「物理重要問題集2026」徹底解説(28〜30問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題28 2物体のあらい面上での運動 (愛知工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: エネルギーと仕事の関係を用いた解法
      • 模範解答の別解にもある通り、運動方程式と等加速度運動の公式を経由せず、初めの運動エネルギーが動摩擦力の仕事によって全て消費されるというエネルギー原理を用いて、直接的に摩擦係数の関係を導きます。
    • 設問(3)(4)の別解1: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分と仕事の定義)
      • 個別の物体ではなく系全体(A+B)の運動方程式を立て、それを積分することでエネルギー保存則(機能原理)を導出し、停止距離や仕事を体系的に計算します。
    • 設問(4)の別解2: 仕事の配分比を用いた解法
      • 系全体が失った運動エネルギー(全仕事)を、各物体にはたらく摩擦力の大きさの比に応じて配分することで、計算量を大幅に削減して解を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • エネルギーの解法: 加速度や時間を求める必要がなく、始状態と終状態のみに着目するため、計算が迅速かつ簡潔になります。
    • 微積分の解法: 物理現象を「力と運動」の基本原理から数学的に記述する力を養い、公式の成り立ちを深く理解するのに役立ちます。
    • 配分比の解法: 物理的な直感と比の感覚を利用することで、複雑な計算を回避し、検算としても非常に有効な手段となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「あらい面上での物体の運動と摩擦力の仕事」です。
個々の物体の運動方程式から加速度を求める基本手順に加え、エネルギーと仕事の関係を用いた視点、さらに連結された物体の運動における内力(張力)と外力(摩擦力)の扱いを学びます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 動摩擦力: あらい面を運動する物体には、運動を妨げる向きに \(F’ = \mu’ N\) の動摩擦力がはたらきます。
  • 運動方程式: 物体の加速度と力の間には \(ma = F\) の関係が成り立ちます。
  • エネルギーと仕事の関係: 物体の運動エネルギーの変化量は、その間に物体にはたらく力がした仕事に等しくなります(\(\Delta K = W\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、物体A、Bそれぞれの運動方程式を立て、等加速度運動の公式を用いて時間や摩擦係数を求めます。
  • (3)では、ひもでつながれたAとBを連立した運動方程式(あるいは一体とみなした運動方程式)で解析し、張力を求めます。
  • (4)では、停止するまでの距離を求め、仕事の定義 \(W = Fx\) に従って計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体Aは初速度 \(v_0\) で滑り出し、動摩擦力を受けて減速し、やがて停止します。
まずは物体Aにはたらく力を図示し、運動方程式を立てて加速度を求めます。その後、速度と時間の関係式を用いて停止するまでの時間を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 力の向き: 運動の向きを正とすると、動摩擦力は負の向きにはたらきます。
  • 垂直抗力: 水平面上での運動なので、垂直抗力 \(N\) の大きさは重力 \(mg\) と等しくなります。

具体的な解説と立式
運動の向き(初速度の向き)を正とします。
物体A(質量 \(m\))にはたらく力は以下の通りです。

  • 重力: \(mg\)(鉛直下向き)
  • 垂直抗力: \(N = mg\)(鉛直上向き)
  • 動摩擦力: \(f_{\text{A}} = \mu_{\text{A}}’ N = \mu_{\text{A}}’ mg\)(運動と逆向き)

物体Aの加速度を \(a_{\text{A}}\) とし、運動方程式 \(ma = F\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
ma_{\text{A}} &= – \mu_{\text{A}}’ mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 動摩擦力: \(f’ = \mu’ N\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

式①の両辺を \(m\) で割り、加速度 \(a_{\text{A}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{A}} &= – \mu_{\text{A}}’ g
\end{aligned}
$$
停止するとき、速度 \(v\) は \(0\) になります。停止するまでの時間を \(t\) とすると、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) より、
$$
\begin{aligned}
0 &= v_0 + a_{\text{A}} t
\end{aligned}
$$
これに求めた \(a_{\text{A}}\) を代入して \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_0 + (- \mu_{\text{A}}’ g) t \\[2.0ex]
\mu_{\text{A}}’ g t &= v_0 \\[2.0ex]
t &= \frac{v_0}{\mu_{\text{A}}’ g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物体Aは地面から「動くのを邪魔する力(摩擦力)」を受け続けて減速します。
このブレーキの強さ(加速度)を運動方程式から計算し、「今のスピードがゼロになるまで何秒かかるか」を速度の式を使って求めました。

結論と吟味

時間は正の値となり、初速度 \(v_0\) が大きいほど長く、摩擦係数 \(\mu_{\text{A}}’\) が大きいほど短くなるため、物理的に妥当な結果です。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{v_0}{\mu_{\text{A}}’ g}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
物体Aと物体Bは初速度が異なりますが、停止するまでの移動距離が同じでした。
この条件を利用して、物体Bの動摩擦係数 \(\mu_{\text{B}}’\) を求めます。
それぞれの加速度を求め、等加速度運動の「速度と変位の関係式」を用いて停止距離を表し、それらが等しいという方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 条件の利用: 「停止するまでの移動距離は同じ」という情報を数式化します。
  • 物体Bの諸量: 質量は \(2m\)、初速度は \(2v_0\) であることに注意します。

具体的な解説と立式
物体B(質量 \(2m\))の動摩擦係数を \(\mu_{\text{B}}’\) とします。
物体Bの加速度を \(a_{\text{B}}\) とすると、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
2m a_{\text{B}} &= – \mu_{\text{B}}’ (2m)g \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
停止するまでの移動距離を \(x\) とします。
等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用います。

物体Aについて(初速度 \(v_0\)、加速度 \(a_{\text{A}}\)):
$$
\begin{aligned}
0^2 – v_0^2 &= 2 a_{\text{A}} x \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
物体Bについて(初速度 \(2v_0\)、加速度 \(a_{\text{B}}\)):
$$
\begin{aligned}
0^2 – (2v_0)^2 &= 2 a_{\text{B}} x \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 等加速度直線運動の式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
計算過程

まず、式②より物体Bの加速度 \(a_{\text{B}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{B}} &= – \mu_{\text{B}}’ g
\end{aligned}
$$
また、問(1)より物体Aの加速度は \(a_{\text{A}} = – \mu_{\text{A}}’ g\) です。

式③より、距離 \(x\) は
$$
\begin{aligned}
– v_0^2 &= 2 (- \mu_{\text{A}}’ g) x \\[2.0ex]
x &= \frac{v_0^2}{2 \mu_{\text{A}}’ g} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
式④より、距離 \(x\) は
$$
\begin{aligned}
– 4v_0^2 &= 2 (- \mu_{\text{B}}’ g) x \\[2.0ex]
x &= \frac{4v_0^2}{2 \mu_{\text{B}}’ g} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
移動距離 \(x\) は等しいので、式⑤と式⑥を等置します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_0^2}{2 \mu_{\text{A}}’ g} &= \frac{4v_0^2}{2 \mu_{\text{B}}’ g}
\end{aligned}
$$
両辺を整理して \(\mu_{\text{B}}’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{\mu_{\text{A}}’} &= \frac{4}{\mu_{\text{B}}’} \\[2.0ex]
\mu_{\text{B}}’ &= 4 \mu_{\text{A}}’
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

BはAの2倍のスピードでスタートしました。通常、スピードが速ければ止まるまでに長い距離が必要ですが、今回はAと同じ距離で止まりました。
これは、Bのブレーキ(摩擦)がAよりも強力だったことを意味します。計算の結果、Bの摩擦係数はAの4倍であることが分かりました。

結論と吟味

初速度が2倍になると、運動エネルギーは4倍になります。同じ距離で止めるには4倍の仕事(ブレーキ力)が必要になるため、摩擦係数が4倍になるのは物理的に妥当です。

解答 (2) \(4\mu_{\text{A}}’\)
別解: エネルギーと仕事の関係を用いた解法

思考の道筋とポイント
「運動エネルギーの変化量 = 非保存力(動摩擦力)がした仕事」という関係を用います。
停止するということは、初めの運動エネルギーがすべて動摩擦力の負の仕事によって奪われたことを意味します。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー原理: \(\frac{1}{2}mv^2 – \frac{1}{2}mv_0^2 = W\) の関係式を利用します。
  • 仕事の計算: 動摩擦力は一定なので、仕事は \(W = -f’x\) となります。

具体的な解説と立式
停止するまでの距離を \(x\) とします。
物体Aについて、エネルギーと仕事の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v_0^2 – \mu_{\text{A}}’ mg x &= 0 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
物体Bについて、同様に式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} (2m) (2v_0)^2 – \mu_{\text{B}}’ (2m)g x &= 0 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • エネルギーと仕事の関係: \(\Delta K = W\)
  • 動摩擦力の仕事: \(W = -\mu’ N x\)
計算過程

式⑦より
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v_0^2 &= \mu_{\text{A}}’ mg x \\[2.0ex]
x &= \frac{v_0^2}{2 \mu_{\text{A}}’ g}
\end{aligned}
$$
式⑧より
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} (2m) 4v_0^2 &= \mu_{\text{B}}’ (2m)g x \\[2.0ex]
2 m v_0^2 &= \mu_{\text{B}}’ mg x \\[2.0ex]
x &= \frac{2 v_0^2}{\mu_{\text{B}}’ g}
\end{aligned}
$$
これらが等しいので
$$
\begin{aligned}
\frac{v_0^2}{2 \mu_{\text{A}}’ g} &= \frac{2 v_0^2}{\mu_{\text{B}}’ g} \\[2.0ex]
\frac{1}{2 \mu_{\text{A}}’} &= \frac{2}{\mu_{\text{B}}’} \\[2.0ex]
\mu_{\text{B}}’ &= 4 \mu_{\text{A}}’
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「持っていたエネルギー」が「摩擦によって削り取られた」と考えます。
BはAの4倍のエネルギーを持っていましたが、同じ距離でエネルギーがゼロになりました。つまり、BはAの4倍のペースでエネルギーを削られた(摩擦力が4倍だった)ということです。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。加速度を経由しない分、計算がスムーズです。

解答 (2) \(4\mu_{\text{A}}’\)

問(3)

思考の道筋とポイント
物体AとBをひもでつなぎ、初速度 \(v_0\) で運動させます。
ひもが張った状態で運動しているため、AとBは同じ加速度で運動します。
それぞれの物体について運動方程式を立て、連立させて張力 \(T\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 物体の配置と力の向き:
    • 問(2)の結果より \(\mu_{\text{B}}’ = 4\mu_{\text{A}}’\) なので、Bの方が摩擦係数が大きく、減速しやすい(ブレーキが強い)です。
    • ひもが張った状態を保つには、ブレーキの強いBが後ろ(左)、ブレーキの弱いAが前(右)に位置し、AがBを引っ張る形で運動していると考えられます。(もしBが前なら、Bが急減速してAが追突し、ひもはたるみます)
    • したがって、運動方向を右向きとすると、Aは左向きに張力 \(T\) を受け、Bは右向きに張力 \(T\) を受けます。
  • 動摩擦力: どちらの物体にも、運動方向と逆向き(左向き)にはたらきます。

具体的な解説と立式
運動の向き(右向き)を正とします。加速度を \(\alpha\)、張力を \(T\) とします。

物体A(質量 \(m\))の運動方程式:
はたらく力は、動摩擦力 \(-\mu_{\text{A}}’ mg\) と、ひもが引く力 \(-T\) です。
$$
\begin{aligned}
m \alpha &= – \mu_{\text{A}}’ mg – T \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
物体B(質量 \(2m\))の運動方程式:
はたらく力は、動摩擦力 \(-\mu_{\text{B}}’ (2m)g\) と、ひもが引く力 \(+T\) です。
$$
\begin{aligned}
2m \alpha &= T – \mu_{\text{B}}’ (2m)g \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
ここで、問(2)の結果 \(\mu_{\text{B}}’ = 4\mu_{\text{A}}’\) を式⑩に代入しておきます。
$$
\begin{aligned}
2m \alpha &= T – 4\mu_{\text{A}}’ (2m)g \\[2.0ex]
2m \alpha &= T – 8\mu_{\text{A}}’ mg \quad \cdots ⑩’
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

式⑨と式⑩’を足し合わせて、内力である張力 \(T\) を消去し、加速度 \(\alpha\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m \alpha + 2m \alpha &= (- \mu_{\text{A}}’ mg – T) + (T – 8\mu_{\text{A}}’ mg) \\[2.0ex]
3m \alpha &= – 9\mu_{\text{A}}’ mg \\[2.0ex]
\alpha &= – 3\mu_{\text{A}}’ g
\end{aligned}
$$
この \(\alpha\) を式⑨に代入して \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m (- 3\mu_{\text{A}}’ g) &= – \mu_{\text{A}}’ mg – T \\[2.0ex]
– 3\mu_{\text{A}}’ mg &= – \mu_{\text{A}}’ mg – T \\[2.0ex]
T &= – \mu_{\text{A}}’ mg + 3\mu_{\text{A}}’ mg \\[2.0ex]
&= 2\mu_{\text{A}}’ mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

AとBをつないで滑らせると、ブレーキの強いBが後ろから引っ張り、ブレーキの弱いAが前で引っ張られる形になります。
2つの物体をまとめて考えると、合計のブレーキ力によって全体の減速(加速度)が決まります。その加速度を使って、ひもがどれくらいの力で引っ張り合っているか(張力)を計算しました。

結論と吟味

張力 \(T\) は正の値となり、摩擦係数 \(\mu_{\text{A}}’\) に比例しています。摩擦が大きいほど強く引っ張り合うことになり、物理的に妥当です。

解答 (3) \(2\mu_{\text{A}}’ mg\)

問(4)

思考の道筋とポイント
物体Bにはたらく摩擦力がした仕事を求めます。
仕事は「力 \(\times\) 移動距離」で求まります。
物体Bにはたらく動摩擦力の大きさは既に分かっているので、あとは停止するまでの移動距離 \(l\) を求めればよいです。
問(3)で求めた加速度 \(\alpha\) と、等加速度直線運動の公式を利用します。

この設問における重要なポイント

  • 仕事の定義: 力 \(F\) が一定で、移動方向と逆向きにはたらく場合、仕事は \(W = -Fx\) となります。
  • 移動距離: AとBはひもでつながれているため、停止するまでの移動距離 \(l\) は共通です。

具体的な解説と立式
物体Bにはたらく動摩擦力の大きさ \(f_{\text{B}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
f_{\text{B}} &= \mu_{\text{B}}’ (2m)g \\[2.0ex]
&= 4\mu_{\text{A}}’ (2m)g \\[2.0ex]
&= 8\mu_{\text{A}}’ mg
\end{aligned}
$$
停止するまでの移動距離を \(l\) とします。
初速度 \(v_0\)、加速度 \(\alpha = -3\mu_{\text{A}}’ g\)、末速度 \(0\) なので、公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) より
$$
\begin{aligned}
0^2 – v_0^2 &= 2 \alpha l \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
求める仕事 \(W\) は、摩擦力が移動方向と逆向きにはたらくため負になります。
$$
\begin{aligned}
W &= – f_{\text{B}} l \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
  • 仕事: \(W = Fx \cos\theta\)
計算過程

式⑫より移動距離 \(l\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
– v_0^2 &= 2 (- 3\mu_{\text{A}}’ g) l \\[2.0ex]
l &= \frac{v_0^2}{6 \mu_{\text{A}}’ g}
\end{aligned}
$$
これを式⑬に代入して仕事 \(W\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
W &= – (8\mu_{\text{A}}’ mg) \cdot \left( \frac{v_0^2}{6 \mu_{\text{A}}’ g} \right) \\[2.0ex]
&= – \frac{8}{6} m v_0^2 \\[2.0ex]
&= – \frac{4}{3} m v_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、2つの物体が止まるまでにどれくらい滑るか(距離)を計算しました。
次に、Bのブレーキ(摩擦力)がその距離の間にどれだけのエネルギーを奪ったか(仕事)を計算しました。力と距離を掛け算するだけのシンプルな計算です。

結論と吟味

仕事は負の値となり、運動エネルギーを減少させる働きをしていることが分かります。大きさは初運動エネルギーのオーダー(\(mv_0^2\))と一致しており、次元も正しいです。

解答 (4) \(\displaystyle – \frac{4}{3} m v_0^2\)
別解1: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分と仕事の定義)

思考の道筋とポイント
(3)と(4)を一連の流れとして捉え、系全体の運動方程式からエネルギー原理を導出し、仕事を計算します。
個別の張力を求める必要がなく、全体としてのエネルギー収支から直接的に解を導くことができます。

この設問における重要なポイント

  • 系全体の運動方程式: 内力(張力)は相殺されるため、外力(摩擦力)のみを考慮します。
  • エネルギー原理の導出: 運動方程式を位置で積分することで、エネルギー保存則(機能原理)が得られます。

具体的な解説と立式
AとBを一体の系(全質量 \(M_{\text{全}} = m + 2m = 3m\))とみなします。
系全体にはたらく外力(水平方向)は、Aの動摩擦力 \(f_{\text{A}}\) とBの動摩擦力 \(f_{\text{B}}\) のみです(張力は内力なので相殺されます)。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{外}} &= – f_{\text{A}} – f_{\text{B}} \\[2.0ex]
&= – \mu_{\text{A}}’ mg – 8\mu_{\text{A}}’ mg \\[2.0ex]
&= – 9\mu_{\text{A}}’ mg
\end{aligned}
$$
系の運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
3m \frac{dv}{dt} &= – 9\mu_{\text{A}}’ mg
\end{aligned}
$$
ここで、加速度 \(\frac{dv}{dt}\) を位置 \(x\) での微分に変換する関係式 \(\frac{dv}{dt} = \frac{dv}{dx} \frac{dx}{dt} = v \frac{dv}{dx}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
3m v \frac{dv}{dx} &= – 9\mu_{\text{A}}’ mg
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 微分の連鎖律: \(\frac{dv}{dt} = v \frac{dv}{dx}\)
  • 仕事の定義: \(W = \int F dx\)
計算過程

変数分離して、初速度 \(v_0\) から停止(速度 \(0\))まで、位置 \(0\) から \(l\) まで積分します。
$$
\begin{aligned}
\int_{v_0}^{0} 3m v \, dv &= \int_{0}^{l} (- 9\mu_{\text{A}}’ mg) \, dx \\[2.0ex]
\left[ \frac{1}{2} (3m) v^2 \right]_{v_0}^{0} &= \left[ – 9\mu_{\text{A}}’ mg x \right]_{0}^{l} \\[2.0ex]
0 – \frac{3}{2} m v_0^2 &= – 9\mu_{\text{A}}’ mg l
\end{aligned}
$$
これより停止距離 \(l\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{3 m v_0^2}{18 \mu_{\text{A}}’ mg} \\[2.0ex]
&= \frac{v_0^2}{6 \mu_{\text{A}}’ g}
\end{aligned}
$$
求める仕事 \(W\) は、Bの摩擦力 \(f_{\text{B}} = 8\mu_{\text{A}}’ mg\) が距離 \(l\) で行う仕事なので、定義通り積分(定数なので積)します。
$$
\begin{aligned}
W &= \int_{0}^{l} (- f_{\text{B}}) \, dx \\[2.0ex]
&= – f_{\text{B}} l \\[2.0ex]
&= – (8\mu_{\text{A}}’ mg) \cdot \frac{v_0^2}{6 \mu_{\text{A}}’ g} \\[2.0ex]
&= – \frac{4}{3} m v_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力=質量×加速度」という運動のルールを、距離について積み重ねる(積分する)と、「エネルギーの変化=仕事」というルールに変身します。
これを使って、全体のエネルギーが摩擦によってゼロになるまでの距離を計算し、その距離を使ってBの摩擦力がした仕事を求めました。

結論と吟味

運動方程式を空間積分することで、エネルギーの変化と仕事の関係(機能原理)が自然に導かれました。
この方法は、力が位置によって変化する場合など、より複雑な問題にも応用できる強力な手法です。

解答 (4) \(\displaystyle – \frac{4}{3} m v_0^2\)
別解2: 仕事の配分比を用いた解法

思考の道筋とポイント
系全体が停止するまでに失った運動エネルギー(=外力がした全仕事)を求め、それを各摩擦力の大きさの比で配分します。
移動距離が共通であるため、仕事の大きさは力の大きさに比例します。

この設問における重要なポイント

  • 全仕事: 系全体の運動エネルギーの変化量に等しいです。
  • 仕事の配分: \(W = Fx\) において \(x\) が共通なので、仕事の比は力の比 \(F\) に等しくなります。

具体的な解説と立式
系全体の初めの運動エネルギー \(K_{\text{全}}\) は
$$
\begin{aligned}
K_{\text{全}} &= \frac{1}{2} m v_0^2 + \frac{1}{2} (2m) v_0^2 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} m v_0^2
\end{aligned}
$$
停止するまでに、このエネルギーは全てAとBの動摩擦力の仕事によって消費されます。
AとBにはたらく動摩擦力の大きさの比は
$$
\begin{aligned}
f_{\text{A}} : f_{\text{B}} &= \mu_{\text{A}}’ mg : \mu_{\text{B}}’ (2m)g \\[2.0ex]
&= \mu_{\text{A}}’ mg : 4\mu_{\text{A}}’ (2m)g \\[2.0ex]
&= 1 : 8
\end{aligned}
$$
移動距離は同じなので、仕事の比も \(W_{\text{A}} : W_{\text{B}} = 1 : 8\) となります。

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
  • 仕事の比: \(W_1 : W_2 = F_1 : F_2\) (距離一定)
計算過程

Bの摩擦力がした仕事 \(W\) は、全仕事(失われた全エネルギーの負の値)の \(\frac{8}{1+8}\) 倍となります。
$$
\begin{aligned}
W &= – K_{\text{全}} \times \frac{8}{9} \\[2.0ex]
&= – \left( \frac{3}{2} m v_0^2 \right) \times \frac{8}{9} \\[2.0ex]
&= – \frac{4}{3} m v_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの物体が持っていた合計のエネルギーが、摩擦によってゼロになりました。
摩擦力の強さはBの方がAの8倍なので、エネルギーを奪う仕事もBの方が8倍多く担当したことになります。
全体のエネルギーを計算し、それを1:8に分けることで、Bが奪ったエネルギー(仕事)を計算しました。

結論と吟味

非常に少ない計算量で答えにたどり着けました。検算としても非常に有効です。

解答 (4) \(\displaystyle – \frac{4}{3} m v_0^2\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動方程式と等加速度運動の連携
    • 核心: 物体の運動を解析する際、まず運動方程式 \(ma=F\) から加速度 \(a\) を求め、それを等加速度運動の公式(\(v=v_0+at\), \(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\), \(v^2-v_0^2=2ax\))に代入するという一連の流れが基本となります。
    • 理解のポイント:
      • 力が一定ならば加速度も一定となり、等加速度運動の公式が使えます。
      • 動摩擦力は \(\mu’N\) で一定なので、この条件を満たします。
  • エネルギーと仕事の関係(機能原理)
    • 核心: 物体の運動エネルギーの変化量は、その間に物体にはたらく力がした仕事に等しい(\(\Delta K = W\))という原理です。
    • 理解のポイント:
      • 時間や加速度を問われない場合、この原理を使うと計算が大幅に短縮できます。
      • 摩擦力のような非保存力が仕事をする場合、力学的エネルギーは保存されませんが、この関係式は常に成立します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 連結物体の運動: 列車やトレーラーなど、複数の物体がつながって動く問題。本問の(3)のように、全体の運動方程式と個別の運動方程式を使い分けることが鍵です。
    • 摩擦のある面での停止距離: 車のブレーキ痕から速度を推定する問題など。エネルギー原理 \( \frac{1}{2}mv^2 = \mu’ mg x \) を使うと一発で解けます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「時間」が必要か?: 時間 \(t\) を求める、あるいは \(t\) が与えられているなら運動方程式と等加速度運動の公式を使います。
    2. 「距離」と「速さ」の関係か?: 時間が関係ないなら、エネルギーと仕事の関係(または \(v^2-v_0^2=2ax\))を使うと速いです。
    3. 連結されているか?: 複数の物体がある場合、まずは「全体を一つの物体」とみなして全体の加速度を求め、その後に「個別の物体」に着目して張力などの内力を求めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 動摩擦力の向きと符号のミス:
    • 誤解: 摩擦力は常に「進行方向」にはたらく、あるいは符号を適当につけてしまう。
    • 対策: 動摩擦力は必ず「接触面に対して滑る方向と逆向き」にはたらきます。運動方程式を立てる際は、正の向き(運動方向)と逆なのでマイナスをつけることを徹底しましょう。
  • 仕事の符号のミス:
    • 誤解: 仕事 \(W=Fx\) の計算で、力が逆向きなのにマイナスをつけ忘れる。
    • 対策: 仕事はスカラー量ですが、エネルギーを増やす(正)か減らす(負)かは重要です。力が移動方向と逆なら「負の仕事」となり、エネルギーを奪います。計算結果が負になることを確認しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)での公式選択(等加速度運動 vs エネルギー原理):
    • 選定理由: 模範解答(等加速度運動)は基本に忠実で汎用性が高いですが、別解(エネルギー原理)は加速度を計算するステップを省略できるため、計算ミスが減り、解答速度が上がります。
    • 適用根拠: 始状態(初速度あり)と終状態(停止)のエネルギー差が、摩擦力の仕事に等しいという物理的状況が明確であるため適用可能です。
  • 問(4)での公式選択(仕事の定義 vs 配分比):
    • 選定理由: 定義通りに \(W=Fx\) で計算するのは確実ですが、配分比を用いる方法は「全体のエネルギーが摩擦で消費される」という全体像が見えている場合に、圧倒的に速く解けます。
    • 適用根拠: 移動距離が共通であるため、仕事の大きさは力の大きさに単純比例するという幾何学的条件が成立しているためです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 意識: 答えの単位が合っているか常に確認します。
    • 実践: 例えば時間の答えが \(\frac{v}{g}\) なら \([L/T] / [L/T^2] = [T]\) で秒の次元になります。もし \(\frac{g}{v}\) になっていたら逆数なので間違いです。仕事の答えは \(mv^2\) の形(エネルギーの次元)になっているか確認します。
  • 比の計算の活用:
    • 意識: 具体的な数値を代入する前に、比の関係を使って計算を簡略化します。
    • 実践: 問(2)や問(4)別解のように、「質量が2倍、速度が2倍ならエネルギーは \(2 \times 2^2 = 8\) 倍」といった比例関係を使うと、複雑な分数計算を回避できます。
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問題29 あらい水平面上の物体の運動 (24 佐賀大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(7)の別解1: 等加速度運動の公式を用いた解法
      • 模範解答の別解にもある通り、エネルギーと仕事の関係式を経由せず、等加速度運動の公式から直接速度を求め、運動エネルギーの変化量を計算します。
    • 設問(6)(7)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分による一括導出)
      • 個別の物体ではなく系全体(A+B)の運動方程式を立て、それを時間積分および空間積分することで、速度、変位、そしてエネルギーの変化量を体系的かつ一括して導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 等加速度運動の解法: 力学的エネルギーの概念を使わずに、運動学の基本公式だけで解けることを確認し、複数のアプローチを持つことで検算能力を高めます。
    • 微積分の解法: 運動方程式 \(F=ma\) が全ての力学現象の出発点であることを再確認し、そこから速度 \(v\)、変位 \(x\)、仕事 \(W\)、エネルギー \(E\) がどのように数学的に派生してくるのかという物理学の体系的な構造を深く理解するのに役立ちます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「あらい水平面上での物体の運動と摩擦力、およびエネルギー収支」です。
静止摩擦力と動摩擦力の違い、複数の物体が連動して動く際の運動方程式の立て方、そして非保存力(摩擦力)が仕事をする場合のエネルギー変化について学びます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 静止摩擦力: 物体が動き出すのを妨げる力で、外力とつりあう大きさになります。最大値は \(F_0 = \mu N\) です。
  • 動摩擦力: 物体が滑っているときにはたらく一定の力で、大きさは \(F’ = \mu’ N\) です。
  • 運動方程式: 物体の加速度と力の間には \(ma = F\) の関係が成り立ちます。
  • エネルギーと仕事の関係: 物体系の力学的エネルギーの変化量は、非保存力がした仕事に等しくなります(\(\Delta E = W_{\text{非保存力}}\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、静止している状態での力のつりあいを考え、静止摩擦力が最大静止摩擦力を超えない条件から摩擦係数の範囲を求めます。
  • (3)〜(6)では、糸を切った後の運動について、各物体の運動方程式を立てて加速度を求め、等加速度運動の公式から変位を計算します。
  • (7)では、エネルギーと仕事の関係(機能原理)を用いて、力学的エネルギーの変化量を摩擦力の仕事から求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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