基本問題
600 半減期
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: ステップごとの計算による解法
- 模範解答が公式 \(N = N_0 (1/2)^{t/T}\) に一発代入して解くのに対し、別解では「半減期が1回経過するごとに半分になる」という定義に従い、15時間ごとに \(1/2, 1/4, 1/8 \dots\) と順を追って計算します。
- 設問(3)の別解: 2の累乗数を用いた逆算
- 模範解答が指数方程式を立てて解くのに対し、別解では \(128 = 2^7\) であることに着目し、「半分になる操作を何回繰り返せば \(1/128\) になるか」という視点から半減期の回数を求め、そこから時間を逆算します。
- 設問(2)の別解: ステップごとの計算による解法
- 上記の別解が有益である理由
- 直感的理解の促進: 公式を忘れても、「半減期=半分になる時間」という定義さえ覚えていれば解けることを示し、物理現象としてのイメージを強化します。
- 計算ミスの防止: 指数計算が苦手な場合でも、単純な掛け算や割り算の繰り返しで確実に正解にたどり着けます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「放射性崩壊と半減期」です。不安定な原子核が崩壊して減少していく様子を、数式(指数関数)を用いて定量的に扱う力を養います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(\beta\)崩壊: 中性子が陽子と電子に変化し、電子(\(\beta\)線)を放出する現象。質量数は不変、原子番号は \(+1\) されます。
- 半減期 \(T\): 放射性原子核の数が、崩壊によって元の半分になるのにかかる時間。
- 放射性崩壊の法則: 時間 \(t\) 経過後の原子核の数 \(N\) は、元の数 \(N_0\) と半減期 \(T\) を用いて \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) と表されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、\(\beta\)崩壊の性質(質量数不変、原子番号+1)を適用します。
- (2)〜(4)では、半減期の公式 \(N = N_0 (1/2)^{t/T}\) を用います。経過時間 \(t\) と半減期 \(T\) の関係(\(t\) が \(T\) の何倍か)に着目することがポイントです。
問(1)
思考の道筋とポイント
ナトリウム \({}_{11}^{24}\text{Na}\) が\(\beta\)崩壊を起こします。\(\beta\)崩壊のルールに従って、崩壊後の原子番号と質量数を求めます。
この設問における重要なポイント
- \(\beta\)崩壊では、中性子が陽子に変わる。
- 質量数(陽子 \(+\) 中性子)は変化しない。
- 原子番号(陽子数)は \(1\) 増加する。
具体的な解説と立式
\(\beta\)崩壊の反応式は以下の通りです。
$$ {}_{11}^{24}\text{Na} \rightarrow {}_{Z}^{A}\text{X} + {}_{-1}^{0}\text{e} $$
保存則より、
質量数: \(24 = A + 0 \Rightarrow A = 24\)
原子番号: \(11 = Z + (-1) \Rightarrow Z = 12\)
したがって、崩壊後の元素の原子番号は \(12\)、質量数は \(24\) です。
使用した物理公式
- \(\beta\)崩壊: \(A \to A, Z \to Z+1\)
- 原子番号: \(11 + 1 = 12\)
- 質量数: \(24\) (変化なし)
\(\beta\)崩壊は、原子核の中の中性子が「陽子」と「電子」に変身する現象です。電子は外に飛び出しますが、陽子は残るので、原子番号(陽子の数)が1つ増えます。重さ(質量数)は変わりません。
原子番号 \(12\)、質量数 \(24\) です。これはマグネシウム(\(\text{Mg}\))の同位体に相当します。
問(2)
思考の道筋とポイント
半減期 \(T = 15\) 時間、経過時間 \(t = 60\) 時間です。公式に代入して計算します。
この設問における重要なポイント
- 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
- 求めるのは「元の何倍か」、つまり \(\frac{N}{N_0}\) の値である。
具体的な解説と立式
公式に \(T=15, t=60\) を代入します。
$$ \frac{N}{N_0} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{60}{15}} $$
使用した物理公式
- 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{N}{N_0} &= \left(\frac{1}{2}\right)^{4} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{16}
\end{aligned}
$$
15時間経つごとに半分になります。60時間は15時間の4倍(\(60 \div 15 = 4\))なので、半分の半分の半分の半分、つまり \(1/16\) になります。
\(1/16\) 倍です。時間が経つにつれて減少していくので妥当です。
思考の道筋とポイント
公式を使わず、15時間ごとの変化を順に追います。
この設問における重要なポイント
- 15時間経過 \(\rightarrow\) \(1/2\) になる。
具体的な解説と立式
経過時間ごとの残存量は以下のようになります。
- 0時間: \(1\)
- 15時間: \(1/2\)
- 30時間: \(1/4\)
- 45時間: \(1/8\)
- 60時間: \(1/16\)
使用した物理公式
- 半減期の定義
$$ 1 \xrightarrow{15\text{h}} \frac{1}{2} \xrightarrow{15\text{h}} \frac{1}{4} \xrightarrow{15\text{h}} \frac{1}{8} \xrightarrow{15\text{h}} \frac{1}{16} $$
15時間ごとに半分こしていくだけです。4回半分こすれば答えが出ます。
\(1/16\) 倍となり、メイン解法と一致します。
問(3)
思考の道筋とポイント
残存量が \(1/128\) になるときの時間 \(t\) を求めます。\(128\) が \(2\) の何乗かを考えます。
この設問における重要なポイント
- \(128 = 2^7\) である。
- \(\left(\frac{1}{2}\right)^n = \frac{1}{128}\) となる \(n\) を探す。
具体的な解説と立式
公式より、
$$ \frac{1}{128} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{15}} $$
ここで、\(128 = 2^7\) なので、
$$ \left(\frac{1}{2}\right)^7 = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{15}} $$
指数を比較して、
$$ 7 = \frac{t}{15} $$
使用した物理公式
- 半減期の公式
$$
\begin{aligned}
t &= 7 \times 15 \\[2.0ex]
&= 105
\end{aligned}
$$
\(1/128\) になるには、何回半分にすればいいかを考えます。\(2, 4, 8, 16, 32, 64, 128\) と数えると、7回だとわかります。半減期(15時間)が7回分なので、\(15 \times 7\) を計算します。
\(105\) 時間です。\(1/128\) はかなり小さい量なので、それなりの時間がかかっています。
思考の道筋とポイント
2の累乗数を用いた逆算を行います。「半分になる操作を何回繰り返せば \(1/128\) になるか」という視点から半減期の回数を求め、そこから時間を逆算します。
この設問における重要なポイント
- \(1/128\) は \(1/2\) を何回掛けたものか?
- \(2^1=2, 2^2=4, \dots, 2^7=128\)
具体的な解説と立式
残存量が \(1/128\) になるまでの半減期の回数を \(n\) とします。
$$ \left(\frac{1}{2}\right)^n = \frac{1}{128} $$
分母に注目すると、
$$ 2^n = 128 $$
\(2\) の累乗を計算していくと、
\(2, 4, 8, 16, 32, 64, 128\)
となり、\(n=7\) であることがわかります。
つまり、半減期が \(7\) 回経過したということです。
求める時間 \(t\) は、
$$ t = (\text{半減期}) \times (\text{回数}) $$
$$ t = 15 \times 7 $$
使用した物理公式
- 半減期の定義
$$
\begin{aligned}
t &= 15 \times 7 \\[2.0ex]
&= 105
\end{aligned}
$$
「半分にする」という作業を何回やれば \(1/128\) になるかを指折り数えます。7回だとわかるので、15時間を7回繰り返せばよいことになります。
\(105\) 時間となり、メイン解法と一致します。
問(4)
思考の道筋とポイント
経過時間 \(t = 7.5\) 時間です。これは半減期 \(15\) 時間のちょうど半分です。指数が分数になる計算です。
この設問における重要なポイント
- \(t = 7.5 = \frac{15}{2}\) である。
- \(\left(\frac{1}{2}\right)^{1/2} = \sqrt{\frac{1}{2}}\) である。
- \(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用いる。
具体的な解説と立式
公式に \(T=15, t=7.5\) を代入します。
$$ \frac{N}{N_0} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{7.5}{15}} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}} $$
これは \(\sqrt{1/2}\) を意味します。
使用した物理公式
- 半減期の公式
- 指数法則: \(a^{1/2} = \sqrt{a}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{N}{N_0} &= \sqrt{\frac{1}{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{2}}{2} \\[2.0ex]
&\approx \frac{1.41}{2} \\[2.0ex]
&= 0.705
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(0.71\) 倍となります。
半減期の半分(7.5時間)しか経っていないので、量は半分(0.5倍)までは減りません。「半分の半分」ではなく、「\(\sqrt{0.5}\) 倍」になるという計算です。直感的には、15時間で半分になるペースの途中経過なので、0.5よりは多いはずです。計算結果の0.71倍はその感覚と合っています。
\(0.71\) 倍です。半減期(15時間)より短い時間なので、残存量は \(0.5\) より大きくなるはずであり、結果は妥当です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 放射性崩壊の法則と半減期
- 核心: 放射性原子核の数は、時間が経つにつれて指数関数的に減少するという法則です。その減少のペースを決めるのが「半減期 \(T\)」であり、時間 \(T\) が経過するごとに量は必ず \(1/2\) になります。
- 理解のポイント:
- 公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
- 意味: \(t/T\) は「半減期が何回過ぎたか」を表す回数です。この回数分だけ \(1/2\) を掛け算します。
- 連続性: 回数が整数でなくても(例えば \(0.5\) 回でも)、この法則は成り立ちます。その場合はルート(\(\sqrt{}\))などの計算が必要になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 年代測定: 「遺跡から出土した木片の炭素14の量が、現存する木の \(1/8\) だった。この木片は何年前のものか?」
- 解法: \(1/8 = (1/2)^3\) なので、半減期が3回経過したと判断し、\(3 \times (\text{炭素14の半減期})\) を計算します。
- グラフの読み取り: 縦軸に原子核の数、横軸に時間をとった減衰曲線のグラフから半減期を読み取る問題。
- 解法: 縦軸の値が初期値 \(N_0\) の半分 \(N_0/2\) になっている点の横軸(時間)を読み取れば、それが半減期 \(T\) です。
- 年代測定: 「遺跡から出土した木片の炭素14の量が、現存する木の \(1/8\) だった。この木片は何年前のものか?」
- 初見の問題での着眼点:
- 半減期の回数を数える: まずは「経過時間 \(t\)」が「半減期 \(T\)」の何倍になっているか(\(n = t/T\))を計算します。これが整数なら簡単です。
- 2の累乗を意識する: \(1/4, 1/8, 1/16, 1/32 \dots\) という数字を見たら、即座に「半減期が2回、3回、4回、5回…」と変換できるようにしておきます。
- 半端な時間はルート: 経過時間が半減期の半分(\(0.5\) 倍)なら \(\sqrt{1/2} \approx 0.71\)、1.5倍なら \(0.5 \times 0.71 \approx 0.35\) といった概算ができると検算に役立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 比例計算をしてしまう:
- 誤解: 「15時間で半分になるなら、7.5時間では \(1/4\) 減って \(0.75\) 倍になるはずだ」と直線的な比例関係で考えてしまう。
- 対策: 放射性崩壊は「指数関数的」な変化であり、直線的な変化ではありません。グラフが曲線を描くことをイメージし、必ず \((1/2)^n\) の形(またはルート)で計算します。
- 原子番号と質量数の取り違え:
- 誤解: (1)で質量数を増やしてしまったり、原子番号を変えなかったりする。
- 対策: \(\beta\)崩壊は「中性子 \(\to\) 陽子 \(+\) 電子」であることを思い出し、陽子が増える(原子番号 \(+1\))、総数(質量数)は変わらないことを確認します。
- 指数の計算ミス:
- 誤解: \((1/2)^4\) を \(1/8\) と計算してしまう(\(2 \times 4\) と混同)。
- 対策: 累乗は「掛け算の繰り返し」です。\(2 \times 2 \times 2 \times 2 = 16\) と丁寧に計算しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 半減期の公式 \(N = N_0 (1/2)^{t/T}\):
- 選定理由: 時間経過に伴う原子核の減少量を定量的に求めるための定義式そのものだからです。
- 適用根拠: 問題文で「半減期」と「経過時間」が与えられている場合、この公式を使うのが最も直接的で確実なアプローチです。特に時間が半減期の整数倍でない場合(問4など)は、この公式(指数法則)が必須となります。
- ステップごとの計算(別解のアプローチ):
- 選定理由: 公式を忘れてしまった場合や、整数の回数で済む場合に、より直感的でミスが少ない方法だからです。
- 適用根拠: 半減期の定義「時間 \(T\) ごとに半分になる」をそのまま実行しているだけなので、物理的に完全に正しい手順です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 2の累乗の暗記:
- \(2^1=2\) から \(2^{10}=1024\) くらいまでは暗記しておくと、計算スピードと正確性が格段に上がります。特に \(2^5=32, 2^6=64, 2^7=128\) あたりは頻出です。
- ルート2の近似値:
- \(\sqrt{2} \approx 1.414\) (ひとよひとよにひとみごろ)は常識として使いこなせるようにしましょう。\(1/\sqrt{2} \approx 0.707\) も覚えておくと便利です。
- 単位の確認:
- 半減期と経過時間の単位(時間、分、年など)が揃っているか確認します。本問はどちらも「時間」なのでそのまま計算できますが、異なる場合は換算が必要です。
601 年代測定
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 別解: 2の累乗数を用いた直感的な解法
- 模範解答が半減期の公式 \(N = N_0 (1/2)^{t/T}\) を用いて指数方程式を解くのに対し、別解では「\(1/8\) は \(1/2\) を3回掛けたもの」という事実に着目し、半減期が3回経過したと直感的に判断して計算します。
- 別解: 2の累乗数を用いた直感的な解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的意味の把握: 公式への機械的な代入ではなく、「半減期ごとに量が半分になる」という物理現象の本質に基づいた思考を促します。
- 計算の簡略化: 指数方程式を立てる手間を省き、単純な掛け算だけで迅速に答えを導き出せます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「放射性炭素年代測定法」です。生物の遺骸に含まれる放射性同位体(炭素14)の減少量から、その生物がいつ死んだか(いつ炭素の取り込みを停止したか)を推定する方法を学びます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 放射性崩壊の法則: 放射性原子核の数は、時間が経つにつれて指数関数的に減少します。
- 半減期: 原子核の数が元の半分になるのにかかる時間。炭素14の場合、\(T = 5.7 \times 10^3\) 年です。
- 炭素14の循環: 生きている生物は呼吸や光合成を通じて大気中の炭素を取り込み続けるため、体内の炭素14の割合は大気中と同じ一定値に保たれます。しかし死ぬと取り込みが止まり、崩壊によって一方的に減少していきます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 現在の炭素14の割合が、元の割合(大気中の割合)の何分の一になっているかを確認します。
- その減少率から、半減期が何回経過したかを求めます。
- 「半減期の回数 \(\times\) 半減期の年数」を計算して、経過年数を求めます。
思考の道筋とポイント
木片に含まれる \({}^{14}\text{C}\) の割合が、大気中の \(1/8\) になっています。これは、木が枯れて炭素を取り込まなくなってから、\({}^{14}\text{C}\) の量が \(1/8\) に減ったことを意味します。
半減期の公式を用いて、経過時間 \(t\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- \({}^{12}\text{C}\)(安定同位体)の数は変化しないため、\({}^{12}\text{C}\) に対する \({}^{14}\text{C}\) の割合の変化は、そのまま \({}^{14}\text{C}\) の数の変化とみなせる。
- 残存割合 \(\frac{N}{N_0} = \frac{1}{8}\) である。
- 半減期 \(T = 5.7 \times 10^3\) 年である。
具体的な解説と立式
半減期の公式 \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を用います。
ここで、\(N/N_0\) は現在の残存割合を表し、問題文より \(1/8\) です。
半減期 \(T\) は \(5.7 \times 10^3\) 年です。
これらを式に代入すると、
$$ \frac{1}{8} = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{5.7 \times 10^3}} $$
左辺の \(1/8\) は \((1/2)^3\) と表せるので、
$$ \left(\frac{1}{2}\right)^3 = \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{5.7 \times 10^3}} $$
両辺の指数を比較して、
$$ 3 = \frac{t}{5.7 \times 10^3} $$
この方程式を \(t\) について解きます。
使用した物理公式
- 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)
$$
\begin{aligned}
t &= 3 \times (5.7 \times 10^3) \\[2.0ex]
&= 17.1 \times 10^3 \\[2.0ex]
&= 1.71 \times 10^4
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(1.7 \times 10^4\) 年前となります。
木が生きていた頃は、体内の炭素14の量は周りの空気と同じでした。しかし枯れてからは、新しい炭素が入ってこないので、炭素14は減る一方です。
今測ってみたら、量が \(1/8\) になっていました。
半減期(半分になる時間)が1回過ぎると \(1/2\)、2回で \(1/4\)、3回で \(1/8\) になります。
つまり、木が枯れてから半減期が3回分過ぎたということです。
半減期は5700年なので、\(5700 \times 3\) を計算すれば、枯れてからの年数がわかります。
\(1.7 \times 10^4\) 年前です。これは約1万7千年前であり、遺跡からの出土品として妥当な年代です。
思考の道筋とポイント
公式を使わず、「半分になる回数」を数えて解きます。
この設問における重要なポイント
- \(1/8\) は \(1/2\) の3乗である。
- つまり、半減期が3回経過している。
具体的な解説と立式
現在の \({}^{14}\text{C}\) の割合は \(1/8\) です。
これは、
$$ 1 \xrightarrow{1\text{回目}} \frac{1}{2} \xrightarrow{2\text{回目}} \frac{1}{4} \xrightarrow{3\text{回目}} \frac{1}{8} $$
というように、半減期が \(3\) 回経過したことを意味します。
したがって、経過年数 \(t\) は半減期 \(T\) の \(3\) 倍です。
$$ t = 3 \times T $$
$$ t = 3 \times (5.7 \times 10^3) $$
使用した物理公式
- 半減期の定義
$$
\begin{aligned}
t &= 17.1 \times 10^3 \\[2.0ex]
&= 1.71 \times 10^4 \\[2.0ex]
&\approx 1.7 \times 10^4
\end{aligned}
$$
「半分こ」を何回したら \(1/8\) になるか指折り数えます。3回ですね。
1回につき5700年かかるので、3回分で何年になるか掛け算するだけです。
メイン解法と同じく \(1.7 \times 10^4\) 年前となります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 放射性炭素年代測定法の原理
- 核心: 生物圏における炭素循環と、死後の放射性崩壊による一方的な減少を利用して時間を測る手法です。
- 理解のポイント:
- 生存中: 呼吸や光合成により、体内の \({}^{14}\text{C}\) 濃度は大気中と平衡状態(一定)に保たれます。
- 死後: 炭素の供給が止まるため、\({}^{14}\text{C}\) は半減期 \(5730\) 年(問題では \(5.7 \times 10^3\) 年)で崩壊し、減少の一途をたどります。
- 比較: 「現在の試料中の濃度」と「大気中の濃度(=死んだ瞬間の濃度)」を比較することで、死後経過した時間を算出できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ウラン・鉛法: 岩石中のウランが崩壊して鉛になる比率から、地球や岩石の年齢を推定する問題。原理は炭素法と同じですが、半減期が億年単位になります。
- 残存量からの逆算: 「\(x\) 年前の地層から見つかった。炭素14の量は元の何倍か?」という逆向きの問い。
- 解法: \(n = x / T\) で半減期の回数を求め、\((1/2)^n\) を計算します。
- 初見の問題での着眼点:
- 「割合」の意味を掴む: 「\(1/8\) になった」というのは、\(N/N_0 = 1/8\) ということです。これが公式の左辺になります。
- 半減期の回数 \(n\) を探す: \(1/2, 1/4, 1/8, 1/16 \dots\) という数列を常に意識し、与えられた割合が \(2\) の何乗分の \(1\) かを即座に見抜きます。
- 安定同位体との比較: 問題文にある「\({}^{12}\text{C}\) に対する \({}^{14}\text{C}\) の割合」という表現に惑わされないようにします。\({}^{12}\text{C}\) は減らないので、この比率の変化は純粋に \({}^{14}\text{C}\) の減少を表しています。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 半減期をそのまま答えにする:
- 誤解: 計算途中で出てきた「3回」や「半減期そのもの」を答えだと思ってしまう。
- 対策: 求めるのは「何年前か(時間)」です。必ず「回数 \(\times\) 半減期」の掛け算をして、時間の単位(年)に戻すことを忘れないでください。
- 指数の計算ミス:
- 誤解: \(1/8\) を見て「半減期の4倍(\(2 \times 4 = 8\))」と勘違いする。
- 対策: 放射性崩壊は指数関数です。\(2 \times 2 \times 2 = 8\) なので「3回」です。指折り数えて確認しましょう。
- 有効数字の処理:
- 誤解: \(1.71 \times 10^4\) をそのまま答えてしまう。
- 対策: 問題文の数値(\(5.7 \times 10^3\))が有効数字2桁なので、答えも2桁に丸める必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 半減期の公式 \(N = N_0 (1/2)^{t/T}\):
- 選定理由: 時間経過と物質量の関係を記述する最も基本的かつ厳密な式だからです。
- 適用根拠: 「割合が \(1/8\)」という情報から、左辺に \(1/8\) を代入し、右辺の指数部分から時間 \(t\) を逆算する構造が明確です。
- 2の累乗による簡易解法(別解):
- 選定理由: \(1/8\) のようなきれいな数字(2の累乗)の場合、方程式を立てるよりも圧倒的に速く、直感的に解けるからです。
- 適用根拠: \(1/8 = (1/2)^3\) という数学的事実は、物理的な「半減期が3回経過した」という事実と等価です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数の確認:
- \(10^3\) と \(10^4\) の桁間違いに注意しましょう。\(17.1 \times 10^3 = 1.71 \times 10^4\) のような指数表記の変換は慎重に行います。
- 検算の習慣:
- 答えが出たら逆算してみます。「17100年前なら、5700年が3回分。半分、半分、半分で…うん、確かに1/8になるな」と確認すれば、確信を持って解答できます。
602 結合エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 単位換算を用いた解法(参考)
- 模範解答がSI単位系(\(\text{kg}\), \(\text{J}\))で一貫して計算しているのに対し、別解では原子質量単位(\(\text{u}\))や電子ボルト(\(\text{eV}\))を用いた計算の考え方を紹介します。ただし、本問では具体的な換算係数が与えられていないため、あくまで概念的な補足として提示します。
- 設問(1)の別解: 単位換算を用いた解法(参考)
- 上記の別解が有益である理由
- 実践的な物理感覚の養成: 原子核物理の分野では、質量を \(\text{u}\)、エネルギーを \(\text{MeV}\) で扱うのが一般的です。この視点を持つことで、桁数の多い計算ミスを防ぐ検算テクニックや、物理量のオーダー感覚(核子1個あたり数 \(\text{MeV}\) など)を養うことができます。
- 結果への影響
- 最終的な答えは模範解答と一致します。
この問題のテーマは「質量欠損と結合エネルギー」です。アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる「質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\))」を、具体的な原子核のデータを用いて計算し、実感することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 質量欠損 \(\Delta M\): 原子核の質量は、それを構成する陽子と中性子(核子)の質量の総和よりも軽くなります。この差を質量欠損と呼びます。
- \(\Delta M = (\text{陽子の総質量} + \text{中性子の総質量}) – (\text{原子核の質量})\)
- 結合エネルギー \(E\): 質量欠損に相当するエネルギーで、原子核をバラバラの核子に分解するために必要なエネルギーに等しいです。
- \(E = \Delta M c^2\) (\(c\) は光速)
- 核子1個あたりの結合エネルギー: 原子核の安定性の指標となる量です。
- \((\text{核子1個あたりの}E) = \frac{\text{結合エネルギー } E}{\text{質量数 } A}\)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず陽子1個と中性子2個の質量の合計を計算し、そこから三重水素原子核の質量を引いて質量欠損 \(\Delta M\) を求めます。次に、\(E = \Delta M c^2\) の公式に代入して結合エネルギーを計算します。
- (2)では、(1)で求めた結合エネルギーを、三重水素の質量数(核子の総数)である \(3\) で割ります。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずは「バラバラの状態」と「くっついた状態(原子核)」の質量の差を計算します。
バラバラの状態とは、陽子1個と中性子2個が離れ離れにある状態です。
くっついた状態とは、三重水素の原子核そのものです。
この差が質量欠損であり、それに光速の2乗を掛けることでエネルギーに換算します。
この設問における重要なポイント
- 陽子の質量 \(m_p = 1.673 \times 10^{-27}\,\text{kg}\)
- 中性子の質量 \(m_n = 1.675 \times 10^{-27}\,\text{kg}\)
- 三重水素原子核の質量 \(M = 5.008 \times 10^{-27}\,\text{kg}\)
- 光速 \(c = 3.0 \times 10^8\,\text{m/s}\)
- 有効数字は2桁であることに注意する。
具体的な解説と立式
まず、質量欠損 \(\Delta M\) を求めます。
三重水素原子核(\({}_1^3\text{H}\))は、陽子1個と中性子2個から構成されています。
構成粒子の質量の和は、
$$ 1 \times m_p + 2 \times m_n = 1 \times (1.673 \times 10^{-27}) + 2 \times (1.675 \times 10^{-27}) $$
ここから原子核の質量 \(M\) を引いたものが質量欠損 \(\Delta M\) です。
$$ \Delta M = (1 \times m_p + 2 \times m_n) – M $$
$$ \Delta M = \{ (1.673 + 2 \times 1.675) – 5.008 \} \times 10^{-27} $$
次に、結合エネルギー \(E\) を求めます。
アインシュタインの関係式 \(E = \Delta M c^2\) を用います。
$$ E = \Delta M \times (3.0 \times 10^8)^2 $$
使用した物理公式
- 質量欠損: \(\Delta M = Zm_p + (A-Z)m_n – M\)
- 質量とエネルギーの等価性: \(E = \Delta M c^2\)
- 質量欠損 \(\Delta M\) の計算:
$$
\begin{aligned}
\Delta M &= \{ 1.673 + 3.350 – 5.008 \} \times 10^{-27} \\[2.0ex]
&= \{ 5.023 – 5.008 \} \times 10^{-27} \\[2.0ex]
&= 0.015 \times 10^{-27} \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^{-29}\,\text{kg}
\end{aligned}
$$ - 結合エネルギー \(E\) の計算:
$$
\begin{aligned}
E &= (1.5 \times 10^{-29}) \times (3.0 \times 10^8)^2 \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^{-29} \times 9.0 \times 10^{16} \\[2.0ex]
&= 13.5 \times 10^{-13} \\[2.0ex]
&= 1.35 \times 10^{-12}\,\text{J}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(1.4 \times 10^{-12}\,\text{J}\) となります。
陽子と中性子を別々に重さを測って合計すると、それらがくっついてできた原子核の重さよりも少しだけ重くなります。この「消えた質量」を質量欠損といいます。
消えた質量はどこへ行ったのかというと、原子核をくっつけるための「糊(のり)」のようなエネルギー(結合エネルギー)に変わっています。その変換レートが \(E=mc^2\) です。
質量欠損は \(1.5 \times 10^{-29}\,\text{kg}\)、結合エネルギーは \(1.4 \times 10^{-12}\,\text{J}\) です。
原子核の質量欠損は非常に小さい値ですが、\(c^2\) が非常に大きいため、エネルギーとしては無視できない大きさになります。
思考の道筋とポイント
原子核物理学で標準的に用いられる単位系(原子質量単位 \(\text{u}\) と電子ボルト \(\text{eV}\))を用いた計算の考え方を紹介します。本問の数値設定とは異なりますが、物理的な理解を深めるために有用です。
この設問における重要なポイント
- 原子質量単位: \(1\,\text{u} \approx 1.66 \times 10^{-27}\,\text{kg}\)
- エネルギー換算: \(1\,\text{u} \times c^2 \approx 931.5\,\text{MeV}\)
- この換算係数を知っていれば、質量欠損(\(\text{kg}\))を \(\text{u}\) に換算し、それに \(931.5\) を掛けるだけでエネルギー(\(\text{MeV}\))が出せます。
具体的な解説と立式
本問の質量欠損 \(\Delta M = 1.5 \times 10^{-29}\,\text{kg}\) を原子質量単位 \(\text{u}\) で表すと、
$$ \Delta M_{\text{u}} \approx \frac{1.5 \times 10^{-29}}{1.66 \times 10^{-27}} \approx 0.009\,\text{u} $$
これに換算係数 \(931.5\,\text{MeV/u}\) を掛けると、
$$ E \approx 0.009 \times 931.5 \approx 8.4\,\text{MeV} $$
これをジュールに戻すと、
$$ 8.4 \times 10^6 \times 1.6 \times 10^{-19} \approx 1.34 \times 10^{-12}\,\text{J} $$
となり、メイン解法の結果とほぼ一致します。
使用した物理公式
- \(E [\text{MeV}] \approx \Delta M [\text{u}] \times 931.5\)
上記解説参照。
原子核の世界では、キログラムやジュールといった単位は大きすぎて使いにくいです。そこで、「陽子1個分くらいの重さ(\(\text{u}\))」や「電子1個を加速するエネルギー(\(\text{eV}\))」といった専用の単位を使います。この単位系を使うと、「質量がこれだけ減ったら、エネルギーはこれだけ出る」という計算が、掛け算一つで簡単にできるようになります。
SI単位系での計算結果と整合性が取れており、原子核物理における単位系の有用性が確認できます。
問(2)
思考の道筋とポイント
(1)で求めた結合エネルギーは、原子核全体をバラバラにするのに必要なエネルギーです。
これを「構成メンバー(核子)1人あたり」に換算します。
三重水素の核子数は、陽子1個 \(+\) 中性子2個 \(=\) 3個です。
この設問における重要なポイント
- 核子数(質量数) \(A = 3\) である。
- 計算には丸める前の値 \(1.35 \times 10^{-12}\,\text{J}\) を用いると誤差が少ない。
具体的な解説と立式
核子1個あたりの結合エネルギー \(\varepsilon\) は、全体の結合エネルギー \(E\) を質量数 \(A\) で割ることで求められます。
$$ \varepsilon = \frac{E}{A} $$
$$ \varepsilon = \frac{1.35 \times 10^{-12}}{3} $$
使用した物理公式
- 核子1個あたりの結合エネルギー: \(\varepsilon = \frac{E}{A}\)
$$
\begin{aligned}
\varepsilon &= \frac{1.35 \times 10^{-12}}{3} \\[2.0ex]
&= 0.45 \times 10^{-12} \\[2.0ex]
&= 4.5 \times 10^{-13}\,\text{J}
\end{aligned}
$$
3人でチーム(原子核)を組んでいて、チーム全体の結束力(結合エネルギー)がわかっています。それを3で割れば、1人あたりの結束力がわかります。この値が大きいほど、そのチームは固く結束していて壊れにくい(安定している)といえます。
\(4.5 \times 10^{-13}\,\text{J}\) です。
参考までに、これを電子ボルト(\(1\,\text{eV} \approx 1.6 \times 10^{-19}\,\text{J}\))に換算すると、約 \(2.8\,\text{MeV}\) となります。鉄などの最も安定な原子核では約 \(8.8\,\text{MeV}\) なので、三重水素はそれらに比べると結合が緩いことがわかります。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 質量とエネルギーの等価性(特殊相対性理論)
- 核心: 質量 \(m\) とエネルギー \(E\) は本質的に同じものであり、\(E = mc^2\) という関係式で相互に変換可能であるという法則です。
- 理解のポイント:
- 質量欠損: 原子核を構成する陽子と中性子が結合すると、その総質量はバラバラの状態よりも軽くなります。この「消えた質量」が結合エネルギーとして放出されます。
- 結合エネルギー: 逆に、原子核をバラバラにするために外部から加えなければならないエネルギーでもあります。
- 核子1個あたりの結合エネルギー
- 核心: 原子核の「安定性」を比較するための指標です。
- 理解のポイント: 全体の結合エネルギーが大きいからといって、必ずしも安定とは限りません。構成員(核子)1人あたりの結束力が強いほど、その原子核は壊れにくく安定しています。鉄(\({}^{56}\text{Fe}\))付近で最大となり、これより軽い核は融合しやすく、重い核は分裂しやすい傾向があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 核反応のエネルギー計算: 「ウランが核分裂してクリプトンとバリウムになった。放出されるエネルギーはいくらか?」
- 解法: (反応前の全質量)\(-\)(反応後の全質量)を計算し、その質量欠損 \(\Delta M\) に \(c^2\) を掛けます。
- 単位換算が必要な問題: 質量が \(\text{u}\)(原子質量単位)、エネルギーが \(\text{MeV}\) で与えられる問題。
- 解法: \(1\,\text{u} \approx 931.5\,\text{MeV}/c^2\) という換算係数を利用します。わざわざ \(\text{kg}\) や \(\text{J}\) に直す必要はありません。
- 核反応のエネルギー計算: 「ウランが核分裂してクリプトンとバリウムになった。放出されるエネルギーはいくらか?」
- 初見の問題での着眼点:
- 構成粒子の数を正確に数える: 陽子数 \(Z\) と中性子数 \(N = A – Z\) を間違えると、全ての計算が狂います。
- 有効数字に敏感になる: 質量欠損の計算では、非常に近い数値同士の引き算(例: \(5.023 – 5.008\))を行うため、有効数字の桁落ちに注意が必要です。計算途中では多めの桁数を保持しましょう。
- オーダー(桁数)の確認: 質量欠損は \(10^{-27} \sim 10^{-30}\,\text{kg}\)、結合エネルギーは \(10^{-10} \sim 10^{-13}\,\text{J}\) 程度のオーダーになることが一般的です。計算結果が大きく外れていないか確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電子の質量を忘れる/余計に足す:
- 誤解: 「原子の質量」と「原子核の質量」を混同する。
- 対策: 問題文で与えられているのが「原子核の質量」なのか「中性原子の質量(電子込み)」なのかを必ず確認します。中性原子の質量が与えられている場合は、電子の質量 \(Zm_e\) を引いて原子核の質量にするか、あるいは陽子の代わりに水素原子の質量 \({}^1\text{H}\) を使うなどの工夫が必要です。
- 光速の2乗を忘れる:
- 誤解: \(E = \Delta M\) と計算してしまう。
- 対策: 単位を確認しましょう。質量の単位(\(\text{kg}\))とエネルギーの単位(\(\text{J} = \text{kg} \cdot \text{m}^2/\text{s}^2\))は異なります。\(c^2\)(\(\text{m}^2/\text{s}^2\))を掛けないと次元が合いません。
- 核子1個あたりのエネルギーの割り算:
- 誤解: 陽子数 \(Z\) や中性子数 \(N\) で割ってしまう。
- 対策: 「核子」とは陽子と中性子の総称です。必ず質量数 \(A = Z + N\) で割ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(E = \Delta M c^2\):
- 選定理由: 質量とエネルギーの変換を扱う唯一の基本原理だからです。
- 適用根拠: 質量欠損 \(\Delta M\) が生じている系において、その質量差に対応するエネルギーを求めるには、この式以外に選択肢はありません。
- \(\varepsilon = E/A\):
- 選定理由: 原子核の安定性を評価するための定義式だからです。
- 適用根拠: 「核子1個あたり」という言葉が問題文にある場合、それは平均値を求めていることを意味します。総エネルギーを総数で割るという算術平均の操作そのものです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数の計算を分離する:
- \(1.673 \times 10^{-27}\) のような計算では、仮数部(\(1.673\))と指数部(\(10^{-27}\))を分けて計算し、最後に合体させるとミスが減ります。特に引き算では指数部が揃っていることを確認してから仮数部を引き算します。
- 括弧を多用する:
- \(\Delta M = (Zm_p + Nm_n) – M\) のように、塊ごとに括弧でくくって立式し、電卓や筆算でもその構造を崩さずに計算します。
- 単位を書きながら計算する:
- 特に \(c^2\) を掛ける際、\((3.0 \times 10^8\,\text{m/s})^2\) と単位付きで書くことで、2乗忘れや桁の間違いに気づきやすくなります。
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603 結合エネルギー
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「原子核の結合エネルギーと安定性」です。原子核物理学において、原子核がどれくらい壊れにくいか(安定か)を判断するための重要なグラフの読み取りと、それに基づく核反応(核融合・核分裂)の理解を問う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 結合エネルギー: 原子核を構成する核子(陽子と中性子)をバラバラにするために必要なエネルギー。これが大きいほど、原子核は固く結合しています。
- 核子1個あたりの結合エネルギー: 原子核全体の結合エネルギーを質量数(核子の総数)で割ったもの。この値が大きいほど、その原子核は安定です。
- 安定化への自然な傾向: 不安定な原子核は、より安定な(核子1個あたりの結合エネルギーが大きい)状態になろうとして核反応を起こします。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、グラフの縦軸(核子1個あたりの結合エネルギー)の値を読み取り、大小比較を行います。
- (2)では、グラフまたは問題文から読み取った「核子1個あたりの値」に「核子の数(質量数)」を掛けて、原子核全体の結合エネルギーを計算します。
- (3)では、グラフの形状全体を俯瞰し、質量数が小さい領域と大きい領域の原子核が、どのように変化すればグラフの頂点(最も安定な状態)に近づけるかを考えます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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