「物理重要問題集2026」徹底解説(04〜06問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題04 水平投射 (22 北海道大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(エ)の別解1: 三平方の定理を用いた解法
      • 模範解答の別解にも記載されている通り、水平距離 \(l_x\) と鉛直距離 \(l_y\) から直接斜距離 \(l\) を求めます。
    • 設問(エ)の別解2: 斜面方向と垂直方向に分解する解法(回転座標系)
      • 座標軸を「水平・鉛直」ではなく、「斜面方向・斜面に垂直な方向」に取り直し、斜面に対する小球の高度が \(0\) になる条件から到達時間を求めます。
    • 設問(ア)〜(エ)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式からの導出)
      • 公式を前提とせず、ニュートンの運動方程式から出発し、積分によって位置と軌道を導出する原理的なアプローチです。設問(ア)から(エ)までを一括して解説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 三平方の定理: 三角関数の相互関係 \(\tan\) と \(\cos\) の変換に慣れていない場合でも、幾何学的に確実に解ける手法です。
    • 回転座標系: 「斜面への投射」問題における強力な定石であり、重力の成分分解を行うことで、放物運動をより単純な等加速度運動として捉え直すことができます。
    • 微積分: 物理現象の根本原理(運動方程式)から全ての挙動を予測できることを確認し、公式の成り立ちを深く理解するために不可欠です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「水平投射と斜面上の落下」および「重力加速度が異なる環境での物理量の変化」です。
小球が水平に飛び出し、放物線を描いて斜面に衝突するまでの運動を解析します。後半では、月面という異なる重力環境下でのスケーリング(比例関係)を考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 水平投射: 水平方向には等速直線運動、鉛直方向には自由落下(等加速度運動)を行います。
  2. 幾何学的拘束条件: 小球が斜面上にあるとき、その座標 \((x, y)\) は斜面の式(または図形的な比)を満たさなければなりません。
  3. 力学的エネルギー保存則: 摩擦のない面を滑り降りる運動では、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア)(イ)では、水平投射の基本公式を用いて、時刻 \(t\) における座標を表します。
  2. (ウ)では、落下点Qが斜面上にあるという条件(座標の比が \(\tan\theta\))を利用して、落下時間 \(t\) を決定します。
  3. (エ)では、水平距離 \(l_x\) と角度 \(\theta\) の関係から、斜面に沿った飛距離 \(l\) を求めます。
  4. (オ)(カ)では、重力加速度 \(g\) が変化したとき、初速度 \(v_0\) や飛距離 \(l\) がどのように変化するかを、数式の依存性から読み解きます。

問(ア)・(イ)

思考の道筋とポイント
点Cを原点 \((0, 0)\) とし、水平右向きを \(x\)軸正方向、鉛直下向きを \(y\)軸正方向とします。
小球は点Cから初速度 \(v_0\) で水平に飛び出します。
水平方向には力が働かないため等速直線運動をし、鉛直方向には重力のみが働くため自由落下運動をします。

この設問における重要なポイント

  • 運動の独立性: 水平方向と鉛直方向の運動は独立しており、別々に考えることができます。
  • 初期条件: \(t=0\) において、\(x=0, y=0\)、\(v_x=v_0, v_y=0\) です。

具体的な解説と立式
時刻 \(t\) における小球の位置座標を \((x, y)\) とします。
水平方向(\(x\)軸方向)は、速さ \(v_0\) の等速直線運動です。点Qの水平距離 \(l_x\) は時刻 \(t\) における \(x\)座標に等しいため、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
l_x &= v_0 t \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
鉛直方向(\(y\)軸方向)は、初速度 \(0\)、加速度 \(g\) の等加速度運動(自由落下)です。点Qの鉛直距離 \(l_y\) は時刻 \(t\) における \(y\)座標に等しいため、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
l_y &= \frac{1}{2} g t^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 自由落下: \(y = \frac{1}{2}gt^2\)
計算過程

式①、②はすでに求めるべき物理量 \(l_x, l_y\) を表す形になっています。
これ以上の計算は不要です。

この設問の平易な説明

ボールが飛び出した後、横方向にはずっと同じスピードで進み続けます。だから距離は「速さ×時間」です。
縦方向には、重力に引かれてどんどんスピードアップしながら落ちていきます。これは物をパッと離して落とす「自由落下」と同じ動きです。

結論と吟味

\(l_x\) は時間に比例し、\(l_y\) は時間の2乗に比例します。これは放物運動の基本的な性質であり、物理的に妥当です。

解答 (ア) \(v_0 t\) (イ) \(\displaystyle \frac{1}{2} g t^2\)

問(ウ)

思考の道筋とポイント
小球が斜面CD上の点Qに落下したということは、点Qの位置座標 \((l_x, l_y)\) が斜面の幾何学的な条件を満たしていることを意味します。
図aを見ると、直角三角形CDQにおいて、底辺が \(l_x\)、高さが \(l_y\)、角度が \(\theta\) となっています。

この設問における重要なポイント

  • 幾何学的拘束: 点Qが斜面上にあるため、\(l_x\) と \(l_y\) の比は斜面の傾き \(\tan\theta\) に等しくなります。

具体的な解説と立式
図aの直角三角形に着目すると、底辺 \(l_x\) と高さ \(l_y\) の間に以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{l_y}{l_x} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
この幾何学的な条件式に、(ア)(イ)で求めた物理的な運動の式を代入して、時間 \(t\) を決定します。

使用した物理公式

  • 三角比の定義: \(\tan\theta = \frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)
計算過程

式① \(l_x = v_0 t\) と式② \(l_y = \frac{1}{2} g t^2\) を式③に代入します。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{\frac{1}{2} g t^2}{v_0 t}
\end{aligned}
$$
右辺を約分して整理します。\(t > 0\) として扱います。
$$
\begin{aligned}
\tan\theta &= \frac{g t}{2 v_0}
\end{aligned}
$$
この式を \(t\) について解きます。両辺に \(\displaystyle \frac{2 v_0}{g}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{2 v_0 \tan\theta}{g}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールが飛んでいる間、横に進んだ距離と縦に落ちた距離の比率が、ちょうど斜面の傾きと一致した瞬間に、ボールは斜面にぶつかります。
その条件を式にすると、時間の式ができあがり、いつぶつかるかが計算できます。

結論と吟味

\(t = \frac{2 v_0 \tan\theta}{g}\) という結果が得られました。
初速度 \(v_0\) が大きいほど遠くまで飛ぶので時間は長くなり、重力 \(g\) が大きいほど速く落ちるので時間は短くなります。また、角度 \(\theta\) が急なほど(\(\tan\theta\) が大きいほど)床が遠くなるので時間は長くなります。これらは直感と一致します。

解答 (ウ) \(\displaystyle \frac{2 v_0 \tan\theta}{g}\)

問(エ)

思考の道筋とポイント
飛距離 \(l\) は、図aにおける線分CQの長さです。
直角三角形CDQにおいて、底辺 \(l_x\) と斜辺 \(l\) の関係(コサインの定義)を使えば、\(l_x\) から \(l\) を求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 三角比の利用: \(l_x = l \cos\theta\) の関係を利用します。

具体的な解説と立式
図aより、斜辺 \(l\) と底辺 \(l_x\) の間には以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
l_x &= l \cos\theta
\end{aligned}
$$
これを \(l\) について解く形に立式します。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{l_x}{\cos\theta} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三角比の定義: \(\cos\theta = \frac{\text{底辺}}{\text{斜辺}}\)
計算過程

まず、\(l_x\) に(ウ)で求めた \(t\) の値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
l_x &= v_0 t \\[2.0ex]
&= v_0 \times \left( \frac{2 v_0 \tan\theta}{g} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g}
\end{aligned}
$$
この結果を式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{1}{\cos\theta} \cdot \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

斜面に沿った距離(斜辺)を知りたい場合、横方向の距離(底辺)がわかっていれば、三角比のコサインを使って割り算することで求められます。
先ほど求めた時間を使って横方向の距離を計算し、それを角度で補正して斜面の長さを出しました。

結論と吟味

\(l = \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}\) となりました。
速度の2乗に比例して飛距離が伸びる点は、通常の水平投射の水平到達距離(\(2\theta\) の式)と似た特性を持っています。

解答 (エ) \(\displaystyle \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}\)
別解: 三平方の定理を用いた解法

思考の道筋とポイント
直角三角形CDQにおいて、三平方の定理 \(l = \sqrt{l_x^2 + l_y^2}\) を用いて斜距離 \(l\) を求めます。
また、三角関数の相互関係 \(1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}\) を利用して式を整理します。

この設問における重要なポイント

  • 三平方の定理: 直角三角形の斜辺の長さは、他の2辺の二乗和の平方根です。
  • 三角関数の公式: \(\tan\) と \(\cos\) を結びつける公式を利用します。

具体的な解説と立式
三平方の定理より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
l &= \sqrt{l_x^2 + l_y^2} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
ここで、(ウ)の条件 \(\tan\theta = \frac{l_y}{l_x}\) より、\(l_y\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
l_y &= l_x \tan\theta \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理: \(c = \sqrt{a^2 + b^2}\)
  • 三角関数の相互関係: \(1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}\)
計算過程

式⑥を式⑤に代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= \sqrt{l_x^2 + (l_x \tan\theta)^2}
\end{aligned}
$$
根号の中を \(l_x^2\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
l &= \sqrt{l_x^2 (1 + \tan^2\theta)} \\[2.0ex]
&= l_x \sqrt{1 + \tan^2\theta}
\end{aligned}
$$
公式 \(1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}\) を利用して変形します。
$$
\begin{aligned}
l &= l_x \sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}} \\[2.0ex]
&= \frac{l_x}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$
これ以降はメインの解法と同様に、\(l_x = \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g}\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「横の長さ」と「縦の長さ」から「斜めの長さ」を求める三平方の定理を使いました。
計算の途中で「三角関数の公式」を使うことで、結局はコサインで割るのと同じ式に変形できることがわかります。

結論と吟味

幾何学的なアプローチからも同じ結果が得られました。

解答 (エ) \(\displaystyle \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}\)
別解: 斜面方向と垂直方向に分解する解法

思考の道筋とポイント
座標軸を回転させ、斜面下向きを \(X\)軸、斜面に垂直上向きを \(Y\)軸と定義します。
重力加速度 \(g\) をこの座標系に分解すると、\(X\)成分は \(g \sin\theta\)、\(Y\)成分は \(-g \cos\theta\) となります。
小球が斜面に落下するということは、この座標系において「\(Y\)座標が再び \(0\) になる」ということです。

この設問における重要なポイント

  • 座標回転: 重力を成分分解することで、斜面に対する垂直方向の運動を独立して扱えます。
  • 落下条件: 斜面に衝突する瞬間、斜面垂直方向の変位は \(0\) になります。

具体的な解説と立式
初速度 \(v_0\)(水平右向き)を分解します。

  • \(X\)成分: \(v_{0X} = v_0 \cos\theta\)
  • \(Y\)成分: \(v_{0Y} = v_0 \sin\theta\)

重力加速度 \(g\)(鉛直下向き)を分解します。

  • \(X\)成分: \(g_X = g \sin\theta\)
  • \(Y\)成分: \(g_Y = -g \cos\theta\)(\(Y\)軸は上向き正としたため負)

\(Y\)方向の運動は、初速度 \(v_{0Y}\)、加速度 \(g_Y\) の等加速度運動です。時刻 \(t\) での変位 \(Y(t)\) の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
Y(t) &= v_{0Y} t + \frac{1}{2} g_Y t^2
\end{aligned}
$$
落下点Qでは \(Y(t) = 0\) (ただし \(t \neq 0\))となるため、以下の等式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(v_0 \sin\theta) t – \frac{1}{2} (g \cos\theta) t^2 &= 0 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度運動の変位: \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\)
計算過程

式⑦を \(t\) でくくって解きます。
$$
\begin{aligned}
t \left( v_0 \sin\theta – \frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t \right) &= 0
\end{aligned}
$$
\(t \neq 0\) より、括弧の中身が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} g \cos\theta \cdot t &= v_0 \sin\theta
\end{aligned}
$$
これを \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{2 v_0 \sin\theta}{g \cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0 \tan\theta}{g}
\end{aligned}
$$
これは(ウ)の結果と一致します。
次に、飛距離 \(l\) はこの時刻 \(t\) における \(X\)座標の値です。
\(X\)方向は初速度 \(v_{0X}\)、加速度 \(g_X\) の等加速度運動です。
$$
\begin{aligned}
l &= v_{0X} t + \frac{1}{2} g_X t^2 \\[2.0ex]
&= (v_0 \cos\theta) t + \frac{1}{2} (g \sin\theta) t^2
\end{aligned}
$$
これに求めた \(t\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= v_0 \cos\theta \cdot \left( \frac{2 v_0 \sin\theta}{g \cos\theta} \right) + \frac{1}{2} g \sin\theta \cdot \left( \frac{2 v_0 \sin\theta}{g \cos\theta} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g} + \frac{1}{2} g \sin\theta \cdot \frac{4 v_0^2 \sin^2\theta}{g^2 \cos^2\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g} + \frac{2 v_0^2 \sin^3\theta}{g \cos^2\theta}
\end{aligned}
$$
共通因数 \(\displaystyle \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g}\) でくくります。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g} \left( 1 + \frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g} (1 + \tan^2\theta) \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \sin\theta}{g} \cdot \frac{1}{\cos^2\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2}{g} \cdot \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \cdot \frac{1}{\cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

斜面を「地面」とみなして、ボールの動きを「斜め上に投げ上げて落ちてくる運動」として捉え直しました。
重力を斜面方向と垂直方向に分解することで、垂直方向の動きだけを見て「いつ地面(斜面)に戻ってくるか」を計算し、その時間を使って斜面に沿ってどれだけ進んだかを計算しました。

結論と吟味

計算は少し長くなりましたが、全く同じ結果が得られました。この方法は、斜面に対する最大到達高度などを求める際にも非常に有効です。

解答 (エ) \(\displaystyle \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}\)

問(オ)

思考の道筋とポイント
点Pから点Cまでの運動に着目します。
斜面や水平面はなめらかなので、摩擦によるエネルギー損失はありません。
したがって、点Pと点Cの間で力学的エネルギー保存則が成立します。

この設問における重要なポイント

  • 力学的エネルギー保存則: \((\text{運動エネルギー}) + (\text{位置エネルギー}) = \text{一定}\)
  • 重力加速度の変化: 月面では重力加速度が \(g_{\text{月}} = \frac{1}{6} g\) になります。

具体的な解説と立式
小球の質量を \(m\)、点Pの水平面BCからの高さを \(h\) とします。
点P(初速度 \(0\))と点C(速度 \(v_0\))における力学的エネルギー保存則の式を立てます。水平面BCを高さの基準とします。
$$
\begin{aligned}
0 + mgh &= \frac{1}{2} m v_0^2 + 0 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
同様に、月面での実験を考えます。重力加速度を \(g_{\text{月}} = \frac{1}{6} g\)、点Cでの速さを \(v_{0\text{月}}\) とし、エネルギー保存則の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
0 + m g_{\text{月}} h &= \frac{1}{2} m v_{0\text{月}}^2 + 0 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(K + U = \text{const.}\)
計算過程

式⑧より \(v_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= 2gh \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{2gh}
\end{aligned}
$$
式⑨より \(v_{0\text{月}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_{0\text{月}} &= \sqrt{2 g_{\text{月}} h}
\end{aligned}
$$
これに \(g_{\text{月}} = \frac{1}{6} g\) を代入して、\(v_0\) と比較します。
$$
\begin{aligned}
v_{0\text{月}} &= \sqrt{2 \left( \frac{1}{6} g \right) h} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{1}{6} \cdot 2gh} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\sqrt{6}} \sqrt{2gh} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{\sqrt{6}} v_0
\end{aligned}
$$
したがって、倍率は \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{6}}\) 倍です。
有理化すると \(\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{6}\) 倍となります。

この設問の平易な説明

高いところから滑り降りてスピードを得る場合、そのスピードは重力の強さに関係しています。
月面では重力が地球の \(1/6\) しかないため、滑り降りる勢いも弱くなります。計算すると、スピードは \(\sqrt{1/6}\) 倍になることがわかります。

結論と吟味

重力が弱いと加速が鈍くなるため、飛び出す速度が遅くなるのは妥当です。

解答 (オ) \(\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{6}\) (または \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{6}}\))

問(カ)

思考の道筋とポイント
月面での飛距離 \(l_{\text{月}}\) を、地球上での飛距離 \(l\) と比較します。
(エ)で求めた飛距離の式 \(l = \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}\) に、月面でのパラメータを代入して変化を見ます。

この設問における重要なポイント

  • 変数の依存性: 飛距離 \(l\) は、\(v_0^2\) に比例し、\(g\) に反比例します。
  • 複合的な変化: 月面では \(g\) が小さくなるだけでなく、(オ)で求めたように \(v_0\) も小さくなります。両方の変化を考慮する必要があります。

具体的な解説と立式
地球上での飛距離 \(l\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta}
\end{aligned}
$$
月面での飛距離 \(l_{\text{月}}\) は、\(g \to g_{\text{月}}\)、\(v_0 \to v_{0\text{月}}\) と置き換えたものとして定義されます。
$$
\begin{aligned}
l_{\text{月}} &= \frac{2 v_{0\text{月}}^2 \tan\theta}{g_{\text{月}} \cos\theta} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • (エ)で導出した飛距離の公式
計算過程

式⑩に \(g_{\text{月}} = \frac{1}{6} g\) と、(オ)の結果 \(v_{0\text{月}} = \frac{1}{\sqrt{6}} v_0\) (つまり \(v_{0\text{月}}^2 = \frac{1}{6} v_0^2\))を代入します。
$$
\begin{aligned}
l_{\text{月}} &= \frac{2 \left( \frac{1}{6} v_0^2 \right) \tan\theta}{\left( \frac{1}{6} g \right) \cos\theta} \\[2.0ex]
&= \frac{\frac{1}{6}}{\frac{1}{6}} \cdot \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta} \\[2.0ex]
&= 1 \cdot l
\end{aligned}
$$
係数の \(\frac{1}{6}\) が分母と分子でちょうど打ち消し合います。

この設問の平易な説明

月面では重力が弱いため、ボールは落ちにくくなり、遠くまで飛びやすくなります(分母の \(g\) が小さくなる効果)。
一方で、滑り台から飛び出すスピード自体は遅くなってしまいます(分子の \(v_0\) が小さくなる効果)。
計算してみると、この「飛びやすくなる効果」と「スピードが遅くなる効果」が完全に打ち消し合い、結局、地球上と同じ距離だけ飛ぶことがわかります。

結論と吟味

非常に興味深い結果ですが、数式上 \(l \propto \frac{v_0^2}{g}\) であり、\(v_0^2 \propto g\) であるため、\(l \propto \frac{g}{g} = \text{定数}\) となるのは必然です。物理的に矛盾はありません。

解答 (カ) \(1\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
公式を暗記するのではなく、ニュートンの運動方程式 \(m\vec{a} = \vec{F}\) から出発し、積分によって速度と位置を導出します。
これにより、設問(ア)から(エ)までの流れを一貫したロジックで説明します。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の立式: 物体に働く力は重力 \(mg\)(鉛直下向き)のみです。
  • 初期条件の適用: \(t=0\) での位置と速度を積分定数の決定に使います。

具体的な解説と立式
点Cを原点 \((0,0)\) とし、水平右向きに \(x\)軸、鉛直下向きに \(y\)軸をとります。
小球(質量 \(m\))に働く力は、\(x\)成分が \(0\)、\(y\)成分が \(mg\) です。
運動方程式 \(m\vec{a} = \vec{F}\) を成分ごとに立てます。
$$
\begin{aligned}
m a_x &= 0 \quad \cdots ⑪ \\[2.0ex]
m a_y &= mg \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
初期条件(\(t=0\))は以下の通りです。

  • 位置: \(x(0)=0, \quad y(0)=0\)
  • 速度: \(v_x(0)=v_0, \quad v_y(0)=0\)

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(m\vec{a} = \vec{F}\)
  • 微積分の基本関係: \(\vec{v} = \int \vec{a} dt, \quad \vec{r} = \int \vec{v} dt\)
計算過程

1. 速度の導出
式⑪より \(a_x = \frac{dv_x}{dt} = 0\) なので、積分すると \(v_x\) は定数です。
初期条件 \(v_x(0)=v_0\) より、
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= v_0
\end{aligned}
$$
式⑫より \(a_y = \frac{dv_y}{dt} = g\) なので、\(t\) で積分します。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= gt + C_1
\end{aligned}
$$
初期条件 \(v_y(0)=0\) より \(C_1=0\) なので、
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= gt
\end{aligned}
$$

2. 位置の導出(設問ア・イの答え)
\(v_x(t) = \frac{dx}{dt} = v_0\) を積分します。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_0 t + C_2
\end{aligned}
$$
初期条件 \(x(0)=0\) より \(C_2=0\) なので、
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_0 t \quad \cdots (\text{アの答え})
\end{aligned}
$$
\(v_y(t) = \frac{dy}{dt} = gt\) を積分します。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \frac{1}{2} gt^2 + C_3
\end{aligned}
$$
初期条件 \(y(0)=0\) より \(C_3=0\) なので、
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \frac{1}{2} gt^2 \quad \cdots (\text{イの答え})
\end{aligned}
$$

3. 斜面との交点(設問ウ・エの導出)
斜面CDを表す式は、原点を通り傾き \(\tan\theta\) の直線なので、\(y = (\tan\theta) x\) です。
軌道の式 \(y(t), x(t)\) がこの関係を満たす時刻 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} gt^2 &= (\tan\theta) \cdot (v_0 t)
\end{aligned}
$$
\(t \neq 0\) として整理すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} gt &= v_0 \tan\theta \\[2.0ex]
t &= \frac{2 v_0 \tan\theta}{g} \quad \cdots (\text{ウの答え})
\end{aligned}
$$
このときの水平位置 \(x(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
x &= v_0 \cdot \frac{2 v_0 \tan\theta}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g}
\end{aligned}
$$
飛距離 \(l\) は、図形的に \(l = \frac{x}{\cos\theta}\) なので、
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2 v_0^2 \tan\theta}{g \cos\theta} \quad \cdots (\text{エの答え})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「公式」として覚えている \(x=vt\) や \(y=\frac{1}{2}gt^2\) が、実は「力(重力)が速度を変え、速度が位置を変える」という微積分のルールから自然に導かれることを確認しました。
物理の世界では、力がわかれば未来のすべての動きを計算で予測できるのです。

結論と吟味

運動方程式から出発しても、当然ながら公式を用いた場合と全く同じ結果が得られました。これにより、公式の正当性が裏付けられます。

解答 (ア)〜(エ) 上記参照

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動の独立性と水平投射
    • 核心: 水平方向の等速直線運動と、鉛直方向の自由落下(等加速度運動)は互いに影響せず、独立して進行します。
    • 理解のポイント:
      • 水平方向: 力が働かないため、初速度 \(v_0\) を維持し続けます(\(x=v_0t\))。
      • 鉛直方向: 重力のみが働くため、初速度 \(0\) から一定の割合で加速します(\(y=\frac{1}{2}gt^2\))。
  • 幾何学的拘束条件(斜面への落下)
    • 核心: 小球が斜面に衝突する瞬間、その座標 \((x, y)\) は斜面の形状を表す方程式(または幾何学的な比)を必ず満たします。
    • 理解のポイント:
      • 座標の関係: 原点から傾角 \(\theta\) の斜面上にある点は、常に \(y/x = \tan\theta\) の関係を満たします。
      • 時間の決定: 運動の式(時間の関数)と斜面の式(空間の制約)を連立させることで、衝突時刻 \(t\) が一意に決まります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 斜面への垂直衝突: 「斜面に垂直に衝突する」という条件がある場合、衝突時の速度ベクトル \(\vec{v}\) と斜面が直交する(内積が0、または角度の関係)ことを利用します。
    • 放物運動の最大到達点: 斜面から見た高さが最大になる点を問われる場合、回転座標系(斜面方向・垂直方向への分解)を用いると、単純な投げ上げ運動として処理でき、計算が劇的に楽になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 座標軸の設定: 通常の水平・鉛直軸で解くか、斜面に沿った軸(回転座標系)で解くかを最初に検討します。斜面上の距離や時間を問われる場合は回転座標系が有利なことが多いです。
    2. 拘束条件の数式化: 「壁に当たる」「斜面に落ちる」といった物理的なイベントを、\(x=L\) や \(y=x \tan\theta\) といった数式に翻訳することから始めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 三角関数の取り違え:
    • 誤解: \(l_x = l \sin\theta\) や \(l_y = l \cos\theta\) のように、\(\sin\) と \(\cos\) を逆にしてしまう。
    • 対策: 図を描き、角度 \(\theta\) の位置を確認した上で、「近い辺が \(\cos\)(挟む)」、「遠い辺が \(\sin\)(大変)」と指差し確認する癖をつけましょう。
  • 重力加速度の変化の適用忘れ:
    • 誤解: 月面での運動を考える際、\(g\) だけを変えて \(v_0\) は地球上のまま計算してしまう(あるいはその逆)。
    • 対策: 問題文のストーリーを追い、\(v_0\) が何によって決まっているか(この問題では高さ \(h\) からの落下)を確認します。環境が変われば、それに依存する全ての変数が変化する可能性があると疑いましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(ウ)での公式選択(座標の比 vs 回転座標系):
    • 選定理由: メイン解法では、水平投射の基本式 \(x=v_0t, y=\frac{1}{2}gt^2\) をそのまま使える「座標の比」のアプローチを採用しました。これは高校物理の教科書的な王道であり、最も汎用性が高いためです。
    • 適用根拠: 斜面が原点を通る直線であるため、\(y/x = \tan\theta\) という単純な比例関係が成立し、計算が複雑にならないことが見通せます。
  • 問(エ)別解での公式選択(回転座標系):
    • 選定理由: 斜面に沿った距離 \(l\) を直接求めたい場合や、斜面に対する高さを議論したい場合には、斜面方向を軸に取る方が物理的な意味(「斜面から離れて戻ってくる」)が明確になるためです。
    • 適用根拠: 重力を成分分解する手間はありますが、運動自体は「等速」+「等加速度」の組み合わせに帰着できるため、数学的に厳密に解くことができます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 文字式の計算では、答えの次元が正しいかを常に意識します。
    • 実践: 例えば時間の答え \(t = \frac{2v_0 \tan\theta}{g}\) なら、単位は \([\text{L/T}] / [\text{L/T}^2] = [\text{T}]\) となり、秒の次元を持っていることを確認します。もし \(g\) が分子にあったら間違いです。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 角度 \(\theta\) が \(0\) や \(90^\circ\) になったらどうなるかを想像します。
    • 実践: \(\theta \to 0\) なら斜面は水平な床になり、落下しないので \(t \to 0\) (またはずっと飛び続ける)はずです。式では \(\tan 0 = 0\) なので \(t=0\) となり整合します。\(\theta \to 90^\circ\) なら崖になり、どこまでも落ちていくので \(t \to \infty\) です。式でも \(\tan 90^\circ \to \infty\) となり整合します。
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問題05 斜方投射と自由落下 (25 福島大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: 相対運動を用いた解法(モンキーハンティング)
      • 模範解答が座標の一致条件から計算で求めるのに対し、別解では「重力加速度が共通であるため相対加速度が \(0\) になる」という性質を利用し、幾何学的に一瞬で答えを導きます。
    • 設問(4)の別解: 小球Bの座標に着目した解法
      • 模範解答は小球Aの \(y\) 座標 \(y_A > 0\) を計算していますが、別解では式がより単純な小球Bの \(y\) 座標 \(y_B > 0\) を用いて計算量を削減します。
    • 設問(1)〜(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式から出発し、積分によって軌道を導出する原理的なアプローチです。全設問を一括して体系的に解説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 相対運動: 「モンキーハンティング」と呼ばれる有名な物理現象の本質を突いており、複雑な計算を回避して直感的に理解できるためです。
    • 小球Bの利用: 衝突時は \(y_A = y_B\) なのでどちらを使っても良いですが、項数が少ない \(y_B\) を選ぶことで計算ミスを減らせるためです。
    • 微積分: 公式の暗記ではなく、物理法則(運動方程式)から全ての現象を予測できるという物理学の強力な枠組みを理解できるためです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「斜方投射と自由落下の衝突(モンキーハンティング)」です。
離れた場所にいる標的(小球B)が落下を始めると同時に、小球Aを発射して空中で命中させる条件を考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 運動の独立性: 水平方向と鉛直方向の運動は独立しており、分けて考えることができます。
  2. 等加速度運動の公式: 重力のみを受ける物体の運動を記述します。
  3. 衝突の条件: 「同じ時刻」に「同じ位置(座標)」に存在することです。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2)では、等加速度運動の公式を用いて、任意の時刻 \(t\) における小球A、Bの座標を表します。
  2. (3)では、衝突時刻 \(t_d\) において \(y\) 座標が一致する条件式を立て、角度 \(\theta\) を求めます。
  3. (4)では、衝突点の高さが地面より上(\(y > 0\))であるための初速度の条件を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

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