「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅴ 章 19】基本問題476~482

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基本問題

476 電熱器の消費電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 単位の定義から直接 \(\text{kWh}\) を求める解法
      • 模範解答が一度ジュール(\(\text{J}\))で求めた値を換算係数で割って \(\text{kWh}\) を求めているのに対し、別解では電力の単位をキロワット(\(\text{kW}\))、時間の単位を時間(\(\text{h}\))に変換し、それらを直接掛け合わせることで求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 単位の意味の理解: \(\text{kWh}\) が「\(1\,\text{kW}\) の電力で \(1\) 時間(hour)使用したときのエネルギー」であることを直感的に理解できます。
    • 計算の効率化: 巨大な数値を扱うジュールを経由しないため、計算ミスを減らせる場合があります。
  3. 結果への影響
    • どちらの方法でも、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「電力と電力量の計算および単位換算」です。電気製品がどれくらいのエネルギーを消費するかを計算する、実生活にも関連する基礎的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電力の公式: 電流が単位時間あたりにする仕事(電気エネルギーの消費率)。\(P = VI\) で表されます。
  2. 電力量の公式: ある時間内に電流がした仕事の総量(消費された総エネルギー)。\(W = Pt\) で表されます。
  3. 単位の定義と換算:
    • \(1\,\text{W} = 1\,\text{J/s}\) (1秒あたり1ジュールの仕事)
    • \(1\,\text{kWh}\) (1キロワット時)は、\(1\,\text{kW}\) の電力で \(1\) 時間仕事をしたときの電力量。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた電圧 \(V\) と電流 \(I\) の値を電力の公式 \(P=VI\) に代入して計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた電力 \(P\) と時間 \(t\) を用いて電力量 \(W=Pt\) を計算します。このとき、求める単位(\(\text{J}\) または \(\text{kWh}\))に合わせて、時間の単位を「秒(\(\text{s}\))」にするか「時間(\(\text{h}\))」にするかを使い分けます。

問(1)

思考の道筋とポイント
電熱器に加えた電圧 \(V\) と流れた電流 \(I\) が与えられているので、電力 \(P\) を求める公式 \(P=VI\) を直接適用します。有効数字に注意して答えを出します。
この設問における重要なポイント

  • 電圧 \(V = 100\,\text{V}\)
  • 電流 \(I = 1.5\,\text{A}\)
  • 電力 \(P\) の単位はワット(\(\text{W}\))です。

具体的な解説と立式
電力を \(P\)、電圧を \(V\)、電流を \(I\) とします。
電力の定義式より、
$$ P = VI $$
この式に与えられた数値を代入します。

使用した物理公式

  • 電力の公式: \(P = VI\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
P &= 100 \times 1.5 \\[2.0ex]
&= 150 \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^2\,\text{W}
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、\(1.5 \times 10^2\,\text{W}\) と表記します。

この設問の平易な説明

「電力」とは、電気の「パワー」のことです。電圧(電気を押し出す圧力)が高く、電流(流れる電気の量)が多いほど、パワーは強くなります。ここでは \(100\,\text{V}\) の圧力で \(1.5\,\text{A}\) の流れを作っているので、単純に掛け算をしてパワー(ワット数)を求めました。

結論と吟味

答えは \(1.5 \times 10^2\,\text{W}\) です。家庭用の電化製品として妥当な数値です。

解答 (1) \(1.5 \times 10^2\,\text{W}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
電力量(エネルギーの総量)を求めます。
前半は単位がジュール(\(\text{J}\))なので、時間はSI単位である「秒(\(\text{s}\))」に直して計算します。
後半は単位がキロワット時(\(\text{kWh}\))なので、ジュールで求めた値を換算するか、あるいは別解のように単位の定義に従って計算します。ここでは模範解答通り、換算する方法をとります。
この設問における重要なポイント

  • 時間 \(t = 10\,\text{分}\)
  • ジュールの定義: \(1\,\text{J} = 1\,\text{W} \times 1\,\text{s}\) (秒単位)
  • キロワット時の換算: \(1\,\text{kWh} = 1000\,\text{W} \times 3600\,\text{s} = 3.6 \times 10^6\,\text{J}\)

具体的な解説と立式
【電力量(\(\text{J}\))の計算】
電力量を \(W\)、電力を \(P\)、時間を \(t\)(秒)とします。
時間は \(10\,\text{分}\) なので、秒に換算すると \(10 \times 60\,\text{s}\) です。
電力量の公式は、
$$ W = Pt $$

【電力量(\(\text{kWh}\))の計算】
求めた \(W\,[\text{J}]\) を \(1\,\text{kWh} = 3.6 \times 10^6\,\text{J}\) で割って単位を変換します。
$$ \text{電力量}[\text{kWh}] = \frac{W\,[\text{J}]}{3.6 \times 10^6} $$

使用した物理公式

  • 電力量の公式: \(W = Pt\)
  • 単位換算: \(1\,\text{kWh} = 3.6 \times 10^6\,\text{J}\)
計算過程

1. 電力量(\(\text{J}\))の計算
(1)より \(P = 1.5 \times 10^2\,\text{W}\) です。
$$
\begin{aligned}
W &= (1.5 \times 10^2) \times (10 \times 60) \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^2 \times 600 \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^2 \times 6.0 \times 10^2 \\[2.0ex]
&= (1.5 \times 6.0) \times 10^{2+2} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 10^4\,\text{J}
\end{aligned}
$$

2. 電力量(\(\text{kWh}\))の計算
$$
\begin{aligned}
\text{電力量}[\text{kWh}] &= \frac{9.0 \times 10^4}{3.6 \times 10^6} \\[2.0ex]
&= \frac{9.0}{3.6} \times 10^{4-6} \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、「ジュール(\(\text{J}\))」でエネルギーを計算します。ジュールは「1秒間」を基準にするので、10分間を600秒に直してから、パワー(電力)と掛け算しました。
次に、「キロワット時(\(\text{kWh}\))」に直します。これは電気料金の請求書などで見る単位です。\(1\,\text{kWh}\) は \(3600000\,\text{J}\) というとても大きなエネルギーの塊なので、先ほど計算したジュールの値をこの数で割って、何個分に相当するかを求めました。

結論と吟味

電力量は \(9.0 \times 10^4\,\text{J}\)、および \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}\) です。
\(100\,\text{W}\) 程度の電球を短時間つけただけなので、\(\text{kWh}\)(通常数時間〜数日単位で使う量)としては小さな値になるのは妥当です。

解答 (2) \(9.0 \times 10^4\,\text{J}\), \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}\)
別解: 単位の定義から直接 \(\text{kWh}\) を求める解法

思考の道筋とポイント
\(\text{kWh}\)(キロワット時)という単位は、文字通り「キロワット(\(\text{kW}\))」\(\times\)「時間(\(\text{h}\))」を意味しています。
したがって、電力を \(\text{kW}\) に、時間を \(\text{h}\) にそれぞれ変換してから掛け合わせれば、ジュールを経由せずに直接答えを出すことができます。
この設問における重要なポイント

  • 電力 \(P = 150\,\text{W} = 0.15\,\text{kW}\)
  • 時間 \(t = 10\,\text{分} = \frac{10}{60}\,\text{h} = \frac{1}{6}\,\text{h}\)

具体的な解説と立式
電力量を \(W’\)(単位は \(\text{kWh}\))とします。
$$ W’ = (\text{電力}[\text{kW}]) \times (\text{時間}[\text{h}]) $$

使用した物理公式

  • 電力量の定義: \(1\,\text{kWh} = 1\,\text{kW} \times 1\,\text{h}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W’ &= 0.15 \times \frac{1}{6} \\[2.0ex]
&= \frac{15}{100} \times \frac{1}{6} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{20} \times \frac{1}{6} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{20 \times 2} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{40} \\[2.0ex]
&= 0.025 \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「キロワット時」という名前の通りに計算する方法です。
パワーを「キロワット」単位(\(0.15\,\text{kW}\))にし、時間を「時間」単位(\(1/6\,\text{時間}\))にして、そのまま掛け算しました。大きな桁の割り算をしなくて済むので、計算ミスが減る便利な方法です。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}\) が得られました。

解答 (2) \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{kWh}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電力と電力量の定義と関係
    • 核心: 「電力(\(P\))」は瞬間のパワー(仕事率)であり、「電力量(\(W\))」はそのパワーを一定時間出し続けたときの総エネルギー(仕事)であるという関係性を理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 電力 \(P=VI\): 電圧(押し出す力)と電流(流れる量)の積で決まります。単位はワット(\(\text{W}\))またはジュール毎秒(\(\text{J/s}\))です。
      • 電力量 \(W=Pt\): 電力に時間を掛けたものです。グラフで言えば、縦軸に電力、横軸に時間をとったときの「面積」が電力量に相当します。
  • 単位系の一貫性(SI単位系と実用単位系)
    • 核心: 物理計算では、式の両辺で単位が揃っている必要があります。特に時間 \(t\) の単位を「秒(\(\text{s}\))」にするか「時間(\(\text{h}\))」にするかで、得られるエネルギーの単位が「ジュール(\(\text{J}\))」になるか「キロワット時(\(\text{kWh}\))」になるかが変わります。
    • 理解のポイント:
      • 物理の基本: \(1\,\text{J} = 1\,\text{W} \times 1\,\text{s}\) (秒を使う)
      • 生活の実用: \(1\,\text{kWh} = 1\,\text{kW} \times 1\,\text{h}\) (時間を使う)
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ジュールの法則(発熱量): 電熱線から発生する熱量 \(Q\) を求める問題も、本質は電力量 \(W\) と同じです。\(Q = Pt = VIt = I^2Rt\) などの式変形が頻出です。
    • 電気料金の計算: 「\(1\,\text{kWh}\) あたり27円」といった条件で、使用した電気代を計算させる問題。これはまさに(2)の \(\text{kWh}\) 計算の実践編です。
    • バッテリーの容量: 「\(mAh\)(ミリアンペア時)」や「\(Wh\)(ワット時)」といった単位が出てくる問題。これらもすべて「電流×時間」や「電力×時間」という積の形をしており、考え方は同じです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位に注目する: 求められている答えの単位が \(\text{J}\) なのか \(\text{kWh}\) なのか、あるいは \(\text{cal}\)(カロリー)なのかを最初に見極めます。
    2. 時間の単位を合わせる: \(\text{J}\) なら秒に、\(\text{kWh}\) なら時間に、最初に時間を変換しておくとミスが減ります。
    3. オームの法則との連携: 電圧 \(V\) や電流 \(I\) が直接与えられず、抵抗 \(R\) が与えられている場合は、オームの法則 \(V=RI\) を使って \(P=I^2R\) や \(P=V^2/R\) に変形してから計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 時間の単位変換忘れ:
    • 誤解: 公式 \(W=Pt\) の \(t\) に、問題文にある「10分」をそのまま「10」として代入してしまう。
    • 対策: 物理公式(SI単位系)の標準は「秒(\(\text{s}\))」です。「分」や「時間」を見たら、反射的に「秒」に直す習慣をつけましょう(ただし \(\text{kWh}\) を求める場合を除く)。
  • \(\text{kW}\) と \(\text{W}\) の混同:
    • 誤解: \(\text{kWh}\) を計算する際、電力を \(\text{W}\) のまま計算してしまい、桁が3つずれる。
    • 対策: 接頭辞「k(キロ)」は \(1000\)(\(10^3\))を意味します。\(150\,\text{W} = 0.15\,\text{kW}\) のように、計算前に単位を変換してメモしておくと安全です。
  • 有効数字の扱い:
    • 誤解: 計算途中で数値を丸めてしまい、最終的な答えに誤差が出る。あるいは、答えの桁数を問題文の精度(有効数字)と合わせない。
    • 対策: 途中計算は桁数を多めにとり、最後に四捨五入します。この問題では \(1.5\)(2桁)や \(100\)(3桁とみなせるが通常は2桁に合わせる)なので、答えも2桁にします。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(P=VI\) の選択理由:
    • 選定理由: 問題文で与えられている情報が「電圧 \(V\)」と「電流 \(I\)」であり、求めたいのが「電力 \(P\)」だからです。これら3つを直接結びつける定義式がこれしかありません。
    • 適用根拠: 抵抗 \(R\) が不明なので、\(P=I^2R\) などは使えません(もちろん \(R=V/I\) で求めてから使うことは可能ですが、遠回りです)。
  • \(W=Pt\) の選択理由:
    • 選定理由: (1)ですでに「電力 \(P\)」を求めており、さらに「時間 \(t\)」が与えられているため、これらを掛け合わせるだけで「総量(電力量)」が出せるからです。
    • 適用根拠: 電流や電圧が時間とともに変化しない(一定である)ため、単純な掛け算(長方形の面積計算)として処理できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数表記(\(10^n\))を活用する:
    • \(3600000\) のようなゼロが多い数字は、書き写し間違いの元です。\(3.6 \times 10^6\) のように指数を使って管理しましょう。割り算の際も \(10^4 / 10^6 = 10^{-2}\) のように指数法則を使えば、桁のミスを劇的に減らせます。
  • 単位を書いて計算する:
    • 式の中に数値だけでなく単位も書き込みます。
    • 例: \(150\,\text{W} \times 600\,\text{s} = 90000\,\text{J}\)
    • これにより、「\(\text{W} \times \text{s} = \text{J}\)」という次元の確認ができ、もし時間を「分」のまま計算していたら単位がおかしくなることに気づけます。
  • 別解で検算する:
    • (2)のように、\(\text{J}\) から換算する方法と、直接 \(\text{kW} \times \text{h}\) で計算する方法の2通りで解いてみて、結果が一致するか確認します。アプローチが異なる方法で同じ答えになれば、その答えはほぼ確実に正解です。

477 抵抗率と抵抗値

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 電流の分流比を用いた解法
      • 模範解答が合成抵抗を求めてから全体のオームの法則を用いるのに対し、別解では並列回路における電流の分流比(抵抗の逆比)を利用して、各抵抗に流れる電流を直接求め、個別のオームの法則から抵抗値を算出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 回路の直感的理解: 並列回路では「抵抗が大きいほど電流が流れにくい」という性質を定量的に扱う力が養われます。
    • 計算の簡略化: 合成抵抗の逆数計算(分数の足し算)を回避できるため、計算ミスを減らせる場合があります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「抵抗率と抵抗値の関係、および並列回路の計算」です。物体の形状(長さや太さ)が電気の流れにくさにどう影響するかを理解し、それを回路計算に応用する力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 抵抗の決定要因: 導体の抵抗 \(R\) は、抵抗率 \(\rho\)、長さ \(L\)、断面積 \(S\) を用いて \(R = \rho \frac{L}{S}\) と表されます。つまり、抵抗は長さに比例し、断面積に反比例します。
  2. 並列回路の性質: 並列に接続された抵抗には等しい電圧がかかります。また、回路全体の電流は各抵抗を流れる電流の和になります。
  3. オームの法則: 電圧 \(V\)、電流 \(I\)、抵抗 \(R\) の間には \(V=RI\) の関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題文の条件(長さ3倍、断面積1/4倍)から、抵抗Pと抵抗Qの抵抗値の比率を求めます。
  2. 次に、PとQが並列に接続されていることから、回路全体の合成抵抗をQの抵抗値 \(R_Q\) を用いて表します。
  3. 最後に、回路全体に適用したオームの法則から \(R_Q\) を決定し、それに基づいて \(R_P\) も求めます。

思考の道筋とポイント
まず、抵抗PとQの抵抗値の関係を数式化します。「同じ材質」ということは抵抗率 \(\rho\) が等しいことを意味します。これと長さ・断面積の比率を使って、\(R_P\) が \(R_Q\) の何倍かを特定します。
次に、回路図を見てPとQが並列接続であることを確認し、合成抵抗の公式を使って全体の抵抗を \(R_Q\) の式で表します。
最後に、電源電圧と全電流の値を使ってオームの法則を立て、方程式を解きます。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗 \(R\) は長さに比例し、断面積に反比例する(\(R \propto \frac{L}{S}\))。
  • PはQの3倍の長さ、1/4倍の断面積である。
  • 並列回路の合成抵抗 \(R\) は \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_P} + \frac{1}{R_Q}\) で求められる。
  • 回路全体の電圧 \(V=1.2\,\text{V}\)、全電流 \(I=0.20\,\text{A}\)。

具体的な解説と立式
1. 抵抗値の比率を求める
抵抗Qの抵抗値を \(R_Q\)、長さを \(L\)、断面積を \(S\)、抵抗率を \(\rho\) とします。
抵抗の公式より、
$$ R_Q = \rho \frac{L}{S} $$
抵抗Pの抵抗値を \(R_P\) とします。問題文より、Pの長さは \(3L\)、断面積は \(S/4\) です。
$$ R_P = \rho \frac{3L}{S/4} = \rho \frac{3L \times 4}{S} = 12 \rho \frac{L}{S} $$
よって、\(R_P\) と \(R_Q\) の関係は以下のようになります。
$$ R_P = 12 R_Q \quad \cdots ① $$

2. 合成抵抗を求める
PとQは並列に接続されています。回路全体の合成抵抗を \(R\) とすると、
$$ \frac{1}{R} = \frac{1}{R_P} + \frac{1}{R_Q} $$
これに式①を代入します。
$$ \frac{1}{R} = \frac{1}{12R_Q} + \frac{1}{R_Q} $$

3. オームの法則を適用する
回路全体にかかる電圧は \(V=1.2\,\text{V}\)、流れる全電流は \(I=0.20\,\text{A}\) です。
オームの法則 \(V = RI\) より、
$$ 1.2 = R \times 0.20 $$
この式から合成抵抗 \(R\) の値が求まるので、それを先ほどの合成抵抗の式と結びつけて \(R_Q\) を求めます。

使用した物理公式

  • 抵抗の公式: \(R = \rho \frac{L}{S}\)
  • 並列合成抵抗: \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
  • オームの法則: \(V = RI\)
計算過程

まず、合成抵抗の式を整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R} &= \frac{1}{12R_Q} + \frac{12}{12R_Q} \\[2.0ex]
&= \frac{13}{12R_Q}
\end{aligned}
$$
よって、合成抵抗 \(R\) は、
$$ R = \frac{12}{13} R_Q $$
次に、オームの法則の式 \(1.2 = R \times 0.20\) にこれを代入します。
$$
\begin{aligned}
1.2 &= \frac{12}{13} R_Q \times 0.20 \\[2.0ex]
1.2 &= \frac{2.4}{13} R_Q
\end{aligned}
$$
この方程式を \(R_Q\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
R_Q &= 1.2 \times \frac{13}{2.4} \\[2.0ex]
&= \frac{1.2}{2.4} \times 13 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 13 \\[2.0ex]
&= 6.5\,\Omega
\end{aligned}
$$
最後に、式①を用いて \(R_P\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_P &= 12 \times 6.5 \\[2.0ex]
&= 12 \times \frac{13}{2} \\[2.0ex]
&= 6 \times 13 \\[2.0ex]
&= 78\,\Omega
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、抵抗PとQの形を比べました。PはQより3倍長く、太さ(面積)は1/4しかありません。長いほど通りにくく、細いほど通りにくいので、PはQよりも \(3 \times 4 = 12\) 倍も電気が通りにくい(抵抗値が大きい)ことがわかります。
次に、この2つを並列につないだときの「全体の通りにくさ(合成抵抗)」を計算し、回路全体の電圧と電流のデータと照らし合わせることで、基準としたQの抵抗値を割り出しました。

結論と吟味

Pの抵抗値は \(78\,\Omega\)、Qの抵抗値は \(6.5\,\Omega\) です。
\(R_P = 12 R_Q\) の関係が満たされており(\(6.5 \times 12 = 78\))、合成抵抗 \(R = \frac{12}{13} \times 6.5 = 6.0\,\Omega\) となり、\(V=RI\) (\(1.2 = 6.0 \times 0.20\))も成立しています。物理的に矛盾はありません。

解答 P: \(78\,\Omega\), Q: \(6.5\,\Omega\)
別解: 電流の分流比を用いた解法

思考の道筋とポイント
並列回路では、電圧が共通であるため、抵抗値の比と流れる電流の比は逆比になります。
\(R_P : R_Q = 12 : 1\) であることから、流れる電流の比は \(I_P : I_Q = 1 : 12\) となります。
全電流 \(0.20\,\text{A}\) がこの比率で分配されることを利用して、各抵抗に流れる電流を求め、個別にオームの法則を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 並列回路の電圧は等しい(\(V_P = V_Q = 1.2\,\text{V}\))。
  • 電流は抵抗の逆比に分配される(\(I_P : I_Q = R_Q : R_P\))。
  • 全電流 \(I = I_P + I_Q\)。

具体的な解説と立式
抵抗値の比は、メインの解法と同様に求めます。
$$ R_P : R_Q = 12 : 1 $$
並列回路において、各抵抗に流れる電流 \(I_P, I_Q\) の比は抵抗値の逆比になるので、
$$ I_P : I_Q = 1 : 12 $$
全電流 \(I = 0.20\,\text{A}\) は、これら2つの電流の和です。
$$ I_P + I_Q = 0.20 $$
これより、\(I_Q\) を求めます。全体を \(1+12=13\) 等分したうちの \(12\) 個分が \(I_Q\) です。
$$ I_Q = 0.20 \times \frac{12}{1 + 12} $$
\(I_Q\) が求まれば、抵抗Qにかかる電圧は \(1.2\,\text{V}\) なので、オームの法則 \(R_Q = \frac{V}{I_Q}\) から \(R_Q\) が求まります。

使用した物理公式

  • 分流の法則: \(I_1 : I_2 = R_2 : R_1\)
  • オームの法則: \(R = \frac{V}{I}\)
計算過程

まず、\(I_Q\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_Q &= 0.20 \times \frac{12}{13} \\[2.0ex]
&= \frac{2.4}{13}\,\text{A}
\end{aligned}
$$
(割り切れないので分数のままにしておきます)

次に、抵抗Qについてオームの法則を適用します。
$$
\begin{aligned}
R_Q &= \frac{1.2}{I_Q} \\[2.0ex]
&= 1.2 \div \frac{2.4}{13} \\[2.0ex]
&= 1.2 \times \frac{13}{2.4} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 13 \\[2.0ex]
&= 6.5\,\Omega
\end{aligned}
$$
最後に、\(R_P = 12 R_Q\) より、
$$
\begin{aligned}
R_P &= 12 \times 6.5 \\[2.0ex]
&= 78\,\Omega
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

抵抗Pは抵抗Qの12倍も通りにくいので、流れる電流は逆にQの1/12しか流れません。つまり、電流のほとんど(13分の12)は通りやすいQの方を流れます。
全体の電流 \(0.20\,\text{A}\) をこの割合で分けると、Qには \(\frac{2.4}{13}\,\text{A}\) 流れることがわかります。Qには \(1.2\,\text{V}\) の電圧がかかっているので、あとはオームの法則を使えば抵抗値が出せます。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。合成抵抗の逆数計算が面倒な場合、この「電流を分ける」考え方は非常に有効です。

解答 P: \(78\,\Omega\), Q: \(6.5\,\Omega\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 抵抗の形状依存性(抵抗率の公式)
    • 核心: 導体の抵抗 \(R\) は、その材質(抵抗率 \(\rho\))だけでなく、形状(長さ \(L\) と断面積 \(S\))によって決まるという法則 \(R = \rho \frac{L}{S}\) を理解し、使いこなすことです。
    • 理解のポイント:
      • 長さ \(L\) に比例: 導体が長いほど、電子が原子核と衝突する回数が増えるため、通りにくく(抵抗が大きく)なります。
      • 断面積 \(S\) に反比例: 導体が太い(断面積が大きい)ほど、電子が通れる「道幅」が広くなるため、通りやすく(抵抗が小さく)なります。
  • 並列回路の特性と合成抵抗
    • 核心: 並列接続された抵抗器群において、電圧は共通であり、電流は抵抗値に応じて分配されるという性質を理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 電圧の等価性: 並列部分の両端の電位差は、どの経路を通っても同じです。
      • 合成抵抗の公式: \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\) という逆数の和の関係は、電流の通りやすさ(コンダクタンス)が足し合わされることを意味しています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 金属線の引き伸ばし: 「金属線を体積を変えずに2倍の長さに伸ばした」という問題。長さが2倍になると、体積一定(\(V=SL\))なので断面積は1/2倍になります。結果として抵抗は \(2 \div (1/2) = 4\) 倍になります。この「断面積の変化」を見落とさないことが鍵です。
    • 抵抗率の温度変化: \(R = R_0(1 + \alpha t)\) のような式で、温度によって抵抗が変わる問題。これも基本となる \(R\) の値を決定する要素の一つです。
    • 複雑な回路網: 対称性のある回路やブリッジ回路などでも、まずは「直列か並列か」を見抜き、合成抵抗を計算する基礎力が問われます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 比率計算の準備: 抵抗値そのものが与えられていなくても、長さや断面積の「比」が与えられていれば、抵抗値の「比」を決定できます。まずは基準となる抵抗(今回は \(R_Q\))を一つ決め、他をその倍数で表しましょう。
    2. 回路の接続状態の確認: 図を見て、電流の分岐点と合流点を探します。分岐してから合流するまでの経路が並列接続です。
    3. 未知数の設定: 求めたい値を \(x\)(今回は \(R_Q\))とおき、オームの法則やキルヒホッフの法則を使って方程式を立てるという、代数的なアプローチを意識します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 断面積と半径の混同:
    • 誤解: 「直径(または半径)が \(1/2\) 倍になった」という条件を、「断面積が \(1/2\) 倍」と早とちりしてしまう。
    • 対策: 断面積 \(S\) は円の場合 \(\pi r^2\) なので、半径が \(1/2\) 倍なら断面積は \((1/2)^2 = 1/4\) 倍になります。「半径・直径」なのか「断面積」なのか、問題文を一言一句正確に読み取りましょう。
  • 合成抵抗の計算ミス:
    • 誤解: 並列合成抵抗の公式 \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\) を計算した後、逆数を取るのを忘れて \(R = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\) の値のまま答えにしてしまう。
    • 対策: 計算の最後に必ず「単位」や「値の大きさ」を確認します。並列合成抵抗は、必ず元の個々の抵抗よりも小さくなるはずです。もし大きくなっていたら、逆数をとり忘れています。
  • 比例・反比例の取り違え:
    • 誤解: 「断面積が小さいほど抵抗は小さい」と直感的に間違える。
    • 対策: 水道管やトンネルをイメージしましょう。「細い管ほど水は流れにくい(抵抗大)」「狭いトンネルほど渋滞する(抵抗大)」という物理的イメージを持てば、断面積と抵抗が反比例することは明らかです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • \(R = \rho \frac{L}{S}\) の選択理由:
    • 選定理由: 問題文に「長さ」「断面積」「材質(抵抗率)」というキーワードが出てきたら、これらを結びつける公式はこれしかありません。
    • 適用根拠: 抵抗PとQの抵抗値の具体的な数値は不明ですが、この公式を使うことで、両者の「相対的な関係(比率)」を定量的に導き出すことができます。
  • オームの法則 \(V=RI\) の選択理由:
    • 選定理由: 回路全体の「電圧」「電流」「抵抗」の関係を解くための最も基本的なツールです。
    • 適用根拠: 回路全体を一つのブラックボックス(合成抵抗 \(R\))と見なせば、外部からかけた電圧 \(1.2\,\text{V}\) と流れ込んだ電流 \(0.20\,\text{A}\) は、このブラックボックス全体の特性に従います。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める:
    • いきなり数値を代入せず、\(R_P = 12R_Q\) のように文字の関係式のまま合成抵抗の計算を進めます。分数の通分などがやりやすくなり、計算ミスが減ります。
  • 比率の検算:
    • \(R_P = 78\), \(R_Q = 6.5\) と出たら、\(78 \div 6.5 = 12\) となるか確認します。これが最初の設定(長さ3倍、断面積1/4倍)と一致していれば、比率計算は合っています。
  • 別解アプローチでの確認:
    • 余裕があれば、別解のように「電流の比」からも計算してみます。並列回路では「抵抗の逆比に電流が流れる」という直感的なチェックも有効です。\(78\,\Omega\) と \(6.5\,\Omega\) なら、電流は \(1:12\) になるはずです。

478 抵抗の消費電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 電流 \(I\) を用いた解法
      • 模範解答が分圧の法則で各抵抗の電圧を求めてから \(P=V^2/R\) を用いるのに対し、別解では回路全体の電流 \(I\) を先に求め、\(P=I^2R\) の公式を用いて電力を計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 直列回路の特性活用: 直列回路では電流が一定であることを利用するため、計算プロセスがシンプルになり、直感的に理解しやすくなります。
    • 公式選択の柔軟性: 与えられた条件(電圧一定か電流一定か)に応じて、\(P=V^2/R\) と \(P=I^2R\) のどちらを使うべきか判断する力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「直列・並列回路における消費電力の比較」です。抵抗のつなぎ方によって、電圧や電流がどう分配され、結果として消費電力(明るさや発熱量)がどう変化するかを理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電力の公式: 消費電力 \(P\) は、電圧 \(V\)、電流 \(I\)、抵抗 \(R\) を用いて以下の3通りで表せます。
    • \(P = VI\) (基本形)
    • \(P = I^2R\) (電流 \(I\) が共通の場合に便利)
    • \(P = \frac{V^2}{R}\) (電圧 \(V\) が共通の場合に便利)
  2. 回路の接続特性:
    • 並列接続: 各抵抗にかかる電圧が等しい。
    • 直列接続: 各抵抗を流れる電流が等しい。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 並列接続では電圧 \(V\) が共通なので、\(P = \frac{V^2}{R}\) の公式を選択して計算します。
  2. (2) 直列接続では、模範解答のように分圧の法則で電圧を求めて \(P = \frac{V^2}{R}\) を使うか、あるいは別解のように電流 \(I\) を求めて \(P = I^2R\) を使います。

問(1)

思考の道筋とポイント
図(1)を見ると、抵抗 \(R_1\) と \(R_2\) は並列に接続されています。並列回路の最大の特徴は「電圧が等しい」ことです。したがって、どちらの抵抗にも電源電圧と同じ \(2.0\,\text{V}\) がかかります。
電圧 \(V\) と抵抗 \(R\) がわかっているので、電力の公式の中で \(V\) と \(R\) を使うもの、すなわち \(P = \frac{V^2}{R}\) を選ぶのが最適です。
この設問における重要なポイント

  • 並列接続なので、\(R_1\) にも \(R_2\) にも \(V = 2.0\,\text{V}\) の電圧がかかる。
  • 抵抗値は \(R_1 = 10\,\Omega\)、\(R_2 = 30\,\Omega\)。
  • 公式 \(P = \frac{V^2}{R}\) を用いる。

具体的な解説と立式
抵抗 \(R_1\) での消費電力を \(P_1\)、抵抗 \(R_2\) での消費電力を \(P_2\) とします。
電圧 \(V=2.0\,\text{V}\) は共通です。
それぞれの電力は以下の式で表されます。
$$ P_1 = \frac{V^2}{R_1} $$
$$ P_2 = \frac{V^2}{R_2} $$

使用した物理公式

  • 電力の公式: \(P = \frac{V^2}{R}\)
計算過程

数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= \frac{2.0^2}{10} \\[2.0ex]
&= \frac{4.0}{10} \\[2.0ex]
&= 0.40\,\text{W}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
P_2 &= \frac{2.0^2}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{4.0}{30} \\[2.0ex]
&= 0.133\dots \\[2.0ex]
&\approx 0.13\,\text{W}
\end{aligned}
$$
次に、比 \(P_1 : P_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_1 : P_2 &= 0.40 : \frac{4.0}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{4.0}{10} : \frac{4.0}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{10} : \frac{1}{30}
\end{aligned}
$$
両辺に \(30\) を掛けて整数比にします。
$$
\begin{aligned}
P_1 : P_2 &= 3 : 1
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

並列つなぎでは、どちらの抵抗にも同じ電圧がかかります。このとき、抵抗が小さい(通りやすい)方にはたくさんの電流が流れるので、パワー(電力)も大きくなります。
\(R_1\) は \(R_2\) の \(1/3\) の抵抗値しかないので、3倍の電流が流れ、結果として3倍の電力を消費します。

結論と吟味

\(P_1 = 0.40\,\text{W}\)、\(P_2 = 0.13\,\text{W}\)、比は \(3:1\) です。
抵抗値が小さい \(R_1\) の方が電力が大きくなっているため、物理的に妥当です。

解答 (1) \(P_1\): \(0.40\,\text{W}\), \(P_2\): \(0.13\,\text{W}\), \(P_1:P_2 = 3:1\)

問(2)

思考の道筋とポイント
図(2)を見ると、抵抗 \(R_1\) と \(R_2\) は直列に接続されています。直列回路では、電源電圧 \(2.0\,\text{V}\) が抵抗値の比に応じて分配(分圧)されます。
模範解答のアプローチに従い、まず各抵抗にかかる電圧 \(V_1, V_2\) を求め、その後に \(P = \frac{V^2}{R}\) で電力を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 直列接続なので、電圧は抵抗値の比に分配される(分圧の法則)。
  • \(R_1 : R_2 = 10 : 30 = 1 : 3\)。
  • 全体の電圧 \(V = 2.0\,\text{V}\)。

具体的な解説と立式
まず、各抵抗にかかる電圧 \(V_1, V_2\) を求めます。
分圧の法則より、
$$ V_1 = V \times \frac{R_1}{R_1 + R_2} $$
$$ V_2 = V \times \frac{R_2}{R_1 + R_2} $$
次に、求めた電圧を使って電力を計算します。
$$ P_1 = \frac{V_1^2}{R_1} $$
$$ P_2 = \frac{V_2^2}{R_2} $$

使用した物理公式

  • 分圧の法則: \(V_1 = V \frac{R_1}{R_1+R_2}\)
  • 電力の公式: \(P = \frac{V^2}{R}\)
計算過程

まず電圧を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= 2.0 \times \frac{10}{10 + 30} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times \frac{10}{40} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= 0.50\,\text{V}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_2 &= 2.0 \times \frac{30}{10 + 30} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times \frac{3}{4} \\[2.0ex]
&= 1.5\,\text{V}
\end{aligned}
$$
次に電力を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= \frac{0.50^2}{10} \\[2.0ex]
&= \frac{0.25}{10} \\[2.0ex]
&= 0.025 \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-2}\,\text{W}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
P_2 &= \frac{1.5^2}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{2.25}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{0.225}{3} \\[2.0ex]
&= 0.075 \\[2.0ex]
&= 7.5 \times 10^{-2}\,\text{W}
\end{aligned}
$$
最後に比を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_1 : P_2 &= 2.5 \times 10^{-2} : 7.5 \times 10^{-2} \\[2.0ex]
&= 2.5 : 7.5 \\[2.0ex]
&= 1 : 3
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

直列つなぎでは、抵抗が大きいほど、電気を流すのにより大きな力(電圧)が必要になります。\(R_2\) は \(R_1\) の3倍の抵抗があるので、3倍の電圧がかかります。
直列では流れる電流は同じなので、電圧が大きい(=抵抗が大きい)方が、より多くの仕事をすることになり、電力も大きくなります。

結論と吟味

\(P_1 = 2.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\)、\(P_2 = 7.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\)、比は \(1:3\) です。
抵抗値が大きい \(R_2\) の方が電力が大きくなっており、直列回路の特性と一致します。

解答 (2) \(P_1\): \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\), \(P_2\): \(7.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\), \(P_1:P_2 = 1:3\)
別解: 電流 \(I\) を用いた解法

思考の道筋とポイント
直列回路では、各抵抗を流れる電流 \(I\) が共通です。
まず回路全体の合成抵抗を求め、オームの法則から電流 \(I\) を算出します。
その後、電流 \(I\) が共通であることを利用して、公式 \(P = I^2R\) を使って電力を計算します。この方法なら、個別の電圧を求める必要がありません。
この設問における重要なポイント

  • 直列回路の合成抵抗 \(R_{\text{total}} = R_1 + R_2\)。
  • 回路全体を流れる電流 \(I = \frac{V}{R_{\text{total}}}\)。
  • 電力の公式 \(P = I^2R\) を使用。

具体的な解説と立式
合成抵抗 \(R_{\text{total}}\) は、
$$ R_{\text{total}} = R_1 + R_2 $$
回路を流れる電流 \(I\) は、
$$ I = \frac{V}{R_{\text{total}}} $$
各抵抗の電力 \(P_1, P_2\) は、
$$ P_1 = I^2 R_1 $$
$$ P_2 = I^2 R_2 $$

使用した物理公式

  • 合成抵抗(直列): \(R = R_1 + R_2\)
  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
  • 電力の公式: \(P = I^2R\)
計算過程

まず電流 \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{total}} &= 10 + 30 = 40\,\Omega \\[2.0ex]
I &= \frac{2.0}{40} = 0.050\,\text{A}
\end{aligned}
$$
次に電力を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_1 &= 0.050^2 \times 10 \\[2.0ex]
&= 0.0025 \times 10 \\[2.0ex]
&= 0.025 \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^{-2}\,\text{W}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
P_2 &= 0.050^2 \times 30 \\[2.0ex]
&= 0.0025 \times 30 \\[2.0ex]
&= 0.075 \\[2.0ex]
&= 7.5 \times 10^{-2}\,\text{W}
\end{aligned}
$$
比を求めます。
$$
\begin{aligned}
P_1 : P_2 &= I^2 R_1 : I^2 R_2 \\[2.0ex]
&= R_1 : R_2 \\[2.0ex]
&= 10 : 30 \\[2.0ex]
&= 1 : 3
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

直列回路では「電流」がどこでも同じです。電力の公式 \(P = I^2R\) を見ると、電流 \(I\) が同じなら、電力 \(P\) は抵抗 \(R\) に単純に比例することがわかります。
つまり、抵抗が3倍なら電力も3倍。これを使えば、比率の計算は一瞬で終わります。具体的な値も、電流さえ出してしまえば簡単に計算できます。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。直列回路の電力比を考える際は、この「抵抗比=電力比」という関係が非常に強力です。

解答 (2) \(P_1\): \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\), \(P_2\): \(7.5 \times 10^{-2}\,\text{W}\), \(P_1:P_2 = 1:3\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電力公式の使い分け(\(P=VI=I^2R=V^2/R\))
    • 核心: 3つの公式は数学的には等価ですが、物理的な状況(何が一定か)に応じて使い分けることで、計算の見通しが劇的に変わります。
    • 理解のポイント:
      • 並列回路: 電圧 \(V\) が共通 \(\rightarrow\) \(P = \frac{V^2}{R}\) を使うと、\(P\) は \(R\) に反比例する(抵抗が小さいほど明るい)。
      • 直列回路: 電流 \(I\) が共通 \(\rightarrow\) \(P = I^2R\) を使うと、\(P\) は \(R\) に比例する(抵抗が大きいほど明るい)。
  • 回路接続と物理量の分配
    • 核心: 回路のつなぎ方によって、電圧と電流がどのように分配されるかを直感的に理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 並列: 電圧は等しく分配され(\(V_1=V_2=V\))、電流は抵抗の逆比に分配される。
      • 直列: 電流は等しく分配され(\(I_1=I_2=I\))、電圧は抵抗の正比に分配される(分圧)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電球の明るさ比較: 「\(100\,\text{W}\) の電球と \(40\,\text{W}\) の電球を直列につないだらどっちが明るい?」という定番問題。定格電力(\(100\,\text{V}\) での電力)から抵抗値を求め、直列時の電力 \(P=I^2R\) を比較します。抵抗が大きい(定格電力が小さい)\(40\,\text{W}\) 球の方が明るくなるという直感に反する結果を導けます。
    • 送電線の電力損失: 送電線(抵抗 \(r\))での損失を減らすために電圧を上げる問題。送電電力 \(P=VI\) が一定なら、電圧 \(V\) を上げると電流 \(I\) が減り、損失 \(P_{\text{loss}} = I^2r\) が激減するというロジックも、この公式選択の応用です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「何が共通か」を探す: 回路図を見て、抵抗同士が並列なら「電圧共通」、直列なら「電流共通」と即座に判断します。
    2. 比率だけで解けるか確認する: 具体的な数値(\(2.0\,\text{V}\) など)を使わずに、抵抗の比率(\(1:3\))だけで電力比(\(3:1\) や \(1:3\))が出せる場合が多いです。検算としても有効です。
    3. 極端な場合を想定する: もし片方の抵抗が \(0\) だったら?無限大だったら?と考えると、電流や電圧の振る舞いが見えやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 公式の丸暗記と誤用:
    • 誤解: 「電力は抵抗に反比例する」と \(P=V^2/R\) だけを覚えていて、直列回路でも「抵抗が小さい方が電力大」と答えてしまう。
    • 対策: 「電圧一定なら反比例、電流一定なら比例」と、条件付きで覚える癖をつけましょう。
  • 分圧・分流の計算ミス:
    • 誤解: 直列回路の電圧分配で、抵抗の逆比で分けてしまう(並列の電流分配と混同する)。
    • 対策: 「抵抗が大きい=通りにくい=押し通すのにより強い力(電圧)が必要」という物理的イメージを持ちましょう。直列では抵抗が大きいほど電圧を食います。
  • 単位の次元:
    • 誤解: 計算結果の単位を間違える。
    • 対策: \(P\) の単位はワット(\(\text{W}\))またはジュール毎秒(\(\text{J/s}\))です。\(V^2/R\) の計算なら \((\text{V})^2 / \Omega = \text{W}\) となることを確認します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 並列で \(P = V^2/R\) を選ぶ理由:
    • 選定理由: 並列回路では、各抵抗にかかる電圧が電源電圧そのもの(既知の値)になるため、未知数である電流を計算する手間が省けるからです。
    • 適用根拠: \(V\) が定数として扱えるため、\(P\) と \(R\) の関数関係(反比例)が直接見えます。
  • 直列で \(P = I^2R\) を選ぶ理由(別解):
    • 選定理由: 直列回路では電流が一本道で共通なため、一度電流さえ求めてしまえば、各抵抗の電圧を個別に計算するステップを省略できるからです。
    • 適用根拠: \(I\) が定数として扱えるため、\(P\) と \(R\) の関数関係(比例)が直接見えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 比の計算を活用する:
    • \(P_1 : P_2\) を求める際、\(0.40 : 0.13\) のように小数で計算するのではなく、\(\frac{V^2}{10} : \frac{V^2}{30} = \frac{1}{10} : \frac{1}{30} = 3 : 1\) のように、文字式のまま約分してから数値を代入すると、計算量もミスも減ります。
  • 指数の活用:
    • \(0.025\) を \(2.5 \times 10^{-2}\) と書くことで、桁数の間違いを防げます。特に \(P_1 : P_2\) の比較では、指数部(\(10^{-2}\))が揃っていれば仮数部(\(2.5\) と \(7.5\))だけの比較で済みます。
  • 合計値での検算:
    • (2)で \(P_1 + P_2 = 2.5 \times 10^{-2} + 7.5 \times 10^{-2} = 10.0 \times 10^{-2} = 0.10\,\text{W}\)。
    • 一方、全体で計算すると \(P_{\text{total}} = \frac{V^2}{R_{\text{total}}} = \frac{2.0^2}{40} = \frac{4.0}{40} = 0.10\,\text{W}\)。
    • 一致するので、個別の計算も合っていると確信できます。
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479 抵抗の消費電力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 並列部分の電圧 \(V\) を用いた解法
      • 模範解答が電流の分流比を用いて \(R_2, R_3\) の電流を求めてから \(P=I^2R\) を用いるのに対し、別解では並列部分の合成抵抗から電圧 \(V\) を求め、\(P=V^2/R\) の公式を用いて電力を計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 並列回路の特性活用: 並列回路では電圧が共通であることを利用するため、電流を個別に求める手間が省ける場合があります。
    • 公式選択の柔軟性: 与えられた条件や計算のしやすさに応じて、\(P=I^2R\) と \(P=V^2/R\) のどちらを使うべきか判断する力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「直並列混在回路における消費電力の計算」です。回路の一部が並列、一部が直列になっている場合、電流や電圧がどのように分配されるかを正しく把握し、適切な電力の公式を選択する力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電力の公式: 消費電力 \(P\) は、電圧 \(V\)、電流 \(I\)、抵抗 \(R\) を用いて以下の3通りで表せます。
    • \(P = VI\)
    • \(P = I^2R\) (電流 \(I\) がわかっている場合に便利)
    • \(P = \frac{V^2}{R}\) (電圧 \(V\) がわかっている場合に便利)
  2. 回路の接続特性:
    • 直列接続: 電流が共通。
    • 並列接続: 電圧が共通。電流は抵抗の逆比に分配される(分流)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. \(R_1\) は回路全体の電流 \(5.0\,\text{A}\) がそのまま流れるため、\(P=I^2R\) で直接計算します。
  2. \(R_2\) と \(R_3\) は並列接続されており、全体の電流 \(5.0\,\text{A}\) が分流します。模範解答のように分流の法則で各電流を求めて \(P=I^2R\) を使うか、あるいは別解のように並列部分の電圧を求めて \(P=V^2/R\) を使います。

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