過去問演習の相談で、いちばん多く受ける質問は「何年分やればいいですか」です。でも、この質問に数字で答えると、ほぼ確実に伸びが止まります。
「5年分」と答えれば、その生徒は5年分を終えた時点で安心します。「10年分」と答えれば10年分で安心します。どちらの場合も、終わったときに手元に残っているのは「やった量」だけで、自分の何が変わったのかは分からないままです。そして次の年度を解くと、また同じところで止まります。
9月から12月にかけて、毎年この相談が増えます。話を聞くと、やっていること自体はきちんとしています。時間を計って解いて、丸付けをして、解説を読んで、ノートに貼る。手順としては何も間違っていません。それでも点が動かない。
理由は単純で、その手順のどこにも「自分の何が壊れているのかを調べる工程」が入っていないからです。体調が悪いときに、毎日きちんと薬を飲んでいるのに治らないとしたら、疑うべきは飲み方ではなく「そもそも何の薬か」です。過去問演習でも同じことが起きています。
こんな覚えありませんか?
- □ 「過去問って、結局何年分やればいいんだろう」と検索したことがある
- □ 解いて、丸付けして、解説を読む。復習はそれで終わりにしている
- □ 時間が足りなくて、最後の大問まで手が回らないまま丸付けしている
この記事で扱うのは、過去問の「やり方」ではありません。やり方の手前にある、どこまで自分の力だけでやらせるか(=用量)という話です。ここを決めずにやり方だけ真似すると、同じ演習をしているのに結果が正反対になります。
この記事でわかること
- 過去問は「練習」ではなく「検査」だという位置づけの置き換え方
- 1回の演習から取れる4つの診断データと、失点を4層に分ける方法
- 「自力で解くべきか」は、あなたのタイプによって変わるということ
過去問は「練習」ではなく「検査」です
世の中の過去問記事のほとんどは、過去問をトレーニングとして扱っています。回数を重ねれば力がつく、という前提です。
この記事の立場は違います。過去問は、あなたの思考のクセをいちばん高い解像度で映し出す検査です。初見で、誘導がついていて、時間の制約がある。この3つが同時にそろう場面は、過去問以外にほとんどありません。つまり、普段は隠れているクセが、過去問のときだけ表に出てくる。
だとすれば、過去問を解いたあとにすべきことは「点数を記録すること」ではなく、検査結果を読むことです。
問題集と過去問は、道具として別物です
ここを混同している人がとても多いので、先に整理します。
| 道具 | 何をする装置か | うまくいっているサイン |
|---|---|---|
| 問題集 | 同じ型を反復して、手が勝手に動くところまで定着させる | 2周目で迷う時間が減っている |
| 過去問 | 初見・誘導つき・時間制約下で、定着したものが本当に出てくるかを検査する | 失点の理由に毎回ちゃんと名前がつく |
「問題集が終わったから、その続きとして過去問に進む」という言い方をよく聞きます。でも、続きではありません。道具の目的が違うので、同じ姿勢で臨むとどちらも機能しなくなります。問題集の回し方そのものについては、効率重視!物理・数学の問題集の使い方で別に書いているので、そちらを読んでください。
だから、数えるのは「年数」ではなく「見つけたクセの数」
検査だと位置づけ直すと、管理する数字が変わります。
🔄 リフレーム
数えるのは「何年分やったか」ではありません。1回の演習から、名前のついたクセをいくつ取り出せたかです。3年分やってクセがゼロなら、その3年分は検査として失敗しています。1年分でクセが2つ見つかったなら、それは成功した検査です。
なお、「過去問は最低◯年分」「◯周すべき」という数字を、この記事では書きません。理由は単純で、その数字の根拠になる研究が見当たらないからです。もっともらしい数字を並べることはできますが、それは誠実ではないと考えています。
まず診断 ― 1回の過去問から取れる4つのデータ
① 解き始める前に、「予測」を3つ書く
解き始める前、紙の端でいいので次の3つを書いてください。
- この大問は、何分かかりそうか
- どこで詰まりそうか
- 使う原理は何か(保存則か、運動方程式か、力のつり合いか)
そして解き終わったら、予測と実際のズレを見ます。30分と読んで50分かかったのか。詰まると思った場所は違っていて、まったく別のところで止まったのか。
このズレは、点数にはまったく現れません。でも、あなたの見立てがどこで外れるかこそが、思考のクセの居場所を指しています。
予測してから観察する、という学習環境を調べた研究(Nawaz et al., 2020, Journal of Learning Analytics)では、自分が思っている正しさと実際の正しさのズレが、成績そのものより「混乱のサイン」として強く現れることが報告されています。そして注意すべきは、放置された混乱は、投げ出しにつながるという点です。ズレを見つけること自体が点数を上げるわけではありません。ズレを見つけて名前をつけて片づけるところまでが1セットです。
実際に紙の端に書くのは、この程度で十分です。
■ 記入例(大問2・力学)
- ① 22分(見た感じ、設問が4つだから)
- ② (3) で詰まりそう(グラフを描かせてくるやつが苦手)
- ③ エネルギー保存(高さが出てくるから)
※ 書くのに30秒もかかりません。丸付けのとき、この3行の横に実際の値を書き足すだけです
そして解き終わったあと、たとえばこうなります。所要は38分(予測22分)。詰まったのは (3) ではなく (2)。使ったのは 運動量保存(エネルギー保存では解けなかった)。
この3行のズレが、そのまま診断結果です。時間を1.7倍も見誤ったのは、設問数だけで所要時間を見積もっていて、1問あたりの処理量を見ていないから。詰まる場所を外したのは、自分の弱点を「グラフ」という単元の名前で覚えていて、思考の手順で覚えていないから。使う原理を外したのは、いちばん重い——現象を見ずに「高さ」という単語から式を選んでいます。これが次の項目の話につながります。
② 現象 → 基本式を全部そろえる → そのあとで設問
物理の解法の順序は、私の指導では1つに決まっています。
🔄 解法の原則
まず現象を読む。次に、その現象で成り立つ基本式を全部そろえる。設問を見るのは、そのあと。
たとえば2球の衝突なら、設問が何を聞いていようと、まず運動量保存 \(mv_1+mv_2=mv_1’+mv_2’\) と、反発係数の関係式を並べます。斜面上の運動なら、運動方程式と、必要なら力学的エネルギー保存 \(\frac{1}{2}mv^2+mgh\) の形を先に出します。設問から逆算して「何の式を使うか」を探すのではありません。
過去問は、この原則がいちばん破られやすい場面です。理由は、誘導設問が多いから。「(1) を用いて (2) を示せ」という形式は、設問を読むほど「設問が答えを教えてくれる」という錯覚を生みます。そして誘導のない年度・大学に当たった瞬間、手が止まります。
具体例で見てください。なめらかな斜面を高さ \(h\) からすべり下りた物体が、床に置かれたばねを押し縮める。設問は「(1) 斜面を下りきったときの速さを求めよ (2) ばねの縮みの最大値を求めよ」。
| 読み方 | はじめにすること | 次にすること |
|---|---|---|
| 設問から探す | (1) を読んでから「速さを聞かれた → エネルギー保存だな」と判断して \(mgh=\frac{1}{2}mv^2\) を立てる | (2) を読んでから「今度はばね → 弾性エネルギーだな」と、もう一度あたまを切り替えて別の式を立て直す |
| 現象から出す | 設問を見る前に「なめらか=摩擦がない → 力学的エネルギーは最初から最後まで保存する」と決める | 式は1本でつながる。\(mgh=\frac{1}{2}mv^2=\frac{1}{2}kx^2\)。(1) も (2) も、この1本から切り出しているだけ |
点数の上では、この2人は同じです。どちらも正解します。違いが出るのは、誘導が消えたときだけです。「(1) ばねの縮みの最大値を求めよ」といきなり聞かれた年度に当たると、左の人は手が止まります。切り替えるべき「次の設問」が無いからです。右の人は同じ1本の式を書きます。
だから過去問の丸付けでは、正解したかどうかとは別に「自分はどちらの読み方をしていたか」を見てください。正解しているぶん、放っておくと気づけません。
■ 解法順序チェック(解いた直後に)
- □ 式が出そろう前に、もう手が動き始めていた
- □ 「何の式を作るか」を、現象ではなく設問から考えた
- □ 条件式が1本増えた瞬間(未知数が増えた瞬間)に詰まった
- □ 現象を見るかわりに、過去に解いた別の問題を思い出そうとした
※ ✓ が1つ以上 → 設問先読みのクセが出ています
この順序のつくり直し方そのものは、読めるのに解けない ―― 偏差値60で止まる人が抜け出す「逆向き解法」5ステップで詳しく扱っています。
ひとつだけ注意があります。4つめの「過去に解いた別の問題を思い出そうとした」は、見た目が同じでも中身が2種類あります。(a) そもそも参照するルールを持っていない人と、(b) ルールは持っているが順序を守れていない人です。(a) の人に「順序を守れ」と言っても、守るべきルールが手元にないので空振りします。自分がどちらなのかは、上のチェックだけでは決まりません。
③ 失点を4つの層に分ける
ここが、過去問演習でいちばん省略されている工程です。点数は4種類の失点の合計なので、合計だけを見ていても処方が決まりません。
第1層(知識がない)なら、過去問を何年分回しても埋まりません。パックの目次から抜けている単元を特定して、そこへ戻るほうが速いです(力学パック コース目次 / 電磁気パック カリキュラム一覧)。
第3層(処理で落とした)は、ミスの型ごとに処方が違います。自分がどの型を繰り返しているかは 同じミスを繰り返す人の思考のクセ診断 で分類できます。型が分かっているなら、「数字は合ってたのに×」が起きる4つのメカニズム、符号ミスの正方向守護プロトコル、グラフ問題のミス をそれぞれ参照してください。
④「時間が足りない」は、症状であって原因ではありません
過去問の相談でいちばん多いのが「時間が足りない」です。そしていちばん多い対処が「時間配分のコツ」を探すことです。
でも、時間切れは結果です。第1層で止まって考え込んだのか、第2層で式を探し回ったのか、第3層の計算に時間を吸われたのか。どの層で時間を食ったのかを測らずに配分の技術論へ飛ぶと、原因の残ったまま時計だけを気にする状態になります。
具体的には、解いている最中に大問ごとの経過時間を1回だけメモしてください。何分何秒まで要りません。「大問2に入ったのが25分」で十分です。それだけで、時間を食った場所が層のどこかに紐づきます。
処方 ―「自力で解く」は、全員への処方ではありません
ここからが、この記事の中心です。
受験界の常識は「過去問は必ず時間を計って、自力で、解答を見ずに解く」です。これは言い換えると、全員に対して助けをゼロにするという処方を一律にかけることです。
この「一律」が、学習科学の側から支持されていません。同じ支援が、相手の習熟段階によって効果の符号ごと反転することが報告されています(専門知逆転効果, Kalyuga et al., 2003)。また、初心者に対して最小限の指導しか与えない方式は有害であるという指摘もあります(Kirschner, Sweller & Clark, 2006)。
助けの量には、0〜3の目盛りがあります
具体的な言葉に置き換えると、こうなります。
- Lv0(何も言わない)… 何も言わずに解かせる。詰まっても待つ
- Lv1(枠だけ渡す)… 「いまこの物体に働いている力、全部言える?」
- Lv2(方向を示す)… 「運動量のほうから攻めてみて」
- Lv3(答え・解法を渡す)… 「ここは運動量保存とエネルギー保存の連立で解く」
減らしていいのは「答えを先に見ること」だけです
「自力で解く」を実行しようとして、多くの人が全部を減らしてしまいます。ここが危険です。
減らしてよいのは Lv3(答え・解法を先に渡すこと)だけです。次の2つは、誰からも減らしてはいけません。
🔄 減らしてはいけない2つ
(b) 試したあとで、合っていたか・なぜそうなるかが返ってくること。これを抜くと、やってもやっても手応えが得られず、「自分にはできない」という学習へ落ちます。
(c) 何を考えればいいのかという枠・構造(Lv1)。これを抜くと、自律を支えているのではなく、ただの放置になります。
薬でたとえるなら、粉薬だけを減らして、水を飲ませないのと同じです。「何もしないこと」が処方なのではありません。何を入れないかを名指しするのが処方です。
あなたのタイプ別・過去問の用量
ここで必要になるのが、自分の思考のクセのタイプです。まだ分からない人は、先に 物理が苦手な根本原因は「思考のクセ」5タイプ診断で分かる伸びない理由 を読んで、自分のタイプを確かめてから戻ってきてください。
ただ、いますぐ用量を決めたい人のために、今日解いた過去問1年分から暫定的に見分ける方法を置いておきます。使うのは、さきほどの失点の4層分解の結果です。丸付けのときに仕分けたものが、そのまま入力になります。
■ 今日の1年分から、暫定の用量を決める
- □ 第1層(知識がない)がいちばん多かった → 初学・基礎未定着。解法を先に見てよい
- □ 第2層(式が出てこない)が多く、解説を読むと「なるほど」とすっきりする → 受動理解型
- □ 第2層が多く、解説を読むと「この解き方を覚えよう」と思う/赤本の式変形をノートに写している → 暗記型
- □ 第3層(処理)が中心で、第1層・第2層がほとんど無い → 軽症
※ 2つ当てはまったら、助けが多いほうの行を選んでください。足りないより、入れすぎのほうが立て直せます
第2層が多い人が2行に分かれているのが、この表のいちばん大事なところです。同じ「式が出てこない」でも、解説を読んだときの反応が正反対だからです。すっきりする人は、理解はできるのに自分で取り出せていない。覚えようとする人は、理解の代わりに手順を貯め込もうとしている。前者に答えを渡すのは遠回りなだけですが、後者に答えを渡すのは、治そうとしているクセそのものを強くします。
なお、この見分け方はあくまで1年分ぶんの暫定です。2年分・3年分と続けて同じ行に落ち着いたら、それが自分のタイプだと考えてください。毎回ばらつくなら、単元によって状態が違うということなので、単元ごとに用量を変えるのが正解です。
| タイプ | 過去問での用量 | 具体的に何をする/何をしない |
|---|---|---|
| 暗記型 解法を覚えて当てにいく |
Lv2 まで Lv3 を出さない |
解答解説を先に読まない。赤本の解法を写さない。詰まったら「いま使える保存則は何と何?」(Lv1)→「運動量のほうから攻めて」(Lv2)まで。答えを渡すほど、暗記の回路が強くなります |
| 受動理解型 解説を読むと分かった気になる |
Lv1〜2 | 解説を開く前に、「どこで詰まったか」を自分の言葉で1行書く。その1行が書けないうちは解説を開かない。→ 「分かったつもり」で点が取れない人へ |
| 軽症 原理から組み立てられている |
Lv0〜1 | 世間で言われている通りでよい唯一の層です。難しさをあえて残して構いません |
| 初学・基礎未定着 まだ原理の手持ちが少ない |
Lv3 を惜しまない 減らしすぎも違反 |
解法を先に見て型を写すほうが速い層です。この層に Lv0 をかけるのがいちばん有害で、時間だけが溶けます |
まだ分かっていないこと
誠実に書いておきます。「どこまで支援を減らすべきか」は、学習科学の世界でまだ決着していません(支援のジレンマ, Koedinger & Aleven, 2007)。この記事の用量表も、「科学的に証明された最適解」ではありません。分かっているのは「一律にかけるのは支持されていない」ところまでで、一人ひとりの最適点は現場で測るしかない、というのが正直なところです。
もうひとつ。「自分の言葉で説明しながら解く(自己説明)」は万能薬のように語られがちですが、解法例と併用したときには効果を弱める方向に働いたという報告もあります(Barbieri et al., 2023)。だからこの記事では、自己説明は受動理解型の処方として限定して置いています。
復習 ― 解説を読み返すのは、復習ではありません
読み返しではなく、「手を動かして出す」
復習を「解説をもう一度読むこと」だと思っている人が、本当に多いです。
読むことと、思い出して書き出すことは、定着への効き方がまったく違います。学習した内容を読み返した場合と、思い出して書き出す練習をした場合を比べた研究では、1週間後の想起率が、読み返し40%に対して想起練習61%という差が報告されています(Roediger & Karpicke, 2006, Psychological Science)。
過去問に落とすとこうなります。丸付けをして解説を読んだら、その場で本を閉じて、白紙に解き直す。解説を見ながらなぞるのは復習ではありません。
間違えてから解説を見る。しかも本人は、その得を自覚できません
「まず自分で解いて、そのあと解説」という順序には、順序そのものに意味があります。先に答えを見てから解くより、間違えてから解説を読んだほうが後の成績がよくなる、という報告があります(Huelser & Metcalfe, 2012, Memory & Cognition)。
ただし範囲の限定があります。この効果が出たのは意味のつながりがある内容で、まったく無関係な内容では利益がありませんでした。物理に置き換えれば、「習った範囲の中で間違えた」ときに効くのであって、完全に未習の単元をあてずっぽうで解いても、そこにこの効果は乗りません。
そしてこの研究のいちばん重要なところは、本人はこの利益を自覚していなかったという点です。「解けなかった=時間の無駄だった」というあなたの実感は、あてになりません。
解説を読んだあと「結局、何が分からないのか分からない」で止まってしまう人は、模試の解説を読んでも「結局、何が分からないか分からない」を消す技術 を続けて読んでください。
復習の単位は「問題」ではなく「クセ」
過去問ノートを、問題番号で管理していませんか。「2023年 大問2」と書いて、その下に解き直しを貼る形です。
この形だと、同じクセが別の分野で再発したときに気づけません。力学で出た「設問から式を探すクセ」は、そのまま電磁気でも出ます。でも問題番号で管理していると、別の問題として処理されてしまう。
記録の単位を入れ替えてください。
■ クセ台帳の作り方(1行1クセ)
- □ 1行に、クセを1つだけ書く(例:「未知数が2つ以上になると手が止まる」)
- □ その右に、再発した日付だけを足していく
- □ 問題番号は書かない(クセは問題に属していないため)
- □ 2回以上再発したクセに印をつける。そこが今週の課題
※ 台帳は1ページで足ります。増やすほど見なくなります
記録フォーマットそのものを作り込みたい人は、模試の失敗を「データ化」して同じミスを2度としない技術 と、物理テスト分析シートの使い方 がそのまま使えます。
いつ解き直すか ―「翌日にもう一度」ではなく「忘れかけた頃にもう一度」
解いた翌日にもう一度やるより、少し空けてから解き直すほうが残ります。ではどのくらい空けるのか。事実や単語の記憶を調べた実験では、本番までの期間の1〜2割ほどあけた時期に復習したときに成績がいちばんよかった、と報告されています(Rohrer & Pashler, 2007/Cepeda et al., 2008)。入試まで10週間なら1〜2週間後、という見当です。
ただし、ここは正直に書いておきます。この割合が出たのは英単語や雑学を覚える実験であって、物理の問題演習で同じ割合が最適だと確かめた研究は見当たりません。それどころか、課題が複雑になるほど間隔をあける効果は小さくなることが報告されています(Donovan & Radosevich, 1999)。過去問演習は、その「複雑なほう」の側です。
だから、日数の時間割を作る必要はありません。同じ研究が示しているもうひとつのことのほうが、実際には効きます。空けすぎる損より、空けなさすぎる損のほうがずっと大きい。間隔を伸ばしていくと成績は急に上がり、そこから先はゆるやかにしか下がりません。つまり、迷ったら長めに空けるほうが安全です。
ちなみに、よく見かける「1日後・1週間後・1ヶ月後に復習」という刻みについては、その刻みを処方した元の研究を特定できませんでした。エビングハウスの忘却曲線の数字と似ていますが、あれは「いつ測ったか」であって「いつ復習せよ」ではありません。だからこの記事では、その刻みを使いません。
分野を混ぜることについては、同じ分野を続けて回すより混ぜたほうが実戦での取り出しに近くなります。ただし「何分野ずつ混ぜるか」の具体的な数字は、根拠を確認できていないので書きません。
Before / After ― 同じ1年分の過去問で、何が変わるか
| 場面 | Before | After |
|---|---|---|
| 目的 | 点数を上げる | クセを見つける |
| 解く前 | いきなり解き始める | 予測を3つ書く |
| 解いている間 | 設問を読んで「何の式か」を探す | 現象から基本式を全部そろえる |
| 丸付け | 点数を出して終わる | 失点を4つの層に分ける |
| 自力の度合い | 全員一律「自力で・解答を見ない」 | タイプ別に用量を決める |
| 復習 | 解説を読み返す | 手を動かして出し直し、クセを1行で名指す |
| 家で言うこと | 「今日◯点だった」 | 「今日、こういうクセに名前がついた」 |
家に持ち帰るのは、点数ではありません
最後に、家での話をします。
過去問を解いた日、家で「今日の過去問、何点だった?」と聞かれた経験はありませんか。これは保護者の方が悪いのではありません。こちらが点数しか渡していないから、点数を聞かれるだけです。保護者は、渡された画面に書いてあることをそのまま聞きます。
問題は、点数を持ち帰った瞬間に、話が「できる/できない」という能力の話に戻ってしまうことです。せっかく「やり方のここが崩れていた」という形で見えていたものが、家に着くころには「今日もダメだった」に変わっています。
だから、持ち帰るものを入れ替えてください。
🎯 今日の1アクション
- 次に過去問を解くとき、始める前に「予測」を3つだけ紙の端に書く
- 丸付けのあと、落とした点を4つの層(知識/立式/処理/時間)に仕分ける
- その日いちばん引っかかったクセを、1行だけ白紙に書いて名前をつける
※ 家で報告するのは点数ではなく、この「3」で書いた1行です
「自分の用量がどれなのか、一人で判定できない」という人へ
まこと先生
物理専門オンライン家庭教師 / 指導歴14年
YouTube物理クイズチャンネル運営
用量の判定は、この記事の中でいちばん一人では決めにくいところです。暗記型と初学・基礎未定着は、本人の実感がよく似ているのに、処方が正反対になります。体験授業では、あなたが解いた過去問を1問持ってきてもらって、その場で「どの層で落ちているか」と「どこまで助けを入れるべきか」を一緒に見ます。
※ 60分のオンライン体験授業・無理な勧誘はありません
PREMIUM
この問題の「なぜそう解くのか」も
全て言語化されています。
問題集の解答が省略する思考プロセスを、現役講師が1人で書き続けています。650問超の「なぜ」を、1週間無料で読めます。
