「センサー物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 12】Step2

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Step 2

147 音波の屈折

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 波の基本式と振動数不変の原理を用いた解法
      • 模範解答が「屈折の法則」の公式を直接適用して計算しているのに対し、別解では「媒質が変わっても振動数は変化しない」という物理的性質と、波の基本式 \(v = f\lambda\) を組み合わせて、波長の比を導出します。
    • 設問(3)の別解: 絶対屈折率を用いた解法
      • 模範解答が速さの比から直接求めているのに対し、別解では一度それぞれの媒質の絶対屈折率(真空に対する屈折率)を考え、\(n_1 \sin \alpha = n_2 \sin \beta\) の形式の屈折の法則を用いて計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の理解: 公式の暗記に頼らず、「なぜ波長が変化するのか(速さが変わるから)」という因果関係を理解できます。
    • 応用力の向上: 光の屈折などでよく用いられる絶対屈折率の考え方に慣れておくことで、波動分野全体の理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「異なる媒質間を進む波の屈折」です。音が空気から水へ進むとき、速さが大きく変化するため、進行方向や波長が変わります。この現象を数式で扱う練習です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 振動数保存の法則: 波が異なる媒質へ進むとき、速さと波長は変化しますが、振動数 \(f\) は決して変化しません(音源の振動のリズムはそのまま伝わるため)。
  2. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
  3. 屈折の法則: 入射角 \(\alpha\)、屈折角 \(\beta\)、それぞれの媒質での速さ \(v_1, v_2\)、波長 \(\lambda_1, \lambda_2\) の間には、以下の関係が成り立ちます。
    $$ \frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} $$

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、屈折の法則、または波の基本式を用いて、速さの比から波長の比を求めます。
  2. (2)では、波動の基本原理に基づいて即答します。
  3. (3)では、屈折の法則を用いて、角度の正弦(sin)の比を速さの比から計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
「水中の波長は、空気中の波長の何倍か」という問いは、比 \(\frac{\lambda_{\text{水}}}{\lambda_{\text{空気}}}\) を求めることと同じです。与えられているのはそれぞれの音速なので、屈折の法則を用いて速さの比と波長の比を結びつけます。
この設問における重要なポイント

  • 空気中の音速 \(v_1 = 340\,\text{m/s}\)
  • 水中の音速 \(v_2 = 1360\,\text{m/s}\)
  • 屈折の法則により、波長の比は速さの比に等しい。

具体的な解説と立式
空気中の波長を \(\lambda_1\)、水中の波長を \(\lambda_2\) とします。
屈折の法則より、波長の比は速さの比と等しくなります。
$$ \frac{\lambda_2}{\lambda_1} = \frac{v_2}{v_1} $$
この式に与えられた数値を代入して、倍率(\(\lambda_2\) が \(\lambda_1\) の何倍か)を求めます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(\frac{\lambda_2}{\lambda_1} = \frac{v_2}{v_1}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda_2}{\lambda_1} &= \frac{1360}{340} \\[2.0ex] &= 4.00
\end{aligned}
$$
有効数字は問題文の数値(\(340\), \(1360\))から3桁と考えられます。
したがって、水中の波長は空気中の波長の \(4.00\) 倍です。

この設問の平易な説明

音波が空気から水に入ると、進むスピードが一気に速くなります(約4倍)。振動のリズム(振動数)は変わらないので、スピードが上がった分だけ、波と波の間隔(波長)もビヨーンと伸びることになります。計算してみると、速さが4倍になったので、波長も4倍になることがわかります。

結論と吟味

答えは4倍です。水中の方が音速が速いことは一般的な知識とも合致しますし、速さが速くなれば波長が伸びるという物理的直感とも整合します。

解答 (1) 4倍
別解: 波の基本式と振動数不変の原理を用いた解法

思考の道筋とポイント
屈折の法則の公式を忘れてしまった場合でも、波の基本式 \(v = f\lambda\) と「振動数が変わらない」という事実から導くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 空気中でも水中でも、振動数 \(f\) は一定である。
  • それぞれの媒質で波の基本式を立てる。

具体的な解説と立式
振動数を \(f\) とします。
空気中での波の基本式は、
$$ v_1 = f\lambda_1 $$
水中での波の基本式は、
$$ v_2 = f\lambda_2 $$
求めたいのは \(\frac{\lambda_2}{\lambda_1}\) なので、2つの式の辺々を割ります。
$$ \frac{v_2}{v_1} = \frac{f\lambda_2}{f\lambda_1} $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v = f\lambda\)
計算過程

右辺の \(f\) が約分されて消えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_2}{v_1} &= \frac{\lambda_2}{\lambda_1} \\[2.0ex] \frac{\lambda_2}{\lambda_1} &= \frac{1360}{340} \\[2.0ex] &= 4.00
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「速さ = 歩幅 \(\times\) 歩くテンポ」と考えてみましょう。テンポ(振動数)を変えずに、進む速さ(音速)を4倍にするには、歩幅(波長)を4倍に広げるしかありませんよね。

結論と吟味

メインの解法と同じく4倍という結果が得られました。

解答 (1) 4倍

問(2)

思考の道筋とポイント
波が媒質を移動する際、振動数がどうなるかという根本的な理解を問う問題です。計算は不要です。
この設問における重要なポイント

  • 波源が一度決定した振動のリズム(振動数)は、波がどこへ伝わろうとも変化しない。
  • 媒質が変わって変化するのは「速さ」と「波長」だけである。

具体的な解説と立式
波の振動数は、波源が1秒間に何回振動したかによって決まります。波が空気から水へ伝わるとき、境界面での空気の振動がそのまま水の振動を引き起こすため、振動のリズム(振動数)は保存されます。
したがって、水中の振動数は空気中の振動数と等しくなります。

使用した物理公式

  • 振動数保存の原理(公式というよりは原理)
計算過程

$$ \frac{\text{水中の振動数}}{\text{空気中の振動数}} = 1 $$

この設問の平易な説明

例えば、あなたがプールサイドで手を1秒に2回叩いたとします(振動数2Hz)。水の中に潜っている友達には、その音はやっぱり「1秒に2回」のリズムで聞こえますよね。途中で勝手にリズムが速くなったり遅くなったりすることはありません。だから振動数は変わりません。

結論と吟味

1倍(変化しない)です。これは波動現象における最も基本的かつ重要なルールの一つです。

解答 (2) 1倍

問(3)

思考の道筋とポイント
入射角 \(\alpha\) と屈折角 \(\beta\) の関係、つまり屈折の法則そのものを問われています。公式 \(\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_1}{v_2}\) を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 入射角 \(\alpha\) は空気中(速さ \(v_1\))の角度。
  • 屈折角 \(\beta\) は水中(速さ \(v_2\))の角度。
  • 屈折の法則の分母と分子の対応関係(添字の1と2の位置)に注意する。

具体的な解説と立式
屈折の法則より、
$$ \frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_1}{v_2} $$
が成り立ちます。ここに \(v_1 = 340\)、\(v_2 = 1360\) を代入します。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_1}{v_2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} &= \frac{340}{1360} \\[2.0ex] &= \frac{1}{4} \\[2.0ex] &= 0.250
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えます。

この設問の平易な説明

音波が空気から水に入るとき、進行方向が曲がります(屈折)。その曲がり具合を表すのがこの式です。速さが遅い方(空気)から速い方(水)へ進むときは、角度が大きくなるように曲がりますが、その比率は速さの比率とぴったり一致します。

結論と吟味

\(0.250\) です。分母の \(\sin\beta\) の方が分子の \(\sin\alpha\) より大きくなる(値が1より小さい)ということは、\(\beta > \alpha\) を意味します。これは、波が「疎な媒質(遅い)」から「密な媒質(速い)」へ進むとき、屈折角が入射角より大きくなる(法線から遠ざかる)という定性的な性質と一致しています。

解答 (3) 0.250
別解: 絶対屈折率を用いた解法

思考の道筋とポイント
「絶対屈折率」という概念を使って解いてみます。絶対屈折率は、真空中の光速(または基準となる速さ)に対するその媒質中での速さの比の逆数として定義されますが、ここでは便宜的に \(n = \frac{C}{v}\) (\(C\)は定数)と考えます。一般的に屈折の法則は \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\) と表されます。
この設問における重要なポイント

  • 屈折の法則の対称形: \(n_1 \sin \alpha = n_2 \sin \beta\)
  • 絶対屈折率と速さの関係: \(n \propto \frac{1}{v}\) (速さが速いほど屈折率は小さい)

具体的な解説と立式
空気の絶対屈折率を \(n_1\)、水の絶対屈折率を \(n_2\) とします。
屈折の法則より、
$$ n_1 \sin \alpha = n_2 \sin \beta $$
変形すると、
$$ \frac{\sin \alpha}{\sin \beta} = \frac{n_2}{n_1} $$
ここで、屈折率は速さに反比例するので、\(\frac{n_2}{n_1} = \frac{v_1}{v_2}\) となります。
したがって、
$$ \frac{\sin \alpha}{\sin \beta} = \frac{v_1}{v_2} $$

使用した物理公式

  • 屈折の法則(絶対屈折率版): \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
  • 絶対屈折率の定義: \(n = \frac{C}{v}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{\sin \alpha}{\sin \beta} &= \frac{340}{1360} \\[2.0ex] &= 0.250
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

光の屈折などでよく使う「\(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)」という式を使っても同じ結果になります。この式は「屈折率 \(\times\) 角度のsin」がどこへ行っても一定の値になる、という保存則のような美しい形をしています。ただし、音の場合、速い媒質(水)の方が屈折率が「小さい」ことになる点に注意が必要です(光とは逆の傾向になることが多いです)。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。この形式の屈折の法則は、媒質が3層以上重なっている場合などに非常に威力を発揮します。

解答 (3) 0.250

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 屈折の法則(スネルの法則)の完全理解
    • 核心: 異なる媒質へ波が進むとき、速さの変化に伴って進行方向と波長が変化する現象を記述する法則です。
    • 理解のポイント:
      • 比例関係: 速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) は比例します(速い媒質ほど波長は長い)。
      • 角度との関係: 速さ \(v\) と角度の正弦 \(\sin\theta\) も比例します(速い媒質ほど角度は大きい)。
      • 式の形: \(\frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2} = \frac{\lambda_1}{\lambda_2} = \frac{n_2}{n_1}\) という一連の等式を、状況に応じて使い分ける力が求められます。特に屈折率 \(n\) だけ添字が逆転することに注意が必要です。
  • 振動数保存の法則
    • 核心: 波源が一度決定した振動数 \(f\) は、媒質が変わっても、反射しても、屈折しても、決して変化しません。
    • 理解のポイント:
      • 波のアイデンティティ: 振動数は波の「身分証明書」のようなもので、外部環境によって書き換えられることはありません。変化するのはあくまで「歩幅(波長)」と「歩く速さ(波の速さ)」だけです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光の屈折: 音波だけでなく、光波でも全く同じ法則が成り立ちます。ただし、光の場合は「屈折率が大きい=速さが遅い」となるため、音波(水中の方が速い=屈折率が小さい)とは直感が逆になることに注意が必要です。
    • 全反射: 屈折角が \(90^\circ\) になる臨界角を求める問題も、この屈折の法則から出発します。\(\sin\beta = 1\) と置くことで計算できます。
    • 浅瀬と深場: 水面波が深さの異なる領域に進む問題も、深さによって速さが変わる(深い方が速い)ため、全く同じ屈折の法則で解けます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 媒質の速さの大小を確認する: どちらが「速い媒質」でどちらが「遅い媒質」かを最初に見極めます。速い媒質側では、波長は長く、角度(法線とのなす角)は大きくなります。
    2. ホイヘンスの原理を作図する: 公式を忘れた場合や、状況が複雑な場合は、波面を描いてホイヘンスの原理から幾何学的に考えるのが最強の手段です。
    3. 絶対屈折率 \(n\) を仮定する: 媒質が3つ以上ある場合(空気→水→ガラスなど)は、\(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2 = n_3 \sin \theta_3\) の形式を使うと、中間の媒質を飛ばして計算できるため非常に便利です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 屈折の法則の分母・分子の取り違え
    • 誤解: \(\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} = \frac{v_2}{v_1}\) のように、添字の対応を逆にしてしまう。
    • 対策: 「速い側が角度も大きい(sinも大きい)」という定性的なイメージを持ちましょう。例えば \(v_2 > v_1\) ならば、必ず \(\sin\beta > \sin\alpha\) となるはずです。式を立てた後にこのチェックを行うだけでミスは激減します。
  • 振動数が変化すると考えてしまう
    • 誤解: 速さが変わるのだから、振動数もつられて変わるのではないかと直感的に思ってしまう。
    • 対策: 「振動数は波源が決めるリズム」と強く意識します。プールサイドで手を叩く例(解説参照)を思い出してください。
  • 入射角・屈折角の定義ミス
    • 誤解: 境界面と波の進行方向のなす角を \(\alpha, \beta\) としてしまう。
    • 対策: 物理における角度は、原則として「法線(境界面に垂直な線)」とのなす角です。図を見る際は、必ず法線を確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 屈折の法則 \(\frac{\lambda_2}{\lambda_1} = \frac{v_2}{v_1}\) の選択
    • 選定理由: 設問(1)で求めたいのは波長の比 \(\frac{\lambda_2}{\lambda_1}\) であり、与えられているのは速さ \(v_1, v_2\) です。これらを直接結びつける公式は屈折の法則しかありません。
    • 適用根拠: 異なる媒質間を波が透過する現象であるため、屈折の法則が適用可能です。
  • 振動数保存則の適用
    • 選定理由: 設問(2)は振動数の変化を問うています。計算式ではなく、波動の基本原理(保存則)に基づいて判断すべき問題です。
    • 適用根拠: 波源が一定の振動数で振動し続けている限り、媒質が変わってもそのリズムは維持されるという物理的要請に基づきます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 比の計算は分数のまま処理する
    • \(340\) や \(1360\) といった具体的な数値で割り算をする前に、\(\frac{1360}{340}\) のように分数の形で式を立てましょう。約分ができることに気づきやすくなり、筆算のミスを減らせます。
  • 単位の確認
    • 比を求める問題なので、答えには単位(mやHzなど)が付きません。「倍」や無次元数になります。逆に、具体的な波長を求める問題なら単位が必要です。
  • 常識的な値との照合
    • 音速は空気中で約 \(340\,\text{m/s}\)、水中では約 \(1500\,\text{m/s}\)(本問では \(1360\))です。水の方が圧倒的に速いので、波長も数倍になるはずです。もし答えが \(0.25\) 倍などになったら、分母分子が逆転している可能性が高いと即座に判断できます。

148 音波の干渉

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解1: 経路差の条件式を用いる解法
      • 模範解答が「中点からの距離」を具体的に計算して数え上げているのに対し、別解1では「2つの音源からの距離の差(経路差)」に着目し、干渉の条件式(不等式)を用いて節の個数を数学的に導出します。
    • 設問(2)の別解2: 端点の振動状態を利用する解法
      • 別解2では、音源AとBの位置が定在波の「腹」になることを突き止め、区間全体の長さを節の間隔で割ることで、一瞬にして個数を求める「植木算」的なアプローチをとります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 汎用性の獲得: 経路差を用いる方法は、音源の位相が逆の場合や、平面上の干渉問題にもそのまま応用できる強力なツールです。
    • 全体像の把握: 端点に着目する方法は、定在波が空間にどのように分布しているかという全体像を直感的に理解する助けになります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「音波の干渉と定在波」です。2つの音源から出た波が重なり合い、強め合ったり弱め合ったりする現象を扱います。特に、同位相の波源間にできる定在波の節の数や位置を正確に把握する力が問われています。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
  2. 定在波の発生: 同じ振動数、同じ振幅の波が逆向きに進んで重なると、定在波が生じます。
  3. 腹と節の条件(同位相音源の場合):
    • 腹(強め合う点): 2つの音源からの距離の差(経路差)が、波長の整数倍(\(0, \lambda, 2\lambda, \dots\))。
    • 節(弱め合う点): 経路差が、半波長の奇数倍(\(\frac{\lambda}{2}, \frac{3\lambda}{2}, \frac{5\lambda}{2}, \dots\))。
  4. 腹と節の間隔: 定在波において、隣り合う腹と節の間隔は \(\frac{\lambda}{4}\)、節と節(または腹と腹)の間隔は \(\frac{\lambda}{2}\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた音速と振動数から、波の基本式を用いて波長を求めます。
  2. (2)では、中点Mが腹であることを基準にし、そこから \(\frac{\lambda}{4}\) 離れた位置に最初の節があることを利用して、順次節の位置を特定し個数を数えます。

問(1)

思考の道筋とポイント
物理量の基本関係式 \(V = f\lambda\) を用いて、未知の量である波長 \(\lambda\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V = 340\,\text{m/s}\)
  • 振動数 \(f = 680\,\text{Hz}\)

具体的な解説と立式
求める波長を \(\lambda\) とします。
波の基本式 \(V = f\lambda\) より、
$$ 340 = 680 \times \lambda $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{680} \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \\[2.0ex] &= 0.500\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字3桁で答えます。

この設問の平易な説明

「速さ = 歩幅 \(\times\) リズム」の関係を使います。音の速さ(\(340\))とリズム(\(680\))がわかっているので、音の歩幅(波長)を計算します。

結論と吟味

\(0.500\,\text{m}\) です。数値的に無理のない値です。

解答 (1) \(0.500\,\text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
定在波の節の数を求める問題です。中点Mが「腹」であるというヒントを活かし、そこから左右にどれだけ節が並んでいるかを数えます。
腹と節の位置関係(間隔 \(\frac{\lambda}{4}\))と、節同士の間隔(\(\frac{\lambda}{2}\))を正確に使うことがポイントです。
この設問における重要なポイント

  • 中点Mは腹である(経路差が \(0\) なので強め合う)。
  • 腹から隣の節までの距離は \(\frac{\lambda}{4} = \frac{0.500}{4} = 0.125\,\text{m}\)。
  • 節と節の間隔は \(\frac{\lambda}{2} = \frac{0.500}{2} = 0.250\,\text{m}\)。
  • 区間AMの距離は \(4.0\,\text{m}\)。

具体的な解説と立式
まず、中点M(腹)から最も近い節までの距離 \(d_1\) は、
$$ d_1 = \frac{\lambda}{4} = 0.125\,\text{m} $$
です。
この節から、さらに \(\frac{\lambda}{2} = 0.250\,\text{m}\) ごとに節が現れます。
中点Mから \(k\) 番目の節までの距離 \(x_k\) は、初項 \(0.125\)、公差 \(0.250\) の等差数列として表せます。
$$ x_k = 0.125 + 0.250(k-1) \quad (k=1, 2, \dots) $$
この節が線分AM上(\(0 < x_k < 4.0\))にあるための条件式を立てます。
$$ 0.125 + 0.250(k-1) < 4.0 $$

使用した物理公式

  • 腹と節の間隔: \(\frac{\lambda}{4}\)
  • 節と節の間隔: \(\frac{\lambda}{2}\)
計算過程

不等式を解いて \(k\) の最大値を求めます。
$$
\begin{aligned}
0.125 + 0.250(k-1) &< 4.0 \\[2.0ex] \text{両辺を } 1000 \text{ 倍して} \quad 125 + 250(k-1) &< 4000 \\[2.0ex] \text{両辺を } 125 \text{ で割って} \quad 1 + 2(k-1) &< 32 \\[2.0ex] 2(k-1) &< 31 \\[2.0ex] k-1 &< 15.5 \\[2.0ex] k &< 16.5
\end{aligned}
$$
\(k\) は自然数なので、最大値は \(16\) です。
つまり、AM間には \(16\) 個の節があります。
対称性より、BM間にも同じく \(16\) 個の節があります。
よって、合計の節の数は、
$$ 16 + 16 = 32\,\text{個} $$

この設問の平易な説明

真ん中のM地点はお腹(腹)のように大きく揺れています。そこから \(12.5\,\text{cm}\) 横にずれると、全く揺れない点(節)があります。さらにそこから \(25\,\text{cm}\) ずれるごとに、また節が現れます。
片側 \(4\,\text{m}\) の廊下に、この「\(25\,\text{cm}\) 間隔の点」がいくつ入るかを計算しています。最初の1個目を含めて数えていくと、片側で16個入ることがわかります。反対側も同じなので、合計32個です。

結論と吟味

32個です。
端点Aが節になるかどうかを確認してみましょう。\(x_{16} = 0.125 + 0.250 \times 15 = 3.875\,\text{m}\)。次の節は \(3.875 + 0.250 = 4.125\,\text{m}\) となり、\(4.0\,\text{m}\) を超えます。つまりA点は節ではありません(実はA点は腹です)。計算は正しそうです。

解答 (2) 32個
別解1: 経路差の条件式を用いる解法

思考の道筋とポイント
「2つの音源からの距離の差(経路差)」が半波長の奇数倍になる場所が「節」になる、という干渉の原理を直接使います。
この設問における重要なポイント

  • 節の条件: \(|AP – BP| = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)\)
  • 線分AB上の点Pにおいて、経路差 \(l = |AP – BP|\) は、中点Mで \(0\)、端点A, Bで \(8.0\) となる。

具体的な解説と立式
線分AM上の任意の点において、経路差 \(l\) は \(0\)(点M)から \(8.0\)(点A)まで連続的に変化します。
この区間で、節の条件を満たす \(m\) がいくつあるかを数えます。
節の条件式は以下の通りです。
$$ l = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
ここに \(\lambda = 0.500\) を代入し、\(0 < l < 8.0\) の範囲で解を探します。
$$ 0 < \left(m + 0.5\right) \times 0.500 < 8.0 $$

使用した物理公式

  • 節の条件(同位相): 経路差 \(= (m + \frac{1}{2})\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
0 &< 0.500(m + 0.5) < 8.0 \\[2.0ex] 0 &< m + 0.5 < 16 \\[2.0ex] -0.5 &< m < 15.5
\end{aligned}
$$
\(m\) は \(0\) 以上の整数なので、\(m = 0, 1, 2, \dots, 15\) の計 \(16\) 個が存在します。
これはAM間の節の数です。BM間も同様に \(16\) 個あるため、合計は \(32\) 個となります。

この設問の平易な説明

音源AとBからの距離の差が、「波長の半分(\(0.25\))」、「1.5倍(\(0.75\))」、「2.5倍(\(1.25\))」…となる場所が節になります。
A地点での距離の差は \(8.0\,\text{m}\) です。\(0\) から \(8.0\) までの間に、\(0.25, 0.75, 1.25, \dots\) という数字がいくつあるかを数えれば、それがそのまま節の数になります。

結論と吟味

主たる解法と同じく32個が得られました。この方法は、中点からの距離を計算する必要がなく、条件式だけで完結するため非常に効率的です。

解答 (2) 32個
別解2: 端点の振動状態を利用する解法

思考の道筋とポイント
端点AとBが「腹」か「節」かを確認し、定在波の全体像から個数を割り出します。
この設問における重要なポイント

  • A点での経路差は \(8.0\,\text{m}\)。
  • 波長 \(\lambda = 0.500\,\text{m}\)。
  • \(8.0 = 16 \times 0.500 = 16\lambda\) (波長の整数倍)なので、A点は「腹」である。

具体的な解説と立式
A点(およびB点)は経路差が波長の整数倍となるため、定在波の「腹」となります。
つまり、線分AB(長さ \(8.0\,\text{m}\))は、両端が「腹」となる定在波の区間です。
腹と腹の間隔は半波長 \(\frac{\lambda}{2} = 0.250\,\text{m}\) です。
この区間内に、半波長がいくつ含まれるかを計算します。
$$ N = \frac{\text{区間の長さ}}{\text{半波長}} = \frac{8.0}{0.250} $$

使用した物理公式

  • 腹と腹の間隔: \(\frac{\lambda}{2}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
N &= \frac{8.0}{0.250} \\[2.0ex] &= 32
\end{aligned}
$$
これは「腹から次の腹まで」という区間の数です。
両端が腹の場合、隣り合う腹と腹の間には必ず節が1つ存在します。
したがって、区間の数 \(32\) は、そのまま節の数と等しくなります。

この設問の平易な説明

この定在波は、両端(AとB)が「腹」になっています。「腹・節・腹・節・…・腹」という並びです。
「腹〜腹」を1セットと考えると、全体で何セットあるか計算すれば、間の「節」の数もわかります。全体 \(8\,\text{m}\) をセットの長さ \(0.25\,\text{m}\) で割ると32セット。つまり節も32個です。

結論と吟味

同じく32個となりました。この方法は最も計算量が少なく、直感的に理解しやすい解法です。

解答 (2) 32個

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の干渉条件(経路差と位相の関係)
    • 核心: 2つの波源からの距離の差(経路差)が、波長の整数倍なら強め合い(腹)、半波長の奇数倍なら弱め合う(節)という原理です。ただし、これは「同位相の波源」の場合に限ります。
    • 理解のポイント:
      • 同位相: 波源が同時に「山」を出す場合。経路差が \(m\lambda\) なら山と山が出会います。
      • 逆位相: 片方が「山」、もう片方が「谷」を出す場合。条件が逆転し、経路差 \(m\lambda\) で節になります。この問題では「同位相」と明記されているため、前者の条件を使います。
  • 定在波の空間的構造
    • 核心: 逆向きに進む同じ波が重なると、空間に固定された振動パターン(定在波)が生まれます。
    • 理解のポイント:
      • 等間隔性: 腹と節は交互に等間隔(\(\lambda/4\))で並びます。
      • 対称性: 2つの同位相波源の中点は必ず「腹」になります(経路差0のため)。ここを基準点として全体の構造を把握するのが定石です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 逆位相の波源: 問題文に「逆位相で振動」とあったら、中点は「節」になり、干渉条件も全て逆転します。別解1の条件式も \(l = m\lambda\) (節の条件)に変わります。
    • 平面上の干渉(双曲線): 線分AB上だけでなく、平面全体で考えると、腹や節を結んだ線は双曲線になります。線分AB上の腹・節の数は、この双曲線が線分ABと交わる点の数と一致します。
    • 気柱の共鳴: 閉管や開管の共鳴も定在波の一種です。「閉端は節、開端は腹」という境界条件から、波長の取りうる値を決めるプロセスは、本問の別解2(端点の振動状態から考える)と全く同じ思考法です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の位相確認: 「同位相」か「逆位相」かを真っ先に確認します。これが全ての条件の出発点です。
    2. 基準点の特定: 中点が腹か節かを見極めます。同位相なら腹、逆位相なら節です。
    3. 端点のチェック: 音源の位置(A, B)が腹になるか節になるか、あるいはその中間かを計算します。これにより、定在波が区間内にきれいに収まるかどうかがわかります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 腹と節の間隔の勘違い
    • 誤解: 腹と節の間隔を \(\lambda/2\) と思い込んでしまう。
    • 対策: 「1波長 \(\lambda\) の中に山と谷が1つずつある」図をイメージしましょう。山(腹)から谷(腹)までは \(\lambda/2\)、その間のゼロ点(節)までは \(\lambda/4\) です。
  • 端点の扱いのミス
    • 誤解: 音源の位置には定在波ができない、あるいは常に節になると思い込む。
    • 対策: 音源の位置でも波の重ね合わせは起こります。本問のように音源自体が腹になることもあれば、節になることもあります。あくまで経路差の条件式に従って判断しましょう。
  • 個数の数え間違い(植木算のミス)
    • 誤解: 区間の長さを間隔で割った値をそのまま答えにしてしまう(端点を含めるかどうかの判断ミス)。
    • 対策: \(k\) の不等式を解く方法(本解)や、具体的な数列を書き出す方法が確実です。別解2のように「区間の数」を数える場合は、端点の状態(腹か節か)によって「区間の数=点の数」なのか「区間の数+1=点の数」なのかが変わることに注意が必要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) の選択
    • 選定理由: 設問(1)で波長 \(\lambda\) を求めるために必要な情報(\(V, f\))が全て揃っているため、この定義式を使うのが最も直接的です。
    • 適用根拠: 波動現象全般において常に成立する基本法則です。
  • 数列的アプローチ(本解)の選択
    • 選定理由: 設問(2)で「いくつあるか」という個数を問われているため、位置を数式(等差数列)で表し、範囲内にある自然数 \(k\) を数える手法が最も論理的で漏れがありません。
    • 適用根拠: 定在波の節が等間隔に並ぶという物理的性質が、等差数列という数学的モデルに完全に合致するためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の統一
    • 距離はメートル [m]、振動数はヘルツ [Hz]、速さはメートル毎秒 [m/s] で統一されているか確認します。cmなどが混ざっている場合は要注意です。
  • 具体的な数値での確認
    • \(k=1\) のときの位置、\(k=16\) のときの位置を実際に計算し、区間 \(0 \sim 4.0\) に収まっているか、次の \(k=17\) が区間外になるかを検算します。境界付近の確認がミスを防ぐ最後の砦です。
  • 対称性の利用
    • 全体を一度に数えるのではなく、中点Mで半分に分けて片側だけ計算し、2倍する(あるいは中心の1点を足す)方法が安全です。計算量が半分になり、ミスも減ります。ただし、中心M自体が節の場合は数え方に注意が必要です(本問ではMは腹なので節の数には含まれません)。

149 クインケ管

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 位相差を用いた解法
      • 模範解答が「経路差」に着目して干渉条件を考えているのに対し、別解では「位相差」に着目します。経路差 \(2L\) が位相差 \(\pi\)(逆位相)に対応することを利用して立式します。
    • 設問(3)の別解: 数式による厳密な証明
      • 模範解答が定性的な説明(音速大→波長大→L大)にとどまっているのに対し、別解では \(L\) を温度 \(T\) の関数として数式で表し、その増減を数学的に示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 「経路差」と「位相差」は波動現象の表裏一体の関係です。位相差の視点を持つことで、波の干渉に対する理解がより深まります。
    • 論理的厳密性: 定性的な議論だけでなく、数式を用いて定量的に変化を予測する力は、難関大入試や大学物理への架け橋となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「クインケ管を用いた音波の干渉」です。2つの経路に分かれた音が再び合流する際、経路の長さの違い(経路差)によって強め合ったり弱め合ったりする現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の干渉条件: 2つの波が合流するとき、経路差が波長の整数倍なら強め合い(同位相)、半波長の奇数倍なら弱め合います(逆位相)。
  2. クインケ管の幾何学的構造: 管Bを距離 \(L\) だけ引き出すと、往復分の距離が伸びるため、経路差は \(2L\) 変化します。ここが最大のポイントです。
  3. 音速と温度の関係: 一般に、空気中の音速は温度が高くなるほど速くなります(\(V \approx 331.5 + 0.6t\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず波の基本式 \(V=f\lambda\) から波長を求めます。次に、音が最も小さくなる(弱め合う)条件式「経路差 \(2L = \frac{\lambda}{2}\)」を立てて \(L\) を求めます。
  2. (2)では、再び音が大きくなる(強め合う)条件式「経路差 \(2L = \lambda\)」を立てて \(L\) を求めます。
  3. (3)では、温度上昇による音速の変化が波長にどう影響し、それが \(L\) にどう影響するかを論理的に追います。

問(1)

思考の道筋とポイント
音が小さくなるということは、2つの経路を通った音が合流点で「弱め合っている」ということです。
管Bを \(L\) 引き出すと、経路の長さは「行って帰って」の分だけ伸びるので、経路差は \(2L\) になります。
「初めて」小さくなるので、経路差が半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) になる瞬間を探します。
この設問における重要なポイント

  • 経路差は \(L\) ではなく \(2L\) である。
  • 弱め合う条件は、経路差が半波長の奇数倍(\(\frac{\lambda}{2}, \frac{3\lambda}{2}, \dots\))。
  • 「初めて」なので、最小の条件 \(\frac{\lambda}{2}\) を採用する。

具体的な解説と立式
まず、音波の波長 \(\lambda\) を求めます。
波の基本式 \(V = f\lambda\) より、
$$ \lambda = \frac{V}{f} $$
これに \(V=340\)、\(f=1700\) を代入します。

次に、干渉の条件式を立てます。
音が最も小さくなる(弱め合う)条件は、経路差が半波長の奇数倍になることです。
初期状態では経路差は \(0\) で強め合っています。そこから \(L\) 引き出すと経路差は \(2L\) となり、これが初めて半波長 \(\frac{\lambda}{2}\) になったときに音が最小になります。
$$ 2L = \frac{1}{2}\lambda $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
  • 弱め合う条件(経路差): \(2L = (m + \frac{1}{2})\lambda \quad (m=0, 1, \dots)\)
計算過程

まず波長 \(\lambda\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{340}{1700} \\[2.0ex] &= \frac{34}{170} \\[2.0ex] &= 0.200\,\text{m}
\end{aligned}
$$
次に \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2L &= \frac{1}{2} \times 0.200 \\[2.0ex] 2L &= 0.100 \\[2.0ex] L &= 0.050 \\[2.0ex] &= 5.0 \times 10^{-2}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

音の波長は \(20\,\text{cm}\) です。
管を引っ張ると、音の通り道が伸びます。片方の通り道だけが伸びると、合流地点での「波のタイミング」がずれていきます。
「山」と「谷」がぶつかると音は消えます。そのためには、通り道の長さの差(経路差)が「波長の半分(\(10\,\text{cm}\))」になればよいのです。
管を \(L\) 引っ張ると、往復で \(2L\) だけ通り道が伸びます。この \(2L\) が \(10\,\text{cm}\) になればよいので、\(L\) は \(5\,\text{cm}\) です。

結論と吟味

\(5.0 \times 10^{-2}\,\text{m}\) です。波長 \(20\,\text{cm}\) に対して妥当な大きさです。

解答 (1) \(5.0 \times 10^{-2}\,\text{m}\)
別解: 位相差を用いた解法

思考の道筋とポイント
経路差を位相差に変換して考えます。1波長 \(\lambda\) のズレは位相差 \(2\pi\) に相当します。
この設問における重要なポイント

  • 位相差 \(\Delta \phi = \frac{2\pi}{\lambda} \times (\text{経路差})\)
  • 弱め合う条件(逆位相): \(\Delta \phi = \pi, 3\pi, \dots\)

具体的な解説と立式
経路差は \(2L\) です。これに対応する位相差 \(\Delta \phi\) は、
$$ \Delta \phi = \frac{2\pi}{\lambda} \times 2L $$
初めて弱め合うとき、位相差は \(\pi\) となります。
$$ \frac{2\pi}{\lambda} \times 2L = \pi $$

使用した物理公式

  • 位相差と経路差の関係: \(\Delta \phi = \frac{2\pi}{\lambda} \Delta x\)
計算過程

両辺を \(\pi\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{4L}{\lambda} &= 1 \\[2.0ex] 4L &= \lambda \\[2.0ex] L &= \frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
これに \(\lambda = 0.200\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{0.200}{4} \\[2.0ex] &= 0.050 \\[2.0ex] &= 5.0 \times 10^{-2}\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

波1つ分のズレは \(360^\circ\)(\(2\pi\))の位相ズレに対応します。音が消えるのは「山と谷」が出会うとき、つまり \(180^\circ\)(\(\pi\))ズレるときです。
経路差 \(2L\) が生み出すズレがちょうど \(180^\circ\) 分になればよい、という式を立てて計算しました。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。

解答 (1) \(5.0 \times 10^{-2}\,\text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
「初めの音と同じ大きさ」とは、再び強め合う状態(同位相)に戻ったことを意味します。
経路差が波長の整数倍になれば強め合います。初期状態(経路差0)の次の強め合いなので、経路差がちょうど1波長分 \(\lambda\) になる瞬間を探します。
この設問における重要なポイント

  • 強め合う条件: 経路差 \(2L = m\lambda \quad (m=1, 2, \dots)\)
  • 「(1)よりさらに引き出す」ので、\(m=1\) の場合を考える。

具体的な解説と立式
音が再び最も大きくなる(強め合う)条件は、経路差が波長の整数倍になることです。
(1)の状態(半波長のズレ)からさらに引き出し、経路差 \(2L\) がちょうど1波長 \(\lambda\) になったとき、再び波の山と山が重なり合います。
$$ 2L = \lambda $$

使用した物理公式

  • 強め合う条件(経路差): \(2L = m\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
2L &= 0.200 \\[2.0ex] L &= 0.100\,\text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

さらに管を引っ張って、通り道の差(経路差)を広げていきます。差が「波長1つ分(\(20\,\text{cm}\))」になると、波がちょうど1周遅れてやってくることになります。1周遅れでも「山」のタイミングは合うので、再び音は大きくなります。
\(2L\) が \(20\,\text{cm}\) になればよいので、\(L\) は \(10\,\text{cm}\) です。

結論と吟味

\(0.100\,\text{m}\) です。(1)の答えのちょうど2倍になっています。これは、半波長のズレから1波長のズレへと変化したためで、物理的に整合します。

解答 (2) \(0.100\,\text{m}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
室温の変化が物理量にどのような連鎖反応を引き起こすかを論理的に追跡します。
「室温 \(T\) 上昇 \(\rightarrow\) 音速 \(V\) 上昇 \(\rightarrow\) 波長 \(\lambda\) 変化 \(\rightarrow\) 距離 \(L\) 変化」という因果関係を解き明かします。
この設問における重要なポイント

  • 音速と温度の関係: 温度が上がると音速 \(V\) は大きくなる。
  • 波長と音速の関係: \(\lambda = V/f\) (\(f\) は一定)。
  • 距離 \(L\) と波長の関係: \(L = \lambda/4\) ((1)の結果より)。

具体的な解説と立式
1. 音速の変化: 室温を上げると、空気分子の熱運動が激しくなり、音速 \(V\) は大きくなります。
2. 波長の変化: 振動数 \(f\) は音源によって決まっており一定です。波の基本式 \(\lambda = \frac{V}{f}\) より、\(V\) が大きくなると波長 \(\lambda\) も大きくなります(長くなります)。
3. 距離 \(L\) の変化: (1)で求めたように、初めて音が小さくなる条件は \(2L = \frac{\lambda}{2}\)、つまり \(L = \frac{\lambda}{4}\) です。波長 \(\lambda\) が大きくなったので、それに比例して \(L\) も大きくなります。

結論として、\(L\) は(1)より大きくなります。

使用した物理公式

  • 音速の温度依存性(定性的理解)
  • 波の基本式: \(\lambda = V/f\)
計算過程

定性的な議論のため、具体的な数値計算は不要です。

この設問の平易な説明

気温が上がると音は速く進みます。振動数(リズム)が同じままで速く進むということは、歩幅(波長)が広がるということです。
波長が長くなると、音が消えるための「半波長のズレ」を作るのに必要な距離も長くなります。だから、管をもっと長く引き出す必要があります。

結論と吟味

「大きくなる」です。論理のステップに飛躍はなく、妥当な結論です。

解答 (3) 大きくなる
別解: 数式による厳密な証明

思考の道筋とポイント
\(L\) を温度 \(t\) の関数として表し、\(t\) が増加したときの \(L\) の増減を調べます。
この設問における重要なポイント

  • 音速の近似式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
  • \(L\) と \(V\) の比例関係: \(L \propto V\)

具体的な解説と立式
摂氏温度を \(t\) [\(^\circ\text{C}\)] とします。音速 \(V\) は近似的に以下の式で表されます。
$$ V = 331.5 + 0.6t $$
(1)の結果より、求める距離 \(L\) は、
$$ L = \frac{\lambda}{4} = \frac{V}{4f} $$
これに音速の式を代入します。
$$ L(t) = \frac{331.5 + 0.6t}{4f} $$

使用した物理公式

  • 音速の近似式: \(V = 331.5 + 0.6t\)
計算過程

この式において、\(f\)(振動数)は正の定数です。
したがって、\(L(t)\) は \(t\) の一次関数であり、傾き \(\frac{0.6}{4f}\) は正の値です。
よって、\(t\) が増加すると \(L(t)\) も単調に増加します。

この設問の平易な説明

距離 \(L\) を計算する式の中に、温度 \(t\) を組み込んでみました。すると、\(L\) は \(t\) に比例して増える形(一次関数)になりました。つまり、温度が上がれば上がるほど、\(L\) も必ず大きくなることが数学的に証明できました。

結論と吟味

数式的にも \(L\) が大きくなることが証明されました。

解答 (3) 大きくなる

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の干渉条件(経路差と位相差)
    • 核心: 2つの波が合流したとき、強め合うか弱め合うかは、その波が通ってきた「距離の差(経路差)」によって決まります。
    • 理解のポイント:
      • 強め合い(同位相): 経路差が波長の整数倍(\(0, \lambda, 2\lambda, \dots\))のとき、山と山が重なり、振幅が最大になります。
      • 弱め合い(逆位相): 経路差が半波長の奇数倍(\(\lambda/2, 3\lambda/2, \dots\))のとき、山と谷が重なり、振幅が最小(理想的にはゼロ)になります。
  • クインケ管の幾何学的特性
    • 核心: 可動部の管を \(L\) 動かすと、往復で経路が伸びるため、経路差の変化は \(2L\) になるという点です。
    • 理解のポイント:
      • 2倍の法則: 鏡を使った光の反射問題(鏡を \(x\) 動かすと光路差は \(2x\) 変化する)と同様に、折り返し構造を持つ系では変位の2倍が経路差になります。この「2」を忘れると致命的なミスになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ヤングの実験・回折格子: 光の干渉実験でも、「経路差=波長の整数倍」という条件は全く同じです。クインケ管はこれの音波版と言えます。
    • 薄膜干渉: 薄膜の厚さを \(d\) とすると、往復で \(2d\) の経路差が生じます(屈折率や反射の位相ズレも考慮が必要ですが)。「往復による2倍」という構造は共通しています。
    • 逆位相の波源: もし音源が逆位相で振動していたり、片方の経路で位相が \(\pi\) ずれる反射が起きたりする場合、干渉条件(強め合い・弱め合い)が逆転します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 経路差の定義: どの部分の長さが変わるのか、それが経路差にどう反映されるか(\(1\)倍か\(2\)倍か)を図から読み取ります。
    2. 初期状態の確認: \(L=0\) のとき強め合っているのか弱め合っているのかを確認します。本問では「左右の経路の長さは等しい」ので強め合い(\(m=0\))からのスタートです。
    3. 変化の方向性: \(L\) を増やすと経路差が増えるのか減るのか、それによって干渉の次数 \(m\) がどう変化するか(\(0 \to 1 \to 2\) なのか \(0 \to -1 \to -2\) なのか)を見極めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 経路差を \(L\) としてしまう
    • 誤解: 管を \(L\) 引き出したから、経路差も \(L\) だろうと直感的に考えてしまう。
    • 対策: 「行って帰ってくる」U字型の構造を指でなぞりながら確認しましょう。上の管も下の管も \(L\) ずつ伸びているので、合計 \(2L\) です。
  • 干渉条件の取り違え
    • 誤解: 「強め合い=半波長」「弱め合い=整数倍」と逆に覚えてしまう。
    • 対策: 「整数倍=波がぴったり重なる=強め合い」というイメージを定着させましょう。\(m=0\)(経路差なし)のとき強め合うのは自明なので、そこから類推するのも有効です。
    • 音速の変化の方向を間違える
      • 誤解: 温度が上がると音速が下がる、あるいは波長が短くなると勘違いする。
      • 対策: 「暑いと分子が元気に飛び回るから音も速く伝わる」というイメージを持ちましょう。\(V \propto \sqrt{T}\) (\(T\)は絶対温度)という関係を知っていれば確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) の選択
    • 選定理由: 音速 \(V\) と振動数 \(f\) が与えられており、干渉条件を考えるには波長 \(\lambda\) が不可欠だからです。
    • 適用根拠: 波動現象の解析において、まず波長を求めるのは定石中の定石です。
  • 干渉条件式 \(2L = (m+1/2)\lambda\) の選択
    • 選定理由: 「音が小さくなる」という現象は、波動の重ね合わせによる「弱め合い」を意味します。したがって、弱め合いの条件式を選択します。
    • 適用根拠: クインケ管は2つの波が合流して干渉する装置であり、経路差 \(2L\) が半波長の奇数倍のときに弱め合うという物理法則が適用されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算する
    • いきなり数値を代入せず、\(L = \lambda/4\) のように文字式で解いてから、最後に \(\lambda = 0.200\) を代入しましょう。計算の見通しが良くなり、(2)で \(L = \lambda/2\) となったときに「(1)の2倍だ」と検算もしやすくなります。
  • 単位の確認
    • 波長や距離はメートル [m] で計算するのが基本です。問題文で cm が使われていても、公式に代入する際は m に直す癖をつけましょう。本問では最初から m なのでそのままでOKです。
  • オーダー(桁数)の確認
    • 音波の波長は数cm〜数m程度です。計算結果が \(10^{-6}\,\text{m}\)(光の波長レベル)や \(1000\,\text{m}\) になったら、どこかで計算ミスをしている可能性が高いです。\(5.0 \times 10^{-2}\,\text{m} = 5\,\text{cm}\) は妥当な値です。

150 ドップラー効果とうなり

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 近似を用いたうなりの回数の見積もり
      • 模範解答が厳密な式変形でうなりの回数を求めているのに対し、別解では \(v_1, v_2 \ll V\) (音速に比べて音源の速さが十分に小さい)という条件を仮定し、近似式を用いて簡潔にうなりの回数を見積もる方法を紹介します。
    • 設問(4)の別解: 相対速度の視点からの定性的な判断
      • 模範解答が公式に数値を代入して計算しているのに対し、別解では「音源と観測者の相対的な接近・後退」という視点から、計算せずとも直感的にどちらの音が変化するかを判断する方法を提示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の養成: 数式だけでなく、現象の定性的な理解(近づく・遠ざかる)に基づいて答えを導く力は、検算や迅速な判断に役立ちます。
    • 近似計算のスキル: 物理学では厳密解が得られない場合に近似を用いることが多々あります。この問題を通して、物理における近似の考え方に触れることができます。
  3. 結果への影響
    • 設問(3)の別解は近似解であるため、厳密解とは式が異なりますが、\(v \ll V\) の極限では一致します。設問(4)の別解は定性的な判断であり、結論は模範解答と一致します。

この問題のテーマは「複数の音源が動く場合のドップラー効果とうなり」です。2つの音源が異なる速度で動く状況において、観測者が受け取る波長や振動数がどのように変化するか、そしてそれらが重なり合って生じる「うなり」を解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果の基本原理: 音源が動くと波長が変化し、観測者が動くと相対的な音速が変化します。
    • 音源が速さ \(v_S\) で観測者に近づくとき、波長は \(\lambda’ = \frac{V-v_S}{f}\) に縮みます。
    • 音源が速さ \(v_S\) で観測者から遠ざかるとき、波長は \(\lambda’ = \frac{V+v_S}{f}\) に伸びます。
  2. 波の基本式: 観測者が受け取る振動数 \(f’\) は、その場所での音速 \(V\)(風がない場合)と波長 \(\lambda’\) を用いて \(f’ = \frac{V}{\lambda’}\) で求められます。
  3. うなりの回数: 振動数のわずかに異なる2つの音が重なると、1秒間に \(|f_1 – f_2|\) 回のうなり(音の大小)が聞こえます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2)では、各音源から観測者Aに向かう音波の波長を、ドップラー効果の原理に基づいて求めます。その後、波の基本式を用いて振動数を計算します。
  2. (3)では、(1)(2)で求めた2つの振動数の差の絶対値を計算し、うなりの回数を求めます。
  3. (4)では、観測者の位置が変わったことで、各音源との相対的な運動(近づく・遠ざかる)がどう変化したかを分析し、振動数が変わる音源を特定します。

問(1)

思考の道筋とポイント
音源S1は左向きに速さ \(v_1\) で動いています。観測者AはS1の左側にいます。つまり、S1はAに向かって近づいてきています。
音源が近づく場合、進行方向前方の波は詰め込まれて波長が短くなります。
この設問における重要なポイント

  • 音源S1は観測者Aに近づく向きに動いている。
  • 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、音源の速さ \(v_1\)。
  • 求めるのは波長 \(\lambda_1\) と振動数 \(f_1\)。

具体的な解説と立式
まず、波長 \(\lambda_1\) を求めます。
音源S1が1秒間に \(f\) 個の波を出して \(v_1\) だけ進むため、\(f\) 個の波は距離 \(V – v_1\) の中に詰め込まれます。
したがって、波長(波1つ分の長さ)は以下のようになります。
$$ \lambda_1 = \frac{V – v_1}{f} $$

次に、振動数 \(f_1\) を求めます。
観測者Aは静止しているので、受け取る音波の速さは \(V\) のままです。
波の基本式 \(V = f_1 \lambda_1\) より、
$$ f_1 = \frac{V}{\lambda_1} $$
これに求めた \(\lambda_1\) を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(波長): \(\lambda’ = \frac{V – v_S}{f}\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{V}{\displaystyle\frac{V – v_1}{f}} \\[2.0ex] &= \frac{V}{V – v_1}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

救急車が自分に向かって走ってくる場面を想像してください。音源(S1)が音(波)を出しながら追いかけてくるので、波と波の間隔(波長)がギュッと縮まります。縮んだ波が普通の速さで耳に届くので、1秒間に耳に届く波の数(振動数)は増え、音が高く聞こえます。

結論と吟味

波長は \(\frac{V-v_1}{f}\)、振動数は \(\frac{V}{V-v_1}f\) です。
\(V > v_1\) なので波長は正の値、振動数も正の値となり、かつ元の振動数 \(f\) より大きくなっています(近づくので音が高くなる)。これは物理的に妥当です。

解答 (1) 波長: \(\displaystyle \frac{V-v_1}{f}\,\text{m}\), 振動数: \(\displaystyle \frac{V}{V-v_1}f\,\text{Hz}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
音源S2も左向きに速さ \(v_2\) で動いています。観測者AはS2のさらに左側にいます。つまり、S2もAに向かって近づいてきています。
状況は(1)と全く同じで、音源の速さが \(v_1\) から \(v_2\) に変わっただけです。
この設問における重要なポイント

  • 音源S2は観測者Aに近づく向きに動いている。
  • 音源の速さは \(v_2\)。

具体的な解説と立式
(1)と同様に考えます。
音源S2はAに近づいているので、波長 \(\lambda_2\) は縮みます。
$$ \lambda_2 = \frac{V – v_2}{f} $$

振動数 \(f_2\) は、波の基本式より、
$$ f_2 = \frac{V}{\lambda_2} $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(波長): \(\lambda’ = \frac{V – v_S}{f}\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{V}{\displaystyle\frac{V – v_2}{f}} \\[2.0ex] &= \frac{V}{V – v_2}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

S2もS1と同じように、Aさんに向かって走ってきています。だからS1のときと同じように、波長は縮み、音は高く聞こえます。ただ、S2の速さ \(v_2\) はS1の速さ \(v_1\) とは違うので、縮み具合や音の高さも少し違います。

結論と吟味

波長は \(\frac{V-v_2}{f}\)、振動数は \(\frac{V}{V-v_2}f\) です。
(1)と同様に、近づく音源からの音なので振動数は高くなっています。

解答 (2) 波長: \(\displaystyle \frac{V-v_2}{f}\,\text{m}\), 振動数: \(\displaystyle \frac{V}{V-v_2}f\,\text{Hz}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
うなりの回数 \(N\) は、2つの音の振動数の差の絶対値 \(|f_1 – f_2|\) で求められます。
(1)と(2)で求めた \(f_1\) と \(f_2\) の大小関係を判断し、引き算を行います。
この設問における重要なポイント

  • うなりの公式: \(N = |f_1 – f_2|\)
  • 大小関係: \(V > v_1 > v_2\) より、分母は \(V – v_1 < V – v_2\) となるため、\(f_1 > f_2\) である。

具体的な解説と立式
うなりの回数 \(N_A\) は以下の式で表されます。
$$ N_A = |f_1 – f_2| $$
ここで、\(v_1 > v_2\) なので、\(V – v_1 < V – v_2\) です。
分母が小さい方が分数は大きくなるので、\(f_1 > f_2\) となります。
したがって、絶対値を外すと、
$$ N_A = f_1 – f_2 $$
これに(1)(2)の結果を代入します。

使用した物理公式

  • うなりの回数: \(N = |f_1 – f_2|\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
N_A &= \frac{V}{V – v_1}f – \frac{V}{V – v_2}f \\[2.0ex] &= Vf \left( \frac{1}{V – v_1} – \frac{1}{V – v_2} \right) \\[2.0ex] &= Vf \left( \frac{(V – v_2) – (V – v_1)}{(V – v_1)(V – v_2)} \right) \\[2.0ex] &= Vf \frac{v_1 – v_2}{(V – v_1)(V – v_2)} \\[2.0ex] &= \frac{(v_1 – v_2)V}{(V – v_1)(V – v_2)}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

Aさんには、S1からの高い音と、S2からの高い音が同時に聞こえています。でも、S1の方が速く近づいてくるので、S1の音の方がより高くなっています。この微妙に高さの違う2つの音が混ざると、「ウワンウワン」といううなりが聞こえます。その回数は、2つの音の高さ(振動数)の引き算で求められます。

結論と吟味

答えは \(\frac{(v_1 – v_2)V}{(V – v_1)(V – v_2)}f\) 回です。
もし \(v_1 = v_2\) なら分子が0になり、うなりは聞こえなくなります。これは2つの音源が同じ速さで動けば同じ音の高さになるため当然の結果です。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{(v_1 – v_2)V}{(V – v_1)(V – v_2)}f\,\text{回}\)
別解: 近似を用いたうなりの回数の見積もり

思考の道筋とポイント
音源の速さ \(v_1, v_2\) が音速 \(V\) に比べて十分に小さい(\(v \ll V\))と仮定できる場合、近似式 \(\frac{1}{1-x} \approx 1+x\) を用いて計算を簡略化できます。
この設問における重要なポイント

  • 近似式: \(|x| \ll 1\) のとき \((1-x)^{-1} \approx 1+x\)

具体的な解説と立式
\(f_1 = \frac{V}{V-v_1}f = \frac{1}{1 – \frac{v_1}{V}}f \approx \left(1 + \frac{v_1}{V}\right)f\)
同様に、\(f_2 \approx \left(1 + \frac{v_2}{V}\right)f\)
うなりの回数 \(N_A\) は、
$$ N_A \approx \left(1 + \frac{v_1}{V}\right)f – \left(1 + \frac{v_2}{V}\right)f $$

使用した物理公式

  • 近似式: \((1-x)^{-1} \approx 1+x\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
N_A &\approx \left( \frac{v_1}{V} – \frac{v_2}{V} \right)f \\[2.0ex] &= \frac{v_1 – v_2}{V}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

音源がそれほど速くない場合、ドップラー効果による振動数の変化は、速度に比例するとみなせます。この近似を使うと、面倒な分数の計算をせずに、サッと答えの目安をつけることができます。

結論と吟味

厳密解の分母 \((V-v_1)(V-v_2)\) を \(V^2\) と近似すれば、\(\frac{(v_1-v_2)V}{V^2}f = \frac{v_1-v_2}{V}f\) となり、近似解と一致します。

解答 (3) (近似解) \(\displaystyle \frac{v_1 – v_2}{V}f\,\text{回}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
観測者BはS1とS2の間にいます。
S1は左向きに動いているので、右側にいるBから見ると「遠ざかる」動きになります。
S2は左向きに動いているので、左側にいるBから見ると「近づく」動きになります。
観測者Aの場合と比較して、状況が変わった音源を特定します。
この設問における重要なポイント

  • 観測者Aに対して: S1は近づく、S2は近づく。
  • 観測者Bに対して: S1は遠ざかる、S2は近づく。
  • 状況が変わったのはS1である。

具体的な解説と立式

  • S2について: S2は左向きに動き、BはS2の左側にいるので、S2はBに近づいています。これはAの場合(S2がAに近づく)と同じ状況です。したがって、Bが聞くS2の音の高さはAと同じです。
  • S1について: S1は左向きに動き、BはS1の右側にいます。つまり、S1はBから遠ざかっています。Aの場合はS1が近づいていたので、状況が逆転しています。したがって、Bが聞くS1の音の高さはAとは異なります(Aより低くなる)。

よって、異なるのはS1からの音です。
その振動数 \(f_1’\) を求めます。
音源が速さ \(v_1\) で遠ざかる場合、波長は伸びます。
$$ \lambda_1′ = \frac{V + v_1}{f} $$
振動数は、
$$ f_1′ = \frac{V}{\lambda_1′} $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(遠ざかる音源): \(\lambda’ = \frac{V + v_S}{f}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1′ &= \frac{V}{\displaystyle\frac{V + v_1}{f}} \\[2.0ex] &= \frac{V}{V + v_1}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

AさんはS1とS2の両方から「追いかけられる」位置にいたので、両方の音が高く聞こえていました。
一方、BさんはS1とS2の間にいます。S2はBさんに向かってきますが、S1はBさんを背にして逃げていきます。
だから、S2の音はAさんと同じように高く聞こえますが、S1の音は遠ざかる救急車のように低く聞こえます。つまり、Aさんと違う聞こえ方をするのはS1の方です。

結論と吟味

音源はS1、振動数は \(\frac{V}{V+v_1}f\) です。
分母が \(V+v_1\) と大きくなっているため、振動数は元の \(f\) より小さくなります(遠ざかるので音が低くなる)。これは物理的に正しいです。

解答 (4) 音源: S1, 振動数: \(\displaystyle \frac{V}{V+v_1}f\,\text{Hz}\)
別解: 相対速度の視点からの定性的な判断

思考の道筋とポイント
計算をせずに、音源と観測者の相対的な動き(近づくか遠ざかるか)だけに着目して判断します。
この設問における重要なポイント

  • ドップラー効果は相対的な接近・後退で決まる。
  • 接近 \(\rightarrow\) 音が高くなる。
  • 後退 \(\rightarrow\) 音が低くなる。

具体的な解説と立式

  • 観測者A: S1もS2もAに向かって動いているため、どちらも「接近」の状態です。
  • 観測者B: S2はBに向かって動いているため「接近」ですが、S1はBから離れる方向に動いているため「後退」の状態です。

AとBで状況が異なるのは、「接近」から「後退」に変わったS1です。
したがって、音が異なって聞こえるのはS1からの音であると即座に判断できます。

この設問の平易な説明

「近づく」か「遠ざかる」か、という関係性だけを見れば、計算しなくても答えはわかります。Aさんにとっては両方とも「近づく音源」ですが、BさんにとってはS1だけが「遠ざかる音源」になっています。だからS1の音だけが変わって聞こえるのです。

結論と吟味

メインの解法と同じ結論に至ります。この直感的な判断は、検算やマーク式問題での時間短縮に非常に有効です。

解答 (4) 音源: S1

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ドップラー効果の原理(音源の移動)
    • 核心: 音源が動くことによって、音波の波長が物理的に伸縮する現象です。
    • 理解のポイント:
      • 近づく場合: 音源が波を追いかけるため、波の間隔が詰まり、波長が短くなります(\(\lambda’ = \frac{V-v_S}{f}\))。その結果、観測される振動数は高くなります。
      • 遠ざかる場合: 音源が波から逃げるため、波の間隔が広がり、波長が長くなります(\(\lambda’ = \frac{V+v_S}{f}\))。その結果、観測される振動数は低くなります。
      • 公式の適用: 公式を丸暗記するのではなく、「波長の伸縮」という物理的イメージを持つことで、符号のミスを防げます。
  • うなりの原理
    • 核心: 振動数がわずかに異なる2つの波が重なり合うと、振幅が周期的に変動し、音の大きさの変化(うなり)として観測されます。
    • 理解のポイント:
      • 回数の公式: 1秒間のうなりの回数 \(N\) は、2つの振動数の差の絶対値 \(|f_1 – f_2|\) に等しくなります。
      • 大小関係の把握: どちらの振動数が大きいかを正しく判断することが、絶対値を外して計算を進める上で重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 観測者が動く場合: 音源が静止して観測者が動く場合、波長は変わりませんが、観測者が波とすれ違う相対速度が変わります。この場合、\(f’ = \frac{V \pm v_O}{V}f\) となります。
    • 反射板がある場合: 動く反射板は「動く観測者」かつ「動く音源」として扱います。まず反射板が受け取る振動数を計算し、次にその振動数で音を出す音源として反射音を計算します。
    • 風がある場合: 風速 \(w\) がある場合、音速全体を \(V+w\)(追い風)や \(V-w\)(向かい風)として扱います。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 相対運動の確認: 音源と観測者の位置関係と移動方向を図に描き、「近づいているのか、遠ざかっているのか」を一目でわかるようにします。
    2. 波長の計算: 音源が動いている場合は、まず波長 \(\lambda’\) を求めます。これが全ての計算の基礎になります。
    3. 振動数の大小チェック: 「近づく \(\to\) 高くなる」「遠ざかる \(\to\) 低くなる」という定性的なチェックを常に行い、計算結果の妥当性を確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ドップラー効果の符号ミス
    • 誤解: 公式の分母・分子のプラスマイナスを逆に記憶してしまう、あるいは適用を間違える。
    • 対策: 「近づくときは音が高くなる(振動数が大きくなる)」という事実を基準にします。振動数を大きくするには、分母を小さく(\(V-v_S\))、分子を大きく(\(V+v_O\))すればよい、と論理的に導けます。
  • うなりの計算での引き算の順序
    • 誤解: \(f_1\) と \(f_2\) のどちらが大きいかを確認せずに引き算をしてしまい、負の値になってしまう。
    • 対策: 必ず \(|f_1 – f_2|\) と絶対値を付けて立式し、分母の大小(\(V-v_1 < V-v_2\) なので \(f_1 > f_2\))を確認してから絶対値を外す習慣をつけましょう。
  • 観測者の位置による状況変化の見落とし
    • 誤解: 観測者がどこにいても、音源の動きが同じなら聞こえる音も同じだと思い込む。
    • 対策: ドップラー効果は「音源と観測者の相対的な接近・後退」で決まります。観測者の位置が変われば、「近づく」が「遠ざかる」に変わる可能性があることを常に意識しましょう(設問4のポイント)。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波長 \(\lambda’ = \frac{V \mp v_S}{f}\) の選択
    • 選定理由: 音源が動いているため、空間的な波の分布(波長)が変化しています。振動数を求める前に、まずこの物理的な変化を記述する必要があります。
    • 適用根拠: 音源が1秒間に進む距離 \(v_S\) 分だけ、波が詰め込まれる(または引き伸ばされる)という幾何学的な事実に基づいています。
  • 振動数 \(f’ = \frac{V}{\lambda’}\) の選択
    • 選定理由: 観測者は静止しているため、観測者に対する波の速さは \(V\) のままです。変化した波長 \(\lambda’\) の波が速さ \(V\) で通過するときの振動数を求めるには、波の基本式が最適です。
    • 適用根拠: 波動現象において \(V = f\lambda\) は常に成立する基本法則です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める
    • 具体的な数値が与えられていない問題では、最後まで文字式のまま計算します。通分や因数分解を丁寧に行い、式を整理する力を養いましょう。特にうなりの計算では、\(\frac{1}{A} – \frac{1}{B} = \frac{B-A}{AB}\) のような通分が頻出です。
  • 次元解析(単位チェック)
    • 求めた式の単位が正しいか確認します。振動数の単位は [Hz]([1/s])です。例えば(3)の答え \(\frac{(v_1 – v_2)V}{(V – v_1)(V – v_2)}f\) なら、\(\frac{[\text{m/s}] \cdot [\text{m/s}]}{[\text{m/s}] \cdot [\text{m/s}]} \cdot [\text{Hz}] = [\text{Hz}]\) となり、正しい次元を持っていることがわかります。
  • 極限の確認
    • \(v_1 = v_2\) としたらどうなるか(うなりは0になるはず)、\(v_1 = 0\) としたらどうなるか(通常のドップラー効果の式になるはず)など、特殊な場合を想定して検算します。

151 動く音源の波長

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)(2)の別解: ドップラー効果の公式を直接用いる解法
      • 模範解答が「波長を求めてから振動数を計算する」という2段階の手順を踏んでいるのに対し、別解ではドップラー効果の振動数の公式 \(f’ = \frac{V}{V \mp v_S}f\) を用いて、振動数を直接求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算の効率化: 振動数だけを知りたい場合、波長を経由せずに直接計算できるため、計算の手間とミスを減らせます。
    • 公式の再確認: ドップラー効果の公式が、波長の変化と波の基本式から導かれるものであることを再認識し、理解を深めることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「音源が動く場合のドップラー効果」です。音源の移動によって波長がどのように変化するか(縮むか伸びるか)、そしてそれが観測される振動数にどう影響するかを定量的に計算します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ドップラー効果(波長の変化): 音源が速さ \(v_S\) で動くとき、進行方向前方では波長が縮み、後方では波長が伸びます。
    • 前方(近づく向き): \(\lambda’ = \frac{V – v_S}{f}\)
    • 後方(遠ざかる向き): \(\lambda’ = \frac{V + v_S}{f}\)
  2. 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。観測者が静止している場合、観測される音速は \(V\) のままです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、音源が観測者Pに近づくため、波長が縮む式を用いて波長を求めます。その後、波の基本式を用いて振動数を計算します。
  2. (2)では、音源が観測者Qから遠ざかるため、波長が伸びる式を用いて波長を求めます。同様に振動数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
音源Sは点Pに向かって動いています。つまり、SはPに「近づく」動きをしています。
音源が近づく場合、音波は進行方向に詰め込まれるため、波長は短くなります。
この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V = 340\,\text{m/s}\)
  • 音源の速さ \(v_S = 20\,\text{m/s}\)
  • 振動数 \(f = 500\,\text{Hz}\)
  • 音源が観測者に近づく \(\rightarrow\) 波長は縮む。

具体的な解説と立式
まず、波長 \(\lambda_1\) を求めます。
音源が近づく場合の波長の公式より、
$$ \lambda_1 = \frac{V – v_S}{f} $$
これに数値を代入します。

次に、振動数 \(f_1\) を求めます。
観測者Pは静止しているので、受け取る音波の速さは \(V\) です。
波の基本式 \(V = f_1 \lambda_1\) より、
$$ f_1 = \frac{V}{\lambda_1} $$
これに求めた \(\lambda_1\) を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(波長): \(\lambda’ = \frac{V – v_S}{f}\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程
  • 波長の計算
    $$
    \begin{aligned}
    \lambda_1 &= \frac{340 – 20}{500} \\[2.0ex] &= \frac{320}{500} \\[2.0ex] &= \frac{32}{50} \\[2.0ex] &= 0.640\,\text{m}
    \end{aligned}
    $$
  • 振動数の計算
    $$
    \begin{aligned}
    f_1 &= \frac{340}{0.640} \\[2.0ex] &= \frac{34000}{64} \\[2.0ex] &= 531.25
    \end{aligned}
    $$
    有効数字3桁で答えるため、四捨五入して \(531\,\text{Hz}\) となります。
この設問の平易な説明

音源がPさんに向かって走っているので、音の波がギュッと圧縮されて届きます。だから波長は短くなります(\(0.640\,\text{m}\))。
波長が短い波が普通のスピード(\(340\,\text{m/s}\))で耳に飛び込んでくるので、1秒間に耳を叩く波の回数(振動数)は増えます。計算すると \(531\,\text{Hz}\) になり、元の \(500\,\text{Hz}\) より高い音が聞こえることになります。

結論と吟味

波長 \(0.640\,\text{m}\)、振動数 \(531\,\text{Hz}\)。
近づく音源なので、波長は短くなり、振動数は高くなるはずです。計算結果はこの定性的な予測と一致しています。

解答 (1) 波長: \(0.640\,\text{m}\), 振動数: \(531\,\text{Hz}\)
別解: ドップラー効果の公式を直接用いる解法

思考の道筋とポイント
波長を求めずに、ドップラー効果の振動数の公式を使って一発で振動数を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 音源が近づく場合の公式: \(f’ = \frac{V}{V – v_S}f\)

具体的な解説と立式
振動数 \(f_1\) は以下の式で求められます。
$$ f_1 = \frac{V}{V – v_S}f $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(振動数): \(f’ = \frac{V}{V – v_S}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{340}{340 – 20} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{340}{320} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{17}{16} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{8500}{16} \\[2.0ex] &= 531.25 \\[2.0ex] &\approx 531\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「近づくときは音が高くなる」という法則を式にしたのがドップラー効果の公式です。この公式を使えば、波長を計算しなくても、いきなり振動数(音の高さ)を求めることができます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。

解答 (1) 振動数: \(531\,\text{Hz}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
点Qは音源Sに対して点Pと反対側にあります。音源SはPに向かって動いているので、Qからは「遠ざかる」動きをしています。
音源が遠ざかる場合、音波は引き伸ばされるため、波長は長くなります。
この設問における重要なポイント

  • 音源Sは観測者Qから遠ざかる向きに動いている。
  • 音源が観測者から遠ざかる \(\rightarrow\) 波長は伸びる。

具体的な解説と立式
まず、波長 \(\lambda_2\) を求めます。
音源が遠ざかる場合の波長の公式より、
$$ \lambda_2 = \frac{V + v_S}{f} $$
これに数値を代入します。

次に、振動数 \(f_2\) を求めます。
波の基本式 \(V = f_2 \lambda_2\) より、
$$ f_2 = \frac{V}{\lambda_2} $$
これに求めた \(\lambda_2\) を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(波長): \(\lambda’ = \frac{V + v_S}{f}\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程
  • 波長の計算
    $$
    \begin{aligned}
    \lambda_2 &= \frac{340 + 20}{500} \\[2.0ex] &= \frac{360}{500} \\[2.0ex] &= \frac{36}{50} \\[2.0ex] &= 0.720\,\text{m}
    \end{aligned}
    $$
  • 振動数の計算
    $$
    \begin{aligned}
    f_2 &= \frac{340}{0.720} \\[2.0ex] &= \frac{34000}{72} \\[2.0ex] &= 472.22\dots
    \end{aligned}
    $$
    有効数字3桁で答えるため、四捨五入して \(472\,\text{Hz}\) となります。
この設問の平易な説明

音源がQさんから逃げていくので、音の波が引き伸ばされて届きます。だから波長は長くなります(\(0.720\,\text{m}\))。
波長が長い波が耳に届くので、1秒間の波の回数は減ります。計算すると \(472\,\text{Hz}\) になり、元の \(500\,\text{Hz}\) より低い音が聞こえることになります。

結論と吟味

波長 \(0.720\,\text{m}\)、振動数 \(472\,\text{Hz}\)。
遠ざかる音源なので、波長は長くなり、振動数は低くなるはずです。計算結果はこの定性的な予測と一致しています。

解答 (2) 波長: \(0.720\,\text{m}\), 振動数: \(472\,\text{Hz}\)
別解: ドップラー効果の公式を直接用いる解法

思考の道筋とポイント
(1)と同様に、振動数の公式を使って直接計算します。
この設問における重要なポイント

  • 音源が遠ざかる場合の公式: \(f’ = \frac{V}{V + v_S}f\)

具体的な解説と立式
振動数 \(f_2\) は以下の式で求められます。
$$ f_2 = \frac{V}{V + v_S}f $$

使用した物理公式

  • ドップラー効果(振動数): \(f’ = \frac{V}{V + v_S}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{340}{340 + 20} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{340}{360} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{17}{18} \times 500 \\[2.0ex] &= \frac{8500}{18} \\[2.0ex] &= 472.22\dots \\[2.0ex] &\approx 472\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「遠ざかるときは音が低くなる」という法則を式にした公式を使います。これを使えば、波長を計算しなくても、すぐに振動数を求めることができます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。

解答 (2) 振動数: \(472\,\text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ドップラー効果の幾何学的メカニズム(波長の伸縮)
    • 核心: 音源が動くことで、波が空間的に「圧縮」または「伸長」される現象です。
    • 理解のポイント:
      • 前方(近づく向き): 音源が波を追いかけるため、波の間隔が詰まり、波長が短くなります(\(\lambda’ = \frac{V-v_S}{f}\))。
      • 後方(遠ざかる向き): 音源が波から逃げるため、波の間隔が広がり、波長が長くなります(\(\lambda’ = \frac{V+v_S}{f}\))。
      • 波長の決定権: 波長は「音源が波を出した瞬間」の状況で決まり、一度放たれた後は変化しません。
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) の普遍性
    • 核心: 観測者が静止している限り、観測される音速 \(V\) は不変です。したがって、波長 \(\lambda\) が変化すれば、それに応じて振動数 \(f\) も変化しなければなりません。
    • 理解のポイント:
      • 因果関係: 「音源が動く \(\rightarrow\) 波長が変わる \(\rightarrow\) (音速一定なので)振動数が変わる」という論理的な順序を理解することが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 観測者が動く場合: 音源が静止して観測者が動く場合、波長は変わりません。代わりに、観測者が波とすれ違う「相対的な音速」が変化します。この違いを明確に区別することが重要です。
    • 斜め方向のドップラー効果: 音源の速度ベクトルを「観測者に向かう成分」に分解して考えます。\(v_S \cos\theta\) を公式の \(v_S\) として使います。
    • 反射板がある場合: 反射板を「観測者」として受け取る振動数を計算し、次にその振動数で音を出す「音源」として反射音を計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 音源の進行方向を確認: 観測者に対して「近づいている」のか「遠ざかっている」のかを最初に見極めます。
    2. 波長の伸縮をイメージ: 近づくなら波長は縮む(分母が小さくなる)、遠ざかるなら波長は伸びる(分母が大きくなる)と定性的に予測します。
    3. 計算ルートの選択: 「波長と振動数の両方を求めよ」ならメイン解法(波長 \(\rightarrow\) 振動数)、「振動数のみ求めよ」なら別解(公式一発)が効率的です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の符号ミス
    • 誤解: \(V-v_S\) と \(V+v_S\) を逆にしてしまう。
    • 対策: 「近づくときは音が高くなる(波長が短くなる)」という事実をアンカーにします。波長を短くするには分子を小さく(\(V-v_S\))、振動数を高くするには分母を小さく(\(V-v_S\))すればよい、と論理的に導けます。
  • 有効数字の処理
    • 誤解: 途中の計算で早めに四捨五入してしまい、最終的な答えに誤差が出る。
    • 対策: 途中計算では有効数字より1桁多く残すか、分数のまま計算を進め、最後に四捨五入します。本問では \(531.25\) を四捨五入して \(531\) としています。
  • 単位の確認
    • 誤解: 波長の単位を [cm] で答えてしまう、あるいは計算途中で単位を混同する。
    • 対策: 物理公式は基本的にSI単位系(m, s, kg, A)で運用します。答えの単位が [m] であることを意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波長 \(\lambda’ = \frac{V \mp v_S}{f}\) の選択
    • 選定理由: 設問で「波長」を求められているため、波長の定義(1波長分の距離)に基づいたこの式を使うのが最も直接的です。
    • 適用根拠: 音源が1秒間に進む距離 \(v_S\) 分だけ、波が空間的に圧縮・伸長されるという幾何学的な事実に基づいています。
  • 振動数 \(f’ = \frac{V}{\lambda’}\) の選択
    • 選定理由: 観測者は静止しているため、観測者に対する波の速さは \(V\) のままです。変化した波長 \(\lambda’\) の波が速さ \(V\) で通過するときの振動数を求めるには、波の基本式が最適です。
    • 適用根拠: 波動現象において \(V = f\lambda\) は常に成立する基本法則です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の活用
    • \(340/0.640\) のような小数の割り算はミスのもとです。\(\frac{340}{64/100} = \frac{34000}{64}\) のように整数比に直してから計算するか、別解のように分数のまま約分を進める方が安全で速いです。
  • 定性的な検算
    • 計算結果が出たら、「近づくから元の \(500\,\text{Hz}\) より高くなっているか?」「遠ざかるから低くなっているか?」を必ず確認します。もし \(400\,\text{Hz}\)(近づくのに低い)のような結果が出たら、計算か公式の適用が間違っています。
  • オーダー(桁数)の確認
    • 音速 \(340\) に対して音源の速さ \(20\) は1割未満です。したがって、振動数の変化も1割未満(\(500 \pm 50\) 程度)になるはずです。\(1000\,\text{Hz}\) や \(100\,\text{Hz}\) のような極端な値になったら再計算が必要です。

152 観測者が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問④の別解: 相対速度を用いた振動数の導出
      • 模範解答が「時間 \(t\) 秒間に観測者が受け取る波の総数」から振動数を求めているのに対し、別解では「観測者から見た音波の相対速度」に着目して、瞬時に振動数を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の強化: 「観測者が逃げるから、観測者から見た波の速さが遅くなる(相対速度が小さくなる)」という直感的な理解と数式を結びつけることができます。
    • 計算の効率化: 時間 \(t\) や波の個数を経由せず、直接的に振動数を求めることができるため、公式を忘れた際の再導出にも役立ちます。
  3. 結果への影響
    • どちらのアプローチでも、得られる振動数の式は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「観測者が動く場合のドップラー効果の原理導出」です。公式を単に適用するのではなく、なぜ振動数が変化して聞こえるのか、その物理的なメカニズム(相対速度の変化)を理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(V = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
  2. 音源静止時の波長: 音源が静止している場合、波長 \(\lambda\) は変化せず、\(\lambda = V/f\) で一定です。
  3. 相対速度: 速さ \(V\) の波から速さ \(v_O\) で逃げる観測者にとって、波の相対的な速さは \(V – v_O\) となります。
  4. 振動数の定義: 振動数とは、1秒間に観測者が受け取る波の個数のことです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ①では、音源が静止しているため、波長は変化しないことを確認します。
  2. ②では、時間 \(t\) の間に波が進んだ距離と、観測者が逃げた距離の差を計算します。これが「観測者が追い抜かれた波の長さ」になります。
  3. ③では、その長さの中に波が何個含まれているかを計算します。
  4. ④では、その個数を時間 \(t\) で割ることで、1秒あたりの個数(振動数)を求めます。

① 音の波長

思考の道筋とポイント
音源Sは静止しています。音源が動かない限り、空間に広がる波の間隔(波長)は変化しません。
この設問における重要なポイント

  • 音源Sは静止している。
  • 音速 \(V\)、振動数 \(f\)。
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) が成り立つ。

具体的な解説と立式
音源Sは静止しているので、送り出される音波の波長 \(\lambda\) は変化しません。
波の基本式 \(V = f\lambda\) より、
$$ \lambda = \frac{V}{f} $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

$$ \lambda = \frac{V}{f} $$

この設問の平易な説明

音源が止まっているので、普通の波の式を使って波長を求めるだけです。「速さ ÷ 振動数」で波長が出ます。

結論と吟味

\(\frac{V}{f}\) です。これは静止音源からの波長の定義そのものです。

解答 ① \(\displaystyle \frac{V}{f}\)

② 音波の先端と観測者の距離

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=0\) に観測者Oの位置にあった音波の先端は、時間 \(t\) の間にどれだけ進むでしょうか。また、観測者O自身はどれだけ進むでしょうか。その差が、音波の先端と観測者の距離になります。
この設問における重要なポイント

  • 音波の速さは \(V\)。
  • 観測者の速さは \(v_O\)。
  • 時間は \(t\)。
  • 両者は同じ向きに進んでいる。

具体的な解説と立式
時刻 \(t=0\) に観測者Oの位置にあった音波の先端は、時間 \(t\) の間に \(Vt\) だけ進みます。
一方、観測者Oは時間 \(t\) の間に \(v_O t\) だけ進みます。
したがって、時刻 \(t\) における音波の先端と観測者Oの距離 \(L\) は、
$$ L = Vt – v_O t = (V – v_O)t $$
となります。
この距離 \(L\) は、時間 \(t\) の間に観測者Oを追い越していった音波の列の長さを表しています。

使用した物理公式

  • 等速直線運動の距離: \(x = vt\)
計算過程

$$ (V – v_O)t $$

この設問の平易な説明

音の波が後ろから観測者を追いかけてきます。音は速さ \(V\) で、観測者は速さ \(v_O\) で逃げています。
\(t\) 秒間で、音は \(Vt\) 進み、観測者は \(v_O t\) 進みます。その差 \((V – v_O)t\) だけ、音の方が前に出ることになります。つまり、この長さ分の音波が観測者を通り過ぎたということです。

結論と吟味

\((V – v_O)t\) です。\(V > v_O\) なので正の値となり、物理的に妥当です。

解答 ② \((V – v_O)t\)

③ 観測される波の数

思考の道筋とポイント
②で求めた距離(観測者を通り過ぎた音波の列の長さ)の中に、波が何個入っているかを計算します。波1個の長さ(波長)は①で求めています。
この設問における重要なポイント

  • 波の列の長さは \(L = (V – v_O)t\)。
  • 波長(波1個の長さ)は \(\lambda = \frac{V}{f}\)。
  • 波の個数 \(n = \frac{\text{全体の長さ}}{\text{波長}}\)。

具体的な解説と立式
距離 \(L\) の範囲にある波の数 \(n\) は、距離 \(L\) を波長 \(\lambda\) で割ることで求められます。
$$ n = \frac{L}{\lambda} $$
これに①と②の結果を代入します。

使用した物理公式

  • 個数の計算: \(n = \frac{L}{\lambda}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
n &= \frac{(V – v_O)t}{\displaystyle\frac{V}{f}} \\[2.0ex] &= \frac{(V – v_O)t \times f}{V} \\[2.0ex] &= \frac{(V – v_O)ft}{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

観測者を追い越していった音の列の長さがわかりました。その中に「波1つ分の長さ(波長)」がいくつ入るかを計算すれば、観測者が聞いた(追い越された)波の個数がわかります。

結論と吟味

\(\frac{(V – v_O)ft}{V}\) です。単位を確認すると、\(\frac{[\text{m/s}] \cdot [\text{Hz}] \cdot [\text{s}]}{[\text{m/s}]} = \text{無次元(個数)}\) となり正しいです。

解答 ③ \(\displaystyle \frac{(V – v_O)ft}{V}\)

④ 観測者が聞く振動数

思考の道筋とポイント
振動数とは「1秒間に観測者が受け取る波の数」のことです。③で求めたのは「\(t\) 秒間に受け取った波の数」なので、これを \(t\) で割れば答えが出ます。
この設問における重要なポイント

  • 振動数 \(f’ = \frac{\text{波の個数}}{\text{時間}}\)。
  • 波の個数は \(n = \frac{(V – v_O)ft}{V}\)。
  • 時間は \(t\)。

具体的な解説と立式
観測者が聞く振動数 \(f’\) は、単位時間(1秒)あたりに観測する波の数です。
\(t\) 秒間に \(n\) 個の波を観測したので、
$$ f’ = \frac{n}{t} $$
これに③の結果を代入します。

使用した物理公式

  • 振動数の定義: \(f = \frac{n}{t}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{\displaystyle\frac{(V – v_O)ft}{V}}{t} \\[2.0ex] &= \frac{(V – v_O)f}{V} \\[2.0ex] &= \frac{V – v_O}{V}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

\(t\) 秒間で \(n\) 個の波を聞いたので、1秒あたり何個聞いたかを計算するには、単に \(n\) を \(t\) で割ればよいだけです。これが観測者が聞く新しい振動数(音の高さ)になります。

結論と吟味

\(\frac{V – v_O}{V}f\) です。
観測者が遠ざかる(\(v_O > 0\))と、分子が小さくなるため \(f’ < f\) となり、音が低く聞こえます。これはドップラー効果の定性的な理解と一致します。

解答 ④ \(\displaystyle \frac{V – v_O}{V}f\)
別解: 相対速度を用いた振動数の導出

思考の道筋とポイント
観測者から見た「音波の相対速度」を考えます。観測者にとって、音波はどれくらいの速さで通り過ぎていくように見えるでしょうか。
この設問における重要なポイント

  • 音波の速さは \(V\)。
  • 観測者の速さは \(v_O\)(音波と同じ向き)。
  • 観測者から見た音波の相対速度は \(V’ = V – v_O\)。
  • 観測者にとっての波長 \(\lambda’\) は、音源が静止しているため元の波長 \(\lambda\) と同じ。

具体的な解説と立式
観測者Oから見ると、音波は相対速度 \(V’ = V – v_O\) で通過していきます。
また、音源は静止しているため、空間上の波長 \(\lambda\) は変化せず \(\lambda = V/f\) のままです。
観測者が観測する振動数 \(f’\) は、相対速度 \(V’\) を波長 \(\lambda\) で割ったものになります(波の基本式 \(V=f\lambda\) の相対速度版)。
$$ f’ = \frac{V’}{\lambda} $$

使用した物理公式

  • 相対速度: \(V’ = V – v_O\)
  • 波の基本式(観測者視点): \(V’ = f’\lambda\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{V – v_O}{\displaystyle\frac{V}{f}} \\[2.0ex] &= \frac{V – v_O}{V}f
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

逃げている観測者から見ると、音の波は本来の速さ \(V\) よりも遅い \(V – v_O\) で追い抜いていくように見えます。
波の間隔(波長)は変わっていないので、波がゆっくり通過する分だけ、1秒間に追い抜いていく波の数(振動数)は減ります。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。時間 \(t\) を設定する必要がなく、より直接的に振動数を求めることができます。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{V – v_O}{V}f\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ドップラー効果の幾何学的メカニズム(観測者の移動)
    • 核心: 観測者が動く場合、波長自体は変化しませんが、観測者が波とすれ違う「相対的な速さ」が変化することで、単位時間に受け取る波の数が変わります。
    • 理解のポイント:
      • 波長の不変性: 音源が静止している限り、波長 \(\lambda\) は \(V/f\) で固定されます。観測者がどう動こうと、空間にある波の形は変わりません。
      • 相対速度の変化: 観測者が波から逃げる(遠ざかる)と、波との相対速度は \(V – v_O\) に減少し、その分だけ受け取る波の数(振動数)が減ります。逆に波に向かう(近づく)と、相対速度は \(V + v_O\) に増加し、振動数は増えます。
  • 振動数の定義
    • 核心: 振動数 \(f\) とは、「1秒間に何個の波が通り過ぎるか」という数です。
    • 理解のポイント:
      • 個数の計算: 「通過した波の列の長さ」を「波1つ分の長さ(波長)」で割れば、波の個数が求まります。これを時間で割れば振動数になります。この定義に戻って考えることが、公式導出の基本です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 音源も動く場合: 音源が動くと「波長」が変化し、観測者が動くと「相対速度」が変化します。両方が動く場合は、この2つの効果を組み合わせます。
      • 音源の移動 \(\rightarrow\) 波長 \(\lambda’ = \frac{V \mp v_S}{f}\)
      • 観測者の移動 \(\rightarrow\) 相対速度 \(V’ = V \pm v_O\)
      • 最終的な振動数 \(f’ = \frac{V’}{\lambda’} = \frac{V \pm v_O}{V \mp v_S}f\)
    • 風がある場合: 風速 \(w\) があると、音速全体を \(V+w\)(追い風)や \(V-w\)(向かい風)に変化します。これは媒質全体が動くためで、波長と振動数の両方に影響を与える可能性がありますが、基本的には「実効的な音速」として扱えばOKです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 誰が動いているか: 音源だけか、観測者だけか、両方か。それによって「波長が変わる」のか「相対速度が変わる」のかを判断します。
    2. 波長の計算: 音源が静止していれば、波長は \(\lambda = V/f\) で一定です。これが計算の出発点になります。
    3. 相対速度の計算: 観測者と波の向きを確認し、相対速度 \(V – v_O\) (同方向)か \(V + v_O\) (逆方向)かを決定します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波長が変化すると勘違いする
    • 誤解: 観測者が動くと、ドップラー効果で波長も変わると思ってしまう。
    • 対策: 「波長を変えられるのは音源だけ」と覚えましょう。観測者は受け取る側であり、空間にある波の形を変えることはできません。
  • 相対速度の符号ミス
    • 誤解: 遠ざかるときに \(V + v_O\) としてしまう。
    • 対策: 「逃げれば波とのすれ違いは遅くなる(相対速度ダウン)」、「向かっていけば速くなる(相対速度アップ)」という直感を大切にしましょう。
  • 振動数の定義の取り違え
    • 誤解: 振動数を「波の速さ」や「波長」と混同する。
    • 対策: 単位 [Hz] は [1/s]、つまり「1秒あたりの回数」であることを常に意識します。個数 \(n\) を時間 \(t\) で割る操作が振動数を求める操作そのものです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) の選択
    • 選定理由: 設問①で波長を求める際、音源が静止しているため、最も基本的な関係式を使うのが適切です。
    • 適用根拠: 波動現象において常に成立する基本法則です。
  • 個数計算 \(n = L/\lambda\) の選択
    • 選定理由: 設問③で波の数を求める際、幾何学的に「全体の長さ」を「1個の長さ」で割るのが最も自然なアプローチです。
    • 適用根拠: 均一に並んだ波の列に対して有効な計算方法です。
  • 振動数の定義 \(f’ = n/t\) の選択
    • 選定理由: 設問④で振動数を求める際、③で求めた個数 \(n\) を利用する流れになっているため、定義通りに計算します。
    • 適用根拠: 振動数の定義そのものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の確認
    • \(n\) は個数(無次元)、\(t\) は秒 [s]、\(f\) はヘルツ [Hz]([1/s])。\(n/t\) の単位が [1/s] になることを確認すれば、式が正しいかどうかのチェックになります。
  • 文字式の整理
    • 分数が重なる計算(繁分数)では、分母と分子を別々に計算してから最後に合わせるのではなく、\(\frac{A/B}{C} = \frac{A}{BC}\) のように式変形のルールに従って整理する方がミスが減ります。
  • 極限の確認
    • \(v_O = 0\) (観測者が静止)としたらどうなるか確認します。\(f’ = \frac{V}{V}f = f\) となり、元の振動数に戻ります。これで式が正しい可能性が高まります。
    • \(v_O = V\) (音速と同じ速さで逃げる)としたらどうなるか。\(f’ = 0\) となり、波に追いつかれないので音は聞こえなくなります。これも物理的に正しい挙動です。

153 反射体が動く場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 2段階ドップラー効果の公式を直接用いる解法
      • 模範解答が「車が新たな音源になる」という物理的解釈を経て2段階で計算しているのに対し、別解では反射板(車)が動く場合のドップラー効果の公式 \(f’ = \frac{V+v}{V-v}f\) を導出し、一気に計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算の効率化: 反射板が動く問題は頻出であり、公式として形を覚えておくことで、試験時の計算時間を大幅に短縮できます。
    • 構造の理解: 分母と分子に同じ速さ \(v\) が現れる式の構造を理解することで、反射板が「観測者」と「音源」の二役を演じていることの数理的な意味が明確になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「反射体が動く場合のドップラー効果」です。動く観測者が音を聞く現象と、その音が反射して新たな音源となる現象を組み合わせた、ドップラー効果の応用問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 観測者が動く場合のドップラー効果: 音源が静止し、観測者が速さ \(v_O\) で動くとき、観測される振動数 \(f’\) は \(f’ = \frac{V \pm v_O}{V}f\) となります(近づくときプラス、遠ざかるときマイナス)。
  2. 音源が動く場合のドップラー効果: 音源が速さ \(v_S\) で動き、観測者が静止しているとき、観測される振動数 \(f’\) は \(f’ = \frac{V}{V \mp v_S}f\) となります(近づくときマイナス、遠ざかるときプラス)。
  3. 反射の原理: 動く反射体(車など)は、まず「動く観測者」として音を受け取り、次にその振動数で音を出す「動く音源」として振る舞います。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、静止音源Sに近づく観測者O1が聞く振動数 \(f_1\) を、観測者が動く場合の公式を用いて求めます。
  2. (2)では、車(O1)を「振動数 \(f_1\) の音を出しながら近づいてくる音源」とみなします。静止している観測者O2がこの音源から聞く振動数 \(f_2\) を、音源が動く場合の公式を用いて求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
観測者O1は車に乗って音源Sに近づいています。音源Sは静止しています。
観測者が音源に近づく場合、相対的に波とすれ違う速さが速くなるため、より多くの波を受け取り、振動数は高くなります。
この設問における重要なポイント

  • 音源Sは静止している(\(v_S = 0\))。
  • 観測者O1は速さ \(v_{O1} = 20\,\text{m/s}\) で音源に近づいている。
  • 音速 \(V = 340\,\text{m/s}\)、元の振動数 \(f = 680\,\text{Hz}\)。
  • 観測者が近づく場合の公式 \(f’ = \frac{V + v_O}{V}f\) を適用する。

具体的な解説と立式
求める振動数を \(f_1\) とします。
観測者が音源に近づく場合のドップラー効果の公式より、
$$ f_1 = \frac{V + v_{O1}}{V}f $$
これに与えられた数値を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(観測者が動く): \(f’ = \frac{V + v_O}{V}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{340 + 20}{340} \times 680 \\[2.0ex] &= \frac{360}{340} \times 680 \\[2.0ex] &= 360 \times \frac{680}{340} \\[2.0ex] &= 360 \times 2 \\[2.0ex] &= 720\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

O1さんは音源に向かって走っているので、止まっている時よりも勢いよく音の波にぶつかっていきます。そのため、1秒間に耳に届く波の数が増え、音が高く聞こえます。計算すると \(720\,\text{Hz}\) になります。

結論と吟味

\(720\,\text{Hz}\) です。近づいているので元の \(680\,\text{Hz}\) より高くなっており、妥当な結果です。

解答 (1) \(720\,\text{Hz}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
車(O1)で反射した音がO2に届きます。この現象は2つのステップで考えます。

  1. 受信: 車(O1)が「動く観測者」として音源Sからの音を受け取る。このときの振動数は(1)で求めた \(f_1\) です。
  2. 発信: 車(O1)が受け取った振動数 \(f_1\) をそのまま反射します。つまり、車は「振動数 \(f_1\) の音を出す動く音源」になります。この音源はO2に向かって近づいています。

この設問における重要なポイント

  • 反射音の振動数は、反射体が受け取った振動数と等しい。
  • 車は振動数 \(f_1 = 720\,\text{Hz}\) の音源とみなせる。
  • 車(音源)は静止している観測者O2に速さ \(v_S = 20\,\text{m/s}\) で近づいている。
  • 音源が近づく場合の公式 \(f’ = \frac{V}{V – v_S}f\) を適用する。

具体的な解説と立式
求める振動数を \(f_2\) とします。
車は振動数 \(f_1\) の音源として振る舞い、速さ \(20\,\text{m/s}\) で観測者O2に近づいています。
音源が観測者に近づく場合のドップラー効果の公式より、
$$ f_2 = \frac{V}{V – v_S}f_1 $$
これに \(V=340\)、\(v_S=20\)、\(f_1=720\) を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(音源が動く): \(f’ = \frac{V}{V – v_S}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{340}{340 – 20} \times 720 \\[2.0ex] &= \frac{340}{320} \times 720 \\[2.0ex] &= \frac{17}{16} \times 720 \\[2.0ex] &= 17 \times \frac{720}{16} \\[2.0ex] &= 17 \times 45 \\[2.0ex] &= 765\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

車はSからの音を受けて、それを跳ね返します。このとき、車は「動くスピーカー」になります。
このスピーカーは \(720\,\text{Hz}\) の音を出しながら、O2さんに向かって走ってきます。
スピーカーが近づいてくるので、音の波が押し縮められ、O2さんにはさらに高い音が聞こえます。

結論と吟味

\(765\,\text{Hz}\) です。
車が音を受け取るときに高くなり(\(680 \to 720\))、反射して送り出すときにさらに高くなる(\(720 \to 765\))という2段階の上昇が起きています。

解答 (2) \(765\,\text{Hz}\)
別解: 2段階ドップラー効果の公式を直接用いる解法

思考の道筋とポイント
反射板が速さ \(v\) で音源に近づき、反射音を音源方向(静止観測者)に返す場合の公式を一気に適用します。
この設問における重要なポイント

  • 反射板が近づく場合の公式: \(f’ = \frac{V+v}{V-v}f\)

具体的な解説と立式
反射音が観測者O2に届くまでの過程を1つの式で表すと、以下のようになります。
$$ f_2 = \frac{V + v}{V – v}f $$
ここで \(v = 20\,\text{m/s}\) は車の速さです。

使用した物理公式

  • 反射板によるドップラー効果: \(f’ = \frac{V+v}{V-v}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{340 + 20}{340 – 20} \times 680 \\[2.0ex] &= \frac{360}{320} \times 680 \\[2.0ex] &= \frac{9}{8} \times 680 \\[2.0ex] &= 9 \times 85 \\[2.0ex] &= 765\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「近づく反射板」は、音を二重に高くする効果があります。
1回目は「自分が迎えに行く」ことで高くし(分子の \(V+v\))、2回目は「自分が追いかける」ことで高くします(分母の \(V-v\))。
この2つの効果をまとめた式を使えば、一発で答えが出ます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。

解答 (2) \(765\,\text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 反射体によるドップラー効果の2段階プロセス
    • 核心: 動く反射体(車や壁など)は、音波に対して「観測者」と「音源」の二役を演じます。
    • 理解のポイント:
      • ステップ1(受信): 反射体はまず「動く観測者」として音を受け取ります。このとき、観測者が動く場合のドップラー効果が適用されます。
      • ステップ2(発信): 反射体は受け取った振動数をそのまま再放出する「動く音源」となります。このとき、音源が動く場合のドップラー効果が適用されます。
      • 連続性: ステップ1で求めた受信振動数 \(f_1\) が、そのままステップ2の音源振動数になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 反射板が遠ざかる場合: 公式の符号が逆転します。\(f’ = \frac{V-v}{V+v}f\) となり、振動数は2段階で低くなります。
    • 音源も動く場合: 音源Sが速さ \(v_S\) で動き、反射板Rが速さ \(v_R\) で動く場合、
      • Rが受ける音: \(f_R = \frac{V \pm v_R}{V \mp v_S}f\)
      • 反射音: \(f’ = \frac{V}{V \mp v_R}f_R\) (観測者が静止している場合)

      このように段階を追って計算すれば、どんな複雑な状況でも対応できます。

    • 風がある場合: 音速 \(V\) を \(V+w\) や \(V-w\) に置き換えて計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反射体の動き: 音源に近づいているのか、遠ざかっているのかを確認します。
    2. 観測者の位置: 反射音を聞く観測者はどこにいるのか(音源側か、反射体の後ろか)を確認します。本問のように音源側(O2)にいる場合、反射音は「近づく音源」からの音になります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の適用ミス
    • 誤解: 反射板の問題で、いきなり \(f’ = \frac{V}{V-v}f\) (単なる動く音源の式)を使ってしまう。
    • 対策: 「反射=観測+再放出」というプロセスを常に意識しましょう。反射板が動いている限り、観測者としての効果(分子の変化)と音源としての効果(分母の変化)の両方が現れます。
  • 符号の混乱
    • 誤解: 近づく場合と遠ざかる場合のプラスマイナスを混同する。
    • 対策: 「近づく \(\to\) 音が高くなる \(\to\) 分子は大きく、分母は小さく」「遠ざかる \(\to\) 音が低くなる \(\to\) 分子は小さく、分母は大きく」という定性的なチェックを習慣化します。
  • 相対速度の誤用
    • 誤解: 音源と反射板の相対速度だけを考えて計算しようとする。
    • 対策: ドップラー効果は媒質に対する速度で決まります。相対速度だけで簡易的に計算できる場合もありますが、基本的にはそれぞれの対地速度(対媒質速度)を使って公式に当てはめるのが確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 観測者が動く公式 \(f’ = \frac{V+v_O}{V}f\) の選択(設問1)
    • 選定理由: 音源が静止し、観測者が動いている状況だからです。
    • 適用根拠: 観測者が波を迎えに行くことで、単位時間に受け取る波の数が増える現象を記述しています。
  • 音源が動く公式 \(f’ = \frac{V}{V-v_S}f\) の選択(設問2後半)
    • 選定理由: 反射した車は、音を出しながら観測者に近づく「音源」とみなせるからです。
    • 適用根拠: 音源が波を追いかけることで、波長が圧縮される現象を記述しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数のまま計算する
    • \(340+20=360\) のように具体的な数値で計算する際も、割り算を急がず、分数の形で約分を行うとミスが減ります。本問の計算過程でも、\(360/340\) を \(18/17\) のように約分してから掛ける方が安全です。
  • 2段階計算の検算
    • 別解の公式 \(f’ = \frac{V+v}{V-v}f\) を検算用として覚えておくと強力です。メインの解法で求めた答えが、この公式で求めた値と一致するか確認すれば、計算ミスの確率はほぼゼロになります。

154 風が吹いている場合のドップラー効果

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 相対速度を用いた振動数の導出
      • 模範解答がドップラー効果の公式に数値を代入して計算しているのに対し、別解では「観測者から見た音波の相対速度」と「波長」の関係から振動数を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の強化: 公式を暗記するだけでなく、「風によって音速が変わり、観測者が動くことで相対速度が変わる」という現象の物理的なイメージを強化できます。
    • 応用力の向上: 公式の形を忘れてしまっても、基本的な物理法則(相対速度と波の基本式)から答えを導き出す力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「風が吹いている場合のドップラー効果」です。風がある場合、音波を伝える媒質(空気)自体が動くため、地面に対する音速が変化します。この変化した音速を用いてドップラー効果を考える必要があります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 風による音速の変化: 無風時の音速を \(V_0\)、風速を \(w\) とすると、風向きと同じ方向に進む音の速さは \(V = V_0 + w\)、逆向きに進む音の速さは \(V = V_0 – w\) となります。
  2. ドップラー効果(観測者が動く場合): 音源が静止し、観測者が速さ \(v_O\) で動くとき、観測される振動数 \(f’\) は \(f’ = \frac{V \pm v_O}{V}f\) となります(近づくときプラス、遠ざかるときマイナス)。ここで \(V\) は風の影響を考慮した音速です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、風向きと音の進行方向を確認し、合成速度として音速を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた音速 \(V\) を用いて、観測者が遠ざかる場合のドップラー効果の式を立てて振動数を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
音は空気という媒質に乗って伝わります。風が吹くということは、媒質である空気自体が動いているということです。
川の流れに乗って進む船のように、音速も風速の分だけ変化します。
音源Sから観測者Oに向かう音の向きと、風の向きを比較します。
この設問における重要なポイント

  • 無風時の音速 \(V_0 = 340\,\text{m/s}\)。
  • 風速 \(w = 10\,\text{m/s}\)(右向き)。
  • 音はSからOへ、つまり右向きに進む。
  • 音の進行方向と風向きが一致しているため、速さは足し算になる。

具体的な解説と立式
音源Sから観測者Oへ向かう音は右向きに進みます。
風も右向きに吹いているため、音は「追い風」に乗って進むことになります。
したがって、Oに届く音の速さ \(V\) は、無風時の音速に風速を加えたものになります。
$$ V = 340 + 10 $$

使用した物理公式

  • 速度の合成(ガリレイ変換): \(V = V_0 + w\)
計算過程

$$ V = 350\,\text{m/s} $$

この設問の平易な説明

動く歩道の上を歩くようなものです。音(歩く人)が \(340\,\text{m/s}\) で進もうとしているところに、風(動く歩道)が \(10\,\text{m/s}\) で同じ方向に運んでくれるので、外から見ると音は \(340 + 10 = 350\,\text{m/s}\) で進んでいるように見えます。

結論と吟味

\(350\,\text{m/s}\) です。追い風なので音速は速くなっており、妥当な結果です。

解答 (1) \(350\,\text{m/s}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
観測者Oは右向きに動いています。音源Sは左側にあり、音は右向きに進んできます。つまり、観測者Oは音源Sから「遠ざかる」動きをしています。
風の影響ですでに音速が \(V = 350\,\text{m/s}\) に変化していることに注意して、ドップラー効果の公式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 音速(風あり) \(V = 350\,\text{m/s}\)。
  • 音源Sは静止している。
  • 観測者Oは速さ \(v_O = 20\,\text{m/s}\) で音源から遠ざかっている。
  • 元の振動数 \(f = 700\,\text{Hz}\)。
  • 観測者が遠ざかる場合の公式 \(f’ = \frac{V – v_O}{V}f\) を適用する。

具体的な解説と立式
求める振動数を \(f_1\) とします。
観測者が音源から遠ざかる場合のドップラー効果の公式より、
$$ f_1 = \frac{V – v_O}{V}f $$
これに \(V=350\)、\(v_O=20\)、\(f=700\) を代入します。

使用した物理公式

  • ドップラー効果(観測者が遠ざかる): \(f’ = \frac{V – v_O}{V}f\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{350 – 20}{350} \times 700 \\[2.0ex] &= \frac{330}{350} \times 700 \\[2.0ex] &= 330 \times \frac{700}{350} \\[2.0ex] &= 330 \times 2 \\[2.0ex] &= 660\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

Oさんは音から逃げるように走っています。そのため、音の波がOさんに追いつく頻度が減り、1秒間に耳に届く波の数が少なくなります。つまり、音は低く聞こえます。
風の影響で音速自体が速くなっていますが、計算の仕組みは通常のドップラー効果と同じです。

結論と吟味

\(660\,\text{Hz}\) です。遠ざかっているので元の \(700\,\text{Hz}\) より低くなっており、妥当な結果です。

解答 (2) \(660\,\text{Hz}\)
別解: 相対速度を用いた振動数の導出

思考の道筋とポイント
公式を忘れてしまった場合でも、「相対速度」と「波長」の関係から導き出せます。

  1. 音源は静止しているので、波長は変化しません。ただし、音速が風で変わっていることに注意が必要です。
  2. 観測者から見た音波の相対速度を考えます。

この設問における重要なポイント

  • 波長 \(\lambda = \frac{V}{f}\) (音源静止、音速は風ありの \(V\))
  • 観測者から見た音波の相対速度 \(V’ = V – v_O\) (同じ向きに動くため引き算)
  • 観測される振動数 \(f_1 = \frac{V’}{\lambda}\)

具体的な解説と立式
まず、空間に分布している音波の波長 \(\lambda\) を求めます。音源は静止していますが、音速は風の影響で \(V=350\,\text{m/s}\) になっています。
$$ \lambda = \frac{V}{f} $$
$$ \lambda = \frac{350}{700} $$
$$ \lambda = 0.5\,\text{m} $$
次に、観測者Oから見た音波の相対速度 \(V’\) を求めます。音波も観測者も右向きに動いているので、
$$ V’ = V – v_O $$
$$ V’ = 350 – 20 $$
$$ V’ = 330\,\text{m/s} $$
観測者が聞く振動数 \(f_1\) は、この相対速度 \(V’\) を波長 \(\lambda\) で割ったものになります。
$$ f_1 = \frac{V’}{\lambda} $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
  • 相対速度: \(V’ = V – v_O\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{330}{0.5} \\[2.0ex] &= 660\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、風に乗って速く進む音の「波長(波の間隔)」を計算します。音源は止まっていますが、音が速く進む分、波の間隔は広くなっています(\(0.5\,\text{m}\))。
次に、逃げているOさんから見て、この波がどれくらいの速さで追い抜いていくか(相対速度)を考えます。\(350 – 20 = 330\,\text{m/s}\) です。
最後に、「相対的な速さ」を「波長」で割れば、1秒間に何個の波がOさんを追い抜いたか(振動数)がわかります。

結論と吟味

メインの解法と同じ \(660\,\text{Hz}\) が得られました。この方法は、現象の物理的な意味を理解するのに非常に役立ちます。

解答 (2) \(660\,\text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 風による音速の変化(ガリレイ変換)
    • 核心: 音波は媒質(空気)の振動として伝わるため、媒質自体が動いている(風が吹いている)場合、地面に対する音速は「静止時の音速」と「風速」のベクトル和になります。
    • 理解のポイント:
      • 追い風: 音の進行方向と風向きが同じなら、音速は速くなります(\(V = V_0 + w\))。
      • 向かい風: 音の進行方向と風向きが逆なら、音速は遅くなります(\(V = V_0 – w\))。
      • ドップラー効果への影響: ドップラー効果の公式 \(f’ = \frac{V \pm v_O}{V \mp v_S}f\) における \(V\) は、この「風の影響を考慮した音速」を使わなければなりません。
  • ドップラー効果の原理(観測者の移動)
    • 核心: 観測者が動くことで、音波とすれ違う相対速度が変化し、単位時間に受け取る波の数が変わります。
    • 理解のポイント:
      • 遠ざかる場合: 波から逃げるため、相対速度が減少し、振動数は低くなります(\(f’ < f\))。
      • 近づく場合: 波に向かうため、相対速度が増加し、振動数は高くなります(\(f’ > f\))。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 向かい風の場合: 風が左向き(音と逆向き)に吹いていれば、音速は \(V = 340 – 10 = 330\,\text{m/s}\) となります。この値を使って同様に計算します。
    • 音源も動く場合: 音源が動く場合も、風の影響を受けた音速 \(V\) を使って公式 \(f’ = \frac{V \pm v_O}{V \mp v_S}f\) に当てはめるだけです。ただし、音源の速度 \(v_S\) や観測者の速度 \(v_O\) はあくまで「地面に対する速度」を使います。
    • 斜め方向の風: 風が音の進行方向に対して斜めに吹いている場合、風速の「音の進行方向成分」を足し引きします。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 風向きと音の向きの確認: まず最初に、風が音を「助けている(速くする)」のか「邪魔している(遅くする)」のかを判断し、実効的な音速 \(V\) を確定させます。
    2. 観測者の動きの確認: 音源に対して「近づく」のか「遠ざかる」のかを確認し、公式の符号(プラスかマイナスか)を決定します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 音速の変化を忘れる
    • 誤解: 風が吹いていても、公式の \(V\) に \(340\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 問題文に「風」という単語があったら、まず \(V\) を書き換える癖をつけましょう。「風は音速を変える」と強く意識します。
  • 風速を音源や観測者の速度に足してしまう
    • 誤解: 風の影響を \(v_S\) や \(v_O\) に足し引きして処理しようとする。
    • 対策: ドップラー効果の公式において、風速 \(w\) は必ず音速 \(V\) とセットで扱います(\(V \to V+w\))。\(v_S, v_O\) は対地速度のままです。
  • 符号のミス
    • 誤解: 遠ざかるのにプラス、近づくのにマイナスとしてしまう。
    • 対策: 「遠ざかる \(\to\) 音が低くなる \(\to\) 分子は小さくなるはず \(\to\) マイナス」という定性的なチェックを必ず行います。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 速度の合成 \(V = V_0 + w\) の選択
    • 選定理由: 媒質(空気)が動いている系での波の伝播速度を求めるためです。
    • 適用根拠: ガリレイ変換(速度の合成則)に基づきます。
  • ドップラー効果の公式 \(f’ = \frac{V-v_O}{V}f\) の選択
    • 選定理由: 音源が静止し、観測者が遠ざかっている状況だからです。
    • 適用根拠: 観測者が動くことによる相対速度の変化を記述する式です。ここで \(V\) は風の影響を含んだ値を使います。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数の約分を優先する
    • \(330 \times 700 / 350\) の計算で、\(330 \times 700\) を先に計算するのは悪手です。\(700/350 = 2\) と約分できることに気づけば、\(330 \times 2 = 660\) と暗算レベルで解けます。大きな数の掛け算は後回しにするのが鉄則です。
  • 単位の確認
    • 風速、音速、移動速度すべてが [m/s] で統一されているか確認します。もし [km/h] が混ざっていたら換算が必要です。
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