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講義ノート(板書PDF)
「力の図示→運動方程式→解く」を根本から組み直すドクター型講義
講義ノート
【今回のポイント】
- 加速度とは「\(1\) 秒ごとに速度がどれくらい変化するか」を表す量
- 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)、単位は \(\text{m}/\text{s}^2\)
- 加速度にも向きがある。減速するときは加速度がマイナスになる
- 等加速度運動の3公式(位置・速度・便利公式)を使いこなすことが力学の基本
- \(v\text{-}t\) グラフの面積=移動距離、傾き=加速度
【講義解説】
加速度とは
加速度とは、「\(1\) 秒ごとに物体の速度がどれくらい変化するか」を表す量である。測っているのは速度そのものではなく、速度の変わり方である。
ここで最初の診断をしておきたい。「速い」と「加速している」を同じ意味で使っていないだろうか。時速300キロで走る新幹線でも、速さが変わっていなければ加速度はゼロである。速さの大きさと、速さの変わり方は別の量である——この2つを切り分けられるかどうかが、この講の最初の関門になる。
たとえば、毎秒ごとに秒速 \(1\,\text{m}/\text{s}\)、\(2\,\text{m}/\text{s}\)、\(3\,\text{m}/\text{s}\) と速くなっていく物体は、\(1\) 秒ごとに速度が \(1\,\text{m}/\text{s}\) ずつ増えているので、加速度は \(1\) である。
図: \(1\) 秒たつごとに速度の矢印が同じ長さずつ伸びていく。この「伸び方」が加速度
この図で見てほしいのは、並んでいる数字の大きさではない。となり合う数字の「差」がどれも同じという一点である。差がそろっていることを読み取れたなら、加速度という量を自分の目で見つけたことになる。
毎月きっちり同じ額だけ増えていく貯金を思い浮かべてほしい。
残高にあたるのが速度で、毎月の積み増し額にあたるのが加速度である。残高が大きいことと、毎月たくさん積み増していることは、まったく別の話である。残高100万円でも積み増しが0円なら「増えていない」し、残高1万円でも毎月1万円ずつ積み増していれば「勢いよく増えている」。
物体の運動もこれと同じで、速さの大きさを見ている限り加速度は見えてこない。見るのは1秒ごとの伸びしろのほうである。
図: 速さそのものではなく、1秒ごとの「伸びしろ」がそろっていることを見る
症状:「速さが大きい=加速度が大きい」と反射的に答えてしまう。
診断:速度と加速度を同じ引き出しに入れている状態。速度は「いまどれくらいの速さか」、加速度は「その速さが1秒でどれだけ変わるか」で、答えている質問が違う。
処方箋:加速度を聞かれたら、値をひとつだけ見るのをやめて2つの時刻の速度を並べて引き算する。引き算をしていない限り、それは加速度を求めたことにならない。
経過観察:この記事の演習を解くとき、答えが合ったかどうかではなく引き算から始めたかを自分で点検してほしい。
これを式で表すと次のようになる。
$$
\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
\(a\) は加速度、\(\Delta v\) は速度の変化、\(\Delta t\) は時間である。記号 \(\Delta\)(デルタ)は「変化した分」を表すので、\(\Delta v\) は速度そのものではなく、速度の増減の量を指している。
つまりこの式は、覚えるべき決まりごとではない。「変わった分を、かかった時間で割る」という日常の割り算を、そのまま記号に置き換えただけである。時速の計算で「進んだ距離÷かかった時間」をしたのと、割り算の形は同じである。
単位については、速度の単位 \(\text{m}/\text{s}\) を時間の単位 \(\text{s}\) で割るので、\(\text{m}/\text{s}^2\)(メートル毎秒毎秒)となる。単位の形そのものが「1秒あたり、速度が何 \(\text{m}/\text{s}\) 変わるか」と読めるので、意味を忘れたら単位に戻ればよい。
加速度 \(1.5\,\text{m}/\text{s}^2\) の物体が、静止から動き出したとする。速度は次のように変わっていく。
\(t = 1\,\text{s}\) で \(1.5\,\text{m}/\text{s}\)、\(t = 2\,\text{s}\) で \(3.0\,\text{m}/\text{s}\)、\(t = 3\,\text{s}\) で \(4.5\,\text{m}/\text{s}\)。
たしかに \(1\) 秒ごとに \(1.5\,\text{m}/\text{s}\) ずつ増えている。定義の式で確かめると次のようになる。
$$
\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{4.5 – 1.5}{3 – 1} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{3.0}{2.0} \\[2.0ex]
&= 1.5\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
どの2点を選んでも同じ値が出る——これが「加速度が一定」ということの正体である。もし選ぶ2点によって答えが変わるなら、それは加速度が一定でない運動である。
🩺 要点整理
加速度は「速いか遅いか」を表す量ではない。押さえるのは次の2つである。
単位が \(\text{m}/\text{s}^2\) になるのも、この割り算からそのまま出てくる。\(\text{m}/\text{s}\) をもう一度 \(\text{s}\) で割るから「メートル毎秒毎秒」なのである。単位を覚えるのではなく、式から読み取る——この順番が身につくと、加速度の意味を忘れなくなる。
🔗 関連単元
\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\) という形には見覚えがあるはずである。第1限(1限目:速度と位置の表し方)で扱った速度の定義 \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) と、まったく同じ作りをしている。「変化した量 ÷ かかった時間」で \(1\) 秒あたりの変わり方を出す——位置に対してそれをやると速度、速度に対してやると加速度になる。新しい式が1つ増えたのではなく、同じ道具を1段上に当てただけである。
🧠 見ずに思い出そう
ノートを閉じたまま、次の2つに答えてみよう。
① 加速度は、何を何で割った量か
② 単位が \(\text{m}/\text{s}^2\) になるのはなぜか
①で詰まったなら、この節の定義まで戻ればよい。②で詰まったほうが重いサインで、単位を式と切り離して丸ごと覚えているという診断になる。②は①さえ言えれば自動的に出てくるので、戻る先は単位の暗記ではなく①の式である。
加速度にも向きがある
「加速度」という名前からもわかるように、加速度にも速度と同じく向きがある。向きを持つ量なので、符号を落とした瞬間に情報が半分消えると考えてほしい。
スピードが増えていく(加速する)場合は加速度がプラス、スピードが減っていく(減速する)場合は加速度がマイナスになる。
図: 東向きに進む物体がマイナスの加速度を受け続けると、\(+10 \to +5 \to 0 \to -5\) と変化し、いったん止まってから西向きに動き出す
たとえば東向きに動いている物体が減速する場合、西向き(マイナス方向)の加速度がかかっていると考える。
ここで押さえておきたいのは、マイナスは「遅くなること」を意味する記号ではなく、「向き」を意味する記号だという点である。物体が西向きに動いていて、さらに西向きに速くなっていくときも、加速度は西向き=マイナスになる。マイナスを「減速」と訳して覚えてしまうと、この場面で必ず取り違える。
自転車に乗っていてブレーキをかけると減速して止まるが、物理での減速はそれだけでは終わらない。「向かい風が吹いていて、押し戻されて逆向きに進み始める」ようなイメージを持つとよい。
東へ走る車に、ずっと西向きの手を添えて押し戻していると考えてほしい。
はじめは東向きの速さが勝っているので、車は東へ進みながらだんだん遅くなる。速さが \(0\) になっても手は押し続けているので、次の瞬間には西向きに動き出す。
手の向きは最初から最後まで一度も変わっていないのに、車の動きは「東へ減速」から「西へ加速」へ移り変わる。加速度の符号が表しているのはこの手の向きであって、速くなるか遅くなるかではない。
図: 速度の矢印は短くなっていくが、加速度の矢印は向きも長さも変わらない
🩺 要点整理
加速度の符号(プラス・マイナス)が表しているのは、速さの大小ではなく向きである。
ここで大事なのは、「減速」と「マイナスの加速度」は同じ言葉ではないということ。東向きに進む物体がマイナスの加速度を受け続ければ、速度は減り、いったん \(0\) になり、そのあと西向きに進み出す。減速はその途中の一場面にすぎない。
よくあるつまずき
症状:「加速度がマイナス」と書いてあるのを見て、その物体は負の向きへ動いていると決めつけてしまう。
診断:向きの情報を1つの符号にまとめてしまっている状態。向きは速度と加速度で別々に2つあり、両者の符号は食い違ってよい。
処方箋:問題を読んだら「いまどちら向きに動いているか(速度の符号)」と「どちら向きに変化しているか(加速度の符号)」を分けて書き出す。上の図でいえば、東向きに進んでいる間も加速度はずっとマイナスのままである。符号を2つ持つだけで、減速の問題は取り違えなくなる。
🧠 見ずに思い出そう
ノートを閉じて、次の2つに答えてみよう。
① 東へ進んでいる車の加速度がマイナスのとき、この車はこれからどうなるか
② 加速度のマイナスは「遅い」を表しているのか、それとも別のことを表しているのか
①だけ言えたなら、減速という1つの場面を覚えているだけかもしれない。②が言えて初めて、速度と加速度の符号の組み合わせを4通りとも読み解ける。①で詰まったならすぐ上の図(西向きの手)へ、②で詰まったならその下のつまずき枠へ戻ってほしい。戻る場所が①と②で違う。
等加速度運動と3つの公式
坂の上からボールを転がすと、どんどん加速しながら転がっていく。逆に、下から上に転がしたボールは、どんどん減速していく。このように「加速度が一定」の運動を等加速度運動と呼ぶ。
「一定」というのは、どの1秒を切り取っても速度の増え方が同じという意味である。だからこそ、途中の細かい様子を追わなくても、最初の状態と経過時間だけで先の状態を言い当てられる。この見通しのよさが、次に出てくる3つの式の土台になっている。
等加速度運動には3つの重要な公式がある。
① 位置の公式
$$
\begin{aligned}
x &= x_0 + v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
② 速度の公式
$$
\begin{aligned}
v &= v_0 + a t \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
③ 便利公式
$$
\begin{aligned}
v^2 – v_0^2 &= 2a(x – x_0) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
記号の意味は以下の通りである。
- \(x\): 位置、\(x_0\): 初期位置(最初の位置)
- \(v\): 速度、\(v_0\): 初速度(最初の速度)
- \(a\): 加速度、\(t\): 時間
\(x_0\) や \(v_0\) の右下の「\(0\)」は「最初の」という意味である。
3つを前にすると「どれを使えばいいのか」と手が止まりやすい。ここは問題文に何が書いてあるかで決まるので、選び方を言葉にしておこう。時刻を聞かれている・時刻が与えられているなら②か①、位置を聞かれているなら①、そして時間の情報がどこにも出てこないなら③である。
③の「便利公式」は、①と②の式を連立させて時間 \(t\) を消去したものである。問題に時間の情報がないときに使うと計算が早くなるため「便利公式」と呼んでいる。
つまり③は新しい法則ではない。①と②が持っていた情報を、時間という通り道を経由せずに結び直したものである。だから③だけを別枠で覚える必要はなく、「時間を聞かれてもいないのに、わざわざ時間を求めにいっていないか」と自分に問えばよい。
知りたい場所へ行くのに、乗り換え駅を1つはさむ道と、はさまない直通の道がある——3つの公式の関係はこれに近い。
①と②は、どちらも時間 \(t\) という駅を必ず通る。だから時刻が分かっていれば、そのまま乗っていける。
ところが問題によっては、時刻がどこにも書かれていない。そのとき①と②で行こうとすると、まず時間を求めるという乗り換えが1回増える。③はその乗り換えを省いた直通ルートである。
図: 時間という駅を通るか通らないかで、使う式が分かれる
症状:3つの式を上から順に試し、数字が入りそうなものを当てずっぽうで選んでしまう。
診断:式を手順として覚え、質問に対する答えとして持っていない状態。これは「解ける問題は解けるが、初見だと固まる」という思考のクセの典型である。
処方箋:代入を始める前に、与えられた量と聞かれている量を書き出す。そこに時間が出てこなければ③、時刻が絡むなら②か①——この一手間で、当てずっぽうは消える。
経過観察:解き終えたあと「なぜその式だったのか」を一文で言えるか確かめてほしい。言えるなら、それが考えて解ける物理に切り替わった合図である。
③の便利公式が「①②の言い換え」にすぎないことを、数字で確かめておこう。初速 \(20\,\text{m}/\text{s}\) の車が \(a = -2.5\,\text{m}/\text{s}^2\) でブレーキをかけ、止まるまでに進む距離を求める。
まず③で解く。ブレーキをかけ始めた地点を原点にとって \(x_0 = 0\) とし、止まるとは \(v = 0\) になることである。
$$
\begin{aligned}
0^2 – 20^2 &= 2 \times (-2.5) \times x \\[2.0ex]
-400 &= -5.0\,x \\[2.0ex]
x &= 80\,\text{m}
\end{aligned}
$$
次に①②でも解いてみる。②から止まるまでの時間は \(t = 8.0\,\text{s}\) と分かる。これを①へ入れる。
$$
\begin{aligned}
x &= 20 \times 8.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-2.5) \times 8.0^2 \\[2.0ex]
&= 160 – 80 \\[2.0ex]
&= 80\,\text{m}
\end{aligned}
$$
どちらも同じ \(80\,\text{m}\) になった。③は新しい事実ではなく、時間を求める一手間を省いた近道にすぎない。だから③を忘れてもその場で作り直せるし、時間が絡む問題でわざわざ③へ回る理由もない。
🩺 要点整理
3つの公式は、別々の3つの道具ではない。もとは①②の2本で、③はそこから作られたものである。
だから選び方は「その問題に時間が関わっているか」で決まる。時間が与えられている・時間を聞かれているなら①②、時間の話がどこにも出てこないなら③——この一言があれば、3つを別々に覚え直す必要はない。
よくあるつまずき
症状:問題を見るたびに3つの公式を全部書き出し、片っ端から数値を代入して合いそうなものを探してしまう。
診断:公式を式の形で覚えていて、どの量とどの量を結ぶ式かで覚えていない状態。結ぶものが分からないから選べず、総当たりになる。
処方箋:代入する前に、問題文から「与えられている量」と「聞かれている量」を書き出す。そこに時間 \(t\) が1つも出てこないなら③、出てくるなら①か②である。公式を選ぶ作業は、計算を始める前に終わっているのが正しい姿である。
🧠 見ずに思い出そう
ノートを閉じて、次の2つに答えてみよう。
① ③の「便利公式」は、どうやって作られた式か
② 時間の情報がまったく無い問題では、どの公式を選ぶか
②だけ言えたなら、使い分けを手順として覚えているだけかもしれない。①が言えて初めて、③を忘れてもその場で作り直せる。①で詰まったなら①②から \(t\) を消す計算へ、②で詰まったならすぐ上の要点整理へ戻ってほしい。戻る場所が①と②で違う。
\(v\text{-}t\) グラフから位置の公式を導く
なぜ位置の公式 \(\cdots ①\) が成り立つのか、\(v\text{-}t\) グラフを使って考えてみよう。
ここで「なぜ成り立つのか」を一度でも自分の手でたどっておくと、式を忘れても図から作り直せるようになる。逆に、たどらないまま使い続けると、記号がひとつ変わっただけで手が止まる。
\(v\text{-}t\) グラフの面積は移動距離を表し、傾きは加速度を表す。初速度 \(v_0\) から始まり、傾き \(a\) で右上がりに直線が伸びるグラフを考える。時間 \(t\) が経過したときの速度は \(v_0 + at\) である。
図: グラフの下側は長方形 \(v_0 t\)、上側は三角形 \(\displaystyle\frac{1}{2}at^2\)。面積が移動距離、傾きが加速度にあたる
グラフの下の面積を長方形と三角形に分けて計算する。
分けるのは、速さが一定の分と、増えていった分を切り離すためである。前の講で使った「速さ×時間」は速さが変わらないときの計算だった。速さが変わる今回は、変わらない部分(長方形)と増えた部分(三角形)に分ければ、どちらも面積として読める。
長方形の面積(下側):
$$
\begin{aligned}
S_{\text{長方形}} &= v_0 \times t \\[2.0ex]
&= v_0 t
\end{aligned}
$$
三角形の面積(上側):
$$
\begin{aligned}
S_{\text{三角形}} &= \displaystyle\frac{1}{2} \times t \times at \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{1}{2} a t^2
\end{aligned}
$$
これらを足し合わせると、移動距離は \(v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) となる。ここに初期位置 \(x_0\) を足せば、位置の公式 \(x = x_0 + v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) が導ける。
こうして見ると、位置の公式の3つの項はそれぞれ意味を持っている。\(x_0\) は出発地点、\(v_0 t\) は最初の速さのまま進んだ分、\(\displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) は加速によって余分に進んだ分である。3項を意味で読めるようになれば、式の順番を取り違えることはなくなる。
初速度 \(2.0\,\text{m}/\text{s}\)、加速度 \(3.0\,\text{m}/\text{s}^2\) で \(4.0\) 秒間進んだ場合を、面積と公式の両方で計算してみる。
長方形の面積は、縦が \(2.0\)、横が \(4.0\) である。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{長方形}} &= 2.0 \times 4.0 \\[2.0ex]
&= 8.0\,\text{m}
\end{aligned}
$$
三角形の高さは \(at = 3.0 \times 4.0 = 12\) なので、面積は次のようになる。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{三角形}} &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 4.0 \times 12 \\[2.0ex]
&= 24\,\text{m}
\end{aligned}
$$
合計は \(32\,\text{m}\)。位置の公式に直接入れても同じ値になる。
$$
\begin{aligned}
x &= 2.0 \times 4.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times 4.0^2 \\[2.0ex]
&= 8.0 + 24 \\[2.0ex]
&= 32\,\text{m}
\end{aligned}
$$
図から読んでも、式に入れても、同じ答えにたどり着く。両方の道が通じていることを一度確かめておくと、どちらかが詰まったときにもう一方へ逃げられる。
🩺 要点整理
位置の公式は覚える式ではなく、\(v\text{-}t\) グラフの面積を2つに切って足しただけの式である。
公式に出てくる \(\displaystyle\frac{1}{2}\) がどこから来たのかと聞かれたら、答えは三角形の面積だからである。ここが言えるようになると、公式を忘れてもグラフから作り直せる。
🔗 関連単元
「\(v\text{-}t\) グラフの面積が移動距離になる」という道具は、第2限(2限目:等速直線運動と2種類のグラフ)で身につけたものである。あのときは速度が変わらないので面積は長方形1つだったが、速度が変われば長方形と三角形に分かれる——変わったのは形だけで、読み方は同じである。
次の第4限(4限目:等加速度運動の応用)では、この面積の読み方でブレーキやエレベーターの問題を扱っていく。面積で読む習慣は、ここで固めておきたい。
🧠 見ずに思い出そう
ノートを閉じて、次の2つに答えてみよう。
① 位置の公式の \(\displaystyle\frac{1}{2} a t^2\) は、グラフのどの部分にあたるか
② \(v\text{-}t\) グラフの「面積」と「傾き」は、それぞれ何を表すか
①で詰まったなら、この節のグラフの切り分けに戻ればよい。②で詰まったのはより手前のつまずきで、第2限で扱ったグラフの読み方がまだ手についていないという診断になる。その場合は公式の練習を重ねるより、第2限へ戻るほうが速い。
練習問題の解説
① 加速度の計算(問12)
問題
自動車Aは動き始めてから \(8.0\,\text{s}\) 後に \(12\,\text{m}/\text{s}\) の速さになった。加速度は何 \(\text{m}/\text{s}^2\) か。また、自動車Bは動き始めてから \(6.0\,\text{s}\) 後に \(10\,\text{m}/\text{s}\) の速さになった。加速度は何 \(\text{m}/\text{s}^2\) か。
解説
自動車A: \(8.0\) 秒かけて速度が \(12\,\text{m}/\text{s}\) 増えたので、加速度 \(a_A\) は速度の変化を時間で割って求める。
図: 自動車Aは \(8.0\) 秒かけて \(0\) から \(12\,\text{m}/\text{s}\) になる
$$
\begin{aligned}
a_A &= \displaystyle\frac{12}{8.0} \\[2.0ex]
&= 1.5\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
自動車B:
図: 自動車Bは \(6.0\) 秒かけて \(0\) から \(10\,\text{m}/\text{s}\) になる
\(6.0\) 秒かけて速度が \(10\,\text{m}/\text{s}\) 増えたので、
$$
\begin{aligned}
a_B &= \displaystyle\frac{10}{6.0} \\[2.0ex]
&= 1.666\dots \\[2.0ex]
&\approx 1.7\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
有効数字を2桁に揃えるため、小数第2位を四捨五入して \(1.7\,\text{m}/\text{s}^2\) となる。
自動車A:\(1.5\,\text{m}/\text{s}^2\) / 自動車B:\(1.7\,\text{m}/\text{s}^2\)
② 平均の加速度・減速(問13)
問題
x軸上を運動する物体の速度が、時刻 \(1.5\,\text{s}\) には \(3.0\,\text{m}/\text{s}\)、時刻 \(3.5\,\text{s}\) には \(-2.0\,\text{m}/\text{s}\) であった。この間の平均の加速度は何 \(\text{m}/\text{s}^2\) か。
解説
図: \(t=1.5\,\text{s}\) には正の向きに \(3.0\,\text{m}/\text{s}\)、\(t=3.5\,\text{s}\) には負の向きに \(2.0\,\text{m}/\text{s}\)。途中で向きが変わっている
時刻 \(1.5\,\text{s}\) から \(3.5\,\text{s}\) までの時間は \(2.0\,\text{s}\) である。速度は \(3.0\,\text{m}/\text{s}\) から \(-2.0\,\text{m}/\text{s}\) に変化したので、速度の変化量は次のようになる。
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= -2.0 – 3.0 \\[2.0ex]
&= -5.0\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
平均の加速度 \(\bar{a}\) は、速度の変化量を時間で割って求める。
$$
\begin{aligned}
\bar{a} &= \displaystyle\frac{-5.0}{2.0} \\[2.0ex]
&= -2.5\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
マイナスなので、負の向きに加速度がかかっていることを意味する。
平均の加速度:\(-2.5\,\text{m}/\text{s}^2\)(負の向き)
③ 位置の公式の利用(問14)
問題
\(x_0 = 5\,\text{m}\)、\(v_0 = 2\,\text{m}/\text{s}\)、\(a = 4\,\text{m}/\text{s}^2\) のとき、位置を求める式を立てよ。上で求めた式を使って、各時刻での具体的な位置を求めてみよう。
解説
位置の公式 \(\cdots ①\) に各値を代入する。
$$
\begin{aligned}
x &= 5 + 2t + \displaystyle\frac{1}{2} \cdot 4 \cdot t^2 \\[2.0ex]
&= 2t^2 + 2t + 5
\end{aligned}
$$
この式を使って、各時刻での位置を計算する。
\(t=0\,\text{s}\) のとき:
$$
\begin{aligned}
x &= 2 \cdot 0^2 + 2 \cdot 0 + 5 \\[2.0ex]
&= 5\,\text{m}
\end{aligned}
$$
\(t=1\,\text{s}\) のとき:
$$
\begin{aligned}
x &= 2 \cdot 1^2 + 2 \cdot 1 + 5 \\[2.0ex]
&= 9\,\text{m}
\end{aligned}
$$
\(t=2\,\text{s}\) のとき:
$$
\begin{aligned}
x &= 2 \cdot 2^2 + 2 \cdot 2 + 5 \\[2.0ex]
&= 17\,\text{m}
\end{aligned}
$$
\(t=3\,\text{s}\) のとき:
$$
\begin{aligned}
x &= 2 \cdot 3^2 + 2 \cdot 3 + 5 \\[2.0ex]
&= 29\,\text{m}
\end{aligned}
$$
図: \(t=0,\,1,\,2,\,3\,\text{s}\) の位置は \(5,\,9,\,17,\,29\,\text{m}\)。同じ 1 秒でも進む距離がどんどん広がる
位置の式:\(x = 2t^2 + 2t + 5\) / \(t=0,\ 1,\ 2,\ 3\,\text{s}\) での位置:\(5\,\text{m}\)、\(9\,\text{m}\)、\(17\,\text{m}\)、\(29\,\text{m}\)
【重要公式まとめ】
加速度の定義
$$
\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
\(a\): 加速度、\(\Delta v\): 速度の変化、\(\Delta t\): 時間。単位は \(\text{m}/\text{s}^2\)。
図: 加速度の定義の各文字が、\(v\text{-}t\) グラフのどこを指すか
等加速度運動の3公式
$$
\begin{aligned}
x &= x_0 + v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v &= v_0 + a t \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v^2 – v_0^2 &= 2a(x – x_0) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
\(x\): 位置、\(x_0\): 初期位置、\(v\): 速度、\(v_0\): 初速度、\(a\): 加速度、\(t\): 時間。③は①②から \(t\) を消去した「便利公式」。
図: 等加速度運動の3公式の各文字が、\(v\text{-}t\) グラフのどこを指すか
【記事限定 演習問題】
この講の内容だけで解ける問題を用意した。式を選ぶ前に、与えられた量と聞かれている量を書き出すところからやってみてほしい。
📝 記事限定 演習問題①(定義から加速度を出す)
停止していた電車が動き出し、\(25\,\text{s}\) 後に \(20\,\text{m}/\text{s}\) の速さになった。この間の平均の加速度を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
まず引き算から始める。速度は \(0\) から \(20\,\text{m}/\text{s}\) になったので、変化した分は \(20\,\text{m}/\text{s}\) である。
$$
\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{20 – 0}{25} \\[2.0ex]
&= 0.80\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
答えは \(0.80\,\text{m}/\text{s}^2\)。
ここで「\(20\) を \(25\) で割った」だけの計算に見えるが、割られている \(20\) は速度ではなく速度の変化である。静止からのスタートだったので、たまたま両者が同じ値になっただけである。次の問題ではここが分かれる。
📝 記事限定 演習問題②(符号が意味するもの)
x軸の正の向きに \(12\,\text{m}/\text{s}\) で走っていた自転車がブレーキをかけ、\(4.0\,\text{s}\) 後に \(4.0\,\text{m}/\text{s}\) になった。この間の平均の加速度を求め、その符号が何を表しているかを説明せよ。
解答と思考プロセスを見る
速度の変化は「後の速度 − 前の速度」で求める。順番を逆にすると符号が反転してしまう。
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= 4.0 – 12 \\[2.0ex]
&= -8.0\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
これを時間で割る。
$$
\begin{aligned}
a &= \displaystyle\frac{-8.0}{4.0} \\[2.0ex]
&= -2.0\,\text{m}/\text{s}^2
\end{aligned}
$$
答えは \(-2.0\,\text{m}/\text{s}^2\)。
符号のマイナスが表しているのは「x軸の負の向きに加速度がはたらいている」ということであって、「遅くなった」という意味ではない。今回はたまたま速度が正の向きなので、逆向きの加速度が減速として現れているだけである。
📝 記事限定 演習問題③(速度の公式を使う)
初速度 \(3.0\,\text{m}/\text{s}\)、加速度 \(2.0\,\text{m}/\text{s}^2\) の等加速度運動をしている物体がある。動き出してから \(5.0\,\text{s}\) 後の速度を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
聞かれているのは速度、与えられているのは時刻。位置の話が出てこないので、②の速度の公式が最短である。
$$
\begin{aligned}
v &= 3.0 + 2.0 \times 5.0 \\[2.0ex]
&= 13\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
答えは \(13\,\text{m}/\text{s}\)。
②の式は、「もとの速さ」に「1秒あたりの増え分×秒数」を足しているだけである。式を忘れても、\(3.0\) から始めて \(2.0\) を5回足せば同じ \(13\) にたどり着く。式は近道であって、出発点ではない。
📝 記事限定 演習問題④(位置の公式を使う)
原点にいた物体が、初速度 \(4.0\,\text{m}/\text{s}\)、加速度 \(2.0\,\text{m}/\text{s}^2\) で正の向きに動き出した。\(3.0\,\text{s}\) 後の位置を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
聞かれているのは位置、時刻も与えられているので①を使う。\(x_0 = 0\) である。
$$
\begin{aligned}
x &= 4.0 \times 3.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 3.0^2 \\[2.0ex]
&= 12 + 9.0 \\[2.0ex]
&= 21\,\text{m}
\end{aligned}
$$
答えは \(21\,\text{m}\)。
計算の途中に出てきた \(12\) と \(9.0\) には意味がある。\(12\,\text{m}\) は最初の速さのまま進んだ分、\(9.0\,\text{m}\) は加速によって余分に進んだ分である。値の意味を言えるかどうかで、検算の効き方が変わる。
📝 記事限定 演習問題⑤(便利公式の出番を見抜く)
\(20\,\text{m}/\text{s}\) で走っていた自動車がブレーキをかけ、\(-4.0\,\text{m}/\text{s}^2\) の一定の加速度で減速して停止した。停止するまでに進んだ距離を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
まず持ち物検査をする。与えられているのは初速度と加速度、聞かれているのは距離。時間はどこにも出てこないので、③の便利公式である。
停止したということは \(v = 0\)、原点から測るとして \(x_0 = 0\) とおく。
$$
\begin{aligned}
0^2 – 20^2 &= 2 \times (-4.0) \times x \\[2.0ex]
-400 &= -8.0x \\[2.0ex]
x &= 50\,\text{m}
\end{aligned}
$$
答えは \(50\,\text{m}\)。
①や②でも解けるが、その道では先に「止まるまでの時間 \(5.0\,\text{s}\)」を求める一手間が入る。聞かれていない量を途中で求めているなら、それは遠回りの合図である。
図: 時刻の目盛りが分からなくても、初速度と加速度だけで距離は決まる
📝 記事限定 演習問題⑥(面積で読む)
初速度 \(2.0\,\text{m}/\text{s}\)、加速度 \(3.0\,\text{m}/\text{s}^2\) の等加速度運動を \(4.0\) 秒間続けた。\(v\text{-}t\) グラフの面積を使って、この間の移動距離を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
\(4.0\) 秒後の速度は \(v = 2.0 + 3.0 \times 4.0 = 14\,\text{m}/\text{s}\)。グラフは高さ \(2.0\) から \(14\) まで直線で上がる。
面積を長方形と三角形に分ける。長方形は縦 \(2.0\)・横 \(4.0\)。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{長方形}} &= 2.0 \times 4.0 \\[2.0ex]
&= 8.0\,\text{m}
\end{aligned}
$$
三角形は底辺 \(4.0\)・高さ \(14 – 2.0 = 12\)。
$$
\begin{aligned}
S_{\text{三角形}} &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 4.0 \times 12 \\[2.0ex]
&= 24\,\text{m}
\end{aligned}
$$
合計して \(32\,\text{m}\)。
答えは \(32\,\text{m}\)。位置の公式①に代入しても同じ値になる。2つの道が同じ答えに着くことを確かめておくと、片方を忘れてももう片方で解ける。
図: 変わらない分(長方形)と増えた分(三角形)に切り分けて足す
📝 記事限定 演習問題⑦(向きが変わる運動)
x軸上を \(+8.0\,\text{m}/\text{s}\) で動いている物体に、\(-2.0\,\text{m}/\text{s}^2\) の一定の加速度がはたらいている。この物体が \(t=0\) に原点を通過したとして、①速度が \(0\) になるのは何秒後か ②そのときの位置はどこか、を求めよ。
解答と思考プロセスを見る
①は速度と時刻の話なので②の式を使う。\(v = 0\) とおく。
$$
\begin{aligned}
0 &= 8.0 + (-2.0) \times t \\[2.0ex]
t &= 4.0\,\text{s}
\end{aligned}
$$
②は位置なので①の式に \(t = 4.0\) を入れる。
$$
\begin{aligned}
x &= 8.0 \times 4.0 + \displaystyle\frac{1}{2} \times (-2.0) \times 4.0^2 \\[2.0ex]
&= 32 – 16 \\[2.0ex]
&= 16\,\text{m}
\end{aligned}
$$
答えは \(4.0\) 秒後、位置は \(+16\,\text{m}\)。
ここで止まったまま終わりではない点に注意してほしい。加速度はその後もはたらき続けるので、\(4.0\) 秒を過ぎると物体は負の向きへ動き出す。速度が \(0\) になる瞬間は「折り返し点」であって「終点」ではない。この見方は、次の第4限(等加速度運動の応用)でブレーキや投げ上げを扱うときにそのまま効いてくる。
以下のテキストをコピーして、「まことAI」にそのまま貼り付けてみてください。別の角度からわかりやすく解説してくれます。
タップ(クリック)すると答えが表示されます。
Q1. 加速度の単位は \(\text{m}/\text{s}^2\)(メートル毎秒毎秒)ですが、これは「\(1\) 秒ごとに( )がどれくらい変化するか」を表しています。カッコに入る言葉は何でしょう?
加速度は「位置」ではなく「速度」の変化を表します。たとえば加速度が \(2\,\text{m}/\text{s}^2\) なら、\(1\) 秒経つごとに速度が \(2\,\text{m}/\text{s}\) ずつ速くなっていく、という意味です。
Q2. 縦軸に速度(\(v\))、横軸に時間(\(t\))をとった「\(v\text{-}t\) グラフ」において、グラフの線の「傾き」は何を表しているでしょうか?
前回の講義で学んだ通り、\(v\text{-}t\) グラフの「面積」は移動距離を表しますが、「傾き(どれだけ急激に速度が変化しているか)」は加速度を表します。この2つはセットで覚えておきましょう。
Q3. 等加速度運動の「③便利公式(\(v^2 - v_0^2 = 2a(x - x_0)\))」は、問題文にある情報が欠けているときに使うと計算が早くなります。その情報とは何でしょうか?
この公式には時間 \(t\) が含まれていません。そのため、「何秒後か?」が分からなかったり、聞かれていなかったりする問題では、この式に当てはめるだけで一発で答えが出せます。
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💡 ヒント:「自分なりに考えたこと」は、「摩擦力の向きがどっちになるか分からない」「運動方程式の立て方が分からない」など、素直な気持ちでOKです!
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