問題118 電池の内部抵抗 (宮城教育大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)(g)の別解: 微分法を用いた最大電力条件の導出
- 模範解答では相加相乗平均の不等式を用いて最大値を求めていますが、別解では消費電力 \(P_R\) を抵抗値 \(R\) の関数とみなし、微分を用いて関数の増減を調べることで最大値を導出します。
- 設問(2)(g)の別解: 微分法を用いた最大電力条件の導出
- 上記の別解が有益である理由
- 微分法の解法: 相加相乗平均を用いる手法は式変形のテクニックに依存しますが、微分を用いる手法は、どのような複雑な関数であっても極値を求められる汎用的なアプローチであり、物理学における「最適化問題」の基本となるからです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答え(最大となる条件と概形)は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「電池の内部抵抗と最大消費電力」です。
実在する電池には必ず内部抵抗が存在し、それによって端子電圧が変化する様子や、外部に取り出せる電力がどのように変化するかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- キルヒホッフの第2法則(閉回路の電圧則): 任意の閉回路において、起電力の和は電圧降下の和に等しくなります。
- オームの法則: 抵抗 \(R\)、電流 \(I\)、電圧 \(V\) の間には \(V=RI\) の関係が成り立ちます。
- 電力の定義: 抵抗で消費される電力 \(P\) は、\(P = IV = I^2R = \displaystyle\frac{V^2}{R}\) で表されます。
- 最大電力の定理: 電池から取り出せる電力が最大になるのは、外部抵抗が内部抵抗と等しいとき(\(R=r\))です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、電流計と電圧計の正しい接続方法と、実験データの取得目的を確認します。
- (2)の前半では、グラフの形状とキルヒホッフの法則を結びつけ、内部抵抗を含む電池の特性式(\(V-I\) 特性)を導出します。
- (2)の後半では、消費電力の式を立式し、変数を整理してグラフの概形や最大値条件を考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
(a) 電流計は回路に流れる電流を測るため直列に、電圧計は電池の両端の電圧(端子電圧)を測るため並列に接続します。
(b) グラフを描くためには、電流 \(I\) と電圧 \(V\) の組となるデータが多数必要です。抵抗値を変えることで、回路の状態を変化させることができます。
この設問における重要なポイント
- 計器の接続: 電流計は内部抵抗が非常に小さいので直列、電圧計は内部抵抗が非常に大きいので並列につなぎます。
- 変数の制御: 起電力 \(E\) と内部抵抗 \(r\) は定数ですが、外部抵抗 \(R\) を変えることで、電流 \(I\) を独立変数として変化させることができます。
具体的な解説と立式
(a)
電池の特性を調べるためには、電池から流れ出る電流 \(I\) と、そのときの電池の端子電圧 \(V\) を同時に測定する必要があります。
- 電流計: 電池から出る電流をすべて通す必要があるため、電池に対して直列に接続します。
- 電圧計: 電池の正極と負極の間の電位差を測るため、電池に対して並列に接続します。
- 可変抵抗: 電流を変化させるために接続します。
これらを踏まえると、図aまたは図bのような回路になります。
(※厳密な測定誤差について:図aのように電圧計を電池に直接つなぐと端子電圧 \(V\) は正確に測れますが、電流計には電圧計へ流れる電流が含まれないため、電池から出る全電流 \(I\) に対して誤差が生じます。一方、図bのように電流計を電池に直接つなぐと全電流 \(I\) は正確に測れますが、電圧計の測定値は電流計での電圧降下の分だけ端子電圧 \(V\) より小さくなります。本問では計器が理想的(内部抵抗の影響なし)とされているため、どちらの接続も正解となります。)
(b)
1組の \(I, V\) のデータだけでは、グラフ(直線)を描くことができません。
可変抵抗の抵抗値 \(R\) を変化させることで、回路を流れる電流 \(I\) を様々な値に変化させ、それに対応する電圧 \(V\) の値を多数測定し、その変化の規則性(直線の関係)を見出すためです。
使用した物理公式
- 特になし(実験手法に関する知識)
- 計算なし
電池の性質を知るためには、「電流をこれだけ流したら、電圧はこれだけになった」というデータをたくさん集める必要があります。
抵抗を変えることは、蛇口の開き具合を変えるようなものです。抵抗を変えて電流の量を変えながら、その都度電圧を測ることで、電流と電圧の関係(グラフ)を作ることができます。
電流計は直列、電圧計は並列という基本原則に従っています。また、可変抵抗を用いる理由は、独立変数である電流を操作するためであり、実験の目的に合致しています。
(a) 図a または 図b
(b) 外部抵抗を変化させることによって、電池から流れ出る電流と、電池の端子電圧の値の変化を連続して得るため。
問(2)(a)
思考の道筋とポイント
グラフを見ると、電流 \(I\) が増えるにつれて電圧 \(V\) が直線的に下がっています。
理想的な電池(内部抵抗なし)なら電圧は \(E\) で一定のはずです。電圧が下がるということは、電流に比例した「電圧降下」が電池内部で起きていることを示唆します。
この設問における重要なポイント
- 電圧降下: 抵抗に電流が流れると、電位が下がります。
- 直列接続: 電流計で測定される電流 \(I\) がそのまま内部抵抗にも流れるため、内部抵抗は回路に対して直列に入っていると考えられます。
具体的な解説と立式
グラフより、端子電圧 \(V\) は電流 \(I\) の一次関数として減少しています。
これは、電池内部において、流れる電流 \(I\) に比例した電圧降下が発生していることを意味します。
オームの法則 \(V’ = rI\) より、電流に比例して電圧が下がる要素といえば「抵抗」です。
したがって、電池内部には抵抗成分(内部抵抗)が、起電力に対して直列に接続されていると考えられます。もし並列なら、端子電圧は電流によらず一定(または別の挙動)になるはずです。
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- 計算なし
電流をたくさん流すと電圧が下がるのは、電池の中にある「邪魔もの(抵抗)」のせいです。
電流がこの抵抗を通るときにエネルギー(電圧)をロスします。流れる電流と同じだけの電流がこの抵抗を通っているので、この抵抗は通り道に真っ直ぐ(直列に)置かれていると考えられます。
電流に比例した電圧降下が生じていることから、直列抵抗モデルが妥当です。
接続: 直列
理由: 電池の端子電圧は流れる電流が大きくなるにつれて一定の割合で減少していることから、一定の抵抗による電圧降下が生じていると考えられるため。
問(2)(b)
思考の道筋とポイント
電池の起電力を \(E\)、内部抵抗を \(r\)、流れる電流を \(I\)、端子電圧を \(V\) とします。
キルヒホッフの第2法則を用いて関係式を導きます。
この設問における重要なポイント
- キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一周したときの電位の変化の総和は \(0\) です。
- 端子電圧の定義: 電池の正極と負極の間の電位差です。
具体的な解説と立式
電池の内部を含めた回路の一部に注目します。
電池の正極から出発し、内部抵抗 \(r\) を通って負極へ抜ける経路を考えます(あるいは端子間の電位差を考えます)。
起電力 \(E\) によって電位が上がりますが、電流 \(I\) が流れることで内部抵抗 \(r\) において \(rI\) の電圧降下が生じます。
最終的に外部に出てくる電圧(端子電圧)\(V\) は、上げた分から下がった分を引いたものになります。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- キルヒホッフの第2法則(電圧則)
- オームの法則: \(V = RI\)
- 立式そのものが答えとなるため、追加の計算過程なし。
電池は本来 \(E\) という電圧を持っていますが、自分の中にある抵抗 \(r\) で少し電圧を使ってしまいます。
使ってしまう電圧は、流れる電流 \(I\) に比例して \(rI\) となります。
だから、外に出てくる電圧 \(V\) は、元の \(E\) からロス分 \(rI\) を引いた残りになります。
式 \(V = -rI + E\) は、傾き \(-r\)、切片 \(E\) の一次関数を表しており、問題のグラフと一致します。
問(2)(c)
思考の道筋とポイント
内部抵抗 \(r\) が大きくなると、式 \(V = E – rI\) において何が変わるかを考えます。
\(E\) は電池の化学的性質で決まる起電力なので変わりません。
\(r\) は直線の「傾きの大きさ」に対応します。
この設問における重要なポイント
- グラフの傾きと切片: 一次関数 \(y = ax + b\) において、\(a\) が傾き、\(b\) が切片です。
具体的な解説と立式
式 \(V = -rI + E\) において、
- \(I=0\) のときの \(V\)(縦軸切片)は \(E\) です。これは \(r\) が変化しても変わりません。
- 直線の傾きは \(-r\) です。\(r\) が大きくなると、傾きの絶対値 \(|-r| = r\) が大きくなります。つまり、右下がりの傾斜がより急になります。
使用した物理公式
- 一次関数の性質
- 計算なし
内部抵抗が大きいということは、電流が流れたときの電圧ロスが激しいということです。
少し電流が増えただけでガクンと電圧が下がるので、グラフの坂道は急になります。
ただし、電流がゼロならロスもゼロなので、スタート地点(切片)は変わりません。
物理的な意味(抵抗増大による電圧降下の増大)とグラフの幾何学的変化(傾きの急化)が一致しています。
問(2)(d)
思考の道筋とポイント
実験において、既知の抵抗値 \(R\) と起電力 \(E\)、そして測定された電流 \(I\) から、未知の内部抵抗 \(r\) を逆算するための式を導きます。
外部抵抗 \(R\) に加わる電圧も \(V\) であることに着目し、オームの法則を使います。
この設問における重要なポイント
- 連立方程式: 未知数 \(r\) を含む式と、既知数のみの式を組み合わせます。
具体的な解説と立式
外部抵抗 \(R\) に流れる電流は \(I\) なので、その両端の電圧(端子電圧)\(V\) はオームの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V &= RI \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
また、(b)で求めた電池の特性式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= E – rI \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- キルヒホッフの第2法則
式①を式②に代入して \(V\) を消去し、\(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
RI &= E – rI \\[2.0ex]
rI &= E – RI \\[2.0ex]
r &= \frac{E – RI}{I}
\end{aligned}
$$
電池の電圧 \(V\) は、外の抵抗 \(R\) で測ると \(RI\) です。
一方、電池の式からは \(E – rI\) です。
この2つは同じ電圧なのでイコールで結びます。あとは方程式を解いて、知りたい \(r\) を求めます。
内部抵抗 \(r\) は、起電力 \(E\) から外部での電圧降下 \(RI\)(=端子電圧)を引いたもの(=内部抵抗での電圧降下)を、電流 \(I\) で割ることで求められます。物理的にも整合しています。
問(2)(e)
思考の道筋とポイント
「電池内部の抵抗によって消費された電力 \(P_r\)」を求めます。
消費電力の公式 \(P = IV = I^2 R\) を内部抵抗 \(r\) に適用します。
ただし、解答には \(r\) を含んではいけないため、(d)の結果を利用して \(r\) を消去します。
この設問における重要なポイント
- 変数の消去: 問題の指示に従い、指定された文字のみで答えを表します。
具体的な解説と立式
内部抵抗 \(r\) を流れる電流は \(I\) なので、内部抵抗での消費電力 \(P_r\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_r &= I^2 r \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電力の公式: \(P = I^2 R\)
式③に (d) で求めた \(r = \displaystyle\frac{E – RI}{I}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P_r &= I^2 \cdot \frac{E – RI}{I} \\[2.0ex]
&= I (E – RI) \\[2.0ex]
&= EI – RI^2
\end{aligned}
$$
式 \(EI – RI^2\) の意味を考えてみましょう。
\(EI\) は電池が供給する全仕事率(全電力)です。
\(RI^2\) は外部抵抗 \(R\) で消費される電力です。
つまり、内部抵抗での消費電力 \(P_r\) は、「電池が作った全電力」から「外部で使われた電力」を差し引いた残り、ということになります。エネルギー保存則そのものです。
この電力は、抵抗におけるジュール熱として消費されます。
エネルギー保存則(供給=消費+ロス)の形になっており、妥当です。
電力: \(EI – RI^2 \, [\text{W}]\)
消費先: 電池内部での発熱などで消費された。
問(2)(f)
思考の道筋とポイント
可変抵抗(外部抵抗)での消費電力 \(P_R\) を求めます。
今度は \(r\) と \(R\) を用いて表すよう指示されています。
まず、回路全体を流れる電流 \(I\) を \(E, R, r\) で表し、それを電力の式に代入します。
この設問における重要なポイント
- 閉回路のオームの法則: 回路全体の電流は、総起電力を総抵抗で割ったものです。
具体的な解説と立式
キルヒホッフの第2法則より、回路全体の方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= RI + rI \\[2.0ex]
E &= (R + r)I
\end{aligned}
$$
よって、電流 \(I\) は次のように表せます。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{E}{R + r} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
可変抵抗での消費電力 \(P_R\) は以下の式で与えられます。
$$
\begin{aligned}
P_R &= I^2 R \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則
- 電力の公式: \(P = I^2 R\)
式④を式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
P_R &= \left( \frac{E}{R + r} \right)^2 R \\[2.0ex]
&= \frac{E^2 R}{(R + r)^2}
\end{aligned}
$$
まず、回路全体を流れる電流を計算します。電圧 \(E\) を全体の抵抗 \(R+r\) で割れば求まります。
次に、その電流を使って、可変抵抗 \(R\) での電力を計算します。\(P = I^2 R\) の公式に入れるだけです。
\(R=0\) なら \(P_R=0\)、\(R \to \infty\) なら \(P_R \to 0\) となり、物理的直感と合致します。
問(2)(g)
思考の道筋とポイント
(f)で求めた関数 \(P_R(R) = \displaystyle\frac{E^2 R}{(R + r)^2}\) の概形を描きます。
\(R=0\) のときと \(R \to \infty\) のときの極限を調べ、最大値を持つかどうかを確認します。
最大値を求める手法として、模範解答では相加相乗平均を用いていますが、ここではまずその手法を解説し、別解で微分を用いた方法を解説します。
この設問における重要なポイント
- 相加相乗平均の関係: \(a > 0, b > 0\) のとき、\(a + b \ge 2\sqrt{ab}\) が成り立ちます。等号成立は \(a=b\) のときです。
具体的な解説と立式
まず、端点の挙動を確認します。
- \(R = 0\) のとき: 分子が \(0\) なので \(P_R = 0\) です。
- \(R \to \infty\) のとき: 分母が \(R^2\) のオーダー、分子が \(R\) のオーダーなので、\(P_R \to 0\) となります。
\(0\) から始まって正の値を取り、再び \(0\) に戻るため、途中で最大値を持つ山型のグラフになります。
最大値を求めるために、式を変形して相加相乗平均の関係が使える形にします。
分母分子を \(R\) で割る(または分母を展開して \(R\) で割る)方針をとります。
$$
\begin{aligned}
P_R &= \frac{E^2 R}{R^2 + 2rR + r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{E^2}{R + 2r + \frac{r^2}{R}}
\end{aligned}
$$
分母の \(R + \displaystyle\frac{r^2}{R}\) が最小になるとき、\(P_R\) は最大になります。
\(R > 0, \displaystyle\frac{r^2}{R} > 0\) なので、相加相乗平均の関係より以下の不等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R + \frac{r^2}{R} &\ge 2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 相加相乗平均の関係: \(a+b \ge 2\sqrt{ab}\)
不等式の右辺を計算します。
$$
\begin{aligned}
2\sqrt{R \cdot \frac{r^2}{R}} &= 2\sqrt{r^2} \\[2.0ex]
&= 2r
\end{aligned}
$$
等号成立条件は \(R = \displaystyle\frac{r^2}{R}\)、すなわち \(R^2 = r^2\) です。\(R>0, r>0\) より、\(R = r\) のとき最大となります。
最大値 \(P_{R,\text{最大}}\) を計算します。\(R=r\) を代入して、
$$
\begin{aligned}
P_{R,\text{最大}} &= \frac{E^2}{2r + 2r} \\[2.0ex]
&= \frac{E^2}{4r}
\end{aligned}
$$
抵抗 \(R\) を変えると電力 \(P_R\) は変わります。
\(R\) が小さすぎると電流は流れますが電圧がかかりません。逆に \(R\) が大きすぎると電圧はかかりますが電流が流れません。
ちょうどいいバランスのとき、つまり \(R\) が内部抵抗 \(r\) と同じ大きさになったときに、電力は最大になります。
グラフは、原点を通り、\(R=r\) でピーク \(\displaystyle\frac{E^2}{4r}\) を迎え、その後なだらかに減少して \(0\) に漸近する曲線となります。
思考の道筋とポイント
関数 \(P_R(R)\) の増減を調べる最も一般的な方法は微分です。
\(R\) を変数と見て、\(P_R\) を \(R\) で微分し、導関数 \(\displaystyle\frac{dP_R}{dR}\) の符号変化を調べます。
この設問における重要なポイント
- 商の微分公式: \(\left( \displaystyle\frac{u}{v} \right)’ = \displaystyle\frac{u’v – uv’}{v^2}\)
- 極値の条件: 導関数が \(0\) になる点で極値を持ちます。
具体的な解説と立式
消費電力の式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
P_R &= E^2 \frac{R}{(R + r)^2}
\end{aligned}
$$
これを \(R\) で微分します。商の微分の公式を利用します。
ここで \(u = R\), \(v = (R+r)^2\) と置きます。
$$
\begin{aligned}
u’ &= 1 \\[2.0ex]
v’ &= 2(R+r) \cdot 1 = 2(R+r)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 微分の公式(商の微分、合成関数の微分)
$$
\begin{aligned}
\frac{dP_R}{dR} &= E^2 \frac{1 \cdot (R+r)^2 – R \cdot 2(R+r)}{\{(R+r)^2\}^2} \\[2.0ex]
&= E^2 \frac{(R+r)\{(R+r) – 2R\}}{(R+r)^4} \\[2.0ex]
&= E^2 \frac{r – R}{(R+r)^3}
\end{aligned}
$$
\(E^2 > 0\) かつ \(R > 0, r > 0\) より、分母 \((R+r)^3\) は常に正です。
したがって、導関数の符号は分子 \(r – R\) だけで決まります。
- \(0 < R < r\) のとき: \(r – R > 0\) なので \(\displaystyle\frac{dP_R}{dR} > 0\) (増加)
- \(R = r\) のとき: \(r – R = 0\) なので \(\displaystyle\frac{dP_R}{dR} = 0\) (極大)
- \(R > r\) のとき: \(r – R < 0\) なので \(\displaystyle\frac{dP_R}{dR} < 0\) (減少)
数式をグラフの傾きに変える魔法「微分」を使いました。
計算の結果、傾きがプラスからマイナスに変わる頂点が、ちょうど \(R=r\) の場所であることが分かりました。
相加相乗平均のようなパズル的な発想がなくても、微分を使えば機械的に最大値を求めることができます。
これにより、\(P_R\) は \(R=r\) のときに唯一の極大値かつ最大値をとることが示されました。
最大値は \(R=r\) を元の式に代入して、
$$
\begin{aligned}
P_{R,\text{最大}} &= \frac{r E^2}{(r + r)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{r E^2}{4r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{E^2}{4r}
\end{aligned}
$$
となり、相加相乗平均の結果と完全に一致します。
この「内部抵抗と外部抵抗が等しいときに最大電力が取り出せる」という事実は、インピーダンスマッチング(整合)と呼ばれる重要な概念です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電池の内部抵抗と端子電圧
- 核心: 実在する電池は理想的な定電圧源ではなく、内部に抵抗 \(r\) を持ち、電流 \(I\) が流れると \(rI\) だけ電圧が下がる特性を持つ。
- 理解のポイント:
- 起電力 \(E\) は化学反応で決まる定数だが、端子電圧 \(V\) は電流 \(I\) によって変化する変数である。
- 式 \(V = E – rI\) は、グラフの切片 \(E\) と傾き \(-r\) に対応する。
- 最大電力の定理(インピーダンスマッチング)
- 核心: 電源から取り出せる電力が最大になるのは、外部抵抗 \(R\) が内部抵抗 \(r\) と等しくなるときである。
- 理解のポイント:
- \(R\) が小さすぎると電圧がかからず、大きすぎると電流が流れないため、中間の \(R=r\) で電力(積 \(IV\))がピークになる。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 非線形抵抗(電球など)の接続問題: 相手がオームの法則に従わない素子の場合、数式で解くのは困難。この場合、本問の \(V = E – rI\) のグラフを「負荷線」として、素子の \(V-I\) 特性曲線との交点を求める解法が定石となる。
- 複数の電池の接続: 直列・並列接続された電池群を、一つの「合成電池(合成起電力 \(E’\) と合成内部抵抗 \(r’\))」とみなして処理するパターン。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの切片と傾きを読む: \(V-I\) グラフが与えられたら、即座に縦軸切片から起電力 \(E\)、傾きの絶対値から内部抵抗 \(r\) を読み取る。
- 回路方程式の立式: 複雑な回路でも、キルヒホッフの第2法則を用いて \(E = (R+r)I\) の形を作り、電流 \(I\) を抵抗の関数として表すことから始める。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 端子電圧と起電力の混同:
- 誤解: 「電池の電圧は常に一定(\(E\))」だと思い込み、電流が流れても電圧が変わらないとして計算してしまう。
- 対策: 「電池には内部抵抗がある」という記述を見たら、必ず抵抗記号を電池の記号の隣に書き足し、電圧降下 \(rI\) を視覚化する。
- 最大電力条件の直感的誤解:
- 誤解: 「抵抗が小さいほど電流がたくさん流れるから電力も最大になる」あるいは「抵抗が大きいほど電圧が大きいから電力も最大になる」と短絡的に考えてしまう。
- 対策: 電力は \(P = IV\) という「電流と電圧の積」であることを思い出す。片方が増えればもう片方が減るトレードオフの関係にあるため、ピークは中間にあると意識する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 相加相乗平均の関係(最大値導出):
- 選定理由: 分数関数の最大最小問題において、変数が分母にあり、かつ逆数の和の形(\(R + 1/R\))が作れる場合、微分を使わずに代数的な変形だけで解けるため、計算量が少なくエレガントである。
- 適用根拠: 抵抗 \(R\) や \(r\) は物理量であり必ず正の値をとる(\(R>0, r>0\))ため、相加相乗平均の適用条件(正の数であること)を常に満たす。
- 微分法(別解):
- 選定理由: 関数の形が複雑で相加相乗平均の形に持ち込めない場合や、増減表を書いてグラフの概形を正確に把握したい場合に、最も確実で汎用的な手法である。
- 適用根拠: 電力 \(P_R\) は \(R\) の連続関数であり、微分可能であるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 導出した式が物理的にあり得ない挙動をしていないか確認する。
- 実践: \(R=0\)(ショート)のとき \(P_R=0\)、\(R \to \infty\)(断線)のとき \(P_R \to 0\) となることを式で確認する。もし \(P_R\) が残るようなら計算ミスを疑う。
- 単位(次元)の確認:
- 意識: 文字式の計算結果が正しい次元を持っているか。
- 実践: 例えば \(r = (E-RI)/I\) なら、右辺は \([\text{V}]/[\text{A}] = [\Omega]\) となり正しい。\(P_R = E^2/4r\) なら、\([\text{V}]^2/[\Omega] = [\text{W}]\) となり正しい。
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問題119 コンデンサーを含む直流回路 (22 熊本大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解: 分圧の法則を用いた解法
- 模範解答では電流 \(I_E\) を求めてから各抵抗の電圧降下を計算していますが、別解では直列回路における電圧の配分(分圧)に着目し、比の計算だけで素早く電位差を求めます。
- 設問(5)の別解: 閉回路の電荷移動(合成容量)を用いた解法
- 模範解答では電荷保存則とキルヒホッフの法則を連立させて解いていますが、別解では閉回路内の「電位差の不均衡」が解消される過程として捉え、直列合成容量を用いて移動する電荷量を一発で計算します。
- 設問(6)の別解: 微積分を用いた体系的解法(エネルギー原理)
- エネルギー保存則の式を天下り的に使うのではなく、回路方程式と電力の積分からエネルギー収支の関係式を導出し、物理的な背景を明らかにします。
- 設問(3)の別解: 分圧の法則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 分圧の解法: 計算量が圧倒的に少なく、検算にも有効です。
- 電荷移動の解法: 複雑な連立方程式を回避でき、現象の物理的イメージ(高い方から低い方へ電荷が流れる)を直感的に理解できます。
- 微積分の解法: 「公式の暗記」ではなく、物理法則の根本(仕事とエネルギーの関係)から現象を理解する力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーを含む直流回路の過渡現象と定常状態」です。
スイッチの操作直後と十分時間が経過した後の回路の状態変化、および電荷の再配分に伴うエネルギー収支を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 過渡現象の基本:
- スイッチを入れた直後(\(t=0\)): 電荷のないコンデンサーは「導線(短絡)」とみなせる。
- 十分時間が経過した後(\(t=\infty\)): 充電が完了したコンデンサーは「断線(開放)」とみなせる。
- キルヒホッフの法則: 回路網の電流と電圧の関係を記述する基本法則。
- 電気量保存則: 孤立した導体部分(島)において、電荷の総和は変化しない。
- エネルギー保存則: 回路で供給されたエネルギーは、静電エネルギーの変化とジュール熱の和に等しい。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、コンデンサーを「導線」または「断線」に置き換えた等価回路を描き、合成抵抗を求めて電流を計算します。
- (3)では、定常状態における各点の電位を求め、コンデンサーの電位差から電荷を計算します。
- (5)では、スイッチ開放によって孤立した部分に着目し、電気量保存則を用いて再配分後の電荷を求めます。
- (6)では、エネルギーの収支関係からジュール熱を逆算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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