「物理重要問題集2026」徹底解説(148〜150問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題148 電子の比電荷の測定 (24 京都産業大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(オ)の別解1: 幾何学的性質(見かけの偏向点)を用いた解法
      • 模範解答が電場内での変位 \(y_1\) と電場通過後の変位 \(y_2\) を個別に計算して足し合わせるのに対し、別解1では電場内での放物運動の接線の性質を利用し、電極中央から直接蛍光面に向かって等速直線運動したとみなして一気に全体の変位 \(y\) を求めます。
    • 設問(ア)〜(オ)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 等加速度直線運動の公式を前提とせず、運動方程式から出発して速度と位置を時間積分によって導出する原理的なアプローチをとります。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 幾何学的解法: 計算量が大幅に削減され、計算ミスを防ぐとともに、ブラウン管(CRT)などの電子線の偏向問題における強力な実戦テクニックとなります。
    • 微積分の解法: 公式の丸暗記から脱却し、力が時間的に変化するようなより複雑な設定にも対応できる普遍的な物理的思考力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電場および磁場中における荷電粒子の運動と比電荷の測定」です。J.J. トムソンが行った歴史的な実験を題材に、電子の軌道を追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動の独立性: \(x\) 軸方向(力がはたらかない)と \(y\) 軸方向(一定の力がはたらく)の運動を独立して扱います。
  • 静電気力とローレンツ力: 電場からは \(F = qE\)、磁場からは \(F = qvB\) の力を受けます。電子は負電荷であるため、力の向きに注意が必要です。
  • 力のつりあい: 粒子が直進する条件は、進行方向と垂直な方向にはたらく合力が \(0\) になることです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 前半(ア〜オ)では、電場のみが存在する空間での放物運動と、その後の等速直線運動を解析し、蛍光面でのずれ \(y\) を計算します。
  • 後半(カ〜キ)では、電場と磁場が直交する空間で粒子が直進する条件から、粒子の速さ \(v\) を求めます。

問(ア)

思考の道筋とポイント
極板間に電圧 \(V\) をかけると、一様な電場が生じます。この電場から電子が受ける静電気力を求め、運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 一様電場の強さ: 極板間隔 \(d\)、電圧 \(V\) のとき、電場の強さは \(E = \frac{V}{d}\) です。
  • 静電気力: 電荷 \(q\) が電場 \(E\) から受ける力は \(F = qE\) です。電子は負電荷なので、電場と逆向きに力を受けます。

具体的な解説と立式
図1および模範解答の図aより、電場は \(y\) 軸の負の向き(下向き)です。
電子の電気量は \(-e\) なので、電子が受ける静電気力 \(F_{\text{静電気}}\) は \(y\) 軸の正の向き(上向き)にはたらきます。
\(y\) 軸方向の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
ma &= F_{\text{静電気}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 一様電場: \(E = \frac{V}{d}\)
  • 静電気力: \(F = qE\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

静電気力の大きさは以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{静電気}} &= eE \\[2.0ex]
&= e \frac{V}{d}
\end{aligned}
$$
これを運動方程式に代入します。
$$
\begin{aligned}
ma &= e \frac{V}{d} \\[2.0ex]
a &= \frac{eV}{md}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

極板の間には、電圧によって「電気の坂道(電場)」ができています。電子はこの坂道から力を受けて、上に向かってどんどん加速していきます。その加速の度合い(加速度)を、ニュートンの運動方程式を使って求めました。

結論と吟味

加速度 \(a\) は電圧 \(V\) に比例し、質量 \(m\) や極板間隔 \(d\) に反比例します。電圧が高いほど、また極板が狭いほど電場が強くなり、加速度が大きくなるため物理的に妥当です。

解答 (ア) \(\displaystyle\frac{eV}{md}\)

問(イ)

思考の道筋とポイント
電子は \(x\) 軸方向には力を受けないため等速直線運動をし、\(y\) 軸方向には問(ア)で求めた一定の加速度で運動します。電極を通過するまでの時間 \(t_1\) を用いて、\(y\) 軸方向の変位を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 運動の独立性: \(x\) 軸方向の等速運動と \(y\) 軸方向の等加速度運動は独立して扱えます。
  • 等加速度直線運動の変位: 初速度 \(0\) の場合、変位は \(y = \frac{1}{2}at^2\) となります。

具体的な解説と立式
\(y\) 軸方向の初速度は \(0\) です。
時間 \(t_1\) の間の \(y\) 軸方向の変位 \(y_1\) は、等加速度直線運動の公式より次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{1}{2} a t_1^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
計算過程

問題文より \(t_1 = \frac{l}{v}\) です。これを代入します。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{1}{2} a \left( \frac{l}{v} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{al^2}{2v^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子は横方向には一定のスピードで進みながら、縦方向にはどんどん加速して上にずれていきます。横方向に極板の長さ分だけ進むのにかかる時間を計算し、その時間の間に縦方向にどれだけ移動したかを公式に当てはめて求めました。

結論と吟味

変位 \(y_1\) は極板の長さ \(l\) の2乗に比例し、初速 \(v\) の2乗に反比例します。ゆっくり飛ぶ(\(v\) が小さい)ほど、または極板が長い(\(l\) が大きい)ほど、電場の中にいる時間が長くなり、大きく曲げられることを示しており妥当です。

解答 (イ) \(\displaystyle\frac{al^2}{2v^2}\)

問(ウ)

思考の道筋とポイント
電極を抜ける瞬間の、\(y\) 軸方向の速度成分を求めます。これも等加速度直線運動の公式を用います。

この設問における重要なポイント

  • 等加速度直線運動の速度: 初速度 \(0\) の場合、速度は \(v = at\) となります。

具体的な解説と立式
時間 \(t_1\) 後の \(y\) 軸方向の速度 \(v_y\) は、等加速度直線運動の公式より次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
v_y &= a t_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度: \(v = v_0 + at\)
計算過程

問(ア)で求めた \(a = \frac{eV}{md}\) と、\(t_1 = \frac{l}{v}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_y &= \frac{eV}{md} \cdot \frac{l}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{eVl}{mdv}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電場の中にいる間、電子は上向きにずっと加速され続けます。電場を抜ける瞬間に、上向きのスピードがどれくらいに達しているかを計算しました。

結論と吟味

速度 \(v_y\) は電場内にいる時間 \(l/v\) に比例して大きくなります。物理的な直感と一致します。

解答 (ウ) \(\displaystyle\frac{eVl}{mdv}\)

問(エ)

思考の道筋とポイント
電極を抜けた後、電子には力がはたらかないため、\(x\) 軸方向にも \(y\) 軸方向にも等速直線運動をします。この間の \(y\) 軸方向の移動距離を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 慣性の法則: 力がはたらかない空間では、物体は等速直線運動を続けます。

具体的な解説と立式
電極を抜けてから蛍光面に達するまでの時間は \(t_2 = \frac{L – l/2}{v}\) です。
この間、\(y\) 軸方向の速度は \(v_y\) で一定なので、移動距離 \(y_2\) は「速さ \(\times\) 時間」で立式できます。
$$
\begin{aligned}
y_2 &= v_y t_2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の距離: \(x = vt\)
計算過程

\(t_2\) の式を代入します。
$$
\begin{aligned}
y_2 &= v_y \left( \frac{L – l/2}{v} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2L – l}{2v} v_y
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電場を抜けた電子は、もう力を受けないので、その時点でのスピードと向きを保ったまま真っ直ぐ飛んでいきます。蛍光面にぶつかるまでの時間を計算し、その間に上方向にどれだけ進むかを求めました。

結論と吟味

距離 \(L\) が大きいほど、等速で飛ぶ時間が長くなるため \(y_2\) も大きくなります。妥当な結果です。

解答 (エ) \(\displaystyle\frac{2L-l}{2v} v_y\)

問(オ)

思考の道筋とポイント
蛍光面での全体のずれ \(y\) は、電場内でのずれ \(y_1\) と、電場を出てからのずれ \(y_2\) の和です。これを計算し、比電荷 \(\frac{e}{m}\) について解きます。

この設問における重要なポイント

  • 全変位の合成: \(y = y_1 + y_2\)

具体的な解説と立式
全体の変位 \(y\) は次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
y &= y_1 + y_2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 特になし
計算過程

問(イ)の \(y_1\) と問(エ)の \(y_2\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{al^2}{2v^2} + \frac{2L – l}{2v} v_y
\end{aligned}
$$
ここで、\(a = \frac{eV}{md}\)、\(v_y = \frac{eVl}{mdv}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{1}{2} \left( \frac{eV}{md} \right) \frac{l^2}{v^2} + \frac{2L – l}{2v} \left( \frac{eVl}{mdv} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eVl^2}{2mdv^2} + \frac{eVl(2L – l)}{2mdv^2} \\[2.0ex]
&= \frac{eVl^2 + 2eVlL – eVl^2}{2mdv^2} \\[2.0ex]
&= \frac{2eVlL}{2mdv^2} \\[2.0ex]
&= \frac{eVlL}{mdv^2}
\end{aligned}
$$
この式を比電荷 \(\frac{e}{m}\) について解きます。両辺に \(\frac{dv^2}{VlL}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\frac{e}{m} &= \frac{ydv^2}{VlL}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電場の中で曲がった距離と、電場を出てから真っ直ぐ飛んでずれた距離を足し合わせることで、最終的に蛍光面でどれだけ中心からずれたかを計算しました。その結果の式を「電子の電荷と質量の比(比電荷)」について整理し直しました。

結論と吟味

比電荷 \(\frac{e}{m}\) は、測定可能な幾何学的寸法(\(d, l, L, y\))と設定電圧 \(V\)、および粒子の速さ \(v\) で表されました。これがトムソンが比電荷を測定した基本原理です。

解答 (オ) \(\displaystyle\frac{ydv^2}{VlL}\)

 

別解: 幾何学的性質(見かけの偏向点)を用いた解法

思考の道筋とポイント
電場内での放物運動の軌跡に引いた接線に関する幾何学的な性質を利用します。
電場を抜けた点での速度ベクトルの延長線(つまり、電極通過後の直線の軌道を逆向きに延長した線)は、必ず「電場領域の中央(\(x = l/2\))」で \(x\) 軸と交わります。

この設問における重要なポイント

  • 見かけの偏向点: 一様電場による放物運動では、最終的な進行方向の直線は、電場領域の中央から出発したように見えます。

具体的な解説と立式
電極の中心(\(x = l/2\))から蛍光面までの水平距離は \(L\) です。
電子は、あたかもこの中心点から、\(x\) 軸方向の速度 \(v\)、\(y\) 軸方向の速度 \(v_y\) で等速直線運動をして蛍光面に達したかのように振る舞います。
したがって、中心点から蛍光面までの到達時間 \(t_{\text{全}}\) は次のように表せます。
$$
\begin{aligned}
t_{\text{全}} &= \frac{L}{v}
\end{aligned}
$$
この時間で \(y\) 軸方向に速度 \(v_y\) で進むため、全体の変位 \(y\) は次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
y &= v_y t_{\text{全}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の距離: \(x = vt\)
計算過程

\(t_{\text{全}}\) と、問(ウ)で求めた \(v_y = \frac{eVl}{mdv}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
y &= \left( \frac{eVl}{mdv} \right) \left( \frac{L}{v} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eVlL}{mdv^2}
\end{aligned}
$$
これを \(\frac{e}{m}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{e}{m} &= \frac{ydv^2}{VlL}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が電場を抜けた後の真っ直ぐな軌道を後ろに延長すると、ちょうど電極の真ん中から出発したように見えます。これを利用すると、「電極の真ん中から蛍光面まで、ずっと一定のスピードで飛んだ」とみなして計算できるため、面倒な足し算をせずに一発で全体のずれを求めることができます。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。計算量が劇的に減るため、試験本番で非常に有効なテクニックです。

解答 (オ) \(\displaystyle\frac{ydv^2}{VlL}\)

 

別解: 微積分を用いた体系的解法(ア〜オ一括)

思考の道筋とポイント
公式に頼らず、ニュートンの運動方程式から出発し、時間積分によって速度と位置を導出します。

この設問における重要なポイント

  • 速度の定義: \(v_y = \frac{dy}{dt}\)
  • 加速度の定義: \(a_y = \frac{dv_y}{dt}\)

具体的な解説と立式
\(y\) 軸方向の運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv_y}{dt} &= e \frac{V}{d}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(m \frac{dv}{dt} = F\)
  • 積分計算
計算過程

運動方程式の両辺を \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dv_y}{dt} &= \frac{eV}{md}
\end{aligned}
$$
両辺を時間 \(t\) で積分して速度 \(v_y(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= \int \frac{eV}{md} dt \\[2.0ex]
&= \frac{eV}{md} t + C_1 \quad (C_1 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件は \(t=0\) で \(v_y(0) = 0\) なので、\(C_1 = 0\) となり、
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= \frac{eV}{md} t
\end{aligned}
$$
さらにこれを時間 \(t\) で積分して位置 \(y(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \int v_y(t) dt \\[2.0ex]
&= \int \frac{eV}{md} t dt \\[2.0ex]
&= \frac{eV}{2md} t^2 + C_2 \quad (C_2 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件は \(t=0\) で \(y(0) = 0\) なので、\(C_2 = 0\) となり、
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \frac{eV}{2md} t^2
\end{aligned}
$$
電極を抜ける時刻 \(t_1 = \frac{l}{v}\) における速度 \(v_y(t_1)\) と位置 \(y_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_y(t_1) &= \frac{eV}{md} \left( \frac{l}{v} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{eVl}{mdv} \quad \text{(問ウの答え)}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y_1 &= \frac{eV}{2md} \left( \frac{l}{v} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{eVl^2}{2mdv^2} \quad \text{(問イの答え)}
\end{aligned}
$$
時刻 \(t_1\) 以降は力がはたらかないため、速度 \(v_y(t_1)\) での等速直線運動となります。
蛍光面に達する時刻を \(t_{\text{終}}\) とすると、\(x\) 軸方向の移動距離から、
$$
\begin{aligned}
t_{\text{終}} &= \frac{l/2 + L}{v}
\end{aligned}
$$
電極を抜けてから蛍光面に達するまでの時間 \(t_2\) は、
$$
\begin{aligned}
t_2 &= t_{\text{終}} – t_1 \\[2.0ex]
&= \frac{l/2 + L}{v} – \frac{l}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{L – l/2}{v}
\end{aligned}
$$
この間の \(y\) 軸方向の移動距離 \(y_2\) は、
$$
\begin{aligned}
y_2 &= v_y(t_1) \cdot t_2 \\[2.0ex]
&= \frac{eVl}{mdv} \left( \frac{L – l/2}{v} \right) \quad \text{(問エの答え)}
\end{aligned}
$$
全体の変位 \(y\) は \(y_1 + y_2\) であり、これを計算するとメイン解法と同様に \(y = \frac{eVlL}{mdv^2}\) となり、比電荷が求まります。

この設問の平易な説明

「加速度が一定ならこの公式」と暗記に頼るのではなく、「力から加速度が決まり、加速度を足し合わせる(積分する)と速度になり、速度を足し合わせると距離になる」という物理の基本ルールに沿って、最初から最後まで計算で導き出しました。

結論と吟味

微積分を用いることで、公式の適用条件を気にすることなく、原理から確実に各物理量を導出できることが確認できました。

解答 (オ) \(\displaystyle\frac{ydv^2}{VlL}\)

問(カ)

思考の道筋とポイント
磁場中を運動する荷電粒子にはたらくローレンツ力の大きさを求めます。

この設問における重要なポイント

  • ローレンツ力の大きさ: 磁束密度 \(B\) の磁場中を、電気量 \(q\) の粒子が速さ \(v\) で磁場と垂直に運動するとき、受ける力の大きさは \(F = qvB\) です。

具体的な解説と立式
電子の電気量の大きさは \(e\)、速さは \(v\)、磁束密度の大きさは \(B\) です。
速度ベクトルと磁場ベクトルは直交しているため、ローレンツ力の大きさ \(F_{\text{ローレンツ}}\) は次のように立式できます。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{ローレンツ}} &= evB
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ローレンツ力: \(F = qvB\)
計算過程

代入するだけなので、計算過程は特にありません。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{ローレンツ}} &= evB
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

磁石が作る磁場の中を電子が飛ぶと、進行方向を曲げようとする力(ローレンツ力)を受けます。その力の大きさは、電子の持つ電気の量、飛ぶスピード、そして磁場の強さをすべて掛け合わせたものになります。

結論と吟味

速さ \(v\) や磁場 \(B\) が大きいほど強い力を受けるという、ローレンツ力の性質を正しく表しています。

解答 (カ) \(evB\)

問(キ)

思考の道筋とポイント
粒子が直進するためには、\(y\) 軸方向にはたらく力がつりあっている必要があります。電場による静電気力と磁場によるローレンツ力の向きと大きさを比較し、力のつりあいの式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 力の向きの判定:
    • 静電気力: 電場は下向き、電子は負電荷なので、静電気力は上向きです。
    • ローレンツ力: 速度は右向き、磁場は紙面表から裏向き(\(\otimes\))です。電子(負電荷)の運動は左向きの電流と等価です。フレミングの左手の法則(中指:左、人差し指:奥)より、親指は下を向きます。したがって、ローレンツ力は下向きです。
  • 力のつりあい: 直進するということは、\(y\) 軸方向の合力が \(0\) であることを意味します。

具体的な解説と立式
模範解答の図cより、電子には上向きに静電気力 \(F_{\text{静電気}}\)、下向きにローレンツ力 \(F_{\text{ローレンツ}}\) がはたらいています。
粒子が直進するためには、これら2つの力がつりあう必要があります。
(上向きの力の和)=(下向きの力の和)として立式します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{静電気}} &= F_{\text{ローレンツ}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい
計算過程

\(F_{\text{静電気}} = e \frac{V}{d}\)、\(F_{\text{ローレンツ}} = evB\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
e \frac{V}{d} &= evB
\end{aligned}
$$
両辺の \(e\) を消去し、\(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{V}{d} &= vB \\[2.0ex]
v &= \frac{V}{Bd}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電場は電子を上に曲げようとし、磁場は電子を下に曲げようとします。電子が真っ直ぐ飛ぶということは、この「上へ引っ張る力」と「下へ引っ張る力」が綱引きで完全に引き分けになっている状態です。この引き分けの条件から、電子のスピードを逆算しました。

結論と吟味

速さ \(v\) は電場の強さ \(E = V/d\) に比例し、磁束密度 \(B\) に反比例します。これは「速度選択器」と呼ばれる装置の基本原理であり、特定の速さを持つ粒子だけを直進させて取り出すことができることを示しています。

解答 (キ) \(\displaystyle\frac{V}{Bd}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動の独立性と放物運動
    • 核心: 電場内での電子の運動は、力がはたらかない \(x\) 軸方向の等速直線運動と、一定の静電気力がはたらく \(y\) 軸方向の等加速度直線運動に完全に分離して考えることができます。
    • 理解のポイント:
      • 重力による放物運動(水平投射)と全く同じ数学的構造を持っています。質量 \(m\) が電気量 \(e\) に、重力加速度 \(g\) が電場による加速度 \(a = eV/md\) に置き換わっただけです。
      • 「横に進む時間」が「縦に加速する時間」を決めるという、2つの運動を繋ぐ架け橋が「時間 \(t\)」であることを意識しましょう。
  • ローレンツ力と力のつりあい(速度選択器の原理)
    • 核心: 電場と磁場を直交させてかけると、荷電粒子には互いに逆向きの静電気力とローレンツ力がはたらきます。これらがつりあう条件 \(qE = qvB\) を満たす特定の速さ \(v = E/B\) の粒子だけが直進できます。
    • 理解のポイント:
      • 静電気力 \(qE\) は粒子の速さに依存しませんが、ローレンツ力 \(qvB\) は速さに比例します。
      • この性質を利用することで、未知の速さ \(v\) を、測定可能な電場 \(E\) と磁場 \(B\) の強さから逆算することができます。これがJ.J. トムソンの比電荷測定実験の最大のブレイクスルーでした。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ブラウン管(CRT)やオシロスコープの原理: 電子線を電極で偏向させ、蛍光面に図形を描く問題です。本問と全く同じ設定であり、「見かけの偏向点(極板の中央)」のテクニックが絶大な威力を発揮します。
    • 質量分析器: 速度選択器で特定の速さの粒子を取り出した後、一様磁場のみの空間に入れて円運動させ、その半径から質量(または同位体)を特定する問題です。本問の後半(直進条件)が、質量分析器の前半部分としてそのまま出題されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 力の種類と向きをリストアップする: 空間に電場があるか、磁場があるか、あるいは両方あるかを確認し、粒子が受ける力(静電気力、ローレンツ力、重力など)をすべて図に矢印で書き込みます。特に負電荷(電子など)の場合は、電場と逆向き、フレミングの法則の電流の向きが逆になることに細心の注意を払います。
    2. 運動を成分に分解する: 力がはたらく方向(加速度運動)と、力がはたらかない方向(等速運動)を見極め、それぞれの方向について独立した式(運動方程式や等速直線運動の式)を立てます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 負電荷の力の向きの判定ミス:
    • 誤解: 電場の向き(矢印の向き)にそのまま静電気力がはたらくと思い込んだり、フレミングの左手の法則を適用する際に、電子の飛ぶ向きをそのまま電流の向きとして中指を合わせてしまう。
    • 対策: 「電子はひねくれ者」と覚えましょう。電場からは矢印と逆向きに力を受け、磁場中では進行方向と逆向きに電流が流れているとみなして左手を合わせる習慣を徹底してください。
  • 電場内と電場外の運動の混同:
    • 誤解: 電極を抜けた後も、ずっと放物線を描いて曲がり続ける(加速度運動が続く)と勘違いし、蛍光面までの全距離 \(L\) を使って \(y = \frac{1}{2}a(L/v)^2\) のように計算してしまう。
    • 対策: 「力がはたらくのは極板の間だけ」という境界線を明確に意識しましょう。極板を抜けた瞬間に力はゼロになり、そこから先は「その瞬間のスピードと向きを保ったままの等速直線運動(慣性の法則)」に切り替わることを図に書き込んで区別してください。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 等加速度直線運動の公式群:
    • 選定理由: 電場が一様(どこでも同じ強さ)であり、電子が受ける静電気力が一定であるため、加速度が一定の運動になるからです。
    • 適用根拠: 運動方程式 \(ma = F\) において、右辺の力 \(F\) が時間や位置によって変化しない定数である場合のみ、これらの公式が適用できます。
  • 見かけの偏向点を用いた幾何学的解法(別解):
    • 選定理由: 電場内での変位 \(y_1\) と電場外での変位 \(y_2\) を別々に計算して足し合わせる手間を省き、計算ミスを減らすためです。
    • 適用根拠: 一様な力による放物運動において、初速度の方向(\(x\) 軸)と最終的な速度ベクトルの延長線が交わる点は、常に力がはたらいていた区間の中点になるという数学的性質に基づいています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元(単位)チェック:
    • 意識: 複雑な文字式を導出した後は、必ず両辺の単位が一致しているかを確認します。
    • 実践: 例えば問(ア)の加速度 \(a = eV/md\) であれば、\(e\) \([\text{C}]\), \(V\) \([\text{J}/\text{C}]\), \(m\) \([\text{kg}]\), \(d\) \([\text{m}]\) より、\([\text{C}] \cdot [\text{J}/\text{C}] / ([\text{kg}] \cdot [\text{m}]) = [\text{J}] / ([\text{kg}] \cdot [\text{m}]) = [\text{kg} \cdot \text{m}^2/\text{s}^2] / ([\text{kg}] \cdot [\text{m}]) = [\text{m}/\text{s}^2]\) となり、正しく加速度の次元になっていることが確認できます。
  • 極限状態での定性的な検算:
    • 意識: 求めた式が、物理的な直感と矛盾しないかをチェックします。
    • 実践: 問(オ)の変位 \(y = eVlL / mdv^2\) において、「もし電子がものすごく速かったら(\(v \to \infty\))?」と考えます。速ければ一瞬で通り過ぎるので曲がらないはずです。式を見ると分母に \(v^2\) があるため、\(v\) が大きくなると \(y\) は \(0\) に近づき、直感と一致します。
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問題149 ミリカンの実験 (19 同志社大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(エ)〜(カ)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 模範解答が「終端速度に達すると加速度が \(0\) になる(力がつりあう)」という物理的直感を前提としているのに対し、別解では運動方程式を時間積分して速度の時間変化を表す一般解を求め、時間が十分に経過した極限(\(t \to \infty\))として終端速度を数学的に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 「なぜ終端速度に近づくのか」という過渡的な状態変化を数式で追跡できるため、空気抵抗を受ける運動の深い理解に繋がり、大学物理へのスムーズな橋渡しとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ミリカンの油滴実験による電気素量の測定と光電効果」です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 光子のエネルギー:波長 \(\lambda\) の光子は \(E = hc/\lambda\) のエネルギーを持ちます。
  • 力のつりあいと運動方程式:電場中の帯電微粒子にはたらく重力、静電気力、空気抵抗力の関係を立式します。
  • 終端速度:空気抵抗力が速度に比例する場合、十分に時間が経過すると力がつりあい、一定の速度(終端速度)に達します。
  • 電荷の量子化:帯電体が持つ電気量は、電気素量 \(e\) の整数倍になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (ア)では、光電効果の条件式から波長の最大値を求めます。
  • (イ)〜(ウ)では、静電気力の基本公式と力のつりあいから電場の強さを求めます。
  • (エ)〜(カ)では、上昇時と落下時の運動方程式および力のつりあいから、未知の質量 \(m\) を消去して電気量 \(q\) を導出します。
  • (キ)では、複数の測定値とその差から最大公約数的な値を推定し、電気素量を計算します。

問(ア)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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