Step 3
138 波の重ね合わせ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(4)の別解: 定常波の節の条件を用いた解法
- 模範解答は、合成波の式(三角関数の和積公式の結果)から直接、振幅部分が0になる条件を求めています。これに対し別解では、「逆向きに進む同じ波長の正弦波が重なると定常波ができる」という物理的知識に基づき、節の間隔が半波長であることを利用して幾何学的に節の位置を特定します。
- 設問(4)の別解: 定常波の節の条件を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的直感の活用: 複雑な三角関数の計算を回避し、定常波の性質(節と腹の配置)という物理的なイメージを使って解くことで、計算ミスを減らし、現象の理解を深めます。
- 実戦的な速度: 節の位置関係(等間隔)を知っていれば、数え上げるだけで答えが出せるため、試験時間短縮に繋がります。
- 結果への影響
- どちらのアプローチを用いても、最終的に得られる節の個数と位置は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「波の重ね合わせと定常波」です。互いに逆向きに進む2つの正弦波が重なり合って定常波ができる様子を、数式(三角関数の加法定理・和積公式)を用いて解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)。
- 波の伝播と遅延: 位置 \(x\) に波が伝わる時間は距離/速さであり、その分だけ位相が遅れる。
- 重ね合わせの原理: 2つの波が重なるとき、合成波の変位はそれぞれの波の変位の和になる(\(y = y_1 + y_2\))。
- 定常波の式: 進行波と後退波の和は、\(2A \sin(\dots) \cos(\dots)\) の形になり、場所によって振幅が決まる定常波を表す。
- 節の条件: 定常波において、常に変位が0となる点(節)は、振幅項(\(\cos\) の部分)が0になる場所である。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、波の基本公式から波長を求めます。
- (2)では、波源Qからの距離を考え、波源Oからの波と同様に時間遅れを用いて波の式を立てます。
- (3)では、2つの波の式を足し合わせ、三角関数の和積公式を用いて整理します。
- (4)では、(3)で得られた式の「場所 \(x\) に依存する部分(振幅項)」が0になる条件式を解き、指定された範囲内にある解の個数を数えます。
問①
思考の道筋とポイント
波長 \(\lambda\)、速さ \(v\)、振動数 \(f\) の関係式(波の基本公式)を答えるだけの基礎的な問題です。
この設問における重要なポイント
- 波の基本公式 \(v = f\lambda\) は常に成り立つ。
具体的な解説と立式
波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には以下の関係があります。
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda
\end{aligned}
$$
これを \(\lambda\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{v}{f}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
立式そのものが答えとなります。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{v}{f}
\end{aligned}
$$
「1秒間に \(f\) 個の波が出て、それが速さ \(v\) で進む」なら、波1個の長さ(波長)は「進んだ距離 \(v\) を個数 \(f\) で割ったもの」になります。
答えは \(\frac{v}{f}\) です。単位を確認すると \([\text{m/s}] / [\text{1/s}] = [\text{m}]\) となり正しいです。
問②
思考の道筋とポイント
波源Qから出た波が、点P(位置 \(x\))に到達するまでの時間を考え、波の式を作ります。
波源Qの位置は \(x=2L\) で、波は \(x\) 軸の負の向き(左)に進みます。
点Pの位置は \(x\) なので、QからPまでの距離は \(2L – x\) です。
この設問における重要なポイント
- 波源Qの位置: \(x_Q = 2L\)
- 点Pの位置: \(x_P = x\)
- 波の進む向き: 負の向き(Q \(\to\) P)
- 伝わる距離: \(2L – x\) (\(0 \le x \le 2L\) の範囲で)
- 波源Qでの振動は波源Oと同位相(\(y = A \sin 2\pi ft\))。
具体的な解説と立式
波がQからPまで伝わるのにかかる時間 \(\Delta t\) は、距離を速さで割って求められます。
$$
\begin{aligned}
\Delta t &= \frac{2L – x}{v}
\end{aligned}
$$
時刻 \(t\) における点Pでの変位 \(y_{\text{PQ}}\) は、時間 \(\Delta t\) だけ前の時刻 \(t – \Delta t\) における波源Qでの変位と等しくなります。
波源Qでの振動は \(y = A \sin 2\pi ft\) なので、この \(t\) を \(t – \Delta t\) に置き換えます。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{PQ}} &= A \sin 2\pi f (t – \Delta t) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L – x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
問題の空欄の形 \(A \sin 2\pi f (t + \dots)\) に合わせるために、カッコの中を整理します。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{PQ}} &= A \sin 2\pi f \left( t + \frac{-(2L – x)}{v} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 遅延ポテンシャル: \(y(x, t) = y(x_Q, t – \frac{|x – x_Q|}{v})\)
$$
\begin{aligned}
y_{\text{PQ}} &= A \sin 2\pi f \left( t – \frac{2L – x}{v} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
Qから出た波がPに届くには時間がかかります。その時間は「距離 \(\div\) 速さ」で \(\frac{2L-x}{v}\) です。
Pでの揺れは、Qでの揺れよりもその時間分だけ遅れているので、Qの式の \(t\) から時間を引き算します。
最後に、式を見やすくするためにマイナスを分母分子で調整して、\(t + \dots\) の形にします。
答えは \(A \sin 2\pi f \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right)\) です。
問③
思考の道筋とポイント
重ね合わせの原理により、2つの波の式を足し合わせます。
\(y_{\text{P}} = y_{\text{PO}} + y_{\text{PQ}}\)
ここで、問題文で与えられた三角関数の和積公式 \(\sin A + \sin B = 2 \sin \frac{A+B}{2} \cos \frac{A-B}{2}\) を利用して式を変形します。
この設問における重要なポイント
- \(y_{\text{PO}} = A \sin 2\pi f (t – \frac{x}{v})\)
- \(y_{\text{PQ}} = A \sin 2\pi f (t + \frac{x – 2L}{v})\)
- 和積公式の \(A\) と \(B\) に相当する部分は、それぞれの \(\sin\) の中身(位相)全体である。
具体的な解説と立式
合成波の変位 \(y_{\text{P}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{P}} &= A \sin \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right) \right\} + A \sin \left\{ 2\pi f \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right) \right\}
\end{aligned}
$$
共通因数 \(A\) をくくり出し、和積公式を適用します。
位相部分をそれぞれ \(\alpha, \beta\) と置くと、
$$
\begin{aligned}
\alpha &= 2\pi f \left( t – \frac{x}{v} \right), \quad \beta = 2\pi f \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
和積公式より、
$$
\begin{aligned}
\sin \alpha + \sin \beta &= 2 \sin \frac{\alpha + \beta}{2} \cos \frac{\alpha – \beta}{2}
\end{aligned}
$$
ここで、和と差を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha + \beta}{2} &= \frac{2\pi f}{2} \left\{ \left( t – \frac{x}{v} \right) + \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= \pi f \left( 2t – \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]
&= 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha – \beta}{2} &= \frac{2\pi f}{2} \left\{ \left( t – \frac{x}{v} \right) – \left( t + \frac{x – 2L}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= \pi f \left( -\frac{x}{v} – \frac{x}{v} + \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]
&= \pi f \left( \frac{2L – 2x}{v} \right) \\[2.0ex]
&= 2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 重ね合わせの原理: \(y = y_1 + y_2\)
- 三角関数の和積公式
上記の結果を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{P}} &= A (\sin \alpha + \sin \beta) \\[2.0ex]
&= A \cdot 2 \sin \left\{ 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \right\} \cos \left\{ 2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right) \right\} \\[2.0ex]
&= 2A \sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right)
\end{aligned}
$$
2つの波の式を足し算します。そのままでは複雑なので、数学の公式(和積公式)を使って、「時間の関数(\(\sin\))」と「場所の関数(\(\cos\))」の掛け算の形に変形します。
こうすると、「場所によって揺れ幅(振幅)が決まり、その揺れ幅で時間とともに振動する」という定常波の特徴が見やすくなります。
答えは \(2A \sin 2\pi f \left( t – \frac{L}{v} \right) \cos 2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right)\) です。
問④
思考の道筋とポイント
定常波の「節(ふし)」の個数を求める問題です。
節とは、時刻 \(t\) によらず常に変位が \(0\) になる点のことです。
問(3)の式において、時間 \(t\) を含む \(\sin\) の部分は常に変化しますが、位置 \(x\) のみを含む \(\cos\) の部分が \(0\) になれば、全体として常に \(0\) になります。
この設問における重要なポイント
- 節の条件: 振幅項 \(\cos 2\pi f (\frac{L – x}{v}) = 0\)
- 問題の条件: \(v = fL\) より、\(\frac{f}{v} = \frac{1}{L}\)
- 範囲: \(0 \le x \le 2L\)
具体的な解説と立式
節となる条件は、\(\cos\) の中身が \(\frac{\pi}{2} + n\pi\)(\(n\) は整数)になることです。
$$
\begin{aligned}
\cos \left\{ 2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right) \right\} &= 0
\end{aligned}
$$
中身(位相)について、
$$
\begin{aligned}
2\pi f \left( \frac{L – x}{v} \right) &= \frac{\pi}{2} + n\pi \quad (n = 0, \pm 1, \pm 2, \dots)
\end{aligned}
$$
ここで、\(v = fL\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
2\pi f \frac{L – x}{fL} &= \left( n + \frac{1}{2} \right) \pi \\[2.0ex]
\frac{2\pi (L – x)}{L} &= \left( n + \frac{1}{2} \right) \pi \\[2.0ex]
\frac{2(L – x)}{L} &= n + \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
これを \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
L – x &= \frac{L}{2} \left( n + \frac{1}{2} \right) \\[2.0ex]
x &= L – \frac{L}{2} \left( n + \frac{1}{2} \right) \\[2.0ex]
x &= L \left\{ 1 – \frac{1}{2} \left( n + \frac{1}{2} \right) \right\} \\[2.0ex]
x &= L \left( 1 – \frac{n}{2} – \frac{1}{4} \right) \\[2.0ex]
x &= L \left( \frac{3}{4} – \frac{n}{2} \right)
\end{aligned}
$$
範囲 \(0 \le x \le 2L\) を満たす整数 \(n\) を探します。
使用した物理公式
- 三角関数の方程式: \(\cos \theta = 0 \iff \theta = (n + 1/2)\pi\)
\(0 \le L (\frac{3}{4} – \frac{n}{2}) \le 2L\)
各辺を \(L\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
0 &\le \frac{3}{4} – \frac{n}{2} \le 2 \\[2.0ex]
-\frac{3}{4} &\le -\frac{n}{2} \le 2 – \frac{3}{4} = \frac{5}{4} \\[2.0ex]
\frac{3}{2} &\ge n \ge -\frac{5}{2}
\end{aligned}
$$
つまり、\(-2.5 \le n \le 1.5\) です。
これを満たす整数 \(n\) は、\(-2, -1, 0, 1\) の4個です。
定常波の式の中で、場所によって決まる「振幅」の部分(\(\cos\) の部分)がゼロになる場所を探します。
\(\cos\) がゼロになるのは、角度が \(90^\circ, 270^\circ, \dots\) のときです。
この条件を式にして、\(x\) が \(0\) から \(2L\) の間にいくつあるかを数えます。
個数は4個です。
具体的な位置は、
\(n=1 \to x = L/4\)
\(n=0 \to x = 3L/4\)
\(n=-1 \to x = 5L/4\)
\(n=-2 \to x = 7L/4\)
これらは全て \(0\) と \(2L\) の間にあります。
思考の道筋とポイント
計算ではなく、定常波の性質から幾何学的に解きます。
同位相の波源から出た波が作る定常波では、波源の中点(\(x=L\))は「腹」になります。
節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
腹と節の間隔は \(\lambda/4\) です。
この設問における重要なポイント
- 波長 \(\lambda = v/f = fL/f = L\) である。
- 波源OとQは同位相なので、中点 \(x=L\) は腹になる。
- 節は、腹から \(\lambda/4\) 離れた位置にあり、そこから \(\lambda/2\) ごとに存在する。
具体的な解説と立式
まず波長を求めます。\(v=fL\) より、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{v}{f} = \frac{fL}{f} = L
\end{aligned}
$$
波源OとQは同位相で振動しているため、その中点 \(x=L\) は強め合い、「腹」となります。
節の位置は、腹から \(\pm \frac{\lambda}{4}, \pm \frac{3\lambda}{4}, \dots\) の位置にあります。
\(\lambda = L\) なので、節の位置は \(L\) から \(\pm \frac{L}{4}, \pm \frac{3L}{4}, \dots\) 離れた点です。
具体的な座標は、
$$
\begin{aligned}
x &= L \pm \frac{L}{4} = \frac{5L}{4}, \frac{3L}{4}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x &= L \pm \frac{3L}{4} = \frac{7L}{4}, \frac{L}{4}
\end{aligned}
$$
次の候補 \(L \pm \frac{5L}{4}\) は、\(9L/4\)(範囲外)と \(-L/4\)(範囲外)です。
よって、範囲 \(0 \le x \le 2L\) にある節は4個です。
使用した物理公式
- 定常波の節の間隔: \(\lambda/2\)
- 同位相波源の中点は腹
上記の説明通り、座標を列挙して数えます。
波長が \(L\) だとわかったので、定常波の形をイメージします。
真ん中(\(L\))は、両側から同じタイミングで波が来るので、大きく揺れる「腹」になります。
腹の隣の「節(揺れない点)」は、波長の1/4だけ離れたところにあります。つまり \(L/4\) 離れたところです。
そこからさらに半波長(\(L/2\))ごとに節が並びます。
これを図に描いて数えれば、計算しなくても4個だとわかります。
4個。メインの解法と同じ結果が得られました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の重ね合わせと定常波の生成
- 核心: 互いに逆向きに進む、振幅・波長・速さが等しい2つの正弦波が重なり合うと、進行せずにその場で振動する「定常波」が生まれるという物理現象を、数式(和積公式)で証明することです。
- 理解のポイント:
- 進行波の和: \(y_1 = A \sin(\omega t – kx)\) と \(y_2 = A \sin(\omega t + kx + \phi)\) の和を考えます。
- 変数分離: 和積公式を使うと、合成波は \(2A \cos(kx + \phi’) \sin(\omega t + \phi”)\) のように、「位置 \(x\) だけの関数(振幅項)」と「時間 \(t\) だけの関数(振動項)」の積に変形できます。これが定常波の数学的表現です。
- 遅延ポテンシャルによる波の式の導出
- 核心: 波源から離れた点での振動は、波源での振動が「伝播時間」だけ遅れて現れるという因果律を利用して式を立てることです。
- 理解のポイント:
- 距離と時間: 波源Q(\(x=2L\))から点P(\(x\))までの距離は \(2L-x\) なので、遅れ時間は \((2L-x)/v\) です。
- 式の操作: 波源の式 \(y_Q(t)\) の \(t\) を \(t – \text{遅れ時間}\) に置き換えることで、任意の点での波の式 \(y_P(t)\) が得られます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 固定端・自由端反射による定常波: 壁での反射波は、入射波と逆向きに進む波とみなせます。固定端なら位相が \(\pi\) ずれ(符号反転)、自由端なら位相変化なしで重ね合わせます。
- 気柱の共鳴: 開口端は腹、閉口端は節になるという境界条件から、定常波のモード(波長)を決定する問題も、本質的にはこの波の重ね合わせと同じ原理です。
- 逆位相の波源: 波源OとQが逆位相で振動している場合、中点 \(x=L\) は打ち消し合って「節」になります。節と腹の位置関係がすべて入れ替わります。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の位相差を確認する: 同位相か逆位相かで、定常波の腹と節の位置が決まります(同位相なら中点は腹、逆位相なら中点は節)。
- 座標軸と波の進行方向: 波源の位置と波の進む向き(\(+x\) か \(-x\) か)を正しく把握し、遅れ時間の式 \((x-x_0)/v\) の符号を間違えないようにします。
- 三角関数の公式: 和積公式 \(\sin A + \sin B\) は必須です。もし忘れても、加法定理から導けるようにしておきましょう。あるいは、別解のように物理的考察(腹と節の位置関係)で解くルートも常に意識しておくと良いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 波の式の符号ミス:
- 誤解: \(t – (2L-x)/v\) を整理するときに、符号を間違えて \(t + (x-2L)/v\) ではなく \(t – (x-2L)/v\) にしてしまう。
- 対策: 「波源Qから負の向きに進む」ので、\(x\) が減る方向に進みます。\(x\) の係数と \(t\) の係数の符号が同じ(\(t+x\) または \(-t-x\))なら負の向き、異なれば正の向きに進む波です。このルールで検算できます。
- 節の個数の数え間違い:
- 誤解: 端点(\(x=0\) や \(x=2L\))が節になる場合、範囲に含まれるか(\(<\) か \(\le\) か)を確認せずに数えてしまう。
- 対策: 求めた \(n\) の範囲の端っこ(等号が成立する場合)について、実際に \(x\) の値を計算し、問題文の定義域に含まれるかを慎重にチェックします。
- 和積公式の適用ミス:
- 誤解: \(\sin A + \sin B\) の \(A\) と \(B\) を取り違えたり、\((A-B)/2\) の計算で符号を間違える。
- 対策: \(\cos\) は偶関数(\(\cos(-\theta) = \cos\theta\))なので、\((A-B)/2\) の符号は気にしなくて大丈夫です。一方、\(\sin\) は奇関数なので注意が必要です。定常波の式では、通常 \(\sin\) 側に時間 \(t\)、\(\cos\) 側に位置 \(x\) が来るように整理すると見通しが良いです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)での公式選択(遅延ポテンシャル):
- 選定理由: 波の式をゼロから作るための最も基本的かつ確実な方法だからです。
- 適用根拠: 媒質が一様で波の速さが一定であるため、波形が崩れずに伝わるという前提が成り立ちます。
- 問(3)での公式選択(和積公式):
- 選定理由: 2つの \(\sin\) 関数の和を、積の形(定常波の標準形)に変換できる唯一の数学的ツールだからです。
- 適用根拠: 物理的には「重ね合わせの原理」により単純な足し算が成立し、数学的にはその足し算を「振幅変調された振動」として解釈し直すために和積公式が最適です。
- 問(4)別解でのアプローチ選択(節の条件):
- 選定理由: 三角方程式を解くよりも、図形的・物理的な性質(等間隔性)を利用した方が直感的で計算ミスが少ないからです。
- 適用根拠: 定常波において、節と腹は \(\lambda/4\) ごとに交互に現れるという性質は普遍的であり、波源の位相条件(同位相)さえ確認すれば安全に適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元(単位)の確認:
- 波の式 \(A \sin 2\pi f (t + \frac{x-2L}{v})\) において、カッコの中身は時間 [s] の次元になっているか確認します。\((x-2L)/v\) は [m] / [m/s] = [s] なのでOKです。もし \(v(x-2L)\) と書いていたら単位が合わないので気づけます。
- 特殊な点での検算:
- 合成波の式に \(x=L\)(中点)を代入してみます。\(\cos 2\pi f (\frac{L-L}{v}) = \cos 0 = 1\) となり、振幅が最大(\(2A\))になることがわかります。これは「同位相波源の中点は腹」という物理的事実と一致しており、式の正しさを確認できます。
- \(n\) の範囲の絞り込み:
- 不等式を解く際、\(3/2 \ge n \ge -5/2\) のように分数で範囲が出たら、数直線を描いて整数点をプロットすると数え間違いを防げます。特に負の数の範囲はミスしやすいので注意しましょう。
139 波の重ね合わせ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(4)の別解: 波形の平行移動を用いた解法
- 模範解答は、波の式に時刻 \(t=4.0\) を代入して計算し、その結果からグラフを選択しています。これに対し別解では、時刻 \(t=0\) の波形を考え、それが \(t=4.0\) の間にどれだけ進むかを計算して、波形全体を平行移動させることでグラフを特定します。
- 設問(4)の別解: 波形の平行移動を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 直感的な理解: 数式変形に頼らず、波の動きを視覚的にイメージすることで、計算ミスを防ぎやすくなります。
- 周期性の活用: 波が「1周期で1波長進む」という性質を利用することで、移動距離が波長の整数倍であれば波形が重なることに気づき、瞬時に答えを導けます。
- 結果への影響
- どちらのアプローチを用いても、最終的に選択されるグラフは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「波の重ね合わせとグラフの選択」です。2つの波源から出る波が、それぞれどのように伝わり、特定の時刻にどのような波形を作るかを理解することが目標です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(y-t\) グラフ(振動): ある位置での媒質の時間変化。周期 \(T\) や振幅 \(A\) が読み取れる。
- 波の基本公式: \(v = f\lambda = \lambda/T\)。
- 遅延ポテンシャル: 位置 \(x\) での時刻 \(t\) の変位は、波源での時刻 \(t – (\text{伝わる時間})\) の変位と等しい。
- 波の重ね合わせ: 2つの波が存在するとき、ある点での変位はそれぞれの波の変位の和になる(本問では個別の波形を描くことが求められている)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、図2のグラフから振幅と周期を読み取り、基本公式で振動数と波長を計算します。
- (2)では、原点Oから点Pまでの距離と波の速さから伝播時間を求め、遅延ポテンシャルの考え方で点Pの変位の式を作ります。
- (3)では、同様に任意の位置 \(x\) における2つの波(Oからの波 \(y_1\) とQからの波 \(y_2\))の式を作ります。
- (4)では、(3)で作った式に \(t=4.0\) を代入して波形を特定するか、あるいは波の移動距離と波長の関係から波形を推測して、正しいグラフを選びます。
問(1)
思考の道筋とポイント
図2は \(y-t\) グラフ(ある位置での時間変化)です。ここから読み取れるのは振幅 \(A\) と周期 \(T\) です。
波長 \(\lambda\) はグラフからは直接読めないので、問題文で与えられた速さ \(v=5.0\,\text{m/s}\) と、読み取った周期 \(T\) を使って計算します。
この設問における重要なポイント
- \(y-t\) グラフの山から山(または谷から谷)までの時間が周期 \(T\)。
- 山の高さが振幅 \(A\)。
- 波長は \(\lambda = vT\) で求める。
具体的な解説と立式
図2より、振幅 \(A\) を読み取ります。
$$
\begin{aligned}
A &= 0.3\,\text{m}
\end{aligned}
$$
図2より、周期 \(T\) を読み取ります。1回の振動(山1つと谷1つ)にかかる時間です。
$$
\begin{aligned}
T &= 0.40\,\text{s}
\end{aligned}
$$
振動数 \(f\) は周期の逆数です。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{T}
\end{aligned}
$$
波長 \(\lambda\) は、速さ \(v=5.0\,\text{m/s}\) と周期 \(T\) を用いて求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= vT
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 振動数: \(f = \frac{1}{T}\)
- 波の基本公式: \(v = \frac{\lambda}{T} \iff \lambda = vT\)
振動数 \(f\) の計算:
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{0.40} \\[2.0ex]
&= 2.5\,\text{Hz}
\end{aligned}
$$
波長 \(\lambda\) の計算:
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 5.0 \times 0.40 \\[2.0ex]
&= 2.0\,\text{m}
\end{aligned}
$$
図2は「揺れの記録」です。一番高いところは \(0.3\) なので、振幅は \(0.3\,\text{m}\) です。
1回揺れるのにかかる時間(周期)は、グラフの横軸を見て \(0.40\) 秒だとわかります。
「0.40秒で1回」なら「1秒で何回?」と計算すると \(1 \div 0.40 = 2.5\) 回(振動数)です。
波は1秒に \(5.0\,\text{m}\) 進みます。1回の揺れ(0.40秒)で進む距離が波長なので、\(5.0 \times 0.40 = 2.0\,\text{m}\) です。
振幅: \(0.3\,\text{m}\), 周期: \(0.40\,\text{s}\), 振動数: \(2.5\,\text{Hz}\), 波長: \(2.0\,\text{m}\)。
全ての値が物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
原点Oから点Pまでの距離は \(5.0\,\text{m}\) です。
波の速さは \(5.0\,\text{m/s}\) なので、OからPまで波が伝わるのにかかる時間を計算します。
点Pでの振動は、その時間分だけ「昔」の原点Oでの振動と同じになります。
この設問における重要なポイント
- 原点Oでの振動の式: \(y_0 = A \sin \frac{2\pi}{T}t\) (図2より \(t=0\) で \(y=0\) から正に立ち上がっているため \(\sin\) 型)。
- 伝播時間: \(\Delta t = \frac{\text{距離}}{\text{速さ}}\)。
- 点Pの変位: \(y_{\text{P}}(t) = y_0(t – \Delta t)\)。
具体的な解説と立式
原点Oでの変位 \(y_0\) は、振幅 \(0.3\)、周期 \(0.40\) の正弦波なので、以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
y_0 &= 0.3 \sin \frac{2\pi}{0.40}t
\end{aligned}
$$
原点Oから点Pまでの距離は \(5.0\,\text{m}\)、速さは \(5.0\,\text{m/s}\) なので、伝わるのにかかる時間 \(\Delta t\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta t &= \frac{5.0}{5.0} = 1.0\,\text{s}
\end{aligned}
$$
時刻 \(t\) における点Pの変位 \(y_{\text{P}}\) は、時刻 \(t – 1.0\) における原点Oの変位と等しいので、
$$
\begin{aligned}
y_{\text{P}} &= 0.3 \sin \frac{2\pi}{0.40}(t – 1.0)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 遅延ポテンシャル: \(y(x, t) = y(0, t – x/v)\)
カッコの中を整理します。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{P}} &= 0.3 \sin 2\pi \left( \frac{t – 1.0}{0.40} \right) \\[2.0ex]
&= 0.3 \sin 2\pi \left( \frac{t}{0.40} – \frac{1.0}{0.40} \right) \\[2.0ex]
&= 0.3 \sin 2\pi \left( \frac{t}{0.40} – 2.5 \right)
\end{aligned}
$$
原点Oでの揺れ方は \(y = 0.3 \sin(\dots)\) です。
OからPまでは \(5.0\,\text{m}\) あり、波は秒速 \(5.0\,\text{m}\) で進むので、届くのにちょうど \(1.0\) 秒かかります。
つまり、Pで「今」起きている揺れは、Oで「1秒前」に起きていた揺れと同じです。
だから、Oの式の時間のところ \(t\) を \(t-1.0\) に書き換えれば、Pの式になります。
答えは \(y_{\text{P}} = 0.3 \sin 2\pi \left( \frac{t}{0.40} – 2.5 \right)\) です。
問(3)
思考の道筋とポイント
(2)と同様に、任意の位置 \(x\) における波の式を作ります。
\(y_1\) は原点Oから正の向きに進む波、\(y_2\) は点Q(\(x=8.0\))から負の向きに進む波です。
それぞれの波源からの距離を考え、遅れ時間を計算します。
この設問における重要なポイント
- \(y_1\)(Oからの波): 距離は \(x\)。遅れ時間は \(x/5.0\)。
- \(y_2\)(Qからの波): 距離は \(8.0 – x\)(Qは \(x=8.0\) にあり、波は \(x\) が減る向きに進むため)。遅れ時間は \((8.0 – x)/5.0\)。
- 波源OとQは同位相なので、どちらも元の式は \(A \sin \frac{2\pi}{T}t\) 型。
具体的な解説と立式
\(y_1\) について:
原点Oから位置 \(x\) までの距離は \(x\) です。伝わる時間は \(x/5.0\) です。
よって、
$$
\begin{aligned}
y_1 &= A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{5.0} \right)
\end{aligned}
$$
\(y_2\) について:
点Q(\(x=8.0\))から位置 \(x\) までの距離は \(8.0 – x\) です。伝わる時間は \((8.0 – x)/5.0\) です。
よって、
$$
\begin{aligned}
y_2 &= A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{8.0 – x}{5.0} \right)
\end{aligned}
$$
問題の解答形式(\(t + \dots\))に合わせるために、カッコの中を整理します。
$$
\begin{aligned}
y_2 &= A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{-(8.0 – x)}{5.0} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x – 8.0}{5.0} \right)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 遅延ポテンシャル
立式そのものが答えとなります。
\(y_1\) はOから右へ進む波です。場所 \(x\) に届くまでの時間は \(x/5.0\) なので、\(t\) からこれを引きます。
\(y_2\) はQ(\(8.0\,\text{m}\) 地点)から左へ進む波です。場所 \(x\) に届くまでの距離は \(8.0-x\) なので、時間は \((8.0-x)/5.0\) です。これを \(t\) から引きます。
\(y_2\) の式は、マイナスを整理して \(t + \frac{x-8.0}{5.0}\) の形にすると見やすくなります。
\(y_1 = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{5.0} \right)\)
\(y_2 = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x – 8.0}{5.0} \right)\)
$$ y_1 = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t – \frac{x}{5.0} \right) \, [\text{m}] $$
$$y_2 = A \sin \frac{2\pi}{T} \left( t + \frac{x – 8.0}{5.0} \right) \, [\text{m}] $$
問(4)
思考の道筋とポイント
時刻 \(t=4.0\,\text{s}\) における波形(\(y-x\) グラフ)を選びます。
(3)で作った式に \(t=4.0\) を代入して、どのような関数になるかを調べます。
特に、位相(\(\sin\) の中身)が \(x\) のどのような関数になるかに注目します。
この設問における重要なポイント
- \(t=4.0\)、\(T=0.40\) を代入する。
- \(\sin(2\pi n + \theta) = \sin \theta\) の性質を利用して式を簡単にする。
- \(y_1\) は \(-\sin x\) 型、\(y_2\) は \(\sin x\) 型になるかなどを確認する。
具体的な解説と立式
(3)の式に \(t=4.0\)、\(T=0.40\) を代入します。
\(y_1\) について:
$$
\begin{aligned}
y_1 &= A \sin \frac{2\pi}{0.40} \left( 4.0 – \frac{x}{5.0} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi \left( \frac{4.0}{0.40} – \frac{x}{5.0 \times 0.40} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi \left( 10 – \frac{x}{2.0} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、\(10\) は整数なので、\(\sin\) の周期性より無視できます。また \(\sin(-\theta) = -\sin \theta\) なので、
$$
\begin{aligned}
y_1 &= A \sin \left( – \frac{2\pi x}{2.0} \right) = -A \sin \frac{2\pi x}{2.0}
\end{aligned}
$$
これは、原点から下がって始まるサインカーブ(\(-\sin\) 型)です。
\(y_2\) について:
$$
\begin{aligned}
y_2 &= A \sin \frac{2\pi}{0.40} \left( 4.0 + \frac{x – 8.0}{5.0} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi \left( 10 + \frac{x – 8.0}{2.0} \right) \\[2.0ex]
&= A \sin 2\pi \left( \frac{x}{2.0} – 4.0 \right)
\end{aligned}
$$
同様に \(-4.0\) は整数なので無視できます。
$$
\begin{aligned}
y_2 &= A \sin \frac{2\pi x}{2.0}
\end{aligned}
$$
これは、原点から上がって始まるサインカーブ(\(\sin\) 型)です。
グラフの選択肢を見ると、
\(y_1\)(実線)が \(-\sin\) 型(原点で下がる)、\(y_2\)(破線)が \(\sin\) 型(原点で上がる)になっているのは ⑤ です。
使用した物理公式
- 三角関数の周期性: \(\sin(2\pi n + \theta) = \sin \theta\)
上記の通り。
式に \(t=4.0\) を入れて計算します。
\(y_1\) は計算すると \(-A \sin(\dots)\) の形になります。つまり、原点から下に下がる波です。
\(y_2\) は計算すると \(+A \sin(\dots)\) の形になります。つまり、原点から上に上がる波です。
実線(\(y_1\))が下がり始め、破線(\(y_2\))が上がり始めているグラフを探すと、⑤番が見つかります。
⑤。
思考の道筋とポイント
計算ではなく、波の性質を使って解きます。
波は1周期 \(T\) の間に1波長 \(\lambda\) だけ進みます。
時刻 \(t=4.0\,\text{s}\) は、周期 \(T=0.40\,\text{s}\) の何倍かを考えます。
この設問における重要なポイント
- \(t = 4.0\,\text{s}\) は、周期 \(T = 0.40\,\text{s}\) のちょうど10倍である(\(t = 10T\))。
- 波は10周期分の時間が経過すると、10波長分だけ進む。
- 波形が波長の整数倍だけ進むと、見た目の波形は元の位置(\(t=0\) の波形)と完全に重なる。
具体的な解説と立式
時刻 \(t=4.0\,\text{s}\) は、周期 \(T=0.40\,\text{s}\) のちょうど10倍です。
$$
\begin{aligned}
\frac{t}{T} &= \frac{4.0}{0.40} = 10
\end{aligned}
$$
波は1周期ごとに元の波形と重なる位置まで進むので、10周期後も波形は \(t=0\) のときと全く同じになります。
では、\(t=0\) の波形はどうなっているでしょうか。
\(y_1\)(Oからの波):
\(t=0\) では、原点Oの変位は \(0\) から正に増えようとしています(図2より)。
波は右に進むので、原点より右側(\(x>0\))には、「これから原点に来るはずだった波」ではなく、「過去に原点を出た波」が存在します。
原点を出た直後の波は「山」だったので、\(x>0\) の領域にはまず「山」があり、その先に「谷」があります。
しかし、これは間違いです。
正しい考え方はこうです:
原点 \(x=0\) の媒質は \(t=0\) 直後に「上」に動きます。
波が右に進む場合、原点の右側には「原点より昔に出た波」があります。
\(t=0\) の直前(\(t<0\))には、原点の変位は負(谷)でした(図2の周期性より)。
したがって、原点のすぐ右側には「谷」があるはずです。
つまり、\(y_1\) は原点から下がって始まる波形(\(-\sin\) 型)です。
\(y_2\)(Qからの波):
同様に、Q点(\(x=8.0\))でも \(t=0\) 直後に媒質は「上」に動きます。
波は左に進むので、Q点の左側(\(x<8.0\))には「Q点より昔に出た波」があります。
\(t<0\) でQ点は負(谷)だったので、Q点のすぐ左側には「谷」があります。
しかし、グラフは原点付近の様子を描いています。
\(y_2\) の式 \(y_2 = A \sin 2\pi (\frac{t}{T} + \frac{x-8.0}{\lambda})\) において \(t=0\) を考えると、
\(y_2 \propto \sin(x – \text{const})\) の形です。
もっと単純に、\(t=4.0\) で \(y_1\) と \(y_2\) がどうなるかを考えた方が確実です。
\(t=4.0\) は \(10T\) なので、\(t=0\) と同じ状態です。
\(y_1\) の式に \(t=0\) を入れると \(y_1 = A \sin(-\frac{2\pi x}{\lambda}) = -A \sin \frac{2\pi x}{\lambda}\)。これは \(-\sin\) 型。
\(y_2\) の式に \(t=0\) を入れると \(y_2 = A \sin(\frac{2\pi (x-8.0)}{\lambda})\)。
\(\lambda=2.0\) なので \(8.0\) は \(4\lambda\)(整数倍)。よって \(y_2 = A \sin \frac{2\pi x}{\lambda}\)。これは \(\sin\) 型。
\(y_1\) は \(-\sin\) 型、\(y_2\) は \(\sin\) 型。⑤と同じです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 遅延ポテンシャル(波の伝播と時間の遅れ)
- 核心: 波源から離れた地点での振動は、波源での振動が「伝わる時間」だけ遅れて再現されるという因果律を数式化することです。
- 理解のポイント:
- 伝播時間: 距離 \(d\) 離れた点に波が届く時間は \(d/v\) です。
- 変位の関係: 位置 \(x\) での時刻 \(t\) の変位 \(y(x, t)\) は、波源(位置 \(x_0\))での時刻 \(t – |x-x_0|/v\) の変位 \(y(x_0, t – |x-x_0|/v)\) と等しくなります。
- 式の構築: これにより、波源の振動の式さえわかれば、任意の場所・時間の波の式を機械的に導くことができます。
- 波の周期性とグラフの形状
- 核心: 正弦波は時間的にも空間的にも周期的であり、その性質を利用してグラフの形状を特定できることです。
- 理解のポイント:
- 時間的周期性: 時刻 \(t\) が周期 \(T\) の整数倍だけ経過すると、波形は元の状態に戻ります(\(t \to t + nT\) で \(y\) は不変)。
- 空間的周期性: 位置 \(x\) が波長 \(\lambda\) の整数倍だけずれると、位相は \(2\pi\) の整数倍だけ変わり、変位は同じになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 反射波を含む問題: 壁で反射した波の式を求める場合、壁の向こう側に「仮想の波源」を置き、そこから逆向きに進んでくる波として遅延ポテンシャルを適用する方法が有効です。
- ドップラー効果の導出: 波源が動く場合でも、「波源を出た波が観測者に届くまでの時間遅れ」を考える基本原理は同じです。
- 定常波のグラフ: 2つの波の和を描く問題では、それぞれの波形を描いて足し合わせる(重ね合わせの原理)のが基本ですが、特定の時刻(\(t=0, T/4\) など)における波形の特徴(腹や節の位置)を知っていると素早く描けます。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の振動グラフ(\(y-t\))を読み解く: \(t=0\) で \(y=0\) か? 傾きは正か負か? これにより \(\sin\) か \(-\sin\) か \(\cos\) かが決まります。
- 波の進行方向と距離: 波源の位置と観測点の位置関係を確認し、距離 \(d\) を \(x\) を使って正しく表します(\(x\) なのか \(L-x\) なのか)。
- 特殊な時刻・位置でのチェック: 求めた式や選んだグラフが正しいか確認するために、\(t=0\) や \(x=0\) などの簡単な値を代入して、矛盾がないか確かめます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 距離の立式ミス:
- 誤解: 波源が \(x=L\) にあり、波が負の向きに進むとき、位置 \(x\) までの距離を \(x-L\) としてしまう。
- 対策: 距離は常に正の値でなければなりません。図を描いて大小関係を確認し、大きい座標から小さい座標を引く(\(L-x\))か、絶対値を使う意識を持ちましょう。
- 波形の「未来」と「過去」の混同:
- 誤解: \(t=0\) の波形を描く際、原点の \(y-t\) グラフで \(t>0\) の部分(未来の動き)を、\(x>0\) の部分(空間的な広がり)にそのまま描いてしまう。
- 対策: 「波の先端(右側)にあるのは、昔に出た波である」という原則を思い出してください。\(y-t\) グラフの \(t>0\) の形は、\(y-x\) グラフでは波源の「後ろ(進行方向と逆側)」に現れます。波が右に進むなら、\(y-t\) グラフを左右反転させた形が \(y-x\) グラフになります。
- 周期性の利用忘れ:
- 誤解: \(t=4.0\) のような大きな時刻を代入して、真面目に位相計算をしてしまい、計算ミスをする。
- 対策: \(t\) が周期 \(T\) の何倍かを確認しましょう。整数倍なら \(t=0\) と同じ、半整数倍なら符号反転、などと簡略化できます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(波の基本公式):
- 選定理由: グラフから読み取れる周期 \(T\) と、問題文の速さ \(v\) から、波長 \(\lambda\) を求めるには \(v = \lambda/T\) が最適だからです。
- 適用根拠: 波動現象において常に成立する定義式です。
- 問(2)(3)でのアプローチ選択(遅延ポテンシャル):
- 選定理由: 「ある場所の揺れが伝わっていく」という現象を記述するのに最も直接的で、間違いにくい方法だからです。
- 適用根拠: 媒質が一様であれば波速は一定であり、波形が保存されるため、時間のズレだけで波を記述できます。
- 問(4)でのアプローチ選択(周期性の利用):
- 選定理由: \(t=4.0\) が周期 \(0.40\) のちょうど10倍であることに気づけば、計算なしで「\(t=0\) と同じ」と判断でき、圧倒的に速いからです。
- 適用根拠: 正弦波の定義(周期関数であること)に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 整数のくくり出し:
- \(\sin 2\pi (10 – x/2.0)\) のように、位相の中に整数(10)が出てきたら、即座に消去して \(\sin 2\pi (-x/2.0)\) と簡略化しましょう。式がシンプルになればなるほど、その後の符号ミスなどが減ります。
- グラフの概形チェック:
- 式 \(y = -A \sin kx\) を導いたら、「原点で下がって始まる波だな」と日本語で翻訳し、選択肢のグラフと見比べます。数式と図形のイメージを行き来させることが重要です。
- 単位の確認:
- \(t\) の係数は [Hz](または [rad/s])、\(x\) の係数は [1/m](または [rad/m])の次元を持っているか確認します。例えば \(x/5.0\) は [m]/[m/s] = [s] なので、時間 \(t\) と足し引きできて正しい、と判断できます。
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