プロセス
1 オームの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「オームの法則を用いた電気抵抗の導出」です。電気回路の最も基礎となる法則を確認します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- オームの法則: 電圧 \(V\)、電流 \(I\)、抵抗 \(R\) の間に成り立つ関係式 \(V=RI\)。
- 物理量の定義: 電圧(電位差)、電流、抵抗のそれぞれの意味と単位。
- 有効数字: 測定値の精度に合わせた数値の扱い方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた数値(電圧、電流)を物理量記号(\(V, I\))に対応させます。
- オームの法則 \(V=RI\) を、求めたい物理量 \(R\) について解いた形に変形します。
- 数値を代入し、有効数字に注意して計算を行います。
思考の道筋とポイント
物理の問題を解くときは、まず「何が与えられていて」「何を求めるのか」を明確にすることが第一歩です。
- 情報の整理: 問題文にある「\(1.5 \, \text{V}\)」は電圧 \(V\)、「\(0.25 \, \text{A}\)」は電流 \(I\) です。
- 目標の設定: 求めたいのは「抵抗」なので、抵抗 \(R\) を求める式が必要です。
- 法則の適用: 電圧、電流、抵抗を結びつける「オームの法則」を適用します。
- 計算の工夫: 小数の割り算が登場しますが、分数を活用することで計算ミスを減らせます。
この設問における重要なポイント
- オームの法則の変形: 基本形は \(V=RI\) ですが、抵抗を求めたいときは両辺を \(I\) で割って \(R = \frac{V}{I}\) と変形して使います。
- 単位の確認: 電圧がボルト \([\text{V}]\)、電流がアンペア \([\text{A}]\) のとき、計算結果の抵抗はオーム \([\Omega]\) になります。
- 数値の感覚: \(0.25 \, \text{A}\) という電流は \(1 \, \text{A}\) の \(\frac{1}{4}\) です。小さな電流しか流れないということは、それなりの抵抗があるか、電圧が小さいかのどちらかです。
具体的な解説と立式
問題文より、導体に加えた電圧 \(V\) と、そのとき流れた電流 \(I\) は以下の通りです。
$$ V = 1.5 \, \text{V}, \quad I = 0.25 \, \text{A} $$
求める導体の抵抗を \(R \, [\Omega]\) とします。
オームの法則 \(V = RI\) が成り立つので、この式を抵抗 \(R\) について解く形に変形して立式します。
$$ R = \frac{V}{I} $$
使用した物理公式
- オームの法則:
$$ V = RI $$
(\(V\): 電圧 \([\text{V}]\)、\(R\): 抵抗 \([\Omega]\)、\(I\): 電流 \([\text{A}]\))
立式した式に数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{1.5}{0.25} \\[2.0ex]
\end{aligned}
$$
ここで、小数の割り算を直接行う代わりに、\(0.25\) が分数で \(\displaystyle\frac{1}{4}\) であることを利用すると、計算が非常に簡単になります。
$$
\begin{aligned}
R &= \frac{1.5}{\displaystyle\frac{1}{4}} \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 4 \\[2.0ex]
&= 6.0
\end{aligned}
$$
問題文の数値(\(1.5\) と \(0.25\))はいずれも有効数字2桁なので、答えも有効数字2桁で表記します。
したがって、
$$ R = 6.0 \, \Omega $$
抵抗とは、文字通り「電流の流れにくさ」を表す量です。
オームの法則 \(R = \frac{V}{I}\) は、「\(1 \, \text{A}\) の電流を流すために、どれだけの電圧(勢い)が必要か」を表していると考えることができます。
今回の問題では、\(1.5 \, \text{V}\) の電圧で \(0.25 \, \text{A}\) しか流れませんでした。\(0.25 \, \text{A}\) は \(1 \, \text{A}\) の \(\frac{1}{4}\) です。
もし \(1 \, \text{A}\) (今の4倍の電流)を流そうと思ったら、電圧も今の4倍必要になりますよね。
だから、\(1.5 \, \text{V} \times 4 = 6.0 \, \text{V}\) 必要です。この「\(6.0\)」という数字が、そのまま抵抗値 \(6.0 \, \Omega\) になります。
計算式で \(0.25\) で割ることは、\(4\) を掛けることと同じ意味を持っています。
2 消費電力の計算
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「抵抗で消費される電力の計算」です。前問の結果を利用し、適切な公式を選択して電力を求めます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- オームの法則: \( V = RI \)
- 消費電力の定義式: \( P = IV \)
- 消費電力の変形公式: \( P = I^2R \) および \( P = \frac{V^2}{R} \)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 前問(問1)の結果から、導体の抵抗値 \( R \) を確認します。
- 与えられた物理量(電圧 \( V \)、抵抗 \( R \))に最適な電力の公式を選択します。
- 数値を代入し、計算を行います。
思考の道筋とポイント
- 情報の引き継ぎ: 問題文に「1の導体」とあるため、問1で求めた抵抗値 \( R = 6.0 \, \Omega \) を使用します。
- 条件の整理: 新たに与えられた電圧は \( V = 3.0 \, \text{V} \) です。
- 公式の選択: 求めたいのは消費電力 \( P \) です。現在わかっているのは電圧 \( V \) と抵抗 \( R \) なので、電流 \( I \) を経由せずに直接計算できる公式 \( P = \frac{V^2}{R} \) を採用するのが最も効率的です。
この設問における重要なポイント
- 電力の公式の使い分け: 消費電力 \( P \) を求める公式は3つあります。状況に応じて使い分けることで計算が楽になります。
- \( P = IV \): 電圧と電流がわかっているとき(基本定義)。
- \( P = I^2R \): 電流と抵抗がわかっているとき(直列回路などで便利)。
- \( P = \frac{V^2}{R} \): 電圧と抵抗がわかっているとき(並列回路や本問のようなケースで便利)。
具体的な解説と立式
問1より、導体の抵抗は \( R = 6.0 \, \Omega \) です。
加えた電圧は \( V = 3.0 \, \text{V} \) です。
電圧 \( V \) と抵抗 \( R \) を用いて消費電力 \( P \) を求める式を立てます。
$$ P = \frac{V^2}{R} $$
使用した物理公式
- 消費電力:
$$ P = \frac{V^2}{R} $$
(\( P \): 消費電力 \([\text{W}]\)、\( V \): 電圧 \([\text{V}]\)、\( R \): 抵抗 \([\Omega]\))
立式した式に数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{3.0^2}{6.0} \\[2.0ex]
&= \frac{9.0}{6.0} \\[2.0ex]
&= 1.5
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、そのまま答えます。
$$ P = 1.5 \, \text{W} $$
電気製品の「ワット数」を計算する問題です。
抵抗 \( R \) と電圧 \( V \) がわかっているときは、わざわざ電流を計算しなくても、\( P = \frac{V^2}{R} \) という式一発で求められます。
電圧 \( 3.0 \, \text{V} \) を2乗して、抵抗 \( 6.0 \, \Omega \) で割るだけです。
ちなみに、電圧が \( 1.5 \, \text{V} \) から \( 3.0 \, \text{V} \) へと2倍になると、電力は \( 2^2 = 4 \) 倍になります(問1の条件で計算すると \( P \approx 0.38 \, \text{W} \) なので、確かに約4倍になっています)。
思考の道筋とポイント
- 基本への立ち返り: 消費電力の定義は「電圧 \(\times\) 電流」です。
- 段階的な計算: まずオームの法則を使って、回路に流れる電流 \( I \) を求めます。
- 定義式の利用: 求めた電流 \( I \) と与えられた電圧 \( V \) を使って、\( P = IV \) を計算します。
この方法は計算の手間は増えますが、回路に流れる電流の値も把握できるという利点があります。
この設問における重要なポイント
- オームの法則: 電流を求めるために \( I = \frac{V}{R} \) を使います。
- 一貫性の確認: どの公式を使っても、物理的に正しい手順であれば同じ答えになることを確認します。
具体的な解説と立式
まず、オームの法則を用いて電流 \( I \, [\text{A}] \) を求める式を立てます。
$$ I = \frac{V}{R} $$
次に、求めた電流 \( I \) と電圧 \( V \) を用いて消費電力 \( P \, [\text{W}] \) を求める式を立てます。
$$ P = IV $$
使用した物理公式
- オームの法則: \( I = \frac{V}{R} \)
- 消費電力: \( P = IV \)
まず、電流 \( I \) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{3.0}{6.0} \\[2.0ex]
&= 0.50 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
次に、この電流値を使って電力を計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= 0.50 \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 1.5
\end{aligned}
$$
したがって、
$$ P = 1.5 \, \text{W} $$
こちらは「まず電流がどれくらい流れるか?」を計算してから、電力を求める方法です。
\( 3.0 \, \text{V} \) の電圧で \( 6.0 \, \Omega \) の抵抗に電流を流すと、\( 0.50 \, \text{A} \) の電流が流れます。
電力は「電圧 \(\times\) 電流」なので、\( 3.0 \times 0.50 \) を計算して \( 1.5 \, \text{W} \) となります。
メインの解法と同じ結果になりましたね。
3 抵抗率の導出
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「導体の抵抗と抵抗率の関係」です。導体の形状(長さや太さ)と材質が、電気抵抗にどのように影響するかを数式で扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 抵抗の公式: 導体の抵抗 \(R\) は、長さ \(L\) に比例し、断面積 \(S\) に反比例する。
- 抵抗率: 物質そのものが持つ電気の流れにくさを表す物性値 \(\rho\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 抵抗 \(R\)、抵抗率 \(\rho\)、長さ \(L\)、断面積 \(S\) の関係式(公式)を立てます。
- その式を、求めたい物理量である抵抗率(ここでは \(\rho\) と置きます)について解きます。
思考の道筋とポイント
- 未知数の設定: 求めたい抵抗率を \(\rho\)(ロー)と置きます。単位は問題文にある通り \([\Omega \cdot \text{m}]\) です。
- 公式の想起: 抵抗 \(R\) が、長さ \(L\)、断面積 \(S\)、抵抗率 \(\rho\) を使ってどのように表されるか、基本公式を思い出します。
- 式変形: 思い出した公式は通常 \(R = \dots\) の形ですが、今回は「抵抗率は何か」と問われているため、\(\rho = \dots\) の形に変形する必要があります。
この設問における重要なポイント
- 比例と反比例のイメージ:
- 導体が長いほど、電流は通りにくくなります(抵抗 \(R\) は長さ \(L\) に比例)。
- 導体が太い(断面積が大きい)ほど、電流は通りやすくなります(抵抗 \(R\) は断面積 \(S\) に反比例)。
- 抵抗率の意味: 同じ形状でも、銅と鉄では抵抗が異なります。この「材質による違い」を表す比例定数が抵抗率 \(\rho\) です。
具体的な解説と立式
求める導体の抵抗率を \(\rho \, [\Omega \cdot \text{m}]\) とします。
円柱状の導体の抵抗 \(R\) は、抵抗率 \(\rho\)、長さ \(L\)、断面積 \(S\) を用いて次のように表されます。
$$ R = \rho \frac{L}{S} $$
この式を、求めたい \(\rho\) について解く形に変形します。
使用した物理公式
- 抵抗の公式:
$$ R = \rho \frac{L}{S} $$
(\(R\): 抵抗 \([\Omega]\)、\(\rho\): 抵抗率 \([\Omega \cdot \text{m}]\)、\(L\): 長さ \([\text{m}]\)、\(S\): 断面積 \([\text{m}^2]\))
立式した式を \(\rho\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
R &= \rho \frac{L}{S} \\[2.0ex]
\end{aligned}
$$
両辺に \(S\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
RS &= \rho L \\[2.0ex]
\end{aligned}
$$
両辺を \(L\) で割って、左右を入れ替えます。
$$
\begin{aligned}
\rho &= \frac{RS}{L}
\end{aligned}
$$
したがって、求める抵抗率は
$$ \frac{RS}{L} \, [\Omega \cdot \text{m}] $$
電気の流れを「トンネルを通る車」や「水道管を流れる水」に例えると分かりやすいです。
- トンネルが長い(\(L\) が大きい)と、通り抜けるのに時間がかかり、渋滞しやすくなります(抵抗 \(R\) が大きくなる)。
- トンネルが広い(\(S\) が大きい)と、たくさんの車が一度に通れるので、スムーズに流れます(抵抗 \(R\) が小さくなる)。
これを式にすると \(R \propto \frac{L}{S}\) となります。
このときの「通りにくさの係数」にあたるのが抵抗率 \(\rho\) です。
今回の問題は、この関係式を逆算して、「抵抗 \(R\) と形(\(L, S\))が分かっているとき、その材質の抵抗率 \(\rho\) はどう計算できるか?」を答えるものです。
思考の道筋とポイント
- ゴールの確認: 最終的な答えの単位は \([\Omega \cdot \text{m}]\) にならなければなりません。
- 手持ちの材料: 与えられた物理量の単位は、抵抗 \(R \, [\Omega]\)、断面積 \(S \, [\text{m}^2]\)、長さ \(L \, [\text{m}]\) です。
- パズル: これらをどのように掛けたり割ったりすれば、ゴールの単位 \([\Omega \cdot \text{m}]\) が作れるかを考えます。
この設問における重要なポイント
- 次元解析: 物理式が正しいかどうかは、両辺の単位(次元)が一致しているかでチェックできます。逆に、単位から式の形を推測することも可能です。
具体的な解説と立式
求める抵抗率の単位は \([\Omega \cdot \text{m}]\) です。
与えられた物理量の単位を組み合わせます。
- \(R\) の単位: \([\Omega]\)
- \(S\) の単位: \([\text{m}^2]\)
- \(L\) の単位: \([\text{m}]\)
これらを使って \([\Omega \cdot \text{m}]\) を作るには、
$$ [\Omega] \times \frac{[\text{m}^2]}{[\text{m}]} = [\Omega \cdot \text{m}] $$
という組み合わせが成立します。
これを物理量記号に戻して立式します。
$$ \rho = R \times \frac{S}{L} $$
使用した物理公式
- 次元解析(単位の整合性):
$$ [\text{左辺の単位}] = [\text{右辺の単位}] $$
本問では: \([\Omega \cdot \text{m}] = [\Omega] \times \frac{[\text{m}^2]}{[\text{m}]}\)
単位の組み合わせから導いた式を整理します。
$$
\begin{aligned}
\rho &= \frac{RS}{L}
\end{aligned}
$$
これは公式から導いた結果と一致します。
もし公式を忘れてしまっても、単位を見るだけで答えを作ることができます。
答えの単位は「オーム・メートル(\(\Omega \cdot \text{m}\))」です。
これは「オーム(\(\Omega\))」と「メートル(\(\text{m}\))」の掛け算です。
手元には「オーム( \(R\) )」「平方メートル( \(S\) )」「メートル( \(L\) )」があります。
\(R\) に \(S\) を掛けると \(\Omega \cdot \text{m}^2\) になってしまい、\(\text{m}\) が1つ多いです。
そこで \(L\) で割ってあげれば、\(\text{m}\) が1つ減って \(\Omega \cdot \text{m}\) になりますね。
だから答えは \(\frac{RS}{L}\) だと分かります。
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4 合成抵抗の計算
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「抵抗の直列接続と並列接続における合成抵抗の計算」です。まず個々の抵抗値を求め、それをどのように接続するかによって全体の抵抗値がどう変化するかを理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- オームの法則: \( V = RI \)
- 直列接続の合成抵抗: \( R = R_1 + R_2 + \dots \)
- 並列接続の合成抵抗: \( \frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \dots \)
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、問題文の条件(電圧と電流)から、ニクロム線1本あたりの抵抗値を求めます。
- 次に、その抵抗を2本直列につないだ場合の合成抵抗を計算します。
- 最後に、その抵抗を2本並列につないだ場合の合成抵抗を計算します。
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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