「物理重要問題集2026」徹底解説(145〜147問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題145 電気振動 (18 東京農工大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問[B]の別解1: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式と単振動)
      • 模範解答が物理量のアナロジー(類推)で解くのに対し、別解1ではキルヒホッフの法則から回路方程式(微分方程式)を立式し、それを数学的に解くことで電荷や電流の振る舞い、周期、エネルギー保存則を原理から導きます。
    • 設問[B](3)の別解2: リアクタンスを用いた解法
      • 交流回路の知識を応用し、コイルとコンデンサーの電圧の最大値が等しい条件から、リアクタンスの式を用いて周期を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: アナロジーに頼らず、物理現象を支配する基本方程式から全ての挙動を予言できるため、応用力と物理的理解が深まります。
    • リアクタンスの解法: 計算量が非常に少なく、検算テクニックとしても極めて有効です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「LC回路における電気振動」です。コンデンサーの充放電から始まり、コイルを含む回路でのエネルギーのやり取り(振動現象)を扱います。力学のばね振り子との類似性(アナロジー)に着目することで、現象を直感的に理解することができます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定常状態の回路: 直流回路において、十分時間が経過するとコンデンサーは充電完了(電流 \(0\))、コイルは単なる導線(電圧降下 \(0\))とみなせます。
  2. エネルギー保存則: 抵抗で熱が発生しない場合(LC回路など)、コンデンサーの静電エネルギーとコイルの磁気エネルギーの総和は保存されます。
  3. 電気振動と単振動の対応: 電気量 \(Q\) は変位 \(x\)、電流 \(I\) は速度 \(v\)、自己インダクタンス \(L\) は質量 \(m\)、電気容量の逆数 \(1/C\) はばね定数 \(k\) に対応します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A]では、スイッチ操作直後と十分時間後の回路の状態(電流、電圧)をキルヒホッフの法則を用いて解析します。
  2. [B]では、LC回路のエネルギー保存則を立式し、力学系との対応関係から周期などを導きます。最後にグラフを描くことで現象の時間変化を可視化します。

問[A](1)

思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1\) を閉じた「直後」の状態を考えます。
問題文に「最初、コンデンサーに蓄えられている電気量 \(Q\) は \(0\) である」とあります。
電荷を持たないコンデンサーにおける電圧降下はどうなるか、がポイントです。

この設問における重要なポイント

  • 未帯電コンデンサーの振る舞い: 電荷 \(Q=0\) のとき、極板間電圧 \(V_{\text{C}} = Q/C = 0\) となります。つまり、スイッチを入れた瞬間、コンデンサーは電圧降下のない「導線」と同じように電流を通します。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_1\) を閉じた直後の回路(図a)を考えます。
コンデンサーの電荷 \(Q=0\) より、極板間電圧 \(V_{\text{C}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{C}} &= \frac{Q}{C}
\end{aligned}
$$
このとき、回路は「起電力 \(E\) の電源」「抵抗 \(R\)」「導線(コンデンサー部分)」が直列につながった状態とみなせます。
キルヒホッフの第2法則(電圧則)を、電流 \(I_1\) の向き(時計回り)に一周して立式します。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力の和}) &= (\text{電圧降下の和}) \\[2.0ex]
E &= R I_1 + V_{\text{C}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • キルヒホッフの第2法則: \(V = RI\)
計算過程

\(Q=0\) より \(V_{\text{C}} = 0\) となります。
これをキルヒホッフの式に代入して \(I_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= R I_1 + 0 \\[2.0ex]
R I_1 &= E \\[2.0ex]
I_1 &= \frac{E}{R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、コンデンサーにはまだ電気が溜まっていないため、電圧がかかりません。電気的な「壁」がない状態なので、電流は抵抗 \(R\) だけで制限されます。したがって、オームの法則により電流は \(E/R\) となり、コンデンサーの電圧は \(0\) です。

結論と吟味

電流 \(I_1 = E/R\)、電圧 \(V_{\text{C}} = 0\)。
これは抵抗のみの回路と同じ電流値であり、充電開始直後の振る舞いとして妥当です。

解答 (1) \(I_1 = \displaystyle\frac{E}{R}\), \(V_{\text{C}} = 0\)

問[A](2)

思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1\) を閉じて「十分に時間が経過した」状態を考えます。
これは「定常状態」と呼ばれ、コンデンサーへの充電が完了し、回路の状態が変化しなくなった状態を指します。

この設問における重要なポイント

  • 充電完了時の電流: コンデンサーへの充電が終わると、それ以上電荷は移動しないため、電流は流れなくなります(\(I_1 = 0\))。
  • 断線状態: 電流が \(0\) ということは、コンデンサー部分は電気的に切れている(断線している)のと等価です。

具体的な解説と立式
十分に時間が経過したため、電流 \(I_1\) は \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= 0
\end{aligned}
$$
この状態でもキルヒホッフの第2法則は成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E &= R I_1 + V_{\text{C}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

\(I_1 = 0\) を式に代入して \(V_{\text{C}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= R \cdot 0 + V_{\text{C}} \\[2.0ex]
V_{\text{C}} &= E
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

時間が経つとコンデンサーは電気で満タンになり、これ以上電流が流れ込みません。電流がゼロなので、抵抗 \(R\) での電圧降下(\(V=RI\))もゼロになります。その結果、電源の電圧 \(E\) がそのままコンデンサーにかかることになります。

結論と吟味

電流 \(I_1 = 0\)、電圧 \(V_{\text{C}} = E\)。
コンデンサーが電源電圧まで充電されて電流が止まるという、一般的なRC回路の定常状態と一致します。

解答 (2) \(I_1 = 0\), \(V_{\text{C}} = E\)

問[B](1)

思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1\) を開き、\(S_2\) を閉じると、充電されたコンデンサー \(C\) とコイル \(L\) だけの閉回路(LC回路)ができます。
この回路には抵抗がないため、ジュール熱によるエネルギー消費がありません。したがって、回路全体の電磁気的なエネルギーは保存されます。

この設問における重要なポイント

  • 静電エネルギー: コンデンサーに蓄えられるエネルギー \(U_{\text{C}} = \frac{Q^2}{2C}\)。
  • 磁気エネルギー: コイルに流れる電流によって蓄えられるエネルギー \(U_{\text{L}} = \frac{1}{2}LI^2\)。
  • エネルギーの総和: 回路全体のエネルギー \(U\) はこれらの和となります。

具体的な解説と立式
ある時刻において、コンデンサーの電気量が \(Q\)、コイルを流れる電流が \(I_2\) です。
コンデンサーに蓄えられている静電エネルギー \(U_{\text{C}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{C}} &= \frac{Q^2}{2C}
\end{aligned}
$$
コイルに蓄えられている磁気エネルギー \(U_{\text{L}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{L}} &= \frac{1}{2} L I_2^2
\end{aligned}
$$
回路全体のエネルギー \(U\) はこれらの和として立式できます。
$$
\begin{aligned}
U &= U_{\text{C}} + U_{\text{L}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • コンデンサーのエネルギー: \(U = \frac{Q^2}{2C}\)
  • コイルのエネルギー: \(U = \frac{1}{2}LI^2\)
計算過程

各式を代入してまとめます。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2} L I_2^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この回路にはエネルギーを消費する抵抗も、供給する電池もありません(スイッチ操作後は電池は切り離されています)。そのため、コンデンサーに溜まった電気のエネルギーと、コイルを流れる電流のエネルギーの合計は、常に一定に保たれます。ここではその合計の式を書き下しました。

結論と吟味

エネルギーの単位(ジュール)を持つ項の和となっており、形式的に正しいです。

解答 (1) \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2} L I_2^2\)

問[B](2)

思考の道筋とポイント
電気振動の方程式と、力学の単振動(ばね振り子)の方程式は、数学的に全く同じ形をしています。この類似性(アナロジー)を利用して、物理量の対応関係を見つけます。
問題文で与えられたヒント「\(I_2 \leftrightarrow v\)」「\(Q \leftrightarrow x\)」を出発点とし、エネルギー保存則の式を見比べるのが最短ルートです。

この設問における重要なポイント

  • 力学的エネルギー保存則: ばね振り子では \(E = \frac{1}{2}kx^2 + \frac{1}{2}mv^2\) が保存されます。
  • 式の比較: 電気回路のエネルギー \(U\) と力学のエネルギー \(E\) の各項を比較し、係数の対応を読み取ります。

具体的な解説と立式
電気回路のエネルギー保存則([B](1)の結果):
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \frac{1}{C} Q^2 + \frac{1}{2} L I_2^2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
ばね振り子の力学的エネルギー保存則:
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{2} k x^2 + \frac{1}{2} m v^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
問題文より、電気量 \(Q\) は変位 \(x\) に、電流 \(I_2\) は速度 \(v\) に対応します。
式①と式②の対応する項を見比べます。

1. 速度の項の比較:
\(\frac{1}{2} L I_2^2\) と \(\frac{1}{2} m v^2\) を比較します。
\(I_2\) が \(v\) に対応するので、係数 \(L\) は \(m\) に対応します。

2. 変位の項の比較:
\(\frac{1}{2} \frac{1}{C} Q^2\) と \(\frac{1}{2} k x^2\) を比較します。
\(Q\) が \(x\) に対応するので、係数 \(\frac{1}{C}\) は \(k\) に対応します。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(E = K + U\)
計算過程

比較結果より、以下の対応が得られます。
ばね定数 \(k\) に対応するもの:
$$
\begin{aligned}
k &\longleftrightarrow \frac{1}{C}
\end{aligned}
$$
質量 \(m\) に対応するもの:
$$
\begin{aligned}
m &\longleftrightarrow L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電気の世界と力学の世界は、実は同じ数式で記述できる「兄弟」のような関係にあります。
「電流(電気の流れの勢い)」は「速度(物体の動きの勢い)」に似ており、その勢いを維持しようとする「コイルの自己インダクタンス \(L\)」は「質量 \(m\)(慣性)」に対応します。
また、「電気量(溜まった電気)」は「変位(ばねの伸び)」に似ており、元に戻そうとする「コンデンサーの容量の逆数 \(1/C\)」は「ばね定数 \(k\)(硬さ)」に対応します。

結論と吟味

\(L\) は電流の変化を妨げる働き(慣性)を持ち、\(m\) も速度の変化を妨げる働き(慣性)を持つため、物理的意味も合致します。
\(1/C\) が大きい(容量が小さい)ほど電圧が高くなり押し返す力が強くなるのは、\(k\) が大きい(ばねが硬い)ほど復元力が強いことに対応し、これも妥当です。

解答 (2) \(k\) に対応するもの: \(\displaystyle\frac{1}{C}\), \(m\) に対応するもの: \(L\)

問[B](3)

思考の道筋とポイント
ばね振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{\frac{m}{k}}\) は既知として使えます。
これに、先ほど求めた対応関係(\(m \to L\), \(k \to 1/C\))を代入すれば、電気振動の周期が求まります。

この設問における重要なポイント

  • アナロジーの適用: 力学の公式の文字を、対応する電気の文字に置き換えるだけで、正しい公式が得られます。

具体的な解説と立式
ばね振り子の周期 \(T\) の公式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \sqrt{\frac{m}{k}}
\end{aligned}
$$
これに、(2)で求めた対応関係 \(m = L\)、\(k = \frac{1}{C}\) を代入します。

使用した物理公式

  • 単振動の周期: \(T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{k}}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \sqrt{\frac{L}{1/C}} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{LC}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「質量 \(m\) のおもり」と「ばね定数 \(k\) のばね」がつながった振動の周期公式に、電気回路での対応物である「コイル \(L\)」と「コンデンサー \(1/C\)」を当てはめました。これだけで、複雑な電気振動の周期を一瞬で求めることができます。

結論と吟味

\(T = 2\pi\sqrt{LC}\) は、LC回路の固有周期として有名な公式であり、正しい結果です。

解答 (3) \(2\pi\sqrt{LC}\)

問[B](4)

思考の道筋とポイント
グラフを描くためには、初期条件(\(t=0\) での値)変化の方向(増えるか減るか)を正確に把握する必要があります。

  • 時刻 \(t=0\): スイッチ \(S_2\) を閉じた瞬間。直前まで \(S_1\) で充電されていたため、コンデンサーは満充電状態です。
  • 電気量 \(Q_a\): 極板 \(a\)(上側)の電荷。電源の正極が上なので、初期値は \(+Q_0\)(最大値)です。
  • 電流 \(I_2\): 初期値は \(0\)。その後、放電によって電流が流れ始めます。
  • 電流の向き: 図の \(I_2\) の矢印(反時計回り)と、実際の放電電流の向き(時計回り)の関係に注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 初期位相の特定: \(Q_a\) は最大値からスタートするのでコサイン型(\(\cos\))になります。
  • 電流の符号: \(I_2\) の定義方向(反時計回り)に対し、実際の放電電流は \(a\)(高電位)\(\to\) \(L\) \(\to\) \(b\)(低電位)の時計回りです。したがって、\(I_2\) は負の方向に流れ始めます。

具体的な解説と立式
1. 電気量 \(Q_a\) のグラフ
\(t=0\) のとき、コンデンサーは電圧 \(E\) で充電されているため、電気量は最大値 \(Q_0 = CE\) です。
その後、放電により減少して振動します。
最大値から始まる振動なので、グラフは \(\cos\) 型になります。
$$
\begin{aligned}
Q_a(t) &= Q_0 \cos \left( \frac{2\pi}{T} t \right)
\end{aligned}
$$

2. 電流 \(I_2\) のグラフ
\(t=0\) のとき、電流は \(0\) です。
直後、正に帯電した極板 \(a\) から電荷が流れ出します。
電流は高電位 \(a\) からコイル \(L\) を通って \(b\) へ向かう向き、つまり図の回路を「時計回り」に流れます。
一方、問題図の \(I_2\) の矢印は「反時計回り」に定義されています。
したがって、実際の電流は \(I_2\) の負の向きに流れるため、\(I_2\) は \(0\) からマイナス方向へ変化します。
グラフは \(-\sin\) 型になります。
$$
\begin{aligned}
I_2(t) &= -I_0 \sin \left( \frac{2\pi}{T} t \right)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 単振動の変位と速度の関係
計算過程
  • \(Q_a\) のグラフ:
    • \(t=0\) で \(Q_0\)
    • \(t=T/4\) で \(0\)
    • \(t=T/2\) で \(-Q_0\)
    • \(t=3T/4\) で \(0\)
    • \(t=T\) で \(Q_0\)

これを3周期分(\(3T\) まで)描きます。

  • \(I_2\) のグラフ:
    • \(t=0\) で \(0\)
    • \(t=T/4\) で \(-I_0\)(最小値)
    • \(t=T/2\) で \(0\)
    • \(t=3T/4\) で \(I_0\)(最大値)
    • \(t=T\) で \(0\)

これを3周期分描きます。

この設問の平易な説明

コンデンサーは最初パンパンに電気が詰まっているので、電気量 \(Q_a\) は最大値からスタートし、放電して減っていきます。
電流 \(I_2\) は最初ゼロですが、放電が始まると勢いよく流れ出します。ただし、図で決められた「プラスの向き」とは逆向き(時計回り)に流れ出すので、グラフはマイナスの方へ下がっていきます。

結論と吟味

\(Q_a\) は余弦曲線、\(I_2\) は負の正弦曲線となります。エネルギー保存則より、\(Q_a\) が \(0\) のとき \(|I_2|\) は最大、\(|Q_a|\) が最大のとき \(I_2\) は \(0\) となり、位相が \(\pi/2\)(\(1/4\)周期)ずれていることも確認できます。

解答 (4)
\(Q_a\) のグラフ: \(t=0\) で \(Q_0\) をとり、\(T\) で元の高さに戻るコサインカーブ。
\(I_2\) のグラフ: \(t=0\) で \(0\) をとり、最初は負の方向(下)へ進むサインカーブ(マイナスサイン)。
(※具体的な形状は模範解答の図eを参照してください)
別解: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式)

思考の道筋とポイント
アナロジーを使わず、キルヒホッフの法則から回路方程式(微分方程式)を立てて解く、最も原理的な方法です。
この方法を使えば、周期、電流の向き、エネルギー保存則など、全ての設問の答えを数学的に導出できます。

この設問における重要なポイント

  • 回路方程式の立式: 任意の時刻における電流と電荷の関係を式にします。
  • 電流と電荷の関係: 電流の定義 \(I = \pm dQ/dt\) の符号を、図の向きに合わせて慎重に決定します。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_2\) を閉じた後の回路(図d)を考えます。
図の矢印 \(I_2\) の向き(反時計回り)に回路を一周して、キルヒホッフの第2法則を立式します。
コンデンサーの上極板 \(a\) の電荷を \(Q_a(t)\) とします。

  1. 電流と電荷の関係:
    電流 \(I_2\) は反時計回りであり、これは極板 \(a\) に電荷が「流入する」向きです。
    したがって、\(I_2\) が正なら \(Q_a\) は増加します。
    $$
    \begin{aligned}
    I_2 &= \frac{dQ_a}{dt} \quad \cdots ③
    \end{aligned}
    $$
  2. 回路方程式:
    反時計回りに一周します。

    • コイル: 電流 \(I_2\) の向きに進むと、自己誘導起電力により電位は \(L \frac{dI_2}{dt}\) 下がります(逆起電力)。
    • コンデンサー: 電流の向き(\(b \to a\))に進むと、\(b\) に対する \(a\) の電位 \(V_{\text{C}} = \frac{Q_a}{C}\) だけ電位が上がります(\(Q_a>0\) のとき)。
    • 一周の電位変化の和は \(0\) です。

    $$
    \begin{aligned}
    – L \frac{dI_2}{dt} – \frac{Q_a}{C} &= 0 \quad \cdots ④
    \end{aligned}
    $$
    (※注: キルヒホッフの法則の取り方により符号は変わりますが、物理的意味は「コンデンサーの電圧 \(Q_a/C\) がコイルの逆起電力 \(L \dot{I}_2\) とつりあう」ということです。ここでは \(a \to b\) 方向の電圧降下を正として、\(L \frac{dI_2}{dt} + \frac{Q_a}{C} = 0\) と立式するのが一般的です。どちらでも結果は同じです。)
    正しい立式(電圧降下の和 = 起電力 0):
    $$
    \begin{aligned}
    L \frac{dI_2}{dt} + \frac{Q_a}{C} &= 0
    \end{aligned}
    $$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則
  • 電流の定義: \(I = dQ/dt\)
計算過程

式③を式④に代入して \(I_2\) を消去し、\(Q_a\) に関する微分方程式を作ります。
$$
\begin{aligned}
L \frac{d}{dt} \left( \frac{dQ_a}{dt} \right) + \frac{1}{C} Q_a &= 0 \\[2.0ex]
L \frac{d^2 Q_a}{dt^2} &= – \frac{1}{C} Q_a \\[2.0ex]
\frac{d^2 Q_a}{dt^2} &= – \frac{1}{LC} Q_a
\end{aligned}
$$
これは単振動の方程式 \(\frac{d^2 x}{dt^2} = – \omega^2 x\) と同じ形です。
角振動数 \(\omega\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{1}{LC} \\[2.0ex]
\omega &= \frac{1}{\sqrt{LC}}
\end{aligned}
$$
よって、周期 \(T\) は、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{LC}
\end{aligned}
$$
これで (3)の答え が導けました。

次に一般解を求めます。\(t=0\) で \(Q_a = Q_0\)、\(I_2 = 0\) (つまり \(\frac{dQ_a}{dt}=0\))という初期条件より、解は \(\cos\) 型になります。
$$
\begin{aligned}
Q_a(t) &= Q_0 \cos \omega t
\end{aligned}
$$
電流 \(I_2\) はこれを時間微分して求めます。
$$
\begin{aligned}
I_2(t) &= \frac{dQ_a}{dt} \\[2.0ex]
&= \frac{d}{dt} (Q_0 \cos \omega t) \\[2.0ex]
&= – \omega Q_0 \sin \omega t \\[2.0ex]
&= – \frac{Q_0}{\sqrt{LC}} \sin \omega t
\end{aligned}
$$
この式から、\(Q_a\) は \(Q_0\) スタートのコサインカーブ、\(I_2\) は \(0\) スタートで負の方向へ向かうサインカーブであることが分かります。これで (4)のグラフ の形状も数学的に確定しました。

この設問の平易な説明

回路の電圧のルール(キルヒホッフの法則)を式にすると、加速度が位置のマイナス倍になる「単振動」の式と同じ形が現れました。
この式を数学的に解くだけで、周期も、グラフの形も、すべて自動的に求まります。物理的な直感(アナロジー)に頼らなくても、数式が全てを教えてくれる強力な方法です。

結論と吟味

得られた周期 \(2\pi\sqrt{LC}\) やグラフの形状は、メインの解法と完全に一致します。

解答 メイン解法と同じ
別解: リアクタンスを用いた解法(問[B](3))

思考の道筋とポイント
交流回路の知識がある場合、LC振動は「特定の周波数で共振している状態」とみなせます。
コイルとコンデンサーの電圧の最大値が等しいことを利用します。

この設問における重要なポイント

  • リアクタンス: 角周波数 \(\omega\) のとき、コイルのリアクタンス(抵抗のようなもの)は \(\omega L\)、コンデンサーは \(\frac{1}{\omega C}\) です。
  • 電圧の関係: 閉回路において、コイルにかかる電圧の最大値 \(V_{L0}\) とコンデンサーにかかる電圧の最大値 \(V_{C0}\) は等しくなります。

具体的な解説と立式
振動電流の最大値を \(I_0\) とします。
コイルとコンデンサーの電圧の最大値は等しいので、オームの法則 \(V=IZ\) に相当する式を立てます。
$$
\begin{aligned}
I_0 (\omega L) &= I_0 \left( \frac{1}{\omega C} \right)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 誘導リアクタンス: \(X_L = \omega L\)
  • 容量リアクタンス: \(X_C = \frac{1}{\omega C}\)
計算過程

両辺を \(I_0\) で割り、\(\omega\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\omega L &= \frac{1}{\omega C} \\[2.0ex]
\omega^2 &= \frac{1}{LC} \\[2.0ex]
\omega &= \frac{1}{\sqrt{LC}}
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{LC}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コイルとコンデンサーがキャッチボールをしているとき、両者の「電気的な重さ(リアクタンス)」が釣り合うようなリズム(周波数)でのみ振動が続きます。その釣り合いの式から、一瞬で周期を計算しました。

結論と吟味

計算量が非常に少なく、検算に最適です。

解答 \(2\pi\sqrt{LC}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気振動と単振動のアナロジー
    • 核心: LC回路の電流や電荷の時間変化は、ばね振り子の速度や変位と全く同じ数学的構造(単振動)を持っています。
    • 理解のポイント:
      • 慣性: コイル \(L\) は電流の変化を嫌う \(\leftrightarrow\) 質量 \(m\) は速度の変化を嫌う。
      • 復元力: コンデンサー \(1/C\) は電荷を押し戻す \(\leftrightarrow\) ばね \(k\) は変位を押し戻す。
      • この対応関係さえ覚えておけば、周期公式 \(T=2\pi\sqrt{m/k}\) から \(T=2\pi\sqrt{LC}\) を即座に導けます。
  • エネルギー保存則の成立条件
    • 核心: 回路に抵抗 \(R\) が含まれていない(または電流が流れていない)区間では、ジュール熱が発生しないため、電磁気エネルギーの総和は保存されます。
    • 理解のポイント:
      • スイッチ \(S_2\) を閉じた後の回路には抵抗がないため、永遠に振動が続きます(減衰しない)。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 合成容量・インダクタンスを含む振動: コンデンサーやコイルが複数ある場合でも、合成容量 \(C_{\text{合成}}\) や合成インダクタンス \(L_{\text{合成}}\) を求めて \(2\pi\sqrt{L_{\text{合成}}C_{\text{合成}}}\) に放り込めば一発で求まります。
    • 非線形素子を含む振動: ダイオードが入っている場合などは、電流が流れる半周期だけ振動し、残りは停止するといった挙動になります。グラフを描く力が試されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 初期状態のチェック: \(t=0\) でコンデンサーは充電されているか?電流は流れているか?これによりグラフが \(\sin\) か \(\cos\) かが決まります。
    2. 電流の向きの定義: 問題で与えられた矢印の向きと、実際に流れる電流の向き(高電位 \(\to\) 低電位)を比較し、符号(プラスかマイナスか)を最初に確定させます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • グラフの初期位相と符号のミス:
    • 誤解: 「振動だからとりあえずサインカーブを描こう」と考え、初期値や符号を無視して \(I = I_0 \sin \omega t\) と書いてしまう。
    • 対策: 必ず \(t=0\) の値をプロットしてください。\(Q\) が最大なら \(\cos\)、\(0\) なら \(\sin\) です。さらに、\(t=0\) 直後の変化の向き(増えるか減るか)で符号(\(\pm\))を決定します。
  • 電流 \(I\) と電荷 \(Q\) の関係:
    • 誤解: 常に \(I = dQ/dt\) だと思い込む。
    • 対策: 電流の矢印が「コンデンサーに流れ込む向き」なら \(I = +dQ/dt\)、「流れ出る向き」なら \(I = -dQ/dt\) です。図を見てその都度判断してください。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問[B](2)での解法選択(アナロジー vs 微分方程式):
    • 選定理由: 設問が「対応するものを答えよ」と誘導しているため、素直にエネルギー保存則の式を比較するアナロジーの手法が最適です。
    • 適用根拠: 力学と電磁気学の方程式が同型であるという物理的背景に基づいています。
  • 問[B](3)での解法選択(公式代入):
    • 選定理由: (2)で対応関係が求まっているため、ばね振り子の周期公式に代入するのが最速かつミスの少ない方法です。
    • 適用根拠: アナロジーが成立している以上、結果の式も対応関係に従って変換可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: \(LC\) のルートが時間の次元を持つか確認する。
    • 実践: \(\omega = 1/\sqrt{LC}\) なので、\(T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{LC}\)。もし \(T = 2\pi/\sqrt{LC}\) と書いてしまったら、単位がおかしい(時間の逆数になる)と気づけるようにしましょう。
  • 極限のイメージ:
    • 意識: \(C\) や \(L\) を極端に大きくしたら周期はどうなるか?
    • 実践: \(C\) が巨大(電気をたくさん溜められる)なら充放電に時間がかかり、周期は長くなるはず。\(L\) が巨大(電流変化を強く妨げる)なら変化が遅くなり、周期は長くなるはず。式 \(T=2\pi\sqrt{LC}\) は両方とも分子にあるので、この直感と合致します。
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問題146 過渡現象と電気振動 (京都工繊大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)〜(3)の別解1: 微積分を用いた体系的解法(RC回路の過渡現象)
      • 模範解答が状態ごとの物理的考察(直後、十分時間後)で解くのに対し、別解1では回路方程式(微分方程式)を立式して解くことで、電流や電荷の時間変化 \(I(t), Q(t)\) を関数として完全に導出します。
    • 設問(4)〜(6)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(LC回路の電気振動)
      • 模範解答がエネルギー保存則と最大値の条件から解くのに対し、別解2では回路方程式(微分方程式)を解くことで、2つのコンデンサーを含む回路の振動現象(単振動)を数学的に解析し、周期や振幅、位相のずれを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 「直後」や「十分時間後」といった特定の瞬間だけでなく、過渡的な変化の全貌を理解できるため、物理現象の深い理解につながります。また、公式暗記に頼らず、基本原理(キルヒホッフの法則)から全ての答えを導き出す力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「RC回路の過渡現象」と「LC回路の電気振動」です。
前半はコンデンサーへの充電過程を、後半はコイルと複数のコンデンサーによる振動現象を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの過渡的特性:
    • スイッチを入れた直後(電荷なし) \(\rightarrow\) 電圧降下ゼロ(導線とみなせる)。
    • 十分時間が経過した後(充電完了) \(\rightarrow\) 電流ゼロ(断線とみなせる)。
  2. コイルの過渡的特性:
    • 電流の変化を妨げる(自己誘導)。電流は急には変化できず、連続的に変化する。
  3. キルヒホッフの法則: 回路解析の基本。一周したときの電位変化の総和はゼロ。
  4. 保存則:
    • 電荷保存則: 孤立した導体部分の電荷の総和は変わらない。
    • エネルギー保存則: 抵抗がない閉回路では、電磁気エネルギーの総和が保存される。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)では、RC回路の基本動作を確認します。特に(2)の微小変化は、微分の定義式 \(\Delta f / \Delta t \approx df/dt\) の物理的意味を問う良問です。
  2. (4)〜(6)では、2つのコンデンサーを含むLC回路の振動を扱います。電荷保存則とキルヒホッフの法則を連立させて解くのが定石です。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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