「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅵ 章 20】プロセス

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プロセス

1 磁場中の磁極が受ける力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「磁場中の磁極が受ける力(磁気力)」です。電場と電荷の関係との類似性を意識すると理解が深まります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 磁気力の公式: 磁場 \(H\) 中にある磁気量 \(m\) の磁極が受ける力 \(F\) は、\(F = mH\) で表されます。
  2. 電場とのアナロジー: 電場 \(E\) 中の電荷 \(q\) が受ける静電気力 \(F = qE\) と対応しています。
  3. 単位の関係: \([\text{N}] = [\text{Wb}] \times [\text{A/m}]\) という次元関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文で与えられた物理量(磁場の強さ、磁気量)を整理し、磁気力の公式に代入して計算します。

思考の道筋とポイント
この問題では、磁場の強さと磁気量が数値として与えられています。求めるのは「磁気力の大きさ」です。
物理では、新しい概念(磁場)を学ぶ際、既知の概念(電場)と対比させることが非常に有効です。

  • 電場: 電荷 \(q\) が力を受ける空間。力は \(F = qE\)。
  • 磁場: 磁極 \(m\) が力を受ける空間。力は \(F = mH\)。

この対応関係を思い出せば、公式を忘れることはありません。また、問題文の数値はすべて有効数字2桁で与えられているため、最終的な答えも有効数字2桁で答える必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 磁気量 \(m\): 磁極の強さを表す量で、単位はウェーバ \([\text{Wb}]\) です。N極は正、S極は負の値として扱いますが、力の「大きさ」を求める場合は絶対値を用います。
  • 磁場の強さ \(H\): 単位はアンペア毎メートル \([\text{A/m}]\) です。
  • 力の向き: 正の磁気量(N極)は磁場の向きに、負の磁気量(S極)は磁場と逆向きに力を受けます。今回は大きさのみが問われています。

具体的な解説と立式
まず、問題文から与えられた物理量を整理します。
磁場の強さを \(H\)、磁気量を \(m\) とします。
問題文より、以下の値が与えられています。
\(H = 25 \, \text{A/m}\)
\(m = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{Wb}\)

求める磁気力の大きさを \(F \, [\text{N}]\) とします。
磁場 \(H\) 中にある磁気量 \(m\) の磁極が受ける力の大きさは、以下の関係式で表されます。
$$ F = mH $$
この式に数値を代入して計算を行います。

使用した物理公式

  • 磁気力の大きさ: \(F = mH\)
    • \(F\): 磁気力 \([\text{N}]\)
    • \(m\): 磁気量 \([\text{Wb}]\)
    • \(H\): 磁場の強さ \([\text{A/m}]\)
計算過程

立式した式に数値を代入し、計算を進めます。
$$
\begin{aligned}
F &= mH \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^{-8}) \times 25 \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 25 \times 10^{-8} \\[2.0ex]
&= 50 \times 10^{-8}
\end{aligned}
$$
ここで、結果を科学的表記(\(a \times 10^n\) の形、ただし \(1 \le a < 10\))に直します。
$$
\begin{aligned}
F &= 5.0 \times 10^1 \times 10^{-8} \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{1-8} \\[2.0ex]
&= 5.0 \times 10^{-7}
\end{aligned}
$$
したがって、求める磁気力の大きさは \(5.0 \times 10^{-7} \, \text{N}\) です。

この設問の平易な説明

この問題は、「磁石の成分(磁極)」が「磁気の空間(磁場)」から受ける力を計算するものです。
イメージとしては、風(磁場)の中に帆(磁極)を立てたときに受ける風圧(磁気力)のようなものです。

  • 風が強いほど(\(H\) が大きいほど)、受ける力は強くなります。
  • 帆が大きいほど(\(m\) が大きいほど)、受ける力は強くなります。

この2つの要素のかけ算で力が決まるという、非常にシンプルな関係式を使っています。電気の世界で「電気の粒(電荷)」が「電気の空間(電場)」から力を受けるのと全く同じ仕組みだと考えると分かりやすいでしょう。

解答 \(5.0 \times 10^{-7} \, \text{N}\)

2 直線電流がつくる磁場

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「直線電流がつくる磁場」です。電流とその周囲に発生する磁場の関係を定量的に扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直線電流がつくる磁場の公式: 無限に長い直線電流 \(I\) から距離 \(r\) 離れた点の磁場の強さ \(H\) は、\(H = \frac{I}{2\pi r}\) で与えられます。
  2. 磁場の形状: 直線電流を中心とする同心円状に形成されます。
  3. 右ねじの法則: 磁場の向きを決定する法則です(今回は大きさのみを問われていますが、概念として重要です)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から電流 \(I\) と距離 \(r\) の値を読み取ります。
  2. 直線電流の磁場の公式に代入し、計算します。この際、円周率 \(\pi\) と数値 \(3.14\) の関係に注目して計算を簡略化します。

思考の道筋とポイント

  • 公式の特定: 「直線電流」というキーワードから、適用すべき公式 \(H = \frac{I}{2\pi r}\) を特定します。
  • 類似公式との区別: よく似た公式に「円形電流の中心磁場 \(H = \frac{I}{2r}\)」がありますが、これと混同しないように注意が必要です。直線電流の場合は、磁力線が電流を取り囲む円周(長さ \(2\pi r\))上に分布するため、分母に \(\pi\) が含まれると覚えると良いでしょう。
  • 計算の工夫: 数値計算では、電流値 \(3.14\) が円周率 \(\pi\) の近似値であることを利用して、面倒な掛け算や割り算を避けます。

この設問における重要なポイント

  • 公式の選択: 直線電流 \(\rightarrow H = \frac{I}{2\pi r}\)。
  • 単位: 電流は \([\text{A}]\)、距離は \([\text{m}]\) で代入し、結果は \([\text{A/m}]\) となります。
  • 計算の視点: \(3.14\) を単なる数値として扱うのではなく、\(\pi\) との約分を見越して式を立てることが、計算ミスを防ぐコツです。

具体的な解説と立式
問題文より、電流の大きさ \(I = 3.14 \, \text{A}\)、距離 \(r = 0.25 \, \text{m}\) です。
求める磁場の強さを \(H \, [\text{A/m}]\) とします。

直線電流がつくる磁場の公式より、以下の式が成り立ちます。
$$ H = \frac{I}{2\pi r} $$
ここで、円周率 \(\pi \approx 3.14\) として計算を進めます。

使用した物理公式

  • 直線電流がつくる磁場: \(H = \frac{I}{2\pi r}\)
    • \(H\): 磁場の強さ \([\text{A/m}]\)
    • \(I\): 電流の大きさ \([\text{A}]\)
    • \(r\): 電流からの距離 \([\text{m}]\)
計算過程

立式した式に数値を代入し、計算します。
$$
\begin{aligned}
H &= \frac{3.14}{2 \times 3.14 \times 0.25} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2 \times 1 \times 0.25} & (\text{3.14で約分}) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{0.50} \\[2.0ex]
&= 2.0
\end{aligned}
$$
したがって、磁場の強さは \(2.0 \, \text{A/m}\) です。

この設問の平易な説明

まっすぐな電線に電流が流れると、その周りには目に見えない「磁気の渦」が生まれます。
この渦は、電線に近いほど強く、離れるほど弱くなります。具体的には、距離が2倍になれば強さは半分になる(反比例する)という性質があります。
この問題では、電流の値(\(3.14\))が円周率(\(\pi \approx 3.14\))と同じ数値になっているため、計算上きれいに打ち消し合い、シンプルな答えになります。

解答 \(2.0 \, \text{A/m}\)

3 ソレノイド内部の磁場

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ソレノイドコイルがつくる磁場」です。長いコイル(ソレノイド)の内部に形成される一様な磁場について扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ソレノイド内部の磁場の公式: 単位長さ(\(1 \, \text{m}\))あたりの巻き数が \(n\) のソレノイドに電流 \(I\) を流したとき、内部の磁場の強さ \(H\) は \(H = nI\) で表されます。
  2. 一様磁場: 十分に長いソレノイドの内部では、磁力線が平行かつ等間隔になり、場所によらず磁場の強さと向きが一定になります。
  3. 単位長さあたりの巻き数: 公式中の \(n\) は「総巻き数」ではなく「\(1 \, \text{m}\) あたりの巻き数」であることに注意が必要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から「\(1 \, \text{m}\) あたりの巻き数 \(n\)」と「電流 \(I\)」を読み取ります。
  2. 公式 \(H = nI\) に代入して計算します。

思考の道筋とポイント

  • 公式の選択: 「ソレノイド」「内部の磁場」というキーワードから、適用すべき公式は \(H = nI\) です。
  • 変数の確認:
    • \(I\): 電流の大きさ。問題文より \(1.5 \, \text{A}\)。
    • \(n\): \(1 \, \text{m}\) あたりの巻き数。問題文より \(1.0 \times 10^3 \, \text{回/m}\)。
  • 注意点: もし問題文が「長さ \(L\) の間に \(N\) 回巻いた」となっていた場合は、\(n = \frac{N}{L}\) を計算する必要がありますが、今回は直接 \(n\) が与えられているため、そのまま代入できます。

この設問における重要なポイント

  • ソレノイドの特徴: 直線電流や円形電流がつくる磁場は場所によって強さが変わりますが、ソレノイド内部の磁場は(端の部分を除いて)どこでも同じ強さ(一様)です。
  • 公式の形: \(H = nI\) には \(\pi\) や \(2\) などの係数がつきません。これは、アンペールの法則を適用した結果得られるシンプルな形です。
  • 単位: \(n\) の単位は \([\text{回/m}]\) または単に \([\text{1/m}]\) です。これに電流 \([\text{A}]\) をかけることで、磁場の単位 \([\text{A/m}]\) が得られます。

具体的な解説と立式
問題文より、以下の値が与えられています。
単位長さあたりの巻き数 \(n = 1.0 \times 10^3 \, \text{回/m}\)
電流の大きさ \(I = 1.5 \, \text{A}\)

求めるソレノイド内部の磁場の強さを \(H \, [\text{A/m}]\) とします。
ソレノイド内部の磁場の公式より、以下の式が成り立ちます。
$$ H = nI $$
この式に数値を代入します。

使用した物理公式

  • ソレノイド内部の磁場: \(H = nI\)
    • \(H\): 磁場の強さ \([\text{A/m}]\)
    • \(n\): 単位長さあたりの巻き数 \([\text{1/m}]\)
    • \(I\): 電流の大きさ \([\text{A}]\)
計算過程

立式した式に数値を代入し、計算します。
$$
\begin{aligned}
H &= (1.0 \times 10^3) \times 1.5 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 1.5 \times 10^3 \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^3
\end{aligned}
$$
したがって、磁場の強さは \(1.5 \times 10^3 \, \text{A/m}\) です。

この設問の平易な説明

導線をバネのようにぐるぐると長く巻いたものを「ソレノイド」と呼びます。
ここに電流を流すと、それぞれの巻き線が作る磁場が足し合わされ、コイルの内部には強力でまっすぐな「磁気のトンネル」ができます。
このトンネルの中では、磁場の強さはどこでも一定です。その強さは、「どれだけ密に巻いているか(\(n\))」と「どれだけ強い電流を流しているか(\(I\))」の掛け算だけで決まります。
今回は、\(1 \, \text{m}\) あたり \(1000\) 回という密度で巻かれたコイルに \(1.5 \, \text{A}\) の電流が流れているので、単純にこれらを掛け合わせるだけで答えが出ます。

解答 \(1.5 \times 10^3 \, \text{A/m}\)
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4 磁束密度と磁場の関係

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「磁束密度と磁場の関係」です。磁気的な空間の性質を表す2つの物理量、\(B\)(磁束密度)と \(H\)(磁場)をつなぐ「透磁率 \(\mu\)」の役割を理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 構成方程式: 磁束密度 \(B\) と磁場の強さ \(H\) の間には、透磁率 \(\mu\) を比例定数として \(B = \mu H\) という関係が成り立ちます。
  2. 透磁率の意味: 物質(この場合は空気)がどれだけ磁気を通しやすいか、あるいは磁化されやすいかを表す定数です。
  3. 単位の関係: \([\text{T}] = [\text{N/A}^2] \times [\text{A/m}]\) あるいは \([\text{T}] = [\text{Wb/m}^2]\) などの関係があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から磁場の強さ \(H\) と透磁率 \(\mu\) を読み取ります。
  2. 関係式 \(B = \mu H\) に代入して計算します。

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