「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅶ 章 25】プロセス

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プロセス

1 原子核の構成

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「原子核の構成(陽子数、中性子数、質量数、原子番号の関係)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 原子核の表記法 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) の定義。
  2. 原子番号 \(Z\) \(=\) 陽子の数。
  3. 質量数 \(A\) \(=\) 陽子の数 \(+\) 中性子の数。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 元素記号に付記された数値(左下の原子番号と左上の質量数)を読み取ります。
  2. 定義式に従って、陽子の数と中性子の数をそれぞれ計算します。

思考の道筋とポイント

  1. 表記の読み取り: 元素記号 \({}_{88}^{226}\text{Ra}\) の左下と左上の数字がそれぞれ何を表しているかを確認します。
  2. 定義の適用:
    • 左下の数字は「原子番号」であり、これは「陽子の数」そのものです。
    • 左上の数字は「質量数」であり、これは「陽子の数と中性子の数の和」です。
  3. 計算: 陽子の数は読み取るだけで求まります。中性子の数は、質量数から陽子の数を引き算することで求められます。

この設問における重要なポイント

  • 原子番号 \(Z\): 元素の種類を決定する番号で、原子核内の陽子の数に等しい値です。中性原子の状態では電子の数とも等しくなります。
  • 質量数 \(A\): 原子核を構成する粒子(核子)の総数です。電子の質量は陽子や中性子に比べて極めて小さいため、原子の質量はおよそ質量数に比例します。
  • 関係式: \((\text{質量数}) = (\text{陽子の数}) + (\text{中性子の数})\) という関係が常に成り立ちます。

具体的な解説と立式
問題で与えられたラジウムの表記は \({}_{88}^{226}\text{Ra}\) です。
これを一般的な原子核の表記 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) と比較すると、各変数は以下の値に対応します。

  • 原子番号(陽子の数):\(Z = 88\)
  • 質量数(核子の総数):\(A = 226\)

求める陽子の数を \(N_p\)、中性子の数を \(N_n\) とします。

まず、陽子の数 \(N_p\) は原子番号 \(Z\) そのものです。
$$ N_p = Z $$

次に、質量数 \(A\) は陽子の数と中性子の数の和で定義されるため、以下の関係が成り立ちます。
$$ A = N_p + N_n $$

この式を変形して、中性子の数 \(N_n\) を求める式を立てます。
$$ N_n = A – N_p $$

使用した物理公式

  • 陽子の数 \(=\) 原子番号 \(Z\)
  • 中性子の数 \(=\) 質量数 \(A\) – 原子番号 \(Z\)
計算過程

読み取った値 \(Z = 88\)、\(A = 226\) を式に代入して計算します。

まず、陽子の数 \(N_p\) です。
$$ N_p = 88 $$

次に、中性子の数 \(N_n\) を計算します。
$$ \begin{aligned} N_n &= 226 – 88 \\[2.0ex] &= 138 \end{aligned} $$

この設問の平易な説明

原子核は、プラスの電気を持つ「陽子」と、電気を持たない「中性子」という2種類の粒が、ぎっしりと集まってできています。

  • 元素記号の左下に書かれている数字「\(88\)」は、その原子のID番号(原子番号)です。これは「陽子の数」そのものを表しています。つまり、陽子は \(88\)\(\text{個}\) あります。
  • 左上に書かれている数字「\(226\)」は、陽子と中性子を合わせた「粒の合計数(質量数)」を表しています。
  • したがって、合計の \(226\)\(\text{個}\) から、陽子の分である \(88\)\(\text{個}\) を取り除けば、残りが「中性子の数」になります。計算すると \(138\)\(\text{個}\) です。
解答 陽子の数:88個,中性子の数:138個

2 放射性崩壊の仕組み

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射性崩壊(\(\alpha\) 崩壊と \(\beta\) 崩壊)のメカニズム」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量数保存の法則: 反応の前後で、質量数(左上の数字)の総和は変わらない。
  2. 電荷保存の法則: 反応の前後で、原子番号(左下の数字、電荷に対応)の総和は変わらない。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. それぞれの崩壊について、放出される粒子の正体(\(\alpha\) 線、\(\beta\) 線)を確認します。
  2. 反応式を立て、保存則を用いて親原子核(崩壊前)と娘原子核(崩壊後)の質量数と原子番号の変化を追跡します。

思考の道筋とポイント

  1. \(\alpha\) 崩壊の分析:
    • \(\alpha\) 線とは何か? \(\rightarrow\) ヘリウムの原子核 \({}_{2}^{4}\text{He}\) です。
    • これを放出すると、元の原子核から陽子2個、中性子2個が失われます。
  2. \(\beta\) 崩壊の分析:
    • \(\beta\) 線とは何か? \(\rightarrow\) 高速の電子 \({}_{-1}^{0}\text{e}\) です。
    • 原子核の中に電子は存在しないのに、なぜ放出されるのか? \(\rightarrow\) 中性子が陽子と電子に変化するためです。
    • この変化により、質量数(陽子+中性子)はどうなるか、原子番号(陽子数)はどうなるかを考えます。

この設問における重要なポイント

  • \(\alpha\) 粒子: \({}_{2}^{4}\text{He}\) (陽子2個、中性子2個の塊)。非常に安定な構造をしています。
  • \(\beta\) 粒子: \({}_{-1}^{0}\text{e}\) (電子)。質量数は \(0\) とみなせ、電荷は \(-1\) です。
  • \(\beta\) 崩壊の本質: 原子核内の中性子 \({}_{0}^{1}\text{n}\) が、陽子 \({}_{1}^{1}\text{p}\) と電子 \({}_{-1}^{0}\text{e}\) に変わる現象です(厳密には反ニュートリノも放出されますが、ここでは質量数と電荷に着目します)。

具体的な解説と立式
(ア)~(ウ) \(\alpha\) 崩壊について
ある原子核 \({}_{Z}^{A}\text{X}\) が \(\alpha\) 崩壊を起こすと、\(\alpha\) 線、すなわちヘリウム原子核 \({}_{2}^{4}\text{He}\) を放出します。
崩壊後の原子核を \(\text{Y}\) とすると、反応式は以下のように表されます。
$$ {}_{Z}^{A}\text{X} \rightarrow {}_{?}^{?}\text{Y} + {}_{2}^{4}\text{He} $$

ここで、保存則を適用します。

  • 質量数(左上)の保存: \(A = (\text{Yの質量数}) + 4\)
    • よって、Yの質量数は \(A – 4\) となります。つまり、4減少します。
  • 原子番号(左下)の保存: \(Z = (\text{Yの原子番号}) + 2\)
    • よって、Yの原子番号は \(Z – 2\) となります。つまり、2減少します。

したがって、放出されるのは \(\alpha\) 線(\({}_{2}^{4}\text{He}\) の原子核)、質量数は 4 減少、原子番号は 2 減少します。

(エ)~(カ) \(\beta\) 崩壊について
\(\beta\) 崩壊では、原子核から \(\beta\) 線(電子) が放出されます。電子は \({}_{-1}^{0}\text{e}\) と表されます。
反応式は以下のようになります。
$$ {}_{Z}^{A}\text{X} \rightarrow {}_{?}^{?}\text{Y} + {}_{-1}^{0}\text{e} $$

保存則を適用します。

  • 質量数(左上)の保存: \(A = (\text{Yの質量数}) + 0\)
    • よって、Yの質量数は \(A\) のままです。つまり、変化しません
  • 原子番号(左下)の保存: \(Z = (\text{Yの原子番号}) + (-1)\)
    • よって、Yの原子番号は \(Z + 1\) となります。つまり、1増加します。

この現象の背景には、原子核内で以下の中性子の変化が起きています。
$$ {}_{0}^{1}\text{n} \rightarrow {}_{1}^{1}\text{p} + {}_{-1}^{0}\text{e} $$
中性子(質量数1)が陽子(質量数1)に変わるため、全体の質量数は変わりませんが、陽子が1つ増えるため原子番号は1つ増えます。

したがって、放出されるのは \(\beta\) 線(電子)原子番号 が1増加し、質量数 は変化しません。

使用した物理公式

  • \(\alpha\) 崩壊の反応式: \({}_{Z}^{A}\text{X} \rightarrow {}_{Z-2}^{A-4}\text{Y} + {}_{2}^{4}\text{He}\)
  • \(\beta\) 崩壊の反応式: \({}_{Z}^{A}\text{X} \rightarrow {}_{Z+1}^{A}\text{Y} + {}_{-1}^{0}\text{e}\)
計算過程

本問は概念的な理解を問うものであり、具体的な数値計算はありません。上記の「具体的な解説と立式」における保存則の確認(\(+4, +2\) や \(+0, -1\) の収支合わせ)が計算プロセスに相当します。

この設問の平易な説明
  • \(\alpha\) 崩壊: 原子核が「重すぎる」ときに起こります。身軽になるために、陽子2個と中性子2個をセットにした「ヘリウムの原子核(\(\alpha\) 線)」という塊を外に放り出します。塊の分だけ軽くなる(質量数が4減る)し、陽子も減る(原子番号が2減る)ので、全く別の元素に変わります。
  • \(\beta\) 崩壊: 原子核の中の陽子と中性子のバランスが悪いときに起こります。「中性子」が突然変身して「陽子」になり、その際に余った電気を「電子(\(\beta\) 線)」として外に飛ばします。中性子が陽子に代わっただけなので、粒の総数(質量数)は変わりませんが、陽子が増えたので原子番号は1つ進み、別の元素になります。
解答 (ア) \(\alpha\) 線(\({}_{2}^{4}\text{He}\) の原子核),(イ) 4,(ウ) 2,(エ) \(\beta\) 線(電子),(オ) 原子番号,(カ) 質量数

3 半減期の計算

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答と一部異なる方針で解説を進めます。

  1. 解説の方針が模範解答と異なる点
    • 模範解答では公式 \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) を用いた計算のみを示していますが、本解説では「半減期ごとに量が半分になる」という直感的なステップ計算による別解も併記します。
  2. なぜ模範解答と異なるアプローチを取るのか
    • 直感的理解の促進: 公式を忘れてしまっても、半減期の定義さえ理解していれば解けるという自信をつけさせるためです。特に経過時間が半減期の整数倍である場合、ステップ計算の方が計算ミスを防ぎやすい場合があります。
  3. 結果に与える影響
    • どちらの方法でも同じ答えが得られますが、複数の視点を持つことで検算が可能になります。

この問題のテーマは「放射性同位体の半減期と崩壊の法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 半減期の定義: 放射性原子核の数が、崩壊によって元の半分になるのにかかる時間 \(T\)。
  2. 崩壊の法則: 時間 \(t\) 経過後の原子核の数 \(N\) は、初めの数 \(N_0\) と半減期 \(T\) を用いて \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) で表される。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた半減期 \(T\) と経過時間 \(t\) の関係を確認します。
  2. 公式に代入して計算するか、半減期ごとに半分にしていく操作を繰り返して残量を求めます。

思考の道筋とポイント

  1. 情報の整理:
    • 対象: セシウム \({}_{55}^{137}\text{Cs}\)
    • 半減期 \(T = 30\)\(\text{年}\)
    • 初期質量 \(m_0 = 1.0 \, \text{g}\) (原子核の数 \(N\) は質量 \(m\) に比例するため、公式は質量についても同様に成り立ちます)
    • 経過時間 \(t = 60\)\(\text{年}\)
  2. 時間の比較: 経過時間 \(60\)\(\text{年}\) は、半減期 \(30\)\(\text{年}\) の何倍かを考えます。
    • \(60 \div 30 = 2\)\(\text{倍}\) です。つまり、半減期が2回訪れたことになります。
  3. 計算: 「半分になる」という操作を2回繰り返します。

この設問における重要なポイント

  • 質量の減少: 放射性崩壊によって原子核の種類が変わると、元の原子核(ここでは \({}^{137}\text{Cs}\))の質量は減少します。
  • 指数関数的減衰: 減り方は一定量ずつではなく、一定の割合(半分ずつ)で減っていきます。
  • 公式の適用範囲: 原子核の数 \(N\)、質量 \(m\)、放射能の強さ(ベクレル)など、崩壊する量であればすべて同じ形の公式が使えます。

具体的な解説と立式
初期の質量を \(m_0\)、\(t\) 年後の質量を \(m\)、半減期を \(T\) とします。
半減期の公式は質量についても成り立つので、以下の式を立てます。
$$ m = m_0 \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{t}{T}} $$

問題文より、各値は以下の通りです。

  • \(m_0 = 1.0 \, \text{g}\)
  • \(T = 30 \, \text{年}\)
  • \(t = 60 \, \text{年}\)

これらを式に代入します。

使用した物理公式

  • 半減期の公式: \(N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\) (質量 \(m\) についても \(m = m_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\))
計算過程

$$ \begin{aligned} m &= 1.0 \times \left( \frac{1}{2} \right)^{\frac{60}{30}} \\[2.0ex] &= 1.0 \times \left( \frac{1}{2} \right)^{2} \\[2.0ex] &= 1.0 \times \frac{1}{4} \\[2.0ex] &= 0.25 \end{aligned} $$
したがって、残る質量は \(0.25 \, \text{g}\) です。

別解: ステップ計算による解法

思考の道筋とポイント
公式を使わず、半減期の定義「\(T\) 年経つごとに量が \(\frac{1}{2}\) になる」に従って、時間を追って計算します。

具体的な解説と立式

  1. スタート時(\(0\)\(\text{年後}\)):質量は \(1.0 \, \text{g}\) です。
  2. \(30\)\(\text{年後}\)(半減期が1回経過):質量は半分になります。
    $$ 1.0 \times \frac{1}{2} = 0.50 \, \text{g} $$
  3. \(60\)\(\text{年後}\)(さらに \(30\)\(\text{年経過}\)):残っていた \(0.50 \, \text{g}\) がさらに半分になります。
    $$ 0.50 \times \frac{1}{2} = 0.25 \, \text{g} $$
計算過程

上記の通り、単純な掛け算の繰り返しで求められます。
$$ 1.0 \xrightarrow{30\text{年}} 0.50 \xrightarrow{30\text{年}} 0.25 $$

この設問の平易な説明

「半減期が30年」というのは、「30年経つと、コイン投げで裏が出たものを取り除くように、量が半分に減ってしまう」というルールです。

  • 最初は \(1.0 \, \text{g}\) ありました。
  • 30年経つと、半分消えて \(0.5 \, \text{g}\) になります。
  • さらに30年経って合計60年になると、残っていた \(0.5 \, \text{g}\) がまた半分になり、\(0.25 \, \text{g}\) になります。

このように、時間が経つにつれて半分、また半分と減っていくのが放射性物質の特徴です。

解答 0.25g
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4 放射能の単位と計算

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「放射能の強さと単位(ベクレル)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 放射能の強さ(放射能): 単位時間あたりに崩壊する原子核の数。
  2. ベクレル(\(\text{Bq}\))の定義: 1秒間に1個の原子核が崩壊するときの放射能の強さを \(1 \, \text{Bq}\) とする。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文で与えられた崩壊数と時間の単位を確認します。
  2. 時間を「秒」に換算し、1秒あたりの崩壊数を計算します。

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