問題01 斜方投射と相対運動 (24 防衛医大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)(4)の別解: 相対運動の直感的解法(慣性系としての解釈)
- 模範解答は座標の引き算(\(x’ = x – X\))で計算していますが、別解では「等速で動く気球から見ても、力学法則(運動方程式)は同じように成り立つ」というガリレイの相対性原理に基づき、気球から見た初速度と加速度を考えて直感的に解きます。
- 設問(5)の別解: 二次関数の最大値(平方完成)を用いた解法
- 模範解答は速度が \(0\) になる条件から時刻を求めていますが、別解では位置 \(y(t)\) の式を \(t\) について平方完成し、放物線の頂点として最高点を求めます。
- 全設問共通の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの導出)
- 公式を暗記するのではなく、ニュートンの運動方程式から出発し、積分によって位置や速度を導出します。さらに、座標変換を用いて相対運動を体系的に扱います。
- 設問(2)(4)の別解: 相対運動の直感的解法(慣性系としての解釈)
- 上記の別解が有益である理由
- 相対運動の解法: 計算に頼らず、「気球から見ると単なる水平投射(または自由落下)に見える」という物理的直感を養えます。
- 平方完成の解法: 「速度が0」という物理的条件と、「関数の最大値」という数学的条件が等価であることを理解でき、視野が広がります。
- 微積分の解法: どのような複雑な運動でも、原理原則から論理的に解を導き出せる応用力が身につきます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「斜方投射と相対運動」です。動いている気球から物体を投げ出すとき、地上の観測者と気球上の観測者で、物体の運動がどのように異なって見えるかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度の合成: 動いている乗り物から物体を投げるとき、物体の初速度には乗り物の速度が加算されます。
- 等加速度直線運動の公式: 重力のみを受ける物体の運動(放物運動)を記述するために用います。
- 相対位置と相対速度: 観測者Aから見た物体Bの位置(相対位置)は、\(\vec{r}_{\text{AB}} = \vec{r}_{\text{B}} – \vec{r}_{\text{A}}\) で表されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(3)では、地上(静止系)から見た初期条件(位置、初速度)を整理し、等加速度運動の公式を適用します。
- (2)(4)では、気球の位置を時刻 \(t\) の関数として表し、(1)(3)の結果との差をとることで相対位置を求めます。
- (5)では、最高点の条件(鉛直成分の速度が \(0\))を用いて時刻を特定し、その時刻における相対位置を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
地表から見た小物体の水平方向(\(x\)軸方向)の運動を考えます。
空気抵抗は無視できるため、水平方向には力が働きません。したがって、加速度は \(0\) であり、等速直線運動をします。
この設問における重要なポイント
- 慣性の法則: 水平方向には力が働かないため、投げ出された瞬間の水平速度が維持されます。
- 初速度の確認: 問題文より、気球から見て水平に速さ \(v_0\) で投げ出されています。気球自体は鉛直方向にしか動いていないため、地表から見た水平初速度も \(v_0\) です。
具体的な解説と立式
地表から見た小物体の水平方向の運動方程式を立てます。小物体(質量 \(m\))には水平方向の力は働きません。
$$
\begin{aligned}
ma_x &= 0
\end{aligned}
$$
これより加速度は \(a_x = 0\) です。
初速度の \(x\) 成分は \(v_{0x} = v_0\)、初期位置の \(x\) 座標は \(0\) です。
等速直線運動の式より、時刻 \(t\) における位置 \(x(t)\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_{0x} t
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
値を代入します。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_0 t
\end{aligned}
$$
ボールを横に投げたとき、空気の抵抗がなければ、横方向のスピードを邪魔するものはありません。
だから、ボールは投げ出された時のスピード \(v_0\) のまま、ずっと横に進み続けます。\(t\) 秒後には、速さ \(\times\) 時間で \(v_0 t\) だけ進んでいます。
答えは \(v_0 t\) です。時間が経つにつれて比例して距離が伸びるため、等速運動の特徴と一致しており妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
気球に乗っている人から見た小物体の位置、つまり「相対位置」を求めます。
気球は鉛直上向きに上昇しているだけで、水平方向(\(x\)軸方向)には移動しません。
この設問における重要なポイント
- 相対位置の定義: (相手の位置)\(-\)(自分の位置)です。
- 気球の水平位置: 気球は真上に上がっていくだけなので、\(x\) 座標は常に \(0\) です。
具体的な解説と立式
地表から見た気球の水平位置を \(X(t)\) とします。気球は鉛直方向にのみ動くので、常に原点の真上にいます。
$$
\begin{aligned}
X(t) &= 0
\end{aligned}
$$
気球から見た小物体の相対位置の \(x\) 成分 \(x'(t)\) は、小物体の位置 \(x(t)\) から気球の位置 \(X(t)\) を引いたものです。
$$
\begin{aligned}
x'(t) &= x(t) – X(t)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 相対位置: \(x’ = x – X\)
(1)の結果 \(x(t) = v_0 t\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x'(t) &= v_0 t – 0 \\[2.0ex]
&= v_0 t
\end{aligned}
$$
気球に乗っている人は、横方向には動いていません。
だから、気球から見ても、ボールは自分が投げたスピード \(v_0\) で遠ざかっていくように見えます。地表から見たときと全く同じ動きに見えるわけです。
答えは \(v_0 t\) です。(1)と同じ結果になりました。観測者が横方向に動いていないので、横方向の見え方が変わらないのは当然であり、妥当です。
思考の道筋とポイント
気球に乗っている人を基準(観測者)として、直接運動を考えます。
気球は等速で動いているため「慣性系」です。慣性系同士では、運動方程式の形は変わりません。
この設問における重要なポイント
- 慣性系: 等速直線運動をしている観測者から見ても、ニュートンの運動方程式はそのまま成り立ちます。
- 相対初速度: 気球から見て水平に投げたので、気球に対する初速度は \(v_0\) です。
具体的な解説と立式
気球から見た小物体について考えます。
- 初速度: 気球に乗っている人が手から水平に速さ \(v_0\) で投げたので、気球から見た初速度の \(x\) 成分は \(v_0\) です。
- 加速度: 水平方向に力は働かないので、加速度は \(0\) です。
したがって、気球から見ても小物体は速さ \(v_0\) の等速直線運動をします。
$$
\begin{aligned}
x'(t) &= v_0 t
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
立式そのものが答えとなっているため、追加の計算はありません。
$$
\begin{aligned}
x'(t) &= v_0 t
\end{aligned}
$$
気球に乗っている人にとっては、自分が止まっていて、ボールが \(v_0\) で飛んでいくように見えます。横方向には力が働かないので、そのまま真っ直ぐ進んでいきます。
計算なしで直感的に同じ答えが導けました。
問(3)
思考の道筋とポイント
地表から見た小物体の鉛直方向(\(y\)軸方向)の運動を考えます。
小物体には重力が下向きに働きます。また、投げ出される前の小物体は気球と一緒に上昇していたため、気球の上昇速度 \(V_0\) を初速度として持っています。
この設問における重要なポイント
- 速度の合成(慣性の法則): 電車の中でジャンプすると電車と同じ速度で動くように、気球から離れた瞬間の小物体は、気球の速度 \(V_0\) を引き継いでいます。
- 初期位置: \(t=0\) で高さ \(h\) の位置からスタートします。
具体的な解説と立式
地表から見た小物体の鉛直方向の運動方程式を立てます。鉛直上向きを正とします。
$$
\begin{aligned}
ma_y &= -mg
\end{aligned}
$$
これより加速度は \(a_y = -g\) です。
初速度の \(y\) 成分は、気球の速度と同じなので \(v_{0y} = V_0\) です。
初期位置は \(y_0 = h\) です。
等加速度直線運動の公式より、時刻 \(t\) における位置 \(y(t)\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= y_0 + v_{0y} t + \frac{1}{2} a_y t^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位: \(y = y_0 + v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
値を代入します。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= h + V_0 t + \frac{1}{2} (-g) t^2 \\[2.0ex]
&= h + V_0 t – \frac{1}{2} g t^2
\end{aligned}
$$
ボールは高さ \(h\) のところからスタートします。
気球に乗っていたので、ボールも最初から上向きの勢い \(V_0\) を持っています。
しかし、重力によって下向きに引っ張られるので、だんだん上昇スピードが落ちていき、やがて落ちてきます。これは「鉛直投げ上げ」の運動と同じです。
答えは \(h + V_0 t – \frac{1}{2} g t^2\) です。
\(t=0\) で \(y=h\) となり、初速度 \(V_0\) の項と重力加速度 \(-g\) の項が含まれているため、物理的に正しい式です。
問(4)
思考の道筋とポイント
気球に乗っている人から見た小物体の鉛直位置(相対位置)を求めます。
気球自身も動いていることに注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 気球の運動: 気球は一定の速さ \(V_0\) で上昇し続けています。
- 相対位置の計算: 地表から見た小物体の位置 \(y(t)\) から、地表から見た気球の位置 \(Y(t)\) を引きます。
具体的な解説と立式
地表から見た気球の運動は、初速度 \(V_0\)、加速度 \(0\) の等速直線運動です。初期位置は \(h\) です。
時刻 \(t\) における気球の位置 \(Y(t)\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
Y(t) &= h + V_0 t
\end{aligned}
$$
気球から見た小物体の相対位置 \(y'(t)\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= y(t) – Y(t)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速直線運動: \(x = x_0 + vt\)
- 相対位置: \(y’ = y – Y\)
(3)の結果と気球の位置の式を代入します。
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= \left( h + V_0 t – \frac{1}{2} g t^2 \right) – (h + V_0 t) \\[2.0ex]
&= h + V_0 t – \frac{1}{2} g t^2 – h – V_0 t \\[2.0ex]
&= – \frac{1}{2} g t^2
\end{aligned}
$$
気球もボールも、最初は同じ上向きのスピード \(V_0\) を持っています。
だから、お互いの上向きの動きは打ち消し合います(相対速度 \(0\))。
違いは「重力の影響を受けるかどうか」だけです。ボールだけが重力で下に落ちていくので、気球から見ると、ボールは初速度 \(0\) で手からポロッと落ちていく(自由落下する)ように見えます。
答えは \(- \frac{1}{2} g t^2\) です。
これは初速度 \(0\) の自由落下の式と同じ形です。気球から見ると、自分と同じ速度で投げ上げられた物体は、単に落下していくように見えるという直感と一致します。
思考の道筋とポイント
気球系(慣性系)での運動を直接考えます。
この設問における重要なポイント
- 相対初速度: 気球から見て水平に投げたので、鉛直方向の初速度成分は \(0\) です。
- 相対加速度: 気球は等速運動(加速度 \(0\))なので、気球から見ても小物体には重力加速度 \(-g\) だけが働いているように見えます。
具体的な解説と立式
気球から見た小物体について:
- 初速度: 気球に乗っている人が「水平に」投げたので、気球から見た初速度の鉛直成分は \(0\) です。
- 加速度: 気球は等速運動(加速度 \(0\))なので、気球から見ても小物体には重力加速度 \(-g\) だけが働いているように見えます(慣性力は働きません)。
したがって、気球から見た鉛直運動は「自由落下」となります。初期位置を原点 \(O’\)(\(y’=0\))とすると:
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= 0 \cdot t + \frac{1}{2}(-g)t^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 自由落下の変位: \(y = \frac{1}{2}gt^2\)
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= -\frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$
気球に乗っている人にとっては、ボールをそっと手放したのと同じです。重力だけが働くので、ボールは下に落ちていきます。
計算の手間なく、直感的に同じ結果が得られました。
問(5)
思考の道筋とポイント
「地上から見て最高点」という条件を数式にします。
最高点では、一瞬だけ上昇が止まるため、鉛直方向の速度成分が \(0\) になります。
その時刻を求め、それを(4)で求めた相対位置 \(y'(t)\) の式に代入します。
この設問における重要なポイント
- 最高点の条件: 地表から見た鉛直速度 \(v_y(t) = 0\) です。
- 求めるもの: その瞬間の「気球から見た位置 \(y’_{\text{M}}\)」です。地表から見た高さではないことに注意しましょう。
具体的な解説と立式
地表から見た小物体の鉛直速度 \(v_y(t)\) は、初速度 \(V_0\) と加速度 \(-g\) より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= V_0 – gt
\end{aligned}
$$
最高点ではこの速度が \(0\) になるので、その時刻を \(t_{\text{M}}\) とすると、
$$
\begin{aligned}
0 &= V_0 – g t_{\text{M}}
\end{aligned}
$$
この時刻 \(t_{\text{M}}\) における気球から見た位置 \(y’_{\text{M}}\) は、(4)の式 \(y'(t) = -\frac{1}{2}gt^2\) に \(t_{\text{M}}\) を代入して求めます。
$$
\begin{aligned}
y’_{\text{M}} &= y'(t_{\text{M}}) \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{2} g t_{\text{M}}^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度: \(v = v_0 + at\)
まず、時刻 \(t_{\text{M}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
g t_{\text{M}} &= V_0 \\[2.0ex]
t_{\text{M}} &= \frac{V_0}{g}
\end{aligned}
$$
これを \(y’_{\text{M}}\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
y’_{\text{M}} &= -\frac{1}{2} g \left( \frac{V_0}{g} \right)^2 \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{2} g \cdot \frac{V_0^2}{g^2} \\[2.0ex]
&= -\frac{V_0^2}{2g}
\end{aligned}
$$
まず、ボールが一番高いところに達する時間を計算します。上向きのスピード \(V_0\) が重力 \(g\) で削られてゼロになるまでの時間なので、\(V_0 \div g\) 秒後です。
その時間の分だけ、気球から見るとボールは「自由落下」しています。
落下距離の公式に時間を当てはめて計算すれば、気球から見てどれくらい下にいるかが分かります。
答えは \(-\frac{V_0^2}{2g}\) です。
マイナスの値なので、気球よりも下にあることを意味します。ボールは重力で減速しますが、気球は等速で上がり続けるので、ボールが最高点にいるときには気球の方がずっと上にいるはずです。この直感と符号は一致しています。
思考の道筋とポイント
「最高点」とは、地表から見た高さ \(y(t)\) が最大になる点のことです。
\(y(t)\) は \(t\) の二次関数なので、平方完成を行うことで、速度の式を使わずに最大値をとる時刻とその条件を導き出せます。
この設問における重要なポイント
- 最大値の数学的意味: 二次関数の頂点が最大値(または最小値)に対応します。
- 物理との対応: 頂点の時刻は、速度が \(0\) になる時刻と一致します。
具体的な解説と立式
(3)で求めた \(y(t)\) の式を変形します。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= -\frac{1}{2} g t^2 + V_0 t + h
\end{aligned}
$$
これを \(t\) について平方完成します。
使用した物理公式
- 特になし(数学的変形のみ)
$$
\begin{aligned}
y(t) &= -\frac{g}{2} \left( t^2 – \frac{2V_0}{g} t \right) + h \\[2.0ex]
&= -\frac{g}{2} \left\{ \left( t – \frac{V_0}{g} \right)^2 – \left( \frac{V_0}{g} \right)^2 \right\} + h \\[2.0ex]
&= -\frac{g}{2} \left( t – \frac{V_0}{g} \right)^2 + \frac{V_0^2}{2g} + h
\end{aligned}
$$
この式は、\(t = \frac{V_0}{g}\) のとき、\(y(t)\) が最大値をとることを示しています。
このときの時刻 \(t_{\text{M}} = \frac{V_0}{g}\) を、(4)の \(y'(t)\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
y’_{\text{M}} &= -\frac{1}{2} g \left( \frac{V_0}{g} \right)^2 \\[2.0ex]
&= -\frac{V_0^2}{2g}
\end{aligned}
$$
ボールの高さの変化をグラフに描くと、山なりの放物線になります。
この放物線のてっぺん(頂点)が、ボールが一番高くなる瞬間です。
数式を変形して頂点の場所を見つけると、速度の計算をしなくても、いつ一番高くなるかが分かります。
速度 \(v=0\) の条件を使わなくても、数学的な最大値の計算から全く同じ結果が得られました。
思考の道筋とポイント
公式を個別に適用するのではなく、運動方程式から出発して、積分によって位置を求め、座標変換によって相対位置を導く一貫した流れで全設問を解きます。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: 全ての力学現象の出発点です。
- 初期条件: 積分定数を決定するために不可欠です。
- ガリレイ変換: 座標系間の変換ルールです。
具体的な解説と立式
1. 地表系での運動方程式
地表から見た小物体(質量 \(m\))の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
ma_x &= 0 \quad \cdots ① \\[2.0ex]
ma_y &= -mg \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
初期条件(\(t=0\))は以下の通りです。
- 位置: \((x, y) = (0, h)\)
- 速度: \((v_x, v_y) = (v_0, V_0)\)
2. 積分による位置の導出(問1, 問3)
①式より \(a_x = 0\) なので、速度 \(v_x\) は定数です。
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= v_0
\end{aligned}
$$
これを積分して位置 \(x(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= \int v_0 \, dt \\[2.0ex]
&= v_0 t + C_1
\end{aligned}
$$
\(x(0)=0\) より \(C_1=0\)。よって、
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_0 t
\end{aligned}
$$
(問1の答え)
②式より \(a_y = -g\) なので、これを積分して速度 \(v_y\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= \int (-g) \, dt \\[2.0ex]
&= -gt + C_2
\end{aligned}
$$
\(v_y(0)=V_0\) より \(C_2=V_0\)。よって \(v_y(t) = V_0 – gt\)。
さらに積分して位置 \(y(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \int (V_0 – gt) \, dt \\[2.0ex]
&= V_0 t – \frac{1}{2}gt^2 + C_3
\end{aligned}
$$
\(y(0)=h\) より \(C_3=h\)。よって、
$$
\begin{aligned}
y(t) &= h + V_0 t – \frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$
(問3の答え)
3. 座標変換による相対位置の導出(問2, 問4)
気球の位置 \((X(t), Y(t))\) は、等速直線運動(\(a=0\), 初速度 \((0, V_0)\), 初期位置 \((0, h)\))より、同様の積分操作で以下のように求まります。
$$
\begin{aligned}
X(t) &= 0 \\[2.0ex]
Y(t) &= h + V_0 t
\end{aligned}
$$
気球系(\(O’\))への座標変換(ガリレイ変換)を行います。
$$
\begin{aligned}
x'(t) &= x(t) – X(t) \\[2.0ex]
&= v_0 t – 0 \\[2.0ex]
&= v_0 t
\end{aligned}
$$
(問2の答え)
$$
\begin{aligned}
y'(t) &= y(t) – Y(t) \\[2.0ex]
&= \left( h + V_0 t – \frac{1}{2}gt^2 \right) – (h + V_0 t) \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$
(問4の答え)
4. 最高点での相対位置(問5)
最高点では \(v_y(t) = 0\) となります。先ほど導出した速度式より、
$$
\begin{aligned}
V_0 – gt &= 0
\end{aligned}
$$
これを解いて時刻を求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{V_0}{g}
\end{aligned}
$$
これを \(y'(t)\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
y’\left( \frac{V_0}{g} \right) &= -\frac{1}{2}g \left( \frac{V_0}{g} \right)^2 \\[2.0ex]
&= -\frac{V_0^2}{2g}
\end{aligned}
$$
(問5の答え)
使用した物理公式
- 運動方程式: \(F=ma\)
- 微分の定義: \(v = \frac{dx}{dt}, a = \frac{dv}{dt}\)
(上記の「具体的な解説と立式」内で計算過程も示しています)
「力」から「加速度」が決まり、「加速度」を積み重ねて「速度」になり、「速度」を積み重ねて「位置」になる。
この物理の基本ルール(運動方程式と積分)に従うだけで、全ての答えが自動的に出てきます。
運動方程式という一つの原理から出発し、積分操作と座標変換を行うだけで、全ての設問の答えが体系的に導かれました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 相対運動と慣性系
- 核心: 等速直線運動をしている観測者(慣性系)から見ても、ニュートンの運動方程式はそのままの形で成立します。
- 理解のポイント:
- 気球は等速で動いているため、気球の中で実験をしても、静止している地上と同じ物理法則が成り立ちます。
- ただし、初期条件(初速度)や働く力(見かけの力が必要かどうか)の見極めが重要です。今回は慣性系なので慣性力は不要ですが、初速度の相対成分(水平成分のみ)と重力加速度を正しくセットすれば、単純な「水平投射」として扱えます。
- 速度の合成則(ガリレイ変換)
- 核心: 動いている物体からさらに物体を放出する場合、放出された物体の速度は「乗り物の速度」と「放出速度」のベクトル和になります。
- 理解のポイント:
- 「気球から見て水平に投げた」という言葉は、気球の鉛直速度 \(V_0\) を物体も持っていることを意味します。これを忘れると、(3)の初期条件を間違えてしまいます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 電車内の投げ上げ: 等速で走る電車の中でボールを真上に投げると、電車内の人には「真上に上がって落ちてくる」ように見え、外の人には「放物運動」に見えます。本問の気球(鉛直)を電車(水平)に置き換えただけの構造です。
- エレベーター内の運動: エレベーターが「等速」なら本問と同じですが、「加速」している場合は慣性力(\(ma = F – ma_{\text{ele}}\))を考慮する必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- 観測者の動きを確認する: 観測者が「静止」しているか、「等速」か、「加速」しているかを見極めます。等速なら相対速度の引き算だけでOK、加速なら慣性力を考えます。
- 初期条件をベクトルで分解する: 「気球の速度 \(\vec{V}\)」と「投げ出す速度 \(\vec{v}\)」を \(x, y\) 成分に分け、合成速度を正確に求めます。特に \(y\) 成分の足し忘れに注意。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 相対位置の符号ミス:
- 誤解: 「最高点だから気球より上にあるはず」と思い込み、(5)の答えのマイナス符号を消してしまう。
- 対策: 気球は常に上昇し続けていることをイメージしましょう。ボールは途中で止まって落ちてくるので、必ず気球の下になります。計算結果の符号を信じつつ、物理的状況(どっちが上にいるか)を絵に描いて確認します。
- 初速度の取り違え:
- 誤解: (3)で地表から見た運動を考える際、初速度を \(0\) や \(v_0\)(水平成分のみ)としてしまう。
- 対策: 「投げ出す前、ボールは気球と一緒に動いていた」ことを思い出してください。気球の速度 \(V_0\) がそのままボールの初速度の鉛直成分になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)(4)での解法選択(定義式 vs 直感的解法):
- 選定理由: 模範解答の「定義式(\(x’ = x – X\))」は、どんな複雑な動きでも通用する確実な方法です。一方、別解の「直感的解法(気球から見た運動)」は、計算量が少なくミスが減るため、検算やスピード重視の場面で有効です。
- 適用根拠: 気球が等速運動(慣性系)であるため、気球から見た運動も単純な等加速度運動(水平投射・自由落下)になることが保証されています。
- 問(5)での解法選択(速度条件 vs 平方完成):
- 選定理由: 通常は「最高点 \(\rightarrow v=0\)」が物理的に自然な発想です。しかし、時間の情報が不要で最大高さだけ知りたい場合や、二次関数のグラフをイメージしたい場合は、平方完成の方が全体像(軌道)を把握しやすくなります。
- 適用根拠: 物理的な「最高点」は数学的な「関数の最大値」と等価であるため、どちらのアプローチも正当です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 添字(インデックス)の活用:
- 意識: \(x\) と \(X\)、\(y\) と \(Y\) など、似た文字が混在するときはミスが起きやすいです。
- 実践: 小物体を \(x_{\text{m}}\)、気球を \(x_{\text{b}}\) (balloon) のように、自分なりに分かりやすい添字を付けて区別しましょう。
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 答えの式が物理的にあり得る形か確認します。
- 実践: 例えば (5) の \(-\frac{V_0^2}{2g}\) なら、\([L/T]^2 / [L/T^2] = [L]\) となり、長さの単位になっています。もし \(g\) が分子にあったら単位がおかしいと気づけます。
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問題02 速度の合成 (21 東京都立大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 全設問共通の別解: ベクトルと座標を用いた体系的解法
- 模範解答は、速度の合成を作図やスカラー計算(三平方の定理など)で処理していますが、別解では「位置ベクトル」と「速度ベクトル」を座標成分で定義し、時間積分によって位置を求める統一的なアプローチをとります。
- 特に設問(4)のような複雑な経路において、幾何学的なパズルを解くのではなく、機械的な計算で解を導ける利点があります。
- 全設問共通の別解: ベクトルと座標を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 汎用性: 状況が複雑になっても(例:流速が場所によって変わるなど)、運動方程式や速度の定義に戻ることで迷わず立式できます。
- 幾何学的直感の補完: 図形的な考察が苦手な場合でも、数式処理のみで正解に到達できる力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「速度の合成と分解」です。流れる川の上を進む船の運動を通して、ガリレイ変換(相対速度の考え方)の基礎を理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度の合成則: 静水上の速度を \(\vec{v}_{\text{S}}\)、川の流れの速度を \(\vec{v}\) とすると、岸から見た船の速度(合成速度)\(\vec{V}\) は \(\vec{V} = \vec{v}_{\text{S}} + \vec{v}\) となります。
- ベクトルの分解: 斜め方向に進む運動は、流れに平行な成分(\(x\) 成分)と垂直な成分(\(y\) 成分)に分解して考えます。
- 等速直線運動: 加速度がないため、変位は「速度 \(\times\) 時間」で求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、流れに平行な運動なので、単純な速さの足し算・引き算で合成速度を求めます。
- (2)では、流れに垂直に進むためのベクトル図を描き、三平方の定理を用いて合成速度の大きさを求めます。
- (3)では、(1)(2)の結果を比較します。
- (4)では、速度ベクトルを成分分解し、\(y\) 方向(川幅方向)と \(x\) 方向(流れ方向)の運動を連立させて時間を求めます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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