「物理重要問題集2026」徹底解説(19〜21問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題19 上昇する箱の中の小球の運動 (18 愛知工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)(2)の別解: 物体系全体を一体とみなす解法
      • 模範解答が個々の物体についてつりあいの式や運動方程式を立てて連立するのに対し、別解では箱と小球を「1つの系」とみなし、系全体の式から一気に張力や加速度を求めます。
    • 設問(3)(4)の別解1: 慣性力を用いた解法(模範解答の別解)
      • 地上から見た静止座標系ではなく、加速する箱と共に動く「非慣性系」から観測し、慣性力を導入して小球の相対運動を解析します。
    • 設問(3)(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式を微分方程式として扱い、それを積分することで速度と位置の関数を導出します。相対位置と相対速度の定義から、落下時間と衝突速度を一括して導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 一体とみなす解法: 内力(糸の張力など)を無視できるため、計算量が大幅に減り、検算にも最適です。
    • 慣性力の解法: 「箱の中の人」の視点に立つことで、複雑な相対運動を「見かけの重力場中の自由落下」として直感的に捉えることができます。
    • 微積分の解法: 公式暗記に頼らず、運動の原理(運動方程式)から全ての結果を数学的に導出するプロセスを理解することで、応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「加速する系における物体の運動と相対運動」です。
箱と小球が連動して動く前半部分と、糸が切れて別々に運動する後半部分に分かれています。特に後半では、加速する箱の中から見た小球の運動(相対運動)を正しく扱えるかが鍵となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動方程式: 質量 \(m\)、加速度 \(a\)、力 \(F\) の間に成り立つ \(ma = F\) の関係。
  • 相対加速度: 物体Aから見た物体Bの加速度は、\(\vec{a}_{BA} = \vec{a}_B – \vec{a}_A\) で表されます。
  • 慣性力: 加速度 \(\vec{A}\) で運動する観測者から見るとき、質量 \(m\) の物体には \(\vec{f} = -m\vec{A}\) の慣性力がはたらくように見えます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、静止状態における力のつりあいを考えます。
  • (2)では、ひもの張力を変化させたときの運動方程式を立て、加速度を求めます。
  • (3)では、糸が切れた後の箱と小球それぞれの加速度を求め、相対加速度を用いて落下時間を計算します。
  • (4)では、(3)の結果を用いて相対速度を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
箱と小球は静止しています。それぞれの物体にはたらく力を洗い出し、力のつりあいの式を立てます。
求めたいのは、箱をつり下げるひもの張力 \(T\) です。

この設問における重要なポイント

  • 着目物体の分離: 箱と小球を別々に考え、それぞれにはたらく力を正確に図示します。
  • 作用・反作用: 小球を吊るす糸が「小球を引く力」と「箱(の天井)を引く力」は、大きさ等しく逆向きです。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。
小球を吊るしている糸の張力を \(T’\) とします。

1. 小球についての考察
小球(質量 \(m\))にはたらく力は以下の通りです。

  • 重力: \(mg\) (鉛直下向き)
  • 糸の張力: \(T’\) (鉛直上向き)

力のつりあいの式は以下のようになります。
\((\text{上向きの力}) = (\text{下向きの力})\)
$$
\begin{aligned}
T’ &= mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

2. 箱についての考察
箱(質量 \(3m\))にはたらく力は以下の通りです。

  • 重力: \(3mg\) (鉛直下向き)
  • ひもの張力: \(T\) (鉛直上向き)
  • 糸が引く力: \(T’\) (鉛直下向き) ※小球を吊るす糸が箱の天井を下に引く力

力のつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
T &= 3mg + T’ \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = \vec{0}\)
計算過程

式①を式②に代入して \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T &= 3mg + mg \\[2.0ex]
&= 4mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

小球は重力 \(mg\) で下に引かれているので、それを支える糸の張力も \(mg\) です。
箱は自身の重さ \(3mg\) に加えて、小球をぶら下げている糸から \(mg\) の力で下に引かれています。
だから、箱全体を支えるひもは、合計で \(4mg\) の力で引っ張り上げる必要があります。

結論と吟味

答えは \(4mg\) です。
箱と小球の質量の合計が \(4m\) なので、全体を支える力が \(4mg\) になるのは直感的にも妥当です。

解答 (1) \(4mg\)
別解: 物体系全体を一体とみなす解法

思考の道筋とポイント
箱と小球は静止しており、相対的に動いていません。
そこで、これらをまとめて「質量 \(3m + m = 4m\) の一つの物体」とみなしてつりあいを考えます。
この見方をすると、内部の糸の張力 \(T’\) は「内力」となり、式に現れなくなります。

この設問における重要なポイント

  • 系の質量: 箱と小球を合わせた質量は \(4m\) です。
  • 外力: 系全体にはたらく外力は、重力 \(4mg\) とひもの張力 \(T\) のみです。

具体的な解説と立式
系全体に対する力のつりあいの式を立てます。
\((\text{上向きの外力}) = (\text{下向きの外力})\)
$$
\begin{aligned}
T &= 4mg
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい(系全体)
計算過程

立式そのものが答えとなっています。
$$
\begin{aligned}
T &= 4mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

箱の中にボールが入っていても、外から見れば「重さ \(4mg\) の荷物」がつり下がっているだけです。
だから、支える力は当然 \(4mg\) になります。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が一瞬で得られました。

解答 (1) \(4mg\)

問(2)

思考の道筋とポイント
ひもの張力を \(F\) にすると、箱と小球は共に上昇し始めました。
糸は切れていないので、箱と小球は同じ加速度 \(a_0\) で運動します。
それぞれの物体について運動方程式を立てて連立します。

この設問における重要なポイント

  • 加速度の共有: 箱と小球は一体となって動くため、加速度 \(a_0\) は共通です。
  • 未知数: 求めたいのは加速度 \(a_0\) ですが、小球を吊るす糸の張力 \(F’\) も変化しているため未知数です。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。
小球を吊るす糸の張力を \(F’\) とします。

1. 箱についての考察
箱(質量 \(3m\))にはたらく力は以下の通りです。

  • ひもの張力: \(F\) (上向き)
  • 重力: \(3mg\) (下向き)
  • 糸の張力: \(F’\) (下向き)

運動方程式は以下のようになります。
\(3ma_0 = (\text{上向きの力}) – (\text{下向きの力})\)
$$
\begin{aligned}
3ma_0 &= F – F’ – 3mg \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

2. 小球についての考察
小球(質量 \(m\))にはたらく力は以下の通りです。

  • 糸の張力: \(F’\) (上向き)
  • 重力: \(mg\) (下向き)

運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
ma_0 &= F’ – mg \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
計算過程

式③と式④を辺々足して、未知数 \(F’\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
(3ma_0) + (ma_0) &= (F – F’ – 3mg) + (F’ – mg) \\[2.0ex]
4ma_0 &= F – 4mg
\end{aligned}
$$
両辺を \(4m\) で割って \(a_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_0 &= \frac{F – 4mg}{4m} \\[2.0ex]
&= \frac{F}{4m} – g
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

箱と小球それぞれについて「質量 \(\times\) 加速度 \(=\) 力の合計」の式を作りました。
箱は \(F\) で引っ張り上げられますが、自分の重さと小球を引っ張る力で邪魔されます。
小球は糸で引っ張り上げられますが、自分の重さで邪魔されます。
これらを組み合わせることで、糸の力を計算せずに加速度を求めました。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{F}{4m} – g\) です。
もし \(F = 4mg\) (問1の状態)なら、\(a_0 = 0\) となり静止(または等速)状態になるため、つじつまが合います。
また、\(F > 4mg\) でなければ上昇しない(\(a_0 > 0\) にならない)ことも分かります。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{F}{4m} – g\)
別解: 物体系全体を一体とみなす解法

思考の道筋とポイント
問(1)と同様に、箱と小球は同じ加速度で動いているため、まとめて「質量 \(4m\) の一つの物体」とみなせます。

この設問における重要なポイント

  • 外力: 系全体を上に引く力は \(F\)、下に引く重力は \(4mg\) です。

具体的な解説と立式
系全体に対する運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(4m)a_0 &= F – 4mg
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(系全体)
計算過程

この式を変形するだけで答えが得られます。
$$
\begin{aligned}
a_0 &= \frac{F – 4mg}{4m} \\[2.0ex]
&= \frac{F}{4m} – g
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

全体をひとまとめに見れば、「重さ \(4mg\) の物体を力 \(F\) で引き上げる」という単純な問題になります。
引き上げる力 \(F\) から重力 \(4mg\) を引いた残りの力が、全体の加速に使われます。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果がより簡単に得られました。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{F}{4m} – g\)

問(3)

思考の道筋とポイント
糸を切ると、小球は箱から切り離されますが、箱は引き続き力 \(F\) で引かれます。
箱と小球はそれぞれ独立して運動するため、個別に加速度を求めます。
その後、箱から見た小球の「相対加速度」を求め、相対的な変位が \(-h\) (床に落ちる)になる時間を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 状況の変化: 糸が切れたので、小球を引く張力 \(F’\) は \(0\) になります。
  • 座標軸: 鉛直上向きを正とします。
  • 相対運動: 箱も小球も動いているため、「箱から見た小球の動き」を考える必要があります。

具体的な解説と立式
1. 箱の加速度 \(A\) の算出
箱(質量 \(3m\))にはたらく力は、上向きの \(F\) と下向きの重力 \(3mg\) だけになります(糸の張力は消滅)。
運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
3mA &= F – 3mg \\[2.0ex]
A &= \frac{F}{3m} – g \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

2. 小球の加速度 \(a\) の算出
小球(質量 \(m\))にはたらく力は、下向きの重力 \(mg\) だけになります。
運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
ma &= -mg \\[2.0ex]
a &= -g \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

3. 相対加速度 \(a’\) の算出
箱から見た小球の相対加速度 \(a’\) は、「小球の加速度」引く「箱の加速度」です。
$$
\begin{aligned}
a’ &= a – A
\end{aligned}
$$

4. 落下時間の立式
糸を切った瞬間(\(t=0\))の相対速度は \(0\) です(切れる直前まで同じ速度だったため)。
箱の床までの距離は \(h\) なので、相対変位 \(y’\) が \(-h\) になる時刻 \(t\) を求めます。
等加速度運動の公式より、
$$
\begin{aligned}
y’ &= v’_0 t + \frac{1}{2} a’ t^2 \\[2.0ex]
-h &= 0 \cdot t + \frac{1}{2} a’ t^2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 相対加速度: \(a_{BA} = a_B – a_A\)
  • 等加速度直線運動: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
計算過程

まず、相対加速度 \(a’\) を計算します。式⑤、⑥を代入します。
$$
\begin{aligned}
a’ &= (-g) – \left( \frac{F}{3m} – g \right) \\[2.0ex]
&= -g – \frac{F}{3m} + g \\[2.0ex]
&= -\frac{F}{3m}
\end{aligned}
$$
これを式⑦に代入して \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
-h &= \frac{1}{2} \left( -\frac{F}{3m} \right) t^2 \\[2.0ex]
h &= \frac{F}{6m} t^2 \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{6mh}{F}
\end{aligned}
$$
\(t > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
t &= \sqrt{\frac{6mh}{F}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

糸を切ると、小球は重力だけで落ちようとしますが、箱はひもで強く引っ張り上げられて急加速します。
箱の中にいる人から見ると、床が猛スピードで迫ってくるように見えます(あるいは、小球がすごい勢いで床に叩きつけられるように見えます)。
この「迫ってくる勢い(相対加速度)」を計算し、距離 \(h\) を進むのにかかる時間を求めました。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \sqrt{\frac{6mh}{F}}\) です。
\(F\) が大きいほど(強く引くほど)、箱の加速が大きくなり、床が早く迫ってくるため時間は短くなります。式も \(F\) が分母にあるため、これと整合します。

解答 (3) \(\displaystyle \sqrt{\frac{6mh}{F}}\)
別解: 慣性力を用いた解法

思考の道筋とポイント
加速している箱と共に動く観測者(非慣性系)の視点で考えます。
この観測者から見ると、小球には重力に加えて「慣性力」がはたらいているように見えます。

この設問における重要なポイント

  • 慣性力の向きと大きさ: 箱の加速度 \(A\) は上向きなので、慣性力は逆の下向きにはたらきます。大きさは \(mA\) です。
  • 見かけの重力: 重力 \(mg\) と慣性力 \(mA\) が共に下向きにはたらくため、小球はより強い力で下に引かれるように振る舞います。

具体的な解説と立式
箱の加速度 \(A\) はメイン解法と同様に求めます。
$$
\begin{aligned}
A &= \frac{F}{3m} – g
\end{aligned}
$$
箱の中の観測者から見た小球の運動方程式を立てます。相対加速度を \(a”\) とします。
$$
\begin{aligned}
ma” &= (\text{重力}) + (\text{慣性力}) \\[2.0ex]
ma” &= -mg – mA
\end{aligned}
$$
これより相対加速度 \(a”\) を求め、変位の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
-h &= \frac{1}{2} a” t^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 慣性力: \(f = -mA\)
計算過程

相対加速度 \(a”\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
a” &= -g – A \\[2.0ex]
&= -g – \left( \frac{F}{3m} – g \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{F}{3m}
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の \(a’\) と一致します。
以降の計算はメイン解法と同じです。
$$
\begin{aligned}
-h &= \frac{1}{2} \left( -\frac{F}{3m} \right) t^2 \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{6mh}{F}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

加速する乗り物の中では、加速と逆向きに力がかかったように感じます(発車時の電車で後ろに押される感覚)。
箱が上に急加速するので、中の小球は下に強い力(慣性力)を受けます。
重力とこの慣性力のダブルパンチで、小球は「見かけ上の強い重力」の中を落下することになります。

結論と吟味

慣性力を用いても全く同じ結果が得られました。
相対加速度の導出が直感的に行えるため、慣れると非常に強力な方法です。

解答 (3) \(\displaystyle \sqrt{\frac{6mh}{F}}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
小球が箱の底に衝突する直前の「相対速度」を求めます。
(3)で求めた相対加速度 \(a’\) と時間 \(t\) を用いて、等加速度運動の速度の公式から計算します。

この設問における重要なポイント

  • 相対速度の定義: 箱から見た小球の速度です。
  • 初期条件: 糸を切った瞬間の相対速度は \(0\) です。

具体的な解説と立式
相対速度を \(v’\) とします。
等加速度運動の速度の公式より、
$$
\begin{aligned}
v’ &= v’_0 + a’ t \\[2.0ex]
v’ &= 0 + a’ t
\end{aligned}
$$
ここで、相対加速度 \(a’ = -\frac{F}{3m}\) と、落下時間 \(t = \sqrt{\frac{6mh}{F}}\) を代入します。
求めたいのは「大きさ」なので、絶対値 \(|v’|\) を計算します。

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度: \(v = v_0 + at\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
v’ &= \left( -\frac{F}{3m} \right) \cdot \sqrt{\frac{6mh}{F}} \\[2.0ex]
&= – \sqrt{\frac{F^2}{9m^2} \cdot \frac{6mh}{F}} \\[2.0ex]
&= – \sqrt{\frac{6m h F}{9m^2}} \\[2.0ex]
&= – \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}
\end{aligned}
$$
大きさ \(|v’|\) は、
$$
\begin{aligned}
|v’| &= \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(3)で求めた「迫ってくる勢い(加速度)」で、(3)で求めた「時間」だけ加速し続けたら、最終的にどれくらいのスピードになるか?という計算です。
単純に「加速度 \(\times\) 時間」で速度が出ます。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}\) です。
別解として、エネルギー保存則的な視点(\(v^2 – v_0^2 = 2ax\))で検算してみます。
\(v’^2 – 0 = 2(a’)(-h)\) より、
\(v’^2 = 2 \left( -\frac{F}{3m} \right) (-h) = \frac{2Fh}{3m}\)
となり、一致します。

解答 (4) \(\displaystyle \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(問3, 4一括解説)

思考の道筋とポイント
運動方程式を微分方程式として扱い、積分することで位置と速度の関数を導出します。
箱と小球の「相対位置」と「相対速度」を定義し、それらの時間変化を追うことで、問(3)と問(4)の答えを一気に導きます。

この設問における重要なポイント

  • 座標定義: 時刻 \(t=0\)(糸切断)における小球の位置を原点 \(y=0\) とし、鉛直上向きを正とします。
  • 初期条件:
    • 小球: \(y(0)=0\), \(v(0)=v_0\)(切断時の速度)
    • 箱(底): \(y_{\text{箱}}(0)=-h\), \(v_{\text{箱}}(0)=v_0\)

具体的な解説と立式
1. 運動方程式の積分
小球(質量 \(m\))と箱(質量 \(3m\))の運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2 y}{dt^2} &= -mg \quad \cdots ⑧ \\[2.0ex]
3m \frac{d^2 y_{\text{箱}}}{dt^2} &= F – 3mg \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
これらを積分して速度と位置を求めます。

2. 相対運動の解析
箱から見た小球の相対位置 \(Y(t)\) を定義します。
$$
\begin{aligned}
Y(t) &= y(t) – y_{\text{箱}}(t)
\end{aligned}
$$
この \(Y(t)\) の2階微分(相対加速度)は、式⑧、⑨より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2 Y}{dt^2} &= \frac{d^2 y}{dt^2} – \frac{d^2 y_{\text{箱}}}{dt^2} \\[2.0ex]
&= (-g) – \left( \frac{F}{3m} – g \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{F}{3m}
\end{aligned}
$$
これを \(t\) で2回積分します。初期条件として、相対速度 \(\frac{dY}{dt}(0) = 0\)、初期相対位置 \(Y(0) = 0 – (-h) = h\) を用います。
※ここでは「小球の位置」を基準に「箱の底」との距離を考えるのではなく、問題文に合わせて「箱」を基準とした「小球」の座標 \(y’\) を考えます。
箱の底を原点とした相対座標 \(y'(t)\) は、初期値 \(h\)、初期速度 \(0\)、加速度 \(-\frac{F}{3m}\) の運動となります。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2 y’}{dt^2} &= -\frac{F}{3m}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(微分形)
  • 積分の基本公式
計算過程

加速度を積分して相対速度 \(v'(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v'(t) &= \int \left( -\frac{F}{3m} \right) dt = -\frac{F}{3m}t + C_1
\end{aligned}
$$
\(v'(0)=0\) より \(C_1=0\)。よって、
$$
\begin{aligned}
v'(t) &= -\frac{F}{3m}t \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
さらに積分して相対位置 \(y'(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= \int \left( -\frac{F}{3m}t \right) dt = -\frac{F}{6m}t^2 + C_2
\end{aligned}
$$
\(y'(0)=h\) より \(C_2=h\)。よって、
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= h – \frac{F}{6m}t^2 \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$

問(3)の導出
小球が箱の底に達するとき、\(y'(t)=0\) となります。式⑪より、
$$
\begin{aligned}
0 &= h – \frac{F}{6m}t^2 \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{6mh}{F} \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{6mh}{F}}
\end{aligned}
$$

問(4)の導出
求めた \(t\) を式⑩に代入して速度の大きさを求めます。
$$
\begin{aligned}
|v'(t)| &= \left| -\frac{F}{3m} \cdot \sqrt{\frac{6mh}{F}} \right| \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{F^2}{9m^2} \cdot \frac{6mh}{F}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

それぞれの運動方程式からスタートし、数学的な操作(積分)だけで位置と速度の式を作りました。
「相対位置」という新しい変数を定義することで、2つの物体の動きを1つの式にまとめ、落下時間と速度をスムーズに計算しました。

結論と吟味

微積分を用いても、当然ながら同じ結果が得られます。
この手法は、加速度が時間とともに変化する場合(例:空気抵抗がある場合)など、等加速度運動の公式が使えない状況でも通用する普遍的な方法です。

解答 (3) \(\displaystyle \sqrt{\frac{6mh}{F}}\) (4) \(\displaystyle \sqrt{\frac{2Fh}{3m}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 相対運動と相対加速度
    • 核心: 観測者(箱)自身が加速している場合、観測対象(小球)の運動は「相対加速度」を用いて記述する必要があります。
    • 理解のポイント:
      • 定義: 相対加速度 \(\vec{a}’ = \vec{a}_{\text{相手}} – \vec{a}_{\text{自分}}\) です。
      • 等価性: 相対加速度を用いれば、静止している時と同じ等加速度運動の公式(\(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) など)がそのまま使えます。
  • 慣性力(非慣性系での運動方程式)
    • 核心: 加速する座標系(箱の中)から見ると、物体には実際の力に加えて、加速度と逆向きの「慣性力 \(-m\vec{A}\)」がはたらいているように見えます。
    • 理解のポイント:
      • 見かけの重力: 鉛直上向きに加速するエレベーター内では、慣性力が下向きに加わるため、重力が強くなった(\(g’ = g + A\))かのように振る舞います。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • エレベーター内の単振り子: エレベーターが加速すると、見かけの重力加速度 \(g’\) が変化し、周期 \(T = 2\pi\sqrt{l/g’}\) が変わります。
    • 電車内の物体: 水平に加速する電車内では、慣性力が水平後ろ向きにはたらき、つり革が斜めに傾いて静止します(見かけの重力の方向が変わる)。
    • 気球からの落下: 上昇中の気球から物を落とす場合、初速度は \(0\) ではなく気球の上昇速度と同じになります(慣性の法則)。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 観測者の立ち位置を決める: 「外(地上)から見る」か「中(箱)から見る」かを最初に決めます。途中で視点を変えると混乱の元です。
    2. 糸が切れる前後の変化: 切れる前は「加速度が同じ(束縛条件)」、切れた後は「張力が \(0\)(独立運動)」と、条件が劇的に変わる点を見逃さないようにしましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 相対加速度の引き算の順序:
    • 誤解: \(a – A\) なのか \(A – a\) なのか分からなくなり、符号を間違える。
    • 対策: 「相手引く自分(相手 – 自分)」と唱えましょう。あるいは、「自分が止まって見えるように相手の速度を補正する」と考えます。
  • 慣性力の向き:
    • 誤解: 加速度と同じ向きに慣性力を加えてしまう。
    • 対策: 「急発進する車」をイメージしてください。車が前(加速度の向き)に進むとき、体は後ろ(慣性力の向き)に押し付けられます。常に「加速度と逆」です。
  • 初期条件の取り違え:
    • 誤解: 糸を切った瞬間の小球の速度を \(0\) としてしまう。
    • 対策: 糸を切る直前まで箱と一緒に動いていたので、小球も箱と同じ初速度を持っています。ただし、相対速度は \(0\) なので、相対運動で考える場合は \(v_0=0\) でOKです。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 相対加速度を用いた解法(メイン解法):
    • 選定理由: 地上から見た客観的な加速度 \(a, A\) を求めてから差を取るため、物理的な状況を俯瞰しやすく、ミスが少ない王道の手法です。
    • 適用根拠: 2つの物体が独立して運動しており、その距離(相対変位)が問われているため。
  • 慣性力を用いた解法(別解):
    • 選定理由: 「箱の中の人」の視点に立つことで、運動を「ただの落下」として単純化でき、直感的に理解しやすいため。
    • 適用根拠: 観測者が加速度運動している(非慣性系である)ため、ニュートンの運動方程式を成り立たせるために慣性力の導入が必須かつ有効です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認:
    • 意識: 時間 \(t\) や速度 \(v\) の次元が合っているか。
    • 実践: \(t = \sqrt{\frac{mh}{F}}\) のルートの中身を確認します。\(F=ma\) より \([F] = [M][L][T]^{-2}\)。\(\frac{[M][L]}{[M][L][T]^{-2}} = [T]^2\)。ルートをとれば時間 \([T]\) になり、正しいと分かります。
  • 極端な例での検算:
    • 意識: もし \(F\) がすごく大きかったら?
    • 実践: \(F \to \infty\) なら、箱は超高速で加速するので、衝突時間 \(t\) は \(0\) に近づくはずです。答えの式 \(t \propto 1/\sqrt{F}\) はこれを満たしています。逆に \(F\) が小さすぎて持ち上がらない場合(\(F < 4mg\))は、根号内が負や定義不能になり、式が適用できないことを示唆します。
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問題20 気球と気球につるされた小球の運動 (22 佐賀大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)の別解: 物体系全体を一体とみなす解法(模範解答の別解)
      • 模範解答が個々の物体について運動方程式を立てて連立するのに対し、別解では気球と小球を「1つの系」とみなし、系全体の運動方程式から一気に浮力を求めます。
    • 設問(6)の別解1: 相対加速度を用いた解法(模範解答の別解)
      • 地上から見た速度を求めて差を取るのではなく、気球から見た小球の相対加速度を直接求め、等加速度運動の公式を用いて相対速度を計算します。
    • 設問(6)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式を微分方程式として扱い、それを積分することで速度と位置の関数を導出します。相対速度の定義から、時刻 \(t\) における相対速度を一括して導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 一体とみなす解法: 内力(ひもの張力)を無視できるため、計算量が大幅に減り、検算にも最適です。
    • 相対加速度の解法: 「気球の中の人」の視点に立つことで、複雑な相対運動を「見かけの重力場中の運動」として直感的に捉えることができます。
    • 微積分の解法: 公式暗記に頼らず、運動の原理(運動方程式)から全ての結果を数学的に導出するプロセスを理解することで、応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「気球の運動と相対速度」です。
前半は気球と小球が一体となって上昇する運動、後半はひもが切れて別々に運動する様子を扱います。特に後半では、上昇中に切り離された物体の初速度や、加速する物体から見た相対速度の扱いが重要になります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 等加速度直線運動: 加速度が一定の運動。\(v = v_0 + at\)、\(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) などの公式が成り立ちます。
  • 運動方程式: 質量 \(m\)、加速度 \(a\)、力 \(F\) の間に成り立つ \(ma = F\) の関係。
  • 慣性の法則: ひもが切れた瞬間、小球はその時点での気球の速度(初速度)を持って運動を始めます。
  • 相対速度: 物体Aから見た物体Bの速度は、\(\vec{v}_{BA} = \vec{v}_B – \vec{v}_A\) で表されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、等加速度直線運動の公式を用いて、加速度と速度を求めます。
  • (3)(4)では、気球と小球それぞれについて運動方程式を立て、張力と浮力を求めます。
  • (5)では、ひもが切れた後の小球の運動(鉛直投げ上げ)を解析し、落下時間を求めます。
  • (6)では、気球と小球それぞれの速度を求め、相対速度を計算します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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