基本問題
458 誘電体の挿入
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 比例関係を用いたエネルギー計算
- 模範解答が、新しい電気容量 \(C’\) を求めてからエネルギーの公式 \(U’ = \frac{1}{2}C’V^2\) に代入して計算するのに対し、別解では「電圧 \(V\) が一定のとき、静電エネルギー \(U\) は電気容量 \(C\) に比例する」という性質を利用し、(1)の結果を \(\varepsilon_r\) 倍するだけで答えを導きます。
- 設問(2)の別解: 比例関係を用いたエネルギー計算
- 上記の別解が有益である理由
- 計算の効率化: 二乗計算や指数計算を再度行う必要がなく、単純な掛け算一つで済むため、計算ミスを大幅に減らせます。
- 物理的直感の養成: 「容量が増えれば、同じ電圧でもより多くのエネルギーを蓄えられる」という物理的な感覚を養えます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「誘電体の挿入によるコンデンサーの特性変化」です。誘電体を入れることで電気容量がどう変化するか、そして電源接続状態において静電エネルギーがどう変化するかを理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 静電エネルギーの公式: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
- 誘電体の効果: 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体で満たすと、電気容量は真空(空気)のときの \(\varepsilon_r\) 倍になります(\(C’ = \varepsilon_r C\))。
- 電源接続時の条件: 電池をつないだままなので、極板間の電圧 \(V\) は一定に保たれます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、与えられた電気容量 \(C\) と電圧 \(V\) を用いて、静電エネルギーの基本公式から値を求めます。
- (2)では、まず誘電体の挿入による新しい電気容量 \(C’\) を求めます。次に、電圧 \(V\) が一定であることに着目し、新しい静電エネルギー \(U’\) を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
静電エネルギー \(U\) を求める基本問題です。電気容量 \(C\) と電圧 \(V\) が与えられているので、これらを用いた公式を選択します。単位(\(\mu\text{F}\))に注意して計算します。
この設問における重要なポイント
- 静電エネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) を正確に適用する。
- \(\mu\)(マイクロ)を \(10^{-6}\) に変換する。
具体的な解説と立式
求める静電エネルギーを \(U\) とします。
電気容量 \(C = 0.50\,\mu\text{F} = 0.50 \times 10^{-6}\,\text{F}\)、電圧 \(V = 10\,\text{V}\) です。
これらを公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \times (0.50 \times 10^{-6}) \times 10^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
数値を計算します。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} \times 0.50 \times 10^{-6} \times 100 \\[2.0ex]
&= 0.25 \times 10^{-4} \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-5}\,\text{J}
\end{aligned}
$$
コンデンサーに電気を貯めると、エネルギーも一緒に貯まります。その量は、タンクの大きさ(容量)と圧力(電圧)の二乗に比例します。公式に数字を入れるだけの計算ですが、単位の変換を忘れないようにしましょう。
\(2.5 \times 10^{-5}\,\text{J}\) と求まりました。
エネルギーの単位はジュール(\(\text{J}\))であり、計算結果の次元は \([\text{F}] \times [\text{V}]^2 = [\text{C}/\text{V}] \times [\text{V}]^2 = [\text{C} \cdot \text{V}] = [\text{J}]\) となり正しいです。また、電圧が \(10\,\text{V}\) と比較的低く、容量もマイクロファラドオーダーなので、エネルギーが \(10^{-5}\) のオーダーになるのは物理的に妥当な大きさです。
問(2)
思考の道筋とポイント
誘電体を挿入すると電気容量が変化します。比誘電率 \(\varepsilon_r = 2.0\) なので、容量は2倍になります。電池がつながったままなので電圧は \(10\,\text{V}\) のままです。新しい容量と元の電圧を使って、エネルギーを再計算します。
この設問における重要なポイント
- 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体を入れると、電気容量は \(\varepsilon_r\) 倍になる(\(C’ = \varepsilon_r C\))。
- 電池接続中は電圧 \(V\) が一定である。
具体的な解説と立式
まず、誘電体挿入後の電気容量 \(C’\) を求めます。比誘電率 \(\varepsilon_r = 2.0\) なので、
$$
\begin{aligned}
C’ &= \varepsilon_r C \\[2.0ex]
&= 2.0 \times C
\end{aligned}
$$
次に、新しい静電エネルギー \(U’\) を求めます。電圧は \(V=10\,\text{V}\) のままなので、
$$
\begin{aligned}
U’ &= \frac{1}{2}C’V^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 誘電体中の電気容量: \(C’ = \varepsilon_r C\)
- 静電エネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
まず \(C’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
C’ &= 2.0 \times (0.50 \times 10^{-6}) \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^{-6}\,\text{F}
\end{aligned}
$$
次に \(U’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
U’ &= \frac{1}{2} \times (1.0 \times 10^{-6}) \times 10^2 \\[2.0ex]
&= 0.50 \times 10^{-4} \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-5}\,\text{J}
\end{aligned}
$$
誘電体を入れると、電気が貯まりやすくなります。今回は比誘電率が2.0なので、容量は2倍になります。
電圧が変わらないまま容量が2倍になったので、貯まるエネルギーも増えます。新しい容量を使って計算し直します。
電気容量は \(1.0 \times 10^{-6}\,\text{F}\)、静電エネルギーは \(5.0 \times 10^{-5}\,\text{J}\) と求まりました。
比誘電率 \(\varepsilon_r > 1\) の誘電体を挿入したため、電気容量は増加しています。また、電圧 \(V\) が一定の条件下で容量 \(C\) が2倍になったため、エネルギー \(U = \frac{1}{2}CV^2\) も2倍(\(2.5 \times 10^{-5} \rightarrow 5.0 \times 10^{-5}\))になっています。これは「容量が増えれば蓄えられるエネルギーも増える」という定性的な予測と完全に一致しており、計算結果は正しいと言えます。
思考の道筋とポイント
いちいち \(U’ = \frac{1}{2}C’V^2\) を計算し直すのは面倒です。\(V\) が一定なら、\(U\) は \(C\) に比例します。\(C\) が2倍になったなら、\(U\) も2倍になるはずです。
この設問における重要なポイント
- \(V\) 一定のとき、\(U \propto C\)。
- \(C\) が \(\varepsilon_r\) 倍になれば、\(U\) も \(\varepsilon_r\) 倍になる。
具体的な解説と立式
静電エネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) において、\(V\) は一定です。
したがって、\(U\) は \(C\) に比例します。
\(C’ = \varepsilon_r C\) なので、新しいエネルギー \(U’\) は、
$$
\begin{aligned}
U’ &= \varepsilon_r U
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電エネルギーの比例関係: \(U \propto C\) (\(V\)一定)
(1)で求めた \(U = 2.5 \times 10^{-5}\,\text{J}\) と、\(\varepsilon_r = 2.0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
U’ &= 2.0 \times (2.5 \times 10^{-5}) \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-5}\,\text{J}
\end{aligned}
$$
電圧が同じなら、タンクの大きさ(容量)が2倍になれば、貯まるエネルギーも単純に2倍になります。さっきの答えを2倍するだけでOKです。
メインの解法と同じ結果が得られました。
この別解のアプローチは、具体的な数値計算を最小限に抑えるため、計算ミスのリスクを減らすだけでなく、物理量の依存関係(\(U \propto C\))を明確にする点でも優れています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 誘電体の挿入と電気容量の変化
- 核心: コンデンサーの極板間に誘電体(絶縁体)を入れると、誘電分極によって電場が弱められ、その結果として電気容量 \(C\) が増大します。
- 理解のポイント: 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体で満たすと、容量は真空時の \(\varepsilon_r\) 倍になります(\(C’ = \varepsilon_r C\))。これはコンデンサーの性能を上げるための基本的な手法です。
- 電源接続時のエネルギー変化
- 核心: 電池をつないだまま(\(V\) 一定)で容量 \(C\) を変化させると、静電エネルギー \(U = \frac{1}{2}CV^2\) も変化します。
- 理解のポイント: \(V\) が一定なので、\(U\) は \(C\) に正比例します。つまり、容量が増えればエネルギーも増えます。この増えたエネルギーは、電池が供給した仕事によるものです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- スイッチを切ってから誘電体を挿入する場合: この場合は「電荷 \(Q\) が一定」になります。\(Q\) が一定で \(C\) が増えると、\(U = \frac{Q^2}{2C}\) よりエネルギーは減少します。この「\(V\) 一定」と「\(Q\) 一定」によるエネルギー増減の違いは頻出です。
- 誘電体を途中まで挿入する場合: 極板間の一部にだけ誘電体が入っている問題。これは「真空のコンデンサー」と「誘電体入りのコンデンサー」の並列接続(または直列接続)とみなして合成容量を求めます。
- 外力がする仕事: 誘電体を出し入れする際に外力が必要かどうかを問う問題。エネルギー変化 \(\Delta U\) と電池の仕事 \(W_{\text{電池}}\) から、外力の仕事 \(W_{\text{外}}\) を \(W_{\text{外}} = \Delta U – W_{\text{電池}}\) で求めます。
- 初見の問題での着眼点:
- スイッチの状態を確認する: 「つないだまま」なら \(V\) 一定、「切ってから」なら \(Q\) 一定とメモします。
- 容量の変化率を確定する: 比誘電率 \(\varepsilon_r\) を確認し、\(C\) が何倍になるかを最初に計算します。
- エネルギーの公式を選ぶ: \(V\) 一定なら \(U = \frac{1}{2}CV^2\)、\(Q\) 一定なら \(U = \frac{Q^2}{2C}\) を使うと、変化の様子(増えるか減るか)が一目でわかります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 誘電率と比誘電率の混同:
- 誤解: 公式 \(C = \varepsilon \frac{S}{d}\) の \(\varepsilon\) に、比誘電率 \(\varepsilon_r\) をそのまま代入してしまう。
- 対策: 比誘電率 \(\varepsilon_r\) は「倍率」です。誘電体中の誘電率は \(\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0\) となることを忘れないようにしましょう。単位(\(\varepsilon_r\) は無次元)を確認するのも有効です。
- エネルギー変化の直感的な誤解:
- 誤解: 「誘電体を入れるとエネルギーが減る」と丸暗記している。
- 対策: エネルギーが増えるか減るかは、スイッチの状態(\(V\) 一定か \(Q\) 一定か)に依存します。丸暗記せず、必ず公式 \(U = \frac{1}{2}CV^2\) または \(U = \frac{Q^2}{2C}\) に基づいて判断しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1)での公式選択(\(U = \frac{1}{2}CV^2\)):
- 選定理由: 与えられた物理量が \(C\) と \(V\) なので、これらを直接代入できるこの公式が最適です。
- 適用根拠: 静電エネルギーの定義式であり、どのようなコンデンサーにも適用可能です。
- (2)での公式選択(\(C’ = \varepsilon_r C\)):
- 選定理由: 誘電体の挿入による容量変化を最も直接的に表す関係式だからです。
- 適用根拠: 極板間全体を隙間なく誘電体で満たしているため、単純な倍率計算が適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比例計算の活用:
- 別解で示したように、\(V\) が一定なら \(U \propto C\) という関係を使えば、\(U’ = \varepsilon_r U\) と瞬時に求まります。具体的な数値を代入して再計算するよりも、このような「比」を使った計算の方がミスが少なく、時間も短縮できます。
- オーダー(桁数)の確認:
- 静電エネルギーは通常、非常に小さな値(\(10^{-6} \sim 10^{-3}\,\text{J}\) 程度)になります。もし \(10^5\,\text{J}\) のような巨大な値になったら、\(\mu\)(\(10^{-6}\))の変換忘れなどを疑いましょう。
459 コンデンサーの直列接続
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問の別解: 電圧の比(分圧の法則)を用いた解法
- 模範解答が、合成容量から全電気量 \(Q\) を求め、それを各容量で割って電圧を算出するのに対し、別解では「直列回路において電圧は電気容量の逆数に比例して分配される」という性質を利用し、電気量 \(Q\) を経由せずに直接電圧を求めます。
- 設問の別解: 電圧の比(分圧の法則)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 計算の効率化: 合成容量や電気量を計算するステップを省略でき、比の計算だけで素早く各電圧を求められます。
- 物理的直感の養成: 「容量が小さいコンデンサーほど、同じ電荷を蓄えるために高い電圧が必要になる」という直列回路の特性を直感的に理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「3つのコンデンサーの直列接続」です。複数のコンデンサーを直列につないだときの合成容量の計算方法と、各コンデンサーにかかる電圧の分配法則を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 直列接続の合成容量: \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3}\) (逆数の和の逆数)
- 直列接続の特徴: 直列に接続されたすべてのコンデンサーには、等しい大きさの電気量 \(Q\) が蓄えられます。
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\) または \(V = \frac{Q}{C}\)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、直列接続の公式を用いて3つのコンデンサーの合成容量 \(C\) を求めます。
- 次に、合成容量 \(C\) と電源電圧 \(V\) から、回路全体(および各コンデンサー)に蓄えられる電気量 \(Q\) を計算します。
- 最後に、求めた電気量 \(Q\) と各コンデンサーの容量 \(C_1, C_2, C_3\) を用いて、それぞれの電圧 \(V_1, V_2, V_3\) を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずは合成容量を求めます。直列接続なので逆数の和を計算します。次に、各コンデンサーの電圧を求めるために、共通の電気量 \(Q\) を算出します。直列回路では「電荷が等しい」というのが最大のポイントです。
この設問における重要なポイント
- 直列接続の合成容量の公式 \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\) を正確に適用する。
- 直列接続では、各コンデンサーの電気量 \(Q\) はすべて等しく、合成コンデンサーの電気量とも等しい。
具体的な解説と立式
ステップ1: 合成容量 \(C\) の計算
電気容量を \(C_1 = 2.0\,\mu\text{F}, C_2 = 3.0\,\mu\text{F}, C_3 = 6.0\,\mu\text{F}\) とします。
合成容量 \(C\) は以下の式で求められます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C} &= \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3}
\end{aligned}
$$
ステップ2: 電気量 \(Q\) の計算
電源電圧 \(V = 24\,\text{V}\) と合成容量 \(C\) を用いて、全電気量 \(Q\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q &= CV
\end{aligned}
$$
ステップ3: 各電圧 \(V_1, V_2, V_3\) の計算
各コンデンサーに蓄えられる電気量はすべて \(Q\) なので、各電圧は以下のように求められます。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{Q}{C_1} \\
V_2 &= \frac{Q}{C_2} \\
V_3 &= \frac{Q}{C_3}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 直列接続の合成容量: \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \frac{1}{C_3}\)
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
まず合成容量を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C} &= \frac{1}{2.0} + \frac{1}{3.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{6.0} + \frac{2}{6.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{6}{6.0} \\[2.0ex]
&= 1.0
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
C &= 1.0\,\mu\text{F}
\end{aligned}
$$
次に電気量 \(Q\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q &= 1.0\,\mu\text{F} \times 24\,\text{V} \\[2.0ex]
&= 24\,\mu\text{C}
\end{aligned}
$$
最後に各電圧を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{24\,\mu\text{C}}{2.0\,\mu\text{F}} = 12\,\text{V} \\[2.0ex]
V_2 &= \frac{24\,\mu\text{C}}{3.0\,\mu\text{F}} = 8.0\,\text{V} \\[2.0ex]
V_3 &= \frac{24\,\mu\text{C}}{6.0\,\mu\text{F}} = 4.0\,\text{V}
\end{aligned}
$$
3つのコンデンサーを直列につなぐと、全体の容量はそれぞれの容量よりも小さくなります。計算すると \(1.0\,\mu\text{F}\) になりました。
この「合体したコンデンサー」に \(24\,\text{V}\) の電圧をかけると、\(24\,\mu\text{C}\) の電気が貯まります。
直列つなぎのルールとして、それぞれのコンデンサーにも同じ \(24\,\mu\text{C}\) ずつ電気が貯まっています。
あとは「\(Q=CV\)」の式を変形した「\(V=Q/C\)」を使って、それぞれの電圧を計算するだけです。容量が小さいほど、電圧が高くなっているのがわかりますね。
合成容量: \(1.0\,\mu\text{F}\)
各電圧: \(12\,\text{V}, 8.0\,\text{V}, 4.0\,\text{V}\)
検算として、各電圧の和をとると \(12 + 8.0 + 4.0 = 24\,\text{V}\) となり、電源電圧と一致します。これはキルヒホッフの法則を満たしており、計算が正しいことを示しています。
思考の道筋とポイント
直列回路では電荷 \(Q\) が共通なので、\(V = Q/C\) より、電圧 \(V\) は容量 \(C\) に反比例します。これを利用して、電源電圧 \(24\,\text{V}\) を容量の逆数の比で分配します。
この設問における重要なポイント
- 直列接続では \(V_1 : V_2 : V_3 = \frac{1}{C_1} : \frac{1}{C_2} : \frac{1}{C_3}\)。
- 全電圧 \(V\) をこの比で分ける。
具体的な解説と立式
各電圧の比は、容量の逆数の比になります。
$$
\begin{aligned}
V_1 : V_2 : V_3 &= \frac{1}{2.0} : \frac{1}{3.0} : \frac{1}{6.0}
\end{aligned}
$$
これを簡単な整数比に直します。全体に \(6\) を掛けると、
$$
\begin{aligned}
V_1 : V_2 : V_3 &= 3 : 2 : 1
\end{aligned}
$$
電源電圧 \(V = 24\,\text{V}\) をこの比で分配します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= V \times \frac{3}{3+2+1} \\
V_2 &= V \times \frac{2}{3+2+1} \\
V_3 &= V \times \frac{1}{3+2+1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 直列回路の分圧: \(V_k \propto \frac{1}{C_k}\)
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 24 \times \frac{3}{6} = 12\,\text{V} \\[2.0ex]
V_2 &= 24 \times \frac{2}{6} = 8.0\,\text{V} \\[2.0ex]
V_3 &= 24 \times \frac{1}{6} = 4.0\,\text{V}
\end{aligned}
$$
コンデンサーは容量が小さいほど、電気を貯めるのに高い電圧が必要です。
容量の比は \(2:3:6\) なので、電圧の比はその逆数、つまり \(1/2 : 1/3 : 1/6\) になります。これを整えると \(3:2:1\) です。
\(24\,\text{V}\) を \(3:2:1\) に山分けすれば、それぞれの電圧が一発で求まります。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。電気量 \(Q\) を経由しない分、計算が速く、直感的にも分かりやすい方法です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 直列接続における電荷の共通性
- 核心: 直列に接続されたコンデンサーの極板間では、静電誘導によって電荷が移動するだけであり、外部からの電荷の出入りがありません。そのため、各コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) はすべて等しくなります。
- 理解のポイント: 一番外側の極板に \(+Q\) と \(-Q\) が供給されると、その間の極板は「島」のように孤立しているため、プラスとマイナスが交互に誘導され、結果としてすべてのコンデンサーが同じ \(Q\) を持つことになります。
- 合成容量の計算則(逆数の和)
- 核心: 直列接続では、全体の電圧 \(V\) が各コンデンサーの電圧の和 \(V = V_1 + V_2 + \dots\) となることから、合成容量 \(C\) は \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\) という逆数の和で表されます。
- 理解のポイント: 直列につなぐほど、極板間の距離が実質的に広がるイメージを持つと、容量が減る(逆数和になる)ことが直感的に理解できます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 耐電圧の問題: 各コンデンサーにかけられる最大電圧(耐電圧)が決まっている場合、直列接続したときに全体で何Vまでかけられるかを問う問題。分圧の法則(別解)を使って、どのコンデンサーが最初に限界に達するかを判定します。
- 誘電体の部分挿入: 極板間の一部に誘電体を入れた場合、それを「誘電体あり」と「なし」の2つのコンデンサーの直列接続とみなして解く問題。本問と同じ合成容量の計算が基礎となります。
- 初見の問題での着眼点:
- 接続形式を見抜く: 一筆書きでたどれるなら直列、分岐して合流するなら並列です。
- 共通する物理量を見つける: 直列なら \(Q\) が共通、並列なら \(V\) が共通。これを手がかりに式を立てます。
- 容量の比と電圧の比の関係: 直列では \(V \propto 1/C\)(容量が小さいほど電圧大)、並列では \(Q \propto C\)(容量が大きいほど電荷大)という定性的な傾向を常に意識しておくと、計算ミスの発見に役立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 合成容量の計算ミス:
- 誤解: 抵抗の直列接続(足し算)と混同してしまう。あるいは、逆数の和を計算したあと、最後に逆数を取るのを忘れて \(1/C\) の値を答えにしてしまう。
- 対策: 「コンデンサーの直列は抵抗の並列と同じ計算」と覚えるか、単位を確認する(\(1/C\) の単位は \(1/\text{F}\) なのでおかしいと気づく)。計算の最後に必ず「逆数を取る」ステップがあることを意識しましょう。
- 電荷の総和の誤解:
- 誤解: 3つのコンデンサーに \(Q\) ずつ溜まっているから、全体で \(3Q\) の電荷が溜まっていると考えてしまう。
- 対策: コンデンサー全体(合成コンデンサー)として外部から出し入れできる電荷はあくまで \(Q\) だけです。中の極板の電荷は内部で打ち消し合っている(プラスマイナスゼロ)と考えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1)での公式選択(\(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} + \dots\)):
- 選定理由: 3つのコンデンサーが直列に接続されており、その全体の等価な容量を求める必要があるため、直列合成の公式を適用します。
- 適用根拠: 回路図から、電荷の通り道が分岐せず一本道であることが確認できるため、直列接続と判断できます。
- 別解での公式選択(\(V_k \propto \frac{1}{C_k}\)):
- 選定理由: \(Q\) が共通であるという直列回路の強力な性質を利用することで、\(Q\) を求める手間を省き、電圧の比率だけで答えを出せるため、計算効率が良いからです。
- 適用根拠: \(V = Q/C\) の式において \(Q\) が定数とみなせるため、\(V\) と \(C\) の反比例関係が成立します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 通分の工夫:
- \(\frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{6}\) のような計算では、最小公倍数(この場合は6)を見つけて一気に通分しましょう。
- 検算(キルヒホッフの法則):
- 求めた各電圧 \(V_1, V_2, V_3\) を足し合わせて、必ず電源電圧 \(V\) になるか確認しましょう。もしならなければ、どこかで計算ミスをしています。この「足して元に戻る」確認は、直列回路の問題では最強の検算ツールです。
460 耐電圧
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(直列接続)の別解: 分圧の法則を用いた解法
- 模範解答が、各コンデンサーの最大電荷 \(Q_{\text{最大}}\) を比較して全体の耐電圧を求めるのに対し、別解では「直列回路において電圧は電気容量の逆数に比例して分配される」という性質を利用し、どちらのコンデンサーが先に耐電圧に達するかを判定します。
- 設問(直列接続)の別解: 分圧の法則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 計算の効率化: 電荷 \(Q\) を計算するステップを省略でき、電圧の比率だけで素早く判定できます。
- 物理的直感の養成: 「容量が小さいコンデンサーほど高い電圧がかかるため、先に限界に達しやすい」という直列回路の特性を直感的に理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーの耐電圧と接続方法」です。複数のコンデンサーを接続したとき、回路全体としてどれだけの電圧まで耐えられるか(全体の耐電圧)を、並列接続と直列接続のそれぞれについて考える問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 耐電圧: コンデンサーが絶縁破壊を起こさずに耐えられる最大の電圧。これを超えるとコンデンサーは破損します。
- 並列接続の特徴: 各コンデンサーにかかる電圧は等しく、全体の電圧とも等しくなります。
- 直列接続の特徴: 各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しくなります。また、電圧は電気容量の逆数に比例して分配されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 並列接続の場合: すべてのコンデンサーに同じ電圧がかかるため、最も耐電圧が低いコンデンサーが全体の限界を決めます。
- 直列接続の場合: 電荷が共通であること、または電圧が分圧されることを利用して、どのコンデンサーが先に耐電圧に達するかを調べ、そのときの全体の電圧を計算します。
問(並列接続)
思考の道筋とポイント
並列接続では、すべてのコンデンサーに同じ電圧がかかります。したがって、接続されたコンデンサーのうち、一つでも耐電圧を超えれば回路全体が破損します。つまり、最も耐電圧が低いコンデンサーが全体のボトルネックとなります。
この設問における重要なポイント
- 並列接続では \(V_1 = V_2 = V_{\text{全体}}\)。
- 全体の耐電圧は、各コンデンサーの耐電圧のうちの最小値となる。
具体的な解説と立式
コンデンサー1(\(C_1 = 10\,\mu\text{F}\))の耐電圧を \(V_{1\text{最大}} = 3.0 \times 10^2\,\text{V}\)、コンデンサー2(\(C_2 = 30\,\mu\text{F}\))の耐電圧を \(V_{2\text{最大}} = 2.0 \times 10^2\,\text{V}\) とします。
並列接続したときの全体の電圧を \(V\) とすると、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= V \\
V_2 &= V
\end{aligned}
$$
両方のコンデンサーが破損しないための条件は、
$$
\begin{aligned}
V &\le V_{1\text{最大}} \quad \text{かつ} \quad V \le V_{2\text{最大}}
\end{aligned}
$$
したがって、全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) は、2つの耐電圧のうち小さい方の値となります。
使用した物理公式
- 並列回路の電圧: \(V_{\text{全体}} = V_1 = V_2\)
\(V_{1\text{最大}} = 300\,\text{V}\)、\(V_{2\text{最大}} = 200\,\text{V}\) なので、小さい方の \(200\,\text{V}\) が全体の耐電圧となります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= 2.0 \times 10^2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
並列につなぐということは、2つのコンデンサーに同じ電圧をかけるということです。片方は300Vまで耐えられますが、もう片方は200Vで壊れてしまいます。電圧を上げていくと、200Vになった時点で弱い方が壊れてしまうので、全体としても200Vまでしか耐えられません。
\(2.0 \times 10^2\,\text{V}\) と求まりました。弱い方の耐電圧で決まるという結論は妥当です。
問(直列接続)
思考の道筋とポイント
直列接続では、各コンデンサーにかかる電圧は異なります。また、蓄えられる電気量 \(Q\) が共通になります。
アプローチとしては、各コンデンサーが限界(耐電圧)まで充電されたときの電気量 \(Q_{\text{最大}}\) を計算し、その小さい方の \(Q\) が回路全体に蓄えられる最大電荷となります。そのときの全体の電圧を計算します。
この設問における重要なポイント
- 直列接続では \(Q_1 = Q_2 = Q_{\text{全体}}\)。
- 各コンデンサーの最大電荷 \(Q_{\text{最大}} = C V_{\text{最大}}\) を比較する。
- 小さい方の \(Q_{\text{最大}}\) に達したときが全体の限界。
具体的な解説と立式
まず、各コンデンサーが単独で耐えられる最大電荷量を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{1\text{最大}} &= C_1 V_{1\text{最大}} \\
Q_{2\text{最大}} &= C_2 V_{2\text{最大}}
\end{aligned}
$$
直列接続では電荷が等しくなるため、全体として蓄えられる最大電荷 \(Q_{\text{限界}}\) は、これら2つの小さい方になります。
この電荷 \(Q_{\text{限界}}\) が蓄えられたとき、各コンデンサーにかかる電圧 \(V_1, V_2\) は、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{Q_{\text{限界}}}{C_1} \\
V_2 &= \frac{Q_{\text{限界}}}{C_2}
\end{aligned}
$$
全体の耐電圧 \(V_{\text{最大}}\) はこれらの和になります。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= V_1 + V_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
- 直列回路の電圧: \(V_{\text{全体}} = V_1 + V_2\)
まず最大電荷量を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{1\text{最大}} &= (10 \times 10^{-6}) \times (3.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 10^{-3}\,\text{C} \\[2.0ex]
Q_{2\text{最大}} &= (30 \times 10^{-6}) \times (2.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-3}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
\(Q_{1\text{最大}} < Q_{2\text{最大}}\) なので、\(C_1\) の方が先に限界に達します。
よって、回路全体の最大電荷は \(Q_{\text{限界}} = 3.0 \times 10^{-3}\,\text{C}\) です。
このとき、各コンデンサーにかかる電圧は、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{3.0 \times 10^{-3}}{10 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 10^2\,\text{V} \quad (\text{これは} V_{1\text{最大}} \text{に等しい}) \\[2.0ex]
V_2 &= \frac{3.0 \times 10^{-3}}{30 \times 10^{-6}} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2\,\text{V} \quad (\text{これは} V_{2\text{最大}} \text{より小さいのでOK})
\end{aligned}
$$
全体の耐電圧はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= (3.0 \times 10^2) + (1.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
直列につなぐと、それぞれのコンデンサーには同じ量の電気が貯まります。
\(C_1\) は \(3000\,\mu\text{C}\) まで、\(C_2\) は \(6000\,\mu\text{C}\) まで電気を貯められます。
同じ量しか貯められないので、少ない方の \(3000\,\mu\text{C}\) が貯まった時点で \(C_1\) が限界を迎えてしまいます。
このとき、\(C_1\) には限界の \(300\,\text{V}\) がかかっていますが、\(C_2\) にはまだ余裕があり \(100\,\text{V}\) しかかかっていません。
全体としては、この合計の \(400\,\text{V}\) まで耐えられることになります。
\(4.0 \times 10^2\,\text{V}\) と求まりました。
直列にすることで電圧が分散されるため、単独の耐電圧(300Vや200V)よりも高い電圧に耐えられるようになるという結果は、物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
直列回路では、電圧は容量の逆数に比例して分配されます。この比率を使って、どちらのコンデンサーが先に耐電圧に達するかを判定します。
この設問における重要なポイント
- 電圧の比 \(V_1 : V_2 = C_2 : C_1\) (逆比)。
- 全電圧 \(V\) をこの比で分けたとき、\(V_1 > V_{1\text{最大}}\) または \(V_2 > V_{2\text{最大}}\) とならない最大の \(V\) を探す。
具体的な解説と立式
電圧の分配比は、
$$
\begin{aligned}
V_1 : V_2 &= \frac{1}{C_1} : \frac{1}{C_2} \\[2.0ex]
&= C_2 : C_1
\end{aligned}
$$
全体の電圧を \(V\) とすると、各電圧は、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= V \times \frac{C_2}{C_1 + C_2} \\
V_2 &= V \times \frac{C_1}{C_1 + C_2}
\end{aligned}
$$
これらがそれぞれの耐電圧を超えない条件、すなわち \(V_1 \le V_{1\text{最大}}\) かつ \(V_2 \le V_{2\text{最大}}\) を満たす最大の \(V\) を求めます。
使用した物理公式
- 直列回路の分圧: \(V_k \propto \frac{1}{C_k}\)
容量の比は \(C_1 : C_2 = 10 : 30 = 1 : 3\) です。
よって電圧の比は逆の \(V_1 : V_2 = 3 : 1\) となります。
つまり、全体の電圧 \(V\) は \(V_1 = \frac{3}{4}V\)、\(V_2 = \frac{1}{4}V\) と分配されます。
ケース1: \(C_1\) が限界(\(300\,\text{V}\))に達するとき
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{4}V &= 300 \\
V &= 400\,\text{V}
\end{aligned}
$$
このとき \(V_2 = 100\,\text{V}\) であり、耐電圧 \(200\,\text{V}\) 以下なのでOKです。
ケース2: \(C_2\) が限界(\(200\,\text{V}\))に達するとき
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{4}V &= 200 \\
V &= 800\,\text{V}
\end{aligned}
$$
このとき \(V_1 = 600\,\text{V}\) となり、耐電圧 \(300\,\text{V}\) を超えてしまうのでNGです。
したがって、小さい方の \(400\,\text{V}\) が全体の耐電圧となります。
容量が \(1:3\) なので、電圧は逆の \(3:1\) に配分されます。つまり、\(C_1\) には全体の \(3/4\) の電圧が、\(C_2\) には \(1/4\) の電圧がかかります。
\(C_1\) の方が負担が大きい(電圧が高い)ので、こちらが先に限界(300V)に来そうです。\(C_1\) が300Vになるとき、全体は400Vです。このとき \(C_2\) は100Vなのでまだ大丈夫。だから答えは400Vです。
メインの解法と同じ \(4.0 \times 10^2\,\text{V}\) が得られました。
「容量が小さい方に高い電圧がかかる」という原則を使えば、どちらがボトルネックになるかを素早く見抜くことができます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 耐電圧の決定要因(ボトルネックの特定)
- 核心: 複数のコンデンサーを接続した回路全体の耐電圧は、最も早く限界(個別の耐電圧)に達するコンデンサーによって決まります。
- 理解のポイント:
- 並列接続: 電圧 \(V\) が共通なので、耐電圧が最も低いコンデンサーが全体の限界を決めます(弱い鎖の輪が全体の強度を決めるのと同じ)。
- 直列接続: 電荷 \(Q\) が共通なので、最大電荷 \(Q_{\text{最大}} = CV_{\text{最大}}\) が最も小さいコンデンサーが全体の限界を決めます。
- 直列接続における電圧の不均等分配
- 核心: 直列接続では、電圧は容量の逆数に比例して分配されます(\(V \propto 1/C\))。
- 理解のポイント: 容量が小さいコンデンサーほど、同じ電荷を蓄えるために高い電圧を必要とします。そのため、容量が小さいコンデンサーほど耐電圧を超えやすく、破損のリスクが高くなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 3つ以上のコンデンサーの接続: 3つ以上になっても原理は同じです。並列なら最小の耐電圧を選び、直列なら各 \(Q_{\text{最大}}\) を計算して最小のものを選びます。
- 複合回路(直並列混在): まず並列部分の合成容量と耐電圧を求め、それを1つのコンデンサーとみなして直列部分の計算を行います。段階的に回路を簡略化していくのがコツです。
- 絶縁破壊の連鎖: あるコンデンサーが破損(短絡)した後、残りのコンデンサーに過電圧がかかって次々と破損していく現象を考察する問題。耐電圧を超えた瞬間の挙動を理解するのに役立ちます。
- 初見の問題での着眼点:
- 接続形式を確認する: 並列なら「電圧共通」、直列なら「電荷共通」とメモします。
- 個別の限界値をリストアップする: 各コンデンサーの \(C\) と \(V_{\text{最大}}\) を書き出し、直列の場合は \(Q_{\text{最大}} = CV_{\text{最大}}\) も計算しておきます。
- ボトルネックを探す: 並列なら \(V_{\text{最大}}\) の最小値、直列なら \(Q_{\text{最大}}\) の最小値を持つコンデンサーを特定します。これが「一番弱い箇所」です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 直列接続の耐電圧の単純和:
- 誤解: 「直列にすれば電圧が分かれるから、耐電圧は単純に足し算すればいい(\(300+200=500\))」と考えてしまう。
- 対策: これは容量が等しい場合や、電圧配分がたまたま耐電圧の比と一致する場合にしか成り立ちません。必ず「電圧の分配比」を考慮するか、電荷 \(Q\) を基準に考える必要があります。
- 容量と耐電圧の混同:
- 誤解: 「容量が大きい方が丈夫(耐電圧が高い)」というイメージを持ってしまう。
- 対策: 容量 \(C\)(電気を貯める広さ)と耐電圧 \(V_{\text{最大}}\)(絶縁の強さ)は全く別のパラメータです。問題文の数値をよく見て、それぞれ独立した値として扱いましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 並列接続での公式選択(\(V_{\text{最大}} = \min(V_{i\text{最大}})\)):
- 選定理由: 並列回路の電圧はすべて等しいため、最も低い耐電圧を超えた瞬間にそのコンデンサーが破損するからです。
- 適用根拠: キルヒホッフの法則(閉回路の電圧則)により、並列部分の電圧が等しいことが保証されています。
- 直列接続での公式選択(\(Q_{\text{限界}} = \min(Q_{i\text{最大}})\)):
- 選定理由: 直列回路では電荷がすべて等しいため、最も蓄えられる電荷量が少ないコンデンサーが満杯になった時点で、それ以上充電できなくなる(限界に達する)からです。
- 適用根拠: 電荷保存則により、直列接続された各コンデンサーの電荷量が等しいことが保証されています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認:
- \(\mu\text{F}\)(マイクロファラド)の \(10^{-6}\) を計算に含めるか、あるいは比の計算で消去するかを意識しましょう。本問のように比で解く場合は \(\mu\) を無視しても答えは合いますが、電荷 \(Q\) を具体的に求める場合は必須です。
- 極端なケースの想定:
- もし \(C_1\) が極端に小さかったら? \(\rightarrow\) \(C_1\) にほとんどの電圧がかかるはず。
- もし \(V_{1\text{最大}}\) が極端に小さかったら? \(\rightarrow\) 全体の耐電圧も小さくなるはず。
- このような思考実験を行うことで、計算結果の妥当性を直感的にチェックできます。
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461 コンデンサーの接続
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解: 電荷保存則とキルヒホッフの法則を用いた解法
- 模範解答が、合成容量と電圧の比(分圧の法則)を用いて解くのに対し、別解では「孤立部分の電荷の総和は保存される」という電荷保存則と、「回路一周の電位差の和はゼロ」というキルヒホッフの法則を連立させて解きます。
- 設問(3)の別解: 電荷保存則とキルヒホッフの法則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 汎用性の高さ: 合成容量の計算が複雑な回路や、スイッチ操作を含むより高度な問題でも通用する、最も基本的かつ強力な解法です。
- 物理的理解の深化: 「電圧の比」というテクニックに頼らず、電荷の移動と電位の関係という物理の根本原理から問題を捉える力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーの直列・並列接続と回路計算」です。複数のコンデンサーが接続された回路において、合成容量を求めたり、各コンデンサーにかかる電圧や蓄えられる電気量を計算する手順をマスターすることが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- コンデンサーの合成容量:
- 直列接続: \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\) (逆数の和の逆数)
- 並列接続: \(C = C_1 + C_2\) (単純な足し算)
- 直列接続の特徴: 直列に接続されたコンデンサーには、等しい大きさの電気量 \(Q\) が蓄えられます。また、各コンデンサーにかかる電圧の和は、電源電圧に等しくなります。
- 並列接続の特徴: 並列に接続されたコンデンサーには、等しい大きさの電圧 \(V\) がかかります。また、蓄えられる電気量の和は、合成コンデンサーの電気量に等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、直列接続されている \(C_1\) と \(C_2\) の合成容量を求めます。
- (2)では、(1)で求めた合成容量と \(C_3\) が並列接続されているとみなして、全体の合成容量を求めます。
- (3)では、直列回路における電圧の分圧(電圧は電気容量の逆数に比例して分配される)を利用して、\(C_1\) と \(C_2\) にかかる電圧を求めます。
- (4)では、(3)で求めた電圧と各コンデンサーの電気容量を用いて、基本式 \(Q=CV\) から電気量を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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