問題73 気体の状態変化と熱効率 (19 神戸大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(断熱変化の式の導出と仕事の積分計算)
- 模範解答は、熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) において断熱変化(\(Q=0\))であることを利用し、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) から間接的に仕事を求めています。
- 対して別解では、熱力学第一法則の微分形と状態方程式からポアソンの法則(\(TV^{\gamma-1}=\text{一定}\) および \(pV^{\gamma}=\text{一定}\))を導出し、仕事の定義式 \(W = \int p \, dV\) に基づいて直接積分計算を行います。
- この過程で、設問(4)で証明すべき関係式も自然に導出されるため、設問(3)と(4)を一括して体系的に解説します。
- 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(断熱変化の式の導出と仕事の積分計算)
- 上記の別解が有益である理由
- 原理からの理解: 公式を暗記するのではなく、エネルギー保存則と状態方程式という基本原理から、断熱変化の挙動や仕事の式を導く物理的基礎体力を養います。
- 幾何学的意味の確認: \(P-V\) グラフの面積が仕事であるという定義を、積分計算を通じて具体的に確認できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「オットーサイクル(断熱変化と定積変化を組み合わせた熱サイクル)」です。エンジンの理論サイクルとしても知られる重要なモデルで、断熱変化におけるポアソンの法則や熱力学第一法則を駆使して、熱量、仕事、熱効率を計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 熱力学第一法則: 気体が吸収した熱量 \(Q\)、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\)、気体が外部へした仕事 \(W\) の間に成り立つ保存則 \(Q = \Delta U + W\) です。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: 温度 \(T\)、物質量 \(n\)、定積モル比熱 \(C_V\) を用いて \(\Delta U = nC_V \Delta T\) と表されます。
- ポアソンの法則: 断熱変化において成り立つ関係式 \(pV^{\gamma} = \text{一定}\) または \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\) です。
- 熱効率の定義: 熱機関が吸収した熱量 \(Q_{\text{吸}}\) に対する、外部へした正味の仕事 \(W\) の割合 \(e = \frac{W}{Q_{\text{吸}}}\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、断熱変化の曲線が等温変化よりも急勾配になることに注意してグラフを描きます。
- (2)では、各変化における熱の出入りを調べます。断熱変化は \(Q=0\)、定積変化は \(W=0\) であることが判断の基準です。
- (3)では、熱力学第一法則を用いて、断熱変化における仕事を内部エネルギー変化から求めます。
- (4)では、ポアソンの法則を用いて温度と体積の関係を導きます。
- (5)では、これまでの結果を熱効率の定義式に代入して計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
4つの状態変化を順に追跡し、\(p-V\) グラフ上での概形を描きます。
- a \(\to\) b (断熱膨張): 体積が増加し、圧力が下がります。断熱線は等温線(\(pV=\text{一定}\))よりも傾きが急(\(pV^{\gamma}=\text{一定}\), \(\gamma > 1\))になります。
- b \(\to\) c (定積冷却): 体積 \(V_1\) 一定のまま温度を下げるため、圧力は下がります(シャルルの法則 \(p \propto T\))。
- c \(\to\) d (断熱圧縮): 体積が減少し、圧力が上がります。a \(\to\) b と同様の曲線の形状です。
- d \(\to\) a (定積加熱): 体積 \(V_2\) 一定のまま温度を上げるため、圧力は上がります。
この設問における重要なポイント
- 断熱線の勾配: 断熱変化の曲線は、等温変化の曲線よりも急激に変化します。
- サイクルの向き: a \(\to\) b \(\to\) c \(\to\) d \(\to\) a の順に回ると、時計回りのサイクルになります。
具体的な解説と立式
各過程の変化を整理します。
- a \(\to\) b: 断熱膨張。体積は \(V_2 \to V_1\) へ増加、圧力は減少。曲線を描きます。
- b \(\to\) c: 定積変化。体積は \(V_1\) で一定。温度が下がるので圧力も減少。グラフでは真下への直線です。
- c \(\to\) d: 断熱圧縮。体積は \(V_1 \to V_2\) へ減少、圧力は増加。曲線を描きます。
- d \(\to\) a: 定積変化。体積は \(V_2\) で一定。温度が上がるので圧力も増加。グラフでは真上への直線です。
これらをつなぐと、右下がりの曲線2本と、垂直な直線2本で囲まれた閉曲線となります。
使用した物理公式
- ポアソンの法則: \(pV^{\gamma} = \text{一定}\)
- シャルルの法則: \(p \propto T\) (\(V\) 一定)
(グラフ描画のため計算なし)
気体の状態がどのように変わるかを地図(グラフ)にします。
「断熱」とつくと、温度一定のときよりも急激に圧力が変わるのが特徴です。
膨張するときは圧力が下がり、圧縮するときは圧力が上がります。
体積が変わらないときは、温度の変化に合わせて圧力だけが上下します。
これらを組み合わせると、バナナのような形をしたサイクルができあがります。
模範解答の図aのような形状になります。
時計回りのサイクルは、外部へ正の仕事をする熱機関の特徴を表しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
「熱を吸収(吸熱)」または「熱を放出(放熱)」する過程を特定し、その熱量を計算します。
熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) を各過程に適用して判断します。
この設問における重要なポイント
- 断熱変化: 定義より \(Q = 0\) なので、熱の出入りはありません。
- 定積変化: 体積一定なので仕事 \(W = 0\) です。したがって \(Q = \Delta U\) となり、内部エネルギーの増減(温度の増減)がそのまま熱の出入りに対応します。
- 温度変化と熱の向き:
- 温度上昇 (\(\Delta T > 0\)) \(\to\) \(\Delta U > 0\) \(\to\) \(Q > 0\) (吸熱)
- 温度低下 (\(\Delta T < 0\)) \(\to\) \(\Delta U < 0\) \(\to\) \(Q < 0\) (放熱)
具体的な解説と立式
各過程について検討します。物質量は \(n=1\,\text{mol}\) です。
1. a \(\to\) b (断熱膨張): 断熱変化なので \(Q_{ab} = 0\)。熱の出入りなし。
2. b \(\to\) c (定積冷却): 温度が \(T_b\) から \(T_c\) へ下がります。
定積変化なので \(W_{bc} = 0\) です。
熱力学第一法則より、気体が得た熱量 \(Q_{bc}\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
Q_{bc} &= \Delta U_{bc} + W_{bc}
\end{aligned}
$$
問題文より「温度を下げる」ので \(T_c < T_b\) です。よって \(Q_{bc} < 0\) となり、これは放熱を表します。
放出熱量 \(Q_{\text{放}}\)(正の値)として立式します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{放}} &= -Q_{bc}
\end{aligned}
$$
3. c \(\to\) d (断熱圧縮): 断熱変化なので \(Q_{cd} = 0\)。熱の出入りなし。
4. d \(\to\) a (定積加熱): 温度が \(T_d\) から \(T_a\) へ上がります。
定積変化なので \(W_{da} = 0\) です。
気体が得た熱量 \(Q_{da}\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
Q_{da} &= \Delta U_{da} + W_{da}
\end{aligned}
$$
問題文より「温度を上げる」ので \(T_a > T_d\) です。よって \(Q_{da} > 0\) となり、これは吸熱を表します。
吸収熱量 \(Q_{\text{吸}}\) として立式します。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{吸}} &= Q_{da}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱力学第一法則: \(Q = \Delta U + W\)
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー変化: \(\Delta U = n C_V \Delta T\)
まず、\(Q_{bc}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{bc} &= 1 \cdot C_V (T_c – T_b) + 0 \\[2.0ex]
&= C_V (T_c – T_b)
\end{aligned}
$$
これより、放出熱量 \(Q_{\text{放}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{放}} &= – \{ C_V (T_c – T_b) \} \\[2.0ex]
&= C_V (T_b – T_c)
\end{aligned}
$$
次に、\(Q_{da}\) を計算し、吸収熱量 \(Q_{\text{吸}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{吸}} &= 1 \cdot C_V (T_a – T_d) + 0 \\[2.0ex]
&= C_V (T_a – T_d)
\end{aligned}
$$
断熱変化はその名の通り熱の出入りがないので無視します。
体積が変わらない定積変化では、気体は仕事をしません。そのため、温度の変化がそのまま熱の出入りになります。
温度が下がった b \(\to\) c では、エネルギーを失ったので「熱を放出した」ことになります。
温度が上がった d \(\to\) a では、エネルギーを得たので「熱を吸収した」ことになります。
吸熱過程は d \(\to\) a、放熱過程は b \(\to\) c です。
熱量はそれぞれ正の値で表現されており、物理的に妥当です。
熱を吸収:d \(\to\) a、熱量:\(C_V(T_a – T_d)\)
熱を放出:b \(\to\) c、熱量:\(C_V(T_b – T_c)\)
問(3)
思考の道筋とポイント
1サイクルの間に気体が外部にする仕事の総和 \(W\) を求めます。
\(W\) は、各過程での仕事の和 \(W = W_{ab} + W_{bc} + W_{cd} + W_{da}\) として計算できます。
定積変化では仕事は \(0\) なので、断熱変化での仕事をどう求めるかが鍵です。
断熱変化では \(Q=0\) なので、第一法則 \(0 = \Delta U + W\) より、仕事は内部エネルギーの減少分に等しいことを利用します。
この設問における重要なポイント
- 断熱変化の仕事: \(W = -\Delta U\) の関係を利用すると、複雑な積分計算をせずに温度変化だけで仕事を求められます。
- 仕事の総和: 膨張するときは正の仕事、圧縮するときは負の仕事をします。これらを符号付きで足し合わせます。
具体的な解説と立式
各過程の仕事を立式します。
1. a \(\to\) b (断熱膨張):
熱力学第一法則 \(Q_{ab} = \Delta U_{ab} + W_{ab}\) において \(Q_{ab}=0\) より、
$$
\begin{aligned}
0 &= C_V(T_b – T_a) + W_{ab}
\end{aligned}
$$
これを \(W_{ab}\) について解く形にします。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= -C_V(T_b – T_a)
\end{aligned}
$$
2. b \(\to\) c (定積変化): 体積一定なので、
$$
\begin{aligned}
W_{bc} &= 0
\end{aligned}
$$
3. c \(\to\) d (断熱圧縮):
同様に第一法則より、
$$
\begin{aligned}
0 &= C_V(T_d – T_c) + W_{cd}
\end{aligned}
$$
これを \(W_{cd}\) について解く形にします。
$$
\begin{aligned}
W_{cd} &= -C_V(T_d – T_c)
\end{aligned}
$$
4. d \(\to\) a (定積変化): 体積一定なので、
$$
\begin{aligned}
W_{da} &= 0
\end{aligned}
$$
1サイクルの総仕事 \(W\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
W &= W_{ab} + W_{bc} + W_{cd} + W_{da}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱力学第一法則(断熱変化): \(0 = \Delta U + W\)
各項を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
W &= -C_V(T_b – T_a) + 0 – C_V(T_d – T_c) + 0 \\[2.0ex]
&= C_V(T_a – T_b) + C_V(T_c – T_d) \\[2.0ex]
&= C_V(T_a – T_b + T_c – T_d)
\end{aligned}
$$
断熱変化では、気体が外部に仕事をすると、そのエネルギー源として自分自身の内部エネルギー(温度)を使います。つまり、「した仕事」=「温度の減少分 \(\times C_V\)」となります。
逆に仕事をされると、その分だけ温度が上がります。
膨張する a \(\to\) b では温度が下がり正の仕事をし、圧縮される c \(\to\) d では温度が上がり負の仕事をします。これらを合計することで、サイクル全体の仕事が求まります。
答えは \(C_V(T_a – T_b + T_c – T_d)\) です。
これは、(2)で求めた \(Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}}\) を計算しても同じ結果になります。
\(Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}} = C_V(T_a – T_d) – C_V(T_b – T_c) = C_V(T_a – T_d – T_b + T_c)\)。
エネルギー保存則(1サイクルで内部エネルギー変化は0なので、入った熱と出た熱の差が仕事になる)とも整合しており、正しい結果です。
思考の道筋とポイント
ここでは、熱力学第一法則の微分形と状態方程式から出発し、断熱変化を表すポアソンの法則を数学的に導出します。さらに、その式を用いて仕事を定義通りに積分計算します。
この一連の流れにより、設問(3)の仕事の式だけでなく、設問(4)で証明すべき関係式も自然に導かれることを示します。
この設問における重要なポイント
- 原理からの導出: 公式を前提とせず、エネルギー保存則と状態方程式のみを出発点とします。
- 仕事の定義: 仕事は \(P-V\) グラフの面積、すなわち \(W = \int p \, dV\) であることを利用します。
具体的な解説と立式
1. ポアソンの法則の導出
断熱変化における微小変化を考えます。熱力学第一法則 \(dQ = dU + dW\) において、断熱条件 \(dQ=0\) より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
0 &= n C_V dT + p \, dV \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
理想気体の状態方程式 \(pV = nRT\) の両辺を微分(全微分)します。
$$
\begin{aligned}
p \, dV + V \, dp &= nR \, dT
\end{aligned}
$$
これを \(dT\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
dT &= \frac{p \, dV + V \, dp}{nR} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
式②を式①に代入して \(dT\) を消去する方針で立式します。
2. 積分による仕事の計算
断熱変化 \(a \to b\) における仕事 \(W_{ab}\) を、定義式 \(W = \int p \, dV\) から立式します。
ポアソンの法則 \(pV^{\gamma} = K\) (\(K\)は定数)が導かれたとして、これを用います。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= \int_{V_a}^{V_b} p \, dV \\[2.0ex]
&= \int_{V_a}^{V_b} K V^{-\gamma} \, dV
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱力学第一法則(微分形): \(dQ = dU + dW\)
- 理想気体の状態方程式(微分形): \(d(pV) = d(nRT)\)
- 仕事の定義: \(W = \int p \, dV\)
- マイヤーの関係式: \(C_p = C_V + R\)
1. ポアソンの法則の導出計算
式②を式①に代入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= n C_V \cdot \frac{p \, dV + V \, dp}{nR} + p \, dV
\end{aligned}
$$
両辺に \(R\) を掛け、\(n\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
0 &= C_V (p \, dV + V \, dp) + R p \, dV \\[2.0ex]
0 &= (C_V + R) p \, dV + C_V V \, dp
\end{aligned}
$$
マイヤーの関係式 \(C_p = C_V + R\) を用います。
$$
\begin{aligned}
0 &= C_p p \, dV + C_V V \, dp
\end{aligned}
$$
両辺を \(C_V p V\) で割ります。ここで比熱比 \(\gamma = \frac{C_p}{C_V}\) を導入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= \frac{C_p}{C_V} \frac{dV}{V} + \frac{dp}{p} \\[2.0ex]
0 &= \gamma \frac{dV}{V} + \frac{dp}{p}
\end{aligned}
$$
両辺を積分します。
$$
\begin{aligned}
\gamma \ln V + \ln p &= \text{一定} \\[2.0ex]
\ln (p V^{\gamma}) &= \text{一定}
\end{aligned}
$$
よって、以下のポアソンの法則が導かれます。
$$
\begin{aligned}
p V^{\gamma} &= K \quad (\text{一定}) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
また、\(p = \frac{nRT}{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{nRT}{V} \cdot V^{\gamma} &= K \\[2.0ex]
T V^{\gamma-1} &= \text{一定} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
この式④は、まさに設問(4)で証明すべき関係式そのものです。
2. 仕事の積分計算
先ほど立てた積分の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= K \left[ \frac{V^{-\gamma+1}}{-\gamma+1} \right]_{V_a}^{V_b} \\[2.0ex]
&= \frac{K}{1-\gamma} (V_b^{1-\gamma} – V_a^{1-\gamma})
\end{aligned}
$$
ここで \(K = p_a V_a^{\gamma} = p_b V_b^{\gamma}\) を戻します。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= \frac{1}{1-\gamma} (p_b V_b^{\gamma} \cdot V_b^{1-\gamma} – p_a V_a^{\gamma} \cdot V_a^{1-\gamma}) \\[2.0ex]
&= \frac{p_b V_b – p_a V_a}{1-\gamma}
\end{aligned}
$$
状態方程式 \(pV = nRT\) を用いて温度に変換します。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= \frac{nR T_b – nR T_a}{1-\gamma} \\[2.0ex]
&= \frac{nR (T_b – T_a)}{1-\gamma} \\[2.0ex]
&= \frac{nR (T_a – T_b)}{\gamma – 1}
\end{aligned}
$$
さらに、\(\gamma – 1 = \frac{C_p}{C_V} – 1 = \frac{C_p – C_V}{C_V} = \frac{R}{C_V}\) であることを用います。
$$
\begin{aligned}
W_{ab} &= \frac{nR (T_a – T_b)}{R/C_V} \\[2.0ex]
&= n C_V (T_a – T_b)
\end{aligned}
$$
今回は \(n=1\) なので、\(W_{ab} = C_V(T_a – T_b)\) となり、メインの解法(熱力学第一法則からの導出)と完全に一致します。
同様に \(W_{cd} = C_V(T_c – T_d)\) となり、総和をとることで設問(3)の答えが得られます。
「断熱変化の公式」を忘れてしまっても、エネルギー保存則と状態方程式という基本ルールさえ知っていれば、数学の力(微積分)を使って自分で公式を作り出すことができます。
圧力 \(p\) を体積 \(V\) の関数として表し、それを積分することで、グラフの面積(仕事)を直接計算しました。
結果として、温度変化を使った簡単な式と同じになることが確認でき、物理法則の整合性が取れていることがわかります。
微積分を用いて原理から導出することで、仕事の式とポアソンの法則が密接に結びついていることが確認できました。
問(4)
思考の道筋とポイント
2つの断熱変化(a \(\to\) b と c \(\to\) d)に対して、ポアソンの法則 \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\) を適用し、それらを連立させて関係式を導きます。
問題文で「\(pV^{\gamma}=\text{一定}\)」が与えられていますが、温度と体積の関係を示したいので、状態方程式を使って \(p\) を消去した形(\(TV^{\gamma-1}=\text{一定}\))を利用するのが近道です。
この設問における重要なポイント
- 共通の体積: aとdは体積 \(V_2\)、bとcは体積 \(V_1\) です。この共通項を利用して式を整理します。
具体的な解説と立式
断熱変化 a \(\to\) b について、ポアソンの法則 \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\) を適用します。
$$
\begin{aligned}
T_a V_2^{\gamma-1} &= T_b V_1^{\gamma-1} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
断熱変化 c \(\to\) d について同様に立式します。
$$
\begin{aligned}
T_d V_2^{\gamma-1} &= T_c V_1^{\gamma-1} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
式⑤を式⑥で辺々割る式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_a V_2^{\gamma-1}}{T_d V_2^{\gamma-1}} &= \frac{T_b V_1^{\gamma-1}}{T_c V_1^{\gamma-1}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ポアソンの法則: \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\)
左辺と右辺で共通の \(V^{\gamma-1}\) の項を約分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_a}{T_d} &= \frac{T_b}{T_c}
\end{aligned}
$$
これを変形して、目的の形にします。両辺に \(\frac{T_d}{T_b}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_a}{T_b} &= \frac{T_d}{T_c}
\end{aligned}
$$
2つの断熱変化の式を書き並べて、割り算をするだけです。
体積が \(V_1\) と \(V_2\) の2種類しか登場しないため、きれいに約分されて温度だけの比の式になります。
この関係式は、オットーサイクルの熱効率を計算する際に非常に重要になります。
証明すべき式 \(\frac{T_a}{T_b} = \frac{T_d}{T_c}\) が導かれました。
問(5)
思考の道筋とポイント
熱効率の定義式 \(e = \frac{W}{Q_{\text{吸}}}\) に、これまでの結果を代入します。
\(W = Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}}\) を使うと、\(e = 1 – \frac{Q_{\text{放}}}{Q_{\text{吸}}}\) となり計算が楽になります。
最後に、(4)で導いた温度の比の関係式と、ポアソンの法則を使って、温度 \(T\) を消去し、体積 \(V\) と比熱比 \(\gamma\) だけの式にします。
この設問における重要なポイント
- 熱効率の変形: \(e = 1 – \frac{Q_{\text{放}}}{Q_{\text{吸}}}\) の形が最も計算しやすいです。
- 温度の消去: \(\frac{T_a}{T_b} = \frac{T_d}{T_c}\) の関係式をうまく使って、分母分子を約分します。
具体的な解説と立式
熱効率 \(e\) は、吸収した熱量 \(Q_{\text{吸}}\) に対する正味の仕事 \(W\) の割合です。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{W}{Q_{\text{吸}}}
\end{aligned}
$$
これに \(W = Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}}\) を代入して変形します。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}}}{Q_{\text{吸}}} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{Q_{\text{放}}}{Q_{\text{吸}}}
\end{aligned}
$$
これに(2)の結果 \(Q_{\text{吸}} = C_V(T_a – T_d)\)、\(Q_{\text{放}} = C_V(T_b – T_c)\) を代入する式を立てます。
$$
\begin{aligned}
e &= 1 – \frac{C_V(T_b – T_c)}{C_V(T_a – T_d)} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 熱効率の定義: \(e = \frac{W}{Q_{\text{吸}}}\)
- ポアソンの法則: \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\)
式⑦を整理します。
$$
\begin{aligned}
e &= 1 – \frac{T_b – T_c}{T_a – T_d}
\end{aligned}
$$
ここで、(4)の結果 \(\frac{T_a}{T_b} = \frac{T_d}{T_c}\) を利用します。この比を \(k\) と置きます。
$$
\begin{aligned}
T_a = k T_b, \quad T_d = k T_c
\end{aligned}
$$
これを分母に代入します。
$$
\begin{aligned}
e &= 1 – \frac{T_b – T_c}{k T_b – k T_c} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{T_b – T_c}{k(T_b – T_c)} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{1}{k}
\end{aligned}
$$
ここで \(k = \frac{T_a}{T_b}\) です。
断熱変化 a \(\to\) b のポアソンの法則 \(T_a V_2^{\gamma-1} = T_b V_1^{\gamma-1}\) より、\(k\) を体積比で表します。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_a}{T_b} &= \left( \frac{V_1}{V_2} \right)^{\gamma-1}
\end{aligned}
$$
したがって、\(\frac{1}{k}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{k} &= \frac{T_b}{T_a} \\[2.0ex]
&= \left( \frac{V_2}{V_1} \right)^{\gamma-1}
\end{aligned}
$$
これを \(e\) の式に戻します。
$$
\begin{aligned}
e &= 1 – \left( \frac{V_2}{V_1} \right)^{\gamma-1}
\end{aligned}
$$
熱効率の式に、これまで求めた熱量を代入すると、温度だけの複雑な分数式になります。
しかし、(4)で証明した「温度の比が等しい」という性質を使うと、分母と分子がきれいに約分されて、非常にシンプルな形になります。
最後に、温度の比を体積の比に書き換えることで、エンジンの設計パラメータ(圧縮比 \(V_1/V_2\))だけで決まる効率の式が得られます。
答えは \(1 – \left( \frac{V_2}{V_1} \right)^{\gamma-1}\) です。
ここで \(V_1 > V_2\) (膨張後の体積 > 圧縮後の体積)なので、\(\frac{V_2}{V_1} < 1\) です。 また \(\gamma > 1\) なので指数は正です。
よって \(0 < \left( \frac{V_2}{V_1} \right)^{\gamma-1} < 1\) となり、熱効率 \(e\) は \(0 < e < 1\) の範囲に収まります。これは熱力学第二法則とも整合し、妥当な結果です。
圧縮比 \(V_1/V_2\) を大きくするほど、第2項が小さくなり、効率 \(e\) が上がることがわかります。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 熱力学第一法則と断熱変化の特性
- 核心: 断熱変化では外部との熱のやり取りがない(\(Q=0\))ため、気体が外部へ仕事をする(\(W>0\))と、そのエネルギー源として自身の内部エネルギーが消費され、温度が下がる(\(\Delta U < 0\))というエネルギー変換のメカニズムが働きます。
- 理解のポイント:
- 第一法則 \(Q = \Delta U + W\) において \(Q=0\) と置くことで、\(W = -\Delta U\) という重要な関係式が導かれます。
- これにより、複雑な圧力・体積の積分計算をしなくても、温度変化だけで仕事を計算できることが最大の利点です。
- ポアソンの法則と状態方程式の連立
- 核心: 断熱変化において、圧力 \(p\) と体積 \(V\)、あるいは温度 \(T\) と体積 \(V\) の間には、比熱比 \(\gamma\) を指数とする非線形な保存則(\(pV^{\gamma}=\text{一定}\) や \(TV^{\gamma-1}=\text{一定}\))が成立します。
- 理解のポイント:
- この法則は、断熱変化における状態変数の変化を決定づける拘束条件です。
- 特にオットーサイクルのような熱機関では、圧縮比(体積比)と温度比を結びつける架け橋となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ディーゼルサイクル: 定積加熱の代わりに「定圧加熱」が行われるサイクルです。定圧変化では \(W = p\Delta V\) となり、シャルルの法則を使う点が異なりますが、断熱変化の扱いは共通です。
- スターリングサイクル: 断熱変化の代わりに「等温変化」が含まれるサイクルです。等温変化では \(\Delta U = 0\) となるため、\(Q = W\) となる点が対照的です。
- 初見の問題での着眼点:
- 熱の出入りマップを作る: 各過程について、断熱(\(Q=0\))、定積(\(W=0\))、定圧(\(W=p\Delta V\))、等温(\(\Delta U=0\))のどの変化かを分類し、\(Q\) の符号(吸熱か放熱か)を最初に判定します。
- 1サイクルの収支を確認する: サイクルを一周して元の状態に戻ると、内部エネルギーの変化の総和は必ず \(0\) になります(\(\Delta U_{\text{cycle}} = 0\))。これを利用して、\(W_{\text{net}} = Q_{\text{吸}} – Q_{\text{放}}\) の検算を行います。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 熱量の符号と「吸収・放出」の定義:
- 誤解: 計算結果が負(例: \(Q = -100\,\text{J}\))になったとき、そのまま「\(-100\,\text{J}\) 吸収した」や「\(-100\,\text{J}\) 放出した」と答えてしまう。
- 対策: 熱力学第一法則で求めた \(Q\) が正なら「吸熱」、負なら「放熱」です。設問で「放出した熱量は?」と聞かれたら、負の値の絶対値(大きさ)をとって正の値で答える習慣をつけましょう。
- ポアソンの法則の指数の取り違え:
- 誤解: \(TV^{\gamma} = \text{一定}\) や \(pV^{\gamma-1} = \text{一定}\) のように、指数 \(\gamma\) と \(\gamma-1\) を逆にして覚えてしまう。
- 対策: 常に基本形 \(pV^{\gamma} = \text{一定}\) と状態方程式 \(pV=nRT\) からその場で導出できるようにするか、「\(p\) が消えると指数が減る(\(\gamma \to \gamma-1\))」というイメージで記憶を定着させましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(3)での仕事の計算(第一法則 vs 積分):
- 選定理由: 断熱変化の仕事を \(P-V\) グラフの積分(面積計算)で求めようとすると計算が煩雑になりますが、第一法則 \(W = -\Delta U\) を使えば、温度差だけで瞬時に求まるため、圧倒的に効率的です。
- 適用根拠: 断熱変化(\(Q=0\))であるという条件そのものが、この置換を可能にする根拠です。
- 問(4)でのポアソンの法則の形式(\(TV^{\gamma-1}\) vs \(pV^{\gamma}\)):
- 選定理由: 証明したい式が「温度 \(T\)」と「体積 \(V\)」の関係式であるため、圧力 \(p\) を含まない \(TV^{\gamma-1} = \text{一定}\) の形を選択しました。
- 適用根拠: 理想気体の断熱変化であれば、状態方程式を介してどちらの形式も等価に成立するためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比の計算による文字消去:
- 意識: 複雑な分数式が出てきたら、共通因数を探して約分することを最優先に考えます。
- 実践: 問(5)のように \(\frac{T_a}{T_b} = \frac{T_d}{T_c}\) という比の関係が見つかったら、\(T_a = k T_b\) のように一つの文字(または比 \(k\))で置き換えて代入し、変数を減らしてから計算を進めます。
- 次元(単位)のチェック:
- 意識: 最終的な答えの次元が、求められている物理量の次元と一致しているか確認します。
- 実践: 熱効率 \(e\) は無次元量です。答えの式 \(1 – (V_2/V_1)^{\gamma-1}\) において、\((V_2/V_1)\) は体積同士の比で無次元、指数も無次元なので、全体として無次元になり正しいと判断できます。もし \(V_2/V_1\) に余計な係数がついていたら誤りです。
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問題74 気体の状態変化 (15 佐賀大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 定積モル比熱を用いた解法
- 模範解答のメイン解法は熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) から計算していますが、別解では定積モル比熱 \(C_V\) の公式を用いて直接熱量を求めます。
- 設問(3)の別解: 定圧モル比熱を用いた解法
- 模範解答のメイン解法は熱力学第一法則と仕事の計算を組み合わせていますが、別解では定圧モル比熱 \(C_p\) の公式を用いて直接熱量を求めます。
- 設問(4)の別解1: \(p-V\) グラフの面積を用いた解法
- 各過程の仕事を足し合わせる代わりに、\(p-V\) グラフ上の閉曲線で囲まれた面積が1サイクルの仕事に等しいことを利用して計算します。
- 設問(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(仕事の積分計算)
- 仕事の定義式 \(W = \int p \, dV\) に基づき、各過程の仕事を積分計算によって厳密に導出します。
- 設問(1)の別解: 定積モル比熱を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 比熱の利用: \(C_V\) や \(C_p\) を適切に使い分けることで、計算手順を短縮し、ミスのリスクを減らすことができます。
- 幾何学的解釈: グラフの面積と仕事の関係を理解することで、サイクルの全体像を直感的に把握できるようになります。
- 原理からの理解: 微積分を用いることで、公式の暗記ではなく、物理学の基本原理から現象を記述する力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「理想気体の状態変化と熱サイクル」です。定積変化と定圧変化を組み合わせたサイクルにおいて、状態方程式、熱力学第一法則、仕事、熱効率といった熱力学の基礎を総合的に扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 理想気体の状態方程式: 圧力 \(p\)、体積 \(V\)、物質量 \(n\)、気体定数 \(R\)、温度 \(T\) の間に \(pV = nRT\) が成り立ちます。
- 熱力学第一法則: 気体が吸収した熱量 \(Q\)、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\)、気体が外部へした仕事 \(W\) の間に \(Q = \Delta U + W\) の関係が成り立ちます。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: \(\Delta U = \frac{3}{2}nRT\) (または \(\Delta U = \frac{3}{2}nR\Delta T\))で表されます。
- 定積変化と定圧変化:
- 定積変化: 体積一定 (\(\Delta V = 0\)) \(\rightarrow\) 仕事 \(W = 0\)。
- 定圧変化: 圧力一定 (\(\Delta p = 0\)) \(\rightarrow\) 仕事 \(W = p\Delta V\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、定積変化の特徴(仕事が0)を利用して吸熱量を求めます。
- (2)では、状態方程式を用いて各状態の圧力を求め、グラフを描きます。「体積が温度に比例」という条件が定圧変化を意味することを見抜くのがポイントです。
- (3)では、定圧変化における熱量を第一法則から計算し、(1)の結果と比較します。
- (4)では、サイクル全体での仕事を各過程の和として求めます。
- (5)では、熱効率の定義に従い、正味の仕事と吸収した総熱量の比を計算します。
問(1)
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