問題139 ベータトロン (25 横浜市大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(6)の別解: 等加速度運動の公式を用いた解法
- 模範解答が「運動量と力積の関係」を用いるのに対し、別解では運動方程式から加速度を求め、等加速度運動の公式を用いて速度変化を導出します。
- 設問(3)〜(7)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ファラデーの法則と運動方程式)
- 磁束の時間変化率(微分)から誘導電場を導出し、運動方程式と連立させることで、ベータトロンの加速条件(\(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\))を数学的に厳密かつ一気に導出します。
- 設問(6)の別解: 等加速度運動の公式を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 等加速度運動の解法: 力学の基本公式に帰着させることで、力積の概念に不慣れな場合でも解ける安心感を与えます。
- 微積分の解法: 「なぜ磁場が変化すると加速するのか」「なぜ半径を一定に保てるのか」という物理的メカニズムを、個別の設問に分断されることなく、一つの物理モデルとして統合的に理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ベータトロン(円形加速器)の原理」です。
磁場を変化させることで生じる誘導起電力を利用して荷電粒子を加速し、同時にローレンツ力によって円軌道を維持する仕組みを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子は、速度と磁場の両方に垂直な力を受けます。これが円運動の向心力となります。
- ファラデーの電磁誘導の法則: 閉回路(粒子の軌道)を貫く磁束が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じます。
- 誘導電場: 誘導起電力は、空間に生じた渦状の電場(誘導電場)によって生じます。この電場が粒子を加速させます。
- 運動量と力積: 粒子が電場から受ける力によって、運動量が変化します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、一様な磁場中での等速円運動の基本式(運動方程式)を立てます。
- (3)〜(6)では、磁場の変化によって生じる誘導起電力と電場を求め、それによる粒子の加速(速度変化)を計算します。
- (7)(8)では、加速後も同じ半径で円運動を続けるための条件(ベータトロン条件)を導き、磁場の一様変化ではその条件を満たせないことを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
磁場中を運動する荷電粒子にはたらく力、すなわちローレンツ力の公式を適用します。
この設問における重要なポイント
- ローレンツ力の公式: 電荷 \(q\)、速さ \(v\)、磁束密度 \(B\) が互いに垂直な場合、力の大きさは \(f = qvB\) です。
具体的な解説と立式
図1より、粒子(電荷 \(q\)、速さ \(v_0\))は、磁束密度 \(B_0\) の一様な磁場中を運動しています。
速度ベクトルと磁場ベクトルは垂直であるため、ローレンツ力の大きさ \(f_0\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
f_0 &= q v_0 B_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ローレンツ力: \(f = qvB\)
立式そのものが答えとなります。
磁石の間を電気が流れると力が働くのと同じで、磁場の中を電気の粒が飛ぶと力を受けます。その力の大きさは、電気の量、スピード、磁場の強さの掛け算で決まります。
基本的な公式通りの結果です。次元を確認すると、\([\text{C}] \cdot [\text{m/s}] \cdot [\text{T}] = [\text{A}\cdot\text{s}] \cdot [\text{m/s}] \cdot [\text{N}/(\text{A}\cdot\text{m})] = [\text{N}]\) となり、力の次元を持っています。
問(2)
思考の道筋とポイント
粒子はローレンツ力を向心力として等速円運動を行います。
円運動の運動方程式を立てて半径 \(R\) を求めます。
回転の向きは、ローレンツ力の向き(中心方向)と速度の向きの関係から、フレミングの左手の法則を用いて判断します。
この設問における重要なポイント
- 円運動の運動方程式: 質量 \(m\)、速さ \(v\)、半径 \(R\) のとき、\(m \frac{v^2}{R} = F\)(向心力)。
- フレミングの左手の法則: 中指(電流=正電荷の速度方向)、人差し指(磁場)、親指(力)。
具体的な解説と立式
1. 回転の向き
図1において、磁場は「紙面の表から裏」の向きです。
粒子(正電荷)の速度 \(v_0\) は「右向き」です。
フレミングの左手の法則を適用します。
- 人差し指(磁場):紙面の裏向き
- 中指(電流):右向き
- 親指(力):上向き
速度が右向きのときに力が上向き(進行方向左側)にはたらくため、軌道は左に曲がり続けます。
したがって、紙面の上側から見て「反時計回り」に回転します。
2. 円運動の半径
ローレンツ力 \(f_0 = q v_0 B_0\) が向心力となります。
半径方向の運動方程式を立式します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_0^2}{R} &= q v_0 B_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 等速円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{r} = F\)
運動方程式を \(R\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{m v_0}{R} &= q B_0 \\[2.0ex]
R &= \frac{m v_0}{q B_0}
\end{aligned}
$$
ボールに紐をつけてぐるぐる回すとき、紐が引っ張る力が向心力です。ここではローレンツ力がその紐の役割をしています。
力の向きを左手で確認すると、常に進行方向の左側に引っ張られることがわかります。右に進んで左に曲がるなら、それは反時計回りです。
半径は、遠心力(慣性)と引き合う力(ローレンツ力)のバランスで決まります。
半径 \(R\) は質量 \(m\) や速さ \(v_0\) に比例し、磁場 \(B_0\) や電荷 \(q\) に反比例します。重いほど、速いほど曲がりにくく(半径大)、磁場が強いほど曲がりやすい(半径小)ため、物理的に妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
ここから磁場が変化します。
軌道の内側(面積 \(S = \pi R^2\))を貫く磁束 \(\Phi\) の変化量を計算します。
問題文の図2にあるように、内側の磁束密度は \(B_0\) から \(B_0 + \Delta B_1\) に変化します。
この設問における重要なポイント
- 磁束の定義: 一様な磁場中では、磁束 \(\Phi = B S\) です。
- 変化量の定義: \(\Delta \Phi = \Phi_{\text{後}} – \Phi_{\text{前}}\)。
具体的な解説と立式
円軌道の面積を \(S\) とすると、\(S = \pi R^2\) です。
変化前の磁束 \(\Phi_0\) と、変化後の磁束 \(\Phi_1\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Phi_0 &= B_0 S \\[2.0ex]
\Phi_1 &= (B_0 + \Delta B_1) S
\end{aligned}
$$
磁束の変化量 \(\Delta \Phi\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= \Phi_1 – \Phi_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 磁束: \(\Phi = BS\)
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= (B_0 + \Delta B_1) S – B_0 S \\[2.0ex]
&= \Delta B_1 S \\[2.0ex]
&= \Delta B_1 \pi R^2
\end{aligned}
$$
ここで、(2)の結果 \(R = \frac{m v_0}{q B_0}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= \pi \left( \frac{m v_0}{q B_0} \right)^2 \Delta B_1
\end{aligned}
$$
円の内側を通る磁力線の総本数(磁束)がどれだけ増えたかを計算します。
面積は変わらず、磁場の強さだけが増えたので、増えた分の磁場に面積を掛ければ、増えた磁束の量が求まります。
磁束の変化量は、磁場の増加量 \(\Delta B_1\) に比例します。面積 \(S\) が大きいほど変化量も大きくなるため妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
磁束が変化すると、ファラデーの電磁誘導の法則により、軌道に沿って誘導起電力が生じます。
粒子の軌道を「1巻きのコイル」とみなして計算します。
この設問における重要なポイント
- ファラデーの電磁誘導の法則: 誘導起電力の大きさ \(V\) は、磁束の時間変化率に比例します。\(V = |- N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}|\)。ここでは \(N=1\) です。
具体的な解説と立式
粒子の軌道を1巻きの閉回路とみなします。
時間 \(\Delta t\) の間に磁束が \(\Delta \Phi\) だけ変化したので、生じる誘導起電力の大きさ \(V\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
V &= \left| – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right| \\[2.0ex]
&= \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
(3)の結果を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{1}{\Delta t} \cdot \pi \left( \frac{m v_0}{q B_0} \right)^2 \Delta B_1 \\[2.0ex]
&= \frac{\pi}{\Delta t} \left( \frac{m v_0}{q B_0} \right)^2 \Delta B_1
\end{aligned}
$$
磁束の変化は、回路に電圧(起電力)を生み出します。
変化にかかった時間 \(\Delta t\) で割ることで、その電圧の大きさが求まります。
時間が短いほど(急激に変化するほど)、大きな電圧が発生します。これは電磁誘導の基本的な性質と一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
誘導起電力 \(V\) は、軌道上に生じた誘導電場 \(E\) が粒子を一周押す仕事に相当します。
対称性から、円軌道上の電場 \(E\) の大きさはどこでも一定と考えられます。
この設問における重要なポイント
- 電位差と電場の関係: 一様な電場中での関係式 \(V = Ed\) を円周に適用します。ここでの \(d\) は円周の長さ \(2\pi R\) です。
- 物理的意味: 起電力 \(V\) は、単位電荷が一周したときに電場からされる仕事です。
具体的な解説と立式
軌道上の誘導電場の大きさを \(E\) とします。
円軌道一周の長さは \(2\pi R\) です。
起電力 \(V\) と電場 \(E\) の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
V &= E \cdot 2\pi R
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電場と電位差: \(V = Ed\) (ここでは \(V = \oint E dl\))
\(E\) について解き、(4)の結果と \(R = \frac{m v_0}{q B_0}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{V}{2\pi R} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2\pi R} \cdot \frac{\pi R^2 \Delta B_1}{\Delta t} \\[2.0ex]
&= \frac{R \Delta B_1}{2 \Delta t}
\end{aligned}
$$
これに \(R\) の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{2 \Delta t} \left( \frac{m v_0}{q B_0} \right) \Delta B_1 \\[2.0ex]
&= \frac{m v_0 \Delta B_1}{2 q B_0 \Delta t}
\end{aligned}
$$
先ほど求めた電圧 \(V\) は、コースを一周したときのトータルの「加速エネルギー(単位電荷あたり)」です。
これをコースの長さ(円周)で割れば、1メートルあたりの加速力、つまり電場の強さが求まります。
電場は半径 \(R\) に比例します。中心から離れるほど、磁束の変化の影響を強く受けるためです。
問(6)
思考の道筋とポイント
粒子はこの誘導電場 \(E\) から静電気力 \(F = qE\) を受け、加速されます。
時間 \(\Delta t\) の間の速度変化 \(\Delta v\) を求めます。
「運動量と力積の関係」を用いるのが最も直接的です。
この設問における重要なポイント
- 運動量と力積の関係: 運動量の変化量は、受けた力積(力 \(\times\) 時間)に等しい。
\(m v_{\text{後}} – m v_{\text{前}} = F \Delta t\)
具体的な解説と立式
粒子が受ける力(接線方向)は \(F = qE\) です。
この力が時間 \(\Delta t\) の間はたらきます。
運動量と力積の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
m \Delta v &= (qE) \Delta t
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動量と力積: \(\Delta p = F \Delta t\)
- 静電気力: \(F = qE\)
(5)の結果を代入して \(\Delta v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m \Delta v &= q \left( \frac{m v_0 \Delta B_1}{2 q B_0 \Delta t} \right) \Delta t \\[2.0ex]
m \Delta v &= \frac{m v_0 \Delta B_1}{2 B_0}
\end{aligned}
$$
両辺を \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= \frac{v_0 \Delta B_1}{2 B_0}
\end{aligned}
$$
電気の粒は、電場から力を受けて背中を押されます。
「力 \(\times\) 時間」の分だけ、粒子の勢い(運動量)が増えます。そこからスピードがどれだけ増えたかを計算します。
速度の増加分 \(\Delta v\) は、内側の磁場増加量 \(\Delta B_1\) に比例します。磁場を強くすればするほど、より加速できることがわかります。
思考の道筋とポイント
運動方程式から加速度 \(a\) を求め、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて速度変化を計算します。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 等加速度運動の速度式: \(v = v_0 + at\) または \(\Delta v = a \Delta t\)
具体的な解説と立式
接線方向の運動方程式を立てます。
$$
\begin{aligned}
ma &= qE
\end{aligned}
$$
これより加速度 \(a\) を求め、速度の変化量 \(\Delta v\) の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= a \Delta t
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 等加速度運動: \(v = v_0 + at\)
運動方程式より加速度 \(a\) は、
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{qE}{m}
\end{aligned}
$$
これを \(\Delta v\) の式に代入し、さらに(5)の \(E\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= \frac{qE}{m} \Delta t \\[2.0ex]
&= \frac{q}{m} \left( \frac{m v_0 \Delta B_1}{2 q B_0 \Delta t} \right) \Delta t \\[2.0ex]
&= \frac{v_0 \Delta B_1}{2 B_0}
\end{aligned}
$$
力積を使わずに、「力 \(\rightarrow\) 加速度 \(\rightarrow\) 速度変化」という力学の王道ルートで計算しました。
一定の力(電場)を受け続けるので、粒子は等加速度運動をします。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。
問(7)
思考の道筋とポイント
加速後の状態(速さ \(v_0 + \Delta v\)、軌道上の磁束密度 \(B_0 + \Delta B_2\))においても、粒子が同じ半径 \(R\) で円運動するための条件を求めます。
加速後の運動方程式を立て、(6)の結果と結びつけます。
この設問における重要なポイント
- 半径一定の条件: 加速前後で円運動の半径 \(R\) が変わらないこと。
- 軌道上の磁場: ローレンツ力を決めるのは、粒子がいる場所(軌道上)の磁束密度 \(B_0 + \Delta B_2\) です。内側の \(B_0 + \Delta B_1\) ではないことに注意が必要です。
具体的な解説と立式
加速後の速さを \(v’ = v_0 + \Delta v\)、軌道上の磁束密度を \(B’ = B_0 + \Delta B_2\) とします。
半径 \(R\) で円運動するための運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m \frac{(v_0 + \Delta v)^2}{R} &= q(v_0 + \Delta v)(B_0 + \Delta B_2)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 円運動の運動方程式: \(m \frac{v^2}{R} = qvB\)
両辺を \(v_0 + \Delta v\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{m}{R}(v_0 + \Delta v) &= q(B_0 + \Delta B_2)
\end{aligned}
$$
ここで、初期状態の半径の式 \(R = \frac{m v_0}{q B_0}\) より、\(\frac{m}{R} = \frac{q B_0}{v_0}\) であることを利用して代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{q B_0}{v_0}(v_0 + \Delta v) &= q(B_0 + \Delta B_2)
\end{aligned}
$$
両辺を \(q\) で割り、展開します。
$$
\begin{aligned}
B_0 + \frac{B_0}{v_0} \Delta v &= B_0 + \Delta B_2 \\[2.0ex]
\frac{B_0}{v_0} \Delta v &= \Delta B_2
\end{aligned}
$$
これより、\(\Delta v\) を \(\Delta B_2\) で表すと、
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= \frac{v_0}{B_0} \Delta B_2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
一方、(6)の結果より、
$$
\begin{aligned}
\Delta v &= \frac{v_0}{2 B_0} \Delta B_1 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
①と②が等しいとおき、\(\Delta B_1\) と \(\Delta B_2\) の関係を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_0}{B_0} \Delta B_2 &= \frac{v_0}{2 B_0} \Delta B_1 \\[2.0ex]
\Delta B_2 &= \frac{1}{2} \Delta B_1
\end{aligned}
$$
スピードアップした粒子が外に飛び出さずに同じコースを回り続けるには、より強い磁場で内側に引っ張る必要があります。
計算の結果、軌道上の磁場(ハンドルを切る役目)は、内側の磁場(アクセルを踏む役目)の半分のペースで増やせばよいことがわかりました。これがベータトロンを動かすための黄金比(ベータトロン条件)です。
\(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\) という非常にシンプルな関係が得られました。これは、加速に必要な磁束の変化と、軌道を維持するために必要な磁場の強さが密接に関係していることを示しています。
問(8)
思考の道筋とポイント
全領域で一様に磁場を増加させた場合、\(\Delta B_1 = \Delta B_2\) となります。
これが(7)で求めた条件 \(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\) とどう矛盾するか、その結果半径がどうなるかを考察します。
この設問における重要なポイント
- 条件の不一致: 一様変化(\(\Delta B_2 = \Delta B_1\))は、理想条件(\(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\))よりも \(\Delta B_2\) が大きすぎます。
- 物理的帰結: \(\Delta B_2\)(軌道上の磁場)は向心力(内側に引く力)を生み出します。これが理想より大きいということは、内側に引く力が強すぎることを意味します。
具体的な解説と立式
全領域で一様に \(\Delta B\) だけ増加させた場合、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta B_1 &= \Delta B \\[2.0ex]
\Delta B_2 &= \Delta B
\end{aligned}
$$
半径一定で円運動するために必要な軌道上の磁束密度の増加量 \(\Delta B_{\text{必要}}\) は、(7)より以下のように求まります。
$$
\begin{aligned}
\Delta B_{\text{必要}} &= \frac{1}{2} \Delta B_1 = \frac{1}{2} \Delta B
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ベータトロン条件: \(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\)
実際の増加量 \(\Delta B_2 = \Delta B\) と、必要な増加量 \(\Delta B_{\text{必要}} = \frac{1}{2} \Delta B\) を比較します。
$$
\begin{aligned}
\Delta B &> \frac{1}{2} \Delta B
\end{aligned}
$$
したがって、軌道上の磁場が強すぎます。
軌道上の磁場が強すぎるため、ローレンツ力(向心力)が必要以上に大きくなり、粒子は内側に強く引き寄せられます。
したがって、円運動の半径は小さくなります。
もし磁場を全体で同じように強くしてしまうと、スピードアップの効果に対して、内側に引っ張る力(ハンドルの切れ角)が強くなりすぎてしまいます。
その結果、粒子は内側へ内側へと巻き込まれていき、半径は小さくなってしまいます。
ベータトロンにおいて、内側の磁極と外側の磁極の形状を変えて磁束密度を調整する必要があるのは、このためです。
変化: 小さくなる
思考の道筋とポイント
ファラデーの法則の微分形と運動方程式を連立させ、半径 \(r\) が時間変化しない条件(\(\frac{dr}{dt}=0\))を数学的に導出します。これにより、ベータトロン条件が物理原理から必然的に導かれることを見ます。
この設問における重要なポイント
- ファラデーの法則(積分形): \(\oint \vec{E} \cdot d\vec{l} = – \frac{d\Phi}{dt}\)
- 運動方程式(接線方向と半径方向): 接線方向で加速し、半径方向で釣り合います。
具体的な解説と立式
円軌道の半径を \(r(t)\)、速さを \(v(t)\)、軌道内の全磁束を \(\Phi(t)\)、軌道上の磁束密度を \(B(t)\) とします。
1. 誘導電場の導出
ファラデーの法則より、円周上の誘導電場 \(E\)(接線方向)を立式します。
$$
\begin{aligned}
E \cdot 2\pi r &= – \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
これより \(E\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= – \frac{1}{2\pi r} \frac{d\Phi}{dt}
\end{aligned}
$$
(負号はレンツの法則による向きを表します。大きさとしては絶対値を考えます)
2. 接線方向の運動方程式(加速)
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= q |E| \\[2.0ex]
&= \frac{q}{2\pi r} \frac{d\Phi}{dt} \quad \cdots (A)
\end{aligned}
$$
3. 半径方向の運動方程式(向心力)
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= q v B \quad \cdots (B)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ファラデーの法則: \(\oint E dl = – \frac{d\Phi}{dt}\)
- 運動方程式: \(F = ma\)
- 微分の積の法則: \(\frac{d}{dt}(uv) = u’v + uv’\)
(B)式より、運動量 \(mv = qBr\) です。これを時間 \(t\) で微分します。
ここで「半径 \(r\) が一定(\(\frac{dr}{dt}=0\))」という条件を課します。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{dt}(mv) &= \frac{d}{dt}(qBr) \\[2.0ex]
m \frac{dv}{dt} &= qr \frac{dB}{dt} \quad \cdots (C)
\end{aligned}
$$
(A)式と(C)式の左辺は共に \(m \frac{dv}{dt}\) なので、右辺同士を等しいとおきます。
$$
\begin{aligned}
\frac{q}{2\pi r} \frac{d\Phi}{dt} &= qr \frac{dB}{dt}
\end{aligned}
$$
両辺を \(q\) で割り、整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{d\Phi}{dt} &= 2\pi r^2 \frac{dB}{dt}
\end{aligned}
$$
両辺を時間 \(\Delta t\) で積分(あるいは微小変化量をとる)すると、
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= 2\pi r^2 \Delta B
\end{aligned}
$$
ここで、\(\Delta \Phi\) は軌道内側の磁束変化(\(\pi r^2 \Delta B_1\))、\(\Delta B\) は軌道上の磁束密度変化(\(\Delta B_2\))に対応します。
$$
\begin{aligned}
\pi r^2 \Delta B_1 &= 2\pi r^2 \Delta B_2 \\[2.0ex]
\Delta B_1 &= 2 \Delta B_2 \\[2.0ex]
\Delta B_2 &= \frac{1}{2} \Delta B_1
\end{aligned}
$$
これにより、ベータトロン条件 \(\Delta B_2 = \frac{1}{2} \Delta B_1\) が一気に導かれました。
「加速によって増える運動量」と「磁場強化によって増える向心力に必要な運動量」がぴったり一致する条件を探しました。
数式を解くと、「内側の磁束の変化率」が「外側の磁場の変化率の2倍」であれば、半径を変えずに加速し続けられることがわかります。
微積分を用いることで、個別の設問を解くことなく、物理原理から直接的に結論を導くことができました。これは物理法則の整合性を示す強力な証拠です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ベータトロンの加速原理(電磁誘導とローレンツ力の協調)
- 核心: 磁束の変化によって生じる誘導電場で粒子を加速しつつ、同時に磁場を強めることでローレンツ力を増大させ、高速化した粒子を同じ半径の軌道に閉じ込める。
- 理解のポイント:
- 加速のメカニズム: ファラデーの法則により、磁束 \(\Phi\) の時間変化が渦電流のような誘導電場 \(E\) を生み、これが粒子を接線方向に加速する。
- 軌道維持のメカニズム: 速度 \(v\) が増すと必要な向心力 \(mv^2/R\) も増えるため、軌道上の磁場 \(B\) も同時に強くしてローレンツ力 \(qvB\) を増やす必要がある。
- 運動量と力積、および運動方程式の等価性
- 核心: 粒子の速度変化を求める際、「力 \(\times\) 時間 = 運動量の変化」と考える方法(力積)と、「力 \(\div\) 質量 = 加速度」から速度を求める方法(運動方程式)は、数学的に完全に等価である。
- 理解のポイント:
- 使い分け: 力が一定なら等加速度運動の公式が直感的だが、力が時間変化する場合は力積(積分の考え方)の方が汎用性が高い。本問では一定なのでどちらでも解ける。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- サイクロトロン: 磁場は一定で電場(交流電圧)で加速するタイプ。ベータトロン(磁場で加速)との対比で出題されることが多い。半径が広がるか一定かの違いに着目する。
- 変動磁場中の導体棒: 磁場が時間変化する中で導体棒が動く問題。誘導起電力が「磁束の変化(\(V = -d\Phi/dt\))」と「ローレンツ力(\(V = vBl\))」の2つの要因で生じる点を整理する。
- 初見の問題での着眼点:
- 「どこ」の磁場か?: 磁束 \(\Phi\) を計算するための「内側の磁場」と、ローレンツ力 \(f\) を計算するための「軌道上の磁場」を明確に区別する。記号(\(B_1, B_2\) など)に惑わされず、物理的な場所を意識する。
- 変化の前後関係: 「加速前」と「加速後」の運動方程式をそれぞれ立て、変化量(\(\Delta v, \Delta B\))を含む式に変形して差分をとるアプローチが有効。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 磁束 \(\Phi\) と磁束密度 \(B\) の混同:
- 誤解: ファラデーの法則 \(V = -\Delta \Phi/\Delta t\) に、うっかり \(B\) をそのまま代入してしまう(面積 \(S\) を掛け忘れる)。
- 対策: 単位を確認する習慣をつける。\(B\) はテスラ [T]、\(\Phi\) はウェーバ [Wb] = [T\(\cdot\)m\(^2\)]。必ず面積を掛けて「総量」にしてから時間変化をとる。
- 誘導起電力 \(V\) と誘導電場 \(E\) の関係:
- 誤解: \(V = E\) と思い込んでしまう。
- 対策: 電場 \(E\) は「1mあたりの電圧」、起電力 \(V\) は「一周分の電圧」である。円軌道なら \(V = E \times 2\pi R\) という関係(\(V=Ed\) の円周版)を必ず図を描いて確認する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 微小変化を用いた代数解法(メイン解法):
- 選定理由: 高校物理の標準的な範囲内で、微積分を使わずに現象を理解できるため。また、入試問題の誘導がこの形式(\(\Delta\) を使う形式)に従っているため。
- 適用根拠: 磁場の変化率が一定(\(\Delta B/\Delta t = \text{一定}\))であるため、平均の変化率を用いた計算が瞬時の変化率と一致し、厳密解と同じ結果が得られる。
- 微積分を用いた体系的解法(別解):
- 選定理由: 複数の設問(誘導起電力、電場、加速、半径維持)が、実は「運動方程式」と「ファラデーの法則」という2つの基本原理から一発で導けることを示すため。
- 適用根拠: 物理現象の本質は微分方程式(瞬間の釣り合いと変化)にある。特に「半径一定」という条件を \(\frac{dr}{dt}=0\) として数式に組み込める点が強力である。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 添字の管理(\(B_0, B_1, B_2\)):
- 意識: 似たような記号が多く出る問題では、添字の取り違えが致命傷になる。
- 実践: 計算用紙の隅に「\(1\): 内側(磁束用)」「\(2\): 軌道上(力用)」とメモ書きし、式を立てるたびに指差し確認する。
- 次元解析による検算:
- 意識: 複雑な分数式になったとき、単位が合っているか確認する。
- 実践: 例えば(6)の \(\Delta v = \frac{v_0 \Delta B_1}{2 B_0}\) なら、右辺は \([\text{m/s}] \times [\text{T}] / [\text{T}] = [\text{m/s}]\) となり、速度の次元になっているので、計算ミスの可能性が低いと判断できる。
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問題140 磁場中を運動する導体棒 (21 同志社大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(エ)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
- 模範解答が仕事の定義から計算するのに対し、別解では「電池の仕事=位置エネルギーの増加+ジュール熱」というエネルギー収支の観点から導出します。
- 各設問の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と回路方程式の連立)
- 各端子(抵抗、電池、コンデンサー、コイル)に接続された状態において、運動方程式と回路方程式を連立させた微分方程式を立式します。これにより、終端速度、等加速度運動、単振動といった異なる運動形態が、一つの物理的枠組み(微分方程式の解)として統一的に理解できます。
- 設問(エ)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- エネルギー保存則: 計算量が減り、検算としても有効です。
- 微積分の解法: 「なぜコンデンサーだと等加速度運動になるのか」「なぜコイルだと単振動するのか」という現象の本質を、数式の形から深く理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「電磁誘導と力学の融合(導体棒の運動)」です。
磁場中を運動する導体棒に生じる誘導起電力と、電流が磁場から受ける力を考慮し、おもりと連結された導体棒の運動を解析します。接続する素子(抵抗、電池、コンデンサー、コイル)によって導体棒の運動が劇的に変化する様子を追跡します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 誘導起電力: 速さ \(v\) で磁場 \(B\) を横切る長さ \(l\) の導体棒には、\(V = vBl\) の誘導起電力が生じます。向きはレンツの法則またはローレンツ力から判断します。
- 磁場からの力(アンペール力): 電流 \(I\) が流れる導体棒は、磁場から \(F = IBl\) の力を受けます。向きはフレミングの左手の法則で判断します。
- 運動方程式: 導体棒とおもりは糸でつながれて一体となって運動するため、それぞれの運動方程式を立てて連立させます。
- 回路方程式(キルヒホッフの法則): 接続された素子に応じた電圧と電流の関係式を立てます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア)(イ)では、抵抗接続時の電流と力のつり合いから終端速度を求めます。
- (ウ)(エ)では、電池接続時のモーターとしての挙動とエネルギー収支を考えます。
- (オ)では、コンデンサー接続時の電流と加速度の関係を導きます。
- (カ)〜(ク)では、コイル接続時の電流と位置の関係から単振動の方程式を導きます。
問(ア), (イ)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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