問題91 組合せレンズ (17 長崎大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)(2)(4)(5)の別解1: 幾何学的解法(三角形の相似)
- 模範解答が公式 \(\displaystyle \frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{f}\) を用いて代数的に解くのに対し、別解1では光線追跡図における直角三角形の相似比を用いて幾何学的に導出します。
- 全設問共通の別解2: 微積分を用いた体系的解法(フェルマーの原理と近軸近似)
- レンズの公式を既知とせず、光の基本原理である「フェルマーの原理(光路長極小の原理)」と「マクローリン展開(微積分による近似)」からレンズの結像公式そのものを導出し、全設問を一括して体系的に解説します。
- 設問(1)(2)(4)(5)の別解1: 幾何学的解法(三角形の相似)
- 上記の別解が有益である理由
- 幾何学的解法: 公式を忘れてしまった場合でも、作図さえできれば答えを導き出せる現場対応力を養います。また、倍率の意味が視覚的に理解できます。
- 微積分を用いた解法: 「なぜレンズの公式が成り立つのか」という物理的起源(光の位相と経路の関係)を深く理解でき、近似が成り立つ条件(近軸光線)への洞察が得られます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「組合せレンズによる結像」です。2枚のレンズを通過する光を追跡し、1枚目のレンズが作った像が2枚目のレンズにとっての物体となるプロセスを理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- レンズの公式(写像公式): 物体距離 \(a\)、像距離 \(b\)、焦点距離 \(f\) の間に成り立つ \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) の関係。
- 倍率の公式: 倍率 \(m\) は \(\displaystyle m = \left| \frac{b}{a} \right|\) で表されます。
- 実像と虚像の区別: レンズの後方に光が集まってできるのが実像(\(b>0\))、レンズの前方からの光の延長線上にできるのが虚像(\(b<0\))です。
- 組合せレンズの考え方: 「レンズ1による像」を「レンズ2にとっての物体(虚物体となることもある)」として扱います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、レンズ \(L_1\) 単独での結像を考え、公式を用いて像の位置と倍率を求めます。
- (3)では、\(L_1\) の作った実像が \(L_2\) に対してどのような位置にあれば虚像ができるかを、幾何学的な配置条件から導きます。
- (4)(5)では、\(L_2\) についての結像を考え、最終的な像の位置と全体の倍率を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
レンズ \(L_1\) 単独の結像問題です。
物体PQは \(L_1\) の前方 \(x\) にあり、実像 \(P_1Q_1\) が後方 \(y\) にできます。
凸レンズで実像ができる場合、レンズの公式の符号はすべて正として扱えます。
この設問における重要なポイント
- 符号の定義: 物体がレンズの前方、実像がレンズの後方にあるとき、\(a=x, b=y\) として公式にそのまま代入できます。
- 焦点距離: 凸レンズなので \(f_1 > 0\) です。
具体的な解説と立式
レンズ \(L_1\) について、物体距離を \(x\)、像距離を \(y\)、焦点距離を \(f_1\) とします。
レンズの公式(写像公式)より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{x} + \frac{1}{y} &= \frac{1}{f_1} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- レンズの公式: \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
式①を \(y\) について解きます。
まず、\(\displaystyle \frac{1}{y}\) を左辺に残します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{y} &= \frac{1}{f_1} – \frac{1}{x}
\end{aligned}
$$
右辺を通分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{y} &= \frac{x – f_1}{xf_1}
\end{aligned}
$$
両辺の逆数をとります。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{xf_1}{x – f_1}
\end{aligned}
$$
ここで、問題文より \(x > f_1\) なので、\(y > 0\) となり、確かにレンズの後方に実像ができることが確認できます。
レンズの基本的な計算問題です。「物体までの距離の逆数」と「像までの距離の逆数」を足すと、「焦点距離の逆数」になるというルールを使います。
物体が焦点よりも遠くにある(\(x > f_1\))ため、光はレンズを通った後に一点に集まり、スクリーンに映る「実像」を作ります。
答えは \(\displaystyle y = \frac{xf_1}{x – f_1}\) です。
\(x\) が \(f_1\) に近づくと分母が小さくなり \(y\) は無限大に発散します(焦点にある物体の像は無限遠にできる)。逆に \(x\) が無限大なら \(y\) は \(f_1\) に近づきます。これらは物理的に正しい挙動です。
問(2)
思考の道筋とポイント
レンズ \(L_1\) による倍率 \(m_1\) を求めます。
倍率は、幾何学的には「像距離」と「物体距離」の比で決まります。
この設問における重要なポイント
- 倍率の定義: 倍率 \(m\) は、像の大きさ \(H’\) と物体の大きさ \(H\) の比であり、距離の比 \(\displaystyle \left| \frac{b}{a} \right|\) に等しくなります。
具体的な解説と立式
物体距離 \(x\)、像距離 \(y\) を用いて、倍率 \(m_1\) は以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
m_1 &= \left| \frac{y}{x} \right| \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
ここでは \(x>0, y>0\) なので絶対値はそのまま外せます。
使用した物理公式
- 倍率の公式: \(\displaystyle m = \left| \frac{b}{a} \right|\)
式②に問(1)の結果 \(\displaystyle y = \frac{xf_1}{x – f_1}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m_1 &= \frac{1}{x} \cdot \frac{xf_1}{x – f_1} \\[2.0ex]
&= \frac{f_1}{x – f_1}
\end{aligned}
$$
倍率は「像が物体の何倍の大きさになるか」を表す数字です。
計算の結果、物体が焦点に近い(\(x\) が \(f_1\) に近い)ほど、分母が小さくなって倍率が大きくなることがわかります。虫眼鏡で物を拡大して見るのと似た状況です。
答えは \(\displaystyle m_1 = \frac{f_1}{x – f_1}\) です。
単位(次元)を確認すると、分母分子ともに長さの次元 \([\text{L}]\) なので、倍率は無次元量となり正しいです。
思考の道筋とポイント
公式を使わず、光線の経路図から三角形の相似比を利用して \(y\) と \(m_1\) を求めます。
図a(問題の図)において、物体PQの先端Pから出る2本の特殊な光線に着目します。
- レンズの中心を通る光線(直進する)
- 光軸に平行に入り、焦点を通る光線
この設問における重要なポイント
- 相似な三角形の発見: レンズの中心を挟む三角形と、焦点を挟む三角形の2組の相似形を利用します。
- 幾何学的関係: 物体の高さ \(h\) と像の高さ \(h’\) の比が倍率 \(m_1\) です。
具体的な解説と立式
物体PQの高さを \(h\)、実像 \(P_1Q_1\) の高さを \(h’\) とします。
1. レンズ中心を通る光線がつくる相似:
物体側の三角形と像側の三角形は相似であり、その比は距離の比に等しいです。
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{x} &= \frac{h’}{y} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
これより、倍率 \(m_1\) は定義より直ちに求まります。
$$
\begin{aligned}
m_1 &= \frac{h’}{h}
\end{aligned}
$$
2. 焦点を通る光線がつくる相似:
光軸に平行な光線は、レンズ通過後に後側焦点 \(F’\)(レンズから距離 \(f_1\))を通ります。
レンズの位置での高さは \(h\) であり、像の位置での高さは \(h’\) です。
焦点 \(F’\) を挟んで向かい合う2つの直角三角形の相似比に着目します。
焦点から像までの水平距離は \(y – f_1\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{f_1} &= \frac{h’}{y – f_1} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三角形の相似比
式③より \(h’\) を \(h\) で表します。
$$
\begin{aligned}
h’ &= \frac{y}{x} h
\end{aligned}
$$
これを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{h}{f_1} &= \frac{\frac{y}{x} h}{y – f_1}
\end{aligned}
$$
両辺を \(h\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{f_1} &= \frac{y}{x(y – f_1)}
\end{aligned}
$$
分母を払います。
$$
\begin{aligned}
x(y – f_1) &= y f_1
\end{aligned}
$$
展開して \(y\) を含む項をまとめます。
$$
\begin{aligned}
xy – xf_1 &= y f_1 \\[2.0ex]
xy – y f_1 &= x f_1 \\[2.0ex]
y(x – f_1) &= x f_1
\end{aligned}
$$
\(y\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{x f_1}{x – f_1}
\end{aligned}
$$
また、倍率 \(m_1\) は、式③より
$$
\begin{aligned}
m_1 &= \frac{y}{x} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{x} \cdot \frac{x f_1}{x – f_1} \\[2.0ex]
&= \frac{f_1}{x – f_1}
\end{aligned}
$$
数式(公式)に頼らず、図形の形(三角形の相似)から答えを導きました。
「レンズの中心を通る光」と「焦点を通る光」の2本の線を描くだけで、物体と像の位置関係や大きさの比率が自然と決まることがわかります。
公式を用いた場合と全く同じ結果が得られました。
幾何学的なアプローチは、光線の経路をイメージしやすく、計算ミスを防ぐ検算としても有効です。
問(3)
思考の道筋とポイント
レンズ \(L_1\) が作った実像 \(P_1Q_1\) は、レンズ \(L_2\) にとっての「物体」として振る舞います。
\(L_2\) によって「虚像」ができるための条件を考えます。
凸レンズで虚像ができるのは、物体が「焦点よりもレンズに近い位置」にある場合です。
この設問における重要なポイント
- 実像の再利用: \(L_1\) の像 \(P_1Q_1\) の位置が、\(L_2\) にとっての物体位置となります。
- 虚像の生成条件: 凸レンズの前方(光が入ってくる側)の、焦点距離 \(f_2\) 以内の領域に物体があるとき、虚像ができます。
- 配置の制約: そもそも \(P_1Q_1\) が \(L_2\) の前方になければ、\(L_2\) にとっての実物体として扱えません(後方にある場合は虚物体となりますが、ここでは文脈的に実物体としての結像を問うています)。
具体的な解説と立式
\(L_1\) と \(L_2\) の距離は \(d\) です。
\(L_1\) から \(P_1Q_1\) までの距離は \(y\) なので、\(L_2\) から見た物体 \(P_1Q_1\) までの距離は \(d – y\) となります。
虚像ができるための条件は以下の2つです。
1. 物体が \(L_2\) の前方にあること:
\(P_1Q_1\) が \(L_1\) と \(L_2\) の間に存在する必要があります。
$$
\begin{aligned}
d &> y \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
2. 物体が \(L_2\) の焦点の内側にあること:
物体距離 \(d – y\) が焦点距離 \(f_2\) より小さくなければなりません。
$$
\begin{aligned}
d – y &< f_2 \quad \cdots ⑥ \end{aligned} $$ (※距離なので \(d-y > 0\) は条件1に含まれます)
これらをまとめて \(d\) についての不等式を立てます。
使用した物理公式
- 凸レンズの結像条件(虚像): \(0 < \text{物体距離} < f\)
式⑤より \(d > y\)、式⑥より \(d < y + f_2\) です。
これらを合わせると以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
y &< d < y + f_2
\end{aligned}
$$
ここで、\(y\) は問(1)の結果 \(\displaystyle y = \frac{xf_1}{x – f_1}\) なので、これを代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{xf_1}{x – f_1} &< d < \frac{xf_1}{x – f_1} + f_2
\end{aligned}
$$
2枚目のレンズ \(L_2\) が虫眼鏡として機能するための条件を探しています。
虫眼鏡で物を拡大して見る(虚像を見る)ためには、対象物をレンズに近づける必要がありますね。具体的には「焦点距離より近く」です。
ここでは対象物が「1枚目のレンズが作った像」なので、その像が2枚目のレンズのすぐ手前(焦点距離以内)に来るように、レンズ間の距離 \(d\) を調整する必要があるということです。
答えは \(\displaystyle \frac{xf_1}{x – f_1} < d < \frac{xf_1}{x – f_1} + f_2\) です。
\(d\) がこの範囲にあるとき、\(L_2\) は拡大鏡として働き、正立虚像を作ります。
問(4)
思考の道筋とポイント
レンズ \(L_2\) についての結像計算です。
物体は \(P_1Q_1\) で、物体距離は \(d – y\) です。
像は \(P_2Q_2\) で、レンズ \(L_2\) の前方 \(z\) の位置に見えた(虚像)とあります。
レンズの公式における符号に注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 虚像の符号: レンズの公式 \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) において、像が虚像(レンズの前方)の場合、像距離 \(b\) には負の値を代入します。
- 距離と座標: 問題文で与えられた \(z\) は「距離」なので正の値です。したがって、公式には \(b = -z\) を代入します。
具体的な解説と立式
レンズ \(L_2\) について、以下の値を設定します。
- 物体距離: \(a’ = d – y\)
- 像距離: \(b’ = -z\) (虚像のため負)
- 焦点距離: \(f_2\)
レンズの公式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{d – y} + \frac{1}{-z} &= \frac{1}{f_2} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- レンズの公式: \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
式⑦を \(d\) について解きます。
まず \(\displaystyle \frac{1}{d – y}\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{d – y} &= \frac{1}{f_2} + \frac{1}{z}
\end{aligned}
$$
右辺を通分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{d – y} &= \frac{z + f_2}{f_2 z}
\end{aligned}
$$
両辺の逆数をとります。
$$
\begin{aligned}
d – y &= \frac{f_2 z}{f_2 + z}
\end{aligned}
$$
\(y\) を移項します。
$$
\begin{aligned}
d &= y + \frac{f_2 z}{f_2 + z}
\end{aligned}
$$
問題文に「\(y\) … のうち必要なものを用いて表せ」とあるため、\(y\) を残したままで正解となります。(もちろん \(y\) を \(x, f_1\) で書き下しても正解ですが、式が煩雑になるためこの形が簡潔です)
2枚目のレンズ \(L_2\) の計算です。
「物体までの距離」は \(d-y\)、「像までの距離」は虚像なのでマイナスをつけて \(-z\) とします。これらを公式に入れて計算するだけで、レンズ間の距離 \(d\) が求まります。
式を見ると、\(d\) は \(y\)(1枚目の像の位置)に正の項を足したものになっています。これは \(d > y\) という問(3)の条件とも一致しています。
答えは \(\displaystyle d = y + \frac{f_2 z}{f_2 + z}\) です。
\(z > 0, f_2 > 0\) なので第2項は正であり、\(d > y\) が満たされています。
思考の道筋とポイント
問(1)と同様に、レンズ \(L_2\) についても光線追跡図から幾何学的に解くことができます。
虚像の場合、光線は実際には交わりませんが、その延長線が一点から出ているように見えます。
この設問における重要なポイント
- 虚像の作図: 物体 \(P_1Q_1\) の先端 \(P_1\) から出る光線を考えます。
- レンズ中心を通る光線(直進)
- 光軸に平行な光線(通過後に後側焦点 \(F_2’\) を通るように屈折)
- 相似の利用: 虚像 \(P_2Q_2\) の高さ \(h”\) と物体 \(P_1Q_1\) の高さ \(h’\) の関係を使います。
具体的な解説と立式
物体 \(P_1Q_1\) の高さを \(h’\)、虚像 \(P_2Q_2\) の高さを \(h”\) とします。
1. レンズ中心を通る光線がつくる相似:
物体距離 \(d-y\) と像距離 \(z\) の比が高さの比になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{h’}{d-y} &= \frac{h”}{z} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
2. 焦点を通る光線がつくる相似:
光軸に平行な光線は、レンズ通過後に後側焦点 \(F_2’\)(レンズから距離 \(f_2\))を通ります。
この光線を逆にたどると、虚像の先端 \(P_2\) もこの線上にあります。
レンズ位置での高さは \(h’\) です。
焦点 \(F_2’\) を頂点とする大きな直角三角形(底辺 \(f_2+z\)、高さ \(h”\))と小さな直角三角形(底辺 \(f_2\)、高さ \(h’\))の相似を考えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{h’}{f_2} &= \frac{h”}{f_2 + z} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三角形の相似比
式⑧より \(h”\) を \(h’\) で表します。
$$
\begin{aligned}
h” &= \frac{z}{d-y} h’
\end{aligned}
$$
これを式⑨に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{h’}{f_2} &= \frac{\frac{z}{d-y} h’}{f_2 + z}
\end{aligned}
$$
両辺を \(h’\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{f_2} &= \frac{z}{(d-y)(f_2 + z)}
\end{aligned}
$$
分母を払います。
$$
\begin{aligned}
(d-y)(f_2 + z) &= f_2 z
\end{aligned}
$$
\(d-y\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
d-y &= \frac{f_2 z}{f_2 + z}
\end{aligned}
$$
\(y\) を移項します。
$$
\begin{aligned}
d &= y + \frac{f_2 z}{f_2 + z}
\end{aligned}
$$
虚像の場合でも、光線の進み方を逆にたどることで、実像と同じように三角形の相似を見つけることができます。
「レンズの中心」と「焦点」という2つの基準点を使うことで、複雑な虚像の位置計算も図形の問題に帰着できます。
メイン解法と同じ結果が得られました。虚像の場合の符号ミス(マイナスをつけ忘れるなど)が心配なときは、この図形的解法が強力な助けになります。
問(5)
思考の道筋とポイント
組合せレンズ全体の倍率 \(m_{12}\) を求めます。
組合せレンズの倍率は、各レンズの倍率の積になります。
この設問における重要なポイント
- 倍率の積: 全体の倍率 \(m_{\text{全体}}\) は、個々の倍率 \(m_1, m_2\) の積 \(m_1 \times m_2\) で求められます。
- \(L_2\) の倍率: \(L_2\) の倍率 \(m_2\) も、定義通り \(\displaystyle \left| \frac{\text{像距離}}{\text{物体距離}} \right|\) で計算します。
具体的な解説と立式
まず、レンズ \(L_2\) の倍率 \(m_2\) を求めます。
物体距離は \(d – y\)、像距離の大きさは \(z\) です(虚像なので距離は \(z\)、座標は \(-z\))。
$$
\begin{aligned}
m_2 &= \left| \frac{-z}{d – y} \right| \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
全体の倍率 \(m_{12}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m_{12} &= m_1 \times m_2 \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 倍率の合成: \(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2\)
式⑩を整理します。
$$
\begin{aligned}
m_2 &= \frac{z}{d – y}
\end{aligned}
$$
問(4)の計算過程より、\(\displaystyle d – y = \frac{f_2 z}{f_2 + z}\) でした。これを代入します。
$$
\begin{aligned}
m_2 &= \frac{z}{\left( \frac{f_2 z}{f_2 + z} \right)} \\[2.0ex]
&= z \cdot \frac{f_2 + z}{f_2 z} \\[2.0ex]
&= \frac{f_2 + z}{f_2}
\end{aligned}
$$
これと、問(2)で求めた \(\displaystyle m_1 = \frac{f_1}{x – f_1}\) を式⑪に代入します。
$$
\begin{aligned}
m_{12} &= \left( \frac{f_1}{x – f_1} \right) \times \left( \frac{f_2 + z}{f_2} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{f_1 (f_2 + z)}{f_2 (x – f_1)}
\end{aligned}
$$
1枚目のレンズで \(m_1\) 倍に拡大され、その像がさらに2枚目のレンズで \(m_2\) 倍に拡大されます。
トータルの倍率は、それぞれの倍率のかけ算になります。例えば2倍にしてから3倍にすれば、元から見て6倍になるのと同じ理屈です。
答えは \(\displaystyle m_{12} = \frac{f_1 (f_2 + z)}{f_2 (x – f_1)}\) です。
\(y\) や \(d\) が消去され、指定された文字 \(x, f_1, f_2, z\) のみで表されています。
思考の道筋とポイント
ここでは、レンズの公式を天下り的に使うのではなく、光の進み方の基本原理である「フェルマーの原理」から出発し、微積分(マクローリン展開)を用いて公式そのものを導出し、全設問を一括して解釈します。
フェルマーの原理: 光は、2点間を結ぶ経路のうち「光学的距離(光路長)」が停留値(極小値など)をとる経路を通る。
レンズによる結像とは、ある点から出たすべての光線が、異なる経路を通っても同じ位相(同じ光路長)で一点に集まる現象と解釈できます。
この設問における重要なポイント
- 光路長の定義: 幾何学的距離に屈折率をかけたものが光路長です。
- 近軸近似: 光軸に近い光線(\(h \ll a\))のみを考え、\(\sqrt{1+x} \approx 1 + x/2\) の近似を用います。
- レンズの作用: レンズは中心が厚く周辺が薄いため、通過する光に対して位置 \(h\) に依存した位相遅れ(光路長の付加)を与えます。
具体的な解説と立式
1. レンズの公式の導出
光軸上の点P(レンズから距離 \(a\))から出た光が、レンズ上の高さ \(h\) の点を通り、光軸上の点Q(レンズから距離 \(b\))に達するとします。
幾何学的な経路長 \(L_{\text{幾何}}\) は三平方の定理より以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
L_{\text{幾何}} &= \sqrt{a^2 + h^2} + \sqrt{b^2 + h^2}
\end{aligned}
$$
ここで、近軸光線(\(h \ll a, b\))を仮定し、マクローリン展開 \(\displaystyle \sqrt{1+X} \approx 1 + \frac{1}{2}X\) を用いて近似します。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{a^2 + h^2} &= a \sqrt{1 + \left(\frac{h}{a}\right)^2} \\[2.0ex]
&\approx a \left( 1 + \frac{h^2}{2a^2} \right) \\[2.0ex]
&= a + \frac{h^2}{2a}
\end{aligned}
$$
同様に \(\displaystyle \sqrt{b^2 + h^2} \approx b + \frac{h^2}{2b}\) なので、
$$
\begin{aligned}
L_{\text{幾何}} &\approx a + b + \frac{h^2}{2} \left( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \right)
\end{aligned}
$$
一方、凸レンズは中心が厚く周辺が薄いため、レンズを通過する際に光路長に変化を与えます。レンズの厚みによる位相の遅れ効果(光路長の付加分)を \(\displaystyle -\frac{h^2}{2f}\) と表せることが知られています(\(f\) はレンズの形状と屈折率で決まる定数=焦点距離)。
したがって、全光路長 \(S(h)\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
S(h) &= L_{\text{幾何}} – \frac{h^2}{2f} \\[2.0ex]
&\approx a + b + \frac{h^2}{2} \left( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} – \frac{1}{f} \right)
\end{aligned}
$$
フェルマーの原理より、実際に光が通る経路(結像する状態)では、光路長 \(S(h)\) は \(h\) に依存せず一定(停留値)でなければなりません。つまり、\(h\) で微分した値が \(0\) になる必要があります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dS}{dh} &= h \left( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} – \frac{1}{f} \right) = 0
\end{aligned}
$$
これが任意の \(h\) で成り立つための条件は、括弧の中身が \(0\) であることです。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{a} + \frac{1}{b} &= \frac{1}{f}
\end{aligned}
$$
これにより、レンズの公式が導かれました。
使用した物理公式
- フェルマーの原理: \(\delta S = 0\)
- マクローリン展開: \((1+x)^n \approx 1 + nx\)
2. 各設問への適用
この原理に基づき、各設問を解釈します。
問(1):
\(a=x, b=y, f=f_1\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{x} + \frac{1}{y} &= \frac{1}{f_1}
\end{aligned}
$$
これを解いて \(\displaystyle y = \frac{xf_1}{x-f_1}\) を得ます。
問(4):
\(L_2\) について、物体からの光は発散光として入射します。物体距離 \(a’=d-y\)。
像は虚像(発散光の延長)なので、光路長の計算において像距離 \(b’\) の項の符号が反転し、\(\displaystyle -\frac{1}{z}\) となります(あるいは座標として \(b’=-z\) を代入)。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{d-y} + \frac{1}{-z} &= \frac{1}{f_2}
\end{aligned}
$$
これを解いて \(\displaystyle d = y + \frac{f_2 z}{f_2 + z}\) を得ます。
光は「一番時間がかからない経路」を選んで進むという性質(フェルマーの原理)があります。
レンズを通る光が一点に集まるということは、どの場所を通っても「かかる時間(光路長)」が同じになるということです。
この条件を数式にすると、自然とレンズの公式 \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) が現れます。
この根本原理を知っていれば、公式を忘れても自分で作り出すことができます。
微積分(近似と微分)を用いることで、レンズの公式が「光路長を \(h\) によらず一定にするための条件式」であることが理解できました。
このアプローチは、レンズが複数ある場合や、屈折率が連続的に変化する場合など、より高度な光学の問題にも応用できる強力なツールです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 組合せレンズにおける「像のリレー」
- 核心: 複数のレンズがある場合、前のレンズが作った像(実像・虚像問わず)が、次のレンズにとっての「物体」として機能します。
- 理解のポイント:
- 座標の再設定: 1枚目のレンズ \(L_1\) で計算した像の位置 \(y\) を、2枚目のレンズ \(L_2\) の位置を基準とした物体距離 \(d-y\) に変換するプロセスが最重要です。
- 虚物体の可能性: もし \(y > d\) (像が \(L_2\) の後ろにできる)の場合、\(L_2\) にとっての物体距離は負(虚物体)となりますが、計算手順自体は変わりません。
- レンズの公式と符号の規則(サイン・コンベンション)
- 核心: 公式 \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) において、\(a, b, f\) の符号が物理的な状態(実像/虚像、凸/凹)を決定します。
- 理解のポイント:
- 凸レンズ: \(f > 0\) (凹レンズなら \(f < 0\))。
- 実像: レンズの後方に光が集まる場合 \(b > 0\)。
- 虚像: レンズの前方から光が発散する場合 \(b < 0\)。この符号ルールを厳格に守ることが正解への鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 顕微鏡・望遠鏡: 対物レンズと接眼レンズの2枚構成です。本問と同様に「対物レンズの像 \(\to\) 接眼レンズの物体」というリレーが行われます。特に顕微鏡では「対物レンズで実像を作り、接眼レンズでそれを拡大して虚像として見る」という本問(3)(4)と全く同じ構成になります。
- レンズと鏡の組み合わせ: レンズを通った光が鏡で反射し、再びレンズを通る問題。鏡による折り返しを考慮するだけで、基本は「像のリレー」です。
- 初見の問題での着眼点:
- 光線追跡図のラフスケッチ: 計算を始める前に、定規を使わなくても良いので「平行光線が焦点を通る」「中心を通る光は直進する」という原則に従って図を描きます。これにより、像が実像か虚像か、どのあたりにできるかの当たりがつきます。
- レンズごとの区切り: 一気に全体の式を立てようとせず、「まず \(L_1\) だけ」「次に \(L_2\) だけ」と問題を分割します。その際、レンズ間の距離 \(d\) を忘れずに考慮します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 2枚目のレンズの物体距離のミス:
- 誤解: \(L_1\) の像距離 \(y\) を、そのまま \(L_2\) の物体距離として代入してしまう。
- 対策: 必ず図を描き、\(L_1\) の像 \(P_1Q_1\) が \(L_2\) から見て「どれだけ離れているか」を確認します。通常は \(|d – y|\) となります。
- 虚像の符号の取り違え:
- 誤解: 「距離 \(z\)」と与えられたとき、公式にそのまま \(b=z\) と代入してしまう。
- 対策: 「虚像=レンズの前方=負」というルールを徹底します。問題文で「距離 \(z\)」と正の値で与えられていても、公式に入れるときは \(b = -z\) とします。
- 倍率の計算ミス:
- 誤解: 全体の倍率を足し算(\(m_1 + m_2\))してしまう。
- 対策: 倍率は「拡大の掛け合わせ」です。\(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2\) であることを、コピー機の拡大コピー(2倍の2倍は4倍)をイメージして記憶します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- レンズの公式(写像公式):
- 選定理由: 代数的に解けるため、複雑な組合せレンズや虚像・虚物体を含む問題でも、符号のルールさえ守れば機械的に正解にたどり着ける最も汎用性の高い方法です。
- 適用根拠: 近軸光線近似が成り立つ範囲(通常の高校物理の問題設定)であれば常に成立します。
- 幾何学的解法(三角形の相似):
- 選定理由: 公式の符号に自信がない場合や、検算を行いたい場合に有効です。視覚的に意味がわかるため、ケアレスミスに気づきやすくなります。
- 適用根拠: 光の直進性と屈折の法則に基づく作図が可能であること。特に「倍率」の意味を理解するのに最適です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(ディメンションチェック):
- 意識: 答えの式が物理的な次元(単位)を持っているか確認します。
- 実践: 例えば \(\displaystyle y = \frac{xf_1}{x-f_1}\) なら、分母は長さ \([\text{L}]\)、分子は長さの2乗 \([\text{L}]^2\) なので、全体で長さ \([\text{L}]\) となりOKです。もし \(\displaystyle y = \frac{x}{x-f_1}\) なら無次元になってしまうので間違いです。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 変数を極端な値にしたとき、物理的にあり得ない挙動をしないか確認します。
- 実践: 問(1)で \(x \to f_1\) (物体を焦点に近づける)とすると、分母が \(0\) に近づき \(y \to \infty\) となります。「焦点にある物体の像は無限遠にできる」という事実と一致します。逆に \(x \to \infty\) なら \(y \to f_1\) となり、これも正しいです。
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問題92 凹面鏡 (15 筑波大(前期))
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(ケ)の別解1: 頂点反射を用いた倍率の導出
- 模範解答が焦点を通る光線と相似比を用いるのに対し、別解1では「鏡の頂点Oでの反射」に着目し、より単純な三角形の相似から倍率を瞬時に導きます。
- 全設問共通の別解2: 微積分を用いた体系的解法(フェルマーの原理)
- 幾何学的な作図や近似計算を積み上げるのではなく、光の基本原理である「フェルマーの原理(光路長極小の原理)」から凹面鏡の写像公式そのものを数学的に導出し、全設問を一括して体系的に解説します。
- 設問(ケ)の別解1: 頂点反射を用いた倍率の導出
- 上記の別解が有益である理由
- 頂点反射の解法: 計算量が圧倒的に少なく、検算や実戦でのスピードアップに直結します。
- 微積分を用いた解法: 「なぜ凹面鏡で光が集まるのか」という物理的本質を理解でき、公式を忘れても導き出せる応用力が身につきます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「凹面鏡による結像」です。幾何光学の基礎である反射の法則、近軸近似、そして像の性質(実像・虚像、倍率)を包括的に扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 反射の法則: 入射角と反射角は等しい。
- 近軸近似: 光軸に近い光線では、角度 \(\theta\) が十分に小さいとき、\(\sin \theta \approx \tan \theta \approx \theta\) と近似できます。
- 凹面鏡の写像公式: 物体距離 \(a\)、像距離 \(b\)、球面の半径 \(R\) の間に \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{2}{R}\) が成り立ちます。
- 倍率: 像の大きさの倍率 \(m\) は、距離の比 \(\displaystyle m = \left| \frac{b}{a} \right|\) で表されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 前半は、図1の幾何学的関係から角度の方程式を立て、近軸近似を用いて写像公式を導出します。
- 中盤は、導出した公式を用いて焦点距離や像の性質(実像・虚像)を考察します。
- 後半は、図2の光線追跡(相似な三角形)を利用して倍率を求め、具体的な数値設定での作図を行います。
問(a)〜(オ)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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