プロセス
1 電磁誘導とレンツの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「電磁誘導とレンツの法則」です。磁石の運動によってコイルに生じる誘導電流の向きと、回路内の電位の関係を正しく理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- レンツの法則: 誘導電流は、その原因となる磁束の変化を妨げる向きに磁場を作るように流れる(「変化を嫌う」法則)。
- 右ネジの法則: 電流がつくる磁場の向き、あるいは磁場の変化によって生じる電流の向きを決める法則。
- コイルの電源化: 電磁誘導が起こっているコイルは、起電力を持つ「電池(電源)」とみなせる。
- オームの法則と電位: 抵抗では電流は高電位から低電位へ流れるが、電源内部では電流は低電位から高電位へ汲み上げられる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 磁石の動きから、コイルを貫く磁束の向きと増減を判定する。
- レンツの法則を用いて、コイルが作ろうとする誘導磁場の向き(変化を打ち消す向き)を決める。
- 右ネジの法則を用いて、その誘導磁場を作るために必要な誘導電流の向きを決める。
- コイルを電池とみなし、回路全体の電流の向きと電位の高低を判断する。
思考の道筋とポイント
この問題では、以下の4ステップで論理的に答えを導きます。
- 磁束の変化: 磁石のS極がコイルの左側にあり、左へ遠ざかっています。S極付近の磁力線はS極に向かって入る向き(右から左)です。磁石が遠ざかると、この「右から左」向きの磁束が弱まります。
- レンツの法則: コイルは磁束が減るのを嫌がります。「減るなら足そう」とするため、コイル自身が「右から左」向きの磁場を作ろうとします。
- 電流の向き: 「右から左」向きの磁場を作るには、右ネジの法則より、電流はどう流れるべきかを考えます。
- 電位の判定: 電流の向きが決まったら、コイルを電池、抵抗を負荷として、電位の高い場所を特定します。
この設問における重要なポイント
- 磁力線の向き: N極からは出て、S極には入ります。したがって、S極の近くでは磁場はS極に向かう方向です。
- 「妨げる」の意味: 磁束が増えるときは「減らす(逆)向き」に、減るときは「補う(同じ)向き」に誘導磁場が生じます。
- 電源と負荷の区別:
- 抵抗(負荷): 電流は高電位 \(\rightarrow\) 低電位へ流れます(水が高いところから低いところへ流れるイメージ)。
- コイル(電源): 電流は内部で低電位 \(\rightarrow\) 高電位へ流れます(ポンプで水を低いところから高いところへ汲み上げるイメージ)。
具体的な解説と立式
数式による計算ではなく、物理法則を順に適用して判断します。
1. 磁束の変化の特定
図において、磁石のS極がコイルの左側に位置しています。磁力線はS極に向かって入ってくるため、コイルの位置における磁石による磁場は、右から左(\(\leftarrow\))の向きです。
磁石がコイルから左へ遠ざかると、コイルを貫くこの「左向きの磁束」が減少します。
2. レンツの法則の適用
レンツの法則より、コイルには「磁束の減少を妨げる」向き、つまり減少した左向きの磁束を補う向き(\(\leftarrow\))に誘導磁場が生じます。
これは、コイルの左端(磁石側)をN極、右端をS極にするような磁場です。
3. 誘導電流の向きの決定
コイル内部に左向き(\(\leftarrow\))の磁場を作る電流の向きを、右ネジの法則で求めます。
左手の親指を左(誘導磁場の向き)に向けると、他の4本の指は電流の流れる向きに回ります。
図のコイルの巻き方を確認すると、電流がコイル内部で右から左へ進むとき、手前側の導線では下から上へ流れるような巻き方になっています(あるいは、単純に右ネジの法則を適用すると、右側から見て時計回りの電流となります)。
これにより、誘導電流はコイルの右端(Q側)から入り、左端(P側)へ抜ける向きに流れます。
したがって、外部回路(抵抗)においては、電流は P \(\rightarrow\) Q の向きに流れます。
図中の矢印と比較すると、これは b の向きです。
4. 電位の比較
この現象において、コイルは誘導起電力を生じる「電池(電源)」として機能しています。
コイル内部では、電流はQ側からP側へ向かって流れています。電池内部では電流は負極(低電位)から正極(高電位)へ向かうため、電流が流れ出てくる P側が正極(高電位)、Q側が負極(低電位)となります。
また、抵抗(負荷)で見ると、電流はPから入ってQへ抜けています。抵抗では電流は電位の高い方から低い方へ流れるため、やはりPの方が電位が高いと判断できます。
使用した物理公式
- レンツの法則: 誘導電流は磁束の変化を妨げる向きに流れる。
- 右ネジの法則: 電流と磁場の向きの関係。
この問題は定性的な判断のみで解けるため、計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」での論理展開がそのまま解答プロセスとなります。
- 磁束の向き: 左向き(\(\leftarrow\))
- 磁束の変化: 減少
- 誘導磁場の向き: 左向き(\(\leftarrow\))
- 誘導電流の向き: コイル内部で右から左(Q \(\rightarrow\) P)
- 抵抗を流れる電流: P \(\rightarrow\) Q (向き b)
- 電位: P \(>\) Q
コイルは「変化を嫌う頑固者」だと考えてください。
- 状況の要約: 磁石のS極が左へ逃げていこうとしています。コイルの中を左向きに貫いていた磁力線が減ってしまいます。
- 解法のロジック: コイルは「減るのは嫌だ!」と抵抗し、自分で左向きの磁力線を出して、減った分を補おうとします。この磁力線を作るために、コイルは自分で電気を流し始めます。
- 結果の解釈: その結果、コイルは電池に変身します。電流を送り出す出口側であるP点が、電池のプラス極(高電位)になります。抵抗にはPからQへ電流が流れるので、答えはbの向きです。
思考の道筋とポイント
レンツの法則を「相対運動を妨げる力が働く」という観点から解釈します。磁束の変化を考えるのが苦手な場合に有効な、より直感的なアプローチです。
この設問における重要なポイント
- 作用・反作用: 磁石がコイルに力を及ぼすのと同時に、コイルも磁石に力を及ぼします。
- 運動を妨げる力: 遠ざかるものには「引き戻す力(引力)」、近づくものには「押し返す力(斥力)」が働きます。
具体的な解説と立式
1. 運動の妨げ
磁石のS極がコイルから遠ざかっています。レンツの法則より、コイルにはこの「遠ざかる動き」を妨げるような力が働きます。つまり、磁石を引き戻そうとする「引力」が発生します。
2. コイルの磁極
S極を引き寄せるためには、コイルの左端(磁石に近い側)が「N極」になる必要があります(異極同士は引き合うため)。
3. 電流の向き
コイルの左端をN極にする(=コイル内部に左向きの磁場を作る)ためには、右ネジの法則より、電流はコイルの手前側で下から上へ流れる必要があります。
これをたどると、回路には P \(\rightarrow\) Q の向き(bの向き)に電流が流れることがわかります。
4. 電位の判定
メインの解説と同様に、コイルが電流をP側へ送り出していることから、Pが高電位であると判断します。
使用した物理公式
- 磁極間の引力・斥力: 同極は反発し、異極は引き合う。
計算はありません。
「去る者は追う」のがレンツの法則です。
- 状況の要約: S極を持った磁石が逃げていくので、コイルはそれを引き止めようとして、磁石側にN極を作ります(NとSは引き合うからです)。
- 解法のロジック: 「左側をN極にする」ような電流の向きを右手の親指(N極の向き)を使って探すと、電流はbの向きだとすぐに分かります。
2 磁束の計算
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「一様な磁場中の磁束の計算」です。磁束密度と磁束の定義、およびそれらの関係式を正しく運用できるかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 磁束密度 \(B \, [\text{T}]\) の定義: 単位面積あたりの磁束の本数。
- 磁束 \(\Phi \, [\text{Wb}]\) の定義: ある面を貫く磁束の総本数。
- 面と磁場の位置関係: 面が磁場に対して垂直であるとき、磁束は最大となる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から磁束密度 \(B\) と断面積 \(S\) の値を読み取る。
- コイルの面が磁場に対して垂直であることを確認する。
- 磁束の定義式 \(\Phi = BS\) を用いて計算する。
思考の道筋とポイント
この問題では、以下のステップで解を導きます。
- 物理量の確認: 与えられた数値は、磁束密度 \(B = 5.0 \, \text{T}\) と、コイルの断面積 \(S = 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}^2\) です。
- 角度の確認: 問題文に「断面が磁場と垂直になるように置かれている」とあります。これは、磁束が面を斜めではなく、真っ直ぐに貫いていることを意味します。この場合、射影(\(\cos \theta\))を考える必要はなく、単純な掛け算で総量を求められます。
- 公式の適用: 磁束密度(密度)と面積(広さ)から、磁束(総量)を求める式 \(\Phi = BS\) を適用します。
この設問における重要なポイント
- 磁束密度 \(B\) の意味: \(1 \, \text{m}^2\) あたり何本の磁束線が通っているかを表す「混み具合」の指標です。単位 \(\text{T}\) は \(\text{Wb}/\text{m}^2\) と等価です。
- 磁束 \(\Phi\) の意味: その面積全体を貫いている磁束線の「総本数」です。
- 垂直の意味: 面が磁場に垂直(法線ベクトルが磁場と平行)なとき、その面を貫く磁束は最大値 \(\Phi = BS\) となります。もし面が傾いていれば \(\Phi = BS \cos \theta\) となりますが、今回は \(\theta = 0^\circ\) なので \(\cos 0^\circ = 1\) です。
具体的な解説と立式
求める磁束を \(\Phi \, [\text{Wb}]\) とします。
コイルの断面は磁場と垂直であるため、磁束密度 \(B\) と断面積 \(S\) の積がそのまま磁束 \(\Phi\) となります。
$$ \Phi = BS $$
使用した物理公式
- 磁束の定義式: \(\Phi = BS\) (面が磁場に垂直な場合)
与えられた数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\Phi &= 5.0 \times (1.0 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-2} \, \text{Wb}
\end{aligned}
$$
雨量計のイメージで考えると分かりやすいです。
- 状況の要約: 一様な雨(磁場)が降っている中に、バケツ(コイル)を置きます。
- 解法のロジック:
- 磁束密度 \(5.0 \, \text{T}\) は、「雨の激しさ(1平方メートルあたり5.0粒降っている)」に相当します。
- 断面積 \(1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}^2\) は、「雨を受けるバケツの口の広さ」です。
- 「断面が磁場と垂直」というのは、バケツを真上に向けて、雨を一番効率よく受け止めている状態です。
- 結果の解釈: したがって、バケツに入ってくる雨粒の総数(磁束 \(\Phi\))は、単純に「激しさ」×「広さ」で計算できます。
思考の道筋とポイント
物理公式を忘れてしまっても、単位の意味を考えることで式を導き出し、検算することができます。
この設問における重要なポイント
- 単位の換算: 磁束密度の単位 \(\text{T}\)(テスラ)は、\(\text{Wb}/\text{m}^2\)(ウェーバ・毎・平方メートル)と定義されています。
具体的な解説と立式
単位の関係式 \([\text{T}] = [\text{Wb}] / [\text{m}^2]\) に着目します。
求めたい磁束の単位は \([\text{Wb}]\) です。これを得るためには、磁束密度 \([\text{Wb}/\text{m}^2]\) に面積 \([\text{m}^2]\) を掛ければよいことが分かります。
$$ \text{磁束} \, [\text{Wb}] = \text{磁束密度} \, [\text{Wb}/\text{m}^2] \times \text{面積} \, [\text{m}^2] $$
使用した物理公式
- 単位の関係: \(1 \, \text{T} = 1 \, \text{Wb}/\text{m}^2\)
$$
\begin{aligned}
\Phi &= 5.0 \, [\text{Wb}/\text{m}^2] \times (1.0 \times 10^{-2}) \, [\text{m}^2] \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-2} \, \text{Wb}
\end{aligned}
$$
「テスラ」という単位は、「1平方メートルあたり何ウェーバか」を表す単位(\(\text{Wb}/\text{m}^2\))です。
これに「何平方メートルあるか(面積)」を掛ければ、分母の \(\text{m}^2\) が約分されて、磁束の総量(\(\text{Wb}\))だけが残ります。
3 ファラデーの電磁誘導の法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ファラデーの電磁誘導の法則」です。磁束の変化によってコイルに生じる誘導起電力の大きさを計算する力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ファラデーの電磁誘導の法則: 誘導起電力の大きさは、コイルを貫く磁束の時間変化率に比例する。
- 磁束の変化: 磁束 \(\Phi\) は磁束密度 \(B\) と面積 \(S\) の積であり、今回は \(B\) が変化することで \(\Phi\) が変化する。
- 巻数 \(N\) の影響: コイルの巻数が多いほど、誘導起電力は大きくなる(各巻きに生じる起電力の和となるため)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、コイルの断面積 \(S\)、巻数 \(N\)、時間 \(\Delta t\)、磁束密度の変化量 \(\Delta B\) を読み取る。
- 磁束の変化量 \(\Delta \Phi\) を、\(\Delta \Phi = (\Delta B)S\) として計算する。
- ファラデーの電磁誘導の法則 \(V = \left| -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) に値を代入して、誘導起電力の大きさ \(V\) を求める。
思考の道筋とポイント
この問題では、以下のステップで解を導きます。
- 物理量の整理:
- 断面積 \(S = 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}^2\)
- 巻数 \(N = 2.0 \times 10^3 \, \text{回}\)
- 時間変化 \(\Delta t = 0.20 \, \text{s}\)
- 磁束密度の変化 \(\Delta B = 5.0 \, \text{T}\) (「5.0T増加した」とあるので、これが変化量そのものです)
- 磁束の変化 \(\Delta \Phi\) の計算:
- 磁束 \(\Phi = BS\) ですが、今回は面積 \(S\) は一定で、磁束密度 \(B\) だけが変化します。
- したがって、磁束の変化量は \(\Delta \Phi = (\Delta B) \times S\) となります。
- 誘導起電力 \(V\) の計算:
- ファラデーの法則 \(V = N \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) を用います。
- ここで、\(\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) は「1秒あたりの磁束の変化量」を表します。
- 巻数 \(N\) を掛けるのを忘れないように注意します。
この設問における重要なポイント
- 変化量 \(\Delta\) の扱い: 公式中の \(\Delta \Phi\) は「磁束の変化量」です。問題文で「\(5.0 \, \text{T}\) 増加した」と与えられているのは \(\Delta B\) なので、これをそのまま使えます。(もし「\(2.0 \, \text{T}\) から \(7.0 \, \text{T}\) になった」という記述なら、引き算して \(\Delta B = 5.0 \, \text{T}\) を求める必要があります。)
- 巻数 \(N\) の意味: 1巻きのコイルに生じる起電力が、\(N\) 回巻くことで直列に \(N\) 個つながった状態になります。だから \(N\) 倍されるのです。
- 単位の確認: 全てSI単位(\(\text{m}^2\), \(\text{T}\), \(\text{s}\))で与えられているので、そのまま計算すれば結果はボルト \([\text{V}]\) になります。
具体的な解説と立式
誘導起電力の大きさを \(V \, [\text{V}]\) とします。
ファラデーの電磁誘導の法則より、
$$
\begin{aligned}
V &= \left| -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right| \\[2.0ex]
&= N \frac{|\Delta \Phi|}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
ここで、磁束の変化量 \(\Delta \Phi\) は、磁束密度の変化量 \(\Delta B\) と断面積 \(S\) を用いて、
$$ \Delta \Phi = (\Delta B) S $$
と表せます。
これらを組み合わせると、以下の式が立ちます。
$$ V = N \frac{(\Delta B) S}{\Delta t} $$
使用した物理公式
- ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = \left| -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\)
- 磁束の変化: \(\Delta \Phi = (\Delta B) S\)
数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= (2.0 \times 10^3) \times \frac{5.0 \times (1.0 \times 10^{-2})}{0.20} \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^3) \times \frac{5.0 \times 10^{-2}}{0.20} \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^3) \times \frac{5.0 \times 10^{-2}}{2.0 \times 10^{-1}} \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^3) \times (2.5 \times 10^{-1}) \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
発電の原理に関する計算です。
- 状況の要約: コイルの中を通る磁場が、\(0.20\) 秒という短い間にグッと強くなりました。
- 解法のロジック:
- 磁場が変化すると、コイルは発電します(電磁誘導)。
- 発電する電圧(誘導起電力)の大きさは、「磁場の変化が急激であるほど(\(\Delta t\) が小さいほど)」、「コイルの面積が広いほど(\(S\) が大きいほど)」、「たくさん巻いてあるほど(\(N\) が大きいほど)」大きくなります。
- これらを掛け合わせる(時間は割り算)ことで、電圧が求まります。
- 結果の解釈: 今回は \(2000\) 回も巻いてあるため、わずかな時間の変化でも \(500 \, \text{V}\) という大きな電圧が発生しました。
思考の道筋とポイント
式全体を一気に計算するのではなく、物理的な意味の塊ごとに計算を進めるアプローチです。計算ミスを防ぎやすくなります。
この設問における重要なポイント
- 磁束の変化率: \(\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) は、「1秒あたり何ウェーバ磁束が変化したか」を表す量で、これが1巻きあたりの起電力 \([\text{V}]\) に相当します。
具体的な解説と立式
まず、1巻きのコイルを貫く磁束の変化量 \(\Delta \Phi\) を求めます。
$$ \Delta \Phi = (\Delta B) S $$
次に、単位時間あたりの磁束の変化率(=1巻きあたりの誘導起電力 \(v\))を求めます。
$$ v = \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} $$
最後に、巻数 \(N\) を掛けて全体の誘導起電力 \(V\) を求めます。
$$ V = N v $$
使用した物理公式
- 磁束の定義: \(\Phi = BS\)
- ファラデーの法則(1巻きあたり): \(v = \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= 5.0 \times (1.0 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-2} \, \text{Wb} \\[2.0ex]
v &= \frac{5.0 \times 10^{-2}}{0.20} \\[2.0ex]
&= \frac{5.0 \times 10^{-2}}{2.0 \times 10^{-1}} \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-1} \, \text{V/巻} \\[2.0ex]
V &= (2.0 \times 10^3) \times (2.5 \times 10^{-1}) \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^2 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
- まず、コイル1巻きあたりでどれくらいの磁束が変わったかを計算します。
- それを時間で割って、「1巻きあたり何ボルトの電池になったか」を求めます(結果は \(0.25 \, \text{V}\))。
- その小さな電池が \(2000\) 個直列につながっているのと同じなので、最後に \(2000\) 倍します。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
4 磁場中を動く導体棒の誘導起電力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「磁場中を運動する導体棒に生じる誘導起電力」です。公式を適用するだけでなく、なぜ起電力が生じるのかというメカニズムを理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子(自由電子)が受ける力。
- 誘導起電力の公式 \(V = vBL\): 導体棒、速度、磁場が互いに垂直な場合に成立する。
- ファラデーの電磁誘導の法則: 磁束の変化が起電力を生むという別視点。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文から、磁束密度 \(B\)、棒の長さ \(L\)、速度 \(v\) の値を読み取る。
- 棒の向き、運動の向き、磁場の向きが互いに垂直であることを確認する。
- 公式 \(V = vBL\) を用いて計算する。
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
まずは2週間、無料でこの続きを読んでみませんか?