「物理重要問題集2026」徹底解説(112〜114問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題112 スイッチの切りかえによる電荷の移動 (17 大阪府大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)(3)の別解1: 電位(ノード電位)を用いた解法
      • 模範解答が各コンデンサーの電荷と電圧を変数として連立方程式を立てるのに対し、回路内の特定の点の「電位」を未知数とすることで、1変数の方程式で簡潔に解く手法です。
    • 設問(2)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式)
      • スイッチを閉じた直後の過渡現象を微分方程式(回路方程式)で記述し、時間経過による電荷の移動を積分計算で追跡します。
    • 設問(4)の別解: 定常状態の物理的条件を用いた解法
      • 漸化式を立てて計算するのではなく、「電荷の移動が止まる=閉回路内の電位差の総和がゼロ」という物理的条件から、極限値を直接導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 電位の解法: 未知数が減るため計算ミスが激減し、回路全体の電圧分布が直感的に把握できます。
    • 微積分の解法: 「なぜ最終的にその電荷になるのか」というプロセスを運動方程式のように追えるため、物理現象への理解が深まります。
    • 定常条件の解法: 複雑な計算を回避し、物理的直感だけで瞬時に答えを導けるため、検算やスピード勝負に極めて有効です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「スイッチ操作に伴うコンデンサー回路の電荷移動と電位分布」です。
複数の電池とコンデンサーを含む回路で、スイッチの切り替えによって電荷がどのように再配分されるかを追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電気量保存則: 孤立した導体部分(スイッチで切り離された島)の電荷の総和は変化しません。
  • キルヒホッフの第2法則: 任意の閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しくなります(一周すると電位変化は \(0\))。
  • 電位の考え方: 回路の基準点(アース)を決めると、各点の「高さ(電位)」が決まり、計算が非常に楽になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)では、単純な充電回路として電荷と仕事を計算します。
  • (2)(3)では、スイッチ操作後の「孤立部分」に着目し、電気量保存則と電圧の関係式を連立させて解きます。
  • (4)では、操作を繰り返した果てにある「定常状態」を考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
スイッチ \(\text{S}_1\) を閉じて十分時間が経過した状態を考えます。
回路図(全体図)の左側のループだけが閉じています。
電池 \(\text{E}_1\)(起電力 \(V_0\))によってコンデンサー \(\text{C}_1\) が充電されます。

この設問における重要なポイント

  • 定常状態: 十分時間が経過すると電流は \(0\) になり、コンデンサーの極板間電圧は電池の起電力と等しくなります。
  • 電池の仕事: 電池が運んだ電気量を \(Q\) とすると、仕事は \(W = QV\) で表されます。

具体的な解説と立式
スイッチ \(\text{S}_1\) を閉じると、電池 \(\text{E}_1\)、抵抗 \(\text{R}\)、コンデンサー \(\text{C}_1\) からなる閉回路が形成されます。
十分時間が経過すると充電が完了し、電流は流れなくなります。
このとき、抵抗 \(\text{R}\) での電圧降下は \(0\) なので、\(\text{C}_1\) の極板間電圧 \(V_1\) は電池電圧 \(V_0\) と等しくなります。

\(\text{C}_1\) に蓄えられる電気量 \(Q_1\) は、\(Q=CV\) より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= C V_0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
この充電過程で、電池 \(\text{E}_1\) は電気量 \(Q_1\) を負極から正極へ(電位の低い方から高い方へ)汲み上げました。
電池 \(\text{E}_1\) がした仕事 \(W_{\text{電池1}}\) は以下の式で求められます。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{電池1}} &= Q_1 \times V_0 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  • 電池の仕事: \(W = QV\)
計算過程

式①を式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{電池1}} &= (C V_0) \times V_0 \\[2.0ex]
&= C V_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

左側の回路がつながり、コンデンサー \(\text{C}_1\) が電池 \(\text{E}_1\) と同じ電圧 \(V_0\) になるまで電気が溜まりました。
電池は、溜まった電気の量 \(Q_1\) だけ、電圧 \(V_0\) の坂道を「せっせと持ち上げた」ことになります。そのエネルギー(仕事)を計算しました。

結論と吟味

答えは \(C V_0^2\) [\(\text{J}\)] です。
コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーは \(U = \frac{1}{2}CV_0^2\) なので、電池がした仕事の半分がエネルギーとして蓄えられ、残り半分は充電中に抵抗でジュール熱として消費されたことがわかります。これは物理的に妥当な結果です。

解答 (1) \(C V_0^2\) [\(\text{J}\)]

問(2)

思考の道筋とポイント
次に \(\text{S}_1\) を開き、\(\text{S}_2\) を閉じます。
これにより、左のループは切れ、右側の電池 \(\text{E}_2\)(起電力 \(2V_0\))を含む大きなループが形成されます。
ここで最も重要なのは、\(\text{S}_1\) を開いたことで「\(\text{C}_1\) の上極板と \(\text{C}_2\) の上極板をつなぐ導線部分」が電気的に孤立することです。

この設問における重要なポイント

  • 電気量保存則: 孤立部分(点線で囲まれた部分)の電荷の総和は、スイッチ切り替え前後で保存されます。
  • キルヒホッフの法則: 新しくできた閉回路において、一周の電位変化は \(0\) です。
  • 極性の定義: 電荷や電圧の向きを自分で定義し、その定義に従って正負を厳密に扱う必要があります。

具体的な解説と立式
1. 状態の定義
\(\text{S}_2\) を閉じた後の状態(図b)において、\(\text{C}_1\) の電圧を \(V_1’\)、\(\text{C}_2\) の電圧を \(V_2’\) とします。
模範解答の図bにならい、極性を以下のように定義します。

  • \(\text{C}_1\): 下極板を \(+Q_1’\)、上極板を \(-Q_1’\) とする(電圧 \(V_1’\) は下が正)。
  • \(\text{C}_2\): 上極板を \(+Q_2’\)、下極板を \(-Q_2’\) とする(電圧 \(V_2’\) は上が正)。

※ \(\text{C}_1\) の極性を反転させて定義している点に注意してください。

2. 電気量保存則の立式
孤立部分(\(\text{C}_1\) の上極板と \(\text{C}_2\) の上極板)に着目します。

  • 初期状態: (1)より、\(\text{C}_1\) の上極板には \(+CV_0\) の電荷がありました。\(\text{C}_2\) は空(\(0\))でした。
    総電荷 \(= +CV_0\)
  • 最終状態: 定義より、\(\text{C}_1\) 上極板は \(-Q_1’\)、\(\text{C}_2\) 上極板は \(+Q_2’\) です。
    総電荷 \(= -Q_1′ + Q_2′ = -CV_1′ + CV_2’\)

保存則より:
$$
\begin{aligned}
-CV_1′ + CV_2′ &= CV_0 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

3. キルヒホッフの第2法則の立式
新しくできた閉回路(\(\text{E}_2 \to \text{C}_1 \to \text{R} \to \text{S}_2 \to \text{C}_2 \to \text{E}_2\))を、反時計回りに一周します。

  • \(\text{E}_2\): 負極から正極へ通る(左が正) \(\rightarrow\) 電位 \(+2V_0\) 上昇
  • \(\text{C}_1\): 下(正)から上(負)へ通る \(\rightarrow\) 電位 \(V_1’\) 降下
  • \(\text{C}_2\): 上(正)から下(負)へ通る \(\rightarrow\) 電位 \(V_2’\) 降下

キルヒホッフの式:
$$
\begin{aligned}
2V_0 – V_1′ – V_2′ &= 0 \\[2.0ex]
V_1′ + V_2′ &= 2V_0 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

4. 電池 \(\text{E}_2\) の仕事
電池 \(\text{E}_2\) を通過した電気量を考えます。
\(\text{C}_2\) の下極板に着目すると、初期電荷 \(0\) から最終電荷 \(-Q_2’\) に変化しました。
これは、導線を通じて \(-Q_2’\) の電荷が流れ込んだ、つまり電池 \(\text{E}_2\) の負極から \(-Q_2’\) が出たことを意味します。
電池内部では、負極から正極へ \(-Q_2’\) が移動した、すなわち「正極から負極へ \(+Q_2’\) が移動した」ことと等価に見えますが、仕事をするのは「起電力の向き(負\(\to\)正)に正電荷を運ぶ」ときです。
ここでは、回路全体を反時計回りに電流が流れ、正電荷 \(Q_2’\) が電池の正極から送り出されたと考えられます。
よって、電池 \(\text{E}_2\) がした仕事 \(W_{\text{電池2}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{電池2}} &= Q_2′ \times 2V_0 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電気量保存則: \(Q_{\text{後}} = Q_{\text{前}}\)
  • キルヒホッフの第2法則: \(\sum V = 0\)
  • 電池の仕事: \(W = QV\)
計算過程

式③の両辺を \(C\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
-V_1′ + V_2′ &= V_0 \quad \cdots ③’
\end{aligned}
$$
式④と式③’を連立して解きます。
$$
\begin{aligned}
(V_1′ + V_2′) + (-V_1′ + V_2′) &= 2V_0 + V_0 \\[2.0ex]
2V_2′ &= 3V_0 \\[2.0ex]
V_2′ &= \frac{3}{2} V_0
\end{aligned}
$$
また、\(Q_2′ = C V_2’\) より、
$$
\begin{aligned}
Q_2′ &= \frac{3}{2} C V_0
\end{aligned}
$$
これを式⑤に代入して仕事を求めます。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{電池2}} &= \left( \frac{3}{2} C V_0 \right) \times 2V_0 \\[2.0ex]
&= 3 C V_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

スイッチを切り替えると、\(\text{C}_1\) と \(\text{C}_2\) が直列につながり、電圧 \(2V_0\) の電池 \(\text{E}_2\) で充電される形になります。
ただし、\(\text{C}_1\) には最初から電気が溜まっていたので、その分を考慮して計算する必要があります。「逃げ場のない電気の総量は変わらない」というルール(保存則)と、「回路一周の電圧バランス」というルール(キルヒホッフ)を組み合わせることで、新しい電圧が決まります。

結論と吟味

\(\text{C}_2\) の電位差は \(\frac{3}{2} V_0\) [\(\text{V}\)]、仕事は \(3 C V_0^2\) [\(\text{J}\)] です。
\(V_2′ = 1.5 V_0\) という値は、電池電圧 \(2V_0\) と初期電圧 \(V_0\) の影響が合わさった結果として妥当な大きさです。

解答 (2) 電位差: \(\displaystyle \frac{3}{2} V_0\) [\(\text{V}\)], 仕事: \(3 C V_0^2\) [\(\text{J}\)]
別解: 電位(ノード電位)を用いた解法

思考の道筋とポイント
回路の電位分布を可視化して解く方法です。
基準点(\(0\,\text{V}\))を決め、未知の点の電位を \(x\) と置くことで、連立方程式を使わずに一発で解くことができます。

この設問における重要なポイント

  • 電位の基準: 電池 \(\text{E}_2\) の負極(右端)を \(0\,\text{V}\) とします。
  • 各点の電位:
    • \(\text{E}_2\) の正極(左側)は \(+2V_0\) です。これが \(\text{C}_1\) の下極板の電位になります。
    • \(\text{C}_2\) の下極板は \(0\,\text{V}\) です。
    • 孤立部分(上側のライン)の電位を \(x\) [\(\text{V}\)] と置きます。

具体的な解説と立式
孤立部分(図cの点線枠内)の電気量保存則を立てます。
各コンデンサーの上極板にある電荷 \(Q\) は、\(Q = C(V_{\text{高}} – V_{\text{低}})\) で表せます。

  • \(\text{C}_1\) の上極板電荷: 電位 \(x\) と相手の電位 \(2V_0\) の差で決まります。
    \(Q_1′ = C(x – 2V_0)\)
  • \(\text{C}_2\) の上極板電荷: 電位 \(x\) と相手の電位 \(0\) の差で決まります。
    \(Q_2′ = C(x – 0)\)

保存則より、これらの和は初期電荷 \(+CV_0\)((1)の状態)と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
C(x – 2V_0) + C(x – 0) &= CV_0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • コンデンサーの電荷(電位差表示): \(Q = C(V_{\text{高}} – V_{\text{低}})\)
計算過程

式⑥を解いて \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
C(x – 2V_0 + x) &= CV_0 \\[2.0ex]
2x – 2V_0 &= V_0 \\[2.0ex]
2x &= 3V_0 \\[2.0ex]
x &= \frac{3}{2} V_0
\end{aligned}
$$
求める \(\text{C}_2\) の電位差は、上極板電位 \(x\) と下極板電位 \(0\) の差なので、
$$
\begin{aligned}
V_2′ &= x – 0 \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} V_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路の下側の電位を基準にすると、\(\text{C}_1\) の下側は \(2V_0\)、\(\text{C}_2\) の下側は \(0\) に固定されています。
真ん中の浮いている部分の電位 \(x\) がどうなるかを、「溜まっている電気の合計は変わらない」という式一つで計算しました。非常に見通しが良い方法です。

結論と吟味

メインの解法と全く同じ結果が得られました。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{3}{2} V_0\) [\(\text{V}\)]
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
スイッチを閉じた瞬間の過渡的な電流の変化を微分方程式(回路方程式)で記述し、時間が経って電流が止まった状態(定常状態)を導きます。
「なぜ電荷が移動するのか」「いつ移動が止まるのか」を根本から理解できます。

この設問における重要なポイント

  • 回路方程式: キルヒホッフの法則を、瞬時値(時間の関数)として立式します。
  • 電流と電荷の関係: 電流 \(i(t)\) は電荷の時間変化率 \(dq/dt\) です。

具体的な解説と立式
スイッチ \(\text{S}_2\) を閉じた時刻を \(t=0\) とします。
回路を反時計回りに流れる電流を \(i(t)\) とし、この電流によって運ばれた電気量の総量を \(q(t) = \int_0^t i(\tau) d\tau\) とします。

各コンデンサーの電荷(電流が流れ込む側の極板電荷)は以下のように表せます。

  • \(\text{C}_1\)(下極板): 初期電荷 \(-CV_0\) に \(q(t)\) が流入 \(\rightarrow q_{1\text{下}}(t) = -CV_0 + q(t)\)
  • \(\text{C}_2\)(上極板): 初期電荷 \(0\) に \(q(t)\) が流入 \(\rightarrow q_{2\text{上}}(t) = 0 + q(t) = q(t)\)

キルヒホッフの第2法則より、任意の時刻 \(t\) において以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力}) &= (\text{抵抗の電圧降下}) + (\text{コンデンサーの電圧降下}) \\[2.0ex]
2V_0 &= R i(t) + \frac{q_{1\text{下}}(t)}{C} + \frac{q_{2\text{上}}(t)}{C} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
※ ここでコンデンサーの電圧降下は、電流が流れ込む側を正とした電圧です。

使用した物理公式

  • 回路方程式: \(E = Ri + \frac{q}{C}\)
  • 電流の定義: \(i = \frac{dq}{dt}\)
計算過程

式⑦に電荷の式を代入します。
$$
\begin{aligned}
2V_0 &= R \frac{dq}{dt} + \frac{-CV_0 + q}{C} + \frac{q}{C} \\[2.0ex]
2V_0 &= R \frac{dq}{dt} – V_0 + \frac{2q}{C} \\[2.0ex]
3V_0 &= R \frac{dq}{dt} + \frac{2}{C} q
\end{aligned}
$$
十分時間が経過した定常状態(\(t \to \infty\))では、充電が完了して電流は止まります(\(\frac{dq}{dt} = i = 0\))。
このときの移動電気量を \(q_{\infty}\) とすると、
$$
\begin{aligned}
3V_0 &= 0 + \frac{2}{C} q_{\infty} \\[2.0ex]
q_{\infty} &= \frac{3}{2} C V_0
\end{aligned}
$$
最終的な \(\text{C}_2\) の電荷 \(Q_2’\) は \(q_{2\text{上}}(\infty) = q_{\infty}\) なので、
$$
\begin{aligned}
Q_2′ &= \frac{3}{2} C V_0
\end{aligned}
$$
電位差 \(V_2’\) は、
$$
\begin{aligned}
V_2′ &= \frac{Q_2′}{C} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} V_0
\end{aligned}
$$
また、電池 \(\text{E}_2\) の仕事は、起電力 \(2V_0\) が通過電気量 \(q_{\infty}\) に対して行った仕事なので、
$$
\begin{aligned}
W_{\text{電池2}} &= 2V_0 \times q_{\infty} \\[2.0ex]
&= 2V_0 \times \frac{3}{2} C V_0 \\[2.0ex]
&= 3 C V_0^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

回路方程式を立てると、「抵抗が電流を邪魔する力」と「コンデンサーが充電されて押し返す力」のバランスが見えてきます。
時間が経つと電流がゼロになるため、抵抗の項が消え、最終的な電荷のバランスだけが残ります。この方法なら、途中経過も含めて物理現象を完全に記述できます。

結論と吟味

微分方程式の定常解として、他の解法と同じ結果が自然に導かれました。

解答 (2) 電位差: \(\displaystyle \frac{3}{2} V_0\) [\(\text{V}\)], 仕事: \(3 C V_0^2\) [\(\text{J}\)]

問(3)

思考の道筋とポイント
操作は2段階あります。

  1. \(\text{S}_2\) を開き、\(\text{S}_1\) を閉じる:
    • 左ループが復活し、\(\text{C}_1\) が電池 \(\text{E}_1\) によって再充電されます。
    • \(\text{C}_2\) は切り離され、電荷を保持したまま待機します。
  2. \(\text{S}_1\) を開き、\(\text{S}_2\) を閉じる:
    • 再び右側の大きなループが形成され、電荷の再配分が起こります。

この設問における重要なポイント

  • リセット: 操作1により、\(\text{C}_1\) の状態は問(1)と同じ状態(電荷 \(CV_0\))にリセットされます。
  • 履歴の継承: \(\text{C}_2\) は問(2)で蓄えた電荷 \(Q_2′ = \frac{3}{2}CV_0\) を持ったまま、次の操作に参加します。

具体的な解説と立式
1. 操作1後の状態
\(\text{S}_1\) を閉じて十分時間が経つと、\(\text{C}_1\) は再び電圧 \(V_0\) に充電されます。

  • \(\text{C}_1\) 上極板電荷: \(+CV_0\)
  • \(\text{C}_2\) 上極板電荷: \(+Q_2′ = +\frac{3}{2}CV_0\) (問(2)の結果を保持)

2. 操作2後の状態定義
\(\text{S}_2\) を閉じた後の電圧を \(V_1”, V_2”\) とします。
模範解答図eにならい、極性を以下のように定義します。

  • \(\text{C}_1\): 下極板を \(+Q_1”\)、上極板を \(-Q_1”\)
  • \(\text{C}_2\): 上極板を \(+Q_2”\)、下極板を \(-Q_2”\)

3. 保存則とキルヒホッフの立式
孤立部分(上極板同士)の電荷保存則:
$$
\begin{aligned}
(\text{後の総電荷}) &= (\text{前の総電荷}) \\[2.0ex]
-Q_1” + Q_2” &= (+CV_0) + \left( +\frac{3}{2}CV_0 \right) \\[2.0ex]
-CV_1” + CV_2” &= \frac{5}{2} CV_0 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
キルヒホッフの法則(問(2)と同じ閉回路):
$$
\begin{aligned}
V_1” + V_2” &= 2V_0 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電気量保存則
  • キルヒホッフの第2法則
計算過程

式⑧の両辺を \(C\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
-V_1” + V_2” &= \frac{5}{2} V_0 \quad \cdots ⑧’
\end{aligned}
$$
式⑨と式⑧’を連立します。
$$
\begin{aligned}
(V_1” + V_2”) + (-V_1” + V_2”) &= 2V_0 + \frac{5}{2} V_0 \\[2.0ex]
2V_2” &= \frac{9}{2} V_0 \\[2.0ex]
V_2” &= \frac{9}{4} V_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

\(\text{C}_1\) は毎回 \(V_0\) に戻されますが、\(\text{C}_2\) は前回の電気を持ったままなので、回を追うごとに \(\text{C}_2\) に溜まる電気が増えていきます。
「\(\text{C}_1\) の新品の電気」と「\(\text{C}_2\) の持ち越しの電気」の合計が、新しい電圧バランスを決定します。

結論と吟味

答えは \(\frac{9}{4} V_0\) [\(\text{V}\)] です。
問(2)の \(1.5 V_0\) から \(2.25 V_0\) へと電圧が上昇しており、電荷が蓄積されていく様子がわかります。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{9}{4} V_0\) [\(\text{V}\)]
別解: 電位(ノード電位)を用いた解法

思考の道筋とポイント
問(2)の別解と同様に、孤立部分の電位 \(y\) を未知数として解きます。
初期電荷の総和が変わるだけで、考え方は全く同じです。

この設問における重要なポイント

  • 初期電荷の和: \(\text{C}_1\) の \(CV_0\) と、\(\text{C}_2\) の \(\frac{3}{2}CV_0\) の和になります。

具体的な解説と立式
孤立部分の電位を \(y\) [\(\text{V}\)] とします。
保存則の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{後の電荷}) &= (\text{前の電荷}) \\[2.0ex]
C(y – 2V_0) + C(y – 0) &= CV_0 + \frac{3}{2} CV_0
\end{aligned}
$$
左辺は問(2)と同じ(構造が変わらないため)、右辺は初期電荷の増加分を反映しています。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電荷(電位差表示): \(Q = C(V_{\text{高}} – V_{\text{低}})\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
C(2y – 2V_0) &= \frac{5}{2} CV_0 \\[2.0ex]
2y – 2V_0 &= \frac{5}{2} V_0 \\[2.0ex]
2y &= \frac{9}{2} V_0 \\[2.0ex]
y &= \frac{9}{4} V_0
\end{aligned}
$$
\(\text{C}_2\) の電位差は \(y – 0 = \frac{9}{4} V_0\) です。

この設問の平易な説明

問(2)と同じく、電位 \(y\) を未知数として保存則を立てました。
右辺(初期電荷)が増えた分だけ、最終的な電位 \(y\) も高くなることが計算から直接わかります。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{9}{4} V_0\) [\(\text{V}\)]

問(4)

思考の道筋とポイント
操作を無限に繰り返すと、\(\text{C}_2\) の電圧はある一定の値(極限値)に収束します。
このとき、もはや電荷の移動は起こらなくなります。

この設問における重要なポイント

  • 定常状態の意味: 操作を繰り返しても状態が変わらない、つまり「スイッチを切り替えても電流が流れない」状態になります。
  • 漸化式: \(n\) 回目の電圧 \(V_n\) と \(n+1\) 回目の電圧 \(V_{n+1}\) の関係式を作ります。

具体的な解説と立式
\(n\) 回目の操作終了後の \(\text{C}_2\) の電圧を \(V_n\) とします。
次のサイクル(\(n+1\) 回目)を考えます。

  1. \(\text{S}_1\) を閉じる: \(\text{C}_1\) は \(V_0\) にリセットされます。
    • 孤立部分の総電荷: \(CV_0 + CV_n\)
  2. \(\text{S}_2\) を閉じる: 電圧が \(V_{n+1}\) になります。
    • 保存則(電位法を利用): \(C(V_{n+1} – 2V_0) + C(V_{n+1} – 0) = CV_0 + CV_n\)

この式を整理して漸化式を作ります。
$$
\begin{aligned}
2CV_{n+1} – 2CV_0 &= CV_0 + CV_n \\[2.0ex]
2V_{n+1} &= V_n + 3V_0 \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電気量保存則(漸化式)
計算過程

十分な回数を繰り返した極限値 \(V_{\infty}\) では、\(V_{n+1} = V_n = V_{\infty}\) となります。
式⑩において \(V_n\) を \(V_{\infty}\) に置き換えます。
$$
\begin{aligned}
2V_{\infty} &= V_{\infty} + 3V_0 \\[2.0ex]
V_{\infty} &= 3V_0
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「今の電圧」と「次の電圧」の関係式(漸化式)を作り、「電圧が変わらなくなったらゴール」と考えて計算しました。

結論と吟味

答えは \(3V_0\) [\(\text{V}\)] です。
これは電池 \(\text{E}_1\) の電圧 \(V_0\) と \(\text{E}_2\) の電圧 \(2V_0\) の単純な和になっています。なぜそうなるのかは、以下の別解で明らかになります。

解答 (4) \(3V_0\) [\(\text{V}\)]
別解: 定常状態の物理的条件を用いた解法

思考の道筋とポイント
「最終的に電荷の移動がなくなる」という物理的状況を直接利用します。
電荷が移動しないということは、スイッチ \(\text{S}_2\) を閉じた瞬間に、閉回路内の起電力と電圧降下が完全につりあっている(電流が流れない)ことを意味します。

この設問における重要なポイント

  • 直前の状態: \(\text{S}_1\) を閉じた直後なので、\(\text{C}_1\) の電圧は \(V_0\)(上極板が正)です。
  • つりあいの条件: この状態で \(\text{S}_2\) を閉じても電流が流れないためには、キルヒホッフの法則が「電流項なし」で成立する必要があります。

具体的な解説と立式
最終状態での \(\text{C}_2\) の電圧を \(V_f\) とします。
\(\text{S}_2\) を閉じる直前、\(\text{C}_1\) は \(V_0\)(上+、下-)に充電されています。
\(\text{S}_2\) を閉じた瞬間の閉回路(\(\text{E}_2 \to \text{C}_1 \to \text{C}_2 \to \text{E}_2\))を一周して電位を調べます。

  • \(\text{E}_2\): \(+2V_0\) 上がる
  • \(\text{C}_1\): 下(-)から上(+)へ通る \(\rightarrow\) \(+V_0\) 上がる
  • \(\text{C}_2\): 上(+)から下(-)へ通る \(\rightarrow\) \(-V_f\) 下がる

一周の電位変化が \(0\) になる条件:
$$
\begin{aligned}
+2V_0 + V_0 – V_f &= 0
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則(定常状態)
計算過程

$$
\begin{aligned}
V_f &= 3V_0
\end{aligned}
$$
これだけで答えが出ます。

この設問の平易な説明

最終的には、スイッチをつないでも電気がピクリとも動かなくなります。
それは、電池 \(\text{E}_2\) の力と、フル充電された \(\text{C}_1\) の力が協力して電圧を高め、それに対抗できるだけの電圧 \(3V_0\) が \(\text{C}_2\) に溜まったときです。

結論と吟味

漸化式を解いた場合と同じ結果が、物理的考察だけで瞬時に得られました。

解答 (4) \(3V_0\) [\(\text{V}\)]

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気量保存則と孤立導体の特定
    • 核心: スイッチが開いている箇所によって回路の一部が電気的に孤立し、その領域(島)にある電荷の総和が不変になるという法則。
    • 理解のポイント:
      • スイッチ操作のたびに、どこが「孤立した島」になるかを回路図上で指でなぞって確認する。
      • 「電荷の移動」は導線がつながっている範囲でしか起こらない。
  • キルヒホッフの第2法則(回路方程式)
    • 核心: 任意の閉回路において、一周したときの電位の上がり下がりの合計が必ずゼロになるというエネルギー保存の法則。
    • 理解のポイント:
      • コンデンサーの電圧は、溜まった電荷 \(Q\) と容量 \(C\) によって \(V=Q/C\) で決まる。
      • 電池は常に一定の電位差(高さ)を提供するポンプのような役割を果たす。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コンデンサーのつなぎ換え問題: 充電したコンデンサーを別のコンデンサーと並列につなぐ、あるいは逆向きにつなぐといった問題。全て「保存則+電圧の関係」で解ける。
    • 無限回操作と収束値: 今回の問(4)のように、操作を繰り返すとある値に近づく問題。漸化式を立てるか、最終状態の「電流ゼロ条件」を利用するかの二択になる。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 孤立部分のマーキング: スイッチが切れている場所を探し、電気の逃げ場がない「島」を色ペンで囲む。
    2. 電位の基準点(アース)の設定: 回路のどこか一箇所(通常は電池の負極)を \(0\,\text{V}\) と決め、そこからの高さ(電位)で回路全体を把握する。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電池の仕事の符号ミス:
    • 誤解: 「電池を通った電気量 \(\times\) 電圧」が常に正の仕事になると単純に思い込む。
    • 対策: 電池の「起電力の向き(負極\(\to\)正極)」と「電流の向き」が一致していれば正の仕事(放電)、逆なら負の仕事(充電=仕事をされる)と判断する。
  • 極性の定義と立式の不整合:
    • 誤解: 図で定義したプラスマイナスと、立式時の符号が逆になってしまい、計算結果がおかしくなる。
    • 対策: 最初に図に \(+Q, -Q\) と電圧矢印を書き込み、キルヒホッフの式を立てる際はその矢印に厳密に従って「矢印の向きに進めば電圧降下(マイナス)」と機械的に処理する。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 電位(ノード電位)を用いた解法(別解):
    • 選定理由: 未知数が「孤立部分の電位 \(x\)」の一つだけで済むため、連立方程式を解く手間が省け、計算ミスが激減するから。
    • 適用根拠: 回路の基準点(\(0\,\text{V}\))を明確に定義でき、各コンデンサーがその基準点や孤立点に接続されている構造だから。
  • 定常状態の条件を用いた解法(問4別解):
    • 選定理由: 漸化式を立てて極限をとる数学的な手間を省き、物理的な意味(電流ゼロ)から瞬時に答えを出せるから。
    • 適用根拠: 「十分に時間が経過した」「操作を繰り返した最終状態」という記述があり、回路内の電流が停止していることが保証されているから。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 図への情報の書き込み:
    • 意識: 頭の中だけで電荷の移動を追わない。
    • 実践: 操作ごとの回路図を簡単に書き、その時点での電荷 \(Q\) や電圧 \(V\) を図の中に直接書き込む。特に「前の状態の電荷」がどこに残っているかを可視化する。
  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式が物理的に正しい次元を持っているか確認する。
    • 実践: 例えば電圧の答えなら、係数は無次元(比率)で、必ず \(V_0\) が掛かっている形になるはず。\(C\) が残っていたり、\(V_0^2\) になっていたら間違い。
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問題113 ダイオードを含むコンデンサー回路とつなぎかえ (24 芝浦工大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)(4)の別解1: 電位(ノード電位)を用いた解法
      • 模範解答が各コンデンサーの電荷を未知数として連立方程式を立てるのに対し、回路内の分岐点(ノード)の「電位」を未知数とすることで、1変数の方程式で簡潔に解く手法です。
    • 設問(3)〜(5)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式)
      • スイッチを切り替えた直後の過渡現象を微分方程式(回路方程式)で記述し、時間経過による電荷の移動を積分計算で追跡します。これにより、電荷の最終値だけでなく、エネルギー収支(ジュール熱)までを一括して導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 電位の解法: 未知数が減るため計算ミスが激減し、回路全体の電圧分布(どこが高電位でどこが低電位か)が直感的に把握できます。
    • 微積分の解法: 「なぜ最終的にその電荷になるのか」「ジュール熱はどのように発生するのか」というプロセスを運動方程式のように追えるため、物理現象への理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「ダイオードを含む回路のスイッチングと電荷保存」です。
ダイオードの整流作用(電流を一方通行にする性質)によって、スイッチの切り替えごとに回路の接続状態(トポロジー)が変化するのが特徴です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 理想ダイオードの特性: 順方向電圧がかかると導線(抵抗 \(0\))、逆方向電圧がかかると断線(抵抗 \(\infty\))とみなします。
  • 電気量保存則: 孤立した導体部分(ダイオードがOFFで切り離された部分など)の電荷の総和は変化しません。
  • キルヒホッフの第2法則: 任意の閉回路において、起電力の和と電圧降下の和は等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • (1)(2)では、スイッチa側の回路でダイオードのON/OFFを判定し、定常状態の電位とエネルギーを求めます。
  • (3)(4)では、スイッチb側に切り替えた後のダイオードの状態を再判定し、保存則とキルヒホッフの法則から電荷を求めます。
  • (5)では、エネルギー保存則を用いて、電池の仕事と静電エネルギー変化からジュール熱を計算します。

問(1)

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