問題67 熱気球 (16 大阪工大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(5)の別解1: 「有効浮力(揚力)」に着目した解法
- 模範解答が「浮力」と「総重力(殻+内部空気)」のつりあいを考えるのに対し、別解1では「周囲の空気と内部の空気の密度差」によって生じる正味の上向きの力(有効浮力)が、気球の殻(ゴンドラ含む)を持ち上げると考えます。
- 全設問共通の別解2: 微積分と流体静力学を用いた体系的解法(一括解説)
- 状態方程式の微分形から密度変化を導出し、流体静力学の基礎方程式(圧力勾配)の体積積分から浮力の式を導出します。公式を暗記するのではなく、物理原理から現象を記述するアプローチです。
- 設問(5)の別解1: 「有効浮力(揚力)」に着目した解法
- 上記の別解が有益である理由
- 有効浮力の解法: 「軽くなった分だけ浮く」という直感的な理解と数式が直結し、式の見通しが良くなります。特に気球の問題では計算ミスを減らす強力な武器になります。
- 微積分の解法: 「なぜ温度が上がると密度が下がるのか」「なぜ浮力は \(\rho Vg\) なのか」という根本的な疑問に対し、数学的な裏付けを持って理解を深めることができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「熱気球の浮上原理」です。
気体の状態方程式、密度の定義、そして浮力と重力のつりあいという、熱力学と力学の融合問題を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
- 密度の定義: \(\rho = \frac{m}{V}\)
- アルキメデスの原理(浮力): 流体中の物体は、排除した流体の重さに等しい大きさの浮力を受けます(\(f = \rho_{\text{流体}} V g\))。
- 力のつりあい: 物体が静止、または動き出す瞬間において、物体にはたらく力のベクトル和はゼロになります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- [A]では、状態方程式を変形して、密度 \(\rho\) と温度 \(T\) の関係式を導きます。
- [B]では、具体的な熱気球のモデルに対し、温度変化による内部空気の質量変化(重力変化)を計算します。
- 浮力(外気が及ぼす力)と総重力(殻+内部空気)の大小関係を比較し、浮上条件を導きます。
問[A] 空所補充(ア〜エ), 問(1)
思考の道筋とポイント
まずは理想気体の基本的な性質を確認します。
状態方程式 \(pV = nRT\) と、物質量 \(n\)、質量 \(m\)、モル質量 \(m_0\) の関係を整理し、密度の式を導きます。
この設問における重要なポイント
- 物質量と質量の関係: \(n [\text{mol}]\) の気体の質量 \(m [\text{kg}]\) は、モル質量 \(m_0 [\text{kg}/\text{mol}]\) を用いて \(m = n m_0\) と表されます。
- 密度の定義: 密度 \(\rho\) は単位体積当たりの質量です(\(\rho = \frac{m}{V}\))。
具体的な解説と立式
理想気体の状態方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
pV &= nRT \quad \cdots \text{(ア)}
\end{aligned}
$$
この式を理想気体の「状態方程式」といいます(イ)。
空気 \(1\,\text{mol}\) 当たりの質量が \(m_0 [\text{kg}/\text{mol}]\) なので、\(n [\text{mol}]\) の空気の質量 \(m\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m &= n m_0 \quad \cdots \text{(ウ)}
\end{aligned}
$$
空気の密度 \(\rho\) は \(\rho = \frac{m}{V}\) です。これに (ウ) の式と、状態方程式から得られる \(n = \frac{pV}{RT}\) を代入して整理します。
使用した物理公式
- 理想気体の状態方程式: \(pV = nRT\)
- 密度の定義: \(\rho = \frac{m}{V}\)
まず、状態方程式 \(pV = nRT\) を \(n\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{pV}{RT}
\end{aligned}
$$
これを質量の式 \(m = n m_0\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{pV}{RT} m_0
\end{aligned}
$$
これを密度の定義式 \(\rho = \frac{m}{V}\) に代入します。
$$
\begin{aligned}
\rho &= \frac{m}{V} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{V} \cdot \left( \frac{pV m_0}{RT} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{p m_0}{RT} \quad \cdots \text{(エ)}
\end{aligned}
$$
次に問(1)について考えます。
導出した式 \(\rho = \frac{p m_0}{RT}\) において、\(p\)(圧力)、\(m_0\)(モル質量)、\(R\)(気体定数)が一定である場合を考えます。
このとき、密度 \(\rho\) と温度 \(T\) の関係は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\rho &\propto \frac{1}{T}
\end{aligned}
$$
つまり、\(\rho\) は \(T\) に反比例します。
気体の密度(ぎゅうぎゅう詰め具合)は、圧力(押し縮める力)に比例し、温度(膨らもうとする元気さ)に反比例します。
圧力が一定のまま温度を上げると、気体は膨張して体積が増えるため、スカスカになります。つまり密度は小さくなります。
(ア) \(nRT\)
(イ) 状態方程式
(ウ) \(n m_0\)
(エ) \(\displaystyle \frac{m_0 p}{RT}\)
(1) 式より \(\rho\) と \(T\) は反比例の関係にあるため、\(T\) の増加とともに \(\rho\) は減少する。
問[B] (2)
思考の道筋とポイント
気球内部の空気を加熱したときの密度変化を求めます。
気球の開口部は開放されているため、内部の圧力は常に外気圧と等しく保たれます(定圧変化)。
[A]で導いた密度の式、あるいはシャルルの法則を利用します。
この設問における重要なポイント
- 定圧条件: 開口部があるため、加熱しても圧力 \(p\) は変化しません。
- シャルルの法則(密度版): 圧力が一定のとき、密度と絶対温度は反比例します(\(\rho T = \text{一定}\))。
具体的な解説と立式
初期状態(温度 \(T_0\)、密度 \(\rho_0\))と、加熱後の状態(温度 \(T\)、密度 \(\rho\))について考えます。
圧力 \(p\)、気体定数 \(R\)、モル質量 \(m_0\) は変化しません。
(エ) の式 \(\rho = \frac{p m_0}{RT}\) より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\rho T &= \frac{p m_0}{R} \\[2.0ex]
&= \text{一定}
\end{aligned}
$$
よって、初期状態と加熱後の状態で以下の等式を立てることができます。
$$
\begin{aligned}
\rho T &= \rho_0 T_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 状態方程式から導かれる関係: \(\rho T = \text{一定}\) (定圧時)
上の式を \(\rho\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\rho &= \frac{\rho_0 T_0}{T} \\[2.0ex]
&= \frac{T_0}{T} \rho_0
\end{aligned}
$$
温度が上がると空気は膨張します。体積が増える分だけ、同じ体積あたりの空気の量(密度)は減ります。
温度が \(T_0\) から \(T\) になると、密度は逆比の \(\frac{T_0}{T}\) 倍になります。
答えは \(\frac{T_0}{T} \rho_0\) です。
\(T > T_0\) ならば \(\rho < \rho_0\) となり、加熱すると軽くなる(密度が減る)という直感と一致します。
問[B] 空所補充(オ), (カ)
思考の道筋とポイント
気球にはたらく重力と浮力をそれぞれ定式化します。
重力は「気球本体(殻+ゴンドラ)」と「内部の空気」の合計です。
浮力は「気球が排除した外気」の重さです。
この設問における重要なポイント
- 内部の空気の質量: 密度 \(\rho\) と体積 \(V\) から \(m_{\text{内}} = \rho V\) で求まります。
- アルキメデスの原理: 浮力の大きさは、物体(気球)と同じ体積 \(V\) を持つ「周囲の流体(外気)」の重さに等しくなります。外気の密度 \(\rho_0\) を使う点に注意してください。
具体的な解説と立式
空所(オ): 内部空気の重力
加熱後の内部空気の密度は \(\rho\) です。
体積は \(V\) なので、内部空気の質量 \(m_{\text{内}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m_{\text{内}} &= \rho V
\end{aligned}
$$
これに重力加速度 \(g\) を掛け、(2)の結果 \(\rho = \frac{T_0}{T} \rho_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{内}} &= m_{\text{内}} g \\[2.0ex]
&= (\rho V) g
\end{aligned}
$$
空所(カ): 浮力の大きさ
気球の体積は \(V\) であり、周囲の空気(外気)の密度は \(\rho_0\) です。
アルキメデスの原理より、浮力 \(f\) は「排除した外気の重さ」となります。
$$
\begin{aligned}
f &= (\text{外気の密度}) \times (\text{体積}) \times g \\[2.0ex]
&= \rho_0 V g
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 重力: \(W = mg = \rho V g\)
- 浮力: \(f = \rho_{\text{流体}} V g\)
(オ) の計算:
$$
\begin{aligned}
W_{\text{内}} &= \left( \frac{T_0}{T} \rho_0 \right) V g \\[2.0ex]
&= \frac{T_0}{T} \rho_0 V g
\end{aligned}
$$
問題文の形式「(オ) \(\times g\)」に合わせると、(オ) に入る式は \(\frac{T_0}{T} \rho_0 V\) です。
(カ) の計算:
$$
\begin{aligned}
f &= \rho_0 V g
\end{aligned}
$$
問題文の形式「(カ) \(\times g\)」に合わせると、(カ) に入る式は \(\rho_0 V\) です。
気球の中にある空気の重さは、温められて密度が小さくなった分だけ軽くなります。
一方、浮力は「気球が押しのけた外気の重さ」で決まります。気球の大きさ \(V\) と外気の密度 \(\rho_0\) は変わらないので、浮力はずっと一定です。
(オ) \(\frac{T_0}{T} \rho_0 V\)
(カ) \(\rho_0 V\)
単位を確認すると、どちらも \([\text{kg}]\) の次元になっており、\(g\) を掛けて力になるので正しいです。
問[B] (3)
思考の道筋とポイント
気球にはたらく総重力 \(F\) と温度 \(T\) の関係をグラフにします。
総重力 \(F\) は、一定の「殻の重力」と、温度に反比例する「内部空気の重力」の和です。
この設問における重要なポイント
- 関数の形: \(F(T) = A + \frac{B}{T}\) の形(反比例のグラフを平行移動したもの)になります。
- 漸近線: \(T \to \infty\) のとき、\(\frac{1}{T} \to 0\) となるため、\(F\) はある一定値に近づきます。
具体的な解説と立式
気球にはたらく総重力 \(F\) は、殻の質量 \(M\) による重力と、内部空気による重力 (オ)\(\times g\) の和です。
$$
\begin{aligned}
F &= Mg + W_{\text{内}} \\[2.0ex]
&= Mg + \frac{T_0}{T} \rho_0 V g
\end{aligned}
$$
これを \(T\) の関数として見ると、定数項 \(Mg\) と、\(1/T\) に比例する項の和になっています。
使用した物理公式
- 力の合成: \(F = F_1 + F_2\)
1. \(T\) が小さいとき(\(T \approx 0\))、第2項は非常に大きくなります(\(F \to \infty\))。
2. \(T\) が大きくなると、第2項は減少します。
3. \(T \to \infty\) のとき、第2項は \(0\) に近づき、\(F\) は \(Mg\) に漸近します。
グラフの概形は、第1象限において右下がりの曲線となり、\(T\) 軸の正の方向へ進むにつれて水平な直線 \(F = Mg\) に上側から近づく形になります。
温度を上げると中の空気が軽くなるので、気球全体の重さ \(F\) は減っていきます。
しかし、どんなに温度を上げても、気球の殻やゴンドラの重さ \(Mg\) は消えません。
したがって、グラフは下がっていきますが、ゼロにはならず \(Mg\) のラインに近づいていきます。
縦軸 \(F\)、横軸 \(T\) のグラフにおいて、\(F\) 切片はなく(\(T=0\)で発散)、右下がりの双曲線の一部を描き、\(F=Mg\) の水平線に漸近します。模範解答の図と同様の形状になります。
問[B] (4)
思考の道筋とポイント
気球が浮上するメカニズムを、力 \(F\)(下向きの総重力)と \(f\)(上向きの浮力)の大小関係を用いて説明します。
この設問における重要なポイント
- 浮力 \(f\) の一定性: 外気の密度と気球の体積が変わらないため、浮力は温度によらず一定です。
- 重力 \(F\) の減少: 問(3)で見たように、加熱すると総重力は減少します。
- 浮上条件: 上向きの力 \(f\) が下向きの力 \(F\) を上回ったとき(\(f > F\))、上向きの加速度が生じます。
具体的な解説と立式
浮力 \(f = \rho_0 V g\) は温度 \(T\) によらず一定です。
一方、総重力 \(F = Mg + \frac{T_0}{T} \rho_0 V g\) は、温度 \(T\) の上昇とともに減少します。
低温時は \(F > f\)(重すぎて飛ばない)ですが、加熱して \(F\) が減少していくと、ある温度で \(F = f\) となり、さらに温度が上がると \(F < f\) となります。 このとき、上向きの合力 \(f – F > 0\) が生じ、気球は浮上します。
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = f – F\)
(定性的な説明のため、計算過程は省略)
気球を持ち上げる力(浮力)はずっと変わりません。
しかし、中の空気を温めると、中の空気が逃げていき、気球全体がどんどん軽くなります(重力が減ります)。
軽くなり続けて、ついに「気球の重さ」が「持ち上げる力」より小さくなったとき、気球は空へ浮かび上がります。
浮力一定、重力減少という物理的性質に基づいた妥当な説明です。
問[B] (5)
思考の道筋とポイント
気球が浮上し始める限界の温度 \(T_f\) を求めます。
これは、上向きの力(浮力)と下向きの力(総重力)がつりあう瞬間です。
この設問における重要なポイント
- つりあいの式:
(上向きの力) = (下向きの力) - 浮上開始条件: \(f = F\)
具体的な解説と立式
浮上を始める瞬間、浮力 \(f\) と総重力 \(F\) がつりあいます。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
f &= F
\end{aligned}
$$
これに (カ) と (3) の式を代入します。温度を \(T_f\) とします。
$$
\begin{aligned}
\rho_0 V g &= Mg + \frac{T_0}{T_f} \rho_0 V g
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(\vec{F}_{\text{合力}} = 0\)
両辺を \(g\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\rho_0 V &= M + \frac{T_0}{T_f} \rho_0 V
\end{aligned}
$$
\(T_f\) を含む項を左辺に、それ以外を右辺に移項したいところですが、\(T_f\) が分母にあるので、まずは項を整理します。
$$
\begin{aligned}
\rho_0 V – M &= \frac{T_0}{T_f} \rho_0 V
\end{aligned}
$$
両辺の逆数をとるか、たすき掛けをして \(T_f\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
T_f (\rho_0 V – M) &= T_0 \rho_0 V \\[2.0ex]
T_f &= \frac{\rho_0 V}{\rho_0 V – M} T_0
\end{aligned}
$$
「浮力」と「重さ」がちょうど同じになる温度を計算します。
方程式を立てて、温度 \(T_f\) について解くだけです。
答えは \(T_f = \frac{\rho_0 V}{\rho_0 V – M} T_0\) です。
分母 \(\rho_0 V – M\) は、浮力に相当する質量から殻の質量を引いたもので、これが正(\(M < \rho_0 V\))でないとそもそも浮きません。 また、分母が分子より小さいため係数は1より大きくなり、\(T_f > T_0\) となります。これは加熱が必要であることを示しており妥当です。
思考の道筋とポイント
気球内部の空気を「重り」の一部と考えるのではなく、外気との密度差によって生じる「揚力」の源と考えます。
「軽くなった分の空気の重さ」が、そのまま「殻を持ち上げる力」になると考えれば、計算が非常にシンプルになります。
この設問における重要なポイント
- 有効浮力(揚力): 気球1個が受ける正味の上向きの力は、(外気の密度 – 内部の密度) \(\times V g\) です。
- つりあい: この有効浮力が、殻の重さ \(Mg\) を支えれば浮きます。
具体的な解説と立式
気球にはたらく有効な浮力 \(F_{\text{揚力}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{揚力}} &= (\rho_0 – \rho) V g
\end{aligned}
$$
これが気球の殻の重力 \(Mg\) とつりあうとき、浮上が始まります。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの有効浮力}) &= (\text{下向きの殻の重力}) \\[2.0ex]
(\rho_0 – \rho) V g &= Mg
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 有効浮力のつりあい: \((\rho_0 – \rho)Vg = Mg\)
両辺を \(g\) で割り、\(\rho\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
(\rho_0 – \rho) V &= M \\[2.0ex]
\rho_0 – \rho &= \frac{M}{V} \\[2.0ex]
\rho &= \rho_0 – \frac{M}{V}
\end{aligned}
$$
ここで、(2)の結果 \(\rho = \frac{T_0}{T_f} \rho_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_0}{T_f} \rho_0 &= \rho_0 – \frac{M}{V} \\[2.0ex]
\frac{T_0}{T_f} &= 1 – \frac{M}{\rho_0 V} \\[2.0ex]
&= \frac{\rho_0 V – M}{\rho_0 V}
\end{aligned}
$$
両辺の逆数をとり、\(T_0\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
\frac{T_f}{T_0} &= \frac{\rho_0 V}{\rho_0 V – M} \\[2.0ex]
T_f &= \frac{\rho_0 V}{\rho_0 V – M} T_0
\end{aligned}
$$
「外の空気より中の空気がどれだけ軽いか」が、気球を持ち上げるパワーになります。
そのパワーが、ゴンドラなどの荷物の重さと等しくなったとき、気球は浮きます。
「浮力と総重量」で考えるよりも、「差分」で考える方が、式の項数が減って計算ミスが減ります。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。
この考え方は、ヘリウムガス風船など、他の浮力問題でも非常に有効です。
思考の道筋とポイント
公式を前提とせず、物理の基本原理から出発します。
1. 密度の変化: 状態方程式の微分形から、定圧条件下での密度と温度の関係を導きます。
2. 浮力の起源: 流体静力学の平衡方程式(圧力勾配)を気球の体積で積分し、浮力が生じる理由とその大きさを導出します。
この設問における重要なポイント
- 対数微分: 積・商の形をした関数の変化率を求めるのに有効です。
- ガウスの発散定理: 表面にはたらく圧力の総和(面積分)を、体積積分に変換します。
具体的な解説と立式
1. 密度変化の導出(問1, 2に対応)
理想気体の状態方程式 \(p = \frac{\rho RT}{m_0}\) の両辺の自然対数をとります。
$$
\begin{aligned}
\ln p &= \ln \left( \frac{\rho RT}{m_0} \right) \\[2.0ex]
&= \ln \rho + \ln T + \ln \left( \frac{R}{m_0} \right)
\end{aligned}
$$
この式の全微分をとります(定数は微分すると0)。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp}{p} &= \frac{d\rho}{\rho} + \frac{dT}{T}
\end{aligned}
$$
気球の開口部は開放されているため、加熱しても圧力は一定(\(dp = 0\))です。
$$
\begin{aligned}
0 &= \frac{d\rho}{\rho} + \frac{dT}{T} \\[2.0ex]
\frac{d\rho}{\rho} &= – \frac{dT}{T}
\end{aligned}
$$
この微分方程式は、「温度が \(1\%\) 上がると密度は \(1\%\) 下がる」ことを示しています(問1の減少の理由)。
2. 浮力の導出(問Bに対応)
静止流体中の圧力勾配は、重力とつりあっています(流体静力学の平衡式)。鉛直上向きを \(z\) 軸とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dp}{dz} &= – \rho_0 g
\end{aligned}
$$
気球(体積 \(V\))が周囲の流体から受ける合力(浮力 \(F_{\text{浮力}}\))は、表面 \(S\) にはたらく圧力 \(p\) の総和です。上向きを正として立式します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{浮力}} &= \oint_S (-p \vec{n}) \cdot \vec{e}_z dS
\end{aligned}
$$
ここで \(\vec{n}\) は外向き法線ベクトル、\(\vec{e}_z\) は鉛直上向きの単位ベクトルです。
使用した物理公式
- 対数微分: \(d(\ln x) = \frac{dx}{x}\)
- ガウスの発散定理: \(\oint_S \vec{A} \cdot \vec{n} dS = \int_V \nabla \cdot \vec{A} dV\)
1. 密度変化の計算
微分方程式の両辺を積分します。
$$
\begin{aligned}
\int \frac{d\rho}{\rho} &= – \int \frac{dT}{T} \\[2.0ex]
\ln \rho &= – \ln T + C \quad (C\text{は積分定数}) \\[2.0ex]
\ln (\rho T) &= C
\end{aligned}
$$
よって、\(\rho T = \text{一定}\) が導かれます。
初期状態 \(\rho_0, T_0\) と加熱後 \(\rho, T\) で比較すれば、\(\rho = \frac{T_0}{T} \rho_0\) となります。
2. 浮力の計算
ガウスの発散定理を用いて面積分を体積積分に変換します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{浮力}} &= \int_V \nabla \cdot (-p \vec{e}_z) dV \\[2.0ex]
&= \int_V \left( – \frac{\partial p}{\partial z} \right) dV
\end{aligned}
$$
平衡式 \(\frac{\partial p}{\partial z} = – \rho_0 g\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{浮力}} &= \int_V (- (- \rho_0 g)) dV \\[2.0ex]
&= \int_V \rho_0 g dV \\[2.0ex]
&= \rho_0 g V
\end{aligned}
$$
これにより、浮力が「排除した流体の重さ」に等しいことが数学的に証明されました。
「公式だから」と暗記していたものを、微分と積分を使ってゼロから作り直しました。
状態方程式の対数をとって微分することで、「温度と密度が逆の動きをする」ことが数式として見えます。
また、気球の周りの圧力をすべて足し合わせる計算(積分)をすると、自然と「\(\rho_0 V g\)」という浮力の式が現れます。
物理法則がバラバラではなく、すべて繋がっていることが分かります。
原理的な導出からも、メイン解法で使用した式が正しいことが確認できました。
特に \(\rho T = \text{一定}\) の導出は、ボイル・シャルルの法則を忘れても状態方程式から即座に導けるため、実戦でも役立つテクニックです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- アルキメデスの原理(浮力)
- 核心: 流体中の物体は、その物体が押しのけた流体の重さに等しい大きさの上向きの力(浮力)を受ける。
- 理解のポイント:
- 式の形: \(f = \rho_{\text{流体}} V g\)。ここで \(\rho_{\text{流体}}\) は「周囲の流体(外気)」の密度であり、物体の密度ではないことに注意。
- 温度依存性: 気球の体積 \(V\) と外気の密度 \(\rho_0\) が変わらなければ、浮力 \(f\) は温度によらず一定である。
- 理想気体の状態方程式と密度の関係
- 核心: 気体の密度 \(\rho\) は、圧力 \(p\) と温度 \(T\) によって決まり、特に定圧変化では温度に反比例する。
- 理解のポイント:
- 導出: \(pV = nRT\) と \(m = n m_0\)、\(\rho = m/V\) を組み合わせると \(\rho = \frac{m_0 p}{RT}\) となる。
- シャルルの法則: 圧力が一定なら \(\rho T = \text{一定}\) となり、温度が上がると密度は下がる(軽くなる)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ヘリウム風船の浮上: 熱気球と同様に浮力を扱うが、内部気体の種類(モル質量 \(m_0\))が異なるため、密度差がより大きくなる。
- 水中での浮沈: 潜水艦や浮きなど、流体が水(液体)の場合もアルキメデスの原理は全く同じ形で適用できる。
- 初見の問題での着眼点:
- 「何が」浮力を生むか特定する: 浮力の源は「排除された流体」である。気球なら外気、水中なら水。その密度を使う。
- 「何が」重力を持つか列挙する: 気球の殻、ゴンドラ、そして「内部の気体」も重さを持つことを忘れない。
- 変化する量としない量を見極める: 加熱によって変わるのは「内部の密度(重さ)」だけで、「浮力」や「殻の重さ」は変わらない。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 浮力の密度の取り違え:
- 誤解: 浮力の式 \(f = \rho V g\) の \(\rho\) に、気球内部の密度(加熱後の \(\rho\))を代入してしまう。
- 対策: 「浮力は周りの空気が押してくれる力」とイメージする。周りの空気の密度 \(\rho_0\) を使うのが鉄則。
- 内部空気の重さの無視:
- 誤解: 気球の重さを考える際、殻の質量 \(M\) だけを考えて、中の空気の質量 \(m_{\text{内}}\) を忘れてしまう。
- 対策: 「空気にも重さがある」ことを常に意識する。特に熱気球は「中の空気を軽くして浮く」仕組みなので、内部空気の質量変化が主役である。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 状態方程式 \(pV = nRT\) からの密度導出:
- 選定理由: 密度と温度の関係を暗記(シャルルの法則)に頼らず、基本原理から確実に導くため。
- 適用根拠: 問題文で「空気を理想気体とみなして」と明記されているため。
- 力のつりあい \(f = F\):
- 選定理由: 「浮上し始める」瞬間は、上向きの力と下向きの力が拮抗する臨界点だから。
- 適用根拠: 動き出す直前までは静止状態(加速度ゼロ)とみなせるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認:
- 意識: 答えの式が物理的に正しい次元(単位)を持っているか確認する。
- 実践: 例えば \(T_f = \frac{\rho_0 V}{\rho_0 V – M} T_0\) なら、分母分子ともに質量の次元 \([\text{kg}]\) なのでキャンセルされ、全体として温度 \([\text{K}]\) の次元になり正しい。もし \(M\) が分母になかったら次元が合わない。
- 極限のチェック:
- 意識: 変数を極端な値にしたとき、物理的にあり得ない挙動をしないか確認する。
- 実践: \(M \to 0\) (殻がめちゃくちゃ軽い)とすると、\(T_f \to T_0\) となる。つまり、殻がなければ温めなくても(周りと同じ温度で)浮くはずだが、実際は内部と外部が同じ密度なら浮かない(浮力と重力が釣り合うだけで浮上力は生まれない)。これは「殻がない=空気の塊」だから浮力と重力が釣り合って静止する(浮きも沈みもしない)という意味で正しい。逆に \(M \to \rho_0 V\) (殻が重すぎて浮力ギリギリ)だと \(T_f \to \infty\) となり、無限に熱くしないと浮かない。これも直感と合う。
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問題68 気体の混合 (21 岩手大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解1: 状態方程式の連立による物質量分配の導出
- 模範解答では「体積比による物質量の分配」を直感的に用いていますが、別解1では各容器について状態方程式を立て、それらを連立させることで数学的に厳密に物質量を導出します(模範解答の※Bに相当)。
- 全設問共通の別解2: 微積分と熱力学第一法則を用いた体系的解法(一括解説)
- 熱力学第一法則の微分形 \(dU = dQ + dW\) から出発し、断熱自由膨張(真空への膨張)において内部エネルギーが保存されること、および理想気体の内部エネルギーが温度のみの関数であることを用いて、温度変化や圧力変化を導出します。
- 設問(3)の別解1: 状態方程式の連立による物質量分配の導出
- 上記の別解が有益である理由
- 状態方程式の連立: 「均一に混ざる」という直感が通用しない複雑な状況(温度差がある場合など)でも通用する汎用的な手法です。
- 微積分の解法: 「真空への膨張でなぜ温度が変わらないのか」という熱力学の核心部分を、第一法則から論理的に理解することができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「断熱容器内での気体の混合と真空への膨張」です。
異なる状態の気体を混ぜたときの最終的な温度や圧力、そして真空へ拡散させたときの変化を追跡します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単原子分子理想気体の内部エネルギー: \(U = \frac{3}{2}nRT\)
- 熱力学第一法則(エネルギー保存則): 断熱容器内での混合では、外部との熱のやり取りや仕事がないため、系全体の内部エネルギーは保存されます。
- ボイル・シャルルの法則(状態方程式): \(pV = nRT\)
- 真空への断熱自由膨張: 気体が真空に向かって膨張する場合、外部に対して仕事をしないため(\(W=0\))、断熱条件(\(Q=0\))下では内部エネルギーが変化せず(\(\Delta U = 0\))、温度も変化しません。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、公式を用いて各容器の内部エネルギーを表します。
- (2)では、コックAを開放した後の混合気体について、エネルギー保存則から温度を、状態方程式から圧力を求めます。
- (3)(4)では、さらにコックBを開放して真空へ拡散させた後の状態を、同様にエネルギー保存則と状態方程式から求めます。
- (5)では、熱力学第二法則(不可逆変化)に関する知識を確認します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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