「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅵ 章 21】基本例題~基本問題529

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基本例題

基本例題73 誘導起電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 符号を厳密に定義した数式による解法
      • 模範解答が「大きさ」を計算してから「レンツの法則」で向きを判定するのに対し、別解では座標系と正の向きを厳密に定義し、符号付きの数式を用いて計算だけで向きまで決定します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 符号ミスの防止: 「増加・減少」「右・左」といった定性的な判断を繰り返す必要がなく、数式処理で機械的に正しい符号(向き)が得られます。
    • 物理的定義の理解深化: ファラデーの電磁誘導の法則におけるマイナス符号の意味と、回路における電位の正負の定義を深く理解する訓練になります。
  3. 結果への影響
    • 最終的に得られるグラフの形状と数値は、模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「時間変化する磁場中のコイルに生じる誘導起電力」です。電磁誘導の法則をグラフと結びつけて理解し、正確に計算・描図する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束 \(\phi\) が変化すると、その変化を妨げるように誘導起電力 \(V\) が生じる。式で表すと \(|V| = N \left| \frac{\Delta \phi}{\Delta t} \right|\)。
  2. 磁束と磁束密度: 一様な磁場中では、磁束 \(\phi\) は磁束密度 \(B\) と断面積 \(S\) の積 \(\phi = BS\) で表される。
  3. レンツの法則: 誘導起電力(および誘導電流)は、磁束の変化を「打ち消す」向きに生じる。
  4. グラフの傾きと変化率: \(B-t\) グラフの傾きは、磁束密度の時間変化率 \(\frac{\Delta B}{\Delta t}\) を表す。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、\(B-t\) グラフの傾きが変化する点(時刻 \(2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\) と \(4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\))で区間を分けます。
  2. 各区間について、グラフから磁束密度の変化率(傾き)を読み取ります。
  3. ファラデーの法則を用いて誘導起電力の大きさを計算し、レンツの法則を用いて向き(正負)を決定します。
  4. 求めた値を \(V-t\) グラフとして描画します。

誘導起電力のグラフ化

思考の道筋とポイント
誘導起電力 \(V\) は、磁束 \(\phi\) の時間変化率に比例します。ここでは断面積 \(S\) が一定なので、磁束密度 \(B\) の時間変化率、つまり与えられた \(B-t\) グラフの「傾き」に注目します。傾きが一定の区間では誘導起電力も一定(定数)となり、傾きが \(0\) の区間では誘導起電力も \(0\) になります。
この設問における重要なポイント

  • コイルの巻数 \(N = 500\)、断面積 \(S = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^2\)。
  • 磁場 \(B\) は右向きを正、誘導起電力 \(V\) はXが高電位(Xがプラス極)となる場合を正とする。
  • 時間区間を以下の3つに分けて考える。
    1. \(0 \le t \le 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\)
    2. \(2.0 \times 10^{-2} \le t \le 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\)
    3. \(4.0 \times 10^{-2} \le t \le 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\)

具体的な解説と立式
各区間において、ファラデーの電磁誘導の法則に基づき、誘導起電力の大きさ \(|V|\) を求める式を立てます。
磁束の変化は \(\Delta \phi = \Delta B \times S\) なので、起電力の大きさの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
|V| &= \left| -N \frac{\Delta \phi}{\Delta t} \right| \\[2.0ex]
&= N S \left| \frac{\Delta B}{\Delta t} \right|
\end{aligned}
$$
ここで、\(\frac{\Delta B}{\Delta t}\) は \(B-t\) グラフの傾きに相当します。

1. 区間 \(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
グラフより、\(B\) は \(0\) から \(2.0 \times 10^{-2}\,\text{T}\) まで増加しています。
$$ |V_1| = 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \left| \frac{2.0 \times 10^{-2} – 0}{2.0 \times 10^{-2} – 0} \right| $$
向きの判定(レンツの法則):
右向きの磁束が増加しているため、それを妨げる「左向き」の磁束を作る向きに誘導電流を流そうとします。右手の法則より、電流は Y \(\rightarrow\) コイル \(\rightarrow\) X の向きに流れます。コイルを電池とみなすと、電流が出てくる端子 X が正極(高電位)となります。したがって、\(V_1\) は正の値です。

2. 区間 \(2.0 \times 10^{-2} \sim 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
グラフより、\(B\) は一定です。
$$ |V_2| = 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \left| 0 \right| $$

3. 区間 \(4.0 \times 10^{-2} \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
グラフより、\(B\) は \(2.0 \times 10^{-2}\,\text{T}\) から \(0\) まで減少しています。
$$ |V_3| = 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \left| \frac{0 – 2.0 \times 10^{-2}}{8.0 \times 10^{-2} – 4.0 \times 10^{-2}} \right| $$
向きの判定(レンツの法則):
右向きの磁束が減少しているため、それを補う「右向き」の磁束を作る向きに誘導電流を流そうとします。右手の法則より、電流は X \(\rightarrow\) コイル \(\rightarrow\) Y の向きに流れます。コイルを電池とみなすと、電流が出てくる端子 Y が正極となり、X は負極(低電位)となります。したがって、\(V_3\) は負の値です。

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則(大きさ): \(|V| = N \left| \frac{\Delta \phi}{\Delta t} \right|\)
  • 磁束の定義: \(\phi = BS\)
計算過程

各区間の値を計算します。

1. 区間 \(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
$$
\begin{aligned}
|V_1| &= 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \frac{2.0 \times 10^{-2}}{2.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= 0.50 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 0.50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
向きは正なので、\(V_1 = 0.50\,\text{V}\)。

2. 区間 \(2.0 \times 10^{-2} \sim 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
傾きが \(0\) なので、
$$ V_2 = 0\,\text{V} $$

3. 区間 \(4.0 \times 10^{-2} \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
$$
\begin{aligned}
|V_3| &= 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \left| \frac{-2.0 \times 10^{-2}}{4.0 \times 10^{-2}} \right| \\[2.0ex]
&= 0.50 \times \left| -0.50 \right| \\[2.0ex]
&= 0.50 \times 0.50 \\[2.0ex]
&= 0.25\,\text{V}
\end{aligned}
$$
向きは負なので、\(V_3 = -0.25\,\text{V}\)。

この設問の平易な説明

コイルの中を貫く磁場の強さが変わると、コイルは発電機(電池)に変身します。最初の区間では、磁場が急激に強くなっているので、その変化を打ち消そうと頑張って強い電気(\(0.50\,\text{V}\))を作ります。このとき、X側がプラスになる向きに電気が生まれます。次の区間では、磁場の強さが変わらないので、コイルは発電しません(\(0\,\text{V}\))。最後の区間では、磁場がゆっくり弱くなっているので、今度は減るのを食い止めようと逆向きに電気を作ります。変化がゆっくりなので、発電する力は最初より弱く(\(-0.25\,\text{V}\))なります。

結論と吟味

\(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\) で \(V = 0.50\,\text{V}\)、\(2.0 \times 10^{-2} \sim 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\) で \(V = 0\,\text{V}\)、\(4.0 \times 10^{-2} \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\) で \(V = -0.25\,\text{V}\) となりました。グラフの傾きが急なほど(変化が激しいほど)大きな電圧が生じ、傾きの正負が逆転すると電圧の正負も逆転するという物理的直感と一致しています。また、最後の区間は時間が2倍かかっている(変化が緩やか)ため、電圧の大きさは最初の区間の半分になっています。これも妥当です。

解答 グラフは以下の通り。
・\(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(0.50\,\text{V}\)
・\(2.0 \sim 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(0\,\text{V}\)
・\(4.0 \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(-0.25\,\text{V}\)
別解: 符号を厳密に定義した数式による解法

思考の道筋とポイント
物理では「正の向き」を自分で定義し、数式を用いて符号付きで計算することで、向きの判断ミスを防ぐことができます。ここでは、問題文で与えられた定義と、ファラデーの法則の標準的な定義(右ネジの関係)を照らし合わせ、符号を含めた計算を行います。
この設問における重要なポイント

  • ファラデーの電磁誘導の法則のベクトル形式: 閉回路を貫く磁束 \(\Phi\) の正の向きに対して「右ネジ」の向きに生じる誘導起電力 \(V_{\text{右ネジ}}\) は、以下の式で表されます。
    $$ V_{\text{右ネジ}} = -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} $$
  • 問題の定義との整合性:
    • 磁束 \(\Phi\): 右向きが正(問題文より)。
    • 誘導起電力 \(V\): Xが高電位(X \(\to\) 外回路 \(\to\) Y)が正。
    • ここで、磁束の正の向き(右向き)に対して「右ネジ」の向きは、Y側から見て反時計回り、つまり回路内を X \(\to\) Y と流れる向き(Yが高電位となる向き)です。
    • したがって、数式上の標準的な起電力 \(V_{\text{右ネジ}}\)(Yが高電位)と、問題で求められている \(V\)(Xが高電位)は、符号が逆の関係にあります。すなわち、\(V = -V_{\text{右ネジ}}\) です。

具体的な解説と立式
上記の考察より、求める起電力 \(V\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
V &= – V_{\text{右ネジ}} \\[2.0ex]
&= – \left( -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right) \\[2.0ex]
&= N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
この式 \(V = N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) に、符号付きの磁束変化 \(\Delta \Phi = S \Delta B\) を代入して計算します。

1. 区間 \(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
\(\Delta B > 0\) なので、
$$ V_1 = 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \frac{2.0 \times 10^{-2} – 0}{2.0 \times 10^{-2}} $$

2. 区間 \(4.0 \times 10^{-2} \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
\(\Delta B < 0\) なので、
$$ V_3 = 500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \frac{0 – 2.0 \times 10^{-2}}{8.0 \times 10^{-2} – 4.0 \times 10^{-2}} $$

使用した物理公式

  • 符号付きファラデーの法則(本問の定義に合わせて調整済み): \(V = N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
計算過程

1. 区間 \(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 0.50 \times \frac{+2.0 \times 10^{-2}}{2.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= +0.50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
自動的に正の値が得られました。

2. 区間 \(4.0 \times 10^{-2} \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\):
$$
\begin{aligned}
V_3 &= 0.50 \times \frac{-2.0 \times 10^{-2}}{4.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= 0.50 \times (-0.50) \\[2.0ex]
&= -0.25\,\text{V}
\end{aligned}
$$
自動的に負の値が得られました。

この設問の平易な説明

「右向きの磁場が増えるとき、X側がプラスになる」というルールを最初に数式として作ってしまいました。あとは、グラフの数字をそのまま式に入れるだけで、プラスマイナスも含めて正しい答えが出てきます。いちいち「右ネジだから…」と手を動かして考える必要がなくなるので、慣れると非常に強力な方法です。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果(\(0.50\,\text{V}\) と \(-0.25\,\text{V}\))が得られました。この方法は、定義さえ間違えなければ、計算だけで符号まで確定できるため、複雑な問題で特に威力を発揮します。

解答 グラフは以下の通り。
・\(0 \sim 2.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(0.50\,\text{V}\)
・\(2.0 \sim 4.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(0\,\text{V}\)
・\(4.0 \sim 8.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(-0.25\,\text{V}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ファラデーの電磁誘導の法則とグラフの解釈
    • 核心: 誘導起電力の大きさ \(|V|\) が、磁束の時間変化率 \(\left| \frac{\Delta \phi}{\Delta t} \right|\) に比例するという法則です。本問のようにコイルの断面積 \(S\) が一定の場合、これは磁束密度 \(B\) の時間変化率、すなわち \(B-t\) グラフの傾きの大きさ に直結します。
    • 理解のポイント: 「グラフの傾きが急であるほど電圧(起電力)が大きくなる」「傾きがゼロ(水平)なら電圧もゼロになる」という視覚的な情報と数式を結びつけて理解することが重要です。
  • レンツの法則による向きの判定
    • 核心: 自然界は「急激な変化を嫌う」という性質を持っています。磁束が増えればそれを打ち消そうとする向きに、減ればそれを補おうとする向きに磁場を作るよう、誘導電流が流れます。
    • 理解のポイント: 「現在の磁場の向き」だけで判断せず、「磁場の変化の向き(増えたか減ったか)」に注目するのがコツです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コイルが磁場領域に出入りする問題: この場合、磁束密度 \(B\) は一定ですが、磁場中にあるコイルの面積 \(S\) が変化します。このときも \(\phi = BS\) の変化率を考えますが、横軸が時間 \(t\) ではなく位置 \(x\) のグラフを描かせる問題も頻出です。
    • 導体棒がレール上を動く問題: これも回路の面積 \(S\) が変化するパターンの一種です。ファラデーの法則でも解けますが、導体棒の速度 \(v\) を用いた公式 \(V = vBL\) を使う方が計算が速い場合があります。本問のように「回路自体が動かない」場合はファラデーの法則が基本です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 何が変化しているかを見抜く: 磁束 \(\phi = BS\) のうち、磁束密度 \(B\) が時間変化しているのか(本問)、面積 \(S\) が時間変化しているのか、あるいはコイルの角度が変わっているのかを確認します。
    2. グラフの「折れ点」をマークする: \(B-t\) グラフの傾きが変化する瞬間(折れ曲がる点)は、誘導起電力 \(V\) が不連続に変化する(ステップ状になる)瞬間です。ここが時間区分の境界になります。
    3. 正の向きの定義をチェックする: 問題文で「どちら向きの電流・電圧を正とするか」が指定されている場合、それに逆らわないよう細心の注意を払います。別解で示した「符号付き計算」は、この定義ミスを防ぐのに有効です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 磁束の「向き」と「変化」の混同:
    • 誤解: 「右向きの磁場だから、左向きに磁場を作る電流が流れる」と短絡的に考えてしまう。
    • 対策: 重要なのは「右向きの磁場が 増えているか、減っているか」です。「右向きが増加 \(\rightarrow\) 左向きに作る(反発)」「右向きが減少 \(\rightarrow\) 右向きに作る(維持)」という2ステップで必ず考えましょう。
  • グラフ軸の指数(\(\times 10^{-n}\))の見落とし:
    • 誤解: グラフの目盛りだけを見て、\(2.0\) や \(4.0\) という数値をそのまま計算に使ってしまう。
    • 対策: 軸のラベルにある \(\times 10^{-2}\) などの倍率を必ず丸で囲み、計算式に代入する際は最初から指数付きで書く癖をつけましょう。答えの桁がずれる原因の多くはこれです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ファラデーの電磁誘導の法則 \(V = -N \frac{\Delta \phi}{\Delta t}\) の選択:
    • 選定理由: コイルを貫く磁束が時間とともに変化する現象を扱っているためです。特に、導体棒が動くわけではなく、磁場そのものが変化する状況では、ローレンツ力(\(V=vBL\))の観点よりもファラデーの法則の方が現象を直接的に記述でき、適用しやすいからです。
    • 適用根拠: 磁束 \(\phi\) が \(B \times S\) で表され、\(S\) が定数、\(B\) が時間の関数としてグラフで与えられているため、この公式の \(\frac{\Delta \phi}{\Delta t}\) を \(\frac{\Delta B}{\Delta t} \times S\) と変形して利用するのが最も論理的かつ効率的です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数の計算を分離する:
    • \(500 \times (1.0 \times 10^{-3}) \times \dots\) のような計算では、いきなり掛け算をするのではなく、仮数部(\(500 \times 1.0\))と指数部(\(10^{-3}\))を分けて整理してから計算するとミスが激減します。
  • 傾きの計算は「後引く前」を徹底する:
    • 変化率 \(\frac{\Delta y}{\Delta x}\) を計算するときは、必ず \(\frac{y_{\text{後}} – y_{\text{前}}}{x_{\text{後}} – x_{\text{前}}}\) の順序を守りましょう。特に減少する区間(右下がりのグラフ)で、分子の引き算の順序を逆にして符号を間違えるミスが多発します。
  • 物理的直感による検算:
    • 計算が終わったら、「グラフの傾きが急な区間ほど電圧の絶対値は大きくなっているか?」「傾きがない区間は電圧ゼロになっているか?」という直感的なチェックを必ず行いましょう。これだけで大きな計算ミスは発見できます。

基本例題74 磁場中を運動する導体棒

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: ローレンツ力を用いたミクロな視点からの解法
      • 模範解答が「レンツの法則」を用いて回路全体の磁束変化から考えるのに対し、別解では導体棒内の「自由電子が受けるローレンツ力」に着目して、電荷の移動から直接電位差を導きます。
    • 設問(3)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答が「力のつりあい」を用いて解くのに対し、別解では「外力がする仕事率」と「抵抗での消費電力」が等しいというエネルギー保存則を用いて解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 電磁誘導現象を、マクロな視点(磁束変化)とミクロな視点(ローレンツ力)の両方から理解することで、現象のイメージがより具体的になります。
    • 計算の効率化: エネルギー保存則を用いる方法は、力の向きや大きさを個別に考える必要がなく、計算ミスを減らす強力な検算手段となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「磁場中を運動する導体棒に生じる電磁誘導」です。電磁気学と力学が融合した最重要テーマの一つであり、入試でも頻出です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンツの法則: 誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる。
  2. ファラデーの電磁誘導の法則: 誘導起電力の大きさは、単位時間あたりの磁束の変化量に比例する。式で表すと \(|V| = \left| \frac{\Delta \phi}{\Delta t} \right|\)。
  3. 導体棒に生じる誘導起電力の公式: 磁束密度 \(B\) の磁場中を、長さ \(L\) の導体棒が速度 \(v\) で垂直に横切るとき、\(V = vBL\) の誘導起電力が生じる。
  4. 電流が磁場から受ける力(電磁力): 磁場中の電流は \(F = IBL\) の力を受ける。向きはフレミングの左手の法則で決まる。
  5. 力のつりあい: 一定の速さで動く(等速直線運動)とき、物体に働く力の合力は \(0\) になる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、棒が動くことによる回路の面積変化から磁束の増減を考え、レンツの法則で電流の向きを決定します。電流の向きから、導体棒を電池とみなしたときの正極(高電位側)を判断します。
  2. (2)では、ファラデーの電磁誘導の法則(または公式 \(V=vBL\))を用いて誘導起電力を求め、オームの法則で電流を計算します。
  3. (3)では、導体棒が等速運動をしていることに着目し、外力と、電流が磁場から受ける力(電磁力)がつりあっているという式を立てて解きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
導体棒が動くと、閉回路を貫く磁束が変化します。この変化を打ち消す向きに誘導電流が流れる(レンツの法則)ことを利用します。また、導体棒自体を「起電力を生じている電池」とみなすことが重要です。電池の内部では、電流は負極(低電位)から正極(高電位)に向かって流れることに注意しましょう。
この設問における重要なポイント

  • 棒が右に動くと、回路の面積が増加する。
  • 磁場は上向きである。
  • レンツの法則により、磁束の増加を妨げる向きに磁場を作るよう電流が流れる。
  • 電流を流す源(導体棒)において、電流が出ていく側が高電位である。

具体的な解説と立式
棒PQが右向きに動くと、抵抗 \(R\) と棒PQで作られる閉回路の面積が増加します。
磁場は上向きなので、回路を貫く「上向きの磁束」が増加することになります。

レンツの法則より、この増加を妨げるため、「下向きの磁場」を作る向きに誘導電流が流れます。
右ねじの法則より、下向きの磁場を作る電流の向きは、上から見て時計回りです。
したがって、回路を流れる電流の向きは \(P \rightarrow Q \rightarrow R \rightarrow P\) となります。
つまり、棒PQの中を流れる電流の向きは、\(P \rightarrow Q\) です。

ここで、棒PQを一つの電池とみなします。
電池を含む回路において、電流は電池の正極から出て、外部回路を通り、負極へと戻ります。
棒PQから電流がQ側へ出ていくということは、Q側が電池の正極(プラス極)に相当します。
したがって、Qの電位の方が高くなります。

使用した物理公式

  • レンツの法則
  • 右ねじの法則
計算過程

(計算は不要で、論理的な推論のみで解答します)

この設問の平易な説明

棒が右に動くと、回路の枠が広がり、その中を通る上向きの磁力線が増えます。自然界には「変化を嫌う」という性質(レンツの法則)があるため、回路は増えた上向きの磁力線を打ち消そうとして、下向きの磁力線を自分で作ろうとします。右手を使い、親指を下に向けると、他の指は時計回りに回ります。これが電流の向きです。棒PQの部分ではPからQへ電流が流れるので、Q側が電気を送り出す出口、つまり「プラス極(高電位)」になります。

結論と吟味

電流は \(P \rightarrow Q\) に流れ、Qが高電位となります。

解答 (1) Q
別解: ローレンツ力を用いたミクロな視点からの解法

思考の道筋とポイント
導体棒の中には、自由に動ける電子(自由電子、負電荷)がたくさんあります。導体棒が動くと、中の電子も一緒に動くため、磁場からローレンツ力を受けます。この力が電子をどちらに追いやるかを考えることで、電位の高低を判断します。
この設問における重要なポイント

  • 自由電子は負の電荷(\(-e\))を持つ。
  • ローレンツ力の向きは、正電荷が動く場合と逆になる。
  • 電子が集まった側が負極(低電位)、電子が不足した側が正極(高電位)となる。

具体的な解説と立式
導体棒PQ内の自由電子(電荷 \(-e\))は、棒と共に右向き(速度 \(v\))に運動しています。
磁場 \(B\) は上向きです。
正電荷が右に動くとした場合、ローレンツ力 \(f = q(\vec{v} \times \vec{B})\) の向きは、フレミングの左手の法則より「手前向き(\(P \rightarrow Q\))」となります。
しかし、電子は負電荷なので、受ける力はその逆、つまり「奥向き(\(Q \rightarrow P\))」となります。

この力によって、自由電子はP側に移動し、P側に蓄積されます。
その結果、P側は負に帯電し(低電位)、相対的に電子が不足したQ側は正に帯電します(高電位)。
よって、Qの電位が高くなります。

使用した物理公式

  • ローレンツ力: \(f = qvB\)
  • フレミングの左手の法則
計算過程

(計算は不要)

この設問の平易な説明

棒の中にあるマイナスの電気(電子)が、棒と一緒に右に動くことで磁石の力を受けます。左手の法則を使うと、プラスの電気なら手前(Q側)に力を受けますが、マイナスの電気なので逆の奥(P側)に力を受けます。マイナスの電気がP側に集まるのでPはマイナス極、反対側のQはプラス極になります。だからQの方が電位が高いです。

結論と吟味

メインの解法と同じく、Qが高電位という結論が得られました。

解答 (1) Q

問(2)

思考の道筋とポイント
まず、導体棒に生じる誘導起電力の大きさ \(V\) を求めます。これには公式 \(V=vBL\) を使うのが最も早いです。次に、この起電力によって抵抗 \(R\) を流れる電流 \(I\) を、オームの法則 \(V=RI\) を用いて計算します。
この設問における重要なポイント

  • 誘導起電力の大きさは \(V = vBL\)。
  • 回路全体の抵抗は \(R\) のみ(導線と棒の抵抗は無視)。
  • オームの法則 \(I = V/R\) を適用する。

具体的な解説と立式
導体棒PQが速度 \(v\) で磁束密度 \(B\) の磁場を垂直に横切るとき、生じる誘導起電力の大きさ \(V\) は以下の式で表されます。
$$ V = vBL $$
この起電力 \(V\) によって、抵抗値 \(R\) の抵抗に電流 \(I\) が流れます。
オームの法則より、
$$ V = RI $$
したがって、電流 \(I\) は、
$$ I = \frac{V}{R} $$

使用した物理公式

  • 誘導起電力の公式: \(V = vBL\)
  • オームの法則: \(V = RI\)
計算過程

起電力の式を電流の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{vBL}{R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

この棒は、動くことで \(vBL\) という電圧を持つ電池になります。この電池に抵抗 \(R\) がつながれているので、流れる電流は「電圧 \(\div\) 抵抗」で計算できます。

結論と吟味

電流の大きさは \(I = \frac{vBL}{R}\) です。速度 \(v\) や磁場 \(B\) が大きいほど電流が大きくなり、抵抗 \(R\) が大きいほど電流が小さくなるため、物理的にも妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{vBL}{R}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
導体棒は「一定の速さ \(v\)」で動いています。これは力がつりあっている状態(等速直線運動)を意味します。導体棒には、私たちが加える「外力」と、磁場中を流れる電流が受ける「電磁力」が働いています。この2つの力がつりあう条件式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • 導体棒は等速運動をしている \(\rightarrow\) 力のつりあいが成立。
  • 電流 \(I\) が流れる導体棒は、磁場から力(電磁力)を受ける。
  • 電磁力の大きさは \(F = IBL\)。
  • 電磁力の向きはフレミングの左手の法則で決定する。

具体的な解説と立式
まず、導体棒PQが磁場から受ける電磁力 \(F_{\text{磁}}\) の向きと大きさを考えます。
電流は \(P \rightarrow Q\)(手前向き)に流れています。磁場は上向きです。
フレミングの左手の法則より、電磁力の向きは「左向き」です。
その大きさは、
$$ F_{\text{磁}} = IBL $$
導体棒を一定の速さで右向きに動かし続けるには、この左向きの電磁力とつりあうように、右向きの外力 \(F_{\text{外}}\) を加える必要があります。
力のつりあいの式(右向きを正)は以下のようになります。
$$ F_{\text{外}} – F_{\text{磁}} = 0 $$
よって、必要な外力の大きさは、
$$ F_{\text{外}} = F_{\text{磁}} = IBL $$

使用した物理公式

  • 電磁力の公式: \(F = IBL\)
  • 力のつりあい: \(F_{\text{合力}} = 0\)
計算過程

(2)で求めた \(I = \frac{vBL}{R}\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{外}} &= \left( \frac{vBL}{R} \right) \times B \times L \\[2.0ex]
&= \frac{vB^2L^2}{R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電流が流れている棒を磁石の中に置くと、棒は力を受けます(モーターの原理)。この力は、棒の動きを邪魔する向き(左向き)に働きます。棒を一定のスピードで右に動かし続けるには、この邪魔する力と同じ大きさの力で、右向きに引っ張り続ける必要があります。

結論と吟味

必要な力の大きさは \(\frac{vB^2L^2}{R}\) です。速度 \(v\) が速いほど、磁場 \(B\) が強いほど、棒が長いほど、大きな力が必要になります。これは、発電量が増えるほど、手回し発電機のハンドルが重くなる現象と同じで、エネルギー保存の観点からも妥当です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{vB^2L^2}{R}\)
別解: エネルギー保存則を用いた解法

思考の道筋とポイント
「外力がする仕事」は、最終的に回路で発生する「ジュール熱」に変わります。導体棒が一定速度で動いている場合、運動エネルギーは変化しないので、単位時間あたりのエネルギー収支(仕事率と消費電力)は等しくなります。これを利用して外力 \(F\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 外力がする仕事率 \(P_{\text{仕事}} = Fv\)(力 \(\times\) 速度)。
  • 抵抗での消費電力 \(P_{\text{消費}} = RI^2\)(または \(IV\), \(V^2/R\))。
  • エネルギー保存則より、\(P_{\text{仕事}} = P_{\text{消費}}\)。

具体的な解説と立式
外力の大きさを \(F\) とします。
単位時間あたりに外力がする仕事(仕事率)は、
$$ P_{\text{仕事}} = Fv $$
一方、抵抗 \(R\) で単位時間あたりに発生するジュール熱(消費電力)は、(2)で求めた電流 \(I\) を用いて、
$$ P_{\text{消費}} = RI^2 $$
エネルギー保存則より、これらは等しいので、
$$ Fv = RI^2 $$

使用した物理公式

  • 仕事率: \(P = Fv\)
  • 消費電力: \(P = RI^2\)
  • エネルギー保存則
計算過程

式を変形して \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{R I^2}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{R}{v} \times \left( \frac{vBL}{R} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{R}{v} \times \frac{v^2 B^2 L^2}{R^2} \\[2.0ex]
&= \frac{v B^2 L^2}{R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

私たちが棒を引っ張ってした仕事(エネルギー)は、すべて電気エネルギーに変わり、最終的に抵抗で熱となって消費されます。「入れたエネルギー」=「使われたエネルギー」という関係式を作れば、力の向きなどを考えなくても、計算だけで必要な力の大きさが求まります。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。この方法は、力の向きが複雑な場合でも計算だけで解ける強力なツールです。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{vB^2L^2}{R}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電磁誘導とレンツの法則
    • 核心: 「磁束が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じる」という自然界の基本原理です。本問では、導体棒の運動によって回路の面積が変化し、それが磁束の変化を引き起こすというプロセスを理解することが出発点です。
    • 理解のポイント: 導体棒自体が「電池」になるという視点を持つことが重要です。レンツの法則で電流の向きを決め、電流が出ていく側を「正極(高電位)」と定義する流れを確実にマスターしましょう。
  • エネルギー変換の原理
    • 核心: 「力学的エネルギー(外力の仕事)」が「電気エネルギー(電力)」に変換され、最終的に「熱エネルギー(ジュール熱)」として消費されるというエネルギーの流れです。
    • 理解のポイント: (3)の別解で示したように、力のつりあいだけでなく、エネルギー保存則(仕事率=消費電力)からも同じ結論が導かれることは、物理現象の整合性を理解する上で非常に重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 斜面上の導体棒: 重力が外力として働くパターンです。重力の斜面方向成分 \(mg \sin \theta\) と電磁力 \(IBL \cos \theta\)(磁場の向きによる)がつりあう終端速度を求める問題が頻出です。
    • コイル(一巻き)の引き出し: 導体棒ではなく、四角形のコイル全体が磁場領域に出入りする問題。辺ごとに生じる誘導起電力を考え、それらの和(または差)で回路全体の起電力を計算します。
    • コンデンサーを含む回路: 抵抗の代わりにコンデンサーがつながれている場合、電流は一瞬だけ流れ、コンデンサーが充電されると止まります。このとき、導体棒には等加速度運動が生じることがあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 閉回路を見つける: どの部分が回路を形成しているかを確認し、その面積が時間とともにどう変化するか(増えるのか減るのか)を見極めます。
    2. 誘導起電力の向きを矢印で書き込む: レンツの法則やローレンツ力の考察から、導体棒に生じる起電力の向き(電池の向き)を矢印で図に書き込みます。これで回路問題として扱いやすくなります。
    3. 力の作図をする: 導体棒の運動を扱う場合は、必ず「電磁力 \(IBL\)」を書き忘れないようにしましょう。運動方向と逆向きに働くのが基本です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電位の高低の判断ミス:
    • 誤解: 電流が流れる方向(\(P \to Q\))を見て、水が高いところから低いところへ流れるイメージで「Pが高電位」と答えてしまう。
    • 対策: 導体棒は「抵抗」ではなく「電池」です。電池内部では、電流は負極(低)から正極(高)へ汲み上げられます。「電流が出ていく側が高電位」というルールを徹底しましょう。
  • 電磁力の向きのミス:
    • 誤解: フレミングの左手の法則を使う際、中指(電流)と人差し指(磁場)の向きを逆にしてしまう、あるいは右手を使ってしまう。
    • 対策: 「電・磁・力(中・人・親)」の語呂合わせを確実に覚えるか、あるいは「電流ベクトル \(\vec{I}\) から磁場ベクトル \(\vec{B}\) へ回した右ねじが進む向き(外積 \(\vec{I} \times \vec{B}\))」という数学的な定義で確認する方法も有効です。
  • 公式適用の条件見落とし:
    • 誤解: 磁場に対して導体棒が斜めに動いているのに、そのまま \(V=vBL\) を使ってしまう。
    • 対策: 公式 \(V=vBL\) は、速度 \(v\)、磁場 \(B\)、棒 \(L\) が互いに垂直である場合にのみ成り立ちます。斜めの場合は、垂直成分(\(v \sin \theta\) など)を用いる必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 誘導起電力 \(V=vBL\) の選択:
    • 選定理由: 導体棒が磁場中を運動する問題において、最も直接的に起電力を求められる公式だからです。ファラデーの法則 \(V = \frac{\Delta \phi}{\Delta t}\) から導出することも可能ですが、試験では \(V=vBL\) を公式として即座に適用するスピードが求められます。
    • 適用根拠: 磁束密度 \(B\) が一様で、導体棒が速度 \(v\) で磁場を垂直に切っているため、この公式がそのまま適用できます。
  • 力のつりあい \(F_{\text{外}} = F_{\text{磁}}\) の選択:
    • 選定理由: 問題文に「一定の速さ \(v\) で動かした」というキーワードがあるためです。これは加速度が \(0\) であることを意味し、運動方程式 \(ma=F\) において \(a=0\)、つまり力がつりあっている状態を示唆しています。
    • 適用根拠: 導体棒に働く水平方向の力は、外力と電磁力の2つだけであるため、これらが等しいと置くのが最も自然な解法です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の次元確認(単位チェック):
    • 答えが出たら、単位を確認しましょう。例えば(3)の力 \(F\) の答えが \(\frac{vB^2L^2}{R}\) となりましたが、これが力の単位(N)になっているかを確認するのは難しいかもしれません。しかし、\(F = IBL\) の形と比較して、\(I\) が \(\frac{vBL}{R}\)(アンペア)に置き換わっていると考えれば、次元が合っていることが確認できます。
  • 途中式の文字を丁寧に書く:
    • \(v\)(速度)と \(V\)(電圧)、\(l\)(リットルや長さ)と \(1\)(数字)など、紛らわしい文字を明確に書き分ける癖をつけましょう。特に電磁気では文字数が多くなるため、筆記体の \(\ell\) を使うなどの工夫が有効です。
  • 別解による検算の習慣化:
    • (3)のように、力のつりあいとエネルギー保存則という全く異なるアプローチで同じ答えが出るかを確認することは、最強の検算テクニックです。試験本番でも、余裕があればぜひ実践してください。

基本例題75 自己誘導

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: コイルの性質を直感的に捉える解法
      • 模範解答がキルヒホッフの法則を用いて厳密に立式するのに対し、別解では「スイッチを入れた瞬間のコイルは断線(抵抗無限大)とみなせる」という性質を利用して、直感的に電圧を求めます。
    • 設問(2)の別解: コイルの性質を直感的に捉える解法
      • 模範解答が「電流一定 \(\rightarrow\) 誘導起電力0」という論理で進めるのに対し、別解では「十分時間が経過したコイルは単なる導線(抵抗ゼロ)とみなせる」という性質を利用して、回路を簡略化して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 解答スピードの向上: 複雑な計算や立式を省略し、回路の状態を一瞬で判断できるため、試験本番での時間短縮に繋がります。
    • 現象のイメージ化: コイルが過渡現象においてどのように振る舞うか(最初は電流を拒み、最後は素通しする)という物理的イメージを定着させることができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「RL回路の過渡現象と自己誘導」です。スイッチを入れた直後と十分時間が経過した後の回路の状態変化を理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 自己誘導: コイルに流れる電流が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じる現象。起電力の大きさは \(V = -L \frac{\Delta I}{\Delta t}\)。
  2. スイッチを入れた直後のコイル: 電流の急激な変化を嫌うため、電流を流さないように振る舞う(電流 \(I=0\))。
  3. 十分時間が経過した後のコイル: 電流が一定値に落ち着くため、誘導起電力は生じず、単なる導線として振る舞う(電圧降下 \(0\))。
  4. キルヒホッフの第2法則: 閉回路において、起電力の和は電圧降下の和に等しい。
  5. コイルのエネルギー: 電流 \(I\) が流れているコイルには、\(U = \frac{1}{2}LI^2\) のエネルギーが蓄えられる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、スイッチを入れた直後の電流が \(0\) であることに着目します。抵抗での電圧降下が \(0\) になるため、電源電圧がすべてコイルにかかることをキルヒホッフの法則から導きます。
  2. (2)では、十分時間が経過すると電流が一定になり、コイルの誘導起電力が \(0\) になることに着目します。コイルを導線とみなしてオームの法則で電流を求め、公式を用いてエネルギーを計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
スイッチを入れた瞬間、コイルは「電流の変化を妨げる」という性質を最大限に発揮します。具体的には、電流が \(0\) から増えようとするのを全力で阻止するため、その瞬間だけ電流は \(0\) のままです。電流が \(0\) ならば、抵抗での電圧降下(\(RI\))も \(0\) になります。この状態でキルヒホッフの法則を適用します。
この設問における重要なポイント

  • スイッチを入れた直後、コイルに流れる電流 \(I = 0\)。
  • 抵抗での電圧降下 \(V_R = R \times 0 = 0\,\text{V}\)。
  • キルヒホッフの第2法則を用いて回路全体の電圧の関係式を立てる。

具体的な解説と立式
スイッチを閉じた直後、自己誘導の作用により、コイルには電流が流れません。
すなわち、回路を流れる電流は \(I = 0\,\text{A}\) です。
したがって、抵抗 \(R\) での電圧降下は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_R &= RI \\[2.0ex]
&= 50 \times 0 \\[2.0ex]
&= 0\,\text{V}
\end{aligned}
$$
コイルに生じる誘導起電力(逆起電力)の大きさを \(V_L\) とします。
電源の起電力を \(E = 20\,\text{V}\) とし、時計回りにキルヒホッフの第2法則(起電力の和 \(=\) 電圧降下の和)を適用します。
ここでは、コイルが電池(起電力 \(V_L\))として振る舞い、その向きは電源と逆向き(電流の増加を妨げる向き)であると考えます。
あるいは、単純に回路の電位を追っていくと、電源で \(20\,\text{V}\) 上がり、抵抗で \(0\,\text{V}\) 下がり、コイルで \(V_L\) 下がって元の高さに戻ると考えられます。
$$ 20 – V_L = 0 $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

立てた式より、
$$
\begin{aligned}
V_L &= 20\,\text{V}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、コイルは「通せんぼ」をして電流を全く通しません。電流が流れないので、抵抗は何もしません(電圧を使わない)。その結果、電池のパワー(\(20\,\text{V}\))は、すべて「通せんぼ」しているコイルにかかることになります。つまり、コイルは電池と全く同じ強さで逆向きに押し返しているわけです。

結論と吟味

コイルに生じる誘導起電力の大きさは \(20\,\text{V}\) です。電源電圧と等しい電圧が生じることで電流の流れ出しを阻止しているという解釈は物理的に妥当です。

解答 (1) \(20\,\text{V}\)
別解: コイルの性質を直感的に捉える解法

思考の道筋とポイント
スイッチを入れた直後のコイルは、電流を通さない「断線状態」あるいは「抵抗無限大の抵抗」とみなすことができます。
この設問における重要なポイント

  • 直後 \(\rightarrow\) コイルは断線(開放)状態。
  • 回路全体に電流は流れない。

具体的な解説と立式
スイッチを入れた直後、コイルは電流を通さないため、回路は切れている(断線している)のと同じ状態です。
断線している箇所の両端には、電源電圧がそのまま現れます。
したがって、コイルの両端にかかる電圧(誘導起電力の大きさ)は電源電圧に等しくなります。
$$ V_L = 20\,\text{V} $$

使用した物理公式

  • なし(回路の性質を利用)
計算過程

(計算不要)

この設問の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、コイルは「切れた電線」と同じです。切れた電線の両端をテスターで測ると、電池の電圧がそのまま表示されますよね?それと同じで、コイルには電池と同じ \(20\,\text{V}\) がかかります。

結論と吟味

メインの解法と同じく \(20\,\text{V}\) です。

解答 (1) \(20\,\text{V}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
スイッチを入れてから十分に時間が経つと、電流の値は一定になり、変化しなくなります。自己誘導は「電流が変化するとき」にしか起こらないため、この状態ではコイルは何もしないただの導線になります。
この設問における重要なポイント

  • 十分時間が経過 \(\rightarrow\) 電流 \(I\) は一定。
  • 電流変化がないため、コイルの誘導起電力 \(V_L = -L \frac{\Delta I}{\Delta t} = 0\,\text{V}\)。
  • コイルは単なる導線(ショート状態)とみなせる。
  • コイルのエネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}LI^2\) を用いる。

具体的な解説と立式
十分に時間が経過すると、電流 \(I\) は一定値になります。
電流の時間変化率 \(\frac{\Delta I}{\Delta t} = 0\) なので、コイルの誘導起電力は \(0\,\text{V}\) です。
このとき、コイルは抵抗のない導線とみなせます。
回路は起電力 \(20\,\text{V}\) の電源と \(50\,\Omega\) の抵抗のみからなる単純な回路となります。
キルヒホッフの第2法則(またはオームの法則)より、以下の式が成り立ちます。
$$ 20 = 50 I $$
これにより電流 \(I\) を求めます。

次に、コイルに蓄えられるエネルギー \(U\) を求めます。
自己インダクタンス \(L = 4.0\,\text{H}\) と求めた電流 \(I\) を用いて、以下の式で計算します。
$$ U = \frac{1}{2} L I^2 $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
  • コイルのエネルギー: \(U = \frac{1}{2} L I^2\)
計算過程

まず、電流 \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
50 I &= 20 \\[2.0ex]
I &= \frac{20}{50} \\[2.0ex]
&= 0.40\,\text{A}
\end{aligned}
$$
次に、エネルギー \(U\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \times 4.0 \times (0.40)^2 \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 0.16 \\[2.0ex]
&= 0.32\,\text{J}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ずっと待っていると、電流は落ち着いて一定の量だけ流れるようになります。こうなるとコイルはもう邪魔をしません。ただの銅線になります。だから、オームの法則を使って「\(20\,\text{V} \div 50\,\Omega\)」で電流が計算できます。
また、電流が流れているコイルは、磁場の形でエネルギーを貯め込んでいます。その量は公式に当てはめるだけで計算できます。

結論と吟味

電流は \(0.40\,\text{A}\)、エネルギーは \(0.32\,\text{J}\) です。単位もそれぞれ \(\text{A}\)(アンペア)と \(\text{J}\)(ジュール)で正しく、数値も妥当な範囲です。

解答 (2) 電流: \(0.40\,\text{A}\), エネルギー: \(0.32\,\text{J}\)
別解: コイルの性質を直感的に捉える解法

思考の道筋とポイント
「十分時間が経過したコイルは導線」という性質を最初から適用して、回路図を頭の中で書き換えてしまいます。
この設問における重要なポイント

  • 十分後 \(\rightarrow\) コイルは導線(短絡)状態。

具体的な解説と立式
コイルを導線に置き換えた回路を考えます。
電源 \(20\,\text{V}\) と抵抗 \(50\,\Omega\) が直列につながっているだけなので、オームの法則より直ちに電流が求まります。
$$ I = \frac{20}{50} $$
エネルギーの計算はメイン解法と同じです。

使用した物理公式

  • オームの法則
計算過程

$$
\begin{aligned}
I &= 0.40\,\text{A}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「時間が経ったらコイルはただの線」。これだけ覚えておけば、瞬時にオームの法則を使う問題だと見抜けます。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果です。

解答 (2) 電流: \(0.40\,\text{A}\), エネルギー: \(0.32\,\text{J}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • コイルの過渡現象(スイッチON直後と十分時間経過後)
    • 核心: コイルは「電流の変化を嫌う」素子です。スイッチを入れた直後(電流 \(0 \to\) 増)は全力で抵抗し(断線状態)、時間が経って電流が一定になると何もしなくなります(導線状態)。この二面性を理解することが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 直後: \(I=0\), \(V_L = E\)(電源電圧をフルに受ける)。
      • 十分後: \(I = E/R\), \(V_L = 0\)(ただの導線)。
  • 自己誘導とエネルギー
    • 核心: コイルに電流が流れると、その周囲に磁場が形成されます。この磁場を作るためにエネルギーが必要であり、それが \(U = \frac{1}{2}LI^2\) として蓄えられます。
    • 理解のポイント: コンデンサーのエネルギー \(U = \frac{1}{2}CV^2\) と対比して覚えましょう。コンデンサーは電圧(電場)でエネルギーを蓄え、コイルは電流(磁場)でエネルギーを蓄えます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スイッチを切った直後の挙動: スイッチを切ると、コイルは「電流を減らしたくない」ため、今まで流れていた電流を維持しようとします。このとき、コイルは起電力を持つ電池となり、スパーク(火花)が生じたり、ダイオードを通じて還流電流が流れたりします。
    • 交流回路におけるコイル: 交流電源につないだ場合、電流は常に変化し続けるため、コイルは常に抵抗(誘導リアクタンス \(X_L = \omega L\))として振る舞います。直流回路の過渡現象との違いを明確に区別しましょう。
    • RL並列回路: 抵抗とコイルが並列につながっている場合、スイッチを入れた直後はコイル側に電流が流れず、全て抵抗側に流れます。十分時間が経つと、コイル側(抵抗なし)がショート状態となり、抵抗側には電流が流れなくなります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「直後」か「十分時間が経過」かを確認する: 問題文のキーワードを探し、コイルの状態(断線 or 導線)を即座に決定します。
    2. 回路図を書き換える: 頭の中だけでなく、実際に「コイルを消した図(断線)」や「コイルを線にした図(導線)」を描くと、ミスが激減します。
    3. エネルギーの移動を追う: 電池がした仕事が、抵抗でのジュール熱とコイルの磁気エネルギーに分配されるというエネルギー保存の視点を持つと、検算に役立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • スイッチON直後の電圧降下:
    • 誤解: 「電流が流れていないから電圧もかかっていない」と勘違いしてしまう。
    • 対策: 電流が \(0\) なのは「抵抗」での電圧降下が \(0\) だからです。回路全体で見れば、電源電圧はどこかで消費されなければなりません。それがコイル(断線箇所)の両端です。
  • 誘導起電力の向き:
    • 誤解: コイルの起電力がどっち向きか分からなくなる。
    • 対策: 常に「変化を妨げる向き」です。電流が増えようとしているなら、それを押し戻す向き(電源と逆向き)に電池マークを描いて考えましょう。
  • 単位のミス:
    • 誤解: 自己インダクタンス \(L\) の単位 \(\text{H}\)(ヘンリー)やエネルギー \(U\) の単位 \(\text{J}\)(ジュール)を書き忘れる。
    • 対策: 物理量の定義(\(V = -L \frac{\Delta I}{\Delta t}\) など)から単位の関係(\(\text{V} = \text{H} \cdot \text{A/s}\))を確認する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • キルヒホッフの第2法則の選択:
    • 選定理由: 回路内の電圧の関係を厳密に記述する最も基本的な法則だからです。特に過渡現象のように、素子の役割(電池か抵抗か)が変化する場合でも、電圧の足し引きで確実に立式できます。
    • 適用根拠: 閉回路を一周したときの電位の変化の総和はゼロになるという原理に基づき、電源の昇圧と素子での降圧(または昇圧)を等式で結びます。
  • エネルギー公式 \(U = \frac{1}{2}LI^2\) の選択:
    • 選定理由: コイルに蓄えられるエネルギーを問われた場合、電流 \(I\) と自己インダクタンス \(L\) が既知であれば、この公式一択です。
    • 適用根拠: 電流 \(I\) を \(0\) から \(I\) まで増加させる間に電源がコイルに対して行う仕事の総和を積分計算した結果がこの公式であり、定常状態のエネルギーを求めるのに適しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • \(0\) の扱いを丁寧にする:
    • \(V_R = 50 \times 0 = 0\) のように、\(0\) を掛ける計算も省略せずに書くことで、「なぜ \(0\) なのか(電流がないから)」という物理的理由を再確認できます。
  • 回路図への書き込み:
    • 求めた値(電流 \(0.40\,\text{A}\) など)を回路図に書き込み、オームの法則 \(V=RI\) が各抵抗で成り立っているか、電圧の収支が合っているかを目視で確認しましょう。
  • 桁数の確認:
    • \(0.40^2 = 0.16\) のような小数点の計算はミスしやすいポイントです。\(4 \times 4 = 16\) で、小数点が2つずれる、と指差し確認しましょう。
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基本問題

526 レンツの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 磁束の変化率とグラフの形状に着目する解法
      • 模範解答が「近づくとき」と「遠ざかるとき」の2段階でレンツの法則を適用して電流の向きを判断するのに対し、別解では「磁束 \(\phi\) の時間変化グラフ」をイメージし、その傾き(微分)から誘導起電力 \(V\)(および電流 \(I\))のグラフの概形を一発で特定します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • グラフ選択の迅速化: 電流の向きを個別に判定する手間を省き、グラフの形状(山と谷のペア)から直感的に正解を選べるようになります。
    • 数学的理解の深化: 物理現象(電磁誘導)と数学(微分の概念)の結びつきを理解することで、より高度な問題への対応力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「棒磁石の通過に伴う電磁誘導と誘導電流のグラフ選択」です。レンツの法則を用いて電流の向きを正しく判断できるか、そしてその時間変化をグラフとして認識できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンツの法則: 誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる。
  2. 右ねじの法則: 電流の向きと、その電流が作る磁場の向きの関係。
  3. ファラデーの電磁誘導の法則: 誘導起電力の大きさは磁束の変化率に比例する。\(V \propto -\frac{\Delta \phi}{\Delta t}\)。
  4. 磁力線の分布: 棒磁石のN極からは磁力線が出て、S極には入る。磁石に近いほど磁力線は密(磁場が強い)になる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 棒磁石がコイルに「近づくとき」と「遠ざかるとき」の2つの局面に分けて考えます。
  2. それぞれの局面で、コイルを貫く磁束が「どの向きに」「増えるか減るか」を判断します。
  3. レンツの法則を用いて、その変化を打ち消す向きに磁場を作るような誘導電流の向きを決定します。
  4. 求めた電流の向き(正か負か)と、時間の経過に伴う変化の様子(ゼロから増えて減る)に合致するグラフを選択肢から選びます。

誘導電流のグラフ選択

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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