問題97 ニュートンリング (21 千葉大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解1: 方べきの定理を用いた近似導出
- 模範解答は三平方の定理と二項近似を用いていますが、円の幾何学的性質である「方べきの定理」を用いることで、より直感的かつ迅速に近似式を導出します。
- 設問(2)の別解2: 微積分(マクローリン展開)を用いた体系的解法
- 近似式 \(\sqrt{1+x} \approx 1+\frac{x}{2}\) を公式として適用するのではなく、関数の微分係数を用いた級数展開(マクローリン展開)の第1次近似として数学的に導出します。
- 設問(2)の別解1: 方べきの定理を用いた近似導出
- 上記の別解が有益である理由
- 方べきの定理: 物理の問題において、図形的性質を見抜くことで計算量を大幅に減らす「物理的直感」を養います。特にレンズの曲率半径と厚さの関係では頻出の手法です。
- 微積分: 物理における「近似」が、数学的には「曲線の接線による近似」であることを理解し、大学物理への架け橋となります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的な近似式は模範解答と一致します。
この問題のテーマは「ニュートンリング(空気層の干渉)」です。球面と平面の間にできる薄い空気層での光の干渉を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 薄膜干渉の原理: 光路差(経路差 \(\times\) 屈折率)によって光が強め合ったり弱め合ったりします。
- 反射時の位相変化: 屈折率が「小さい媒質 \(\rightarrow\) 大きい媒質」の境界で反射すると、位相が \(\pi\)(半波長分)ずれます。逆の場合はずれません。
- 幾何学的近似: レンズの曲率半径 \(R\) が非常に大きい場合、空気層の厚さ \(d\) と中心からの距離 \(r\) の間に \(d \approx \frac{r^2}{2R}\) の関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、図形の幾何学的関係から空気層の厚さ \(d\) を導出します。
- (3)(4)では、光路差と反射の位相変化を考慮して、明環の条件式を立てます。
- (5)(6)では、レンズを動かしたときの光路差の変化を追跡し、縞模様の移動を解析します。
- (7)〜(9)では、媒質が変わった場合や透過光の場合の位相変化の違いを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
図a に着目します。
レンズの球面、中心軸、および点Qを通る水平線によって直角三角形が形成されています。
この直角三角形に対して三平方の定理を適用し、厳密な幾何学的関係式を導きます。
この設問における重要なポイント
- 直角三角形の発見: 球面の中心、レンズとガラスの接点Oの真上の点、点Qの関係を図から読み取ります。
- 辺の長さの特定: 斜辺は球の半径 \(R\)、底辺は中心からの距離 \(r\)、高さは \(R-d\) となります。
具体的な解説と立式
図aにおいて、球面の中心を頂点とし、点Qを含む直角三角形を考えます。
各辺の長さは以下の通りです。
- 斜辺: レンズの半径 \(R\)
- 底辺: 中心軸からの距離 \(r\)
- 高さ: 球面の中心から点Oまでの距離 \(R\) から、空気層の厚さ \(d\) を引いた \(R-d\)
三平方の定理より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R^2 &= r^2 + (R-d)^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三平方の定理: \(c^2 = a^2 + b^2\)
上式を \(d\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
(R-d)^2 &= R^2 – r^2 \\[2.0ex]
R-d &= \sqrt{R^2 – r^2} \quad (\text{※ } R-d > 0 \text{より}) \\[2.0ex]
d &= R – \sqrt{R^2 – r^2}
\end{aligned}
$$
レンズの丸みを計算するために、直角三角形を使いました。
「半径の2乗」は「横の距離の2乗」と「縦の距離の2乗」の足し算になるというピタゴラスの定理(三平方の定理)を使って、レンズの表面がどれくらい浮いているか(\(d\))を計算しました。
答えは \(d = R – \sqrt{R^2 – r^2}\) です。
\(r=0\) のとき \(d=0\) となり、接点Oで接触していることと一致します。
\(r=R\) のとき \(d=R\) となり、半球の端であることを示しており、幾何学的に正しい結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
問(1)で求めた厳密解に対し、\(r \ll R\) (レンズが非常に平べったい)という条件の下で近似を行います。
問題文で与えられた近似式 \(\sqrt{1+x} \approx 1 + \frac{x}{2}\) を利用できる形に変形します。
この設問における重要なポイント
- 近似式の適用形への変形: \(\sqrt{R^2 – r^2}\) のままでは公式が使えないため、\(R\) を根号の外に出して \(\sqrt{1 – (r/R)^2}\) の形を作ります。
- 微小量の特定: \(x = -(r/R)^2\) とみなして公式を適用します。
具体的な解説と立式
問(1)の結果を変形します。
$$
\begin{aligned}
d &= R – \sqrt{R^2\left(1 – \frac{r^2}{R^2}\right)} \\[2.0ex]
&= R – R\sqrt{1 + \left( -\frac{r^2}{R^2} \right)}
\end{aligned}
$$
ここで、\(r \ll R\) より \(\left| -\frac{r^2}{R^2} \right| \ll 1\) なので、近似式 \(\sqrt{1+x} \approx 1 + \frac{x}{2}\) を適用します。
使用した物理公式
- 近似式: \(\sqrt{1+x} \approx 1 + \frac{x}{2}\) (\(|x| \ll 1\))
$$
\begin{aligned}
d &\approx R – R\left\{ 1 + \frac{1}{2}\left( -\frac{r^2}{R^2} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= R – \left( R – \frac{r^2}{2R} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{r^2}{2R}
\end{aligned}
$$
問題文の形式 \(d = Ar^2\) と比較すると、
$$
\begin{aligned}
A &= \frac{1}{2R}
\end{aligned}
$$
レンズのカーブは、中心付近では放物線(二次関数)とみなせます。
複雑なルートの計算を、「1よりとても小さい数」の性質を使って簡単な足し算・引き算に直しました。これにより、空気の厚さ \(d\) は中心からの距離 \(r\) の2乗に比例することがわかりました。
\(A = \frac{1}{2R}\) です。
\(R\) が大きい(カーブが緩やか)ほど \(A\) は小さくなり、同じ距離 \(r\) でも厚さ \(d\) が薄くなるため、物理的直感と一致します。
思考の道筋とポイント
円の幾何学的性質である「方べきの定理」を利用します。
図aを完全な円として想像し、弦と直径の交差関係に着目します。
この設問における重要なポイント
- 方べきの定理の適用: 円の弦が直交するとき、交点で分割された線分の積は等しくなります。
- 微小項の無視: \(d^2\) のような微小量の2乗項を無視することで近似を行います。
具体的な解説と立式
図aにおいて、点Qから下ろした垂線と直径の交点を考えます。
水平方向の弦の長さは \(2r\) であり、交点で \(r\) と \(r\) に分割されます。
垂直方向の直径は \(2R\) であり、交点で \(d\) と \(2R-d\) に分割されます。
方べきの定理より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
r \cdot r &= d \cdot (2R – d)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 方べきの定理
$$
\begin{aligned}
r^2 &= 2Rd – d^2
\end{aligned}
$$
ここで、\(d \ll R\) なので、\(d^2\) は \(2Rd\) に比べて極めて小さく、無視できます(\(d^2 \approx 0\))。
$$
\begin{aligned}
r^2 &\approx 2Rd \\[2.0ex]
d &\approx \frac{r^2}{2R}
\end{aligned}
$$
よって、\(A = \frac{1}{2R}\) となります。
円の中で十字に交わる線の長さの関係(方べきの定理)を使いました。
「\(d\) はとても小さいので、2回掛けたらもっと小さくなって無視できる」と考えると、面倒なルート計算なしで一瞬で答えが出ます。
メインの解法と同じ結果が得られました。計算量が圧倒的に少なく、検算にも最適です。
思考の道筋とポイント
近似式を公式として暗記するのではなく、関数の微分を用いて導出します。
円の方程式を \(y\) について解き、\(x=0\) 周りでマクローリン展開(テイラー展開)します。
この設問における重要なポイント
- マクローリン展開: 関数 \(f(x)\) の \(x \approx 0\) での振る舞いは、\(f(x) \approx f(0) + f'(0)x + \frac{1}{2}f”(0)x^2\) で近似できます。
具体的な解説と立式
円の方程式 \(x^2 + (y-R)^2 = R^2\) (中心 \((0, R)\)、原点で接する円)を考えます。
下半分の円弧を表す式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
y &= R – \sqrt{R^2 – x^2}
\end{aligned}
$$
ここで、\(f(x) = \sqrt{R^2 – x^2}\) とおき、\(x=0\) 付近で1次近似(接線近似)ではなく、2次の項まで考慮した展開を行います。
あるいは、\((1+u)^\alpha\) のマクローリン展開を利用します。
$$
\begin{aligned}
(1+u)^\alpha &\approx 1 + \alpha u \quad (|u| \ll 1)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- マクローリン展開(二項展開の一般化)
$$
\begin{aligned}
\sqrt{R^2 – x^2} &= R\left( 1 – \frac{x^2}{R^2} \right)^{\frac{1}{2}}
\end{aligned}
$$
ここで \(u = -\frac{x^2}{R^2}\), \(\alpha = \frac{1}{2}\) として展開公式を適用します。
$$
\begin{aligned}
\left( 1 – \frac{x^2}{R^2} \right)^{\frac{1}{2}} &\approx 1 + \frac{1}{2}\left( -\frac{x^2}{R^2} \right) \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{x^2}{2R^2}
\end{aligned}
$$
これを元の式に戻します。
$$
\begin{aligned}
y &= R – R\left( 1 – \frac{x^2}{2R^2} \right) \\[2.0ex]
&= R – R + \frac{x^2}{2R} \\[2.0ex]
&= \frac{x^2}{2R}
\end{aligned}
$$
\(x\) を \(r\)、\(y\) を \(d\) と読み替えれば、\(d \approx \frac{r^2}{2R}\) が得られます。
「近似」とは数学的には「曲線を多項式で書き直すこと」です。
円の式を微分を使って展開すると、一番影響の大きい項として「2乗の項」が出てきます。これが放物線近似の正体です。
数学的原理から導出しても、同じ結果 \(A = \frac{1}{2R}\) に至ります。
問(3)
思考の道筋とポイント
反射光が強め合う条件(明環)を求めます。
考慮すべき要素は「経路差(幾何学的距離の差)」と「反射による位相のずれ」の2点です。
この設問における重要なポイント
- 経路差: 空気層を往復するので \(2d\) です。空気の屈折率は \(1\) なので光路差も \(2d\) です。
- 反射の位相変化:
- レンズ下面(ガラス \(\rightarrow\) 空気): 屈折率 大 \(\rightarrow\) 小 なので自由端反射(位相変化なし)。
- 平面ガラス上面(空気 \(\rightarrow\) ガラス): 屈折率 小 \(\rightarrow\) 大 なので固定端反射(位相 \(\pi\) 変化)。
- 干渉条件: 片方だけ位相が \(\pi\) ずれるため、光路差が「半波長の奇数倍」のときに強め合います。
具体的な解説と立式
2つの反射光の間の光路差は \(2d\) です。
反射による位相のずれの合計は \(\pi\) (半波長分 \(\frac{\lambda}{2}\) の光路差に相当)です。
したがって、強め合う条件(明環)は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
2d + \frac{\lambda}{2} &= m\lambda \quad (m=1, 2, 3, \dots)
\end{aligned}
$$
または、位相差 \(\pi\) を考慮して「光路差が半波長の奇数倍」と立式しても同じです。
$$
\begin{aligned}
2d &= \left( m – \frac{1}{2} \right)\lambda
\end{aligned}
$$
※中心(\(d=0\))は \(2d=0\) であり、条件式を満たさない(暗くなる)ため、\(m=1\) から始まるという設定と整合します。
使用した物理公式
- 反射の位相変化: 低屈折率側からの反射(固定端)で \(\pi\) ずれる。
- 干渉条件: \(2d = (m – \frac{1}{2})\lambda\) (明環、位相差 \(\pi\) あり)
上式を \(d\) について解き、\(d = Bm + C\) の形にします。
$$
\begin{aligned}
2d &= m\lambda – \frac{1}{2}\lambda \\[2.0ex]
d &= \frac{\lambda}{2}m – \frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
これより、
$$
\begin{aligned}
B &= \frac{\lambda}{2}, \quad C = -\frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
光は波なので、山と山が重なると明るくなります。
空気の層を往復する距離(\(2d\))に加えて、反射するときに波がひっくり返る現象(半波長分のずれ)を考慮しました。
その結果、「往復距離」が「波長の整数倍」から「半波長分ずれた長さ」になるときに、波の山と山が揃って明るくなることがわかりました。
\(B = \frac{\lambda}{2}, C = -\frac{\lambda}{4}\) です。
\(m=1\) のとき \(d = \lambda/4\)、往復 \(2d = \lambda/2\)。反射のずれ \(\lambda/2\) と合わせて1波長分となり、強め合います。妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
問(2)の幾何学的関係 \(d = Ar^2\) と、問(3)の光学的条件 \(d = Bm + C\) を連立させて、半径 \(r\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 式の連立: \(Ar^2 = Bm + C\) を \(r\) について解くだけです。
具体的な解説と立式
問(2)より \(d = Ar^2\)、問(3)より \(d = \frac{\lambda}{2}m – \frac{\lambda}{4}\) です。
これらを等置します。
$$
\begin{aligned}
Ar^2 &= \frac{\lambda}{2}m – \frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- なし(代入計算のみ)
$$
\begin{aligned}
Ar^2 &= \frac{\lambda}{2}\left( m – \frac{1}{2} \right) \\[2.0ex]
r^2 &= \frac{\lambda}{2A}\left( m – \frac{1}{2} \right) \\[2.0ex]
r &= \sqrt{\frac{\lambda}{2A}\left( m – \frac{1}{2} \right)}
\end{aligned}
$$
※問題文の指示通り \(A\) を用いて答えます。
「レンズの形から決まる厚さ」と「光が強め合うために必要な厚さ」が一致する場所が、明るいリングが見える場所です。その場所(中心からの距離 \(r\))を計算しました。
\(m\) が大きくなると \(r\) も大きくなり、外側ほどリングの間隔が狭くなる(\(\sqrt{m}\) に比例するため)というニュートンリングの特徴を表しています。
問(5)
思考の道筋とポイント
レンズを \(h\) だけ持ち上げると、空気層の厚さが全体的に \(h\) 増加します。
「\(m=1\) の明環の半径が半分になった」という条件から方程式を立てて \(h\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 厚さの変化: 中心からの距離 \(r\) での空気層の厚さは \(d(r) + h = Ar^2 + h\) になります。
- 条件の適用:
- 移動前: 半径 \(r_1\)、厚さ \(Ar_1^2\)。
- 移動後: 半径 \(r_1′ = \frac{r_1}{2}\)、厚さ \(A(r_1′)^2 + h\)。
- どちらも \(m=1\) の明環なので、必要な光路差(厚さ)は同じです。
具体的な解説と立式
\(m=1\) の明環ができるための空気層の厚さを \(d_1\) とします。
問(3)より、\(2d_1 = (1 – \frac{1}{2})\lambda = \frac{\lambda}{2}\) なので、\(d_1 = \frac{\lambda}{4}\) で一定です。
移動前の半径を \(r_1\) とすると、
$$
\begin{aligned}
Ar_1^2 &= \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
移動後の半径 \(r_1’\) は \(r_1′ = \frac{r_1}{2}\) であり、この位置でのレンズとガラスの距離は \(A(r_1′)^2 + h\) です。これが再び \(d_1\) に等しくなるので、
$$
\begin{aligned}
A\left( \frac{r_1}{2} \right)^2 + h &= \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 干渉条件(厚さ一定)
式①を式②に代入して \(h\) を求めます。
式①より \(Ar_1^2 = \frac{\lambda}{4}\)。
式②を展開します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{4}Ar_1^2 + h &= \frac{\lambda}{4}
\end{aligned}
$$
これに \(Ar_1^2 = \frac{\lambda}{4}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{4}\left( \frac{\lambda}{4} \right) + h &= \frac{\lambda}{4} \\[2.0ex]
\frac{\lambda}{16} + h &= \frac{\lambda}{4} \\[2.0ex]
h &= \frac{\lambda}{4} – \frac{\lambda}{16} \\[2.0ex]
&= \frac{4\lambda – \lambda}{16} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{16}\lambda
\end{aligned}
$$
レンズを持ち上げると、同じ厚さになる場所(明るくなる場所)は中心寄りに移動します。
「半径が半分になる場所」まで明るいリングが移動したということは、その分だけレンズを持ち上げて隙間を埋めたということです。その持ち上げた量を計算しました。
答えは \(h = \frac{3}{16}\lambda\) です。
元の厚さ \(\lambda/4\) の大部分を \(h\) で稼いだため、レンズの曲面による寄与が減り、半径が小さくなったと解釈できます。
問(6)
思考の道筋とポイント
「離す前と同じ縞模様が初めて現れた」という現象を物理的に翻訳します。
これは、ある位置 \(r\) において、光路差がちょうど1波長分 \(\lambda\) だけ増加し、干渉の次数 \(m\) が1つずれた状態(\(m\) 番目のリングの位置に \(m+1\) 番目のリングが来た状態、あるいはその逆)を意味します。
この設問における重要なポイント
- 縞模様の一致: レンズを離すと光路差は増えるため、リングは中心から湧き出すように外へ移動するのではなく、外側のリングが内側へ移動する…いや、逆です。
- 中心付近(\(d\)小): \(2d = (m-0.5)\lambda\)。\(d\) が増えると、同じ \(m\) を満たすには \(r\) は小さくなる必要があります(内側へ移動)。
- 「同じ縞模様」とは、元の \(m\) 番目の明環の位置に、別の次数の明環が重なることです。
- レンズを \(h’\) 上昇させると、往復の光路差は \(2h’\) 増加します。
- この増加分が波長 \(\lambda\) の整数倍であれば、干渉条件の位相関係が元に戻り、同じ模様に見えます。
- 「初めて」なので、\(2h’ = \lambda\) です。
具体的な解説と立式
レンズを \(h’\) だけ離すと、任意の位置 \(r\) における光路差は \(2h’\) だけ増加します。
縞模様が元の状態と一致するためには、この光路差の増加分が波長 \(\lambda\) の整数倍であればよいです(位相差が \(2\pi\) の整数倍変化する)。
「初めて」現れたときなので、光路差の増加は1波長分です。
$$
\begin{aligned}
2h’ &= \lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 光路差の変化と干渉条件の周期性
$$
\begin{aligned}
h’ &= \frac{\lambda}{2}
\end{aligned}
$$
レンズを持ち上げると、光の通り道が長くなります。
その長くなった分(往復分)がちょうど「光の波1つ分」になると、波の山と谷のタイミングが元通りになり、見た目の縞模様が全く同じになります。
答えは \(h’ = \frac{\lambda}{2}\) です。
往復で \(\lambda\) なので、片道 \(\lambda/2\) です。これは定在波の腹一つ分の移動に相当し、物理的に妥当です。
問(7)
思考の道筋とポイント
空気の代わりに屈折率 \(n\) の液体で満たします。
光路差は光学的距離(幾何学的距離 \(\times\) 屈折率)で考える必要があります。
また、反射の位相変化が変化しないか確認します。
この設問における重要なポイント
- 光路差の変化: 往復距離 \(2d\) に対し、屈折率 \(n\) がかかるため、光路差は \(2nd\) となります。
- 位相変化の確認:
- レンズ下面(ガラス \(n_0\) \(\rightarrow\) 液体 \(n\)): \(n_0 > n\) なので自由端反射(変化なし)。
- 平面ガラス上面(液体 \(n\) \(\rightarrow\) ガラス \(n_0\)): \(n < n_0\) なので固定端反射(\(\pi\) 変化)。
- したがって、位相変化の状況は空気の場合(片方だけ \(\pi\) ずれ)と同じです。
具体的な解説と立式
光路差は \(2nd\) となります。
位相変化は空気中と同様に合計 \(\pi\) ずれるため、明環の条件は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
2nd &= \left( m – \frac{1}{2} \right)\lambda
\end{aligned}
$$
これに \(d = Ar^2\) を代入して \(r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2n(Ar^2) &= \left( m – \frac{1}{2} \right)\lambda
\end{aligned}
$$
最も近い明環なので \(m=1\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
2nAr^2 &= \frac{\lambda}{2}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 光路長(光学距離): \(L = nl\)
- 屈折率と反射の位相変化
$$
\begin{aligned}
r^2 &= \frac{\lambda}{4nA} \\[2.0ex]
r &= \sqrt{\frac{\lambda}{4nA}}
\end{aligned}
$$
液体の屈折率 \(n\) の分だけ、光にとっては距離が \(n\) 倍に伸びたように感じられます。
また、反射のルール(位相の反転)は空気の時と同じでした。
そのため、式の中で距離 \(d\) を \(nd\) に置き換えて計算しました。
答えは \(r = \sqrt{\frac{\lambda}{4nA}}\) です。
屈折率 \(n\) が大きいほど波長が縮む(\(\lambda’ = \lambda/n\))ため、同じ干渉条件を満たす隙間 \(d\) は小さくて済み、半径 \(r\) は小さくなります。式は \(n\) が分母にあるため、これと整合します。
問(8)
思考の道筋とポイント
中心(\(d=0\))における明暗を問われています。
\(d=0\) なので光路差は \(0\) です。明暗は「反射による位相変化」の組み合わせだけで決まります。
この設問における重要なポイント
- 位相差の判定: 2つの反射面での位相変化の有無を調べ、その差が \(0\) なら強め合い(明)、\(\pi\) なら弱め合い(暗)となります。
- 条件:
- レンズの屈折率: \(n_0\)
- 平面ガラスの屈折率: \(n_0\)
- 液体の屈折率: \(n\)
具体的な解説と立式
ケース1: \(n > n_0\) のとき
- レンズ下面での反射(\(n_0 \rightarrow n\)): 屈折率 小 \(\rightarrow\) 大 なので固定端反射(位相 \(\pi\) 変化)。
- 平面ガラス上面での反射(\(n \rightarrow n_0\)): 屈折率 大 \(\rightarrow\) 小 なので自由端反射(位相変化なし)。
- 位相差の合計: \(\pi\)
- 結果: 光路差0で位相差 \(\pi\) なので弱め合う(暗)。 \(\rightarrow\) ①
ケース2: \(1 < n < n_0\) のとき
- レンズ下面での反射(\(n_0 \rightarrow n\)): 屈折率 大 \(\rightarrow\) 小 なので自由端反射(位相変化なし)。
- 平面ガラス上面での反射(\(n \rightarrow n_0\)): 屈折率 小 \(\rightarrow\) 大 なので固定端反射(位相 \(\pi\) 変化)。
- 位相差の合計: \(\pi\)
- 結果: 光路差0で位相差 \(\pi\) なので弱め合う(暗)。 \(\rightarrow\) ①
使用した物理公式
- 反射の位相変化(屈折率の大小関係)
- \(n > n_0\): 位相差 \(\pi\) \(\rightarrow\) 暗
- \(1 < n < n_0\): 位相差 \(\pi\) \(\rightarrow\) 暗
中心では隙間がないので、光の距離の差はありません。
しかし、反射するときの「波のひっくり返り」が、片方の面だけで起こるため、波の山と谷が重なって打ち消し合います。これは液体の屈折率がレンズより大きくても小さくても同じ結果になります。
どちらの場合も、片方の反射だけが固定端反射となるため、中心は暗くなります。
問(9)
思考の道筋とポイント
透過光の干渉を考えます。
エネルギー保存則の観点から、反射光が「暗」になる条件では、透過しなかったエネルギーが透過光に回るため、透過光は「明」になります。
あるいは、直接的に透過光の干渉(直進光と、内部で2回反射して遅れて出てくる光の干渉)を考えます。
この設問における重要なポイント
- エネルギー保存則: 吸収がない場合、(反射光強度) + (透過光強度) = (入射光強度) = 一定。反射が弱め合う(暗)なら透過は強め合う(明)。
- 直接考察(別解的思考):
- 透過光1: そのまま通過。
- 透過光2: 液体層内で2回反射して通過。
- 2回の反射における位相変化を追跡します。
具体的な解説と立式
エネルギー保存則によるアプローチ
問(8)より、どちらの条件でも反射光の中心は「暗」です。
したがって、反射されなかった光は透過するため、透過光の中心は「明」となります。
直接考察によるアプローチ(確認)
透過光の干渉は、直進する光と、液体層内で2回反射(下面で反射 \(\rightarrow\) 上面で反射)して出ていく光との干渉です。
- ケース1: \(n > n_0\) のとき
- 反射1(平面ガラス上面 \(n \rightarrow n_0\)): 大 \(\rightarrow\) 小 \(\Rightarrow\) 自由端(なし)。
- 反射2(レンズ下面 \(n \rightarrow n_0\)): 大 \(\rightarrow\) 小 \(\Rightarrow\) 自由端(なし)。
- 位相変化の合計: 0。光路差0で位相差0 \(\Rightarrow\) 強め合う(明)。
- ケース2: \(1 < n < n_0\) のとき
- 反射1(平面ガラス上面 \(n \rightarrow n_0\)): 小 \(\rightarrow\) 大 \(\Rightarrow\) 固定端(\(\pi\))。
- 反射2(レンズ下面 \(n \rightarrow n_0\)): 小 \(\rightarrow\) 大 \(\Rightarrow\) 固定端(\(\pi\))。
- 位相変化の合計: \(2\pi\)(つまり0)。光路差0で位相差0 \(\Rightarrow\) 強め合う(明)。
使用した物理公式
- エネルギー保存則
- 透過光の干渉条件
- \(n > n_0\): 位相差 0 \(\rightarrow\) 明
- \(1 < n < n_0\): 位相差 0 \(\rightarrow\) 明
反射光が暗いということは、光が跳ね返ってこないということです。
消えた光はどこへ行ったかというと、そのまま通り抜けています。だから、下から見ると明るく見えます。
どちらのアプローチでも、中心は明るくなることが確認できました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 薄膜干渉の原理(光路差と位相変化)
- 核心: 干渉の明暗は、「幾何学的な往復距離」だけでなく、「媒質の屈折率による光路の伸び」と「反射による位相の反転」の3要素の組み合わせで決まる。
- 理解のポイント:
- 光路長(光学距離): 距離 \(L\) を進むとき、光にとっては \(nL\) の距離に相当する。
- 位相の反転: 「屈折率小 \(\rightarrow\) 大」の反射でのみ、位相が \(\pi\)(半波長分)ずれる。これを忘れると明暗が逆になる。
- ニュートンリングの幾何学(球面近似)
- 核心: 球面と平面の間の微小な隙間 \(d\) は、中心からの距離 \(r\) の2乗に比例する(放物線近似)。
- 理解のポイント:
- 近似式: \(d \approx \frac{r^2}{2R}\) は、三平方の定理または方べきの定理から導かれる物理数学の基本形である。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- くさび形空気層: 2枚の平面ガラスを片側だけ挟んで隙間を作る問題。\(d\) が位置 \(x\) に比例(\(d = x \tan \theta\))するため、縞模様は等間隔の直線になる。
- 薄膜の屈折率変化: 石鹸膜や油膜のように、膜自体の屈折率が周囲と異なる場合。反射の位相変化のパターン(自由端・固定端の組み合わせ)が変わるため、明暗条件の逆転に注意が必要。
- 初見の問題での着眼点:
- 反射面の屈折率チェック: 図のすべての境界面に、屈折率の大小関係(\(n_1 < n_2\) など)と、反射の種類(固定端か自由端か)を矢印で書き込む。
- 幾何学的条件の立式: 干渉条件を考える前に、隙間の厚さ \(d\) を位置座標(\(r\) や \(x\))でどう表すか、図形的な関係式を最初に確定させる。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 光路差と経路差の混同:
- 誤解: 液体中(屈折率 \(n\))でも、往復距離 \(2d\) をそのまま干渉条件式に使ってしまう。
- 対策: 媒質中では必ず「光路長 = 屈折率 × 距離」と唱え、\(2nd\) と書く癖をつける。\(n\) を掛け忘れるミスは致命的。
- 明暗条件式の丸暗記による適用ミス:
- 誤解: 「強め合い=整数倍」「弱め合い=半整数倍」と機械的に暗記して適用し、位相の反転を考慮し忘れる。
- 対策: 公式を覚えるのではなく、「光路差 \(+\) 位相変化分 \(=\) 整数倍」という原理から毎回立式する。特に反射による \(\pi\) ずれの回数が奇数回なら、条件が逆転することをその場で確認する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 方べきの定理による近似(別解):
- 選定理由: 三平方の定理と二項近似を用いる標準的な手法に比べ、計算プロセスが圧倒的に短く、計算ミスのリスクを減らせるため。
- 適用根拠: \(d \ll R\) という条件において、\(d^2\) の項を無視することは、二項近似の1次項をとることと数学的に等価であるため。
- エネルギー保存則による透過光の考察:
- 選定理由: 透過光の多重反射をまともに計算すると複雑になるが、エネルギー保存則を使えば「反射光の裏返し」として即答できるため。
- 適用根拠: 光の吸収がない理想的な媒質であれば、入射エネルギーは反射と透過に二分されるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(ディメンションチェック):
- 意識: 導出した式の単位が正しいか常に疑う。
- 実践: 例えば \(d \approx \frac{r^2}{2R}\) なら、\(\frac{[\text{L}]^2}{[\text{L}]} = [\text{L}]\) で長さの次元になっている。もし \(d \approx \frac{r}{2R}\) なら無次元になり間違いだと気づける。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 変数が極端な値をとったとき、物理的に当たり前の結果になるか確認する。
- 実践: \(n=1\) と置けば空気中の式に戻るか? \(R \to \infty\)(平面ガラス)なら \(d \to 0\) になるか? \(m\) が増えれば \(r\) が増えるか? これらを確認するだけでケアレスミスを激減できる。
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問題98 マイケルソン干渉計 (24 横浜市大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 全設問共通の別解: 位相差を用いた体系的解法
- 模範解答は「光路差」を用いて干渉条件を考えていますが、別解では光の波動性をより厳密に記述する「位相差」を用いてアプローチします。
- 波動関数 \(y = A \sin(kx – \omega t)\) を定義し、経路による位相のずれ \(\Delta \phi\) を計算することで、干渉条件を数理的に導出します。
- 全設問共通の別解: 位相差を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 位相差: 「光路差が波長の整数倍」という条件が、なぜ強め合いになるのかを「波の重なり」の原理から深く理解できます。また、反射による位相の反転などが絡む複雑な問題でも、位相差で考えることで統一的に処理できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的な結論は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「マイケルソン干渉計」です。光を2つの経路に分割し、それぞれの光路長(光学距離)を変化させることで生じる干渉縞の移動を観測します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光路長(光学距離): 屈折率 \(n\) の媒質中を距離 \(d\) 進むとき、光にとっては真空中の距離 \(nd\) に相当します。
- 光路差と干渉条件: 2つの光の光路差が波長 \(\lambda\) の整数倍のとき強め合い(明線)、半整数倍のとき弱め合います(暗線)。
- マイケルソン干渉計の構造: 光が往復するため、鏡の移動距離や媒質の厚さの「2倍」が光路差に寄与します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、鏡の移動による幾何学的な距離の変化から光路差を求めます。
- (2)では、薄膜挿入による光路長の変化(\(nd – d\))を計算します。
- (3)では、気体の屈折率変化による光路差の変化と、観測される縞の移動回数を結びつけます。
- (4)では、屈折率と密度の比例関係を用いて、標準状態での屈折率を算出します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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