「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅵ 章 22】プロセス

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

プロセス

1 交流の角周波数と周期

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流信号の基本特性(周波数、角周波数、周期)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 周波数 \(f\) と周期 \(T\) の関係: 互いに逆数の関係にあります(\(fT = 1\))。
  2. 角周波数 \(\omega\) の定義: 単位時間あたりの位相の変化量であり、周波数 \(f\) とは \(\omega = 2\pi f\) の関係があります。
  3. 有効数字の取り扱い: 問題文の数値に合わせて、適切な桁数で答える必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた周波数 \(f\) から、公式を用いて角周波数 \(\omega\) を計算します。
  2. 周波数 \(f\) の逆数をとり、周期 \(T\) を計算します。
  3. 計算結果を適切な有効数字(ここでは2桁)で表記します。

思考の道筋とポイント
この問題は、交流回路における最も基本的な物理量である「周波数」「角周波数」「周期」の相互関係を問うものです。それぞれの定義をしっかりと確認しましょう。

  • 周波数 \(f\) \([\text{Hz}]\): \(1\) 秒間に繰り返される波(サイクル)の数です。
  • 角周波数 \(\omega\) \([\text{rad/s}]\): 交流の変化を等速円運動に例えたとき、\(1\) 秒間に進む角度(位相)です。\(1\) サイクル(\(1\) 回転)は \(2\pi \, \text{rad}\) に相当します。
  • 周期 \(T\) \([\text{s}]\): 波が \(1\) サイクルするのにかかる時間です。

この設問における重要なポイント

  • 角周波数と周波数の関係: \(1\) 回転は \(2\pi \, \text{rad}\) なので、\(1\) 秒間に \(f\) 回転する場合、角周波数は \(\omega = 2\pi f\) となります。
  • 周期と周波数の関係: \(1\) 秒間に \(f\) 回振動するということは、\(1\) 回の振動にかかる時間は \(1\) 秒を \(f\) 等分したものになります。つまり、\(T = \displaystyle\frac{1}{f}\) です。
  • 有効数字: 問題文の数値「\(50 \, \text{Hz}\)」は有効数字2桁とみなします。したがって、円周率 \(\pi\) は \(3.14\) を使用し、最終的な答えも有効数字2桁で答えるのが適切です。

具体的な解説と立式
まず、角周波数 \(\omega\) を求めます。
角周波数 \(\omega\) は、周波数 \(f\) を用いて次のように表されます。
$$ \omega = 2\pi f $$
ここで、問題文より \(f = 50 \, \text{Hz}\) です。

次に、周期 \(T\) を求めます。
周期 \(T\) は周波数 \(f\) の逆数として定義されるため、以下の式で表されます。
$$ T = \frac{1}{f} $$

使用した物理公式

  • 角周波数: \(\omega = 2\pi f\)
  • 周期: \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\)
計算過程

まず、角周波数 \(\omega\) を計算します。円周率 \(\pi \approx 3.14\) として代入します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= 2 \times 3.14 \times 50 \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 100 \\[2.0ex]
&= 314 \, \text{rad/s}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(314\) を科学的表記法(\(a \times 10^n\) の形)に直して四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= 3.14 \times 10^2 \\[2.0ex]
&\approx 3.1 \times 10^2 \, \text{rad/s}
\end{aligned}
$$

次に、周期 \(T\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{50} \\[2.0ex]
&= \frac{1 \times 2}{50 \times 2} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{100} \\[2.0ex]
&= 0.02 \, \text{s}
\end{aligned}
$$
これも有効数字2桁で表記します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2.0 \times 10^{-2} \, \text{s}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この問題は、家庭用コンセントに来ている電気(交流)の性質を表す数字を計算するものです。

  • 状況の要約: 「\(50 \, \text{Hz}\)」という数字は、電気が \(1\) 秒間に \(50\) 回、プラスとマイナスを行ったり来たりしていることを表しています(東日本の家庭用電源と同じです)。
  • 解法のロジック:
    • 角周波数: この電気の揺れを「ぐるぐる回る円運動」に例えてみます。\(1\) 回まわると \(360^\circ\)(\(2\pi\) ラジアン)です。\(1\) 秒に \(50\) 回まわるなら、角度は合計でどれくらい進むか?を計算したのが角周波数です。\(50 \times 2\pi\) で計算できます。
    • 周期: \(1\) 秒に \(50\) 回揺れるなら、「\(1\) 回の揺れ」にかかる時間はどれくらいか?と考えます。これは \(1\) 秒を \(50\) 人で分けるのと同じ計算(割り算)になります。
  • 結果の解釈: 計算の結果、この電気は \(1\) 秒間に約 \(310\) ラジアン分の角度が進む速さで変化しており、\(1\) 回の変化にかかる時間は \(0.02\) 秒という非常に短い一瞬であることがわかります。
解答 角周波数: \(3.1 \times 10^2 \, \text{rad/s}\), 周期: \(2.0 \times 10^{-2} \, \text{s}\)

2 交流電圧の実効値と最大値

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流電圧の実効値と最大値の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 実効値 \(V_{\text{実効}}\) の定義: 交流電圧と同じ電力を消費する直流電圧の値。
  2. 正弦波交流における関係式: 最大値 \(V_0\) と実効値 \(V_{\text{実効}}\) の間には \(V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}}\) の関係が成り立ちます。
  3. 平方根の近似値: \(\sqrt{2} \approx 1.414\) を用いて計算します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 実効値と最大値を結びつける公式を確認します。
  2. 与えられた実効値 \(100 \, \text{V}\) を公式に代入します。
  3. 有効数字(ここでは3桁)に注意して計算結果をまとめます。

思考の道筋とポイント
私たちが普段使っている家庭用コンセントの電圧は「\(100 \, \text{V}\)」と呼ばれていますが、これは常に \(100 \, \text{V}\) で一定という意味ではありません。交流電圧は時間とともに変動しており、「\(100 \, \text{V}\)」というのは、電気的な仕事をする能力(電力)の平均的な値を直流に換算した「実効値」を指しています。
実際の電圧は、\(0 \, \text{V}\) から最大値(ピーク電圧)まで変動しています。正弦波交流の場合、この最大値は実効値よりも大きくなり、その倍率は \(\sqrt{2}\) 倍であることが知られています。

この設問における重要なポイント

  • 実効値 \(V_{\text{実効}}\) と最大値 \(V_0\) の関係式:
    $$ V_{\text{実効}} = \frac{V_0}{\sqrt{2}} \quad \text{または} \quad V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}} $$
    この関係は、正弦波交流において常に成り立ちます。
  • 数値感覚: 実効値 \(100 \, \text{V}\) に対して、最大値は約 \(141 \, \text{V}\) になるという事実は、物理常識として知っておくと検算に役立ちます。

具体的な解説と立式
求める交流電圧の最大値を \(V_0\)、与えられた実効値を \(V_{\text{実効}}\) とします。
問題文より、以下の値が与えられています。
$$ V_{\text{実効}} = 100 \, \text{V} $$
正弦波交流における最大値と実効値の関係式より、以下の式を立てます。
$$ V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}} $$

使用した物理公式

  • 交流の最大値と実効値の関係: \(V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}}\)
計算過程

立式した式に数値を代入して計算します。\(\sqrt{2} \approx 1.414\) とします。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= 1.414 \times 100 \\[2.0ex]
&= 141.4 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
問題の数値 \(100 \, \text{V}\) は、解答が \(141 \, \text{V}\) となっていることから有効数字3桁として扱います。したがって、小数第1位を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
V_0 &\approx 141 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

1. 状況の要約: コンセントに来ている電気は、常に電圧が変化する「交流」です。「\(100 \, \text{V}\)」というのは、いわば「平均的なパワー」を表す数字(実効値)です。
2. 解法のロジック: 実際の電圧の波の頂点(最大値)は、平均的なパワーの値よりも高くなります。数学的な計算(積分の平均)から、正弦波の場合、頂点の高さは実効値の \(\sqrt{2}\) 倍(約 \(1.41\) 倍)になることがわかっています。
3. 結果の解釈: つまり、家のコンセントの電圧は、一瞬一瞬を見ると \(+141 \, \text{V}\) から \(-141 \, \text{V}\) の間を激しく行ったり来たりしているということです。その結果として得られる仕事の能力が、\(100 \, \text{V}\) の直流と同じなのです。

別解: 電力の定義から考える(実効値の本質)

思考の道筋とポイント
公式 \(V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}}\) を忘れてしまった場合でも、実効値の本来の定義である「電力(エネルギー)」に立ち返ることで導き出すことができます。
実効値とは、「ある抵抗に交流電圧をかけたときの平均消費電力が、直流電圧をかけたときと同じになるような電圧の値」のことです。

この設問における重要なポイント

  • 瞬時電力: 電圧 \(v\) の瞬間の電力は \(p = \frac{v^2}{R}\) です。
  • 平均電力: 正弦波交流 \(v = V_0 \sin{\omega t}\) の場合、\(\sin^2{\omega t}\) の1周期分の平均値は \(\frac{1}{2}\) になります。これが \(\sqrt{2}\) が出てくる理由です。

具体的な解説と立式
抵抗 \(R\) に電圧をかけたときの消費電力を考えます。
実効値 \(V_{\text{実効}}\) の定義より、交流による平均電力 \(P_{\text{平均}}\) は、直流電圧 \(V_{\text{実効}}\) による電力と等しくなります。
$$ P_{\text{平均}} = \frac{V_{\text{実効}}^2}{R} \quad \cdots ① $$
一方、最大値 \(V_0\) の正弦波交流電圧 \(v = V_0 \sin{\omega t}\) による瞬時電力 \(p\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{v^2}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{(V_0 \sin{\omega t})^2}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{V_0^2}{R} \sin^2{\omega t}
\end{aligned}
$$
\(\sin^2{\omega t}\) の時間平均は \(\frac{1}{2}\) であるため、交流の平均電力 \(P_{\text{平均}}\) は最大値 \(V_0\) を用いて次のように表せます。
$$ P_{\text{平均}} = \frac{1}{2} \frac{V_0^2}{R} \quad \cdots ② $$
①式と②式は等しいので、以下の等式が成り立ちます。
$$ \frac{V_{\text{実効}}^2}{R} = \frac{1}{2} \frac{V_0^2}{R} $$

使用した物理公式

  • 電力の定義: \(P = \frac{V^2}{R}\)
  • 三角関数の平均: \(\sin^2{\theta}\) の平均は \(\frac{1}{2}\)
計算過程

上の等式から \(V_0\) を求めます。両辺に \(R\) を掛けて整理します。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{実効}}^2 &= \frac{V_0^2}{2}
\end{aligned}
$$
両辺を2倍して \(V_0^2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
V_0^2 &= 2 V_{\text{実効}}^2
\end{aligned}
$$
両辺の平方根をとります(\(V_0 > 0, V_{\text{実効}} > 0\))。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= \sqrt{2} V_{\text{実効}}
\end{aligned}
$$
ここに \(V_{\text{実効}} = 100 \, \text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= 1.414 \times 100 \\[2.0ex]
&= 141.4 \\[2.0ex]
&\approx 141 \, \text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

1. 状況の要約: 「実効値」という言葉の意味を、「電熱線(抵抗)をどれくらい温められるか」というパワーの観点で考え直します。
2. 解法のロジック: 交流電圧は波打っているため、パワーが最大になる瞬間(電圧が最大値のとき)と、パワーがゼロになる瞬間があります。計算すると、平均のパワーは最大パワーのちょうど半分になることがわかります。
3. 結果の解釈: パワー(電力)は電圧の2乗に比例します。「平均パワーが最大パワーの半分」ということは、電圧の関係に戻すと「実効値は最大値の \(\sqrt{1/2}\) 倍」、つまり「最大値は実効値の \(\sqrt{2}\) 倍」ということになります。

解答 \(141 \, \text{V}\)

3 抵抗に流れる交流電流と消費電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗のみを含む交流回路における電流と電力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: 交流回路においても、抵抗 \(R\) では瞬時値、最大値、実効値のすべてにおいて \(V = RI\) が成り立ちます。
  2. 電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) と最大値 \(I_0\) の関係: 電圧と同様に \(I_0 = \sqrt{2} I_{\text{実効}}\) の関係があります。
  3. 平均消費電力 \(P\): 実効値を用いて \(P = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\) で計算できます。これは直流回路の電力計算と同じ形になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. オームの法則を用いて、電圧の実効値から電流の実効値を求めます。
  2. 求めた電流の実効値を \(\sqrt{2}\) 倍して、電流の最大値を求めます。
  3. 電圧と電流の実効値の積から、平均消費電力を計算します。

思考の道筋とポイント
交流回路の計算では、「どの値(瞬時値、最大値、実効値)を使っているか」を常に意識することが重要です。

  • 抵抗においては、電圧と電流の位相が揃っているため、直流と同じようにオームの法則が適用できます。
  • 「実効値」は、電力(エネルギー)の観点で直流と等価な値として定義されているため、平均消費電力の計算式が直流のときと同じ \(P = IV\) の形になります。これが実効値を使う最大のメリットです。

この設問における重要なポイント

  • オームの法則の適用: \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\) および \(V_0 = R I_0\) が成り立ちます。
  • 電力の計算: 平均消費電力は、必ず「実効値」同士の積で計算します。最大値同士の積 \(V_0 I_0\) を使うと、実際の電力の2倍になってしまうので注意が必要です(\(P = \frac{1}{2} V_0 I_0\) ならOK)。

具体的な解説と立式
まず、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
抵抗値を \(R\)、電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\) とすると、オームの法則より以下の式が成り立ちます。
$$ I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{R} $$
次に、電流の最大値 \(I_0\) を求めます。
正弦波交流における実効値と最大値の関係式より、以下の式を立てます。
$$ I_0 = \sqrt{2} I_{\text{実効}} $$
最後に、抵抗の平均消費電力 \(\bar{P}\) を求めます。
実効値を用いた電力の公式より、以下の式を立てます。
$$ \bar{P} = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}} $$

使用した物理公式

  • オームの法則(実効値): \(I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{R}\)
  • 最大値と実効値の関係: \(I_0 = \sqrt{2} I_{\text{実効}}\)
  • 平均消費電力: \(\bar{P} = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\)
計算過程

まず、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を計算します。
問題文より \(V_{\text{実効}} = 100 \, \text{V}, R = 20 \, \Omega\) です。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{100}{20} \\[2.0ex]
&= 5.0 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
次に、電流の最大値 \(I_0\) を計算します。
\(\sqrt{2} \approx 1.41\) として計算します(問題文の有効数字が2桁であるため)。
$$
\begin{aligned}
I_0 &= 1.41 \times 5.0 \\[2.0ex]
&= 7.05 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、小数第2位を四捨五入します。
$$
\begin{aligned}
I_0 &\approx 7.1 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
最後に、平均消費電力 \(\bar{P}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{P} &= 100 \times 5.0 \\[2.0ex]
&= 500 \, \text{W}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁の科学的表記法で表します。
$$
\begin{aligned}
\bar{P} &= 5.0 \times 10^2 \, \text{W}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

1. 状況の要約: \(100 \, \text{V}\) のコンセントに、\(20 \, \Omega\) の電熱線(抵抗)をつないだときに、どれくらいの電流が流れ、どれくらいの熱(電力)が発生するかを計算します。
2. 解法のロジック:

  • 電流の実効値: 「平均的な電圧パワー」が \(100 \, \text{V}\) なので、流れる「平均的な電流パワー」もオームの法則で単純に割り算して求められます。
  • 電流の最大値: 交流なので、電流も波打っています。平均が \(5.0 \, \text{A}\) なら、波の頂点(最大値)はそれより少し高く、\(\sqrt{2}\) 倍になります。
  • 消費電力: 「実効値」はもともと「直流と同じように電力計算ができる値」として作られた便利な数字です。だから、電力は \((\text{電圧の実効値}) \times (\text{電流の実効値})\) で簡単に計算できます。

3. 結果の解釈: この電熱線には、平均的なパワーとして \(5.0 \, \text{A}\) の電流が流れており、瞬間的には最大 \(7.1 \, \text{A}\) まで流れます。そして、\(500 \, \text{W}\) のヒーターとして機能することになります。

別解: 最大値を用いて電力を計算する

思考の道筋とポイント
平均消費電力は、最大値 \(V_0, I_0\) を用いても計算できます。
実効値の定義 \(V_{\text{実効}} = V_0 / \sqrt{2}, I_{\text{実効}} = I_0 / \sqrt{2}\) を電力の式に代入することで、最大値を用いた公式が導かれます。

この設問における重要なポイント

  • 最大値を用いた電力公式: \(\bar{P} = \frac{1}{2} V_0 I_0\)
  • 係数 \(1/2\) の意味: 電圧と電流の積(瞬時電力)は \(\sin^2{\omega t}\) の形で変化し、その平均値が最大値の半分になることを意味しています。

具体的な解説と立式
平均消費電力 \(\bar{P}\) を、電圧の最大値 \(V_0\) と電流の最大値 \(I_0\) を用いて表します。
$$ \bar{P} = \frac{1}{2} V_0 I_0 $$
ここで、\(V_0\) は前の設問(あるいは実効値からの計算)より \(V_0 = \sqrt{2} V_{\text{実効}}\) です。

計算過程

まず \(V_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= \sqrt{2} \times 100 \\[2.0ex]
&\approx 141.4 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
これと、先ほど求めた \(I_0 \approx 7.05 \, \text{A}\) (四捨五入前の値を使うのが精度良く計算するコツです)を公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\bar{P} &= \frac{1}{2} \times 141.4 \times 7.05 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 996.87 \\[2.0ex]
&\approx 498.4 \, \text{W}
\end{aligned}
$$
有効数字や \(\sqrt{2}\) の近似の影響でわずかにズレますが、約 \(5.0 \times 10^2 \, \text{W}\) となり、実効値を使った計算結果と一致します。
(※実効値同士の積の方が計算がシンプルで誤差も出にくいことがわかります。)

この設問の平易な説明

1. 状況の要約: 電力の計算を、平均値(実効値)ではなく、波の頂点(最大値)同士の掛け算から求めてみます。
2. 解法のロジック: 電圧の最大値と電流の最大値を掛けると、「瞬間的な最大電力」が出ます。しかし、交流は常に最大パワーを出しているわけではなく、\(0\) になる瞬間もあります。平均すると、最大パワーのちょうど半分になることがわかります。
3. 結果の解釈: 最大電圧 \(141 \, \text{V}\) と最大電流 \(7.1 \, \text{A}\) を掛けると約 \(1000 \, \text{W}\) になりますが、平均電力はその半分の \(500 \, \text{W}\) です。これは実効値を使って計算した結果と同じです。

解答 実効値: \(5.0 \, \text{A}\), 最大値: \(7.1 \, \text{A}\), 電力: \(5.0 \times 10^2 \, \text{W}\)
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4 周波数とリアクタンスの関係

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コイルとコンデンサーのリアクタンス(交流に対する抵抗成分)の周波数特性」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コイルのリアクタンス \(X_L\): 自己誘導により電流の変化を妨げる働き。周波数 \(f\) に比例します。
  2. コンデンサーのリアクタンス \(X_C\): 電荷の蓄積により電圧の変化を妨げる働き。周波数 \(f\) に反比例します。
  3. 角周波数 \(\omega\) と周波数 \(f\) の関係: \(\omega = 2\pi f\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. コイルとコンデンサーそれぞれのリアクタンスの公式を書き出します。
  2. 公式内の周波数 \(f\) が分子にあるか分母にあるかを確認します。
  3. \(f\) が大きくなったとき、リアクタンスの値がどう変化するかを判断します。

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