基本例題
基本例題76 交流のグラフ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 電流の最大値を経由する解法
- 模範解答が電圧の実効値から直接オームの法則を用いて電流の実効値を求めているのに対し、別解ではまず電圧の最大値から電流の最大値を求め、そこから実効値に変換します。
- 設問(2)の別解: 電流の最大値を経由する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: オームの法則が、実効値だけでなく最大値(振幅)においても同様に成立することを理解できます。
- 計算の工夫: ルートを含む計算の順序を変えることで、計算ミスを減らすアプローチを学べます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と一致します。
この問題のテーマは「交流回路におけるグラフの読み取りと基本量の計算」です。交流電圧の時間変化を表すグラフから必要な情報を読み取り、実効値や周波数といった基本的な物理量を正しく計算できるかが問われています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 正弦波交流のグラフの読み取り: 縦軸が電圧、横軸が時間を表し、それぞれの目盛りの倍率(\(\times 10^2\) など)に注意すること。
- 最大値 \(V_0\) と実効値 \(V_e\) の関係: 正弦波交流では \(V_e = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\) が成り立つこと。
- 周期 \(T\) と周波数 \(f\) の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\) が成り立つこと。
- 交流におけるオームの法則: 抵抗 \(R\) だけの回路では、電圧と電流の位相が揃っており、\(V=RI\) の関係が瞬時値、最大値、実効値のすべてで成り立つこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、グラフの波形の頂点から最大値 \(V_0\) を、波が1回振動するのにかかる時間から周期 \(T\) を読み取ります。その後、定義式を用いて実効値 \(V_e\) と周波数 \(f\) を計算します。
- (2)では、(1)で求めた電圧の実効値 \(V_e\) と抵抗値 \(R\) を用いて、オームの法則から電流の実効値 \(I_e\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずはグラフから直接読み取れる情報(最大値と周期)を特定します。グラフの軸には \(\times 10^2\) や \(\times 10^{-2}\) といった倍率が記載されているため、これを忘れずに数値に反映させることが最重要です。読み取った値を基に、公式を使って実効値と周波数を計算します。
この設問における重要なポイント
- グラフの縦軸の最大値が \(V_0\) に対応する。
- グラフの波形が1サイクル完了する時間が周期 \(T\) に対応する。
- 実効値は最大値の \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) 倍である。
- 周波数は周期の逆数である。
具体的な解説と立式
まず、グラフから最大値 \(V_0\) と周期 \(T\) を読み取ります。
1. 最大値 \(V_0\) の読み取り
グラフの縦軸(電圧軸)を見ると、波の頂点は目盛り \(1.0\) の位置にあります。軸の上部に \([\times 10^2\,\text{V}]\) とあるので、
$$
V_0 = 1.0 \times 10^2\,\text{V}
$$
となります。
2. 周期 \(T\) の読み取り
グラフの横軸(時間軸)を見ると、時刻 \(0\) から始まった正弦波が、正の山と負の谷を経て元の状態(\(0\) から正の方向に立ち上がる状態)に戻るまでの時間は、目盛り \(1.0\) の位置です。軸の右端に \([\times 10^{-2}\,\text{s}]\) とあるので、
$$
T = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{s}
$$
となります。
3. 実効値 \(V_e\) の立式
正弦波交流の実効値 \(V_e\) と最大値 \(V_0\) の関係式は以下の通りです。
$$
V_e = \frac{V_0}{\sqrt{2}}
$$
4. 周波数 \(f\) の立式
周波数 \(f\) と周期 \(T\) の関係式は以下の通りです。
$$
f = \frac{1}{T}
$$
使用した物理公式
- 実効値と最大値の関係: \(V_e = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\)
- 周波数と周期の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
実効値 \(V_e\) の計算
読み取った \(V_0 = 1.0 \times 10^2\,\text{V} = 100\,\text{V}\) を代入します。\(\sqrt{2} \approx 1.41\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
V_e &= \frac{100}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{100 \times \sqrt{2}}{\sqrt{2} \times \sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{100\sqrt{2}}{2} \\[2.0ex]
&= 50\sqrt{2} \\[2.0ex]
&\approx 50 \times 1.41 \\[2.0ex]
&= 70.5\,\text{V}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、四捨五入して \(71\,\text{V}\) となります。
周波数 \(f\) の計算
読み取った \(T = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{1.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{0.010} \\[2.0ex]
&= 100 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
グラフを見てください。波の一番高いところが「最大値」です。ただし、目盛りの数字そのままではなく、軸に書いてある「\(\times 10^2\)」を忘れないようにしましょう。これで最大電圧が \(100\,\text{V}\) だとわかります。
次に、波が1回うねって元の形に戻るまでの長さが「周期」です。これも「\(\times 10^{-2}\)」に注意して読み取ると \(0.01\,\text{s}\) です。
「実効値」というのは、交流と同じ働きをする直流の電圧の値のことです。最大値の約 \(0.7\) 倍(正確には \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) 倍)になるという決まりがあります。「周波数」は、1秒間に波が何回繰り返されるかという値で、周期の逆数で計算できます。
最大値は \(1.0 \times 10^2\,\text{V}\)、実効値は \(71\,\text{V}\)、周波数は \(1.0 \times 10^2\,\text{Hz}\) です。
家庭用電源(\(100\,\text{V}\))の実効値が \(100\,\text{V}\) であるのに対し、最大値は約 \(141\,\text{V}\) です。今回の問題では最大値が \(100\,\text{V}\) なので、実効値がそれより小さい \(71\,\text{V}\) になるのは妥当です。また、周期 \(0.01\,\text{s}\) は短いため、周波数が \(100\,\text{Hz}\) と大きな値になるのも整合しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
抵抗 \(R\) に交流電圧を加えたとき、流れる電流 \(I\) も交流になります。抵抗だけの回路では、オームの法則 \(V=RI\) が常に成り立ちます。ここでは「電流の実効値」を求めたいので、「電圧の実効値」を使ってオームの法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 交流回路においても、抵抗ではオームの法則が成立する。
- 実効値同士の関係式 \(V_e = R I_e\) を用いる。
- (1)で求めた \(V_e\) の値(近似前の分数やルートを含む形)を使うと計算誤差が少なくなる。
具体的な解説と立式
抵抗 \(R\)、電圧の実効値 \(V_e\)、電流の実効値 \(I_e\) の間には、オームの法則が成り立ちます。
$$
I_e = \frac{V_e}{R}
$$
使用した物理公式
- オームの法則(実効値): \(I_e = \displaystyle\frac{V_e}{R}\)
\(R = 50\,\Omega\) です。(1)で求めた \(V_e = 50\sqrt{2}\,\text{V}\) を用います(\(71\,\text{V}\) を使うより計算が正確で楽になります)。
$$
\begin{aligned}
I_e &= \frac{50\sqrt{2}}{50} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2} \\[2.0ex]
&\approx 1.41\,\text{A}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(1.4\,\text{A}\) となります。
直流のときと同じように、交流でも抵抗については「電圧 \(\div\) 抵抗 \(=\) 電流」というオームの法則が使えます。ただし、電圧に「実効値」を使うなら、求められる電流も「実効値」になります。先ほど計算した電圧の実効値を使って割り算をするだけです。
電流の実効値は \(1.4\,\text{A}\) です。電圧の実効値 \(約71\,\text{V}\) を抵抗 \(50\,\Omega\) で割ると \(1.4\) 程度になるので、計算結果は妥当です。
思考の道筋とポイント
オームの法則は、実効値だけでなく最大値同士でも成り立ちます。まず電圧の最大値 \(V_0\) から電流の最大値 \(I_0\) を求め、そこから電流の実効値 \(I_e\) を計算することも可能です。
この設問における重要なポイント
- オームの法則(最大値): \(V_0 = R I_0\)
- 電流の実効値と最大値の関係: \(I_e = \displaystyle\frac{I_0}{\sqrt{2}}\)
具体的な解説と立式
まず、電圧の最大値 \(V_0\) を用いて電流の最大値 \(I_0\) を求めます。
$$
I_0 = \frac{V_0}{R}
$$
次に、求めた最大値 \(I_0\) を実効値 \(I_e\) に変換します。
$$
I_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}}
$$
使用した物理公式
- オームの法則(最大値): \(I_0 = \displaystyle\frac{V_0}{R}\)
- 実効値と最大値の関係: \(I_e = \displaystyle\frac{I_0}{\sqrt{2}}\)
\(V_0 = 100\,\text{V}\), \(R = 50\,\Omega\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \frac{100}{50} \\[2.0ex]
&= 2.0\,\text{A}
\end{aligned}
$$
これが電流の最大値です。これを実効値に変換します。
$$
\begin{aligned}
I_e &= \frac{2.0}{\sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{2.0 \times \sqrt{2}}{\sqrt{2} \times \sqrt{2}} \\[2.0ex]
&= \frac{2.0\sqrt{2}}{2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2} \\[2.0ex]
&\approx 1.41\,\text{A}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で \(1.4\,\text{A}\) となります。
「一番高い電圧」を抵抗で割れば、「一番大きな電流」が求まります。\(100\,\text{V} \div 50\,\Omega = 2.0\,\text{A}\) です。これが電流の最大値です。実効値は最大値を \(\sqrt{2}\) で割ったものなので、\(2.0 \div 1.41\) を計算すれば答えが出ます。
メインの解法と全く同じ結果 \(1.4\,\text{A}\) が得られました。この方法は、途中で \(\sqrt{2}\) の計算をする必要がなく、最後にまとめて処理できるため、計算ミスが減る場合があります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 交流のグラフからの情報抽出
- 核心: 交流電圧の時間変化を表す \(V-t\) グラフから、物理的な意味を持つ「最大値 \(V_0\)」と「周期 \(T\)」を正確に読み取る能力が問われます。
- 理解のポイント:
- 軸のスケール: 縦軸や横軸に付記されている \(\times 10^2\) や \(\times 10^{-2}\) といった倍率を見落とさないことが、正解への第一歩です。
- 波形の定義: 「山から山まで」や「0から始まって再び同じ向きに0を通過するまで」といった、1周期分の波形の長さを正しく認識することが重要です。
- 実効値の定義と意味
- 核心: 変動する交流電圧・電流を、エネルギー(電力)の観点から直流と等価な値に換算したのが「実効値」です。
- 理解のポイント:
- 正弦波の関係式: 正弦波交流において、実効値は最大値の \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) 倍(約 \(0.707\) 倍)になるという定数関係 \(V_e = \displaystyle\frac{V_0}{\sqrt{2}}\) を暗記し、使いこなせるようにしましょう。
- オームの法則の適用: 実効値 \(V_e, I_e\) を用いても、直流と同様にオームの法則 \(V_e = RI_e\) が成立することを理解しておく必要があります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 電流 \(I-t\) グラフの問題: 縦軸が電流になっても、最大値 \(I_0\) や周期 \(T\) の読み取り方は全く同じです。
- 位相差を問う問題: 電圧と電流のグラフが同時に描かれている場合、それぞれの波のズレ(位相差)を読み取る必要があります。抵抗だけの回路なら位相差は0ですが、コイルやコンデンサが含まれるとズレが生じます。
- 瞬時値の式 \(V = V_0 \sin \omega t\) を求める問題: 読み取った \(V_0\) と \(T\)(から求めた角周波数 \(\omega = 2\pi f\))を使って、数式を組み立てる問題に発展することがあります。
- 初見の問題での着眼点:
- 軸の単位と倍率を確認: まず最初にグラフの縦軸・横軸の単位(\(\text{V}, \text{A}, \text{s}, \text{ms}\) など)と、端に書かれた倍率(\(\times 10^n\))をチェックし、丸で囲むなどして強調しましょう。
- 1周期を確実に見つける: 波の形が綺麗に見える区間を探し、確実に1サイクル分の時間を読み取ります。半周期(山1つ分)を読み取って2倍する方法も有効です。
- 求める値を明確にする: 「最大値」なのか「実効値」なのか、問題文の指示をよく読みます。特に家庭用電源(\(100\,\text{V}\))などは通常「実効値」で呼ばれていることに注意が必要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 軸の倍率見落とし:
- 誤解: グラフの目盛りの数字(\(1.0\) など)をそのまま計算に使ってしまう。
- 対策: グラフを見たら、まず軸のラベル(\(\times 10^2\) など)を指差し確認し、読み取った数値の横に必ず書き添える癖をつけましょう(例: \(V_0 = 1.0 \dots \times 10^2\))。
- 周期と周波数の混同:
- 誤解: 周期 \(T\) を求めたのに、それを周波数 \(f\) だと勘違いしたり、逆数の計算 \(f = 1/T\) を忘れたりする。
- 対策: 単位を確認しましょう。周期は「秒 (\(\text{s}\))」、周波数は「ヘルツ (\(\text{Hz}\))」です。単位が違うことに気づけばミスを防げます。
- 最大値と実効値の取り違え:
- 誤解: オームの法則を使う際、電圧は最大値 \(V_0\) なのに、求めた電流を実効値 \(I_e\) として答えてしまう。
- 対策: 式を立てる際、\(V_0 = R I_0\) や \(V_e = R I_e\) のように、添字(\(0\) や \(e\))を明記して区別しましょう。「最大値には最大値、実効値には実効値」が対応します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 実効値の計算 \(V_e = V_0 / \sqrt{2}\):
- 選定理由: 問題で与えられている情報がグラフからの「最大値 \(V_0\)」であり、求められているのが「実効値 \(V_e\)」であるため、この2つを結びつける定義式が必要です。
- 適用根拠: グラフが正弦波(サインカーブ)であることから、正弦波交流における係数 \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) が適用できます。(矩形波や三角波ではこの係数は異なるため注意が必要ですが、高校物理では主に正弦波を扱います。)
- 周波数の計算 \(f = 1/T\):
- 選定理由: グラフから直接読み取れるのは時間的な繰り返し間隔である「周期 \(T\)」です。一方、問われているのは1秒あたりの振動数である「周波数 \(f\)」です。
- 適用根拠: 周波数の定義そのものが「単位時間(1秒)あたりの波の数」であり、1回の波に \(T\) 秒かかるなら、1秒間には \(1/T\) 回波が入るという論理に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- ルートの扱いに慣れる:
- \(\sqrt{2} \approx 1.41\) は頻出なので暗記必須です。計算の途中では \(\sqrt{2}\) のまま残し、最後に小数に直す方が、計算量が減り誤差も少なくなります(例: \(100/\sqrt{2} = 50\sqrt{2} \approx 50 \times 1.41\))。
- 指数の計算を丁寧に行う:
- \(f = 1 / (1.0 \times 10^{-2})\) のような計算では、\(10^{-2}\) が分母にあると分子に来て \(10^2\) になることを意識し、\(1/1.0 \times 10^2 = 100\) とステップを踏んで計算しましょう。暗算でやろうとすると \(0.01\) と \(100\) を間違える原因になります。
- 単位の変換をチェック:
- 横軸が \(\text{ms}\)(ミリ秒)の場合、\(\times 10^{-3}\,\text{s}\) に直す必要があります。今回の問題のように \(\times 10^{-2}\,\text{s}\) となっている場合もあるので、\(k\)(キロ)、\(m\)(ミリ)、\(\mu\)(マイクロ)などの接頭辞や、指数の表記には特に敏感になりましょう。
基本例題77 リアクタンス
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(ウ)(エ)の別解: リアクタンスの値を先に計算する解法
- 模範解答がオームの法則の式にリアクタンスの公式を直接代入して一気に計算しているのに対し、別解ではまずリアクタンス(抵抗値に相当する値)を単独で計算し、その後にオームの法則を適用します。
- 設問(ウ)(エ)の別解: リアクタンスの値を先に計算する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的イメージの具体化: リアクタンスが「何オームの抵抗に相当するか」を数値として把握することで、電流の流れにくさを直感的に理解できます。
- 計算ミスの防止: 計算プロセスを「リアクタンスの計算」と「電流の計算」の2段階に分けることで、複雑な分数の処理ミスを防ぎやすくなります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と一致します。
この問題のテーマは「交流回路におけるリアクタンスとオームの法則」です。コイルやコンデンサが交流回路において示す「電流の流れにくさ(抵抗のような働き)」を定量的に扱い、具体的な電流値を計算する力が問われています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 角周波数と周波数の関係: \(\omega = 2\pi f\)
- 誘導リアクタンス(コイル): \(X_L = \omega L = 2\pi f L\)
- 周波数が高いほど大きくなり、電流が流れにくくなります。
- 容量リアクタンス(コンデンサ): \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi f C}\)
- 周波数が高いほど小さくなり、電流が流れやすくなります。
- 交流のオームの法則: 実効値においても \(V_e = X I_e\) (\(X\) はリアクタンス)が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア)(イ)では、リアクタンスの定義式に角周波数 \(\omega = 2\pi f\) を代入して、周波数 \(f\) を用いた式を答えます。
- (ウ)(エ)では、与えられた数値(電圧、周波数、インダクタンス、電気容量)を式に代入し、オームの法則を用いて電流の実効値を計算します。特に \(\pi \approx 3.14\) の計算や、\(\mu\text{F}\)(マイクロファラド)の単位変換に注意が必要です。
問(ア)(イ)
思考の道筋とポイント
コイルとコンデンサのリアクタンス(抵抗の働きをする量)の公式を問う問題です。通常、公式は角周波数 \(\omega\) を用いて表されますが、ここでは周波数 \(f\) を用いて答える必要があります。\(\omega = 2\pi f\) の関係式を使って書き換えます。
この設問における重要なポイント
- コイルのリアクタンスは周波数に比例する(\(X_L = \omega L\))。
- コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例する(\(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\))。
- \(\omega\) を \(2\pi f\) に置き換える。
具体的な解説と立式
空欄(ア): コイルのリアクタンス
コイルの自己インダクタンスを \(L\)、角周波数を \(\omega\) とすると、誘導リアクタンス \(X_L\) は次のように表されます。
$$
X_L = \omega L
$$
ここで \(\omega = 2\pi f\) を代入します。
$$
X_L = 2\pi f L
$$
空欄(イ): コンデンサのリアクタンス
コンデンサの電気容量を \(C\)、角周波数を \(\omega\) とすると、容量リアクタンス \(X_C\) は次のように表されます。
$$
X_C = \frac{1}{\omega C}
$$
同様に \(\omega = 2\pi f\) を代入します。
$$
X_C = \frac{1}{2\pi f C}
$$
使用した物理公式
- 誘導リアクタンス: \(X_L = \omega L\)
- 容量リアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C}\)
- 角周波数: \(\omega = 2\pi f\)
(式の変形のみのため、計算過程は省略)
交流回路では、コイルやコンデンサも抵抗と同じように電流を妨げる働きをします。この働きを「リアクタンス」と呼び、単位はオーム \(\Omega\) です。
コイルは、電流の変化を嫌う性質があるため、周波数が高くなって電流が激しく変化するほど、抵抗としての働き(リアクタンス)が大きくなります。だから式は \(f\) に比例する形 \(2\pi f L\) になります。
逆にコンデンサは、電気を出し入れすることで電流を通すため、周波数が高くなって頻繁に出し入れが行われるほど、電流がスムーズに流れるようになります。つまり抵抗としての働き(リアクタンス)は小さくなります。だから式は \(f\) が分母に来る形 \(\displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) になります。
(ア) \(2\pi f L\)、(イ) \(\displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)。
これらは基本的な公式であり、次元(単位)を確認しても、\([\text{Hz}] \cdot [\text{H}] = [\Omega]\)、\(1 / ([\text{Hz}] \cdot [\text{F}]) = [\Omega]\) となっており正しいです。
問(ウ)
思考の道筋とポイント
具体的な数値が与えられているので、(ア)で答えた式を使って計算します。求めるのは電流の実効値 \(I_e\) です。交流回路でもオームの法則 \(I = V/R\) と同じ形の式 \(I_e = V_e / X_L\) が使えます。
この設問における重要なポイント
- 電圧の実効値 \(V_e = 100\,\text{V}\)
- 周波数 \(f = 50\,\text{Hz}\)
- 自己インダクタンス \(L = 0.10\,\text{H}\)
- 円周率 \(\pi \approx 3.14\) として計算する。
具体的な解説と立式
コイルのリアクタンスを \(X_L\) とすると、オームの法則より電流の実効値 \(I_e\) は次のように表されます。
$$
I_e = \frac{V_e}{X_L}
$$
これに \(X_L = 2\pi f L\) を代入します。
$$
I_e = \frac{V_e}{2\pi f L}
$$
使用した物理公式
- 交流のオームの法則: \(I_e = \displaystyle\frac{V_e}{X_L}\)
与えられた数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
I_e &= \frac{100}{2 \times 3.14 \times 50 \times 0.10} \\[2.0ex]
&= \frac{100}{2 \times 50 \times 0.10 \times 3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{100}{100 \times 0.10 \times 3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{100}{10 \times 3.14} \\[2.0ex]
&= \frac{10}{3.14}
\end{aligned}
$$
割り算を実行します。
$$
\begin{aligned}
\frac{10}{3.14} &\approx 3.184\dots
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、3桁目を四捨五入します。
$$
I_e \approx 3.2\,\text{A}
$$
電圧 \(100\,\text{V}\) をコイルにかけます。このコイルがどれくらいの「抵抗(リアクタンス)」になるかを計算すると、\(2\pi f L\) の式から約 \(31.4\,\Omega\) になります。あとはオームの法則を使って、\(100\,\text{V} \div 31.4\,\Omega\) を計算すれば、流れる電流が求まります。
電流の実効値は \(3.2\,\text{A}\) です。抵抗値(リアクタンス)が約 \(30\,\Omega\) で電圧が \(100\,\text{V}\) なので、電流が \(3\,\text{A}\) 程度になるのは妥当です。
問(エ)
思考の道筋とポイント
コンデンサの場合も同様に、(イ)の式とオームの法則を使って計算します。注意点は、電気容量 \(C\) の単位が \(\mu\text{F}\)(マイクロファラド)であることです。\(1\,\mu\text{F} = 10^{-6}\,\text{F}\) に換算して計算する必要があります。
この設問における重要なポイント
- 電気容量 \(C = 10\,\mu\text{F} = 10 \times 10^{-6}\,\text{F}\)
- オームの法則の式 \(I_e = \displaystyle\frac{V_e}{X_C}\) を整理してから代入すると計算しやすい。
具体的な解説と立式
コンデンサのリアクタンスを \(X_C\) とすると、オームの法則より電流の実効値 \(I_e\) は次のように表されます。
$$
I_e = \frac{V_e}{X_C}
$$
これに \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) を代入します。
$$
I_e = \frac{V_e}{\frac{1}{2\pi f C}}
$$
分母に分数が来るため、逆数を掛ける形に整理します。
$$
I_e = 2\pi f C V_e
$$
使用した物理公式
- 交流のオームの法則: \(I_e = \displaystyle\frac{V_e}{X_C}\)
数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
I_e &= 2 \times 3.14 \times 50 \times (10 \times 10^{-6}) \times 100 \\[2.0ex]
&= 2 \times 50 \times 3.14 \times 10^{-5} \times 100 \\[2.0ex]
&= 100 \times 3.14 \times 10^{-5} \times 100 \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^2 \times 10^{-5} \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^{2-5+2} \\[2.0ex]
&= 3.14 \times 10^{-1} \\[2.0ex]
&= 0.314\,\text{A}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、3桁目を四捨五入します。
$$
I_e \approx 0.31\,\text{A}
$$
コンデンサの場合、オームの法則の式 \(I = V/R\) の \(R\) の部分に \(\displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) が入ります。分数の割り算になるので、ひっくり返して掛け算の形 \(I = V \times 2\pi f C\) にすると計算しやすくなります。あとは数値を代入するだけですが、\(\mu\)(マイクロ)が \(10^{-6}\) であることに注意して、桁を間違えないように計算しましょう。
電流の実効値は \(0.31\,\text{A}\) です。コンデンサのリアクタンスを概算すると \(1 / (300 \times 10^{-5}) \approx 300\,\Omega\) 程度になります。\(100\,\text{V} \div 300\,\Omega \approx 0.3\,\text{A}\) なので、計算結果は妥当です。
思考の道筋とポイント
模範解答では一つの式にまとめて代入しましたが、計算ミスを防ぐために、まず「リアクタンス(抵抗値)」を単独で計算し、その後にオームの法則を適用する方法も有効です。
この設問における重要なポイント
- まず \(X_L\) と \(X_C\) の値をオーム \([\Omega]\) で求める。
- その値を使って \(I_e = V_e / X\) を計算する。
具体的な解説と立式
1. コイルの場合 (ウ)
まず誘導リアクタンス \(X_L\) を求めます。
$$
X_L = 2\pi f L
$$
次にオームの法則を用います。
$$
I_e = \frac{V_e}{X_L}
$$
2. コンデンサの場合 (エ)
まず容量リアクタンス \(X_C\) を求めます。
$$
X_C = \frac{1}{2\pi f C}
$$
次にオームの法則を用います。
$$
I_e = \frac{V_e}{X_C}
$$
使用した物理公式
- リアクタンスの公式: \(X_L = 2\pi f L\), \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)
- オームの法則: \(I_e = \displaystyle\frac{V_e}{X}\)
(ウ) コイルの計算
$$
\begin{aligned}
X_L &= 2 \times 3.14 \times 50 \times 0.10 \\[2.0ex]
&= 100 \times 3.14 \times 0.10 \\[2.0ex]
&= 31.4\,\Omega
\end{aligned}
$$
これを用いて電流を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_e &= \frac{100}{31.4} \\[2.0ex]
&\approx 3.18\,\text{A} \rightarrow 3.2\,\text{A}
\end{aligned}
$$
(エ) コンデンサの計算
$$
\begin{aligned}
X_C &= \frac{1}{2 \times 3.14 \times 50 \times 10 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{314 \times 10^{-5}} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3.14 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= \frac{1000}{3.14} \\[2.0ex]
&\approx 318.4\,\Omega
\end{aligned}
$$
これを用いて電流を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_e &= \frac{100}{318.4} \\[2.0ex]
&\approx 0.314\,\text{A} \rightarrow 0.31\,\text{A}
\end{aligned}
$$
いきなり複雑な式を作るのではなく、まずは「このコイルは何オームの抵抗と同じか?」「このコンデンサは何オームの抵抗と同じか?」を計算します。
コイルは \(31.4\,\Omega\)、コンデンサは約 \(318\,\Omega\) の抵抗と同じ働きをすることがわかります。あとは、電圧 \(100\,\text{V}\) をこの抵抗値で割れば、流れる電流が求まります。
メインの解法と同じ結果が得られました。この手順を踏むことで、リアクタンスの具体的な大きさ(\(31.4\,\Omega\) や \(318\,\Omega\))を実感でき、計算の見通しも良くなります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- リアクタンスの周波数依存性
- 核心: コイルとコンデンサは、交流回路において周波数 \(f\) に応じて変化する「抵抗のような働き(リアクタンス)」を示します。
- 理解のポイント:
- コイル: \(X_L = 2\pi f L\) より、周波数が高いほどリアクタンスが大きくなり、電流を通しにくくなります(高周波阻止)。
- コンデンサ: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) より、周波数が高いほどリアクタンスが小さくなり、電流を通しやすくなります(低周波阻止)。
- 交流におけるオームの法則
- 核心: 直流回路のオームの法則 \(V=RI\) は、交流回路の実効値においても \(V_e = X I_e\) (\(X\) はリアクタンス)としてそのまま適用できます。
- 理解のポイント:
- 位相のズレ: オームの法則は振幅(最大値や実効値)の関係を示していますが、電圧と電流のタイミング(位相)はコイルで電流が遅れ、コンデンサで電流が進むという点もセットで覚えておく必要があります(本問では計算には使いませんが、概念として重要です)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- グラフ選択問題: 横軸を周波数 \(f\)、縦軸をリアクタンス \(X\) としたグラフを選ぶ問題では、コイルは原点を通る直線(比例)、コンデンサは双曲線(反比例)になります。
- RLC直列回路: 抵抗 \(R\)、コイル \(L\)、コンデンサ \(C\) を直列につないだ回路のインピーダンス \(Z\) を求める問題では、\(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) のように、リアクタンスの差が効いてきます。
- 共振回路: \(X_L = X_C\) となる特定の周波数(共振周波数)を求める問題は、本問の公式 \(2\pi f L = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) を等号で結んで解くことで解決します。
- 初見の問題での着眼点:
- 単位の確認: \(L\) の単位は \(\text{H}\)(ヘンリー)、\(C\) の単位は \(\text{F}\)(ファラド)です。\(\text{mH}\)(ミリヘンリー)や \(\mu\text{F}\)(マイクロファラド)で与えられた場合は、必ず \(10^{-3}\) や \(10^{-6}\) に換算してから計算を始めましょう。
- 角周波数か周波数か: 問題文で与えられているのが \(\omega\)(ラジアン毎秒)なのか \(f\)(ヘルツ)なのかを最初に見極めます。\(\omega\) ならそのまま、\(f\) なら \(2\pi f\) に変換して公式を使います。
- 実効値か最大値か: オームの法則を使う際は、電圧と電流のどちらも「実効値」か、あるいはどちらも「最大値」で統一されているかを確認します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- リアクタンスの公式の取り違え:
- 誤解: コイルとコンデンサの公式が逆になってしまう(例: コイルを \(1/\omega L\) と書いてしまう)。
- 対策: 「コイルはグルグル巻いてあるから、周波数が高い(変化が激しい)と通りにくい(比例して大きくなる)」「コンデンサは隙間があるから、周波数が高い(頻繁に出入りする)と通りやすい(反比例して小さくなる)」という物理的なイメージと結びつけて覚えましょう。
- 単位換算のミス:
- 誤解: \(10\,\mu\text{F}\) をそのまま \(10\) として計算してしまう。
- 対策: 計算用紙の隅に必ず「\(\mu = 10^{-6}\)」「\(m = 10^{-3}\)」と書き出し、代入する数値の横に指数を明記する習慣をつけましょう。
- 分数の計算ミス:
- 誤解: \(1 / (2\pi f C)\) の計算で、分母の計算結果で割るのではなく、掛けてしまうなどの順序ミス。
- 対策: 別解のように、まず分母(リアクタンス)だけを計算して値を確定させ、その後に割り算を行う「2段階計算」が安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- リアクタンス公式 \(X_L = 2\pi f L, X_C = 1/(2\pi f C)\):
- 選定理由: 問題が「周波数 \(f\)」と「インダクタンス \(L\) / 容量 \(C\)」を与えて「リアクタンス」を問うているため、これらを直接結びつける定義式が必要です。
- 適用根拠: 交流回路において、電圧と電流の比(インピーダンスの大きさ)は素子の性質と周波数によって一意に決まるため、この公式が適用されます。
- オームの法則 \(I_e = V_e / X\):
- 選定理由: 「電圧の実効値」から「電流の実効値」を求める問題であり、回路素子が抵抗成分(リアクタンス)のみであるため。
- 適用根拠: 交流の実効値は、電力(エネルギー)の観点で直流と等価に定義されているため、直流回路の基本法則であるオームの法則がそのまま成立します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数の処理を分離する:
- \(2 \times 3.14 \times 50 \times 10 \times 10^{-6}\) のような計算では、数字部分(\(2, 3.14, 50, 10\))と指数部分(\(10^{-6}\))を分けて整理するとミスが減ります。特に \(2 \times 50 = 100 = 10^2\) のようなキリの良い数字を先に見つけるのがコツです。
- 円周率 \(\pi\) の計算:
- \(\pi \approx 3.14\) の計算は面倒ですが、\(2\pi \approx 6.28\) や \(1/\pi \approx 0.318\) などの値を覚えておくと、検算や概算に役立ちます。また、選択肢問題などでは \(\pi \approx 3\) として大まかな値を出すのも有効なテクニックです。
- 逆数の計算:
- \(1 / 3.14\) のような割り算は筆算が必要になりますが、分母分子を適当な倍数(例えば100倍)して小数を消してから計算すると間違いにくくなります。
基本例題78 RLC直列回路
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: インピーダンスを先に求める解法
- 模範解答が「電源電圧の最大値」を求めてから「インピーダンス」を計算しているのに対し、別解ではまず各素子の抵抗・リアクタンスから「回路全体のインピーダンス」を求め、その後にオームの法則を用いて電源電圧の最大値を計算します。
- 設問(2)の別解: インピーダンスを先に求める解法
- 上記の別解が有益である理由
- 計算手順の効率化: インピーダンス \(Z\) は素子の定数だけで決まる量であり、電流値に依存しません。先に \(Z\) を求めておくことで、電流値が変わった場合などの応用問題にも対応しやすくなります。
- 物理的意味の理解: 「回路全体の合成抵抗(インピーダンス)」を先に把握することで、回路全体を一つのブラックボックスとして捉える視点が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と一致します。
この問題のテーマは「RLC直列回路における電圧・電流の関係とインピーダンス」です。抵抗、コイル、コンデンサを直列に接続した回路において、各素子にかかる電圧の大きさや位相のずれ、そして回路全体の合成抵抗にあたるインピーダンスを理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 直列回路の電流: 直列回路では、すべての素子に共通の電流が流れます。これを基準(位相0)として考えると分かりやすいです。
- 各素子の電圧と電流の位相関係:
- 抵抗 \(R\): 電圧と電流は同位相(ずれなし)。
- コイル \(L\): 電圧は電流より位相が \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進む。
- コンデンサ \(C\): 電圧は電流より位相が \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れる。
- ベクトル図による合成: 位相の異なる電圧を足し合わせるには、単純な足し算ではなく、ベクトル図を用いた合成(三平方の定理)が必要です。
- インピーダンス \(Z\): 交流回路における電流の流れにくさを表す量で、\(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) で表されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、オームの法則を用いて各素子の電圧の最大値を計算し、それぞれの素子の性質に基づいて電流に対する電圧の位相のずれを答えます。
- (2)では、(1)で求めた各電圧の位相関係を考慮してベクトル図を描き、電源電圧の最大値を求めます。また、電源電圧と電流の比からインピーダンスを求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、各素子にかかる電圧の最大値を求めます。交流回路でも、最大値同士であればオームの法則 \(V_0 = R I_0\) や \(V_0 = X I_0\) が成り立ちます。次に、位相のずれについては、各素子固有の性質(抵抗は同位相、コイルは進み、コンデンサは遅れ)を思い出して答えます。
この設問における重要なポイント
- 電流の最大値 \(I_0 = 1.0\,\text{A}\) はすべての素子で共通。
- 抵抗 \(R = 40\,\Omega\)、誘導リアクタンス \(X_L = 40\,\Omega\)、容量リアクタンス \(X_C = 10\,\Omega\)。
- 位相のずれは「電流を基準」にして「電圧がどうなっているか」を答える。
具体的な解説と立式
1. 各電圧の最大値の計算
抵抗にかかる電圧の最大値を \(V_{R0}\)、コイルにかかる電圧の最大値を \(V_{L0}\)、コンデンサにかかる電圧の最大値を \(V_{C0}\) とします。電流の最大値を \(I_0\) とすると、オームの法則より以下の式が成り立ちます。
$$
V_{R0} = R I_0
$$
$$
V_{L0} = X_L I_0
$$
$$
V_{C0} = X_C I_0
$$
2. 位相のずれ
交流電流の位相を基準(\(\omega t\))としたとき、各電圧の位相は以下のようになります。
- 抵抗: 電流と同位相なので、ずれは \(0\)。
- コイル: 電流より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進む。
- コンデンサ: 電流より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れる。
使用した物理公式
- オームの法則(最大値): \(V_0 = Z I_0\) (\(Z\) は抵抗またはリアクタンス)
与えられた数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{R0} &= 40 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 40\,\text{V}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_{L0} &= 40 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 40\,\text{V}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_{C0} &= 10 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 10\,\text{V}
\end{aligned}
$$
まず電圧の大きさですが、これは単純です。「抵抗値(またはリアクタンス) \(\times\) 電流」で計算できます。今回は電流が \(1.0\,\text{A}\) なので、抵抗値の数字がそのまま電圧の数字になります。
次に「位相のずれ」ですが、これは「タイミングのズレ」のことです。
抵抗では、電流と電圧の山と谷が同時に来ます(ズレなし)。
コイルでは、電圧が電流より先に山を迎えます(\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進む)。「コイルは嫌い(変化を嫌う)」だから電流が遅れる、と覚えると良いでしょう。
コンデンサでは、電圧が電流より後に山を迎えます(\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れる)。コンデンサは充電されてから電圧が上がるので、電圧が遅れるイメージです。
電圧の最大値はそれぞれ \(40\,\text{V}, 40\,\text{V}, 10\,\text{V}\)。位相のずれは、抵抗は \(0\)、コイルは \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進み、コンデンサは \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れ。これらは基本的な性質と一致しています。
抵抗の電圧最大値: \(40\,\text{V}\), 位相のずれ: \(0\)
コイルの電圧最大値: \(40\,\text{V}\), 位相のずれ: \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 進む
コンデンサの電圧最大値: \(10\,\text{V}\), 位相のずれ: \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) 遅れる
問(2)
思考の道筋とポイント
直列回路全体の電源電圧 \(V_0\) は、各素子の電圧の単純な足し算(\(40+40+10=90\))にはなりません。位相がずれているため、ベクトル図を描いて合成する必要があります。
抵抗の電圧ベクトルを基準(右向き)にとると、コイルの電圧は上向き(\(90^\circ\) 進み)、コンデンサの電圧は下向き(\(90^\circ\) 遅れ)になります。これらを合成して電源電圧の大きさ \(V_0\) を求めます。
インピーダンス \(Z\) は、回路全体の「電圧の最大値」と「電流の最大値」の比として求められます。
この設問における重要なポイント
- 電圧の合成には三平方の定理を用いる。
- コイルの電圧 \(V_{L0}\) とコンデンサの電圧 \(V_{C0}\) は互いに逆向きなので、大きさの差 \(|V_{L0} – V_{C0}|\) をとる。
- インピーダンスの定義式 \(Z = \displaystyle\frac{V_0}{I_0}\) を用いる。
具体的な解説と立式
1. 電源電圧の最大値 \(V_0\) の計算
ベクトル図を考えます。
- 横軸(\(x\)軸)方向に抵抗の電圧 \(V_{R0}\)
- 縦軸(\(y\)軸)正方向にコイルの電圧 \(V_{L0}\)
- 縦軸(\(y\)軸)負方向にコンデンサの電圧 \(V_{C0}\)
これらを合成したベクトル \(V_0\) の大きさは、三平方の定理より以下のようになります。
$$
V_0 = \sqrt{V_{R0}^2 + (V_{L0} – V_{C0})^2}
$$
2. インピーダンス \(Z\) の計算
回路全体の電圧の最大値 \(V_0\) と電流の最大値 \(I_0\) の比がインピーダンス \(Z\) です。
$$
Z = \frac{V_0}{I_0}
$$
使用した物理公式
- RLC直列回路の電圧の関係: \(V_0 = \sqrt{V_{R0}^2 + (V_{L0} – V_{C0})^2}\)
- インピーダンスの定義: \(Z = \displaystyle\frac{V_0}{I_0}\)
電源電圧の最大値 \(V_0\)
(1)の結果 \(V_{R0}=40, V_{L0}=40, V_{C0}=10\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= \sqrt{40^2 + (40 – 10)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{40^2 + 30^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{1600 + 900} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2500} \\[2.0ex]
&= 50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
インピーダンス \(Z\)
求めた \(V_0=50\) と \(I_0=1.0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Z &= \frac{50}{1.0} \\[2.0ex]
&= 50\,\Omega
\end{aligned}
$$
電圧の足し算は「矢印(ベクトル)の継ぎ足し」で行います。
抵抗の電圧 \(40\,\text{V}\) は右向き。
コイルの電圧 \(40\,\text{V}\) は上向き。
コンデンサの電圧 \(10\,\text{V}\) は下向き。
上向き \(40\) と下向き \(10\) を合わせると、差し引き「上向き \(30\)」になります。
これと右向き \(40\) を合わせると、直角三角形の斜辺になります。底辺が \(40\)、高さが \(30\) の直角三角形の斜辺は、\(3:4:5\) の関係から \(50\) になります。これが電源電圧の大きさです。
インピーダンスは「回路全体の抵抗」のようなものです。全体に \(50\,\text{V}\) かけて \(1.0\,\text{A}\) 流れたので、\(50 \div 1.0 = 50\,\Omega\) です。
電源電圧の最大値は \(50\,\text{V}\)、インピーダンスは \(50\,\Omega\)。
単純和 \(40+40+10=90\) よりも小さくなっているのは、コイルとコンデンサの電圧が打ち消し合っているためであり、物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
インピーダンス \(Z\) は、各素子の抵抗・リアクタンス \(R, X_L, X_C\) から直接計算できます。この \(Z\) を先に求め、オームの法則 \(V_0 = Z I_0\) を使って電源電圧を求める手順です。
この設問における重要なポイント
- RLC直列回路のインピーダンスの公式: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\)
- オームの法則(回路全体): \(V_0 = Z I_0\)
具体的な解説と立式
1. インピーダンス \(Z\) の計算
抵抗 \(R\)、誘導リアクタンス \(X_L\)、容量リアクタンス \(X_C\) を用いて、インピーダンス \(Z\) は次のように表されます。
$$
Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}
$$
2. 電源電圧の最大値 \(V_0\) の計算
求めた \(Z\) と電流の最大値 \(I_0\) を用いて、オームの法則より次のように表されます。
$$
V_0 = Z I_0
$$
使用した物理公式
- インピーダンスの公式: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\)
- オームの法則: \(V_0 = Z I_0\)
インピーダンス \(Z\)
\(R=40, X_L=40, X_C=10\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Z &= \sqrt{40^2 + (40 – 10)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{40^2 + 30^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{1600 + 900} \\[2.0ex]
&= \sqrt{2500} \\[2.0ex]
&= 50\,\Omega
\end{aligned}
$$
電源電圧の最大値 \(V_0\)
\(Z=50, I_0=1.0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= 50 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
まず、回路全体の「抵抗のようなもの(インピーダンス)」を計算してしまいます。抵抗 \(40\,\Omega\) と、リアクタンスの差 \(40-10=30\,\Omega\) を、三平方の定理で合成すると \(50\,\Omega\) になります。
回路全体が \(50\,\Omega\) の抵抗と同じ働きをするので、そこに \(1.0\,\text{A}\) の電流を流すために必要な電圧は \(50 \times 1.0 = 50\,\text{V}\) だとわかります。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。この方法は、電流値が与えられていない場合や、電流値が変化する場合に特に有効です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- RLC直列回路の電圧と電流の位相関係
- 核心: 直列回路では電流 \(I\) が共通の基準となります。この電流に対して、各素子の電圧の位相がどうずれるかを正確に把握することが全てです。
- 理解のポイント:
- 抵抗 \(R\): 電圧と電流は同位相(ズレなし)。
- コイル \(L\): 電圧は電流より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)(90度)進む。
- コンデンサ \(C\): 電圧は電流より \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)(90度)遅れる。
- この関係を「コイルは進み(L進)、コンデンサは遅れ(C遅)」などの語呂合わせや、ベクトル図のイメージで定着させましょう。
- ベクトル図による電圧・インピーダンスの合成
- 核心: 位相の異なる交流の物理量(電圧やインピーダンス)は、単純な足し算ではなく、ベクトルとして合成する必要があります。
- 理解のポイント:
- 直角三角形の利用: 抵抗成分を底辺、リアクタンス成分の差(\(X_L – X_C\))を高さとする直角三角形を描き、その斜辺が全体の大きさ(電源電圧 \(V_0\) やインピーダンス \(Z\))になるという幾何学的な構造を理解することが重要です。
- 三平方の定理: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) という公式は、単なる暗記ではなく、このベクトル図(ピタゴラスの定理)から自然に導かれるものであることを理解しましょう。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- RLC並列回路: 並列回路では「電圧 \(V\)」が共通の基準になります。電流の位相関係が逆転し(コイルに流れる電流が電圧より遅れる)、ベクトル図の合成方法も変わるため注意が必要です。
- 共振回路: \(X_L = X_C\) となる状態(共振状態)では、インピーダンス \(Z\) が最小値 \(R\) になり、電流が最大になります。このとき、電源電圧と電流は同位相になります。
- 消費電力の問題: 交流回路で電力を消費するのは抵抗 \(R\) だけです。コイルとコンデンサはエネルギーを蓄えたり放出したりするだけで、平均的な消費電力はゼロです。
- 初見の問題での着眼点:
- 直列か並列か: まず回路図を見て、素子がどう接続されているかを確認します。直列なら「電流共通」、並列なら「電圧共通」が鉄則です。
- 与えられた値の種類: 「抵抗値 \([\Omega]\)」なのか「インダクタンス \([\text{H}]\)、容量 \([\text{F}]\)]」なのかを確認します。後者の場合は、まず \(X_L = \omega L\)、\(X_C = 1/\omega C\) を計算してオーム \([\Omega]\) に統一してからベクトル図を描きます。
- 最大値か実効値か: 問題文が「最大値」で書かれているか「実効値」で書かれているかを確認します。どちらで計算しても比率(インピーダンスや位相)は変わりませんが、最終的な答えの数値には影響します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電圧の単純加算:
- 誤解: 電源電圧を \(V_{R0} + V_{L0} + V_{C0}\) と単純に足してしまう。
- 対策: 「交流ではタイミング(位相)が違うから、単純に足せない!」と強く意識しましょう。必ずベクトル図を描いて、斜めの矢印の長さを求めるイメージを持ちます。
- 位相の進み・遅れの混同:
- 誤解: コイルの電圧が遅れる、あるいはコンデンサの電圧が進むと逆にしてしまう。
- 対策: 「コイル(Inductor)は電流の変化を妨げる(慣性のようなもの)→ 電流が遅れる → 相対的に電圧が進む」という理屈で覚えるか、「ICE(Ice: 電流Iは容量Cで起電力Eより進む)」「ELI(Eli: 起電力EはインダクタンスLで電流Iより進む)」といった有名な語呂合わせを活用しましょう。
- リアクタンスの引き算の順序:
- 誤解: \((X_C – X_L)^2\) なのか \((X_L – X_C)^2\) なのか迷う。
- 対策: 2乗するのでどちらでも値は同じになりますが、ベクトル図を描くときは「大きい方から小さい方を引く」のが自然です。通常は \(|X_L – X_C|\) として扱います。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- インピーダンス \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\):
- 選定理由: 回路全体の電圧と電流の比を求めるために、個々の素子の抵抗成分を統合する必要があります。
- 適用根拠: 各素子の電圧ベクトルが直交座標上で \(R\)(実軸)、\(X_L\)(虚軸正)、\(X_C\)(虚軸負)に対応するため、それらの合成ベクトルの大きさとしてこの式が導かれます。
- オームの法則 \(V_0 = Z I_0\):
- 選定理由: 回路全体を一つの「ブラックボックス(合成抵抗 \(Z\))」と見なすことで、複雑な交流回路を単純な直流回路のアナロジーで扱えるようになります。
- 適用根拠: インピーダンス \(Z\) が定義された時点で、回路全体としての電圧と電流の比例関係が成立するためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 3:4:5の直角三角形:
- 物理の問題では、計算が綺麗になるように \(3:4:5\) や \(5:12:13\) といったピタゴラス数になる設定が頻出です。\(30, 40\) という数字を見たら「斜辺は \(50\) だな」と予測を立てることで、計算ミスを即座に発見できます。
- 図を描く習慣:
- 頭の中だけで考えず、必ず簡単なベクトル図(矢印)を描きましょう。特に \(V_L\) と \(V_C\) の引き算(矢印の相殺)を図示することで、計算の意味が視覚的に理解でき、ミスが激減します。
- 単位の確認:
- 全ての電圧が \([\text{V}]\)、全ての抵抗・リアクタンスが \([\Omega]\)、電流が \([\text{A}]\) になっているか確認してから計算に入りましょう。
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基本問題
542 交流の発生
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「交流の発生原理となる、回転コイルを貫く磁束の計算」です。発電機の基本的な仕組みを理解するための第一歩となる問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 回転運動の基本: 一定の角速度 \(\omega\) で回転するとき、時刻 \(t\) における回転角 \(\theta\) は \(\theta = \omega t\) で表されること。
- 磁束の定義: 磁束 \(\Phi\) は、磁束密度 \(B\) と、磁場に垂直な面の面積 \(S_{\perp}\) の積 \(\Phi = B S_{\perp}\) で定義されること。
- ベクトルの分解(射影): 面が斜めになっている場合、磁場に垂直な成分(射影面積)を三角関数を用いて求める必要があること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、時刻 \(t\) においてコイルがどれだけ回転したか(角度 \(\theta\))を求めます。
- 次に、その角度において、コイルの面積 \(S\) が磁場の方向に対してどれくらいの「有効な広さ(射影面積)」を持っているかを幾何学的に考えます。
- 最後に、磁束密度 \(B\) と有効面積を掛け合わせて磁束 \(\Phi\) を求めます。
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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