問題151 X線の発生とX線回折 (18 近畿大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と仕事・エネルギー原理)
- 模範解答が公式 \(K=eV\) を自明として使用するのに対し、別解では運動方程式から出発し、積分を用いて電場が電子にする仕事を計算することで、運動エネルギーの変化を原理的に導出します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(位相差からの導出)
- 幾何学的な経路差の計算に加え、波動の基本原理である「位相」の概念を用いて干渉条件を再確認します。
- 設問(1)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と仕事・エネルギー原理)
- 上記の別解が有益である理由
- 公式の暗記に頼らず、力学の基本原理(ニュートンの運動方程式)と電磁気学(電位の定義)のつながりを理解することで、物理現象を体系的に捉える力が身につくためです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「X線の発生原理と結晶によるX線回折(ブラッグ反射)」です。
電子の運動エネルギーが光のエネルギーに変換される過程と、波動としてのX線が結晶格子で干渉を起こす現象を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- エネルギー保存則: 電場による仕事が電子の運動エネルギーになり、それが光子のエネルギーに変換されます。
- 光量子仮説: 光(X線)は粒子(光子)としての性質を持ち、そのエネルギーは振動数に比例します。
- 波の干渉条件: 経路差が波長の整数倍のとき、波は強め合います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、電子の加速によるエネルギー収支と、光子のエネルギー公式を結びつけて最短波長を求めます。
- (2)では、結晶面での反射における幾何学的な経路差を導出し、干渉条件式を立てて計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
陰極から放出された電子は、陽極(対陰極)に向かって加速電圧 \(V\) で加速されます。
このとき、電子は電場から仕事を受け、運動エネルギーを獲得します。
陽極に衝突した電子が急激に減速する際、その失った運動エネルギーが電磁波(X線)として放出されます。これが連続X線です。
最もエネルギーの高いX線(=最短波長 \(\lambda_0\))が発生するのは、電子が持っていた運動エネルギーの全てが、たった1つの光子のエネルギーとして放出されるケースです。
この設問における重要なポイント
- 仕事とエネルギーの関係: 電場が電子にする仕事 \(W\) は、電子の電荷 \(e\) と電位差 \(V\) の積です。
- 光子のエネルギー: 波長 \(\lambda\) の光子1個のエネルギーは \(hc/\lambda\) です。
- 最短波長の条件: 電子の運動エネルギー \(K\) が100%光子のエネルギー \(E\) に変わるとき、波長は最小になります。
- 特性X線: 原子の内殻電子が弾き飛ばされ、外殻から電子が遷移してくる際に放出されるX線で、波長は加速電圧によらず、陽極の物質(元素)によって決まります。
具体的な解説と立式
電子の電荷を \(e\)、加速電圧を \(V\) とします。
電子が陰極から陽極へ移動する間に電場からされる仕事 \(W\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
W &= eV
\end{aligned}
$$
この仕事がすべて電子の運動エネルギー \(K\) に変換されるため、以下の等式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
K &= eV \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に、この運動エネルギー \(K\) を持つ電子が陽極に衝突し、そのエネルギーの全てを1個のX線光子として放出する場合を考えます。
発生するX線の波長を \(\lambda_0\)、プランク定数を \(h\)、光速を \(c\) とすると、この光子のエネルギー \(E\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= h \frac{c}{\lambda_0} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、電子の運動エネルギーが光子のエネルギーと等しくなるため、以下の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
K &= E \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電場の仕事: \(W = qV\)
- 光子のエネルギー: \(E = h\nu = \frac{hc}{\lambda}\)
- エネルギー保存則: \(K_{\text{失った}} = E_{\text{光子}}\)
式①、②を式③に代入して、\(\lambda_0\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
eV &= \frac{hc}{\lambda_0} \\[2.0ex]
\lambda_0 &= \frac{hc}{eV}
\end{aligned}
$$
これが空欄[ア]の答えです。
次に、具体的な数値を代入して計算します。
与えられた値は以下の通りです。
\(h = 6.6 \times 10^{-34}\,\text{J}\cdot\text{s}\)
\(c = 3.0 \times 10^8\,\text{m}/\text{s}\)
\(e = 1.6 \times 10^{-19}\,\text{C}\)
\(V = 1.2 \times 10^5\,\text{V}\)
これらを \(\lambda_0\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_0 &= \frac{(6.6 \times 10^{-34}) \times (3.0 \times 10^8)}{(1.6 \times 10^{-19}) \times (1.2 \times 10^5)} \\[2.0ex]
&= \frac{19.8 \times 10^{-26}}{1.92 \times 10^{-14}} \\[2.0ex]
&= \frac{19.8}{1.92} \times 10^{-12}
\end{aligned}
$$
ここで、分数の計算を行います。
$$
\begin{aligned}
\frac{19.8}{1.92} &= \frac{1980}{192} \\[2.0ex]
&\approx 10.31
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
\lambda_0 &\approx 10.3 \times 10^{-12}\,\text{m} \\[2.0ex]
&= 1.03 \times 10^{-11}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$
\begin{aligned}
\lambda_0 &\approx 1.0 \times 10^{-11}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
これが空欄[イ]の答えです。
最後に、加速電圧 \(V\) を増したときのスペクトル変化(空欄[ウ])について考えます。
式 \(\lambda_0 = \frac{hc}{eV}\) より、\(V\) が大きくなると、分母が大きくなるため最短波長 \(\lambda_0\) は小さくなります。つまり、グラフの立ち上がり位置は左側(短波長側)へ移動します。
また、衝突する電子のエネルギーが増大するため、発生するX線の総量(強度)も全体的に増加します。
一方で、特性X線(鋭いピーク B, C)の波長は、陽極物質の電子軌道のエネルギー準位差で決まるため、加速電圧 \(V\) が変わっても変化しません。
以上のことから、
1. 最短波長 \(\lambda_0\) が左にずれる。
2. 全体の強度が上がる(山が高くなる)。
3. ピークの位置(波長)は変わらない。
という特徴を持つグラフを描きます。
電子を電圧で加速するのは、坂道でボールを転がして加速するのと似ています。電圧が高いほど、電子は猛スピード(高いエネルギー)で金属板に激突します。
この激突の衝撃エネルギーが光(X線)に変わります。持っているエネルギーを「全て」光に変えたとき、最もパワフルな光、つまり波長が一番短いX線が出ます。
計算の結果、電圧を上げると、より短い波長のX線が出せるようになり、X線全体の強さも増すことがわかりました。ただし、特定の波長で強く出る「特性X線」は、金属の種類で決まっているため、電圧を変えても場所(波長)は動きません。
・空欄[ア]: \(\frac{hc}{eV}\)
・空欄[イ]: \(1.0 \times 10^{-11}\)
・空欄[ウ]: 最短波長が短くなり、全体強度は増加し、特性X線のピーク波長は不変であるグラフ(図aの実線)。
計算結果の次元を確認します。\(\lambda_0 = \frac{hc}{eV}\) の単位は \(\frac{[\text{J}\cdot\text{s}] \cdot [\text{m}/\text{s}]}{[\text{C}] \cdot [\text{J}/\text{C}]} = \frac{[\text{J}]\cdot[\text{m}]}{[\text{J}]} = [\text{m}]\) となり、波長の次元として正しいです。
また、電圧 \(V\) を上げると波長 \(\lambda_0\) が短くなるという結果は、エネルギーが高いほど波長が短いという量子論の基本と整合します。
[ア] \(\displaystyle \frac{hc}{eV}\)
[イ] \(1.0 \times 10^{-11}\)
[ウ] 図aの実線部分:点線よりも左側から立ち上がり、全体に高く、ピーク位置は同じグラフ
思考の道筋とポイント
公式 \(K=eV\) を天下り的に使わず、ニュートンの運動方程式から出発します。
電場から受ける力を位置で積分することで「仕事」を定義し、それが運動エネルギーの変化量に等しいことを数学的に導出します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: 質量 \(m\)、加速度 \(a\) の電子には、電場 \(E_x\) から力 \(F = eE_x\) が働きます(電子の電荷の大きさを \(e\) とします)。
- 仕事の定義: 仕事 \(W\) は力の空間積分 \(\int F dx\) です。
- 電位の定義: 電位差 \(V\) は電場の空間積分 \(V = \int E_x dx\) (大きさ)に関連します。
具体的な解説と立式
電子の質量を \(m\)、速度を \(v\)、位置を \(x\) とします。
陰極を原点 \(x=0\)、陽極を \(x=d\) とし、極板間の電場の強さを \(E_x(x)\)(\(x\)方向)とします。
電子の運動方程式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= e E_x(x) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
この式の両辺を位置 \(x\) で積分して、エネルギーの関係を導きます。
積分変数を時間 \(t\) から位置 \(x\) に変換するために、\(\frac{dv}{dt} = \frac{dv}{dx} \frac{dx}{dt} = v \frac{dv}{dx}\) の関係を用います。
また、電位差 \(V\) の定義式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V &= \int_{0}^{d} E_x(x) \, dx \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
(ここでは大きさの議論とし、符号はエネルギーが増加する方向で考えます)
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 合成関数の微分(連鎖律): \(\frac{dv}{dt} = v \frac{dv}{dx}\)
- 積分の公式: \(\int v \, dv = \frac{1}{2}v^2\)
式④の左辺を変形します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= m v \frac{dv}{dx}
\end{aligned}
$$
これを式④に戻し、両辺を \(x=0\) から \(x=d\) まで積分します。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{d} m v \frac{dv}{dx} \, dx &= \int_{0}^{d} e E_x(x) \, dx
\end{aligned}
$$
左辺の積分変数を \(x\) から \(v\) に変更します。初速度は \(0\)、到達速度を \(v_{\text{最大}}\) とします。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{v_{\text{最大}}} m v \, dv &= e \int_{0}^{d} E_x(x) \, dx
\end{aligned}
$$
左辺の積分を実行し、右辺に式⑤を代入します。
$$
\begin{aligned}
\left[ \frac{1}{2} m v^2 \right]_{0}^{v_{\text{最大}}} &= e V \\[2.0ex]
\frac{1}{2} m v_{\text{最大}}^2 &= e V
\end{aligned}
$$
これにより、運動エネルギー \(K = \frac{1}{2} m v_{\text{最大}}^2\) が仕事 \(eV\) に等しいことが導かれました。
あとはメイン解法と同様に、これが光子エネルギー \(hc/\lambda_0\) と等しいと置きます。
$$
\begin{aligned}
eV &= \frac{hc}{\lambda_0} \\[2.0ex]
\lambda_0 &= \frac{hc}{eV}
\end{aligned}
$$
「電圧×電荷=エネルギー」という公式を覚えているだけでなく、それが「力×距離」という仕事の基本定義から来ていることを確認しました。
電子にかかる電気の力を、進んだ距離で積み重ねていく(積分する)と、最終的に電子が得るスピード(運動エネルギー)になります。
このプロセスを経ることで、どんな複雑な電場であっても、電圧さえ分かれば最終的なエネルギーが決まることが保証されます。
メイン解法と全く同じ結果 \(\lambda_0 = \frac{hc}{eV}\) が得られました。
運動方程式という力学の根本原理から出発しても、電磁気学のエネルギー保存則と矛盾しないことが確認でき、物理体系の整合性が取れています。
問(2)
思考の道筋とポイント
X線回折(ブラッグ反射)に関する問題です。
結晶格子に入射したX線は、各原子面で散乱(反射)されます。
隣り合う結晶面(間隔 \(d\))で反射された2つのX線が、強め合う条件(干渉条件)を求めます。
図bの幾何学的関係から経路差を導き出し、それが波長の整数倍になる条件を立式します。
この設問における重要なポイント
- 経路差の導出: 図bにおいて、入射波と反射波のそれぞれで、下の面で反射する波の方が余分に通る距離があります。
- 視射角 \(\theta\): 通常の光学(スネルの法則など)では入射角を「法線とのなす角」としますが、X線回折では慣習的に「結晶面とのなす角」を \(\theta\) とします。
- ブラッグの条件: 経路差 \(\Delta L\) が波長 \(\lambda\) の整数倍 \(n\lambda\) のとき、波は同位相となり強め合います。
具体的な解説と立式
図bを参照します。
結晶面間隔を \(d\)、X線と結晶面のなす角を \(\theta\) とします。
上の面で反射するX線と、下の面で反射するX線の経路差 \(\Delta L\) を考えます。
入射側で下の波が余分に進む距離は \(d \sin\theta\) です(直角三角形の斜辺が \(d\)、対辺が余分な距離)。
反射側でも同様に、下の波が余分に進む距離は \(d \sin\theta\) です。
したがって、往復の合計経路差 \(\Delta L\) は以下の和になります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= d \sin\theta + d \sin\theta \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
波長を \(\lambda\)、正の整数(反射次数)を \(n\) とすると、反射X線が強め合う条件(ブラッグの条件)は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= n \lambda \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三角比の定義: 直角三角形において \((\text{対辺}) = (\text{斜辺}) \times \sin\theta\)
- 波の干渉条件(強め合い): \((\text{経路差}) = n \lambda\)
式⑥を計算して経路差をまとめます。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 2d \sin\theta
\end{aligned}
$$
これを式⑦に代入します。
$$
\begin{aligned}
2d \sin\theta &= n \lambda
\end{aligned}
$$
これが空欄[エ]の答えです。
次に、空欄[オ]の計算を行います。
与えられた条件は以下の通りです。
\(\lambda = 7.0 \times 10^{-11}\,\text{m}\)
\(n = 4\) (4回目の強い反射なので \(n=4\))
\(\theta = 30^\circ\)
これらをブラッグの条件式に代入して \(d\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
2d \sin 30^\circ &= 4 \times (7.0 \times 10^{-11})
\end{aligned}
$$
\(\sin 30^\circ = \frac{1}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
2d \cdot \frac{1}{2} &= 28.0 \times 10^{-11} \\[2.0ex]
d &= 28.0 \times 10^{-11}
\end{aligned}
$$
科学的表記(\(a \times 10^b\) の形)に直します。
$$
\begin{aligned}
d &= 2.8 \times 10^{-10}\,\text{m}
\end{aligned}
$$
これが空欄[オ]の答えです。
結晶の中には原子が規則正しく並んでいて、鏡が何枚も重なっているような構造になっています。
X線が入ってくると、1枚目の鏡(原子面)で反射する波と、2枚目の鏡で反射する波に分かれます。
2枚目まで行って帰ってくる波は、1枚目で反射する波よりも少しだけ長い距離を走ります。
この「余分な距離(経路差)」が、ちょうど波の長さ(波長)の1個分、2個分…とぴったり重なるとき、波の山と山が揃って、反射波は強くなります。
図の幾何学的な関係から、その余分な距離は \(2d\sin\theta\) になることがわかります。
・空欄[エ]: \(2d\sin\theta\)
・空欄[オ]: \(2.8 \times 10^{-10}\)
得られた \(d = 2.8 \times 10^{-10}\,\text{m}\) は \(2.8\,\text{Å}\)(オングストローム)であり、一般的な結晶の原子間距離として非常に妥当な値です。
また、\(n=4\) という高次の反射が観測されるのは、波長が原子間隔に対して十分に短い場合であり、今回の設定(\(\lambda \approx 0.7\,\text{Å}\), \(d \approx 2.8\,\text{Å}\))では \(2d > \lambda\) なので物理的に可能です。
[エ] \(2d\sin\theta\)
[オ] \(2.8 \times 10^{-10}\)
思考の道筋とポイント
幾何学的な経路差の計算に加え、波動の基本原理である「位相」の概念を用いて干渉条件を再確認します。
波の位相 \(\phi\) は位置 \(x\) の関数として \(\phi(x) = kx – \omega t\) (\(k\)は波数)と表されます。
経路差 \(\Delta L\) が生じたときの位相差 \(\Delta \phi\) を計算し、それが \(2\pi\) の整数倍になることが強め合いの条件であることを示します。
この設問における重要なポイント
- 波数 \(k\): 波長 \(\lambda\) との関係は \(k = \frac{2\pi}{\lambda}\) です。
- 位相差 \(\Delta \phi\): 経路差 \(\Delta L\) に対応する位相のずれは \(\Delta \phi = k \Delta L\) です。
- 干渉条件(位相): 位相差が \(2\pi n\) (\(n\)は整数)のとき、波は同位相となり強め合います。
具体的な解説と立式
経路差 \(\Delta L\) はメイン解法と同様に図形的に求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 2d \sin\theta \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
この経路差による位相差 \(\Delta \phi\) は、波数 \(k = \frac{2\pi}{\lambda}\) を用いて以下のように表されます。
$$
\begin{aligned}
\Delta \phi &= k \Delta L \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi}{\lambda} (2d \sin\theta) \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
強め合うための条件は、位相差が \(2\pi\) の整数倍になることです。
$$
\begin{aligned}
\Delta \phi &= 2\pi n \quad (n=1, 2, \dots) \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 波数の定義: \(k = \frac{2\pi}{\lambda}\)
- 位相差と経路差の関係: \(\Delta \phi = k \Delta L\)
式⑨を式⑩に代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{2\pi}{\lambda} (2d \sin\theta) &= 2\pi n
\end{aligned}
$$
両辺を \(2\pi\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{2d \sin\theta}{\lambda} &= n
\end{aligned}
$$
両辺に \(\lambda\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
2d \sin\theta &= n \lambda
\end{aligned}
$$
これにより、ブラッグの条件式が導かれました。
以降の数値計算はメイン解法と同様です。
波の「山」と「谷」のリズム(位相)に注目しました。
波が1波長分進むと、位相は \(2\pi\)(360度)回ります。
経路差の分だけ位相がずれますが、そのずれがちょうど一周分(\(2\pi\))や二周分(\(4\pi\))であれば、結局元の波と同じリズムに戻ります。
この「位相のずれが \(2\pi\) の倍数」という条件式を整理すると、教科書に出てくる「経路差=波長の整数倍」という式と同じになります。
位相差からアプローチしても、全く同じブラッグの条件式 \(2d\sin\theta = n\lambda\) が得られました。
これは、幾何光学的な「経路差」という概念が、波動光学的な「位相差」の近似ではなく、等価な表現であることを裏付けています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- エネルギー保存則と光量子仮説
- 核心: 電子が電場で加速されて得た運動エネルギー \(K=eV\) が、衝突によって光子1個のエネルギー \(E=h\nu\) に変換される過程です。
- 理解のポイント:
- 連続X線の最短波長: 電子の全運動エネルギーが1個の光子に変わる「最大効率」のケースで発生します。
- 特性X線との違い: 特性X線は原子固有のエネルギー準位差に由来するため、加速電圧 \(V\) に依存しません。
- 波動の干渉条件(ブラッグの条件)
- 核心: 結晶格子面で反射されたX線同士が、経路差 \(2d\sin\theta\) に応じて強め合う(同位相になる)現象です。
- 理解のポイント:
- 経路差の幾何学: 図を描いて、直角三角形の辺の長さとして経路差を視覚的に捉えることが重要です。
- 反射次数 \(n\): \(n=1, 2, 3\dots\) と増えるごとに、経路差が波長の1倍、2倍、3倍…となり、より深い角度で反射が起こります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- コンプトン効果: X線と電子の衝突において、エネルギーだけでなく運動量も保存される現象です。光子の粒子性がより顕著に現れます。
- 電子線の回折: X線(光)ではなく電子(粒子)を波として扱い、ド・ブロイ波長 \(\lambda = h/mv\) を用いてブラッグの条件を適用する問題です。
- 初見の問題での着眼点:
- エネルギー変換の方向: 「電気エネルギー \(\to\) 運動エネルギー \(\to\) 光エネルギー」という流れを矢印で書き出し、各段階での保存則を立式します。
- 干渉の幾何学: 回折格子や薄膜干渉など、波の干渉問題では必ず「経路差」を作図し、直角三角形を見つけて長さを計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 角度 \(\theta\) の定義ミス:
- 誤解: 光学のスネルの法則(屈折)に慣れていると、うっかり「法線とのなす角」を \(\theta\) としてしまい、\(\sin\theta\) ではなく \(\cos\theta\) を使ってしまう。
- 対策: 問題文の図を指差し確認し、「結晶面とのなす角」であることを強く意識します。ブラッグ反射では常に「面との角」が主役です。
- 単位の換算ミス:
- 誤解: オングストローム(\(\text{Å} = 10^{-10}\,\text{m}\))やナノメートル(\(\text{nm} = 10^{-9}\,\text{m}\))などの単位を、メートルに直さずに計算してしまう。
- 対策: 計算の最初に全ての物理量をSI単位系(\(\text{m}, \text{kg}, \text{s}, \text{A}\))に統一する習慣をつけます。特にプランク定数 \(h\) や光速 \(c\) を使うときは必須です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)でのエネルギー保存則 \(eV = hc/\lambda\) の選択:
- 選定理由: 電子の運動エネルギーと光子のエネルギーを直接結びつける最も基本的かつ強力な法則だからです。
- 適用根拠: 電子が陽極に衝突して停止するまでの過程で、エネルギーの散逸(熱などへの転化)を無視し、全てが光子1個に変わるという「最短波長」の条件が明示されているためです。
- 問(2)でのブラッグの条件 \(2d\sin\theta = n\lambda\) の選択:
- 選定理由: 結晶によるX線回折現象を記述する専用の公式であり、経路差の幾何学的導出がそのまま式の形になっているため、直感的で間違いにくいからです。
- 適用根拠: X線が結晶内部まで侵入し、多数の原子面で反射・干渉するという物理モデルが、問題の設定(図2)と完全に一致しているためです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数計算の分離:
- 意識: \(10^{-34}\) や \(10^8\) などの巨大・極小な数字を混ぜて計算するとミスが多発します。
- 実践: 仮数部(\(6.6 \times 3.0 / 1.6\) など)と指数部(\(10^{-34+8-(-19)}\) など)を完全に分けて計算し、最後に合体させます。
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 答えが出た後、その単位が求めている物理量と合っているか確認します。
- 実践: 波長 \(\lambda\) なら \([\text{m}]\)、エネルギー \(E\) なら \([\text{J}]\) になっているか。例えば \(hc/eV\) の単位を計算して \([\text{m}]\) になることを確認すれば、式の形が正しいという強力な証拠になります。
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問題152 コンプトン効果 (25 熊本大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)(2)の別解: 微積分(力積と仕事)を用いた体系的解法
- 模範解答がエネルギー保存則と運動量保存則を既知の公式として当てはめて立式するのに対し、別解では光子と電子の間に働く相互作用(力)を仮定し、ニュートンの運動方程式と仕事・エネルギーの定理の積分から、保存則そのものを原理的に導出します。
- 設問(3)の別解: 運動量ベクトル図と余弦定理を用いた解法
- 模範解答が運動量のx成分とy成分の式をそれぞれ2乗して足し合わせるのに対し、別解では運動量保存則をベクトルのまま図示し、余弦定理を用いて一気に電子の運動量の大きさを求めます。
- 設問(1)(2)の別解: 微積分(力積と仕事)を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 「なぜ衝突の前後で保存則が成り立つのか」という物理の第一原理に立ち返ることで、公式の暗記に頼らない深い理解を促し、未知の現象にも対応できる応用力を養います。
- ベクトル図の解法: 複雑な三角関数の計算(\(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) の利用など)を回避し、視覚的・幾何学的に現象を捉えることで、計算ミスを減らし解答スピードを劇的に向上させます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンプトン効果における光子と電子の衝突」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光子の粒子性: X線を波長 \(\lambda\)、エネルギー \(hc/\lambda\)、運動量 \(h/\lambda\) を持つ「粒子(光子)」として扱います。
- エネルギー保存則: 衝突の前後で、系全体(光子と電子)のエネルギーの和は一定に保たれます。
- 運動量保存則: 衝突の前後で、系全体の運動量の和はベクトルとして一定に保たれます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問(1)では、衝突前後のエネルギーの総和を比較して等式を立てます。
- 問(2)では、運動量をx方向とy方向に成分分解し、それぞれの方向で保存則を立式します。
- 問(3)では、立てた連立方程式から観測にかからない電子の変数(速さと角度)を数学的に消去し、波長の変化量を導きます。
- 問(4)では、導出した公式に具体的な数値を代入して波長を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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