基本例題
基本例題84 ボーアの原子模型
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ボーアの原子模型」です。古典力学の法則に量子論的な仮説を取り入れることで、原子の安定性や発光スペクトルを説明した歴史的に重要なモデルです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等速円運動の運動方程式: 電子が原子核から受ける静電気力を向心力として円運動すること。
- クーロンの法則: 電荷間に働く静電気力の大きさ。
- ド・ブロイ波(物質波): 電子などの粒子が波動性を持つという考え方。
- ボーアの量子条件: 電子の軌道は、円周が電子波の波長の整数倍になるものに限られるという条件。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア)(イ)では、電子の運動に着目し、向心力と静電気力のつり合い(運動方程式)を記述します。
- (ウ)では、電子の波動性に着目し、軌道が安定して存在するための条件(量子条件)を記述します。
- (エ)では、上記の2つの式を連立させて、観測にかからない電子の速さ \(v\) を消去し、軌道半径 \(r\) を求めます。
- (オ)では、力学的エネルギーの定義式に、運動方程式の関係式と求めた半径 \(r\) を代入して、エネルギー準位 \(E_n\) を計算します。
問(ア)(イ)
思考の道筋とポイント
電子は原子核の周りを等速円運動しています。円運動をするためには、中心向きの力(向心力)が必要です。この向心力の役割を果たしているのが、正の電荷を持つ原子核と負の電荷を持つ電子の間に働く静電気力(クーロン力)です。
この設問における重要なポイント
- 電子の質量は \(m\)、速さは \(v\)、軌道半径は \(r\)。
- 円運動の加速度の大きさは \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\)。
- クーロン力の大きさは \(k_0 \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)。
具体的な解説と立式
まず、電子の運動方程式を立てます。
運動の方向(中心向き)を正とします。
質量 \(m\) の電子が、速さ \(v\)、半径 \(r\) で等速円運動しているとき、その加速度の大きさ \(a\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{v^2}{r}
\end{aligned}
$$
一方、電子に働く力 \(F\) は、原子核(電荷 \(+e\))と電子(電荷 \(-e\))の間の静電気力です。クーロンの法則より、その大きさは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F &= k_0 \frac{e \times e}{r^2} \\[2.0ex]
&= k_0 \frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
運動方程式 \(ma = F\) より、以下の関係式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
m \times \frac{v^2}{r} &= k_0 \times \frac{e^2}{r^2} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速円運動の加速度: \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
- クーロンの法則: \(F = k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r^2}\)
- 運動方程式: \(ma = F\)
問題文の空欄に当てはまる式は、立式した運動方程式の項そのものです。
(ア)には加速度の式、(イ)には力の式の一部が入ります。
電子が原子核の周りを回るには、常に中心へ引っ張る力が必要です。これを「向心力」と呼びます。ここでは、プラスの原子核とマイナスの電子が電気の力で引き合う力がその役割をしています。「回ろうとする勢い(遠心力と釣り合う慣性)」と「引き合う電気の力」がバランスしている状態を式にしたのがこれです。
(ア)は \(\displaystyle\frac{v^2}{r}\)、(イ)は \(\displaystyle\frac{e^2}{r^2}\) です。次元を確認すると、左辺は \([M][L][T]^{-2}\)(力)、右辺もクーロン力の式なので力となり、整合しています。
問(ウ)
思考の道筋とポイント
ボーアは「電子は粒子であると同時に波(物質波)としての性質も持つ」と考えました。電子が軌道上で消滅せずに安定して回り続けるためには、その波が一周して戻ってきたときに、元の波と重なって強め合う(定常波ができる)必要があります。
この設問における重要なポイント
- 物質波(ド・ブロイ波)の波長 \(\lambda\) は、プランク定数 \(h\) と運動量 \(mv\) を用いて \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\) と表される。
- 円軌道の円周 \(2\pi r\) が、波長 \(\lambda\) の整数倍 \(n\lambda\) になるとき、波は強め合う。
具体的な解説と立式
電子波の波長 \(\lambda\) は、ド・ブロイの関係式より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{h}{mv}
\end{aligned}
$$
この波が円周上で定常波を作る条件(量子条件)は、「円周の長さ \(=\) 波長の整数倍」です。
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \times \lambda
\end{aligned}
$$
これに波長の式を代入すると、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \times \frac{h}{mv} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ド・ブロイ波長: \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\)
- 量子条件: \(2\pi r = n\lambda\)
空欄(ウ)に入るのは、波長 \(\lambda\) の式です。
電子を「波」だと考えてみましょう。弦楽器の弦のように、決まった長さ(円周)の中に波がちょうどきれいに収まるときだけ、その波は安定して存在できます。もし波長が半端だと、一周して戻ってきた波と打ち消し合って消えてしまいます。「円周が波長の整数倍になる」という条件が、電子が特定の軌道だけで回れる理由です。
(ウ)は \(\displaystyle\frac{h}{mv}\) です。
問(エ)
思考の道筋とポイント
ここまでのステップで、力学的な条件(式①)と量子論的な条件(式②)の2つの式が得られました。未知数は速さ \(v\) と半径 \(r\) の2つです。ここから \(v\) を消去して、許される軌道半径 \(r\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 式①: \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\)
- 式②: \(2\pi r = \displaystyle\frac{nh}{mv}\)
- これらを連立方程式として解く。
具体的な解説と立式
式①と式②を連立させて \(v\) を消去します。
まず、式②を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{nh}{2\pi mr}
\end{aligned}
$$
これを式①に代入します。式①の両辺に \(r\) を掛けて \(mv^2 = k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\) と整理してから代入すると計算しやすいです。
使用した物理公式
- 連立方程式の解法
式①を変形します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= k_0 \frac{e^2}{r^2} \\[2.0ex]
mv^2 &= k_0 \frac{e^2}{r} \quad \cdots ①’
\end{aligned}
$$
式②から得られた \(v = \displaystyle\frac{nh}{2\pi mr}\) を式①’に代入します。
$$
\begin{aligned}
m \left( \frac{nh}{2\pi mr} \right)^2 &= k_0 \frac{e^2}{r} \\[2.0ex]
m \cdot \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m^2 r^2} &= k_0 \frac{e^2}{r} \\[2.0ex]
\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m r^2} &= k_0 \frac{e^2}{r}
\end{aligned}
$$
両辺に \(r^2\) を掛けて整理し、\(r\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m} &= k_0 e^2 r \\[2.0ex]
r &= \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 k_0 m e^2}
\end{aligned}
$$
「力のつり合い」と「波の条件」の両方を満たす場所だけが、電子の通り道になれます。二つの式を組み合わせて計算すると、電子が原子核からどれくらいの距離(半径)にいればよいかが求まります。結果を見ると、半径 \(r\) は整数 \(n\) の2乗に比例して大きくなることがわかります。つまり、電子の軌道は連続的ではなく、飛び飛びの値をとるということです。
求まった \(r = \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 k_0 m e^2}\) は、すべての定数が正であるため正の値となり、物理的に妥当です。また、\(n=1\) のときの半径(ボーア半径)は物理定数としてよく知られています。
問(オ)
思考の道筋とポイント
最後に、電子が持つ全エネルギー \(E_n\) を求めます。全エネルギーは、運動エネルギーと位置エネルギーの和です。ここで、先ほど求めた \(r\) を代入する前に、運動方程式(式①’)を使って式を簡単にするのが計算ミスのリスクを減らすコツです。
この設問における重要なポイント
- 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
- 位置エネルギー(無限遠基準): \(U = -k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\)
- 全エネルギー: \(E_n = K + U\)
- 関係式 \(mv^2 = k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\) を利用する。
具体的な解説と立式
電子の全エネルギー \(E_n\) は、運動エネルギーと静電気力による位置エネルギーの和です。
$$
\begin{aligned}
E_n &= \frac{1}{2}mv^2 + \left( -k_0 \frac{e^2}{r} \right)
\end{aligned}
$$
ここで、式①’ \(mv^2 = k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\) を用いて、運動エネルギーの項を書き換えます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 &= \frac{1}{2} \left( k_0 \frac{e^2}{r} \right)
\end{aligned}
$$
これをエネルギーの式に代入します。
使用した物理公式
- 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
- 静電気力の位置エネルギー: \(U = k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\)
- 力学的エネルギー保存則: \(E = K + U\)
まず、\(E_n\) を \(r\) だけの式にします。
$$
\begin{aligned}
E_n &= \frac{1}{2} k_0 \frac{e^2}{r} – k_0 \frac{e^2}{r} \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{2} k_0 \frac{e^2}{r}
\end{aligned}
$$
ここに、(エ)で求めた \(r = \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 k_0 m e^2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E_n &= -\frac{k_0 e^2}{2} \cdot \frac{1}{r} \\[2.0ex]
&= -\frac{k_0 e^2}{2} \cdot \frac{4\pi^2 k_0 m e^2}{n^2 h^2} \\[2.0ex]
&= -\frac{4\pi^2 k_0^2 m e^4}{2 n^2 h^2} \\[2.0ex]
&= -\frac{2\pi^2 k_0^2 m e^4}{n^2 h^2}
\end{aligned}
$$
電子のエネルギーを計算します。普通に計算すると大変ですが、「運動エネルギーは位置エネルギーの大きさの半分になる」という円運動の性質(ビリアル定理の一種)を使うと、計算がとても楽になります。最後に半径 \(r\) の式を代入すると、エネルギーも整数 \(n\) によって決まる飛び飛びの値(エネルギー準位)になることがわかります。マイナスの値になるのは、電子が原子核に束縛されていて、外に飛び出すにはエネルギーが必要だということを意味しています。
\(E_n = -\displaystyle\frac{2\pi^2 k_0^2 m e^4}{n^2 h^2}\) となりました。\(n\) が大きくなる(外側の軌道に行く)ほど、絶対値が小さくなり、\(0\) に近づきます(エネルギーが高くなる)。これは物理的な直感と一致します。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 古典力学と量子論の融合
- 核心: ボーアの原子模型の最大の特徴は、電子の運動を「古典的な円運動」として扱いながら、その軌道の選択に「量子条件」という全く新しいルールを導入した点にあります。
- 理解のポイント:
- 運動方程式(古典論): 電子はクーロン力を向心力として、ニュートンの運動方程式に従って運動します。これは惑星が太陽の周りを回るのと同じ理屈です。
- 量子条件(量子論): しかし、どんな半径でも回れるわけではありません。「電子波の波長が軌道一周分ときれいに重なる(定常波を作る)」ような特定の半径でしか、電子は安定して存在できません。この「飛び飛びの状態」こそが量子論の本質です。
- エネルギー準位の離散性
- 核心: 軌道半径 \(r\) が飛び飛びの値(\(n^2\) に比例)しかとれない結果、電子が持つエネルギー \(E_n\) もまた、連続的ではなく飛び飛びの値(\(1/n^2\) に比例)をとります。
- 理解のポイント:
- 安定性: 古典電磁気学では、加速運動する電荷は電磁波を出してエネルギーを失い、原子核に落下してしまうはずでした。ボーアは「量子条件を満たす軌道(定常状態)では電磁波を出さない」と仮定することで、原子の安定性を説明しました。
- スペクトル: 電子がエネルギー準位間を移動(遷移)するときに、そのエネルギー差に相当する光を放出・吸収します。これが原子ごとの特徴的な線スペクトルの原因です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 人工衛星や惑星の運動: 万有引力を向心力とする円運動の問題は、クーロン力が万有引力に変わるだけで、数式の構造は全く同じです(\(k_0 e^2 \leftrightarrow Gm_1 m_2\))。運動エネルギーと位置エネルギーの関係(\(K = – \displaystyle\frac{1}{2}U\))も共通して使えます。
- リュードベリ定数の導出: 今回求めたエネルギー準位の式から、電子が遷移する際の光の波長を求める問題へと発展します。エネルギー差 \(\Delta E = h\nu = hc/\lambda\) の式と組み合わせることで、リュードベリ定数を物理定数で表す計算問題は頻出です。
- 一様磁場中の荷電粒子の円運動: ローレンツ力を向心力とする運動です。ここでも「運動方程式」と「量子条件(ランダウ準位などへの発展)」の組み合わせが問われることがあります。
- 初見の問題での着眼点:
- 力のつり合い(運動方程式)を立てる: まずは古典力学的に、何が向心力になっているかを見極め、\(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = F\) の式を作ります。
- 量子条件を確認する: 「円周が波長の整数倍」「角運動量が \(\displaystyle\frac{h}{2\pi}\) の整数倍」など、問題文で与えられた量子化の条件を数式にします。
- 変数を消去する: 上記の2式から、観測できない量(通常は速さ \(v\))を消去し、軌道半径 \(r\) やエネルギー \(E\) を量子数 \(n\) の関数として表すのが定石フローです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 位置エネルギーの符号ミス:
- 誤解: 静電気力による位置エネルギーを、運動エネルギーと同じように正の値として扱ってしまう。
- 対策: 引力による位置エネルギーは、無限遠を基準(\(0\))とすると必ず「負」になります。\(U = -k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\) のマイナス符号を絶対に忘れないようにしましょう。「束縛されている=エネルギーがマイナス」というイメージを持つと良いです。
- プランク定数の記号の混同:
- 誤解: \(\hbar\)(エイチ・バー \(= h/2\pi\))と \(h\)(プランク定数)を混同したり、\(2\pi\) を掛け忘れたりする。
- 対策: 教科書や問題文の定義をよく確認しましょう。ボーアの量子条件は \(mvr = n \displaystyle\frac{h}{2\pi}\) と書かれることも多いですが、これは \(2\pi r = n \displaystyle\frac{h}{mv}\) を変形しただけの同じ式です。
- 計算過程での文字の書き間違い:
- 誤解: \(k_0, m, e, h, n, \pi\) など、文字が多くなるため、指数や添字を書き間違える。
- 対策: 特に \(E_n\) の計算では、\(n^2\) や \(e^4\) など次数が高くなります。計算の途中で数値を代入せず、最後まで文字式のまま整理し、次元解析(単位の確認)でミスをチェックする習慣をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 運動方程式 \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\) の選択:
- 選定理由: 電子が円運動しているという事実から、向心力が必要であることは自明です。その力の源が静電気力であるため、この式以外に運動を記述する方法はありません。
- 適用根拠: 原子核の質量 \(M\) は電子の質量 \(m\) に比べて非常に大きいため(\(M \gg m\))、原子核は静止しているとみなせ、電子だけが動くという近似が成立します。
- 量子条件 \(2\pi r = n \displaystyle\frac{h}{mv}\) の選択:
- 選定理由: 古典論だけでは、電子は電磁波を出して原子核に落ち込んでしまうという矛盾(原子の崩壊)を解決できません。「特定の軌道だけが許される」というボーアの仮説を数式化する必要があります。
- 適用根拠: ド・ブロイの物質波の概念を導入すると、この条件は「円周上で電子波が定常波を作る」という物理的にイメージしやすい条件として正当化されます。
- エネルギー保存則 \(E_n = K + U\) の選択:
- 選定理由: 原子の安定性や発光スペクトルを議論するには、電子が持つトータルのエネルギーを知る必要があります。
- 適用根拠: 保存力(静電気力)のみが働く場での運動なので、力学的エネルギーの定義通りに計算できます。ここで \(mv^2\) を運動方程式を使って消去するテクニックは、計算量を減らすための必須スキルです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- ビリアル定理的な関係の活用:
- 逆二乗力(\(F \propto 1/r^2\))による円運動では、常に \(K = -\displaystyle\frac{1}{2}U\) (つまり \(2K + U = 0\))という美しい関係が成り立ちます。これを知っていれば、\(E = K + U = \displaystyle\frac{1}{2}U = -K\) と瞬時に変形でき、計算の手間とミスを大幅に減らせます。今回の問題でも \(E_n = -\displaystyle\frac{1}{2} k_0 \displaystyle\frac{e^2}{r}\) となるのはこのためです。
- 文字式の塊(かたまり)を見る:
- \(r\) の式を \(E_n\) に代入する際、分母分子がひっくり返ったり、二乗したりと複雑になりがちです。\(r = A \cdot n^2\) (\(A\) は定数の塊)のように置き換えて計算を進め、最後に \(A\) を戻すといった工夫をすると、視覚的にスッキリしてミスが減ります。
- 次元解析(単位チェック):
- エネルギー \(E\) の次元は \([M][L]^2[T]^{-2}\) です。最終的な答えの次元がこれと合っているか確認しましょう。例えば、\(h\)(ジュール秒 \([J \cdot s]\))が分母に来ているか分子に来ているかなどで、明らかな間違いに気づけます。
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基本問題
585 ラザフォードの実験
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 別解: 電位(電場)の概念を用いた解法
- 模範解答が2点電荷間の位置エネルギーの公式 \(U = k_0 \displaystyle\frac{Qq}{r}\) を直接用いているのに対し、別解では「金の原子核が周囲に作る電位 \(V\)」をまず考え、その電位の中に\(\alpha\)線(電荷 \(q\))が存在することで位置エネルギー \(qV\) を持つ、という「場」の視点から立式します。
- 別解: 電位(電場)の概念を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的視野の拡大: 「2つの物体が力を及ぼし合う(遠隔作用)」という見方から、「一方が場を作り、その場から他方が作用を受ける(近接作用)」という現代物理学的な見方への転換を促します。
- 応用力の向上: 電荷の配置が複雑になった場合や、電位分布が与えられている問題など、公式の単純適用が難しい場面でも対応できる基礎力が身につきます。
- 結果への影響
- 思考のプロセスが異なるだけで、数式自体は模範解答と等価になり、最終的な答えも完全に一致します。
この問題のテーマは「荷電粒子の衝突とエネルギー保存則」です。原子核物理学の扉を開いた歴史的な実験である「ラザフォードの散乱実験」を題材に、静電気力(クーロン力)による位置エネルギーと力学的エネルギー保存則の理解を深めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 静電気力による位置エネルギー: 2つの点電荷の間に働く静電気力(クーロン力)による位置エネルギーの公式 \(U = k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\) を正しく使えること。
- 力学的エネルギー保存則: 静電気力は保存力であるため、摩擦などの非保存力が働かない限り、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれること。
- 無限遠の扱い: 「十分遠方」とは、距離 \(r\) が非常に大きく、位置エネルギーが \(0\) とみなせる状態であることを理解していること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- \(\alpha\)線が金の原子核に近づく運動において、エネルギー保存則を適用します。
- 「はじめ(無限遠)」の状態と、「あと(最も近づいた瞬間)」の状態のそれぞれについて、運動エネルギーと位置エネルギーを書き出します。
- 最も近づいた瞬間、\(\alpha\)線の速さが \(0\) になることに着目して方程式を立て、距離 \(r\) を求めます。
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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