「物理重要問題集2026」徹底解説(70〜72問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題70 気体の状態変化 (22 電気通信大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説では、模範解答で採用されている「ボイル・シャルルの法則」や「定圧モル比熱の公式」を用いた解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)(3)(4)の別解: 状態方程式の連立による解法
      • 模範解答が「ボイル・シャルルの法則(変化前後の比較)」を用いるのに対し、別解では「各状態での理想気体の状態方程式」を個別に立てて連立します。
    • 設問(3)の別解: 微積分と熱力学第一法則を用いた体系的解法
      • 定圧モル比熱 \(C_p = \frac{5}{2}R\) を公式として暗記するのではなく、熱力学第一法則 \(dQ = dU + dW\) と状態方程式の微分形から導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 状態方程式の解法: 「どの状態とどの状態を比較すればよいか」と迷うことなく、機械的に式を立てて解くことができるため、複雑なサイクル問題でミスを防げます。
    • 微積分の解法: 「熱量とは何か」「内部エネルギーとは何か」という定義に立ち返ることで、公式の適用範囲(単原子分子か否か、定圧か否かなど)を論理的に判断できる応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「水銀柱で封入された気体の状態変化サイクル」です。
管の傾きを変えることで気体の圧力を操作し、温度を変えることで体積を操作します。各過程がどのような変化(等温、定圧など)に対応するかを見極めることが重要です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 力のつりあい: 水銀柱が静止しているとき、水銀柱にはたらく「気体の圧力による力」「大気圧による力」「重力」がつりあっています。これにより気体の圧力が決定されます。
  • 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\) は、あらゆる平衡状態で常に成立します。
  • ボイル・シャルルの法則: 気体の物質量 \(n\) が一定の場合、\(\displaystyle \frac{pV}{T} = \text{一定}\) が成り立ちます。
  • 熱力学第一法則: 気体に加えた熱量 \(Q\) は、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と気体が外部へした仕事 \(W\) の和に等しくなります(\(Q = \Delta U + W\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、力のつりあいから各状態の圧力を求め、状態方程式またはボイルの法則を用いて長さを求めます。
  • (3)では、状態Cの物理量を特定し、定圧変化における熱量を計算します。
  • (4)では、状態Dの圧力を特定し、等温変化の関係から長さを求めます。
  • (5)では、求めた各状態の圧力 \(p\) と長さ \(l\)(体積に比例)の関係をグラフにプロットします。

問(1)

思考の道筋とポイント
状態Aにおける気体の圧力 \(p_{\text{A}}\) を求め、その後、気体の長さ \(l_0\) を求めます。
まず、水銀柱に着目して力のつりあいを考えます。

この設問における重要なポイント

  • 水平方向の力のつりあい: ガラス管は水平なので、水銀柱にはたらく重力 \(Mg\) は鉛直下向きであり、管の壁面からの垂直抗力とつりあっています。したがって、気体の圧力方向(水平方向)のつりあいには重力は寄与しません。

具体的な解説と立式
1. 圧力 \(p_{\text{A}}\) の決定
図a(模範解答の図)を参照します。
水銀柱にはたらく水平方向の力は以下の2つです。

  • 左向きの力: 大気が水銀柱を押す力 \(p_0 S\)
  • 右向きの力: 封入された気体が水銀柱を押す力 \(p_{\text{A}} S\)

水銀柱は静止しているので、力のつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの力}) &= (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
p_{\text{A}} S &= p_0 S
\end{aligned}
$$
これより、\(p_{\text{A}} = p_0\) とわかります。

2. 長さ \(l_0\) の導出
状態Aの気体について、以下の物理量がわかっています。

  • 圧力: \(p_{\text{A}} = p_0\)
  • 体積: \(V_{\text{A}} = S l_0\)
  • 温度: \(T_0\)
  • 物質量: \(n\)

理想気体の状態方程式 \(pV = nRT\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
p_0 (S l_0) &= n R T_0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい
  • 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
計算過程

状態方程式を \(l_0\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
p_0 S l_0 &= n R T_0 \\[2.0ex]
l_0 &= \frac{n R T_0}{p_0 S}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、ガラス管が横倒しになっているので、水銀の重さは気体を押す力にはなりません。そのため、中の気体の圧力は外の大気圧と同じになります。
次に、圧力、温度、モル数がわかったので、気体の「状態方程式」という基本ルールを使って、気体の体積(長さ)を計算しました。

結論と吟味

\(l_0 = \frac{n R T_0}{p_0 S}\)
次元を確認すると、\(\frac{[\text{J}]}{[\text{N}/\text{m}^2][\text{m}^2]} = \frac{[\text{N}\cdot\text{m}]}{[\text{N}]} = [\text{m}]\) となり、長さの次元を持っています。物理的に妥当です。

解答 (1) \(\displaystyle l_0 = \frac{nRT_0}{p_0S}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
状態Bにおける気体の圧力 \(p_1\) と長さ \(l_1\) を求めます。
ガラス管を傾けたことで、水銀柱の重力が気体を圧縮する方向に作用します。

この設問における重要なポイント

  • 斜面方向の力のつりあい: 水銀柱にはたらく重力 \(Mg\) を、管に平行な成分と垂直な成分に分解します。管に平行な成分 \(Mg \sin\theta\) が圧力のつりあいに寄与します。
  • 等温変化: 操作A→Bでは「ガラス管の温度を \(T_0\) に保ちながら」とあるため、気体の温度は変わりません。

具体的な解説と立式
1. 圧力 \(p_1\) の決定
図b(模範解答の図)を参照します。
水銀柱にはたらく管に沿った方向(斜面方向)の力を考えます。管の開口部側を「上向き」、底部側を「下向き」とします。

  • 上向きの力: 内部気体が水銀柱を押す力 \(p_1 S\)
  • 下向きの力: 大気が水銀柱を押す力 \(p_0 S\)
  • 下向きの力: 水銀柱の重力の斜面方向成分 \(Mg \sin\theta\)

水銀柱は静止しているので、力のつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力の和}) \\[2.0ex]
p_1 S &= p_0 S + Mg \sin\theta \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

2. 長さ \(l_1\) の導出
状態Aから状態Bへの変化は等温変化(温度 \(T_0\) 一定)です。
ボイルの法則 \(p_{\text{A}} V_{\text{A}} = p_{\text{B}} V_{\text{B}}\) を適用します。

  • 状態A: 圧力 \(p_0\)、体積 \(S l_0\)
  • 状態B: 圧力 \(p_1\)、体積 \(S l_1\)

$$
\begin{aligned}
p_0 (S l_0) &= p_1 (S l_1) \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力のつりあい
  • ボイルの法則: \(p_1 V_1 = p_2 V_2\) (温度一定)
計算過程

まず、式①より \(p_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
p_1 S &= p_0 S + Mg \sin\theta \\[2.0ex]
p_1 &= p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}
\end{aligned}
$$
次に、式②より \(l_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
p_1 S l_1 &= p_0 S l_0 \\[2.0ex]
l_1 &= \frac{p_0}{p_1} l_0
\end{aligned}
$$
ここで、求めた \(p_1\) と、問(1)の \(l_0 = \frac{n R T_0}{p_0 S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l_1 &= \frac{p_0}{p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}} \cdot \frac{n R T_0}{p_0 S} \\[2.0ex]
&= \frac{p_0}{\frac{p_0 S + Mg \sin\theta}{S}} \cdot \frac{n R T_0}{p_0 S} \\[2.0ex]
&= \frac{p_0 S}{p_0 S + Mg \sin\theta} \cdot \frac{n R T_0}{p_0 S} \\[2.0ex]
&= \frac{n R T_0}{p_0 S + Mg \sin\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

管を傾けると、水銀自身の重さが「ずり落ちる」方向にかかるため、中の気体をギュッと押し縮めることになります。そのため、中の圧力は「大気圧+水銀の重さ分」に増えます。
温度は変わらないので、圧力が強くなった分だけ、気体の体積(長さ)は縮みます(ボイルの法則)。

結論と吟味

\(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}\)
\(l_1 = \frac{n R T_0}{p_0 S + Mg \sin\theta}\)
\(\theta=0\) のとき、\(p_1 = p_0\)、\(l_1 = \frac{nRT_0}{p_0 S} = l_0\) となり、状態Aと一致します。
\(\theta=90^\circ\)(鉛直)のとき、圧力は最大、長さは最小となります。物理的に妥当です。

解答 (2) \(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}, \quad l_1 = \frac{nRT_0}{p_0S + Mg\sin\theta}\)
別解: 状態方程式の連立による解法

思考の道筋とポイント
ボイルの法則を使わず、状態Bで直接、状態方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 状態Bの物理量: 圧力 \(p_1\)、体積 \(S l_1\)、温度 \(T_0\)、物質量 \(n\) が確定しています。

具体的な解説と立式
状態Bにおける物理量は以下の通りです。

  • 圧力: \(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}\)
  • 体積: \(V_1 = S l_1\)
  • 温度: \(T_0\)
  • 物質量: \(n\)

状態方程式 \(p_1 V_1 = n R T_0\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
\left( p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S} \right) (S l_1) &= n R T_0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
計算過程

左辺を展開して \(l_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{p_0 S + Mg \sin\theta}{S} \right) S l_1 &= n R T_0 \\[2.0ex]
(p_0 S + Mg \sin\theta) l_1 &= n R T_0 \\[2.0ex]
l_1 &= \frac{n R T_0}{p_0 S + Mg \sin\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

状態Bの圧力は力のつりあいから決まります。温度は \(T_0\) のままです。
この状態Bに対して、直接「状態方程式」を適用すれば、変化の過程(ボイルの法則)を考えなくても、一発で長さ \(l_1\) が求まります。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (2) \(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}, \quad l_1 = \frac{nRT_0}{p_0S + Mg\sin\theta}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
状態Cの温度 \(T_1\) と、過程B→Cで気体に加えられた熱量 \(Q\) を求めます。
まず、状態Cの圧力と体積を特定します。

この設問における重要なポイント

  • 定圧変化: 操作B→Cでは「ガラス管の角度を \(\theta\) に保ちながら」とあります。角度が変わらなければ、水銀柱による圧縮力は変わらないため、気体の圧力は状態Bと同じ \(p_1\) に保たれます。
  • 状態Cの体積: 問題文に「長さが状態Aと等しくなる」とあるため、長さは \(l_0\) です。

具体的な解説と立式
1. 温度 \(T_1\) の導出
状態Aと状態Cを比較します。

  • 状態A: 圧力 \(p_0\)、体積 \(S l_0\)、温度 \(T_0\)
  • 状態C: 圧力 \(p_1\)、体積 \(S l_0\)、温度 \(T_1\)

体積が等しい(\(V_{\text{A}} = V_{\text{C}} = S l_0\))ので、シャルルの法則(あるいはボイル・シャルルの法則)より、圧力と温度は比例します。
$$
\begin{aligned}
\frac{p_0}{T_0} &= \frac{p_1}{T_1} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

2. 熱量 \(Q\) の導出
過程B→Cは、圧力が \(p_1\) で一定の「定圧変化」です。
単原子分子理想気体の定圧モル比熱は \(C_p = \frac{5}{2}R\) です。
熱量 \(Q\) は以下の式で求められます。
$$
\begin{aligned}
Q &= n C_p \Delta T \\[2.0ex]
&= n \left( \frac{5}{2}R \right) (T_1 – T_0) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • シャルルの法則: \(\displaystyle \frac{p_1}{T_1} = \frac{p_2}{T_2}\) (体積一定の場合)
  • 定圧変化の熱量: \(Q = n C_p \Delta T\)
  • 単原子分子の定圧モル比熱: \(C_p = \frac{5}{2}R\)
計算過程

式③より \(T_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= \frac{p_1}{p_0} T_0
\end{aligned}
$$
これに問(2)の \(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= \frac{p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}}{p_0} T_0 \\[2.0ex]
&= \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0
\end{aligned}
$$
次に、式④を用いて \(Q\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{2} n R (T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
ここで、\(T_1 – T_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
T_1 – T_0 &= \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0 – T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} T_0
\end{aligned}
$$
これを \(Q\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{2} n R \cdot \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5 n R T_0 Mg \sin\theta}{2 p_0 S}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

状態Cは、傾いたまま(圧力は高いまま)で、長さを元の長さに戻した状態です。
圧力が高いのに体積を大きくするには、温度をかなり上げる必要があります。
この変化(B→C)は、圧力が一定のまま膨張する「定圧変化」です。定圧変化で温度を上げるために必要な熱量は、公式を使って計算できます。

結論と吟味

\(T_1 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0\)
\(Q = \frac{5 n R T_0 Mg \sin\theta}{2 p_0 S}\)
\(\theta=0\) のとき、\(T_1 = T_0\)、\(Q=0\) となり、変化しないことを示しており妥当です。

解答 (3) \(T_1 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0, \quad Q = \frac{5 n R T_0 Mg \sin\theta}{2 p_0 S}\)
別解: 微積分と熱力学第一法則を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
公式 \(Q = n C_p \Delta T\) を暗記していなくても、熱力学の第一原理である「第一法則」と「状態方程式」から導出できます。
熱量 \(Q\) は、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と、気体が外部へした仕事 \(W\) の和です。

この設問における重要なポイント

  • 熱力学第一法則: \(dQ = dU + dW\)
  • 内部エネルギー: 単原子分子理想気体では \(U = \frac{3}{2}nRT\) なので、\(dU = \frac{3}{2}nR dT\)。
  • 仕事: 気体が膨張するときにする仕事は \(dW = p dV\)。

具体的な解説と立式
過程B→Cは定圧変化(圧力 \(p = p_1\) 一定)です。
微小変化について第一法則を立てます。
$$
\begin{aligned}
dQ &= dU + p dV \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
理想気体の状態方程式 \(pV = nRT\) の微分をとります(\(p\) は定数)。
$$
\begin{aligned}
p dV &= nR dT \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
また、内部エネルギーの変化は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
dU &= \frac{3}{2} nR dT \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 熱力学第一法則: \(dQ = dU + dW\)
  • 内部エネルギーの微分: \(dU = \frac{3}{2}nR dT\)
  • 仕事の定義: \(dW = p dV\)
  • 状態方程式の微分形: \(p dV + V dp = nR dT\)
計算過程

式⑥、⑦を式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
dQ &= \frac{3}{2} nR dT + nR dT \\[2.0ex]
&= \left( \frac{3}{2} + 1 \right) nR dT \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2} nR dT
\end{aligned}
$$
これを温度 \(T_0\) から \(T_1\) まで積分します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \int_{T_0}^{T_1} \frac{5}{2} nR \, dT \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2} nR (T_1 – T_0)
\end{aligned}
$$
ここから先はメインの解法と同じ計算になります。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{5}{2} nR \cdot \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5 n R T_0 Mg \sin\theta}{2 p_0 S}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「熱を加えると、温度が上がる(内部エネルギーが増える)のと、膨らんで外を押す(仕事をする)のに使われる」というエネルギー保存の法則から計算しました。
定圧変化では、膨らむ分のエネルギーも必要になるため、定積変化よりも多くの熱が必要になります(\(3/2\)倍ではなく\(5/2\)倍)。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (3) \(T_1 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0, \quad Q = \frac{5 n R T_0 Mg \sin\theta}{2 p_0 S}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
状態Dにおける気体の長さ \(l_2\) を求めます。
操作C→Dは「温度 \(T_1\) に保ちながら水平にする」変化です。

この設問における重要なポイント

  • 状態Dの圧力: ガラス管を水平にするので、問(1)と同様に、気体の圧力は \(p_0\) に戻ります。
  • 等温変化: 温度 \(T_1\) 一定の変化なので、ボイルの法則が成立します。

具体的な解説と立式
1. 圧力 \(p_{\text{D}}\) の決定
状態Dは水平状態なので、力のつりあいより圧力は \(p_0\) です。

2. 長さ \(l_2\) の導出
状態Cから状態Dへの変化は等温変化(温度 \(T_1\) 一定)です。
ボイルの法則 \(p_{\text{C}} V_{\text{C}} = p_{\text{D}} V_{\text{D}}\) を適用します。

  • 状態C: 圧力 \(p_1\)、体積 \(S l_0\)
  • 状態D: 圧力 \(p_0\)、体積 \(S l_2\)

$$
\begin{aligned}
p_1 (S l_0) &= p_0 (S l_2) \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ボイルの法則: \(p_1 V_1 = p_2 V_2\)
計算過程

式⑧を \(l_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{p_1}{p_0} l_0
\end{aligned}
$$
これに \(p_1 = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}\) と \(l_0 = \frac{n R T_0}{p_0 S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}}{p_0} \cdot \frac{n R T_0}{p_0 S} \\[2.0ex]
&= \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) \frac{n R T_0}{p_0 S}
\end{aligned}
$$
また、問(3)の結果 \(T_1 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0\) を用いると、以下のように簡潔に表せます。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{n R}{p_0 S} \cdot \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0 \\[2.0ex]
&= \frac{n R T_1}{p_0 S}
\end{aligned}
$$
(※問題文の指定文字のみで表すなら上の式、\(T_1\) を用いてよいなら下の式です。ここでは指定文字のみの形を展開して整理します。)
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{n R T_0}{p_0 S} + \frac{n R T_0 Mg \sin\theta}{(p_0 S)^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

熱い状態(\(T_1\))のまま、管を水平に戻しました。
水銀による圧縮がなくなるので、気体は圧力 \(p_0\) まで膨張します。
温度が高い分、最初の状態A(長さ \(l_0\))よりもさらに長く伸びて \(l_2\) になります。

結論と吟味

\(l_2 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) \frac{n R T_0}{p_0 S}\)
または \(l_2 = \frac{n R T_1}{p_0 S}\)
\(T_1 > T_0\) なので \(l_2 > l_0\) となり、熱膨張していることがわかります。妥当です。

解答 (4) \(\displaystyle l_2 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) \frac{n R T_0}{p_0 S}\)
(または \(\displaystyle l_2 = \frac{T_1}{T_0}l_0\) など)
別解: 状態方程式を用いた解法

思考の道筋とポイント
ボイルの法則を使わず、状態Dで直接、状態方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 状態Dの物理量: 圧力 \(p_0\)、体積 \(S l_2\)、温度 \(T_1\)、物質量 \(n\) が確定しています。

具体的な解説と立式
状態Dにおける物理量は以下の通りです。

  • 圧力: \(p_0\)
  • 体積: \(V_{\text{D}} = S l_2\)
  • 温度: \(T_1\)
  • 物質量: \(n\)

状態方程式 \(p_0 V_{\text{D}} = n R T_1\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
p_0 (S l_2) &= n R T_1
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
計算過程

\(l_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{n R T_1}{p_0 S}
\end{aligned}
$$
これに \(T_1 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l_2 &= \frac{n R}{p_0 S} \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) T_0 \\[2.0ex]
&= \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) \frac{n R T_0}{p_0 S}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

状態Dの圧力は \(p_0\)、温度は \(T_1\) です。
この状態Dに対して、直接「状態方程式」を適用すれば、変化の過程(ボイルの法則)を考えなくても、一発で長さ \(l_2\) が求まります。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (4) \(\displaystyle l_2 = \left( 1 + \frac{Mg \sin\theta}{p_0 S} \right) \frac{n R T_0}{p_0 S}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
これまでの変化を \(p-l\) グラフ(縦軸が圧力、横軸が長さ)に描きます。
長さ \(l\) は断面積 \(S\) が一定なので体積 \(V\) に比例します。

この設問における重要なポイント

  • A→B: 等温圧縮(\(T_0\))。反比例の曲線に沿って、\(l\) が減少し \(p\) が増加。
  • B→C: 定圧膨張。水平な直線に沿って、\(l\) が増加(\(l_1 \to l_0\))。
  • C→D: 等温膨張(\(T_1\))。反比例の曲線(\(T_0\)より外側)に沿って、\(l\) が増加し \(p\) が減少。
  • D→A: 定圧圧縮。水平な直線に沿って、\(l\) が減少(\(l_2 \to l_0\))。

具体的な解説と立式
各状態の座標 \((l, p)\) を整理します。

  • A: \((l_0, p_0)\)
  • B: \((l_1, p_1)\)  ※\(l_1 < l_0, \ p_1 > p_0\)
  • C: \((l_0, p_1)\)
  • D: \((l_2, p_0)\)  ※\(l_2 > l_0\)

グラフの特徴:

  1. 等温線: \(pl = \text{一定}\) の双曲線です。\(T_1 > T_0\) なので、\(T_1\) の等温線は \(T_0\) の等温線よりも右上(原点から遠い側)に位置します。
  2. サイクル: A \(\to\) B \(\to\) C \(\to\) D \(\to\) A の順に矢印を描きます。

使用した物理公式

  • 等温変化のグラフ: \(p \propto 1/l\) (双曲線)
  • 定圧変化のグラフ: \(p = \text{一定}\) (水平線)
計算過程

(グラフ描画のため計算は不要ですが、座標の大小関係を確認します)

  • 圧力: \(p_1 > p_0\)
  • 長さ: \(l_1 < l_0 < l_2\)
この設問の平易な説明

各ステップの変化をグラフ上に矢印で描きます。
温度が一定なら滑らかなカーブ(反比例)、圧力が一定なら真横の直線になります。
温度が高いほど、カーブは外側(右上)にずれます。

結論と吟味

模範解答の図cと同じ形状になります。
サイクルが時計回りであることから、このサイクルは外部へ仕事をする(熱機関として働く)ことが読み取れます。

解答 (5) 模範解答の図c

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力のつりあいと気体の圧力
    • 核心: 自由に動くピストン(水銀柱)で封入された気体の圧力は、そのピストンにはたらく力のつりあい(大気圧、重力、気体の圧力)によって一意に決定されます。
    • 理解のポイント:
      • 管が水平の場合、重力は関与せず \(p = p_0\) となります。
      • 管が傾いている場合、重力の斜面方向成分 \(Mg \sin\theta\) が加わり、圧力が増加します。
  • 状態変化のプロセスの識別
    • 核心: 問題文にある「温度を保ちながら(等温)」「角度を保ちながら(定圧)」といった条件から、適用すべき物理法則(ボイルの法則、シャルルの法則など)を特定します。
    • 理解のポイント:
      • 等温変化 \(\rightarrow\) \(pV = \text{一定}\) (ボイルの法則)
      • 定圧変化 \(\rightarrow\) \(V/T = \text{一定}\) (シャルルの法則)

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 質量のあるピストンを含むシリンダー問題: 水銀柱を固体のピストンに置き換えた問題です。摩擦がある場合は、力のつりあいに摩擦力 \(f\) を加えます(動く向きに注意)。
    • 気球の熱力学: 外部(大気)の圧力が一定で、内部の気体を加熱して膨張させるプロセスは、本問の定圧変化と同じ物理モデルです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. ピストンの静止確認: ピストンが止まっているなら、まずは「力のつりあい」の式を立てて、内部の圧力を確定させます。
    2. 変化の条件の特定: 「ゆっくりと(準静的)」「断熱材で囲まれた(\(Q=0\))」などのキーワードを探し、何が保存される変化なのかを見極めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 重力の分解方向の誤り:
    • 誤解: 斜面上の重力成分をうっかり \(\cos\theta\) としてしまったり、符号を逆にしてしまう。
    • 対策: 必ず図を描き、重力が「坂を下る方向」に働いていることを確認します。また、\(\theta=0\)(水平)や \(\theta=90^\circ\)(鉛直)の極端な場合を想定して検算します。
  • 状態変化の種類の思い込み:
    • 誤解: 「水平に戻す(C→D)」という操作を、安易に「定圧変化」や「断熱変化」だと思い込んでしまう。
    • 対策: 問題文の「温度 \(T_1\) に保ちながら」という記述を絶対視します。また、始点と終点の圧力・体積・温度をリストアップして比較する習慣をつけます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 定圧モル比熱の公式 \(Q = nC_p\Delta T\):
    • 選定理由: 熱力学第一法則から積分計算を行うよりも圧倒的に速く、計算ミスも起こりにくいため、試験場での第一選択となります。
    • 適用根拠: 問題文に「単原子分子理想気体」と明記されているため、\(C_p = \frac{5}{2}R\) が確実に適用できるからです。
  • 熱力学第一法則 \(Q = \Delta U + W\) (別解):
    • 選定理由: 公式を忘れてしまった場合や、二原子分子など \(C_p\) が既知でない場合にも対応できる、最も原理的な解法だからです。
    • 適用根拠: エネルギー保存則はどのような気体、どのような過程でも常に成立する普遍的な法則だからです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(ディメンションチェック):
    • 意識: 足し算や引き算をしている項同士の単位(次元)が揃っているかを常に意識します。
    • 実践: 圧力の式 \(p = p_0 + \frac{Mg \sin\theta}{S}\) において、第2項が \([\text{N}]/[\text{m}^2]\)(圧力の次元)になっているか確認します。もし \(S\) を忘れていたら気づくことができます。
  • 比の計算の活用:
    • 意識: 複雑な定数を何度も書き写すとミスのもとになるため、なるべく比の形で計算を進めます。
    • 実践: \(l_1 = \frac{p_0}{p_1}l_0\) のように、変化前後の比率で式を立て、最後に具体的な値を代入して展開します。
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問題71 ばね付きピストンで封じられた気体 (18 東北学院大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説では、模範解答で採用されている「力のつりあい」や「グラフの面積」を用いた解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: ボイル・シャルルの法則を用いた解法
      • 模範解答が状態方程式を用いるのに対し、別解では変化前後の \(P, V, T\) の比の関係を用います。
    • 設問(5)の別解1: 仕事の分解(大気とばね)による解法
      • 模範解答が \(P-V\) グラフの面積計算を行うのに対し、別解では「大気にした仕事」と「ばねに蓄えられた弾性エネルギー」の和として計算します。
    • 設問(6)の別解: 内部エネルギー変化を \(PV\) で計算する解法
      • 模範解答が温度変化 \(\Delta T\) を用いるのに対し、別解では \(\Delta U = \frac{3}{2}\Delta(PV)\) の関係を用いて計算します。
    • 設問(4)〜(6)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 状態方程式や公式を個別に適用するのではなく、ピストンの位置 \(x\) を変数として圧力 \(P(x)\) を関数化し、仕事の定義式 \(W = \int P \, dV\) の積分計算から熱力学第一法則までを一貫して導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 仕事の分解: 仕事が具体的に何に対して行われたか(大気を押す、ばねを縮める)という物理的内訳を理解するのに役立ちます。
    • 微積分の解法: 公式暗記に頼らず、物理の基本原理(仕事の定義、エネルギー保存則)から全ての量を導き出す力を養います。特に \(P-V\) グラフが直線になる理由や、台形の面積公式が使える根拠が明確になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ばね付きピストンによって封入された気体の状態変化」です。
気体が膨張する際、大気圧だけでなく、ばねの弾性力にも逆らって仕事をします。そのため、圧力は一定ではなく、体積とともに変化します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 力のつりあい: ピストンが静止しているとき、気体が押す力は、大気が押す力とばねの弾性力の合力とつりあっています。
  • 理想気体の状態方程式: \(PV = nRT\) は、あらゆる平衡状態で常に成立します。
  • 熱力学第一法則: 気体が吸収した熱量 \(Q\) は、内部エネルギーの変化 \(\Delta U\) と気体が外部へした仕事 \(W_{\text{した}}\) の和に等しくなります(\(Q = \Delta U + W_{\text{した}}\))。
  • \(P-V\) グラフと仕事: \(P-V\) グラフにおいて、グラフ線と横軸(\(V\) 軸)で囲まれた部分の面積は、気体が外部へした仕事を表します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、ピストンにはたらく力のつりあいの式を立てて圧力を求め、状態方程式から温度などを決定します。
  • (3)では、変化後の状態に対して状態方程式(またはボイル・シャルルの法則)を適用します。
  • (4)では、圧力 \(P\) と体積 \(V\) の関係式を導き、グラフの概形(直線)を描きます。
  • (5)では、グラフの面積計算、または仕事の内訳(大気+ばね)から仕事を求めます。
  • (6)では、熱力学第一法則を用いて熱量を計算します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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