「物理重要問題集2026」徹底解説(10〜12問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題10 斜面に置かれたロープのつりあい (鳥取大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)(4)の別解1: 全体系(AP部+BP部)のつりあいを用いた解法
      • 模範解答が張力 \(T\) を媒介変数として連立方程式を解くのに対し、別解1ではロープ全体を一つの系とみなし、張力を消去して直接摩擦力を求めます。
    • 設問(1)〜(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(一括解説)
      • ロープの微小部分における力のつりあいを微分方程式として立式し、それを積分することで張力分布と摩擦力の条件を原理的に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 全体系の解法: 未知数である張力 \(T\) を計算する必要がないため、計算量が大幅に削減され、ミスを減らすことができます。
    • 微積分の解法: 「張力が場所によってどう変化するか」を可視化でき、摩擦力が働く場合の張力勾配の変化など、物理現象の深い理解につながります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「摩擦のある斜面上での連結物体のつりあい」です。
ロープのような連続体も、部分ごとに分けて考えることで、質点のつりあい問題として扱うことができます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 力のつりあい: 静止している物体では、働く力のベクトル和が \(0\) になります。
  • 静止摩擦力の性質: 静止摩擦力は、物体が動き出すのを妨げる向きに働き、その大きさは外力に応じて \(0\) から最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}} = \mu N\) までの値をとります。
  • 作用・反作用の法則: ロープ内部の張力は、着目する部分の境界において互いに逆向き・同じ大きさで働きます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、ロープが一様であることを利用し、長さの比から各部の質量を求めます。
  • (2)では、鉛直に垂れ下がっている部分(BP部)のつりあいから張力を求めます。
  • (3)では、斜面上の部分(AP部)のつりあいを考えます。このとき、重力の斜面成分と張力の大小関係によって、摩擦力の向きが変わることに注意が必要です。
  • (4)では、静止摩擦力が最大静止摩擦力を超えないという条件式 \(f \le \mu N\) を立式し、不等式を解きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
ロープは「太さが一様で均質」であるため、質量は長さに比例します。
全長 \(L\) の質量が \(M\) であることから、単位長さあたりの質量(線密度)を考えれば、任意の長さの質量を計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 線密度: ロープの単位長さあたりの質量 \(\lambda = \frac{M}{L}\) を基準に考えます。
  • 各部の長さ: 図より、BP部の長さは \(a\)、AP部の長さは \(L-a\) です。

具体的な解説と立式
ロープの全長は \(L\)、全質量は \(M\) です。
したがって、単位長さあたりの質量(線密度)\(\lambda\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{M}{L}
\end{aligned}
$$
AP部の長さを \(L_{\text{AP}}\)、BP部の長さを \(L_{\text{BP}}\) とすると、図より以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
L_{\text{AP}} &= L – a \\[2.0ex]
L_{\text{BP}} &= a
\end{aligned}
$$
求めるAP部の重さ(重力の大きさ)を \(W_{\text{AP}}\)、BP部の重さを \(W_{\text{BP}}\) とします。
重さは「質量 \(\times\) 重力加速度 \(g\)」であり、質量は「線密度 \(\times\) 長さ」で求まります。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{AP}} &= (\lambda L_{\text{AP}}) g \\[2.0ex]
W_{\text{BP}} &= (\lambda L_{\text{BP}}) g
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 重力: \(W = mg\)
  • 一様な物体の質量: \(m = \lambda x\) (\(\lambda\): 線密度, \(x\): 長さ)
計算過程

先ほどの式に各値を代入します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{AP}} &= \left( \frac{M}{L} \cdot (L-a) \right) g \\[2.0ex]
&= \frac{L-a}{L} Mg
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
W_{\text{BP}} &= \left( \frac{M}{L} \cdot a \right) g \\[2.0ex]
&= \frac{a}{L} Mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

長い羊羹(ようかん)を切り分けるのをイメージしてください。
羊羹全体の重さが決まっていれば、切った長さの割合だけで、それぞれの重さが決まります。
今回は、全体 \(L\) に対して、斜面側が \(L-a\)、垂れ下がった側が \(a\) という長さなので、重さもその割合で配分されます。

結論と吟味

AP部の重さは \(\displaystyle \frac{L-a}{L} Mg\)、BP部の重さは \(\displaystyle \frac{a}{L} Mg\) です。
両者を足すと \(\displaystyle \frac{L-a+a}{L} Mg = Mg\) となり、全体の重さと一致するため、計算は正しいと言えます。

解答 (1) AP部: \(\displaystyle \frac{L-a}{L} Mg\), BP部: \(\displaystyle \frac{a}{L} Mg\)

問(2)

思考の道筋とポイント
点Pにおける張力 \(T\) を求めるために、BP部(垂れ下がっている部分)だけに注目して「力のつりあい」を考えます。
BP部は空中に浮いて静止しており、接触しているのは上端の点P(ロープの続き)だけです。

この設問における重要なポイント

  • 着目物体の分離: ロープ全体ではなく、BP部という「部分」を取り出して考えます。
  • 力の列挙: BP部に働く力は、地球が引く「重力」と、点PでAP部が引き上げる「張力」の2つだけです。

具体的な解説と立式
BP部にはたらく力を考えます。
鉛直上向きを正とします。

  • 上向きの力: 点Pにおける張力 \(T\)
  • 下向きの力: BP部の重力 \(W_{\text{BP}}\)

BP部は静止しているため、力のつりあいの式(上向きの力 \(=\) 下向きの力)を立てます。
$$
\begin{aligned}
T &= W_{\text{BP}}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \((\text{上向きの力の和}) = (\text{下向きの力の和})\)
計算過程

問(1)の結果 \(W_{\text{BP}} = \frac{a}{L} Mg\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{a}{L} Mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

垂れ下がっているロープ(BP部)が落ちないのは、上の部分(AP部)が引っ張り上げているからです。
その引っ張る力(張力)は、ちょうど垂れ下がっている部分の重さを支えるだけの大きさになります。

結論と吟味

張力の大きさは \(\displaystyle \frac{a}{L} Mg\) です。
\(a=0\)(垂れ下がりなし)なら \(T=0\)、\(a=L\)(全部垂れ下がり)なら \(T=Mg\) となり、物理的な直感と一致します。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{a}{L} Mg\)

問(3)

思考の道筋とポイント
次はAP部(斜面上の部分)のつりあいを考えます。
AP部には、重力の斜面成分、張力、そして摩擦力が働きます。
ここで重要なのは、「摩擦力の向きは決まっていない」ということです。
AP部が「滑り落ちそう」なのか「滑り上がりそう」なのかによって、摩擦力の向きが逆転します。これを場合分けして考えます。

この設問における重要なポイント

  • 重力の分解: AP部の重力 \(W_{\text{AP}}\) を、斜面に平行な成分(\(W_{\text{AP}} \sin\theta\))と垂直な成分(\(W_{\text{AP}} \cos\theta\))に分解します。
  • 摩擦力の向き: 摩擦力は、物体が動こうとする方向(相対運動の方向)を妨げる向きに働きます。
    • 張力 \(T\) が重力成分 \(W_{\text{AP}} \sin\theta\) より大きいとき \(\rightarrow\) 上に滑りそう \(\rightarrow\) 摩擦は下向き。
    • 張力 \(T\) が重力成分 \(W_{\text{AP}} \sin\theta\) より小さいとき \(\rightarrow\) 下に滑りそう \(\rightarrow\) 摩擦は上向き。

具体的な解説と立式
AP部にはたらく斜面方向の力を整理します。

  • 斜面上向きの力: 張力 \(T\)
  • 斜面下向きの力: 重力の斜面成分 \(W_{\text{AP}} \sin\theta\)
  • 静止摩擦力 \(f\): 向きは状況による

ケース1: \(T > W_{\text{AP}} \sin\theta\) のとき
AP部は斜面を登る方向に引かれているため、摩擦力 \(f\) は「斜面下向き」に働きます。
斜面方向のつりあいの式(上向きの力 \(=\) 下向きの力)は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
T &= W_{\text{AP}} \sin\theta + f
\end{aligned}
$$
これより、摩擦力の大きさは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f &= T – W_{\text{AP}} \sin\theta \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
ケース2: \(T < W_{\text{AP}} \sin\theta\) のとき
AP部は重力でずり落ちようとしているため、摩擦力 \(f\) は「斜面上向き」に働きます。
斜面方向のつりあいの式(上向きの力 \(=\) 下向きの力)は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
T + f &= W_{\text{AP}} \sin\theta
\end{aligned}
$$
これより、摩擦力の大きさは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f &= W_{\text{AP}} \sin\theta – T \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
①式と②式をまとめると、絶対値を用いて一つの式で表せます。
$$
\begin{aligned}
f &= | T – W_{\text{AP}} \sin\theta |
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい(斜面方向)
  • 重力の斜面成分: \(mg \sin\theta\)
計算過程

問(1)(2)の結果 \(W_{\text{AP}} = \frac{L-a}{L} Mg\)、\(T = \frac{a}{L} Mg\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \left| \frac{a}{L} Mg – \left( \frac{L-a}{L} Mg \right) \sin\theta \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{Mg}{L} \left\{ a – (L-a) \sin\theta \right\} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta |
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

斜面上のロープ(AP部)は、「垂れ下がった部分に引っ張られる力(\(T\))」と「自分の重さで滑り落ちようとする力(重力成分)」の綱引きをしています。
この2つの力のバランスが崩れた分を、摩擦力が埋め合わせて静止させています。
引っ張る力が強すぎれば摩擦は下向きに、弱すぎれば摩擦は上向きに働きますが、どちらにせよ摩擦力の大きさは「2つの力の差」になります。

結論と吟味

摩擦力の大きさは \(\displaystyle \frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta |\) です。
もし \(a\) が非常に大きく、\(a > (L-a)\sin\theta\) ならば、ロープは上に滑り上がろうとし、摩擦は下向きに働きます。逆なら下に滑り落ちようとします。この式はその両方の状況を含んでいます。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta |\)

問(4)

思考の道筋とポイント
ロープが静止し続けるためには、必要な摩擦力 \(f\) が、その面で発揮できる限界の摩擦力(最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}}\))を超えてはいけません。
この条件式 \(f \le f_{\text{最大}}\) を立て、\(a\) についての不等式を解きます。

この設問における重要なポイント

  • 最大静止摩擦力: \(f_{\text{最大}} = \mu N\) で表されます。ここで \(N\) は垂直抗力です。
  • 垂直抗力: AP部の斜面垂直方向のつりあいより、\(N = W_{\text{AP}} \cos\theta\) です。
  • 絶対値付き不等式の処理: \(|X| \le Y\) は \(-Y \le X \le Y\) と等価です。

具体的な解説と立式
まず、AP部にはたらく垂直抗力 \(N\) を求めます。
斜面に垂直な方向の力のつりあい(上向き \(=\) 下向き)より、
$$
\begin{aligned}
N &= W_{\text{AP}} \cos\theta \\[2.0ex]
&= \frac{L-a}{L} Mg \cos\theta
\end{aligned}
$$
静止し続けるための条件は、静止摩擦力 \(f\) が最大静止摩擦力以下であることです。
$$
\begin{aligned}
f &\le \mu N
\end{aligned}
$$
これに問(3)の結果と \(N\) を代入して立式します。
$$
\begin{aligned}
\frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta | &\le \mu \left( \frac{L-a}{L} Mg \cos\theta \right)
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 最大静止摩擦力: \(f_{\text{最大}} = \mu N\)
  • 静止条件: \(f \le f_{\text{最大}}\)
計算過程

両辺を \(\displaystyle \frac{Mg}{L}\)(正の値)で割ります。
$$
\begin{aligned}
| a – (L-a) \sin\theta | &\le \mu (L-a) \cos\theta
\end{aligned}
$$
ここで、\(X = a – (L-a) \sin\theta\)、\(Y = \mu (L-a) \cos\theta\) と置くと、\(|X| \le Y\) の形になります。
これは \(-Y \le X \le Y\) と書き換えられます。
$$
\begin{aligned}
-\mu (L-a) \cos\theta \le a – (L-a) \sin\theta \le \mu (L-a) \cos\theta
\end{aligned}
$$
この不等式は、以下の2つの不等式の連立と同じです。
1. \(a – (L-a) \sin\theta \le \mu (L-a) \cos\theta\) (上に滑らない条件)
2. \(-\mu (L-a) \cos\theta \le a – (L-a) \sin\theta\) (下に滑らない条件)

それぞれ \(a\) について解きます。

1. 上に滑らない条件
$$
\begin{aligned}
a – (L \sin\theta – a \sin\theta) &\le \mu (L \cos\theta – a \cos\theta) \\[2.0ex]
a + a \sin\theta + \mu a \cos\theta &\le L \sin\theta + \mu L \cos\theta \\[2.0ex]
a (1 + \sin\theta + \mu \cos\theta) &\le L (\sin\theta + \mu \cos\theta) \\[2.0ex]
a &\le \frac{\sin\theta + \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta + \mu \cos\theta} L
\end{aligned}
$$
2. 下に滑らない条件
$$
\begin{aligned}
-\mu (L \cos\theta – a \cos\theta) &\le a – (L \sin\theta – a \sin\theta) \\[2.0ex]
-\mu L \cos\theta + \mu a \cos\theta &\le a – L \sin\theta + a \sin\theta \\[2.0ex]
L \sin\theta – \mu L \cos\theta &\le a + a \sin\theta – \mu a \cos\theta \\[2.0ex]
L (\sin\theta – \mu \cos\theta) &\le a (1 + \sin\theta – \mu \cos\theta)
\end{aligned}
$$
ここで、右辺の係数 \((1 + \sin\theta – \mu \cos\theta)\) が正であるか確認します。
問題文より \(\mu \le \tan\theta\) なので \(\mu \cos\theta \le \sin\theta\) ですが、これを用いずとも \(\mu \cos\theta\) は通常 \(1\) より小さく、\(1+\sin\theta\) は \(1\) 以上なので、係数は正です。したがって不等号の向きは変わりません。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta – \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta – \mu \cos\theta} L &\le a
\end{aligned}
$$
以上をまとめると、求める \(a\) の範囲は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta – \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta – \mu \cos\theta} L \le a \le \frac{\sin\theta + \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta + \mu \cos\theta} L
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

垂れ下がっている部分 \(a\) が長すぎると、重さに引かれて全体がズリズリと上に滑り出してしまいます(上限の条件)。
逆に \(a\) が短すぎると、斜面上の部分の重さが勝って、全体が下に滑り落ちてしまいます(下限の条件)。
摩擦があるおかげで、その中間の「ちょうどいい長さの範囲」であれば、滑らずに止まっていられます。その範囲を計算しました。

結論と吟味

得られた式を確認します。
もし摩擦がない(\(\mu=0\))とすると、分母分子から \(\mu\) の項が消え、
\(\displaystyle \frac{\sin\theta}{1+\sin\theta} L \le a \le \frac{\sin\theta}{1+\sin\theta} L\)
となり、\(a\) は一点に定まります。これは力が完全につりあう点であり、妥当です。
摩擦があることで、静止できる \(a\) の範囲が広がっていることがわかります。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{\sin\theta – \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta – \mu \cos\theta} L \le a \le \frac{\sin\theta + \mu \cos\theta}{1 + \sin\theta + \mu \cos\theta} L\)
別解: 全体系(AP部+BP部)のつりあいを用いた解法

思考の道筋とポイント
問(3)(4)を解く際、張力 \(T\) を求めずに、ロープ全体を一つの物体(系)として見ることで、計算を大幅に短縮できます。
ロープに沿った方向の力を考え、駆動する力と抵抗する力のバランスを直接立式します。

この設問における重要なポイント

  • 系の定義: AP部とBP部を合わせたロープ全体を一つの系とします。
  • 力の方向: ロープに沿って「AからBへ向かう方向(時計回り)」を正の向きと定義します。
  • 内力の相殺: 系全体で考えると、点Pでの張力 \(T\) は「内力」となり、式には現れません。

具体的な解説と立式
ロープ全体が動き出そうとする方向(A \(\to\) B方向)を正とします。
この方向に働く外力は以下の通りです。

  • 駆動力(正方向): BP部にかかる重力 \(W_{\text{BP}} = \frac{a}{L} Mg\)
  • 抵抗力(負方向): AP部にかかる重力の斜面成分 \(W_{\text{AP}} \sin\theta = \frac{L-a}{L} Mg \sin\theta\)
  • 静止摩擦力 \(f\): 動きを妨げる向き(正負どちらもあり得る)

系全体の力のつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{正方向の力}) + (\text{負方向の力}) + (\text{摩擦力}) &= 0 \\[2.0ex]
W_{\text{BP}} – W_{\text{AP}} \sin\theta \pm f &= 0
\end{aligned}
$$
摩擦力 \(f\) を左辺に残して整理すると、
$$
\begin{aligned}
f &= | W_{\text{BP}} – W_{\text{AP}} \sin\theta |
\end{aligned}
$$
これは問(3)で導いた式 \(f = |T – W_{\text{AP}} \sin\theta|\) と同じ形になります(\(T=W_{\text{BP}}\) なので)。

使用した物理公式

  • 系全体の力のつりあい
計算過程

値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \left| \frac{a}{L} Mg – \frac{L-a}{L} Mg \sin\theta \right| \\[2.0ex]
&= \frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta |
\end{aligned}
$$
この \(f\) が最大静止摩擦力 \(f_{\text{最大}} = \mu N = \mu \frac{L-a}{L} Mg \cos\theta\) 以下であればよいので、
$$
\begin{aligned}
\frac{Mg}{L} | a – (L-a) \sin\theta | &\le \mu \frac{L-a}{L} Mg \cos\theta
\end{aligned}
$$
この不等式は問(4)で解いたものと全く同じ形になり、同じ答えが得られます。

この設問の平易な説明

「右側の垂れ下がった重り」と「左側の斜面上の重り」が綱引きをしていると考えます。
右側が勝てば右に動きそうになり、左側が勝てば左に動きそうになります。
その「勝ち負けの差」を摩擦力が埋めている、という式を一発で作りました。
間の紐(張力)のことを考えなくて済むので、非常にシンプルです。

結論と吟味

張力を経由せずに直接摩擦力の式が得られました。
計算ミスが起きにくく、検算としても非常に有効な方法です。

解答 (3)(4) メイン解法と同じ
別解: 微積分を用いた体系的解法(一括解説)

思考の道筋とポイント
ロープの微小部分における力のつりあいを考え、微分方程式を立てます。
これを積分することで、ロープ内部の張力 \(T\) が場所によってどう変化するか(張力分布)を導き出し、問(1)〜(4)の全結果を一括して導出します。

この設問における重要なポイント

  • 座標の設定:
    • 斜面部(AP): 点Pを原点 \(x=0\) とし、Aに向かって斜面下向きに \(x\) 軸をとります(\(0 \le x \le L-a\))。
    • 鉛直部(BP): 点Pを原点 \(y=0\) とし、Bに向かって鉛直下向きに \(y\) 軸をとります(\(0 \le y \le a\))。
  • 微小要素のつりあい: 長さ \(dx\)(または \(dy\))の微小部分に働く力を考えます。

具体的な解説と立式
線密度を \(\lambda = M/L\) とします。

1. 鉛直部(BP)の解析
位置 \(y\) における微小要素 \(dy\) を考えます。

  • 上向きの張力: \(T(y)\)
  • 下向きの張力: \(T(y+dy) \approx T(y) + \frac{dT}{dy} dy\)
  • 重力: \((\lambda dy) g\)

力のつりあい(上向き \(=\) 下向き)より、
$$
\begin{aligned}
T(y) &= T(y) + \frac{dT}{dy} dy + \lambda g dy \\[2.0ex]
-\frac{dT}{dy} &= \lambda g
\end{aligned}
$$
これを積分します。境界条件は、端点 B(\(y=a\))で張力が \(0\) になることです(\(T(a)=0\))。
$$
\begin{aligned}
T(y) &= -\lambda g y + C \\[2.0ex]
T(a) &= -\lambda g a + C = 0 \quad \text{より} \quad C = \lambda g a \\[2.0ex]
T(y) &= \lambda g (a – y)
\end{aligned}
$$
点P(\(y=0\))での張力 \(T_P\) は、
$$
\begin{aligned}
T_P &= T(0) \\[2.0ex]
&= \lambda g a \\[2.0ex]
&= \frac{a}{L} Mg
\end{aligned}
$$
これは問(2)の答えと一致します。

2. 斜面部(AP)の解析
位置 \(x\) における微小要素 \(dx\) を考えます。

  • 斜面上向きの張力: \(T(x)\)
  • 斜面下向きの張力: \(T(x+dx) \approx T(x) + \frac{dT}{dx} dx\)
  • 重力の斜面成分: \((\lambda dx) g \sin\theta\)
  • 単位長さあたりの静止摩擦力: \(f(x)\) (向きは正負ありうる)

力のつりあい(斜面上向きを正)より、
$$
\begin{aligned}
T(x) – T(x+dx) – (\lambda dx) g \sin\theta + f(x) dx &= 0 \\[2.0ex]
-\frac{dT}{dx} – \lambda g \sin\theta + f(x) &= 0 \\[2.0ex]
\frac{dT}{dx} &= f(x) – \lambda g \sin\theta
\end{aligned}
$$
ここで、ロープ全体が剛体的に振る舞うため、摩擦力 \(f(x)\) は一様であると仮定し、単位長さあたりの摩擦力を \(f_{\text{単位}}\)(定数)とします。
$$
\begin{aligned}
\frac{dT}{dx} &= f_{\text{単位}} – \lambda g \sin\theta
\end{aligned}
$$
これを積分します。境界条件は、点P(\(x=0\))で張力が \(T_P\) に等しいことです。
$$
\begin{aligned}
T(x) &= (f_{\text{単位}} – \lambda g \sin\theta) x + T_P
\end{aligned}
$$
もう一つの境界条件は、端点 A(\(x=L-a\))で張力が \(0\) になることです(\(T(L-a)=0\))。
$$
\begin{aligned}
0 &= (f_{\text{単位}} – \lambda g \sin\theta)(L-a) + \lambda g a \\[2.0ex]
-(f_{\text{単位}} – \lambda g \sin\theta)(L-a) &= \lambda g a \\[2.0ex]
-f_{\text{単位}}(L-a) + \lambda g (L-a) \sin\theta &= \lambda g a \\[2.0ex]
f_{\text{単位}}(L-a) &= \lambda g (L-a) \sin\theta – \lambda g a
\end{aligned}
$$
ここで、左辺の \(f_{\text{単位}}(L-a)\) は、AP部全体にかかる摩擦力の総和 \(F_{\text{全}}\) です。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{全}} &= \lambda g (L-a) \sin\theta – \lambda g a \\[2.0ex]
&= W_{\text{AP}} \sin\theta – W_{\text{BP}}
\end{aligned}
$$
摩擦力の大きさ \(|F_{\text{全}}|\) は、
$$
\begin{aligned}
|F_{\text{全}}| &= | W_{\text{AP}} \sin\theta – W_{\text{BP}} |
\end{aligned}
$$
これは問(3)の答え(の絶対値の中身の順序が逆ですが同じ意味)と一致します。

使用した物理公式

  • 微分の定義: \(df = \frac{df}{dx} dx\)
  • 不定積分
計算過程

最後に、滑り出さない条件を考えます。
単位長さあたりの最大静止摩擦力は \(\mu (\lambda g \cos\theta)\) なので、AP部全体での最大静止摩擦力 \(F_{\text{最大}}\) は、
$$
\begin{aligned}
F_{\text{最大}} &= \int_0^{L-a} \mu \lambda g \cos\theta \, dx \\[2.0ex]
&= \mu \lambda g (L-a) \cos\theta \\[2.0ex]
&= \mu W_{\text{AP}} \cos\theta
\end{aligned}
$$
条件 \(|F_{\text{全}}| \le F_{\text{最大}}\) より、
$$
\begin{aligned}
| W_{\text{AP}} \sin\theta – W_{\text{BP}} | &\le \mu W_{\text{AP}} \cos\theta
\end{aligned}
$$
これは問(4)で解いた不等式と完全に一致します。

この設問の平易な説明

ロープを細かく刻んで、それぞれの小さな欠片がどう引っ張り合っているかを数式にしました。
鉛直部分では、下に行くほど支える重さが減るので張力が減っていきます。
斜面部分では、重力と摩擦の影響を受けながら張力が変化します。
「端っこでは張力がゼロになる」という当たり前の条件を使うだけで、全ての答えが自然に導き出されました。

結論と吟味

微積分を用いることで、張力がロープ内部でどのように伝わっているかを記述しつつ、最終的にはマクロなつりあいと同じ結果が得られることが確認できました。
これは、物理法則が微視的(ミクロ)な視点でも巨視的(マクロ)な視点でも整合性が取れていることを示しています。

解答 (1)〜(4) メイン解法と同じ

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 連続体のつりあいと部分系の分離
    • 核心: ロープのような連続体も、任意の断面で切断して「部分」を取り出せば、その断面に働く張力を外力として含む質点のつりあい問題に帰着できる。
    • 理解のポイント:
      • 張力の役割: 切断面において、隣り合う部分は互いに同じ大きさの力で引き合っている(作用・反作用)。
      • 境界条件: ロープの端(自由端)では、外部から力が加わっていない限り張力は \(0\) になる。
  • 静止摩擦力の方向と大きさの決定プロセス
    • 核心: 静止摩擦力の向きはあらかじめ決まっておらず、「摩擦がなかったらどちらに動くか(相対運動の方向)」を考えることで初めて決定される。
    • 理解のポイント:
      • 駆動力の比較: 今回の場合、垂れ下がる重力(右向きの駆動力)と斜面成分の重力(左向きの駆動力)の大小関係が、摩擦力の向きを決める決定打となる。
      • 不等式による条件: 「滑らない」という条件は、等式ではなく \(f \le \mu N\) という不等式で表される。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 鎖や紐が机の角から垂れ下がる問題: 斜面が水平面(\(\theta=0\))になっただけの特殊ケースであり、全く同じ解法(全体系のつりあい)が通用する。
    • 滑車を介して連結された2物体の問題: ロープを「質量のある紐」ではなく「2つの物体と質量無視の紐」に置き換えれば、典型的な連結物体の問題と同じ構造になる。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. (系全体の駆動力チェック): 摩擦を無視したとき、系全体を動かそうとする力(駆動力)はどちら向きにどれだけ働いているかを確認する。
    2. (境界条件の確認): ロープや鎖の問題では、「端っこ」がどうなっているか(自由端か、固定端か)を確認し、そこでの張力の値を特定する。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 摩擦力の向きの決めつけ:
    • 誤解: 「斜面上の物体だから摩擦は上向きだろう」と、図の見た目や過去の経験だけで向きを固定してしまう。
    • 対策: 必ず「もし摩擦がなかったらどっちに滑る?」と自問し、駆動力のバランス(\(T\) と \(mg\sin\theta\) の大小)を確認してから向きを矢印で書き込む。
  • 絶対値の処理漏れ:
    • 誤解: \(f = T – mg\sin\theta\) という式だけを立ててしまい、逆向きに滑るケース(\(T < mg\sin\theta\))を見落とす。
    • 対策: 「滑り出す可能性は2方向ある」と常に意識し、力の差を絶対値 \(|A-B|\) で表すか、場合分けを徹底する習慣をつける。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(3)(4)別解1での「全体系のつりあい」:
    • 選定理由: 未知数である張力 \(T\) を消去する手間が省け、摩擦力 \(f\) と既知の重力 \(W\) だけの関係式を直接導けるため、計算ミスが激減する。
    • 適用根拠: AP部とBP部は連結されて一体となって運動しようとするため、系全体を一つの物体とみなして運動方程式(静止ならつりあい)を立てることが物理的に許される。
  • 問(1)〜(4)別解2での「微積分アプローチ」:
    • 選定理由: 「なぜ張力は場所によって変わるのか」「なぜ端で張力がゼロになるのか」という根本的な疑問に対し、ごまかしのない数学的証明を与えるため。
    • 適用根拠: ニュートンの運動法則は、本来微小な要素に対して成立する微分形式で記述されるものであり、これを積分してマクロな法則を導く手順は物理学の王道である。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 導出した式が、極端な状況でも物理的に正しい振る舞いをするか確認する。
    • 実践: 今回なら \(\theta=90^\circ\)(垂直な壁)にしてみる。すると \(\sin90^\circ=1, \cos90^\circ=0\) となり、摩擦がなくなり、\(a\) の範囲が一点に収束するかなどをチェックする。
  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式の次元が、求めたい物理量の次元と一致しているか確認する。
    • 実践: 例えば張力 \(T\) の答えが \(\frac{a}{L} Mg\) なら、\([L]/[L] \times [M][g] = [Force]\) となり、力の単位になっていることを確認する。もし \(L\) が分母になかったら次元がおかしいと気づける。
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問題11 斜面をもつ台にはたらく力のつりあい (山形大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 糸に垂直な方向のつりあい(模範解答の別解)
      • 未知の力 \(T\) を消去できる方向に軸をとることで、計算なしで \(P_1\) を導出するテクニカルな解法です。
    • 設問(2)の別解: 系全体のつりあいを用いた解法
      • 小物体と台を「ひととかたまり(系)」とみなして、内力(\(P_1\))を無視し、外力のみのつりあいを考えます。
    • 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
      • 運動方程式を微分方程式として捉え、積分することで速度や変位を導出する原理的なアプローチを示します。
    • 設問(4)の別解: 重心運動(系全体の運動方程式)を用いた解法
      • 小物体が加速している状態で、系全体の水平方向の運動方程式を立て、内力を介さずに摩擦力を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 座標軸の選択: 状況に応じて最適な座標軸を選ぶことで、計算量を大幅に削減できることを学びます。
    • 系の視点: 複数の物体をまとめて扱うことで、作用・反作用の複雑な連立方程式を回避し、瞬時に答えを導く実戦的な視野を養います。
    • 微積分の視点: 公式暗記ではなく、運動の法則から全ての物理量が導かれる物理学の体系性を理解します。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「束縛された物体の力のつりあいと運動方程式」です。斜面上の物体、台、そして糸が相互作用する系において、静止状態と運動状態のそれぞれで力がどのように釣り合い、あるいは運動を生み出すかを解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 力のベクトル分解とつりあい: 物体が静止しているとき、あらゆる方向の力の成分の和は \(0\) になります。座標軸の選び方が計算の難易度を左右します。
  • 作用・反作用の法則: 物体Aが物体Bに力を及ぼすとき、物体Bは物体Aに「大きさ等しく、逆向きの力」を及ぼします。
  • 運動方程式: 加速度運動する物体では、合力が質量と加速度の積に等しくなります(\(ma=F\))。
  • 系(システム)としての視点: 複数の物体をまとめて一つの系とみなすと、物体間の相互作用(内力)は相殺され、外力のみを考慮すればよくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、静止している小物体と台それぞれについて、力のつりあいの式を立てて連立します。
  • (3)では、糸が切れた後の小物体の運動方程式を立てて加速度を求めます。
  • (4)では、加速する小物体から力を受けている台が、静止し続けるための摩擦力を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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