問題100 箔検電器 (23 茨城大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(8)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位とガウスの法則)
- 模範解答が自由電子の反発力や引力といった「力」の観点から説明するのに対し、別解では「電位(ポテンシャル)」と「ガウスの法則」を用いて、導体上の電荷分布の変化を数理的に捉えます。
- 設問(1)〜(8)の全現象を、電位の定義式 \(V(\vec{r}) = -\int \vec{E} \cdot d\vec{r}\) と静電誘導の原理から一貫して説明します。
- 設問(8)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位とガウスの法則)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 「なぜアースすると電荷が逃げるのか」「なぜ近づけると電荷分布が変わるのか」といった現象を、感覚的な力の説明だけでなく、エネルギー(電位)の低い方へ電荷が移動するという普遍的な原理から理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる現象の予測(箔が開く・閉じる)は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「静電誘導と箔検電器の動作原理」です。帯電体を近づけたときの導体内の電荷の移動や、接地(アース)による電荷の出入りを追跡します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 静電誘導: 帯電体を導体に近づけると、近い側に異符号、遠い側に同符号の電荷が現れる現象。
- 導体内の自由電子: 金属などの導体では、負電荷を持つ自由電子が自由に移動できます。正電荷(原子核)は移動しません。
- 接地(アース): 導体を地球(巨大な導体)に接続すること。地球の電位を \(0\) とし、接続された導体の電位も \(0\) になります。
- 電気量保存則: 孤立した系では、電荷の総量は変化しません。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、静電誘導による電荷の分離と、同符号電荷の反発による箔の開きを考えます。
- (4)〜(7)では、接地によって電荷が大地へ逃げる(または大地から流入する)プロセスと、その後の電荷分布を追います。
- (8)では、あらかじめ帯電している箔検電器に対し、さらに帯電体を近づけたときの電荷の再配分(重ね合わせ)を考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
問題文にある通り、帯電体を導体に近づけると、導体内の電荷分布が偏る現象を問われています。これは静電気学の基本用語です。
この設問における重要なポイント
- 用語の定義: 導体に帯電体を近づけたときに生じる電荷の分離現象を正確に答える必要があります。
具体的な解説と立式
導体(金属)には自由に移動できる自由電子が存在します。
帯電体を近づけると、静電気力(クーロン力)により自由電子が移動し、帯電体に近い側と遠い側で電荷の偏りが生じます。
この現象を「静電誘導」と呼びます。
ちなみに、不導体(誘電体)の場合は「誘電分極」と呼ばれますが、今回は金属板と箔(導体)の話なので静電誘導です。
使用した物理公式
- なし(用語の定義)
計算不要。知識問題として回答します。
電気を帯びたものを金属に近づけると、金属の中の電気が引き寄せられたり反発したりして、場所によってプラスやマイナスに偏る現象のことです。
現象の名称は「静電誘導」です。物理用語として適切です。
問(2)
思考の道筋とポイント
アクリル棒は負(マイナス)に帯電しています。
これを金属板に近づけたとき、金属内の自由電子(負電荷)がどのような力を受け、どこへ移動するかを考えます。
この設問における重要なポイント
- 電荷の符号: アクリル棒は「負」、自由電子も「負」です。
- クーロン力: 同符号の電荷は反発し合います。
具体的な解説と立式
アクリル棒の負電荷を \(-Q\)、自由電子の電荷を \(-e\) とします。
クーロンの法則により、同符号の電荷間には斥力(反発力)が働きます。
$$
\begin{aligned}
F &= k \frac{|-Q||-e|}{r^2} \quad (\text{斥力})
\end{aligned}
$$
この力により、金属板付近にある自由電子は、アクリル棒から遠ざかる方向、つまり「箔」の方へ移動します。
その結果、箔には自由電子が過剰に集まり、負に帯電します。
一方、金属板は電子が不足するため、正に帯電します。
使用した物理公式
- クーロンの法則(定性的な適用): 同符号は反発、異符号は吸引。
1. アクリル棒(負)が金属板に接近。
2. 金属内の自由電子(負)が反発力を受ける。
3. 自由電子は金属板から遠い箔へ移動。
4. 箔は電子過剰となり、負に帯電する。
マイナスの電気を持ったアクリル棒が近づくと、金属の中にあるマイナスの粒(自由電子)は「あっちへ行け」と反発されます。
逃げ場所は奥にある「箔」しかないので、電子は箔の方へ移動します。
マイナスの粒がたくさん集まった箔は、マイナスに帯電します。
箔には電子が集まるため、負に帯電します。これは静電誘導の基本原理と一致します。
問(3)
思考の道筋とポイント
問(2)で答えた「負」になる理由を、問題文の指示通り「自由電子」という語句を用いて論理的に説明します。
この設問における重要なポイント
- 主語: 移動するのは「正電荷」ではなく「自由電子」であることを明確にします。
- 因果関係: 反発力 \(\rightarrow\) 移動 \(\rightarrow\) 帯電 という流れで記述します。
具体的な解説と立式
論理構成は以下の通りです。
1. アクリル棒は負電荷を持っています。
2. 金属内の自由電子(負電荷)は、アクリル棒の負電荷から静電気的な反発力を受けます。
3. この力により、自由電子はアクリル棒から遠い箔の方へ移動します。
4. 結果として、箔では電子が過剰となり、負に帯電します。
使用した物理公式
- なし(論理記述のみ)
記述問題のため計算なし。
マイナスのアクリル棒に反発して、マイナスの自由電子が箔の方へ逃げていくからです。
自由電子の移動に着目して説明できており、物理的に正しい記述です。
問(4)
思考の道筋とポイント
操作2では、箔が開いた状態(箔は負帯電)で金属板を指で触れます(接地)。
人体は導体であり、地球(大地)につながっています。
箔にある過剰な自由電子が、どこへ移動すればより安定するか(電位が下がるか)を考えます。
この設問における重要なポイント
- 接地の意味: 指で触れることで、箔検電器と大地が電気的につながり、電位が \(0\)(大地と同じ)になろうとします。
- 電子の逃げ道: 箔に溜まっていた互いに反発し合う電子たちにとって、広大な大地へ逃げるルートが開通します。
具体的な解説と立式
操作1の状態では、箔には過剰な自由電子があり、互いの反発力で電位が高い(負に絶対値が大きい)状態にあります。
ここで金属板を接地すると、箔検電器と大地が導通します。
アクリル棒(負)に近い金属板部分は、静電誘導により正電荷が引きつけられて拘束されています(拘束電荷)。
一方、箔にある自由電子は、アクリル棒からの反発力と、電子同士の反発力を受けています。
接地により、これらの自由電子は指を通って大地へ逃げ出します。
その結果、箔の電荷はなくなり(中性になり)、箔は閉じます。
使用した物理公式
- 接地の原理: 電位差による電荷の移動。
1. 箔には過剰な自由電子が存在(負帯電)。
2. 指で触れる(接地する)。
3. 箔の自由電子は、アクリル棒の負電荷からの斥力を受けているため、より遠く(電位の高い方=大地)へ移動しようとする。
(注: 電子は負電荷なので、電位が低い場所(アクリル棒の近く)から高い場所(大地 \(0\,\text{V}\))へ移動します。アクリル棒付近の電位は負なので、大地の方が電位が高いです。)
4. 自由電子が大地へ流出。
5. 箔の電荷が \(0\) になる。
6. 箔どうしの反発力がなくなり、閉じる。
箔には「ここから逃げ出したい」と思っているマイナスの電子がたくさん詰め込まれています。
指で触れることは、出口の扉を開けるようなものです。
電子たちは「やった!」とばかりに、指を通って広い地面の方へ逃げていきます。
電子がいなくなった箔は電気を帯びていない状態に戻り、閉じます。
電子が逃げて箔の電荷がなくなるため、箔は閉じます。これは実験事実とも整合します。
問(5)
思考の道筋とポイント
問(4)の現象の理由を説明します。問(3)と同様に「自由電子」の移動に着目します。
この設問における重要なポイント
- 移動方向: 箔 \(\rightarrow\) 人体 \(\rightarrow\) 地面 という経路を明示します。
- 駆動力: アクリル棒の負電荷との反発力が原因であることを含めます。
具体的な解説と立式
アクリル棒の負電荷と反発し合っている箔の自由電子にとって、人体を経由して地面へ移動することで、アクリル棒からより遠ざかることができます。
したがって、自由電子は箔から指を通って地面へ移動します。
これにより箔は電気的に中性となり、閉じます。
使用した物理公式
- なし
記述のみ。
箔に溜まっていた自由電子が、アクリル棒のマイナス電気に反発して、指を通って地面へ逃げていくからです。
自由電子の流出により電荷が消失することを説明できています。
問(6)
思考の道筋とポイント
操作3では、指を離してから(接地を切る)、アクリル棒を遠ざけます。
指を離した時点で、箔検電器は電気的に孤立します。このときの電荷の総量がどうなっているかが鍵です。
この設問における重要なポイント
- 電荷の総量: 操作2で自由電子が逃げたため、箔検電器全体としては電子不足(正に帯電)の状態になっています。
- 電荷の再配置: アクリル棒があるうちは正電荷は金属板に引きつけられていますが、棒がなくなるとどうなるかを考えます。
具体的な解説と立式
操作2の終了時点で、金属板にはアクリル棒(負)に引きつけられた正電荷が集まっており、箔の電荷は \(0\) です。全体としては正に帯電しています。
まず指を離すと、この「全体として正」の状態が確定し、電荷の出入りができなくなります(電気量保存則)。
次にアクリル棒を遠ざけると、金属板の正電荷を引きつけていた引力がなくなります。
正電荷同士(実際には電子不足の領域同士)は反発し合うため、正電荷は金属板だけでなく箔の方へも広がって分布します。
その結果、箔も正に帯電し、正電荷同士の反発力によって再び開きます。
使用した物理公式
- 電気量保存則: \(Q_{\text{全}} = \text{一定}\)
- クーロン力: 同符号電荷の反発による拡散。
1. 接地中: 金属板に正電荷 \(+Q’\)、箔は \(0\)。全体電荷 \(+Q’\)。
2. 指を離す: 全体電荷 \(+Q’\) が検電器内に閉じ込められる。
3. 棒を遠ざける: 正電荷 \(+Q’\) を金属板に縛り付けていた力が消滅。
4. 電荷の再配分: \(+Q’\) が検電器全体(金属板と箔)に均一に広がろうとする。
5. 箔にも正電荷が分布。
6. 箔が開く。
電子が逃げてしまったので、検電器全体としては「プラス」の状態になっています。
アクリル棒があるうちは、プラスの電気は棒の近く(金属板)に集められていましたが、棒がいなくなると、プラスの電気は全体に広がります。
箔にもプラスの電気が回ってくるので、箔同士が反発して開きます。
全体が正に帯電しているため、棒を遠ざけると電荷が分散して箔が開きます。
問(7)
思考の道筋とポイント
問(6)の理由説明です。
「金属板にあった正電荷が全体に広がる」という表現でも良いですが、問題文の文脈(自由電子)に合わせるなら、「全体に電子不足の状態が広がる」あるいは「残っていた自由電子が全体に再配置される」といった記述も可能です。
しかし、一般的には「正電荷の移動(分布の広がり)」として説明するのが分かりやすいでしょう。
この設問における重要なポイント
- 拘束の解除: アクリル棒による引力がなくなること。
- 電荷の分散: 正電荷が箔検電器全体に分布すること。
具体的な解説と立式
アクリル棒を遠ざけると、金属板に集められていた正電荷(電子不足の状態)に対する拘束力がなくなります。
正電荷同士の反発力により、電荷は金属板から箔検電器全体へと広がります。
これにより箔も正に帯電するため、反発力で開きます。
(自由電子を用いた説明の場合)
アクリル棒を遠ざけると、検電器内に残っている自由電子が、全体に均一に広がろうとします。これにより、金属板に偏っていた「電子不足(正帯電)」の状態が解消され、代わりに全体が「やや電子不足」の状態になります。結果として箔も電子不足(正帯電)となり、開きます。
使用した物理公式
- なし
記述のみ。
アクリル棒がいなくなったので、金属板に集められていたプラスの電気が自由になり、箔の方まで広がって全体がプラスになるからです。
正電荷の分散により箔が開くことを説明します。
問(8)
思考の道筋とポイント
操作4では、あらかじめ正に帯電して開いている箔検電器に、負のアクリル棒を遠くから近づけます。
これは「初期電荷(正)」と「静電誘導による電荷移動」の重ね合わせの問題です。
この設問における重要なポイント
- 初期状態: 全体が正帯電(箔も正帯電で開いている)。
- 静電誘導の向き: 負の棒が近づくと、自由電子は棒から遠ざかる(箔へ行く)…というのは間違いです!
- 再考: アクリル棒は「負」です。自由電子も「負」です。
- 自由電子はアクリル棒から反発を受けます。
- したがって、自由電子は「金属板(棒に近い側)」から「箔(棒から遠い側)」へ移動しようとします。
- 電荷の合成:
- 箔の初期電荷: 正(\(+q_0\))。
- 移動してくる自由電子: 負(\(-e\))。
- 箔の合計電荷: \(+q_0 + (-e)\)。正電荷が中和されて減っていきます。
具体的な解説と立式
1. 初期状態: 箔検電器全体が正に帯電しており、箔も正電荷を持って開いています。
2. 接近初期: 負に帯電したアクリル棒を近づけると、金属板にある自由電子が反発力を受け、箔の方へ移動します。
3. 中和: 箔にはもともと正電荷がありましたが、そこへ負の自由電子が流れ込むため、正電荷が打ち消されて減少します。
- 箔の電荷量 \(Q_{\text{箔}} > 0\) が減少 \(\rightarrow\) 開きが小さくなる。
4. 閉じる瞬間: アクリル棒がある距離まで近づくと、流れ込んだ自由電子の量が初期の正電荷と釣り合い、箔の電荷が \(0\) になります。このとき箔は閉じます。
5. さらに接近: さらにアクリル棒を近づけると、より多くの自由電子が箔へ押し込まれます。
- 箔は中性状態を超えて、電子過剰(負帯電)になります。
- 箔の電荷量 \(Q_{\text{箔}} < 0\) となり、絶対値が増加 \(\rightarrow\) 再び開き始める。
使用した物理公式
- 重ね合わせの理: \(Q_{\text{全}} = Q_{\text{初}} + Q_{\text{誘導}}\)
- 箔の電荷 \(Q(x)\) (\(x\)は棒との距離、近づくと\(x\)減少)
- \(Q(x) = Q_0 + \Delta Q(x)\)
- \(Q_0 > 0\) (初期電荷)
- \(\Delta Q(x) < 0\) (誘導電荷、\(x\)が減ると負の絶対値が増大)
- \(x\) が大きいとき: \(Q(x) \approx Q_0 > 0\) (開いている)
- \(x\) が減少: \(Q(x)\) は減少。
- ある距離 \(x_0\) で \(Q(x_0) = 0\) (閉じる)
- さらに \(x < x_0\): \(Q(x) < 0\) (負に帯電して再び開く)
最初はプラスの電気で開いています。
マイナスの棒を近づけると、金属板からマイナスの電子が追いやられて箔の方へ逃げてきます。
プラスの箔にマイナスの電子がやってくるので、プラスとマイナスが打ち消し合って、箔の電気はだんだん減り、閉じていきます。
さらに棒を近づけると、もっとたくさんの電子が逃げてくるので、今度は箔がマイナスの電気を帯びすぎてしまい、再び開いていきます。
「しだいに閉じていき、やがて閉じる。さらに近づけると再び開いていく」という挙動になります。
理由は自由電子の移動による電荷の中和と逆転で説明できます。
変化: アクリル棒が近づくにつれて、箔の開きは徐々に小さくなり、一度閉じる。さらに近づけると、再び徐々に開いていく。
理由: 負に帯電したアクリル棒の接近により、静電誘導で金属板の自由電子が箔へ移動する。これにより、箔の正電荷が中和されて減少し(閉じ)、さらに電子が流入すると箔は負に帯電するため(再び開く)。
思考の道筋とポイント
設問(8)の「閉じてからまた開く」という現象は、模範解答のように力の釣り合いで説明できますが、より厳密には「電位」と「ガウスの法則」を用いて理解することができます。
ここでは、箔検電器の箔の位置における電荷密度 \(\sigma\) が、外部電場によってどう変化するかを数式的に追跡します。
この設問における重要なポイント
- 電位の重ね合わせ: 空間の電位 \(\phi(\vec{r})\) は、初期電荷 \(Q_0\) が作る電位 \(\phi_0\) と、外部の帯電体(アクリル棒)が作る電位 \(\phi_{\text{外}}\)、および静電誘導によって再配置された電荷が作る電位 \(\phi_{\text{誘導}}\) の和です。
- 導体の等電位性: 静電平衡状態において、導体全体は等電位になります。
具体的な解説と立式
箔検電器の箔の位置を \(\vec{r}_{\text{箔}}\) とします。
箔にある電荷密度を \(\sigma(\vec{r}_{\text{箔}})\) とします。
初期状態(アクリル棒が無限遠)では、全体に正電荷 \(Q_0\) が分布しており、箔の電荷密度は正です。
$$
\begin{aligned}
\sigma_{\text{初}} &> 0
\end{aligned}
$$
負に帯電したアクリル棒(電荷 \(-Q_{\text{棒}}\))を位置 \(\vec{r}_{\text{棒}}\) に置きます。
導体内の自由電子は、導体内部の電場が \(0\) になるように(全体が等電位になるように)移動します。
ガウスの法則 \(\nabla \cdot \vec{E} = \frac{\rho}{\varepsilon_0}\) より、導体表面の電荷密度 \(\sigma\) は、表面直下の電場 \(E_n\) に比例します(\(\sigma = \varepsilon_0 E_n\))。
アクリル棒(負電荷)が作る電場 \(\vec{E}_{\text{外}}\) は、金属板から箔に向かう方向(電位勾配の正方向)成分を持ちます。
これ打ち消すために、自由電子が金属板から箔へ移動し、誘導電荷密度 \(\sigma_{\text{誘導}}\) が生じます。
箔の位置では、電子が流入するため、誘導電荷密度は負になります。
$$
\begin{aligned}
\sigma_{\text{誘導}} &< 0
\end{aligned}
$$
この誘導電荷の大きさは、アクリル棒が近づくほど(距離 \(x\) が小さくほど)大きくなります。
$$
\begin{aligned}
|\sigma_{\text{誘導}}(x)| &\propto \frac{1}{x^2} \quad (\text{定性的な依存性})
\end{aligned}
$$
箔の全電荷密度 \(\sigma_{\text{全}}\) は、初期値と誘導成分の和です。
$$
\begin{aligned}
\sigma_{\text{全}}(x) &= \sigma_{\text{初}} + \sigma_{\text{誘導}}(x)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ガウスの法則: \(\sigma = \varepsilon_0 E_n\)
- 重ね合わせの理: \(\sigma_{\text{全}} = \sigma_1 + \sigma_2\)
式を変形して、距離 \(x\) に対する依存性を明確にします。
$$
\begin{aligned}
\sigma_{\text{全}}(x) &= \sigma_{\text{初}} – |\sigma_{\text{誘導}}(x)|
\end{aligned}
$$
1. \(x\) が大きいとき(遠方):
\(|\sigma_{\text{誘導}}(x)|\) は小さいので、\(\sigma_{\text{全}} > 0\)。
箔は正に帯電しており、開いている。
2. \(x\) が減少(接近):
\(|\sigma_{\text{誘導}}(x)|\) が増加する。
\(\sigma_{\text{全}}\) は正の値から徐々に減少する。
箔の開きは小さくなる。
3. ある距離 \(x_0\) のとき:
\(\sigma_{\text{初}} = |\sigma_{\text{誘導}}(x_0)|\) となり、\(\sigma_{\text{全}} = 0\)。
箔の電荷がなくなり、閉じる。
4. \(x < x_0\) のとき(さらに接近):
\(|\sigma_{\text{誘導}}(x)| > \sigma_{\text{初}}\) となり、\(\sigma_{\text{全}} < 0\)。
箔は負に帯電し、その絶対値は \(x\) の減少とともに急激に増加する。
箔は再び開く。
箔にある電気の量は、「もともとあったプラスの電気」と「棒に追いやられてやってきたマイナスの電気」の足し算で決まります。
棒が近づくにつれて「やってくるマイナス」がどんどん増えるので、最初はプラスが減っていき(閉じる)、ゼロになり、最後はマイナスが勝ち越してマイナスになります(再び開く)。
これを数式で見ると、定数から距離の関数を引き算する形になり、符号が反転することが明確に分かります。
数式的なモデルからも、箔の電荷が正 \(\to\) 0 \(\to\) 負 と変化することが示されました。これは実験事実および模範解答の定性説明と完全に一致します。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 静電誘導と自由電子の移動
- 核心: 導体内の自由電子は、外部電場(帯電体)からの力を受けて移動し、導体内部の電場を打ち消すように表面に分布する。
- 理解のポイント:
- 金属(導体)の中を移動できるのは「負電荷を持つ自由電子」のみである。
- 帯電体の符号(正/負)と、電子が受ける力(引力/斥力)の向きを常にセットで考える。
- 接地(アース)と電位の固定
- 核心: 接地された導体は、巨大な導体である地球(大地)と電気的につながり、電位が \(0\)(大地と同じ)に固定される。
- 理解のポイント:
- 接地は「電荷をゼロにする」操作ではなく、「電位をゼロにする」操作である。
- 電位を \(0\) に保つために、必要に応じて大地から電荷が流入したり、大地へ流出したりする。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 静電誘導を利用した帯電操作: 「帯電体を近づける \(\rightarrow\) 接地する \(\rightarrow\) 接地を切る \(\rightarrow\) 帯電体を遠ざける」という一連の手順により、帯電体と異符号の電荷を導体に残すことができる。
- 導体球の分極と接触: 2つの接触した導体球に帯電体を近づけてから分離する問題も、本問の金属板と箔の関係と同じ原理(静電誘導)で解ける。
- 初見の問題での着眼点:
- 電荷の符号と移動主体の確認: 帯電体はプラスかマイナスか? 動くのは常にマイナスの電子であると認識する。
- 系の状態遷移の整理: 「接地中(電位固定・電荷移動あり)」なのか、「孤立中(電荷保存・電位変化あり)」なのかを操作ごとに区別する。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 正電荷が移動するという誤解:
- 誤解: 「プラスの電気が金属板から箔へ移動して箔が開いた」と考えてしまう。
- 対策: 固体金属内では正電荷(原子核)は不動である。「プラスが増えた」現象は必ず「マイナスの電子が逃げた」と言い換えて理解する癖をつける。
- アース=電荷消失の思い込み:
- 誤解: 指で触れれば(接地すれば)、どんな状況でも導体の電荷はすべて逃げて中性(ゼロ)になると思い込む。
- 対策: 近くに帯電体がある場合、その影響(電位)を打ち消すために、あえて電荷(拘束電荷)が導体に留まることを理解する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電気量保存則:
- 選定理由: 指を離した後の導体は電気的に孤立しており、外部との電荷の出入りが物理的に不可能になるため、最も確実な判断材料となる。
- 適用根拠: 導線や人体との接触が断たれている区間(操作3以降)であること。
- ガウスの法則と電位の重ね合わせ(別解):
- 選定理由: 設問(8)のような「一度閉じてまた開く」という複雑な挙動を、感覚的な力の説明だけでなく、数理的な電荷密度の変化として定量的に理解するため。
- 適用根拠: 静電場における導体の性質(等電位性)と、電荷と電場の関係(ガウスの法則)は、どのような配置でも成立する普遍的な原理であるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 電荷分布の可視化(作図):
- 意識: 頭の中だけで電子の動きを追うと、符号や移動方向を間違えやすい。
- 実践: 必ず導体の略図を描き、電子が移動した先に「\(-e\)」、電子が抜けた場所に「\(+\)」を書き込み、移動方向を矢印で明記する。
- 操作プロセスのフローチャート化:
- 意識: 「指を離す」と「棒を遠ざける」の順序が逆になると結果が変わるため、時系列を正確に追う。
- 実践: 問題文の操作ごとに番号(①接近、②接地、③離脱…)を振り、各段階での「金属板」と「箔」の電荷の状態(正・負・ゼロ)を表やメモに書き出す。
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問題101 帯電した平面による電場 (信州大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問[B](4)の別解: 仮想仕事の原理(静電エネルギーの微分)を用いた解法
- 模範解答の別解でも触れられていますが、静電エネルギーの変化と外力の仕事の関係から、極板間に働く引力を導出します。
- 全体を通した別解: 微積分を用いた体系的解法(ガウスの法則から力までの一貫導出)
- 設問[A]から[B]までの全過程を、電磁気学の基礎方程式である「ガウスの法則(積分形)」から出発し、電場、電位、静電容量、そして静電引力に至るまで、数理的に一貫して導出します。
- 設問[B](4)の別解: 仮想仕事の原理(静電エネルギーの微分)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 仮想仕事の解法: 「電荷が受ける力」を考える際、自分自身が作る電場を除外しなければならないという概念的な落とし穴を回避でき、エネルギー保存則から機械的かつ確実に正解を導けます。
- 微積分の解法: 公式の暗記に頼らず、物理現象を根本原理から再構築する力を養うことができます。特にコンデンサーの諸公式がどのように結びついているかを体系的に理解するのに最適です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ガウスの法則と平行平板コンデンサーの原理」です。単独の帯電平板が作る電場を理解し、それを重ね合わせることでコンデンサーの電場や静電容量、極板間引力を導き出します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ガウスの法則(電気力線の定義): 電荷 \(Q\) からは \(N = Q/\varepsilon_0\) 本の電気力線が出ます。
- 電場の定義: 電場の強さ \(E\) は、電気力線に垂直な単位面積当たりの電気力線の本数(電気力線密度)に等しいです。
- 重ね合わせの理: 複数の電荷がある場合、ある点での電場はそれぞれの電荷が作る電場のベクトル和になります。
- 静電エネルギーと力: コンデンサーの極板間引力は、静電エネルギーの空間微分(仮想仕事の原理)としても理解できます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- [A]では、単独の平板電荷が作る電場を、対称性とガウスの法則から求めます。
- [B]では、2枚の平板(正と負)が作る電場を重ね合わせ、コンデンサー内部の電場、電位差、容量を順に計算します。
- 最後に、極板間に働く力を、電荷と電場の相互作用として求めます。
問[A](1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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