「物理重要問題集2026」徹底解説(22〜24問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題22 滑車と物体の運動 (19 九州工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問[B](3)の別解1: 静止系(地上)から見た運動方程式による解法(模範解答の別解)
      • 模範解答が「滑車Pと共に動く観測者(非慣性系)」から見た慣性力を用いた運動方程式を立てるのに対し、別解1では「地上に静止した観測者(慣性系)」から見た運動方程式を立てます。
    • 設問[B](3)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式を微分方程式として扱い、それを積分することで速度と位置の関数を導出します。相対加速度や慣性力といった概念を経由せず、座標系における位置の拘束条件から厳密に解を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 静止系の解法: 慣性力の向きや大きさを間違えやすい初学者にとって、慣性力を使わないアプローチはミスのリスクを減らせる堅実な方法です。また、物理現象を客観的な視点から捉え直すことができます。
    • 微積分の解法: 複数の物体が連動して動く複雑な系(拘束運動)において、幾何学的な拘束条件(糸の長さ一定など)と運動方程式を数学的に結合する強力な手法を学べます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「動滑車を含む複数の物体の運動」です。
前半[A]は、滑車自体は静止している(つりあっている)状態でのアトウッドの器械の問題です。
後半[B]は、滑車自体が加速運動をするという、より高度な設定になります。ここでは「非慣性系(慣性力)」の考え方や、「拘束条件(加速度の関係)」の理解が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 力のつりあい: 静止または等速運動する物体では、力の総和が \(0\) になります。
  • 滑車の特性: 軽い(質量無視できる)滑車では、両側の張力は等しくなります。また、滑車を引く力はその張力の2倍になります。
  • 慣性力: 加速度 \(a\) で動く観測者から見ると、物体には \(-ma\) の力がはたらいているように見えます。
  • 相対加速度: 物体Aの加速度 \(\vec{a}_{\text{A}}\) と物体Bの加速度 \(\vec{a}_{\text{B}}\) の関係は、相対加速度 \(\vec{a}_{\text{AB}} = \vec{a}_{\text{B}} – \vec{a}_{\text{A}}\) で表されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • [A]では、AとBの運動方程式、およびCと滑車Pのつりあいの式を連立させて解きます。
  • [B]では、滑車P自体の運動方程式(質量0なので力のつりあいと同じ形になる)から張力を求めます。
  • [B](3)では、滑車Pに乗った観測者から見た運動方程式(慣性力あり)を立てるか、あるいは地上の観測者から見た運動方程式と加速度の拘束条件(相対加速度の関係)を連立させて解きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
物体A、B、Cを同時に放すと、AとBは動き出しましたが、Cは静止したままでした。
この状況から、各物体にはたらく力について考えます。
Cが静止しているということは、Cにはたらく力はつりあっています。
また、滑車Pも(Cと糸でつながれて静止しているので)静止しており、滑車Pにはたらく力もつりあっています。
AとBは動いているので、それぞれ運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 張力の定義: 糸1の張力を \(T\)、糸2の張力を \(T’\) とします。
  • 滑車の質量無視: 滑車Pの質量は無視できるため、滑車Pの両側の糸1の張力 \(T\) の合力 \(2T\) が、糸2の張力 \(T’\) とつりあいます。
  • Cの静止: Cの重力 \(Mg\) と糸2の張力 \(T’\) がつりあっています。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。
Aの加速度を \(a\)(上向き正)、Bの加速度を \(-a\)(下向き正、大きさはAと同じ)とします。
A(質量 \(m\))の運動方程式(図a参照):
$$
\begin{aligned}
ma &= T – mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
B(質量 \(5m\))の運動方程式(図a参照):
$$
\begin{aligned}
5m(-a) &= T – 5mg \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
C(質量 \(M\))の力のつりあい(図b参照):
$$
\begin{aligned}
T’ &= Mg \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
滑車Pの力のつりあい(図b参照):
$$
\begin{aligned}
T’ &= 2T \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 力のつりあい
計算過程

式①と式②から \(a\) を消去して \(T\) を求めます。
式①より \(T\) を表します。
$$
\begin{aligned}
T &= m(a+g)
\end{aligned}
$$
式②より \(T\) を表します。
$$
\begin{aligned}
-5ma &= T – 5mg \\[2.0ex]
T &= 5m(g-a)
\end{aligned}
$$
これらを等置して \(a\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m(a+g) &= 5m(g-a) \\[2.0ex]
a + g &= 5g – 5a \\[2.0ex]
6a &= 4g \\[2.0ex]
a &= \frac{2}{3}g
\end{aligned}
$$
これを \(T\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= m\left( \frac{2}{3}g + g \right) \\[2.0ex]
&= \frac{5}{3}mg
\end{aligned}
$$
次に、式③と式④より \(M\) を求めます。
式④に \(T\) を代入して \(T’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T’ &= 2 \cdot \frac{5}{3}mg \\[2.0ex]
&= \frac{10}{3}mg
\end{aligned}
$$
式③より \(M\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Mg &= T’ \\[2.0ex]
Mg &= \frac{10}{3}mg \\[2.0ex]
M &= \frac{10}{3}m
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、ぶら下がっているAとBの運動を考えます。Bの方が重いのでBが下がりAが上がりますが、そのときの糸の張力 \(T\) を計算しました。
次に、その滑車Pを支えている糸2の張力 \(T’\) は、滑車Pを下に引く2本分の張力 \(2T\) と同じです。
最後に、その糸2がCを支えているので、Cの重さは \(T’\) と同じになります。これらを順に計算してCの質量を求めました。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{10}{3}m\) です。
BとAの質量差により張力が発生し、それが滑車を介してCを支えているという構造が数式で確認できました。

解答 (1) \(\displaystyle \frac{10}{3}m\)

問(2)

思考の道筋とポイント
図2のように状況が変わりました。
糸2の右端を力 \(F\) で引くと、滑車Pは上昇しました。
滑車Pの質量は無視できる(\(0\) とする)ため、滑車Pに対する運動方程式は、実質的に力のつりあいの式と同じ形になります。

この設問における重要なポイント

  • 滑車Pの質量無視: 質量 \(m_{\text{P}} = 0\) なので、運動方程式 \(m_{\text{P}} a_{\text{P}} = F_{\text{合力}}\) は \(0 = F_{\text{合力}}\) となり、力のつりあいが成立します。
  • 力の図示: 滑車Pには、上向きに糸2の張力(大きさ \(F\))、下向きに糸1の張力 \(f\) が2本分かかっています(図c参照)。

具体的な解説と立式
糸1の張力を \(f\) とします。
滑車Pにはたらく力は、上向きに \(F\)、下向きに \(2f\) です。
滑車Pの運動方程式(質量 \(0\))を立てます。
$$
\begin{aligned}
0 \cdot a_{\text{P}} &= F – 2f \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(質量0の物体)
計算過程

式⑤より \(f\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2f &= F \\[2.0ex]
f &= \frac{F}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

滑車P自体には重さがありません。
重さのない物体を加速させるのに力は要らない(合力が0でよい)ので、上向きに引く力 \(F\) と、下向きに引っ張られる力(糸1の張力2本分)はバランスしていなければなりません。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{F}{2}\) です。
動滑車の原理通り、引く力の半分が各糸の張力となります。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{F}{2}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
AとBの高さの差が \(d\) になった瞬間のAの速さを求めます。
滑車P自体が加速度 \(a_{\text{P}}\) で上昇しているため、AとBの運動は複雑です。
ここでは、**滑車Pと共に動く観測者**から見た運動(相対運動)を考えます。この観測者から見れば、滑車Pは静止しており、AとBは単に滑車を通した糸でつながれた運動(アトウッドの器械)に見えます。ただし、**慣性力**を考慮する必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 滑車Pの加速度 \(a_{\text{P}}\): 滑車Pの運動方程式は立てられませんが(質量0のため)、AとBの運動方程式と連立することで間接的に関係してきます。しかし、ここでは「滑車Pから見た相対運動」に着目するため、まずは滑車Pから見たAとBの相対加速度 \(a’\) を求めます。
  • 慣性力: 滑車Pは上向きに加速しているので、滑車P上の観測者から見ると、AとBには下向きに慣性力 \(m a_{\text{P}}\)、\(5m a_{\text{P}}\) がはたらきます。
  • 相対加速度 \(a’\): 滑車Pから見ると、Aは上へ、Bは下へ、同じ大きさの加速度 \(a’\) で動きます。

具体的な解説と立式
滑車Pの加速度を \(a_{\text{P}}\)(上向き)とします。
滑車Pから見たAの加速度を \(a’\)(上向き正)、Bの加速度を \(-a’\)(下向き正)とします。
各物体にはたらく力は、重力、張力 \(f = F/2\)、そして下向きの慣性力です(図d参照)。

A(質量 \(m\))の運動方程式(滑車P系):
$$
\begin{aligned}
ma’ &= f – mg – ma_{\text{P}} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
B(質量 \(5m\))の運動方程式(滑車P系):
$$
\begin{aligned}
5ma’ &= 5mg + 5ma_{\text{P}} – f \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(非慣性系): \(ma’ = F_{\text{実力}} + F_{\text{慣性力}}\)
計算過程

まず、式⑥と式⑦から \(a_{\text{P}}\) を消去して \(a’\) を求めます。
式⑥の両辺を5倍します。
$$
\begin{aligned}
5ma’ &= 5f – 5mg – 5ma_{\text{P}} \quad \cdots ⑥’
\end{aligned}
$$
式⑦と式⑥’を辺々加えます。
$$
\begin{aligned}
5ma’ + 5ma’ &= (5mg + 5ma_{\text{P}} – f) + (5f – 5mg – 5ma_{\text{P}}) \\[2.0ex]
10ma’ &= 4f
\end{aligned}
$$
これに \(f = F/2\) を代入して \(a’\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
10ma’ &= 4 \cdot \frac{F}{2} \\[2.0ex]
10ma’ &= 2F \\[2.0ex]
a’ &= \frac{2F}{10m} \\[2.0ex]
&= \frac{F}{5m}
\end{aligned}
$$
次に、式⑥と式⑦から \(a’\) を消去して \(a_{\text{P}}\) を求めます。
式⑥と式⑦の和を考えます。
$$
\begin{aligned}
ma’ + 5ma’ &= (f – mg – ma_{\text{P}}) + (5mg + 5ma_{\text{P}} – f) \\[2.0ex]
6ma’ &= 4mg + 4ma_{\text{P}}
\end{aligned}
$$
これに先ほど求めた \(a’ = F/5m\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
6m \left( \frac{F}{5m} \right) &= 4mg + 4ma_{\text{P}} \\[2.0ex]
\frac{6F}{5} &= 4mg + 4ma_{\text{P}}
\end{aligned}
$$
両辺を \(4m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{6F}{20m} &= g + a_{\text{P}} \\[2.0ex]
\frac{3F}{10m} &= g + a_{\text{P}} \\[2.0ex]
a_{\text{P}} &= \frac{3F}{10m} – g
\end{aligned}
$$
地上の観測者から見たAの加速度 \(a_{\text{A}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{A}} &= a_{\text{P}} + a’ \\[2.0ex]
&= \left( \frac{3F}{10m} – g \right) + \frac{F}{5m} \\[2.0ex]
&= \frac{3F}{10m} – g + \frac{2F}{10m} \\[2.0ex]
&= \frac{5F}{10m} – g \\[2.0ex]
&= \frac{F}{2m} – g
\end{aligned}
$$
次に、AとBの高さの差が \(d\) になるまでの時間 \(t\) を求めます。
滑車Pから見た相対運動において、AとBがすれ違って距離 \(d\) になるということは、Aが \(d/2\) 上昇し、Bが \(d/2\) 下降したことを意味します。
等加速度直線運動の変位の公式を用います。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{2} &= \frac{1}{2} a’ t^2 \\[2.0ex]
d &= a’ t^2 \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{d}{a’} \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{d}{F/5m}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$
最後に、この時刻 \(t\) におけるAの速度 \(v_{\text{A}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{A}} &= a_{\text{A}} t \\[2.0ex]
&= \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

滑車Pが上に加速していくので、その上に乗っている人から見ると、AとBには「下向きの重力」が増えたように感じます(慣性力)。
その状態で、AとBは滑車を通して動きます。
滑車上の人から見て、AとBがすれ違って距離 \(d\) だけ離れるまでの時間を計算しました。
その時間を使って、地上の人から見たAのスピードを計算しました。地上の人から見ると、Aは「滑車が上がるスピード」と「滑車の上でAが動くスピード」を合わせた動きをしています。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}\) です。
\(F\) が大きいほど速くなり、\(m\) が大きいほど遅くなる傾向があり、物理的に妥当です。

解答 (3) \(\displaystyle \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}\)
別解: 静止系(地上)から見た運動方程式による解法

思考の道筋とポイント
慣性力を使わず、地上の観測者から見た運動方程式を立てます。
ポイントは「加速度の拘束条件」です。
滑車Pの加速度を \(a_{\text{P}}\)、Aの加速度を \(a_{\text{A}}\)、Bの加速度を \(a_{\text{B}}\) とします(全て上向き正)。
糸の長さが変わらないことから、滑車Pから見たAの上昇距離とBの下降距離は等しいので、相対加速度の関係式が成り立ちます。

この設問における重要なポイント

  • 相対加速度の関係: \(a_{\text{A}} – a_{\text{P}} = -(a_{\text{B}} – a_{\text{P}})\)
    すなわち、\(a_{\text{A}} + a_{\text{B}} = 2a_{\text{P}}\)

具体的な解説と立式
Aの運動方程式:
$$
\begin{aligned}
m a_{\text{A}} &= f – mg \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
Bの運動方程式:
$$
\begin{aligned}
5m a_{\text{B}} &= f – 5mg \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
滑車Pの運動方程式(質量0):
$$
\begin{aligned}
0 &= F – 2f \quad \Rightarrow \quad f = \frac{F}{2}
\end{aligned}
$$
拘束条件:
$$
\begin{aligned}
a_{\text{A}} + a_{\text{B}} &= 2a_{\text{P}} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式
  • 相対加速度の関係式
計算過程

式⑧より \(a_{\text{A}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{A}} &= \frac{f}{m} – g \\[2.0ex]
&= \frac{F/2}{m} – g \\[2.0ex]
&= \frac{F}{2m} – g
\end{aligned}
$$
式⑨より \(a_{\text{B}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{B}} &= \frac{f}{5m} – g \\[2.0ex]
&= \frac{F/2}{5m} – g \\[2.0ex]
&= \frac{F}{10m} – g
\end{aligned}
$$
これで \(a_{\text{A}}\) が直接求まりました(メイン解法と同じ結果)。
次に、AとBの高さの差が \(d\) になる時間を求めます。
相対加速度 \(a_{\text{rel}} = a_{\text{A}} – a_{\text{B}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{rel}} &= \left( \frac{F}{2m} – g \right) – \left( \frac{F}{10m} – g \right) \\[2.0ex]
&= \frac{5F – F}{10m} \\[2.0ex]
&= \frac{4F}{10m} \\[2.0ex]
&= \frac{2F}{5m}
\end{aligned}
$$
相対初速度0で、相対加速度 \(a_{\text{rel}}\) で距離 \(d\) だけ離れる時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{1}{2} a_{\text{rel}} t^2 \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{2d}{a_{\text{rel}}} \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{2d}{2F/5m}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$
よって、求める速度 \(v_{\text{A}}\) は、
$$
\begin{aligned}
v_{\text{A}} &= a_{\text{A}} t \\[2.0ex]
&= \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

地上から見ると、AもBも糸に引かれて上に加速しようとしますが、重さの違いで加速度が異なります。
それぞれの加速度を計算し、「2つの物体がどれくらいの勢いで離れていくか(相対加速度)」を求めました。
その勢いで距離 \(d\) だけ離れる時間を計算し、その時点でのAのスピードを求めました。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が得られました。
慣性力を使わない分、加速度の定義(拘束条件)を正確に立式する必要がありますが、計算自体はシンプルになることもあります。

解答 (3) \(\displaystyle \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
運動方程式を微分方程式として扱い、積分することで速度と位置を導出します。
ここでは、座標系を厳密に定義し、糸の長さが一定であるという幾何学的な拘束条件から出発します。

この設問における重要なポイント

  • 座標定義: 天井を原点 \(y=0\) とし、鉛直下向きを正とします。
  • 位置座標: 滑車Pの位置 \(y_{\text{P}}\)、Aの位置 \(y_{\text{A}}\)、Bの位置 \(y_{\text{B}}\)。
  • 拘束条件: 糸1の長さ \(L\) は一定なので、\((y_{\text{A}} – y_{\text{P}}) + (y_{\text{B}} – y_{\text{P}}) = L\) です。
    これを2階微分すると、\(a_{\text{A}} + a_{\text{B}} – 2a_{\text{P}} = 0\) となります。

具体的な解説と立式
運動方程式(下向き正):
A: \(m \frac{d^2 y_{\text{A}}}{dt^2} = mg – f\)
B: \(5m \frac{d^2 y_{\text{B}}}{dt^2} = 5mg – f\)
P: \(0 = 2f – F\) (質量0、上向きの力 \(F\) は負方向)

これより \(f = F/2\) です。
Aの加速度 \(a_{\text{A}} = \frac{d^2 y_{\text{A}}}{dt^2}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2 y_{\text{A}}}{dt^2} &= g – \frac{f}{m} \\[2.0ex]
&= g – \frac{F}{2m}
\end{aligned}
$$
同様にBの加速度 \(a_{\text{B}} = \frac{d^2 y_{\text{B}}}{dt^2}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2 y_{\text{B}}}{dt^2} &= g – \frac{f}{5m} \\[2.0ex]
&= g – \frac{F}{10m}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式(微分形)
  • 積分の基本公式
計算過程

Aの加速度は定数なので、積分して速度と位置を求めます(初期条件 \(t=0\) で \(v=0, y=0\) とします)。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{A}}(t) &= \left( g – \frac{F}{2m} \right) t \\[2.0ex]
y_{\text{A}}(t) &= \frac{1}{2} \left( g – \frac{F}{2m} \right) t^2
\end{aligned}
$$
同様にBについても積分します。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{B}}(t) &= \frac{1}{2} \left( g – \frac{F}{10m} \right) t^2
\end{aligned}
$$
AとBの高さの差(距離)\(D(t) = |y_{\text{A}}(t) – y_{\text{B}}(t)|\) が \(d\) になる時刻 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y_{\text{A}} – y_{\text{B}} &= \frac{1}{2} t^2 \left( \left( g – \frac{F}{2m} \right) – \left( g – \frac{F}{10m} \right) \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} t^2 \left( -\frac{F}{2m} + \frac{F}{10m} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} t^2 \left( -\frac{4F}{10m} \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{F}{5m} t^2
\end{aligned}
$$
距離なので絶対値をとります。
$$
\begin{aligned}
d &= \frac{F}{5m} t^2 \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$
この時刻でのAの速さ \(|v_{\text{A}}(t)|\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
|v_{\text{A}}| &= \left| g – \frac{F}{2m} \right| \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$
問題の図よりAは上昇(\(y\)軸負方向)するので、\(g – F/2m\) は負の値です。速さは正の値で答えるため符号を反転します。
$$
\begin{aligned}
|v_{\text{A}}| &= \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

それぞれの物体の位置を時間の関数として数式で表しました。
「2つの物体の位置の差が \(d\) になる」という方程式を解いて時間を求め、その時間を速度の式に代入することで答えを得ました。
座標軸の向き(下向き正)に注意すれば、機械的な計算で解ける方法です。

結論と吟味

微積分を用いても同じ結果が得られました。
この方法は、加速度が一定でない場合や、より複雑な拘束条件がある場合にも適用できる一般的な手法です。

解答 (3) \(\displaystyle \left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 非慣性系における運動方程式(慣性力)
    • 核心: 加速している観測者(滑車P)から物体を見ると、実際の力に加えて、観測者の加速度と逆向きの「慣性力」がはたらいているように見えます。これにより、動いている滑車上の運動を、静止した滑車上の運動(アトウッドの器械)と同じように扱えます。
    • 理解のポイント:
      • 慣性力の向き: 観測者の加速度 \(a_{\text{P}}\) が上向きなら、慣性力 \(-ma_{\text{P}}\) は下向きにはたらきます。これは「重力が増えた(見かけの重力 \(g+a_{\text{P}}\))」と解釈すると直感的です。
      • 相対加速度: 観測者から見た加速度 \(a’\) は、地上の加速度 \(a\) と観測者の加速度 \(a_{\text{P}}\) の差(\(a’ = a – a_{\text{P}}\))です。
  • 拘束条件と相対加速度
    • 核心: 糸でつながれた物体は勝手に動けず、幾何学的な制約(糸の長さ一定)を受けます。動滑車の場合、滑車から見た一方の上昇距離は他方の下降距離と等しくなるため、相対加速度の大きさも等しくなります。
    • 理解のポイント:
      • 座標系の選択: 地上から見るか、滑車から見るかで式の形が変わりますが、拘束条件(\(a_{\text{A}} + a_{\text{B}} = 2a_{\text{P}}\) など)の本質は変わりません。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • エレベーター内の運動: 加速するエレベーター内で物体を落としたり、ばねを吊るしたりする問題。本問の滑車Pをエレベーターの箱とみなせば、全く同じ「慣性力」の問題として処理できます。
    • 電車内の単振り子: 加速する電車内で振り子が傾く問題。水平方向の慣性力と重力の合力(見かけの重力)を考える点が共通しています。
    • モンキーハンティング: 落下する物体から別の物体を見る問題。互いに重力加速度で落下している場合、相対的には等速直線運動に見えるという視点が役立ちます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 観測者の立ち位置を決める: 「地上から見て式を立てる」か「動く物体に乗って慣性力を使う」か、最初に方針を決めます。複雑な動きをする物体(動滑車など)がある場合は、それに乗ってしまう(非慣性系)方が式がシンプルになることが多いです。
    2. 質量の有無を確認: 「滑車の質量は無視できる」という記述があれば、その滑車に対する運動方程式は \(0 = F_{\text{合力}}\)(力のつりあい)になります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 速度・加速度の基準の混同:
    • 誤解: 滑車から見た相対速度 \(v’\) を求めたのに、それをそのまま地上の速度 \(v\) として答えてしまう。あるいはその逆。
    • 対策: 求める物理量が「誰から見たものか」を常に意識します。特に指定がなければ「地上(静止系)」からの値を答えます。\(v_{\text{地上}} = v_{\text{相対}} + v_{\text{観測者}}\) の関係を忘れないようにしましょう。
  • 慣性力の入れ忘れ:
    • 誤解: 加速している滑車上で運動方程式を立てる際、重力と張力だけを書いて慣性力を忘れる。
    • 対策: 「観測者が加速しているなら、必ず慣性力を書く」と習慣づけます。作図の段階で、重力の横に点線矢印などで慣性力を書き込むと忘れにくくなります。
  • 動滑車の張力:
    • 誤解: 動滑車を引く力 \(F\) と、滑車にかかる糸の張力 \(f\) を同じ大きさ(\(F=f\))だと思ってしまう。
    • 対策: 滑車を一つの物体として切り出し、力のつりあいを図示します。滑車を上に引く力 \(F\) は、下に引く2本の糸の張力 \(2f\) とつりあうので、\(f = F/2\) となります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 非慣性系(滑車P系)での運動方程式(メイン解法):
    • 選定理由: AとBの運動が「滑車に対して対称(一方が上がれば他方が下がる)」であるため、滑車に乗ってしまえば単純なアトウッドの器械として扱え、立式が容易になるため。
    • 適用根拠: ニュートンの運動法則は慣性系でのみ成り立ちますが、慣性力を導入することで、非慣性系でも形式的に運動方程式 \(ma’ = F_{\text{実}} + F_{\text{慣}}\) を適用できるため。
  • 静止系(地上)での運動方程式(別解):
    • 選定理由: 慣性力の向きや大きさに不安がある場合、最も基本的で誤りの少ない「地上からの視点」で解くのが確実であるため。
    • 適用根拠: 運動の法則の原点であり、拘束条件(\(a_{\text{A}} + a_{\text{B}} = 2a_{\text{P}}\))さえ正しく記述できれば、数学的に厳密に解けるため。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式の次元が合っているか確認する。
    • 実践: 例えば速度の答え \(\left( \frac{F}{2m} – g \right) \sqrt{\frac{5md}{F}}\) において、\(\frac{F}{m}\) は加速度 \([\text{LT}^{-2}]\) の次元、\(\sqrt{\frac{md}{F}}\) は時間の次元 \(\sqrt{\frac{\text{M} \cdot \text{L}}{\text{MLT}^{-2}}} = \sqrt{\text{T}^2} = [\text{T}]\) です。掛け合わせると \([\text{LT}^{-2}] \cdot [\text{T}] = [\text{LT}^{-1}]\) となり、速度の次元として正しいことが確認できます。
  • 極端な条件での検算:
    • 意識: 質量や力が極端な値のとき、直感と合うか確認する。
    • 実践: もし \(F\) が非常に大きく、重力 \(g\) が無視できるなら、\(v \propto \sqrt{F}\) となるはずです。答えの式で \(g \to 0\) とすると \(v \approx \frac{F}{2m} \sqrt{\frac{5md}{F}} \propto \sqrt{F}\) となり、整合します。
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問題23 力学的エネルギー (拓殖大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解1: 単振動の性質を用いた解法(模範解答の別解)
      • 模範解答が力学的エネルギー保存則を用いて各状態の物理量を求めるのに対し、別解1では運動方程式から単振動のパラメータ(中心、振幅、角振動数)を特定し、単振動の一般論として解きます。
    • 設問(2)の別解2: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式を微分方程式として扱い、それを積分することで速度と位置の関数を導出します。エネルギー保存則を前提とせず、運動方程式からエネルギー積分(保存則)を数学的に導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 単振動の解法: 振動の中心や振幅といった幾何学的な特徴を捉えることで、計算量を減らし、物理現象の全体像を直感的に把握できます。
    • 微積分の解法: 力学的エネルギー保存則が「運動方程式の空間積分」であることを理解し、保存則の起源を学ぶことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ばね振り子の運動と力学的エネルギー」です。
前半(1)は、力がつりあった状態でゆっくりと変化させる静力学的なプロセスを扱います。
後半(2)は、急に支えを外した後の動力学的なプロセス(単振動)を扱います。
静的なつりあいと動的な振動の違い、そして仕事とエネルギーの関係を深く理解することが求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • フックの法則: ばねの弾性力 \(F\) は、自然長からの伸び \(x\) に比例します(\(F = kx\))。
  • 力のつりあい: 物体が静止または等速運動しているとき、力の総和は \(0\) です。
  • 仕事: 力 \(F\) が物体を距離 \(x\) だけ動かすときにする仕事 \(W\) は、\(F-x\) グラフの面積で表されます。
  • 力学的エネルギー保存則: 保存力(重力、弾性力)のみが仕事をする場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれます。
  • 単振動: 復元力 \(F = -K(x – x_0)\) を受ける物体の運動。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、板が物体を支える力(垂直抗力)を含めた力のつりあいを考え、垂直抗力が \(0\) になる瞬間を求めます。また、仕事はグラフの面積として計算します。
  • (2)では、力学的エネルギー保存則を用いて、特定の変位における速度や、速度が最大・最小になる位置を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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