「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅴ 章 19】発展問題493~500

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発展問題

493 電流計と電圧計の接続

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 合成抵抗を用いた解法
      • 模範解答が電流の和から測定値を計算するのに対し、別解では回路全体の合成抵抗を直接計算し、それが測定値 \(V_1/I_1\) に等しいことを利用して相対誤差を求めます。
    • 設問(4)の別解: 合成抵抗を用いた解法
      • 同様に、直列回路の合成抵抗を計算し、それが測定値 \(V_2/I_2\) に等しいことを利用します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 回路全体の把握: 「測定値 \(V/I\) とは、計器を含めた回路全体の合成抵抗そのものである」という視点を持つことで、誤差の原因(計器の内部抵抗)が直感的に理解できます。
    • 計算の簡略化: 電流や電圧を個別に計算する手間が省け、抵抗の合成公式だけで素早く答えにたどり着けます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電流計・電圧計の内部抵抗による測定誤差」です。理想的な計器(電流計は抵抗0、電圧計は抵抗無限大)ではない現実の計器を使った場合、測定値にどのようなズレが生じるかを定量的に評価する力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: \(V = RI\) の関係。
  2. キルヒホッフの法則: 電流の分岐・合流(第1法則)と、回路網の電圧降下(第2法則)。
  3. 並列接続の性質: 電圧が共通で、電流が分流する。合成抵抗は \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)。
  4. 直列接続の性質: 電流が共通で、電圧が分圧される。合成抵抗は \(R = R_1 + R_2\)。
  5. 相対誤差の定義: \(|\frac{\text{測定値} – \text{真の値}}{\text{真の値}}|\)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (A) 図1(電圧計を並列、その外側に電流計)の場合、電圧計にも電流が流れてしまうため、電流計は「抵抗を流れる電流」+「電圧計を流れる電流」を測定してしまいます。これを計算し、誤差を評価します。
  2. (B) 図2(電流計を直列、その外側に電圧計)の場合、電流計にも電圧降下が生じるため、電圧計は「抵抗の電圧」+「電流計の電圧」を測定してしまいます。これを計算し、誤差を評価します。

問(A)

思考の道筋とポイント
図1の回路では、抵抗 \(r\) と電圧計(内部抵抗 \(t\))が並列に接続されています。
電圧計の読み \(V_1\) は、この並列部分の両端の電圧です。
電流計の読み \(I_1\) は、並列部分全体に流れ込む総電流です。
この設問における重要なポイント

  • 並列回路なので、抵抗 \(r\) と電圧計 \(t\) にかかる電圧はともに \(V_1\) である。
  • 電流計を流れる電流 \(I_1\) は、抵抗を流れる電流 \(I_{\text{抵抗}}\) と電圧計を流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) の和である(キルヒホッフの第1法則)。

具体的な解説と立式

(1) 抵抗を流れる電流と、電圧計を流れる電流
抵抗 \(r\) に加わる電圧は \(V_1\) です。オームの法則より、抵抗を流れる電流 \(I_{\text{抵抗}}\) は、
$$ I_{\text{抵抗}} = \frac{V_1}{r} $$
同様に、電圧計(内部抵抗 \(t\))に加わる電圧も \(V_1\) です。オームの法則より、電圧計を流れる電流 \(I_{\text{電圧計}}\) は、
$$ I_{\text{電圧計}} = \frac{V_1}{t} $$

(2) 相対誤差
まず、測定値から算出される抵抗値 \(R_{\text{測定}}\) を求めます。オームの法則の形式 \(R = V/I\) に従い、測定値を代入します。
$$ R_{\text{測定}} = \frac{V_1}{I_1} $$
ここで、電流計の読み \(I_1\) は、(1)で求めた2つの電流の和です。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= I_{\text{抵抗}} + I_{\text{電圧計}} \\[2.0ex]
&= \frac{V_1}{r} + \frac{V_1}{t} \\[2.0ex]
&= V_1 \left( \frac{1}{r} + \frac{1}{t} \right)
\end{aligned}
$$
これを \(R_{\text{測定}}\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{測定}} &= \frac{V_1}{V_1 \left( \frac{1}{r} + \frac{1}{t} \right)} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\frac{1}{r} + \frac{1}{t}} \\[2.0ex]
&= \frac{rt}{r+t}
\end{aligned}
$$
真の抵抗値は \(r\) です。相対誤差の定義式に代入します。
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{R_{\text{測定}} – r}{r} \right| $$
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{\frac{rt}{r+t} – r}{r} \right| $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • キルヒホッフの第1法則: \(I_{\text{入}} = I_{\text{出}}\)
  • 相対誤差の定義
計算過程

相対誤差の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
\text{相対誤差} &= \left| \frac{\frac{rt}{r+t} – \frac{r(r+t)}{r+t}}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{\frac{rt – r^2 – rt}{r+t}}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{-r^2}{r(r+t)} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{-r}{r+t} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{r}{r+t}
\end{aligned}
$$
(\(r, t > 0\) なので絶対値記号を外すと符号が変わりますが、大きさとしては正の値になります)

この設問の平易な説明

図1のつなぎ方だと、電圧計自体にも電気が流れてしまいます(漏れ電流)。
そのため、電流計は「抵抗に行きたい電気」だけでなく「電圧計に漏れた電気」も一緒にカウントしてしまいます。
結果として、電流 \(I\) を実際より大きく測ってしまうため、計算上の抵抗 \(R=V/I\) は本物より小さく出てしまいます。そのズレの割合を計算しました。

結論と吟味

相対誤差は \(\frac{r}{r+t}\) です。
もし電圧計が理想的(内部抵抗 \(t \to \infty\))なら、分母が無限大になり誤差は \(0\) になります。これは物理的に正しい振る舞いです。

解答 (A)(1) 抵抗: \(\displaystyle\frac{V_1}{r}\), 電圧計: \(\displaystyle\frac{V_1}{t}\) (2) \(\displaystyle\frac{r}{r+t}\)
別解: 合成抵抗を用いた解法(設問2)

思考の道筋とポイント
測定値 \(R_{\text{測定}} = V_1/I_1\) は、回路全体の合成抵抗そのものです。
図1は抵抗 \(r\) と電圧計 \(t\) の並列回路なので、その合成抵抗を計算すれば一発で \(R_{\text{測定}}\) が求まります。
この設問における重要なポイント

  • 並列回路の合成抵抗: \(\frac{1}{R} = \frac{1}{r} + \frac{1}{t}\) より \(R = \frac{rt}{r+t}\)。
  • 測定値 \(R_{\text{測定}}\) は、回路全体の合成抵抗に等しい。

具体的な解説と立式
測定値から得られる抵抗値 \(R_{\text{測定}}\) は、並列部分の合成抵抗に等しいです。
並列接続の合成抵抗の公式より、
$$ \frac{1}{R_{\text{測定}}} = \frac{1}{r} + \frac{1}{t} $$
これを \(R_{\text{測定}}\) について解くと、
$$ R_{\text{測定}} = \frac{rt}{r+t} $$
これを用いて相対誤差を計算します。
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{R_{\text{測定}} – r}{r} \right| $$
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{\frac{rt}{r+t} – r}{r} \right| $$

使用した物理公式

  • 並列接続の合成抵抗: \(R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\)(和分の積)
  • 相対誤差の定義
計算過程

$$
\begin{aligned}
\text{相対誤差} &= \left| \frac{\frac{rt}{r+t} – \frac{r(r+t)}{r+t}}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{\frac{rt – r^2 – rt}{r+t}}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{-r^2}{r(r+t)} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{r}{r+t}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「電圧計の読み」÷「電流計の読み」という計算は、実は「抵抗と電圧計をひとまとめにした全体の抵抗」を計算しているのと同じことです。
抵抗 \(r\) と電圧計 \(t\) が並列につながっているので、全体の抵抗は「和分の積」で計算できます。これを使えば、電流をいちいち計算しなくても、すぐに測定値の式が作れます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。計算量が少なく効率的です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{r}{r+t}\)

問(B)

思考の道筋とポイント
図2の回路では、抵抗 \(r\) と電流計(内部抵抗 \(s\))が直列に接続されています。
電流計の読み \(I_2\) は、この直列回路を流れる共通の電流です。
電圧計の読み \(V_2\) は、この直列部分全体(抵抗+電流計)にかかる総電圧です。
この設問における重要なポイント

  • 直列回路なので、抵抗 \(r\) と電流計 \(s\) に流れる電流はともに \(I_2\) である。
  • 電圧計が測定する電圧 \(V_2\) は、抵抗の電圧 \(V_{\text{抵抗}}\) と電流計の電圧 \(V_{\text{電流計}}\) の和である(キルヒホッフの第2法則)。

具体的な解説と立式

(3) 抵抗の両端の電圧と、電流計の両端の電圧
抵抗 \(r\) を流れる電流は \(I_2\) です。オームの法則より、抵抗の両端の電圧 \(V_{\text{抵抗}}\) は、
$$ V_{\text{抵抗}} = rI_2 $$
同様に、電流計(内部抵抗 \(s\))を流れる電流も \(I_2\) です。オームの法則より、電流計の両端の電圧 \(V_{\text{電流計}}\) は、
$$ V_{\text{電流計}} = sI_2 $$

(4) 相対誤差
測定値から算出される抵抗値 \(R_{\text{測定}}\) を求めます。
$$ R_{\text{測定}} = \frac{V_2}{I_2} $$
ここで、電圧計の読み \(V_2\) は、(3)で求めた2つの電圧の和です。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_{\text{抵抗}} + V_{\text{電流計}} \\[2.0ex]
&= rI_2 + sI_2 \\[2.0ex]
&= (r+s)I_2
\end{aligned}
$$
これを \(R_{\text{測定}}\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{測定}} &= \frac{(r+s)I_2}{I_2} \\[2.0ex]
&= r+s
\end{aligned}
$$
真の抵抗値は \(r\) です。相対誤差の定義式に代入します。
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{R_{\text{測定}} – r}{r} \right| $$
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{(r+s) – r}{r} \right| $$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
  • キルヒホッフの第2法則(電圧降下の和)
  • 相対誤差の定義
計算過程

相対誤差の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
\text{相対誤差} &= \left| \frac{s}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{s}{r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

図2のつなぎ方だと、電流計自体も電気の流れを少し邪魔します(内部抵抗)。
そのため、電圧計は「抵抗にかかる電圧」だけでなく「電流計にかかる電圧(邪魔された分)」も余計に測ってしまいます。
結果として、電圧 \(V\) を実際より大きく測ってしまうため、計算上の抵抗 \(R=V/I\) は本物より大きく出てしまいます。そのズレの割合を計算しました。

結論と吟味

相対誤差は \(\frac{s}{r}\) です。
もし電流計が理想的(内部抵抗 \(s \to 0\))なら、分子が \(0\) になり誤差は \(0\) になります。これは物理的に正しい振る舞いです。

解答 (B)(3) 抵抗: \(rI_2\), 電流計: \(sI_2\) (4) \(\displaystyle\frac{s}{r}\)
別解: 合成抵抗を用いた解法(設問4)

思考の道筋とポイント
測定値 \(R_{\text{測定}} = V_2/I_2\) は、回路全体の合成抵抗そのものです。
図2は抵抗 \(r\) と電流計 \(s\) の直列回路なので、その合成抵抗を計算すれば一発で \(R_{\text{測定}}\) が求まります。
この設問における重要なポイント

  • 直列回路の合成抵抗: \(R = r + s\)。
  • 測定値 \(R_{\text{測定}}\) は、回路全体の合成抵抗に等しい。

具体的な解説と立式
測定値から得られる抵抗値 \(R_{\text{測定}}\) は、直列部分の合成抵抗に等しいです。
$$ R_{\text{測定}} = r + s $$
これを用いて相対誤差を計算します。
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{R_{\text{測定}} – r}{r} \right| $$
$$ \text{相対誤差} = \left| \frac{(r+s) – r}{r} \right| $$

使用した物理公式

  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
  • 相対誤差の定義
計算過程

$$
\begin{aligned}
\text{相対誤差} &= \left| \frac{s}{r} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{s}{r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「電圧計の読み」÷「電流計の読み」は、電圧計がつながっている区間全体の抵抗値を計算していることになります。
抵抗 \(r\) と電流計 \(s\) が直列につながっているので、全体の抵抗は単純な足し算 \(r+s\) です。これを使えば、電圧をいちいち計算しなくても、すぐに測定値の式が作れます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。直列接続の合成抵抗という基本概念だけで解けるため、非常に見通しが良いです。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{s}{r}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 現実の計器の特性と回路への影響
    • 核心: 理想的な計器(電流計の抵抗 \(0\)、電圧計の抵抗 \(\infty\))と異なり、現実の計器は内部抵抗を持つため、接続することで回路の状態(電流・電圧分布)を変化させてしまうという事実です。
    • 理解のポイント:
      • 電流計: 内部抵抗 \(s\) を持つため、直列につなぐと全体の抵抗が増え、電流を減少させたり電圧降下を生じさせたりします。
      • 電圧計: 内部抵抗 \(t\) を持つため、並列につなぐと電流の分流(漏れ電流)が生じ、測定対象の電流を減少させます。
  • 測定値の意味の再解釈
    • 核心: 「電圧計の読み \(V\)」÷「電流計の読み \(I\)」で計算される値 \(R_{\text{測定}}\) は、単なる抵抗 \(r\) ではなく、計器を含めた「測定区間全体の合成抵抗」であるという視点です。
    • 理解のポイント:
      • 図1(電圧計並列型)では、\(R_{\text{測定}}\) は \(r\) と \(t\) の並列合成抵抗になります。
      • 図2(電流計直列型)では、\(R_{\text{測定}}\) は \(r\) と \(s\) の直列合成抵抗になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 倍率器と分流器: 電圧計や電流計の測定範囲を広げるために抵抗を接続する問題。本問と同じく、計器を「内部抵抗を持つ抵抗器」として扱い、直列・並列の合成抵抗や分圧・分流の法則を適用します。
    • ホイートストンブリッジの誤差: 検流計の内部抵抗や電池の内部抵抗を考慮する問題。キルヒホッフの法則を用いて厳密に解く必要があります。
    • 電池の内部抵抗: 端子電圧 \(V\) と起電力 \(E\) の関係 \(V = E – rI\) を扱う問題。電池もまた「理想電源+内部抵抗」のモデルで扱われます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 計器を抵抗記号に書き換える: 電流計を「抵抗 \(s\)」、電圧計を「抵抗 \(t\)」として回路図を描き直します。これにより、単なる抵抗回路の問題に帰着できます。
    2. 測定値が何を表しているか確認する: 電圧計がどこの電位差を測っているか、電流計がどこの電流を測っているかを、回路図上で指でなぞって確認します。
    3. 理想的な条件とのズレを評価する: 「もし内部抵抗がなかったらどうなるか」と比較することで、誤差の発生原因(分流か分圧か)を特定します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 測定値と真の値の混同:
    • 誤解: \(V/I\) で計算した値がそのまま抵抗 \(r\) になると無意識に思い込んでしまう。
    • 対策: 測定値には必ず添字(例: \(R_{\text{測定}}\))を付け、真の値 \(r\) と明確に区別して数式を扱います。
  • 相対誤差の定義の取り違え:
    • 誤解: 分母を測定値にしてしまう(\(|\frac{\text{測定} – \text{真}}{\text{測定}}|\))ミス。
    • 対策: 「真の値に対するズレの割合」という定義を言葉で覚えます。基準(分母)は常に「真の値」です。
  • 近似計算の適用ミス:
    • 誤解: \(r \ll t\) や \(s \ll r\) の条件がないのに、勝手に項を無視してしまう。
    • 対策: 問題文で近似が指示されていない限り、厳密な式変形を行います。本問のように最終的な答えが分数形式(\(\frac{r}{r+t}\))になることも多いです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(A)での公式選択(キルヒホッフ第1法則):
    • 選定理由: 電流計が測定している電流 \(I_1\) が、抵抗への電流と電圧計への電流の「合計」であることを表現する必要があります。
    • 適用根拠: 回路の分岐点において電荷は蓄積せず、流入量と流出量が等しくなるという電荷保存則に基づきます。
  • 問(B)での公式選択(キルヒホッフ第2法則):
    • 選定理由: 電圧計が測定している電圧 \(V_2\) が、抵抗での電圧降下と電流計での電圧降下の「合計」であることを表現する必要があります。
    • 適用根拠: 回路内の任意の閉路において、電位の変化の総和はゼロになる(エネルギー保存則)という法則に基づきます。
  • 別解での公式選択(合成抵抗):
    • 選定理由: 個別の電流・電圧を求める必要がなく、最終的に「電圧÷電流」の形(=抵抗)が必要なため、回路全体を一つの抵抗とみなす方が近道です。
    • 適用根拠: オームの法則 \(V=RI\) は、単一の抵抗だけでなく、合成抵抗 \(R\) を持つ回路ブロック全体に対しても成立します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の次元(単位)チェック:
    • 答えが \(\frac{r}{r+t}\)(無次元)や \(\frac{s}{r}\)(無次元)になっているか確認します。もし \(\frac{r^2}{r+t}\)(抵抗の次元)になっていたら、相対誤差(無次元量)として誤りです。
  • 極限での振る舞いチェック:
    • (A)で \(t \to \infty\)(理想電圧計)とすると、誤差 \(\frac{r}{r+\infty} \to 0\)。
    • (B)で \(s \to 0\)(理想電流計)とすると、誤差 \(\frac{0}{r} \to 0\)。
    • このように、理想的な条件で誤差がゼロになることを確認すれば、計算ミスの可能性を大幅に減らせます。
  • 繁分数の処理:
    • \(\frac{1}{1/r + 1/t}\) のような式は、分母・分子に \(rt\) を掛けて \(\frac{rt}{t+r}\) と一発で変形する練習をしておきましょう。通分してから逆数を取るよりもミスが減ります。

494 電池と消費電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 微分を用いた解法
      • 模範解答が相加平均・相乗平均の不等式や平方完成を用いて最大値を求めるのに対し、別解では消費電力 \(P\) を抵抗 \(R\) の関数とみなし、微分を用いて増減表を書くことで最大値を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 汎用性の高さ: 相加相乗平均や平方完成といったテクニカルな式変形に頼らず、関数の最大・最小を求める一般的な手法(微分)で解けることを示すことで、応用力を高めます。
    • グラフの概形の理解: 増減表を作成することで、抵抗 \(R\) の変化に対して消費電力 \(P\) がどのように変化するか(単調増加ではなく、ピークを持つこと)を視覚的にイメージしやすくなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電池の内部抵抗と最大消費電力」です。電池には内部抵抗があるため、外部に取り出せる電力には限界があり、ある特定の条件(インピーダンス整合)で最大になることを学びます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則: \(V = RI\) の関係。
  2. 消費電力の公式: \(P = IV = I^2R = \frac{V^2}{R}\)。
  3. 直列回路の合成抵抗: \(R_{\text{全}} = R_1 + R_2\)。
  4. 最大値問題へのアプローチ: 変数を含む分数の最大化(相加相乗平均、平方完成、微分など)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、回路全体の合成抵抗を求め、オームの法則から電流 \(I\) を計算します。その後、消費電力の公式 \(P = I^2R\) に代入して \(P\) を \(R\) の関数として表します。
  2. (2)では、(1)で求めた式 \(P(R)\) が最大になる条件を数学的に探求します。模範解答では式変形(相加相乗平均など)を用いていますが、別解として微分を用いる方法も紹介します。

問(1)

思考の道筋とポイント
すべり抵抗器(可変抵抗)と電池の内部抵抗は直列に接続されています。
まずは回路全体を流れる電流 \(I\) を求め、その電流がすべり抵抗器を流れることで発生する消費電力 \(P\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 電池の内部抵抗 \(r\) と外部抵抗 \(R\) は直列接続である。
  • 回路全体の起電力は \(E\) である。
  • 消費電力 \(P\) は、抵抗 \(R\) と電流 \(I\) を用いて \(P = I^2R\) で表される。

具体的な解説と立式
まず、回路全体の合成抵抗 \(R_{\text{全}}\) を求めます。内部抵抗 \(r\) とすべり抵抗器 \(R\) は直列なので、
$$ R_{\text{全}} = R + r $$
次に、回路を流れる電流 \(I\) をオームの法則より求めます。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{E}{R_{\text{全}}} \\[2.0ex]
&= \frac{E}{R+r}
\end{aligned}
$$
すべり抵抗器での消費電力 \(P\) は、抵抗値 \(R\) と電流 \(I\) を用いて \(P = I^2R\) と表せます。これに求めた \(I\) を代入します。
$$ P = \left( \frac{E}{R+r} \right)^2 R $$

使用した物理公式

  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • 消費電力: \(P = I^2R\)
計算過程

式を整理します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{E^2}{(R+r)^2} R \\[2.0ex]
&= \frac{R E^2}{(R+r)^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電池には「内部抵抗」という邪魔ものが入っています。だから、外につないだ抵抗 \(R\) と、中の抵抗 \(r\) の合計が、回路全体の抵抗になります。
まず、その合計抵抗で電圧 \(E\) を割って、流れる電流を計算します。
次に、「電力=電流の2乗×抵抗」の式を使って、抵抗 \(R\) で消費されるパワーを計算しました。

結論と吟味

消費電力は \(P = \frac{R E^2}{(R+r)^2}\) です。単位は \([\text{W}]\) です。
もし \(R=0\) なら \(P=0\)(電流は流れるが抵抗がない)、\(R \to \infty\) なら \(P \to 0\)(抵抗が大きすぎて電流が流れない)となり、その中間に最大値がありそうな形をしています。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{R E^2}{(R+r)^2}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた式 \(P = \frac{R E^2}{(R+r)^2}\) の最大値を求めます。
変数は \(R\) です。分母と分子の両方に \(R\) が含まれているため、このままでは最大値を判断しにくいです。
そこで、分母か分子のどちらか一方に \(R\) を集めるような式変形を行います。
模範解答では、分母分子を \(R\) で割ることで分母のみに \(R\) を集め、相加平均・相乗平均の不等式を利用しています。
この設問における重要なポイント

  • 変数が分母・分子に散らばっているときは、どちらかに集める変形が有効。
  • \(A + B \ge 2\sqrt{AB}\) (相加平均・相乗平均の関係)は、積 \(AB\) が定数になるときに和 \(A+B\) の最小値を求めるのに使える。
  • 等号成立条件(\(A=B\))を確認することを忘れない。

具体的な解説と立式
(1)の式を変形します。分母を展開してから、分母・分子を \(R\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{R E^2}{R^2 + 2rR + r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{E^2}{R + 2r + \frac{r^2}{R}}
\end{aligned}
$$
\(P\) が最大になるのは、分母 \(D = R + 2r + \frac{r^2}{R}\) が最小になるときです。
分母の中で変数は \(R + \frac{r^2}{R}\) の部分です。\(R > 0, \frac{r^2}{R} > 0\) なので、相加平均・相乗平均の関係を用います。
$$ R + \frac{r^2}{R} \ge 2\sqrt{R \times \frac{r^2}{R}} $$

使用した物理公式

  • 相加平均・相乗平均の関係: \(a+b \ge 2\sqrt{ab}\) (\(a, b > 0\))
計算過程

不等式の右辺を計算します。
$$
\begin{aligned}
2\sqrt{R \times \frac{r^2}{R}} &= 2\sqrt{r^2} \\[2.0ex]
&= 2r
\end{aligned}
$$
よって、
$$ R + \frac{r^2}{R} \ge 2r $$
したがって、分母 \(D\) の最小値は、
$$
\begin{aligned}
D_{\text{最小}} &= 2r + 2r \\[2.0ex]
&= 4r
\end{aligned}
$$
このとき、消費電力 \(P\) は最大値をとります。
$$ P_{\text{最大}} = \frac{E^2}{4r} $$
最大値をとる条件(等号成立条件)は、相加平均・相乗平均の2項が等しいときです。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{r^2}{R} \\[2.0ex]
R^2 &= r^2
\end{aligned}
$$
\(R > 0, r > 0\) より、
$$ R = r $$

この設問の平易な説明

電力の式の分母と分子に \(R\) があるので、計算しやすいように変形して、分母だけに \(R\) がある形にしました。
分母が一番小さくなるとき、全体(電力)は一番大きくなります。
「ある数」と「その逆数(ひっくり返した数)」を足したものは、ある決まった値以上になるという数学のルール(相加相乗平均)を使って、分母の最小値を求めました。
結果として、外につなぐ抵抗 \(R\) が、中の抵抗 \(r\) と同じ値になったとき、一番効率よくパワーを取り出せることがわかりました。

結論と吟味

最大消費電力は \(\frac{E^2}{4r}\)、そのときの抵抗値は \(R=r\) です。
これは「インピーダンス整合(マッチング)」と呼ばれる重要な条件です。内部抵抗と同じ大きさの負荷をつないだとき、電力供給が最大になります。

解答 (2) 最大消費電力: \(\displaystyle\frac{E^2}{4r}\), 抵抗値: \(r\)
別解: 微分を用いた解法

思考の道筋とポイント
\(P\) を \(R\) の関数 \(P(R)\) とみなし、\(R\) で微分して増減を調べます。数IIIの知識が必要ですが、グラフの形状まで含めて理解できる強力な方法です。
この設問における重要なポイント

  • 商の微分公式: \(\left( \frac{f}{g} \right)’ = \frac{f’g – fg’}{g^2}\)。
  • \(P'(R) = 0\) となる \(R\) で極値(最大値)をとる。

具体的な解説と立式
$$ P(R) = \frac{E^2 R}{(R+r)^2} $$
これを \(R\) で微分します。\(E^2\) は定数なので前に出します。
$$ \frac{dP}{dR} = E^2 \frac{1 \cdot (R+r)^2 – R \cdot 2(R+r)}{(R+r)^4} $$

使用した物理公式

  • 商の微分公式
計算過程

分子を整理します。共通因数 \((R+r)\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dP}{dR} &= E^2 \frac{(R+r)\{(R+r) – 2R\}}{(R+r)^4} \\[2.0ex]
&= E^2 \frac{r – R}{(R+r)^3}
\end{aligned}
$$
\(R > 0, r > 0\) なので、分母 \((R+r)^3\) は常に正です。
したがって、\(\frac{dP}{dR}\) の符号は分子 \(r – R\) の符号で決まります。

  • \(0 < R < r\) のとき、\(\frac{dP}{dR} > 0\) (単調増加)
  • \(R = r\) のとき、\(\frac{dP}{dR} = 0\) (極大)
  • \(R > r\) のとき、\(\frac{dP}{dR} < 0\) (単調減少)

よって、\(R = r\) のとき \(P\) は最大値をとります。
最大値は、元の式に \(R=r\) を代入して、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{最大}} &= \frac{r E^2}{(r+r)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{r E^2}{4r^2} \\[2.0ex]
&= \frac{E^2}{4r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

微分という数学の道具を使って、グラフの山の頂点を探しました。
計算の結果、抵抗 \(R\) が \(r\) より小さいときは右上がり、\(r\) より大きいときは右下がりになることがわかりました。つまり、ちょうど \(R=r\) のところが山の頂上(最大値)です。

結論と吟味

微分を用いても同じ結果が得られました。増減表から、\(R=r\) をピークにして山なりのグラフになることが分かります。

解答 (2) 最大消費電力: \(\displaystyle\frac{E^2}{4r}\), 抵抗値: \(r\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 最大電力供給定理(インピーダンス整合)
    • 核心: 電源から取り出せる電力が最大になるのは、外部抵抗 \(R\) が電源の内部抵抗 \(r\) と等しくなったとき(\(R=r\))であるという法則です。
    • 理解のポイント:
      • \(R\) が小さすぎると、電流はたくさん流れますが、電圧 \(V=RI\) が小さくなるため電力 \(P=IV\) は小さくなります。
      • \(R\) が大きすぎると、電圧は大きくなりますが、電流 \(I\) が流れなくなるため電力 \(P\) は小さくなります。
      • このトレードオフのバランスが最適になるのが \(R=r\) のポイントです。
  • 変数を含む分数の最大・最小問題
    • 核心: 物理の問題であっても、最終的には数式の処理能力が問われます。特に「分母と分子に変数が散らばっている式」の最大値を求める手法は必須テクニックです。
    • 理解のポイント:
      • 相加相乗平均: \(x + \frac{a}{x} \ge 2\sqrt{a}\) の形に持ち込む。
      • 微分: 関数の増減を調べて極値を求める。
      • 平方完成: 2次関数の頂点を求める。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 交流回路のインピーダンス整合: 抵抗だけでなくコイルやコンデンサを含む回路でも、電源のインピーダンスと負荷のインピーダンスが共役複素数の関係にあるとき、最大電力が供給されます。
    • 可変抵抗を含む回路の消費電力: 並列回路の一部が可変抵抗になっている場合など、合成抵抗の式が複雑になっても、基本方針(\(P(R)\) の式を立てて最大値を求める)は変わりません。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 変数は何か?: 何を変化させて最大値を求めるのか(本問では \(R\))を明確にします。
    2. 目的関数を立式する: 最大化したい物理量(本問では \(P\))を、変数(\(R\))と定数(\(E, r\))だけで表します。
    3. グラフの概形をイメージする: \(R=0\) と \(R \to \infty\) の極限を考え、その間で山なりになることを予想します。これにより、計算ミス(単調増加する式になってしまうなど)を防げます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 消費電力の公式の誤用:
    • 誤解: \(P = \frac{V^2}{R}\) の \(V\) に、電源電圧 \(E\) をそのまま代入してしまう(\(P = \frac{E^2}{R}\) としてしまう)。
    • 対策: \(V\) はあくまで「その抵抗にかかる電圧」です。内部抵抗 \(r\) での電圧降下があるため、すべり抵抗器にかかる電圧は \(E\) ではありません。必ず回路図を描き、分圧された電圧を求めるか、電流 \(I\) を求めて \(P=I^2R\) を使うのが安全です。
  • 相加相乗平均の適用条件見落とし:
    • 誤解: 変数が負になる可能性があるのに使ってしまう、あるいは等号成立条件(\(A=B\))を確認せずに最小値としてしまう。
    • 対策: 物理量(抵抗、質量、長さなど)は正の値であることが多いですが、必ず「\(R>0\) なので」と一言添える癖をつけましょう。また、求めた \(R\) が物理的にあり得る値か確認します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(1)での公式選択(\(P=I^2R\)):
    • 選定理由: 直列回路では電流 \(I\) が共通で計算しやすいため、電圧 \(V\) を求めるステップを省略できる \(P=I^2R\) が最も効率的です。
    • 適用根拠: オームの法則 \(V=IR\) を \(P=IV\) に代入して得られる式であり、抵抗と電流が分かっている場合に直接電力を求められます。
  • 問(2)での解法選択(相加相乗平均 vs 微分):
    • 選定理由: 式の形が \(\frac{x}{(x+a)^2}\) や \(\frac{1}{x + a + b/x}\) のようになっている場合、相加相乗平均を使うと計算量が圧倒的に少なくて済みます。
    • 適用根拠: 変数 \(R\) が正であり、分母に \(R + \frac{r^2}{R}\) という「逆数との和」の形が現れるため、相加相乗平均の不等式の適用条件を完璧に満たしています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 定数のくくり出し:
    • 微分の計算などで、\(E^2\) のような定数は最初から微分の外に出しておきます。式がスッキリしてミスが減ります。
  • 次元(単位)チェック:
    • 最終的な答え \(P = \frac{E^2}{4r}\) の単位を確認します。\(\frac{[\text{V}]^2}{[\Omega]} = [\text{W}]\) となり、電力の次元として正しいです。もし \(4r^2\) などになっていたら次元がおかしいと気づけます。
  • 極値のチェック:
    • \(R=r\) という答えが出たら、元の式に代入して \(P\) を計算してみます。さらに \(R=0\) や \(R=2r\) などを代入して、\(R=r\) のときより小さくなることを確認すれば、最大値であることの確信が持てます。

495 ホイートストンブリッジ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 電位を用いた解法(テブナンの定理の応用)
      • 模範解答がキルヒホッフの法則を用いて連立方程式を解くのに対し、別解では点Aと点Bの電位をそれぞれ計算し、その電位差と等価抵抗から電流 \(I_5\) を求めます。
    • 設問(3)の別解: 電位の大小関係による定性的な解法
      • 模範解答が数式 \(I_5 < 0\) から判断するのに対し、別解では分圧の法則を用いて点Aと点Bの電位を比較し、電流の向きと抵抗値の関係を直感的に導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算量の削減: キルヒホッフの法則による連立方程式は計算が煩雑になりがちですが、電位に着目することで計算の見通しが良くなります。
    • 物理的直感の強化: 「電流は電位の高い方から低い方へ流れる」という基本原理に基づいて現象を理解することで、数式に頼らない定性的な判断力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ホイートストンブリッジの平衡条件と非平衡時の電流」です。ブリッジ回路において、検流計に電流が流れない条件(平衡条件)だけでなく、流れる場合の電流の向きや大きさを定量的に扱う力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの法則:
    • 第1法則(電流則): 分岐点での電流の総和は0。
    • 第2法則(電圧則): 閉回路での電圧降下の総和は0。
  2. オームの法則: \(V = RI\)。
  3. 電位と電位差: 回路上の各点の「高さ(電位)」を考え、その差によって電流が流れるという視点。
  4. ホイートストンブリッジの平衡条件: 向かい合う抵抗の積が等しいとき(\(R_1 R_4 = R_2 R_3\))、検流計には電流が流れない。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、キルヒホッフの法則を用いて閉回路の方程式を立て、連立方程式を解いて \(I_5\) を求めます。
  2. (2)では、(1)で求めた式において \(I_5 = 0\) となる条件を探します。これはホイートストンブリッジの平衡条件と一致します。
  3. (3)では、電流の向きが指定された条件(\(I_5 < 0\))を満たすように、抵抗値 \(R_x\) の大小関係を考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
回路網の問題なので、キルヒホッフの法則を適用するのが王道です。
未知数は \(I_1\) から \(I_5\) までの5つですが、求めたいのは \(I_5\) と \(I_1\) の関係です。
閉回路を適切に選び、不要な電流(\(I_2, I_3, I_4\))を消去する方針で式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • キルヒホッフ第1法則の適用: 点Aと点Bでの電流の出入りに着目し、\(I_3\) や \(I_2\) を \(I_1, I_5, I_4\) などで表す。
  • キルヒホッフ第2法則の適用: 閉回路PABPとAQBAについて電圧の式を立てる。
  • 電流の向きと電圧変化の符号: 電流と同じ向きに進むと電位は下がり(電圧降下)、逆向きに進むと電位は上がる(電圧上昇)。

具体的な解説と立式
まず、キルヒホッフの第1法則(電流の保存)を点Aと点Bに適用します。
点Aについて(流入=流出):
$$ I_1 + I_5 = I_3 \quad \cdots ① $$
点Bについて(流入=流出):
$$ I_2 = I_5 + I_4 \quad \cdots ② $$
次に、キルヒホッフの第2法則(一周して電位変化ゼロ)を適用します。
閉回路PABPについて(時計回り P \(\to\) A \(\to\) B \(\to\) P):

  • 抵抗 \(2R\) を電流 \(I_1\) と同じ向きに通るので、\(2R I_1\) 下がります。
  • 抵抗 \(r\) を電流 \(I_5\)(B \(\to\) A)と逆向きに通るので、\(r I_5\) 上がります。
  • 抵抗 \(R\) を電流 \(I_2\)(P \(\to\) B)と逆向きに通るので、\(R I_2\) 上がります。

$$ 2R I_1 – r I_5 – R I_2 = 0 \quad \cdots ③ $$
閉回路AQBAについて(時計回り A \(\to\) Q \(\to\) B \(\to\) A):

  • 抵抗 \(R_x\) を電流 \(I_3\) と同じ向きに通るので、\(R_x I_3\) 下がります。
  • 抵抗 \(2R\) を電流 \(I_4\) と逆向きに通るので、\(2R I_4\) 上がります。
  • 抵抗 \(r\) を電流 \(I_5\)(B \(\to\) A)と同じ向きに通るので、\(r I_5\) 下がります。

$$ R_x I_3 – 2R I_4 + r I_5 = 0 \quad \cdots ④ $$
これで式が揃いました。目標は \(I_5\) を \(I_1\) で表すことです。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第1法則: \(I_{\text{入}} = I_{\text{出}}\)
  • キルヒホッフの第2法則: 電圧降下の和 = 0
計算過程

まず、式①と式②を使って \(I_3\) と \(I_2\) を消去します。
式①を式④に代入:
$$
\begin{aligned}
R_x (I_1 + I_5) – 2R I_4 + r I_5 &= 0 \\[2.0ex]
R_x I_1 + (R_x + r) I_5 – 2R I_4 &= 0 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
式②を式③に代入:
$$
\begin{aligned}
2R I_1 – r I_5 – R (I_5 + I_4) &= 0 \\[2.0ex]
2R I_1 – (R + r) I_5 – R I_4 &= 0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
次に、式⑤と式⑥から \(I_4\) を消去します。
式⑥を変形して \(R I_4 = 2R I_1 – (R + r) I_5\) とし、これを2倍して \(2R I_4\) を作ります。
$$ 2R I_4 = 4R I_1 – 2(R + r) I_5 $$
これを式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
R_x I_1 + (R_x + r) I_5 – \{ 4R I_1 – 2(R + r) I_5 \} &= 0 \\[2.0ex]
R_x I_1 + R_x I_5 + r I_5 – 4R I_1 + 2R I_5 + 2r I_5 &= 0
\end{aligned}
$$
\(I_5\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
(R_x + r + 2R + 2r) I_5 &= (4R – R_x) I_1 \\[2.0ex]
(2R + R_x + 3r) I_5 &= (4R – R_x) I_1
\end{aligned}
$$
よって、
$$ I_5 = \frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1 $$

この設問の平易な説明

回路の中を流れる電流のパズルを解く問題です。
「分岐点で電流は増えも減りもしない(入った分だけ出る)」というルールと、「一周回って元の場所に戻ると電圧(高さ)は元通り」というルールを使って式を作りました。
特に電圧の式では、電流と同じ向きに進むと「下り坂(電圧降下)」、逆向きに進むと「上り坂(電圧上昇)」になることに注意して符号を決めました。
邪魔な文字(\(I_2, I_3, I_4\))を代入法で消していき、最後に残った \(I_5\) と \(I_1\) の関係式を整理しました。

結論と吟味

\(I_5 = \frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1\) となりました。
分母は抵抗の和なので正の値です。分子の \(4R – R_x\) によって \(I_5\) の符号(向き)が決まることがわかります。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1\)
別解: 電位を用いた解法(テブナンの定理の応用)

思考の道筋とポイント
検流計(抵抗 \(r\))を取り外した状態を考え、点Aと点Bの電位を求めます。
その電位差が検流計に電流を流そうとする「駆動力(電圧)」になります。
また、検流計から見た回路全体の抵抗(等価抵抗)を求めれば、オームの法則一発で電流が求まります。
この設問における重要なポイント

  • 点Pの電位を基準(\(V_P\))とする。
  • 検流計がない場合、点Aの電位 \(V_A\) は \(R_1\) と \(R_3\) による分圧、点Bの電位 \(V_B\) は \(R_2\) と \(R_4\) による分圧で決まる。
  • ただし、本問では \(I_1\) を用いて表す必要があるため、厳密なテブナンの定理ではなく、キルヒホッフの法則を電位ベースで簡略化して解く。

具体的な解説と立式
点Pの電位を \(V_P\) とします。
点Aの電位 \(V_A\) は、抵抗 \(R_1\) での電圧降下により、
$$ V_A = V_P – 2R I_1 $$
点Bの電位 \(V_B\) は、抵抗 \(R_2\) での電圧降下により、
$$ V_B = V_P – R I_2 $$
ここで、閉回路PABPにキルヒホッフ第2法則を適用すると、
$$ (V_P – V_A) + (V_A – V_B) + (V_B – V_P) = 0 $$
すなわち、
$$ 2R I_1 + r I_5 – R I_2 = 0 \quad \cdots (a) $$
同様に、閉回路AQBAについて、
$$ R_x I_3 – 2R I_4 + r I_5 = 0 \quad \cdots (b) $$
電流の関係 \(I_3 = I_1 + I_5\), \(I_2 = I_5 + I_4\) を用いて \(I_2, I_3, I_4\) を消去していく手順はメイン解法と同じになりますが、「電位の高さ」を意識することで式の意味が捉えやすくなります。
(※本問は \(I_1\) を残す指定があるため、純粋なテブナンの定理よりもキルヒホッフの方が素直な場合が多いですが、検流計を流れる電流の向きを考える上では電位の比較が非常に有効です。)

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
  • キルヒホッフの法則
計算過程

メイン解法と同様の連立方程式を解くことになります。
$$ I_5 = \frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1 $$

この設問の平易な説明

点Pを山の頂上と考え、そこからA地点、B地点へと下っていくイメージです。
A地点の高さ(電位)とB地点の高さ(電位)の差が、AとBをつなぐ橋(検流計)に流れる電流を生み出します。
この高さの差を計算することで、電流の向きや大きさを考えることができます。

結論と吟味

計算プロセスはメイン解法と合流するため割愛しますが、電位差 \(V_B – V_A\) が正なら電流はB→A(\(I_5 < 0\))、負ならA→B(\(I_5 > 0\))という視点は重要です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1\)

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた式において、\(I_5 = 0\) となる条件を求めます。
分数が0になるのは、分子が0になるときです。
この設問における重要なポイント

  • \(I_5 = 0\) はホイートストンブリッジの平衡状態である。
  • 平衡条件 \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) が成立するはずである。

具体的な解説と立式
(1)の結果より、
$$ I_5 = \frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1 $$
\(I_5 = 0\) となるためには、分子が \(0\) であればよいので(\(I_1 \neq 0\))、
$$ 4R – R_x = 0 $$

使用した物理公式

  • ホイートストンブリッジの平衡条件(検算用)
計算過程

$$ R_x = 4R $$

この設問の平易な説明

電流計に電流が流れないということは、点Aと点Bの「電気的な高さ(電位)」が同じになっているということです。
さっき作った式で、電流がゼロになる条件を計算すると、\(R_x\) が \(4R\) のときだとわかりました。
これは「向かい合う抵抗の掛け算が等しい(\(2R \times 2R = R \times 4R\))」という、有名なホイートストンブリッジの法則とも一致しています。

結論と吟味

\(R_x = 4R\) です。
検算としてホイートストンブリッジの平衡条件を確認します。
\(R_1 = 2R, R_2 = R, R_3 = R_x, R_4 = 2R\) なので、
\(R_1 R_4 = 2R \times 2R = 4R^2\)
\(R_2 R_3 = R \times R_x\)
これらが等しいとすると \(4R^2 = R R_x\) より \(R_x = 4R\)。一致しました。

解答 (2) \(4R\)

問(3)

思考の道筋とポイント
問題文の「電流計にはAからBの向きに電流が流れていた」という記述は、図の矢印 \(I_5\) の向き(BからA)とは逆向きであることを意味します。
つまり、\(I_5 < 0\) です。
この条件を満たす \(R_x\) の範囲を考え、\(I_5 = 0\) にするために \(R_x\) をどう変化させればよいかを判断します。
この設問における重要なポイント

  • 電流の向きの定義: 図の矢印はB→A。実際の電流はA→B。よって \(I_5\) は負の値。
  • (1)の式の分子 \(4R – R_x\) の符号と \(I_5\) の符号の関係。

具体的な解説と立式
電流がAからBに流れているとき、定義された \(I_5\)(BからA向き)は負の値をとります。
$$ I_5 < 0 $$
(1)の式より、分母と \(I_1\) は正なので、分子が負である必要があります。
$$ 4R – R_x < 0 $$
すなわち、
$$ R_x > 4R $$
現状では \(R_x\) は \(4R\) より大きい値になっています。
電流 \(I_5\) を \(0\) にするためには、(2)の結果より \(R_x\) を \(4R\) にする必要があります。
したがって、現在の値(\(> 4R\))から \(4R\) に近づけるためには、\(R_x\) を小さくすればよいです。

使用した物理公式

  • 不等式の性質
計算過程

上記解説に含まれます。

この設問の平易な説明

今は電流がAからBに流れています。これは、Aの方がBより電位が高い(山が高い)状態です。
電流をゼロにするには、AとBの高さを同じにする必要があります。
(1)の式を見ると、\(R_x\) が大きいと \(I_5\) がマイナス(A→B)になり、\(R_x\) が小さいと \(I_5\) がプラス(B→A)になることがわかります。
今はマイナスの状態(\(R_x\) が大きすぎる状態)なので、ゼロにするには \(R_x\) を小さくしてあげればよいです。

結論と吟味

答えは「小さくすればよい」です。
理由は、現状で \(I_5 < 0\) より \(R_x > 4R\) となっており、平衡条件 \(R_x = 4R\) を満たすためには値を減らす必要があるからです。

解答 (3) 小さくすればよい, 理由は解説参照
別解: 電位の大小関係による定性的な解法

思考の道筋とポイント
数式を使わず、分圧の法則と電位のイメージだけで解きます。
点Aの電位は \(R_1\) と \(R_x\) の比で決まり、点Bの電位は \(R_2\) と \(R_4\) の比で決まります。
\(R_x\) を変化させたとき、点Aの電位がどう変わるかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 点Aの電位 \(V_A\) は、\(R_x\) が大きいほど低くなる(電圧降下が大きくなるため)。
  • 電流がA→Bに流れるということは、\(V_A > V_B\) である。

具体的な解説と立式
点Pの電位を基準(高電位)とし、点Qを低電位とします。
点Aの電位 \(V_A\) は、\(R_1\) と \(R_x\) で分圧されます。
\(R_x\) が大きくなると、\(R_x\) 側での電圧降下の割合が増え、相対的に \(R_1\) 側での電圧降下は減る…と考えがちですが、ここでは「点Pからどれだけ下がったか」で考えます。
もっと単純に、点Qの電位を0とすると、点Aの電位は
$$ V_A = \frac{R_x}{2R + R_x} V_P $$
点Bの電位は
$$ V_B = \frac{2R}{R + 2R} V_P = \frac{2}{3} V_P $$
電流がA→Bに流れているので、\(V_A > V_B\) です。
電流を0にするには \(V_A = V_B\) にしたいので、\(V_A\) を下げる必要があります。
\(V_A\) の式を見ると、\(R_x\) が分子にも分母にもありますが、
$$ V_A = \frac{1}{\frac{2R}{R_x} + 1} V_P $$
と変形すれば、\(R_x\) を小さくすると分母の \(\frac{2R}{R_x}\) が大きくなり、全体として \(V_A\) が小さくなることがわかります。
よって、\(R_x\) を小さくすればよいです。

使用した物理公式

  • 分圧の法則
  • オームの法則
計算過程

上記解説に含まれます。

この設問の平易な説明

電流がAからBに流れているということは、Aの方がBより「電気的な高さ」が高いということです。
電流を止めるには、Aの高さを下げてBと同じにする必要があります。
Aの高さは、抵抗 \(R_x\) が小さいほど低くなる性質があります(分圧の法則)。
だから、\(R_x\) を小さくすればAの高さが下がり、電流が止まるようになります。

結論と吟味

メインの解法と同じ結論が得られました。電位のイメージを持つことで、計算ミスを防ぐ検算としても役立ちます。

解答 (3) 小さくすればよい

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • キルヒホッフの法則の体系的な適用
    • 核心: 複雑な回路網において、電流と電圧の関係を連立方程式として記述し、未知の電流を求めるための最も基本的かつ強力なツールです。
    • 理解のポイント:
      • 第1法則(電流則): 回路の分岐点において、流入する電流の総和と流出する電流の総和は等しい(電荷保存則)。
      • 第2法則(電圧則): 任意の閉回路を一巡したとき、起電力の総和と電圧降下の総和は等しい(エネルギー保存則)。
  • ホイートストンブリッジの平衡条件
    • 核心: 検流計に電流が流れない(\(I_G = 0\))とき、向かい合う抵抗の積が等しい(\(R_1 R_4 = R_2 R_3\))という関係が成立します。
    • 理解のポイント:
      • この条件は、検流計の両端(点Aと点B)の電位が等しいことと同義です。
      • 平衡状態では、検流計を取り外しても回路の電流分布は変わりません。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • メートルブリッジ: 抵抗線を用いたブリッジ回路。抵抗値が長さに比例することを利用して、長さの比から未知抵抗を求めます。
    • 電位差計(ポテンショメーター): 検流計に電流が流れないように調整して起電力を測定する装置。原理はブリッジ回路と同じく「電位の一致」です。
    • 非平衡ブリッジ: 本問のように検流計に電流が流れる場合。キルヒホッフの法則で解くのが基本ですが、テブナンの定理やミルマンの定理を使うと計算が楽になることがあります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 対称性を探す: 回路図が対称であれば、電流や電位にも対称性があるはずです。これにより未知数を減らせます。
    2. 電位をイメージする: 電流の向きが分からないときは、適当に仮定して計算し、結果が負なら逆向きだったと判断します。また、電位の高い方から低い方へ流れるという原則を常に意識します。
    3. 極端な場合を考える: 可変抵抗を \(0\) や \(\infty\) にしたとき、電流はどうなるか?といった思考実験は、計算結果の妥当性をチェックするのに役立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • キルヒホッフ第2法則の符号ミス:
    • 誤解: 電池の向きや電流の向きと、閉回路をたどる向きの関係を混同してしまう。
    • 対策: 「電流と同じ向きに進むなら電圧降下(マイナスまたは右辺)」、「電池の負極から正極に進むなら起電力(プラスまたは左辺)」というルールを自分の中で統一し、図に矢印を書き込んで確認しながら立式します。
  • 連立方程式の計算ミス:
    • 誤解: 変数が多すぎて、どの式からどの文字を消去すればいいか迷走してしまう。
    • 対策: 「求めたい文字(\(I_5\))」と「残していい文字(\(I_1\))」を明確にし、それ以外の文字(\(I_2, I_3, I_4\))をターゲットにして順序よく消去していきます。
  • 電流の向きと大小関係の混乱:
    • 誤解: 「\(I_5\) が小さくなる」と「\(I_5\) の大きさが小さくなる」を混同する。特に \(I_5 < 0\) の場合、値が小さくなる(負の方向に大きくなる)と電流の大きさは大きくなります。
    • 対策: 「電流の大きさ(絶対値)」なのか「値(符号付き)」なのかを常に意識し、問題文の「向き」の指定を注意深く読み取ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 問(1)での公式選択(キルヒホッフの法則):
    • 選定理由: 回路が複雑で、単純な直列・並列の合成だけでは解けないため、最も一般的で確実なキルヒホッフの法則を選択します。
    • 適用根拠: 回路網の任意の点と閉回路において、電荷保存則とエネルギー保存則は常に成立するため。
  • 問(2)での公式選択(平衡条件):
    • 選定理由: 「電流が0になる」という条件は、ブリッジ回路の平衡状態そのものです。キルヒホッフの式から導くこともできますが、平衡条件 \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) を知っていれば瞬時に答えが出せます。
    • 適用根拠: (1)の計算結果の分子が \(4R – R_x\) となっており、これが0になる条件と平衡条件が一致することからも正当性が裏付けられます。
  • 問(3)でのアプローチ選択(不等式の評価):
    • 選定理由: 電流の向き(符号)と抵抗値の大小関係を結びつける必要があるため、等式ではなく不等式を用いた評価を行います。
    • 適用根拠: (1)で導出した式 \(I_5 = \frac{4R – R_x}{\dots} I_1\) において、分母と \(I_1\) が正であることから、\(I_5\) の符号は分子の符号のみに依存するという論理に基づきます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の次元チェック:
    • 最終的な答え \(I_5 = \frac{4R – R_x}{2R + R_x + 3r} I_1\) において、分母・分子ともに抵抗の次元(\([\Omega]\))であり、全体として電流の次元(\([\text{A}]\))が保たれていることを確認します。
  • 検算としての特殊ケース:
    • \(R_x = 4R\) を代入すると \(I_5 = 0\) になるか?(平衡条件)
    • \(r = 0\)(理想電流計)の場合や、\(r \to \infty\)(電圧計)の場合に式がどうなるか?
    • これらのチェックを行うことで、計算ミスの大部分は発見できます。
  • 図を描いて整理する:
    • キルヒホッフの法則を使う際は、必ず回路図に電流の向き(仮定でOK)と閉回路のループ矢印を書き込みます。視覚的に確認することで符号ミスを防げます。
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496 電位差計

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 電位のグラフ(電位図)を用いた解法
      • 模範解答がキルヒホッフの法則を用いて数式的に解くのに対し、別解では回路の各点の電位をグラフ化し、幾何学的な比率(相似)を用いて視覚的に解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の強化: 電位の「高さ」を視覚的に捉えることで、なぜ検流計に電流が流れないのか(高さが同じだから)という原理を直感的に理解できます。
    • 計算ミスの防止: 複雑な連立方程式を立てずに、単純な比例計算で解けるため、計算ミスを減らせます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電位差計(ポテンショメーター)の原理」です。未知の起電力を、既知の標準電池と比較することで精密に測定する方法を学びます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの法則: 閉回路内の電圧降下の和は0になる。
  2. オームの法則: \(V = RI\)。
  3. 抵抗の長さ依存性: 一様な抵抗線の抵抗値は長さに比例する(\(R \propto L\))。
  4. 電位差計の原理: 検流計に電流が流れないとき、測定対象の電池の端子電圧(起電力)と、抵抗線上の分圧された電圧が等しくなる。このとき、電池の内部抵抗による電圧降下は0になる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず上の閉回路(主回路)を流れる電流 \(I\) を求めます。次に、検流計に電流が流れない条件から、下の閉回路(測定回路)におけるキルヒホッフの法則を用いて \(E_1\) を求めます。
  2. (2)では、(1)と同様の手順で、未知の電池 \(E_2\) について式を立てて解きます。
  3. (3)では、(1)と(2)の結果を比較し、\(E_2\) を \(E_1\) と長さの比で表します。
  4. (4)では、電流が流れないことの利点(内部抵抗の影響排除)について説明します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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