(Q_1 = 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\)、\(Q_2 = 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\) と求まりました。
\(Q_1 > Q_2\) となっていますが、これは \(C_1\) に最初から電荷があったことと、\(C_1\) の容量が大きいことが影響しています。また、\(Q_1\) と \(Q_2\) の差 \(3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}\) は初期電荷と一致しており、保存則が満たされていることが確認できます。

解答 (1) \(C_1: 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C}, \quad C_2: 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\)
別解: 電位を用いた解法(ノード解析)

思考の道筋とポイント
回路の各点の「高さ(電位)」を決めて考える方法です。電池の負極を基準(\(0\,\text{V}\))とし、\(C_1\) と \(C_2\) の間の導線の電位を未知数 \(x\) と置きます。こうすることで、各コンデンサーにかかる電圧を \(x\) を使って表すことができ、電気量保存の式を直接 \(x\) についての方程式として立てることができます。

この設問における重要なポイント

  • 電池の負極を \(0\,\text{V}\) とすると、正極は \(50\,\text{V}\) になります。
  • \(C_1\) と \(C_2\) の接続点の電位を \(x\,\text{V}\) とします。
  • コンデンサーに蓄えられる電気量は \(Q = C \times (\text{電位差})\) で表されます。

具体的な解説と立式
電池の負極側の導線の電位を \(0\,\text{V}\) とします。すると、電池の正極側の導線の電位は \(50\,\text{V}\) となります。
\(C_1\) と \(C_2\) の間の導線の電位を \(x\,[\text{V}]\) と置きます。

各コンデンサーの極板の電荷を、電位を用いて表します。

  • \(C_1\) について:
    • 左側極板の電位は \(50\,\text{V}\)、右側極板の電位は \(x\,\text{V}\) です。
    • 右側極板(孤立部分側)の電荷 \(Q_{1\text{右}}\) は、電位が低い側と仮定して以下のようになります。
      $$ Q_{1\text{右}} = -C_1 (50 – x) $$
  • \(C_2\) について:
    • 左側極板の電位は \(x\,\text{V}\)、右側極板の電位は \(0\,\text{V}\) です。
    • 左側極板(孤立部分側)の電荷 \(Q_{2\text{左}}\) は、電位が高い側と仮定して以下のようになります。
      $$ Q_{2\text{左}} = +C_2 (x – 0) $$

電気量保存の法則
孤立部分(\(C_1\) 右側 + \(C_2\) 左側)の電荷の総和は、初期状態の総電荷 \(-3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}\) と等しいので、以下の式が成り立ちます。
$$ -C_1(50 – x) + C_2 x = -3.0 \times 10^{-5} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量と電位の関係: \(Q = C \Delta V\)
  • 電気量保存の法則
計算過程

値を代入して \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
-3.0 \times 10^{-6} (50 – x) + 2.0 \times 10^{-6} x &= -3.0 \times 10^{-5} \\[2.0ex]
\text{両辺を } 10^6 \text{ 倍して:} \quad -3.0(50 – x) + 2.0x &= -30 \\[2.0ex]
-150 + 3.0x + 2.0x &= -30 \\[2.0ex]
5.0x &= 120 \\[2.0ex]
x &= 24\,\text{V}
\end{aligned}
$$
接続点の電位が \(24\,\text{V}\) と求まりました。これを用いて電気量を計算します。
\(C_1\) にかかる電圧は \(50 – 24 = 26\,\text{V}\) なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= C_1 \times 26 \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 10^{-6} \times 26 \\[2.0ex]
&= 78 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
\(C_2\) にかかる電圧は \(24 – 0 = 24\,\text{V}\) なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= C_2 \times 24 \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^{-6} \times 24 \\[2.0ex]
&= 48 \times 10^{-6} \\[2.0ex]
&= 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路の場所ごとの「電気的な高さ(電位)」を地図の標高のように考えます。電池のマイナス側を海抜0mとすると、プラス側は標高50mです。中間の地点(\(C_1\) と \(C_2\) の間)の標高を \(x\) mとします。
コンデンサーに溜まる電気は、その両端の標高差に比例します。この関係を使って、「中間の地点に集まっている電気の総量は変わらない」という式を作ると、未知数が \(x\) だけのシンプルな方程式になります。これを解けば、中間の標高がわかり、そこから電気の量も計算できます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。この方法は、連立方程式を立てずに1本の式で解けるため、計算ミスが少なくなる利点があります。また、求めた \(x=24\,\text{V}\) はそのまま設問(2)の \(V_2\) の答えになっています。

解答 (1) \(C_1: 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C}, \quad C_2: 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)でそれぞれのコンデンサーに蓄えられた電気量 \(Q_1, Q_2\) が求まっているので、コンデンサーの基本公式 \(V = \frac{Q}{C}\) に代入するだけで電圧を求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • \(C_1\) と \(C_2\) の電気容量の値を取り違えないように注意する。
  • 計算結果の和 \(V_1 + V_2\) が、電源電圧 \(50\,\text{V}\) になっているか確認する(検算)。

具体的な解説と立式
\(C_1\) の両端の電圧を \(V_1\)、\(C_2\) の両端の電圧を \(V_2\) とします。
コンデンサーの基本式 \(V = \frac{Q}{C}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$ V_1 = \frac{Q_1}{C_1}, \quad V_2 = \frac{Q_2}{C_2} $$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(V = \frac{Q}{C}\)
計算過程

(1)で求めた \(Q_1 = 7.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\)、\(Q_2 = 4.8 \times 10^{-5}\,\text{C}\) を代入します。

\(V_1\) の計算:
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{7.8 \times 10^{-5}}{3.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= \frac{78}{3.0} \\[2.0ex]
&= 26\,\text{V}
\end{aligned}
$$
\(V_2\) の計算:
$$
\begin{aligned}
V_2 &= \frac{4.8 \times 10^{-5}}{2.0 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= \frac{48}{2.0} \\[2.0ex]
&= 24\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(1)で、それぞれのコンデンサーにどれだけの電気が溜まったかがわかりました。コンデンサーの性能(電気容量)もわかっているので、「これだけの電気を溜めるには、どれくらいの電圧がかかっているはずか?」を計算するだけです。

結論と吟味

\(V_1 = 26\,\text{V}\)、\(V_2 = 24\,\text{V}\) と求まりました。
これらを足し合わせると以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_1 + V_2 &= 26 + 24 \\[2.0ex]
&= 50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
となり、電源電圧 \(50\,\text{V}\) と一致します。これはキルヒホッフの第2法則を満たしており、計算が正しいことを示しています。
また、別解で求めた接続点の電位 \(x=24\,\text{V}\) は \(V_2\) そのものであり、\(V_1 = 50 – 24 = 26\,\text{V}\) となることとも整合しています。

解答 (2) \(C_1: 26\,\text{V}, \quad C_2: 24\,\text{V}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電気量保存の法則の適用
    • 核心: 導線でつながれただけの「孤立部分」では、外部との電荷の出入りがないため、電荷の総和が保存されるという原理です。
    • 理解のポイント:
      • 孤立部分の特定: スイッチや電源の極板と直接つながっていない、コンデンサーの極板同士をつなぐ導線部分を見抜く力が問われます。
      • 初期状態の考慮: コンデンサーが未充電なら初期電荷は \(0\) ですが、本問のように充電済みの場合は、その符号(正負)を含めた代数和を計算する必要があります。
  • キルヒホッフの第2法則(電圧則)
    • 核心: 回路を一周したときの電位の上がり下がりの総和はゼロになる(元の高さに戻る)という法則です。
    • 理解のポイント:
      • 電位のイメージ: 電池は電位を上げるポンプ、コンデンサーは電位を下げる(または上げる)段差としてイメージします。
      • 式の独立性: 未知数が複数ある場合、電気量保存則だけでは式が足りません。回路の幾何学的な構造(ループ)から電圧の関係式を導くことで、連立方程式を閉じることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スイッチの切り替え問題: スイッチをA側に倒して充電した後、B側に倒して別のコンデンサーと接続するタイプ。これも「孤立部分の電荷保存」が鍵です。
    • 極板間隔の変更や誘電体の挿入: スイッチを開いた後(電荷保存)か、閉じたまま(電圧一定)かで保存される物理量が異なります。
    • 3つ以上のコンデンサー接続: 複雑な回路網では、キルヒホッフの法則よりも「各点の電位を未知数と置く」ノード解析(別解の手法)が圧倒的に有利になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 孤立部分(島)を探す: まず、どこが電気的に孤立しているかを指でなぞって確認し、その部分を破線で囲む癖をつけましょう。
    2. 初期電荷の有無と向きをチェック: 「充電されていない」のか「充電されている」のか。充電されているなら、どっちの極板がプラスかを必ず図に書き込みます。
    3. 電位マップを描く: 電池の負極を \(0\,\text{V}\) として、回路の各点がどの高さ(電位)にあるかを書き込むと、電圧の関係が見えやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 初期電荷の符号の取り違え:
    • 誤解: \(C_1\) の初期電荷を、孤立部分に含まれる極板の符号(負)ではなく、単に大きさ(正)として計算してしまう。
    • 対策: 孤立部分に含まれているのが「正極板」なのか「負極板」なのかを図で慎重に確認します。本問では \(C_1\) の右側(負極板)が孤立部分に含まれるため、\(-3.0 \times 10^{-5}\,\text{C}\) となります。
  • 直列合成容量の公式の誤用:
    • 誤解: \(C_1\) と \(C_2\) が直列だからといって、合成容量 \(C = \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}\) を使い、全電気量を \(Q = C \times 50\) で求めようとする。
    • 対策: 直列合成の公式は「初期電荷がない」または「初期電圧の和が電源電圧と釣り合っている」などの特殊な条件下でのみ成立します。初期電荷がある一般的なケースでは、必ず保存則と電圧則に戻って考える必要があります。
  • 単位の換算ミス:
    • 誤解: \(\mu\text{F}\) の \(\mu\)(\(10^{-6}\))を計算途中で忘れてしまう。
    • 対策: 計算中は \(10^{-6}\) を文字(例えば \(\mu\) のまま)として扱い、最後に代入するか、あるいは全ての項に \(10^{-6}\) が共通している場合は早めに約分して消去するとミスが減ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 電気量保存の法則の選択:
    • 選定理由: 回路の一部が孤立しており、外部からの電荷の供給がないため。電荷という物質(キャリア)の総数が変わらないという最も基本的な保存則だからです。
    • 適用根拠: \(C_1\) の右側極板と \(C_2\) の左側極板をつなぐ導線は、スイッチや電池と接続されておらず、電気的に浮いています。したがって、この区間内の電荷の総和は時間変化せず、初期状態の総和と等しくなるという条件が適用できます。
  • キルヒホッフの第2法則の選択:
    • 選定理由: 未知数が \(Q_1, Q_2\) の2つあるため、保存則以外にもう一つ独立した式が必要です。回路が閉ループを形成している場合、電圧(エネルギー)の関係式が必ず成立するためです。
    • 適用根拠: 回路は電池と2つのコンデンサーを含む一つの閉じたループを形成しています。静電場において電位は一意に定まるため、任意の点から出発して回路を一周して戻ってきたとき、電位の変化の総和は必ずゼロになるという法則が適用できます。
  • \(Q=CV\) の適用:
    • 選定理由: コンデンサーの状態(電気量、容量、電圧)を結びつける唯一の定義式だからです。電圧則で \(V\) を扱う際、保存則の変数 \(Q\) と結びつけるために不可欠です。
    • 適用根拠: コンデンサーの極板間に蓄えられる電気量 \(Q\) は、極板間の電位差 \(V\) に比例します。この比例定数が電気容量 \(C\) であり、本問では \(C_1, C_2\) が既知であるため、未知数 \(Q\) と \(V\) を相互に変換するためにこの関係式が適用されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数部分の処理:
    • \(3.0 \times 10^{-6}\) のような指数表記を含む計算では、係数部分(\(3.0\))と指数部分(\(10^{-6}\))を分けて整理します。特に連立方程式では、両辺を \(10^6\) 倍して指数を消去してから計算すると、整数の計算に帰着でき、ミスが激減します。
  • 検算の習慣:
    • (2)で求めた \(V_1\) と \(V_2\) を足して、必ず電源電圧 \(50\,\text{V}\) になるか確認しましょう。もしならなければ、(1)の電気量の計算か、(2)の割り算のどちらかが間違っています。
  • 物理量のオーダー確認:
    • コンデンサーの電気量は通常 \(\mu\text{C}\)(\(10^{-6}\,\text{C}\))のオーダーになります。計算結果が \(10^5\,\text{C}\) のような巨大な値になったり、\(10^{-20}\,\text{C}\) のような微小な値になった場合は、指数の計算ミスを疑いましょう。

発展例題38 極板間にはたらく力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 電場と電荷の相互作用に着目した解法
      • 模範解答が「エネルギー原理(仕事とエネルギーの関係)」を用いて間接的に力を求めるのに対し、別解では「電場が電荷に及ぼす力」として直接的に引力を導出します。
      • 一方の極板が作る電場を考え、その電場の中に置かれたもう一方の極板の電荷が受ける力を計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の強化: 「力がなぜ発生するのか」という微視的なメカニズム(クーロン力の集まり)を理解できます。
    • 公式の背景理解: コンデンサーの極板間引力の公式 \(F = \frac{1}{2}QE\) の導出過程そのものであり、公式を丸暗記せずに済みます。
    • 適用範囲の広さ: エネルギー変化を計算するのが面倒な場合や、電場が既知の場合に素早く力を求められます。
  3. 結果への影響
    • どちらのアプローチを用いても、最終的に得られる力の大きさは完全に一致します。

この問題のテーマは「コンデンサーの極板間に働く力(静電力)とエネルギー収支」です。コンデンサーの極板同士は異符号の電荷を帯びているため、互いに引き合っています。この力を、エネルギーの観点と力の観点の両面から理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの静電エネルギー: 電荷を蓄えたコンデンサーはエネルギーを持ちます。電荷 \(Q\)、電気容量 \(C\)、電圧 \(V\) を用いて、\(U = \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C}\) と表されます。
  2. 電気容量の決定要因: 平行板コンデンサーの電気容量 \(C\) は、極板面積 \(S\) に比例し、極板間隔 \(d\) に反比例します(\(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\))。
  3. 仕事とエネルギーの関係(エネルギー原理): 外力が系に対して仕事を行うと、その分だけ系のエネルギーが増加します。
    • \((\text{外力がした仕事}) = (\text{静電エネルギーの増加分})\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた物理量(\(Q, C\))に適した静電エネルギーの公式を選択して計算します。
  2. (2)では、極板間隔が変わることで電気容量がどう変化するかを考え、新しい容量を用いてエネルギーを再計算します。このとき、コンデンサーが孤立しているため電荷 \(Q\) が保存されることに着目します。
  3. (3)では、極板を引き離すために外力がした仕事が、静電エネルギーの増加になったと考えます。「仕事 \(=\) 力 \(\times\) 距離」の関係式と、(1)(2)の結果を結びつけて力を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
静電エネルギーの公式は3通り(\(U = \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C}\))ありますが、問題文で与えられている文字は \(C\) と \(Q\) です。したがって、\(Q\) と \(C\) を含む式を選択するのが最適です。

この設問における重要なポイント

  • 与えられた文字(\(C, d, Q\))のみを使って答えを表すこと。
  • 適切な公式を選択すること。

具体的な解説と立式
コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー \(U\) を求める公式として、電荷 \(Q\) と電気容量 \(C\) を用いるものを選びます。
静電エネルギー \(U\) は以下の式で表されます。
$$ U = \frac{Q^2}{2C} $$

使用した物理公式

  • 静電エネルギーの公式: \(U = \frac{Q^2}{2C}\)
計算過程

公式そのものが答えとなるため、特別な計算過程はありません。
$$ U = \frac{Q^2}{2C} $$

この設問の平易な説明

コンデンサーに電気が溜まっているとき、そこにはエネルギーが蓄えられています。これを静電エネルギーといいます。公式に当てはめるだけの基本問題ですが、どの公式を使うか迷わないようにしましょう。今回は「電気の量 \(Q\)」と「容器の大きさ \(C\)」がわかっているので、それらを使う式を選びます。

結論と吟味

答えは \(U = \frac{Q^2}{2C}\) です。単位を確認すると、\(Q\) はクーロン \([\text{C}]\)、\(C\) はファラド \([\text{F}] = [\text{C/V}]\) なので、\(Q^2/C\) の単位は \([\text{C}^2 / (\text{C/V})] = [\text{C} \cdot \text{V}] = [\text{J}]\)(ジュール)となり、エネルギーの単位として正しいです。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{Q^2}{2C}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
極板間隔を \(d\) から \(d + \Delta x\) に広げると、電気容量 \(C\) が変化します。
コンデンサーは電源につながれていない(孤立している)ため、極板上の電荷 \(Q\) は一定のまま保存されます。
新しい電気容量 \(C’\) を求め、それを使って新しい静電エネルギー \(U’\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 電荷保存則: コンデンサーが孤立しているため、極板間隔を変えても電荷 \(Q\) は変化しない。
  • 容量と間隔の関係: 平行板コンデンサーの電気容量は、極板間隔に反比例する。

具体的な解説と立式
まず、極板間隔を広げた後の新しい電気容量 \(C’\) を求めます。
平行板コンデンサーの電気容量は極板間隔に反比例するため、元の容量 \(C\) との関係は以下のようになります。
$$ C’ = \frac{d}{d + \Delta x} C $$
次に、この新しい容量 \(C’\) と、変化しない電荷 \(Q\) を用いて、変化後の静電エネルギー \(U’\) を立式します。
$$ U’ = \frac{Q^2}{2C’} $$

使用した物理公式

  • 平行板コンデンサーの電気容量: \(C \propto \frac{1}{d}\)
  • 静電エネルギーの公式: \(U = \frac{Q^2}{2C}\)
計算過程

\(U’\) の式に \(C’\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
U’ &= \frac{Q^2}{2 \left( \frac{d}{d + \Delta x} C \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2 (d + \Delta x)}{2Cd}
\end{aligned}
$$
これを展開して整理することもできますが、この形のままでも十分です。あるいは、項を分けて書くと以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
U’ &= \frac{Q^2 d}{2Cd} + \frac{Q^2 \Delta x}{2Cd} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2}{2C} + \frac{Q^2 \Delta x}{2Cd}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コンデンサーの極板を引き離すと、電気を蓄える能力(電気容量)は下がります。具体的には、距離が伸びた分だけ容量は小さくなります。
一方で、逃げ場のない電気(電荷)の量は変わりません。「能力が下がったのに同じ量の電気を無理やり押し込めている」状態になるため、エネルギー(窮屈さ)は高くなります。計算結果も、元のエネルギー \(U\) にプラスの項が加わっており、エネルギーが増えていることがわかります。

結論と吟味

答えは \(U’ = \frac{Q^2(d + \Delta x)}{2Cd}\) です。
\(\Delta x > 0\) なので \(U’ > U\) となり、極板を引き離すことでエネルギーが増加するという物理的直感と一致します。これは、プラスとマイナスの極板が引き合っているのに、無理やり引き離すために仕事をした結果、その仕事がエネルギーとして蓄えられたと解釈できます。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{Q^2(d + \Delta x)}{2Cd}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
「極板間にはたらく引力」に逆らって、外力が極板を引き離しました。
このとき、「外力がした仕事」が、そのまま「コンデンサーの静電エネルギーの増加」になっています。
このエネルギー収支の関係(エネルギー原理)を利用して、力の大きさ \(F\) を逆算します。

この設問における重要なポイント

  • ゆっくりと引き離す: 運動エネルギーの変化はゼロとみなせるため、外力がした仕事はすべて静電エネルギーの増加に変わる。
  • 力のつりあい: ゆっくり動かすとき、外力の大きさは極板間の引力の大きさ \(F\) と等しい。
  • 仕事の定義: 一定の力 \(F\) で距離 \(\Delta x\) だけ動かしたときの仕事は \(W = F \Delta x\)。

具体的な解説と立式
極板間の引力の大きさを \(F\) とします。極板をゆっくり引き離すために加える外力の大きさも \(F\) となります。
外力がした仕事 \(W_{\text{外}}\) は、力と移動距離の積で表されます。
$$ W_{\text{外}} = F \Delta x $$
一方、静電エネルギーの増加分 \(\Delta U\) は、(2)の結果と(1)の結果の差です。
$$ \Delta U = U’ – U $$
エネルギー保存則(機能原理)より、外力がした仕事は静電エネルギーの増加分に等しいため、以下の等式が成り立ちます。
$$ F \Delta x = U’ – U $$

使用した物理公式

  • 仕事の定義: \(W = Fx\)
  • エネルギー原理: \(W_{\text{外}} = \Delta U\)
計算過程

方程式を \(F\) について解きます。
まず、右辺の \(U’ – U\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
U’ – U &= \frac{Q^2(d + \Delta x)}{2Cd} – \frac{Q^2}{2C} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2 d + Q^2 \Delta x}{2Cd} – \frac{Q^2 d}{2Cd} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2 \Delta x}{2Cd}
\end{aligned}
$$
これを元の等式に代入します。
$$
\begin{aligned}
F \Delta x &= \frac{Q^2 \Delta x}{2Cd}
\end{aligned}
$$
両辺を \(\Delta x\) (\(\neq 0\))で割って \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{Q^2}{2Cd}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

プラスの極板とマイナスの極板は互いに引き合っています(引力)。これを引き離すには、力が必要です。
私たちが頑張って力を入れて引き離すと、その分だけ「仕事」をしたことになります。この仕事は消えてなくなるのではなく、コンデンサーの中に「エネルギー」として蓄えられます。
「私たちがした仕事 \(=\) 増えたエネルギー」という関係式を作れば、そこから逆算して「どれくらいの力で引っぱったか(=極板間の引力)」を求めることができます。

結論と吟味

極板間の引力の大きさは \(F = \frac{Q^2}{2Cd}\) と求まりました。
この式には \(\Delta x\) が含まれていません。つまり、極板間隔が変わっても引力の大きさは一定である(距離に依存しない)ことを意味しています。これは、平行板コンデンサー内部の一様な電場による力であることと整合します。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{Q^2}{2Cd}\)
別解: 電場と電荷の相互作用に着目した解法

思考の道筋とポイント
エネルギーの変化から間接的に力を求めるのではなく、電場が電荷に及ぼす力 \(F = qE\) を直接計算して求めます。ただし、極板間引力を考える際は、「自分自身が作る電場」を除いた、「相手の極板が作る電場」だけを考える必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 電場の重ね合わせ: コンデンサー内部の電場 \(E\) は、正極板が作る電場と負極板が作る電場の和である。
  • 対称性: 正極板と負極板が作る電場の大きさは等しく、向きも同じ(プラスから出る向きとマイナスに入る向き)である。
  • 力の起源: 電荷 \(Q\) は、相手の極板が作る電場 \(E_{\text{片側}}\) から力を受ける。

具体的な解説と立式
まず、コンデンサー内部の電場 \(E\) を、与えられた文字 \(Q, C, d\) で表します。
コンデンサーの基本式 \(Q = CV\) と、一様な電場の式 \(V = Ed\) より、
$$ E = \frac{V}{d} = \frac{Q/C}{d} = \frac{Q}{Cd} $$
この電場 \(E\) は、正極板が作る電場 \(E_{+}\) と負極板が作る電場 \(E_{-}\) の合成です。対称性より、それぞれの大きさは等しいので、
$$ E_{+} = E_{-} = \frac{1}{2}E = \frac{Q}{2Cd} $$
負極板上の電荷 \(-Q\) は、正極板が作る電場 \(E_{+}\) から引力を受けます。その大きさ \(F\) は以下の式で表されます。
$$ F = |-Q| \times E_{+} $$

使用した物理公式

  • 電場と電位の関係: \(E = \frac{V}{d}\)
  • コンデンサーの基本式: \(V = \frac{Q}{C}\)
  • 電場から受ける力: \(F = qE\)
計算過程

式に値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= Q \times \frac{Q}{2Cd} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2}{2Cd}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コンデンサーの中には、プラスからマイナスに向かう電気の流れ(電場)があります。この電場は、プラスの板とマイナスの板が半分ずつ出し合って作っています。
マイナスの板は、プラスの板が作った「半分の電場」に引っ張られます。
まず、コンデンサー全体の電場の強さを計算し、それを半分にします。その「半分の電場」が電荷 \(Q\) を引っ張る力を計算すれば、それが極板間の引力になります。

結論と吟味

エネルギー原理を用いた主たる解法と完全に一致する結果 \(F = \frac{Q^2}{2Cd}\) が得られました。
この方法は、エネルギーの変化を計算する必要がなく、電場の概念がしっかりしていれば非常に素早く解くことができます。また、力が一定である理由(一様な電場だから)も直感的に理解しやすいです。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{Q^2}{2Cd}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 静電エネルギーと仕事の関係(エネルギー原理)
    • 核心: 外力が系に対して仕事を行うと、その仕事の分だけ系の静電エネルギーが増加するという原理です。
    • 理解のポイント:
      • エネルギーの収支: 「入ってきたエネルギー(仕事)= 蓄えられたエネルギーの増加分」という等式を立てる感覚が重要です。
      • ゆっくり動かす意味: 「ゆっくり」という言葉は、運動エネルギーの変化を無視し、外力がした仕事がすべて静電エネルギー(位置エネルギー)に変わることを保証するためのキーワードです。
  • コンデンサーの極板間引力の起源
    • 核心: 極板間引力は、一方の極板上の電荷が、もう一方の極板が作る電場から受けるクーロン力です。
    • 理解のポイント:
      • 自己電場の除外: 電荷は自分自身が作る電場からは力を受けません。したがって、極板間引力を計算する際は、コンデンサー内部の全電場 \(E\) ではなく、相手の極板が作る電場 \(\frac{1}{2}E\) を用いる必要があります。これが公式 \(F = \frac{1}{2}QE\) の \(\frac{1}{2}\) の由来です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電池をつないだまま極板間隔を変える問題: 電圧 \(V\) が一定となるため、静電エネルギーの公式は \(U = \frac{1}{2}CV^2\) を使います。この場合、外力の仕事だけでなく、電池がする仕事も考慮する必要があり、エネルギー収支の式が \(W_{\text{外}} + W_{\text{電池}} = \Delta U\) と複雑になります。
    • 誘電体を出し入れする問題: 誘電体が極板間に引き込まれる力も、同様にエネルギー原理(仮想変位の原理)を用いて計算できます。
    • 極板面積を変える(ずらす)問題: 面積 \(S\) が変わることで容量 \(C\) が変化し、それに伴うエネルギー変化から、極板を横方向に引き戻そうとする力を求めることができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 孤立系か電圧一定か: まず、スイッチが開いている(電荷 \(Q\) 一定)か、閉じている(電圧 \(V\) 一定)かを確認します。これによって選ぶべき公式が決まります。
    2. 変化する量は何か: 極板間隔 \(d\)、面積 \(S\)、誘電率 \(\varepsilon\) のうち、何が変化して電気容量 \(C\) がどう変わるかを特定します。
    3. エネルギーの変化を計算: 変化前後のエネルギーを計算し、その差分をとります。
    4. 仕事と結びつける: そのエネルギー差が、誰の仕事によるものか(外力か、電池か、あるいはその両方か)を考え、等式を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電場の取り違え(\(E\) か \(\frac{1}{2}E\) か):
    • 誤解: 極板間引力を求める際、単純に \(F = QE\) としてしまい、係数 \(\frac{1}{2}\) を忘れる。
    • 対策: 「電荷は自分の作る電場からは力を受けない」という原則を思い出しましょう。あるいは、迷ったら確実な「エネルギー原理(仕事=エネルギー変化)」で解くのが安全です。
  • 公式選択のミス:
    • 誤解: 電荷 \(Q\) が一定の条件なのに、\(U = \frac{1}{2}CV^2\) を使ってしまい、\(V\) が変化することを忘れて計算が複雑になる、または間違える。
    • 対策: 「変化しない文字」を含む公式を選ぶのが鉄則です。\(Q\) 一定なら \(U = \frac{Q^2}{2C}\)、\(V\) 一定なら \(U = \frac{1}{2}CV^2\) を第一選択にしましょう。
  • 符号のミス:
    • 誤解: 引力なのに、外力が負の仕事をしたと考えてしまう。
    • 対策: 「引力に逆らって引き離す」=「外力と移動方向が同じ」=「正の仕事」=「エネルギー増加」という因果関係を整理しましょう。逆に、引力に引かれて近づく場合は、外力が支えながらゆっくり動かす(負の仕事)か、自然に加速して運動エネルギーになる(エネルギー保存)かのどちらかです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 静電エネルギー \(U = \frac{Q^2}{2C}\) の選択:
    • 選定理由: 問題の条件として、コンデンサーが孤立しており電荷 \(Q\) が保存されるためです。また、与えられた変数が \(Q\) と \(C\) であるため、これらを直接含む公式が最適です。
    • 適用根拠: 静電エネルギーの公式は3つありますが、変数が変化する状況下では、定数(この場合は \(Q\))を含む式を使うことで、変数の依存関係(\(U\) が \(C\) にどう反比例するか)を明確に見抜くことができます。
  • エネルギー原理 \(W = \Delta U\) の選択:
    • 選定理由: 力を直接求めるのが難しい(電場の係数 \(\frac{1}{2}\) の理由など、微視的な考察が必要な)場合でも、エネルギーという巨視的な量(スカラー量)の変化だけで結論を出せる強力な手法だからです。
    • 適用根拠: 系(コンデンサー)に対して非保存力である外力が仕事を行い、その結果として系の内部エネルギー(静電エネルギー)が変化したという熱力学第一法則の力学版が適用されます。
  • 電気容量 \(C’ = \frac{d}{d+\Delta x}C\) の適用:
    • 選定理由: 平行板コンデンサーの幾何学的な形状変化が電気容量に与える影響を評価するためです。
    • 適用根拠: 平行板コンデンサーの電気容量の公式 \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) より、\(C\) は \(d\) に反比例します。したがって、間隔が \(d\) から \(d+\Delta x\) になれば、容量は \(\frac{d}{d+\Delta x}\) 倍になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の次元確認(単位チェック):
    • 力の公式 \(F = \frac{Q^2}{2Cd}\) を導いた後、単位を確認します。\(\frac{Q^2}{C}\) はエネルギー \([\text{J}]\) なので、それを長さ \(d [\text{m}]\) で割ると \([\text{J/m}] = [\text{N}]\) となり、力の単位として正しいことが確認できます。
  • 極限の考察:
    • (2)のエネルギーの式で、もし \(\Delta x = 0\) なら \(U’ = U\) に戻るか確認します。また、\(\Delta x \to \infty\) でエネルギーが無限大になる(無限に引き離すには無限の仕事が必要)ことも直感と合致します。
  • 差分の計算テクニック:
    • \(U’ – U\) を計算する際、共通因数 \(\frac{Q^2}{2C}\) や \(\frac{Q^2}{2Cd}\) を早めにくくり出すと、計算量が減りミスも防げます。例えば、\(\frac{Q^2}{2Cd}(d+\Delta x) – \frac{Q^2}{2Cd}d = \frac{Q^2}{2Cd}(d+\Delta x – d) = \frac{Q^2 \Delta x}{2Cd}\) のように計算します。
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発展問題

465 コンデンサーの回路

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 電位を用いた解法(ノード解析)
      • 模範解答が「各コンデンサーの電気量 \(q_1, q_2, q_3\)」という3つの未知数を設定して連立方程式を解くのに対し、別解では回路の分岐点の「電位 \(x\)」というたった1つの未知数を設定して解きます。
      • 孤立部分の電気量保存則を、電位を用いて1本の方程式で表し、電位を求めてから電気量を一括で計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算量の劇的な削減: 未知数が3つから1つに減るため、連立方程式を解く手間がなくなり、計算ミスが激減します。
    • 物理的直感の養成: 「回路の各点の高さ(電位)が決まれば、電気の流れ(電荷)が決まる」という回路の本質的な理解につながります。
  3. 結果への影響
    • どちらのアプローチを用いても、最終的に得られる電気量と電圧の値は完全に一致します。

この問題のテーマは「複雑なコンデンサー回路の解析」です。複数のコンデンサーと電池が接続された回路において、電荷がどのように分布し、電圧がどう決まるかを解き明かします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気量保存の法則(孤立部分の電荷保存): コンデンサーの極板を含む導線が他の部分(電源など)と絶縁されている「孤立部分」では、電荷の総和は変化しません。
  2. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路内の任意の閉じた経路(ループ)について、電圧の上がり下がりの総和はゼロになります。
  3. コンデンサーの基本式: \(Q = CV\) の関係式を用いて、電気量、電気容量、電圧を結びつけます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、各コンデンサーの電気量を未知数 \(q_1, q_2, q_3\) と置き、電荷の移動方向(極板の正負)を仮定します。そして、「孤立部分の電気量保存則」と、2つの閉回路に対する「キルヒホッフの第2法則」を用いて連立方程式を立て、未知数を決定します。
  2. (2)では、(1)で求めた電気量と既知の電気容量を用いて、基本式 \(V = Q/C\) から各コンデンサーの電圧を計算します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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