問題109 ばね付きコンデンサー (15 広島市大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: コンデンサーの基本公式 \(Q=CV\) を用いた解法
- 模範解答(メイン)がガウスの法則から直接電場を求めるのに対し、別解では電気容量 \(C\) と電位差 \(V\) を経由して電場 \(E\) を求めます。これは模範解答の「別解」として記載されているアプローチです。
- 設問(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(静電エネルギーと仮想仕事の原理)
- 模範解答が「電場の半分 \(E/2\)」という概念を用いて力を計算するのに対し、別解では「静電エネルギーの変化が仕事になる」というエネルギー原理(仮想仕事の原理)を用いて、微分計算により力を導出します。
- 設問(2)の別解: コンデンサーの基本公式 \(Q=CV\) を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- \(Q=CV\) の解法: コンデンサーの最も基本的な公式を組み合わせることで、定義に戻らなくても解答できる実践的な力を養います。
- エネルギー原理の解法: 「なぜ \(1/2\) なのか?」という疑問に対し、エネルギー保存則という物理学の根本原理から数学的に厳密な答えを与えます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「可動極板を持つコンデンサーの静電気力とつりあい」です。
極板間に働く静電気力によってばねが引き伸ばされ、力がつりあう位置で静止する現象を扱います。また、誘電体を挿入した際の影響についても考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ガウスの法則: 電荷 \(Q\) からは \(N = Q/\varepsilon_0\) 本の電気力線が出ます。電気力線の密度が電場の強さ \(E\) を表します。
- 極板間引力: コンデンサーの極板間には、異符号の電荷が引き合う力 \(F\) が働きます。この力は \(F = \frac{1}{2}QE\) で表されます。
- 力のつりあい: 極板が静止しているとき、静電気力とばねの弾性力はつりあっています。
- 誘電体と電場: 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体中では、電場は真空中の \(1/\varepsilon_r\) 倍になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(2)では、ガウスの法則を用いて電場の様子と強さを決定します。
- (3)(4)では、極板にはたらく静電気力を求め、ばねの弾性力とのつりあいの式を立てて変位を求めます。
- (5)では、一様電場の関係式 \(V=Ed\) を用いて電位差を計算します。
- (6)(7)では、誘電体挿入による電場の変化を作図し、極板にはたらく力が変化するかどうかを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
電気力線の描画問題です。
極板Aは正電荷 \(+Q\)、極板Bは負電荷 \(-Q\) を帯びています。
電気力線は「正電荷から出て負電荷に入る」という性質を持ちます。
また、十分広い面積を持つ平行平板コンデンサーの内部では、電気力線は平行かつ等間隔(一様電場)になります。
この設問における重要なポイント
- 向き: \(+Q\) (A) \(\rightarrow\) \(-Q\) (B)
- 形状: 極板に対して垂直な直線。
- 密度: 等間隔(一様電場を表す)。
具体的な解説と立式
極板A(左側)から極板B(右側)に向かって、極板に垂直な直線を等間隔に引きます。
矢印の向きは左から右(AからB)です。
端効果(極板の端で電場が歪むこと)は無視できるため、極板間のみに直線を引きます。
使用した物理公式
- 電気力線の性質: 正電荷から出て負電荷に入る
計算はありません。図示のみです。
プラスの電気からマイナスの電気に向かって、まっすぐな矢印を引きます。
板の間隔がどこでも同じなので、矢印の間隔も同じにします。
模範解答の図aのように、AからBへ向かう等間隔の平行な矢印が描かれていれば正解です。
問(2)
思考の道筋とポイント
極板間の電場の強さ \(E\) を求めます。
ガウスの法則を利用して、電荷 \(Q\) が作る電気力線の総数から電場密度を計算します。
この設問における重要なポイント
- ガウスの法則: 電荷 \(Q\) から出る電気力線の総数 \(N\) は \(N = \frac{Q}{\varepsilon_0}\) です。
- 電場の定義: 電場の強さ \(E\) は、電気力線の密度(単位面積あたりの本数)に等しいです。\(E = \frac{N}{S}\)。
具体的な解説と立式
ガウスの法則より、極板Aの電荷 \(+Q\) から出る電気力線の総数 \(N\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{Q}{\varepsilon_0}
\end{aligned}
$$
この電気力線は、極板間の空間(断面積 \(S\))を一様に貫いています。
電場の強さ \(E\) は単位面積あたりの電気力線の数なので、以下の式で求められます。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{N}{S}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ガウスの法則: \(N = \frac{Q}{\varepsilon_0}\)
- 電場の定義: \(E = \frac{N}{S}\)
\(N\) の式を \(E\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{S} \cdot \frac{Q}{\varepsilon_0} \\[2.0ex]
&= \frac{Q}{\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
「電気力線」という仮想的な線の本数を数えることで、電気的な力の場(電場)の強さを求めました。
電荷 \(Q\) があると、そこから決まった本数の線が湧き出します。その線が面積 \(S\) のトンネルを通るとき、どれくらい密集しているか(密度)を計算したのが電場の強さです。
答えは \(\frac{Q}{\varepsilon_0 S}\) です。
電荷 \(Q\) に比例し、面積 \(S\) に反比例しており、物理的に妥当です。
思考の道筋とポイント
ガウスの法則を直接使わず、コンデンサーの電気容量 \(C\) の公式と基本式 \(Q=CV\) を経由して電場を求めます。
この設問における重要なポイント
- 平行平板コンデンサーの容量: \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{x}\) (極板間隔を \(x\) とする)
- 基本式: \(Q = CV\)
- 電場と電位差の関係: \(V = Ex\)
具体的な解説と立式
現在の極板間距離を \(x = d – \Delta d\) とします。
電気容量 \(C\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
C &= \varepsilon_0 \frac{S}{x}
\end{aligned}
$$
極板間の電位差 \(V\) は、\(Q=CV\) より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{Q}{C}
\end{aligned}
$$
一様電場において、電場の強さ \(E\) と電位差 \(V\) の間には \(V=Ex\) の関係があるため、\(E\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{V}{x}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 容量の式: \(C = \varepsilon_0 \frac{S}{d}\)
- 基本式: \(Q = CV\)
- 電位と電場の関係: \(V = Ed\)
\(C\) を \(V\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{Q}{\varepsilon_0 \frac{S}{x}} \\[2.0ex]
&= \frac{Qx}{\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
これを \(E\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{1}{x} \cdot \frac{Qx}{\varepsilon_0 S} \\[2.0ex]
&= \frac{Q}{\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
コンデンサーの性能を表す「容量」と、溜まっている「電荷」から「電圧」を計算し、その電圧を「距離」で割ることで、極板間の電気的な坂道の急さ(電場)を求めました。距離 \(x\) が約分されて消えるため、電場は距離によらず一定であることが分かります。
メイン解法と同じ結果が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
極板Bにはたらく静電気力 \(F\) を求めます。
極板B上の電荷 \(-Q\) は、極板A上の電荷 \(+Q\) が作る電場から力を受けます。
ここで注意すべきは、「電荷は自分自身が作る電場からは力を受けない」という点です。
この設問における重要なポイント
- 電場の重ね合わせ: 極板間の全電場 \(E\) は、極板Aが作る電場 \(E_A\) と、極板Bが作る電場 \(E_B\) の和です。
- 対称性: \(E_A\) と \(E_B\) は大きさ等しく向きも同じ(極板間において)です。よって \(E_A = \frac{1}{2}E\) です。
- 静電気力の式: 電荷 \(q\) が電場 \(E’\) から受ける力は \(F = qE’\) です。
具体的な解説と立式
極板間の全電場 \(E\) は、極板Aによる電場 \(E_A\) と極板Bによる電場 \(E_B\) の合成です。
対称性より、それぞれの大きさは等しいため、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E_A + E_B &= E \\[2.0ex]
E_A &= E_B \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}E
\end{aligned}
$$
極板Bの電荷 \(-Q\) にはたらく力 \(F\) の大きさは、極板Aが作る電場 \(E_A\) によるものです。
$$
\begin{aligned}
F &= |-Q| \times E_A \\[2.0ex]
&= Q \times \frac{1}{2}E
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電気力: \(F = qE\)
(2)で求めた \(E = \frac{Q}{\varepsilon_0 S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{1}{2} Q \left( \frac{Q}{\varepsilon_0 S} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
極板Bはマイナスの電気を持っています。これが、向かい側の極板A(プラスの電気)が作っている電気的な流れ(電場)に引っ張られます。
ただし、極板間の電場 \(E\) は「AとBが協力して作ったもの」です。B自身は自分を引っ張れないので、Bが受ける力は「Aが作った分(全体の半分)」の電場によるものになります。だから \(E\) ではなく \(E/2\) を掛け算します。
答えは \(\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) です。
電荷の2乗に比例し、距離には依存しない一定の引力となります。
思考の道筋とポイント
「電場が半分」という考え方が直感的に分かりにくい場合、エネルギー保存則(仮想仕事の原理)を用いると、数学的に明快に力を導出できます。
「外力がした仕事=静電エネルギーの変化」という関係を利用します。
この設問における重要なポイント
- 静電エネルギー \(U\): コンデンサーに蓄えられるエネルギーは \(U = \frac{Q^2}{2C}\) です。
- 仮想仕事の原理: 電荷 \(Q\) を一定に保ったまま、極板間隔を微小距離 \(\Delta x\) だけ広げる操作を考えます。このとき、外力がする仕事 \(F_{\text{外}} \Delta x\) は、静電エネルギーの増加分 \(\Delta U\) に等しくなります。
- 力の導出: 静電気力(引力) \(F\) は、外力 \(F_{\text{外}}\) とつりあう力なので、\(F = – \frac{dU}{dx}\) (大きさは \(|\frac{dU}{dx}|\))となります。
具体的な解説と立式
極板間隔を \(x\) としたときの静電容量 \(C(x)\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
C(x) &= \frac{\varepsilon_0 S}{x}
\end{aligned}
$$
このときの静電エネルギー \(U(x)\) は、電荷 \(Q\) が一定であるとして以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
U(x) &= \frac{Q^2}{2C(x)}
\end{aligned}
$$
極板Bにはたらく静電気力 \(F\) の大きさは、エネルギー \(U(x)\) の位置微分(傾き)として求められます。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{dU}{dx}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電エネルギー: \(U = \frac{Q^2}{2C}\)
- 力とポテンシャルの関係: \(F = -\frac{dU}{dx}\) (ここでは大きさのみを議論するため符号は省略)
\(U(x)\) に \(C(x)\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
U(x) &= \frac{Q^2}{2} \cdot \frac{x}{\varepsilon_0 S} \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2 x}{2\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
これを \(x\) で微分します。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{d}{dx} \left( \frac{Q^2 x}{2\varepsilon_0 S} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
コンデンサーに溜まっているエネルギーを、極板間の距離 \(x\) の関数として表しました。
エネルギーの変化率は「力」を意味します(仕事=力×距離 なので、力=エネルギー÷距離)。
エネルギーの式を距離で微分する(傾きを調べる)だけで、極板間に働く引力が一発で求まりました。この方法なら「電場を半分にする」といったテクニックを覚える必要がありません。
メイン解法と全く同じ結果 \(\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) が得られました。
この力は \(x\) を含まない定数であり、距離によらず一定の力で引き合うことが数式からも分かります。
問(4)
思考の道筋とポイント
ばねの伸び \(\Delta d\) を求めます。
極板Bは静止しているため、Bにはたらく力はつりあっています。
水平方向の力は、静電気力(左向き)とばねの弾性力(右向き)の2つです。
この設問における重要なポイント
- 力の向きの確認:
- 静電気力 \(F\): A(+)とB(-)は引き合うため、Bには左向きの力が働きます。
- 弾性力: 図1(自然長)から図2の状態へ、Bは左へ \(\Delta d\) 移動しました。ばねは右側の壁に固定されているため、ばねは \(\Delta d\) だけ「伸びて」います。伸びたばねは縮もうとするため、Bを右向きに引きます。
- フックの法則: 弾性力の大きさは \(k \Delta d\) です。
具体的な解説と立式
極板Bにおける水平方向の力のつりあいを考えます。
右向きを正とすると、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの弾性力}) &= (\text{左向きの静電気力}) \\[2.0ex]
k \Delta d &= F
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- フックの法則: \(F = kx\)
- 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = 0\)
(3)で求めた \(F = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) を代入して \(\Delta d\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
k \Delta d &= \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} \\[2.0ex]
\Delta d &= \frac{Q^2}{2k \varepsilon_0 S}
\end{aligned}
$$
極板Bは、電気の力で左へ引っ張られ、ばねの力で右へ引っ張られています。
この2つの力がちょうど同じ大きさになったところで止まっています。
「ばねの力 = 電気の力」という式を作って、伸び \(\Delta d\) を計算しました。
答えは \(\frac{Q^2}{2k \varepsilon_0 S}\) です。
電荷 \(Q\) が大きいほど(力が強いほど)伸びが大きく、ばね定数 \(k\) が大きいほど(ばねが硬いほど)伸びが小さいという結果は、直感と一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
極板間の電位差 \(V\) を求めます。
一様電場 \(E\) における電位差の公式を使います。
注意点は、極板間の距離が初期の \(d\) ではなく、変化後の \(d – \Delta d\) であることです。
この設問における重要なポイント
- 一様電場の電位差: \(V = E \times (\text{距離})\)
- 現在の距離: \(d’ = d – \Delta d\)
具体的な解説と立式
極板間の距離を \(d’\) とすると、\(d’ = d – \Delta d\) です。
電位差 \(V\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
V &= E d’ \\[2.0ex]
&= E (d – \Delta d)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電位差の公式: \(V = Ed\)
(2)の結果 \(E = \frac{Q}{\varepsilon_0 S}\) と、(4)の結果 \(\Delta d = \frac{Q^2}{2k \varepsilon_0 S}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{Q}{\varepsilon_0 S} \left( d – \frac{Q^2}{2k \varepsilon_0 S} \right)
\end{aligned}
$$
このままでも正解ですが、展開して整理することもできます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{Qd}{\varepsilon_0 S} – \frac{Q^3}{2k (\varepsilon_0 S)^2}
\end{aligned}
$$
模範解答の形式に合わせて、括弧でくくった形を最終解答とします。
電場 \(E\) は「1メートルあたりの電圧」のようなものです。
これに「実際の距離」を掛ければ、全体の電圧(電位差)が出ます。
距離が \(d\) から \(\Delta d\) だけ縮んでいることに注意して計算しました。
答えは \(\frac{Q}{\varepsilon_0 S} \left( d – \frac{Q^2}{2k \varepsilon_0 S} \right)\) です。
距離が縮んだ分だけ、初期状態の電圧 \(\frac{Qd}{\varepsilon_0 S}\) よりも低くなっています。
問(6)
思考の道筋とポイント
誘電体を挿入した後の電気力線の様子を図示します。
比誘電率 \(2\) の誘電体中では、誘電分極によって電場が弱められます。
具体的には、電場の強さが真空中の \(1/2\) になります。
電気力線の密度は電場の強さを表すため、誘電体中の電気力線の本数は半分になります。
この設問における重要なポイント
- 誘電体中の電場: \(E’ = \frac{1}{\varepsilon_r} E\)。ここでは \(\varepsilon_r = 2\) なので \(E’ = E/2\)。
- 電気力線の連続性: 真空部分では元のままの本数ですが、誘電体に入るところで一部が分極電荷に吸収されて本数が減り、出るところでまた復活します。
具体的な解説と立式
- 真空部分(隙間): 電荷 \(Q\) は変わらないため、極板と誘電体の間の隙間における電場(電気力線の密度)は、(1)の状態と同じです。
- 誘電体部分: 比誘電率が \(2\) なので、電場の強さは半分になります。したがって、電気力線の間隔を2倍に広げ(本数を半分にし)て描きます。
使用した物理公式
- 誘電体中の電場: \(E’ = \frac{E}{\varepsilon_r}\)
計算はありません。図示のみです。
誘電体の中では、電気が通りにくくなる(電場が弱まる)ため、電気力線の本数が減ります。
比誘電率が2なので、本数は半分になります。
真空の部分は元のままなので、密度の高い線を描き、誘電体の中だけ線を間引いて描きます。
模範解答の図cのように、
・極板付近(真空)では密(元の間隔)
・誘電体内部では疎(2倍の間隔、本数半分)
となるように描きます。矢印の向きはAからBのままです。
問(7)
思考の道筋とポイント
誘電体挿入後、極板Bにはたらく静電気力が変化するかどうかを問われています。
静電気力は、極板B上の電荷 \(-Q\) が、その場所にある電場から受ける力です。
極板Bは誘電体と接しておらず、真空の隙間があります(図4参照)。
この設問における重要なポイント
- 局所的な電場の決定要因: 導体表面直近の電場 \(E\) は、ガウスの法則により、その場所の電束密度 \(D\)(または電気力線の密度)で決まります。
- 電束密度の保存: 直列に配置されたコンデンサー系では、蓄えられた電荷 \(Q\) が一定であれば、電束密度 \(D = Q/S\) はどの断面でも一定です。
- 真空中の電場: \(E = D/\varepsilon_0\)。\(D\) が変わらなければ、極板B直近(真空中)の電場も変わりません。
具体的な解説と立式
極板Bにはたらく力 \(F\) は、極板Bの位置における電場の強さによって決まります。
図4のように極板Bと誘電体の間には隙間(真空)があります。
この隙間における電気力線の本数(密度)は、極板Aから出た本数がそのまま到達するため、誘電体がない場合(問1の状態)と変わりません。
(誘電体内部では電場は弱まりますが、誘電体を出て真空に戻ると、電場は元の強さに戻ります。)
したがって、極板Bの電荷 \(-Q\) が感じる電場の強さは変化せず、はたらく力も変化しません。
使用した物理公式
- 静電気力: \(F = qE\)
計算はありません。定性的な考察です。
極板Bを引っ張っているのは、Bのすぐ目の前にある空間の電場です。
間に誘電体を挟んでも、Bの目の前は真空のままであり、そこを通る電気力線の本数も(Aの電荷が変わらない限り)変わりません。
だから、Bを引っ張る力も変わりません。
答えは「変化しない」です。
もし誘電体が極板Bに接触していたり、極板間全体を埋め尽くしていた場合は話が変わりますが、隙間がある場合は表面付近の電場は保存されます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ガウスの法則と電場の定義
- 核心: 電荷 \(Q\) からは \(Q/\varepsilon_0\) 本の電気力線が湧き出し、その密度が電場の強さ \(E\) を決定する。
- 理解のポイント:
- 電気力線の総数: \(N = Q/\varepsilon_0\)
- 電場の強さ: \(E = N/S = Q/(\varepsilon_0 S)\)
- 極板間引力と力のつりあい
- 核心: コンデンサーの極板は互いに引き合う力を及ぼし合い、その力は \(F = \frac{1}{2}QE\) で表される。この静電気力とばねの弾性力がつりあう位置で極板は静止する。
- 理解のポイント:
- 係数1/2の意味: 電荷 \(Q\) は自分自身が作る電場からは力を受けず、相手の極板が作る電場(全電場の半分)から力を受けるため。
- エネルギー原理: 力は静電エネルギーの変化率 \(F = -dU/dx\) としても導出できる。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 極板間隔が変化する問題: 電池がつながっているか(\(V\)一定)、切り離されているか(\(Q\)一定)でアプローチが異なる。本問は \(Q\) 一定のケース。
- 誘電体を挿入する問題: 誘電体中では電場が \(1/\varepsilon_r\) 倍になるが、電束密度 \(D\)(電荷 \(Q\) に由来)は保存されることに着目する。
- 初見の問題での着眼点:
- 保存量の特定: スイッチが切れていれば電荷 \(Q\) が保存、つながっていれば電圧 \(V\) が保存。
- 力の起源: 静電気力 \(F\) を求める際は、公式 \(F = \frac{1}{2}QE\) を使うか、エネルギー原理 \(F = |\Delta U / \Delta x|\) を使うかを判断する。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 静電気力の公式の係数忘れ:
- 誤解: 電荷 \(Q\) が電場 \(E\) にあるから \(F=QE\) だと思い込んでしまう。
- 対策: \(F=QE\) は「外場 \(E\) 中に点電荷 \(Q\) を置いたとき」の式。コンデンサーの極板間引力は「互いに電場を作り合っている」ため、相手の電場 \(E/2\) を使うか、公式 \(F = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) を暗記する。
- 誘電体挿入時の力の変化:
- 誤解: 誘電体を入れると電場が弱まるから、極板を引く力も弱まるだろうと直感で判断してしまう。
- 対策: 力は「極板表面の電場」で決まる。誘電体と極板の間に隙間があれば、表面の電場は変わらないため力も変わらない。図を描いて電気力線の密度を確認する癖をつける。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ガウスの法則(メイン解法):
- 選定理由: 電場 \(E\) の定義(電気力線の密度)から直接導出できるため、公式を忘れても対応できる最も原理的な方法であるため。
- 適用根拠: 平行平板コンデンサーでは電場が一様であり、ガウスの法則が単純な形で適用できるため。
- エネルギー原理(別解):
- 選定理由: 「電場が半分」という概念が腑に落ちない場合や、複雑な形状のコンデンサーで電場が計算しにくい場合に、エネルギー変化から力を逆算できる強力な手法であるため。
- 適用根拠: 仮想仕事の原理(仕事=エネルギー変化)は力学と電磁気学をつなぐ普遍的な原理であるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 求めた答えの次元が正しいか確認する。
- 実践: 例えば力の答え \(\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) なら、\(F=qE\) より \([C] \times [N/C] = [N]\) となっているか、あるいは \(\varepsilon_0\) の単位を含めて確認する。
- 極限の確認:
- 意識: 変数が極端な値になったときの振る舞いを想像する。
- 実践: 問(5)で \(\Delta d \to 0\) (ばねが無限に硬い \(k \to \infty\))とすると、\(V \to \frac{Qd}{\varepsilon_0 S}\) となり、通常のコンデンサーの式に戻ることを確認する。
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問題110 極板間の電場と電位 (大阪府大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義)
- 公式 \(V=Ed\) を単なる暗記として扱わず、電位の定義 \(V(x) = -\int E dx\) に基づいて、電場と電位のグラフの関係を数学的に導出します。
- 設問(7)〜(9)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ガウスの法則と電束密度)
- 模範解答が「コンデンサーの直列接続」として合成容量を計算するのに対し、別解では電磁気学の基本原理である「ガウスの法則」から出発します。電束密度 \(D\) が一定であることを示し、誘電率の違いが電場に与える影響を計算して電位分布を導出します。
- 設問(11)の別解: 電場保存の法則を用いた解法
- 計算によって電位差を求めるだけでなく、電荷 \(Q\) が一定ならば極板間の電場 \(E\) も一定であるという物理的性質を利用し、計算量を大幅に削減する解法を提示します。
- 設問(1)〜(3)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: コンデンサーの公式が通用しない複雑な状況(誘電率が連続的に変化する場合など)にも対応できる、普遍的な物理の基礎力を養います。
- 電場保存の解法: 計算プロセスを短縮し、検算としても有効な直感的理解を助けます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサー内の物質挿入による電場と電位の変化」です。
真空、導体(金属板)、誘電体を挿入した各ケースにおいて、電場や電位がどのように分布するかをグラフ化し、エネルギーや仕事の関係を考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 一様電場と電位の関係: 平行平板コンデンサー内部の電場 \(E\) は一様であり、距離 \(d\) 離れた2点間の電位差 \(V\) との間には \(V=Ed\) の関係があります。
- 導体と誘電体の性質:
- 導体(金属): 静電誘導により内部の電場は \(0\) になり、全体が等電位となります。
- 誘電体: 誘電分極により内部の電場は真空中の \(1/\varepsilon_r\) 倍になります(電荷一定時)。
- 電気量保存則: スイッチを切った状態では、極板に蓄えられた電荷 \(Q\) は保存されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、真空中の基本的なコンデンサーの性質を確認します。
- (4)〜(6)では、導体挿入による実質的な極板間隔の減少と、等電位領域の出現を扱います。
- (7)〜(9)では、誘電体挿入を「コンデンサーの直列接続」とみなし、合成容量から電荷と各部の電圧を求めます。
- (10)〜(11)では、エネルギー保存則と電荷保存則を用いて、仕事や極板間隔変更後の電位差を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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