問題103 電場と電位 (22 筑波大 (前期))
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義と重ね合わせ)
- 模範解答は点電荷の電位の公式 \(V=k\frac{Q}{r}\) を既知として和を計算していますが、別解では「電位とは電場による仕事である」という定義(積分)から出発し、なぜ電位がスカラー和で表せるのかを原理的に解説します。
- 設問(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 模範解答はエネルギー保存則を前提として使用していますが、別解では運動方程式を立式し、それを空間積分することでエネルギー保存則そのものを導出します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(電位の定義と重ね合わせ)
- 上記の別解が有益である理由
- 電位の定義: 公式の単なる暗記ではなく、電場と電位の微分・積分関係を理解することで、公式を忘れても導き出せる応用力が身につきます。
- 運動方程式の積分: 力学と電磁気学の融合問題において、現象を支配する基本原理(運動方程式)から出発することで、物理法則の体系的なつながりを深く理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「点電荷による電場と電位の重ね合わせ、および荷電粒子の運動」です。静電気力による力学的エネルギー保存則を用いて、粒子の振る舞いを解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- クーロンの法則と電場の重ね合わせ: 複数の電荷がある場合、電場は各電荷が作る電場のベクトル和となります。
- 電位の定義と重ね合わせ: 電位はスカラー量であり、各電荷が作る電位の単純な和(スカラー和)となります。
- 力学的エネルギー保存則: 静電気力は保存力であるため、運動エネルギーと静電ポテンシャルエネルギーの和は保存されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、対称性を利用して電場ベクトルの合成を行います。
- (2)では、電位のスカラー和を計算し、グラフの概形を考えます。
- (3)〜(6)では、静電気力による仕事やエネルギー保存則を用いて、粒子の運動(速さや位置)を解析します。
問(1)
思考の道筋とポイント
点A \((a, 0)\) と点B \((-a, 0)\) にある2つの正電荷 \(Q\) が、点C \((0, b)\) に作る電場を求めます。
電場はベクトル(大きさと向きを持つ量)なので、それぞれの電荷が作る電場を矢印として描き、それらを合成(ベクトル和)する必要があります。
図1の配置は左右対称であるため、合成電場の \(x\) 成分は打ち消し合い、\(y\) 成分のみが残ることに注目します。
この設問における重要なポイント
- クーロンの法則: 点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) 離れた点の電場の大きさは \(E = k\frac{Q}{r^2}\) です。
- 電場の向き: 正電荷からは遠ざかる向き、負電荷へは近づく向きです。
- 対称性の利用: 左右対称な配置では、対称軸に垂直な成分(ここでは \(x\) 成分)は相殺されます。
具体的な解説と立式
点Aにある電荷が点Cに作る電場を \(\vec{E}_{\text{A}}\)、点Bにある電荷が点Cに作る電場を \(\vec{E}_{\text{B}}\) とします。
点Aと点Cの距離 \(r\) は、三平方の定理より以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
r &= \sqrt{a^2 + b^2}
\end{aligned}
$$
したがって、それぞれの電場の大きさ \(E_{\text{A}}, E_{\text{B}}\) は等しく、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{A}} &= k\frac{Q}{r^2} \\[2.0ex]
E_{\text{B}} &= k\frac{Q}{r^2}
\end{aligned}
$$
図a(模範解答の図)のように、\(\vec{E}_{\text{A}}\) と \(\vec{E}_{\text{B}}\) が \(x\) 軸となす角を \(\theta\) とします。
図形の幾何学的関係から、\(\sin\theta\) は以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &= \frac{b}{r}
\end{aligned}
$$
合成電場 \(\vec{E}_{\text{C}}\) の \(x\) 成分 \(E_{\text{C}x}\) と \(y\) 成分 \(E_{\text{C}y}\) を考えます。
\(x\) 成分は、\(\vec{E}_{\text{A}}\) の成分(左向き)と \(\vec{E}_{\text{B}}\) の成分(右向き)が同じ大きさで逆向きなので打ち消し合います。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの電場の和}) &= E_{\text{B}} \cos\theta \\[2.0ex]
(\text{左向きの電場の和}) &= E_{\text{A}} \cos\theta
\end{aligned}
$$
これらは等しいため、\(x\) 成分は \(0\) です。
\(y\) 成分は、両方の電場の \(y\) 成分(上向き)の和となります。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{C}y} &= E_{\text{A}} \sin\theta + E_{\text{B}} \sin\theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 点電荷の電場: \(E = k\frac{Q}{r^2}\)
先ほど立てた式に、\(E_{\text{A}} = E_{\text{B}}\) と \(\sin\theta\) の値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{C}y} &= 2 E_{\text{A}} \sin\theta \\[2.0ex]
&= 2 \left( k\frac{Q}{a^2 + b^2} \right) \left( \frac{b}{\sqrt{a^2 + b^2}} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2kQb}{(a^2 + b^2)(a^2 + b^2)^{\frac{1}{2}}} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
向きは、\(y\) 成分のみが正の値として残ったので、\(y\) 軸の正の向きです。
2つのプラスの電気が、上の点Cを斜め上に押しています。
右からの「左斜め上への押し」と、左からの「右斜め上への押し」が合わさります。
横方向の力は「左」と「右」で喧嘩して消えてしまいますが、縦方向の力は「上」と「上」で協力して2倍になります。
だから、結果として真上に向かう電場ができます。
答えは \(E_{\text{C}} = \frac{2kQb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}}\)、向きは \(y\) 軸の正の向きです。
\(b=0\)(原点)のとき \(E_{\text{C}}=0\) となり、左右からの力が釣り合うことと一致します。
\(b \to \infty\) のとき、分母の次数が \(b^3\) に近くなるため \(E_{\text{C}} \to 0\) となり、遠く離れると電場が弱まることと整合します。
問(2)
思考の道筋とポイント
\(x\) 軸上の任意の点における電位 \(V(x)\) を求めます。
電位はスカラー(大きさのみを持つ量)なので、ベクトル合成のような成分分解は不要で、単純な足し算で求められます。
ただし、点電荷からの距離は常に正の値でなければならないため、座標 \(x\) と電荷の位置 \(a, -a\) との関係(絶対値)に注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 電位の重ね合わせ: 複数の点電荷による電位は、個々の電荷による電位の単純な和(スカラー和)になります。
- 点電荷の電位: 電荷 \(Q\) から距離 \(r\) の点の電位は \(V = k\frac{Q}{r}\) です(無限遠基準)。
- 距離の表現: 座標 \(x\) の点と座標 \(a\) の点の距離は \(|x-a|\) と表されます。
具体的な解説と立式
\(x\) 軸上の点 \((x, 0)\) を考えます。
点A \((a, 0)\) にある電荷 \(Q\) からの距離 \(r_{\text{A}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
r_{\text{A}} &= |x – a|
\end{aligned}
$$
点B \((-a, 0)\) にある電荷 \(Q\) からの距離 \(r_{\text{B}}\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
r_{\text{B}} &= |x – (-a)| \\[2.0ex]
&= |x + a|
\end{aligned}
$$
求める電位 \(V(x)\) は、それぞれの電荷が作る電位の和です。
$$
\begin{aligned}
V(x) &= k\frac{Q}{r_{\text{A}}} + k\frac{Q}{r_{\text{B}}}
\end{aligned}
$$
これを領域ごとに場合分けして絶対値を外します。
1. \(|x| < a\) のとき(\(-a < x < a\))
この範囲では \(x < a\) なので \(x – a < 0\)、また \(x > -a\) なので \(x + a > 0\) です。
$$
\begin{aligned}
|x – a| &= -(x – a) \\[2.0ex]
&= a – x \\[2.0ex]
|x + a| &= x + a
\end{aligned}
$$
2. \(|x| > a\) のとき(\(x > a\) または \(x < -a\))
\(x > a\) のとき、\(x – a > 0\)、\(x + a > 0\) です。
\(x < -a\) のとき、\(x – a < 0\)、\(x + a < 0\) ですが、距離は正なので \(|x-a| = -(x-a)\)、\(|x+a| = -(x+a)\) となります。 いずれにせよ、分母の対称性から \(|x|\) を用いてまとめて表せます。 模範解答に従い、\(x > a\) の場合で代表して計算します。
$$
\begin{aligned}
|x – a| &= x – a \\[2.0ex]
|x + a| &= x + a
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 点電荷の電位: \(V = k\frac{Q}{r}\)
1. \(|x| < a\) の場合
$$
\begin{aligned}
V(x) &= kQ \left( \frac{1}{a – x} + \frac{1}{a + x} \right) \\[2.0ex]
&= kQ \frac{(a + x) + (a – x)}{(a – x)(a + x)} \\[2.0ex]
&= kQ \frac{2a}{a^2 – x^2} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQa}{a^2 – x^2}
\end{aligned}
$$
2. \(|x| > a\) の場合
$$
\begin{aligned}
V(x) &= kQ \left( \frac{1}{x – a} + \frac{1}{x + a} \right) \\[2.0ex]
&= kQ \frac{(x + a) + (x – a)}{(x – a)(x + a)} \\[2.0ex]
&= kQ \frac{2x}{x^2 – a^2}
\end{aligned}
$$
ここで、\(x < -a\) の場合も考慮して \(x\) を \(|x|\) と書けば、全領域 \(|x|>a\) で通用する式になります。
$$
\begin{aligned}
V(x) &= \frac{2kQ|x|}{x^2 – a^2}
\end{aligned}
$$
グラフの描画と \(V(0)\) の値
\(x=0\) のとき、\(|x|<a\) の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
V(0) &= \frac{2kQa}{a^2 – 0} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQ}{a}
\end{aligned}
$$
グラフの概形は以下の特徴を持ちます。
- \(x = \pm a\) に近づくと分母が \(0\) に近づくため、\(V(x) \to \infty\) となります(点線で漸近線を描く)。
- \(x = 0\) で極小値 \(\frac{2kQ}{a}\) をとります。
- \(|x| \to \infty\) で \(V(x) \to 0\) となります。
- \(y\) 軸対称(偶関数)です。
電位とは「電気的な高さ」のようなものです。
プラスの電荷がある場所は、電位が非常に高い「山」になっています。
今回は \(x=a\) と \(x=-a\) に2つの高い山があります。
その間の \(x=0\)(原点)は、2つの山に挟まれた「峠」のような場所で、谷底のように見えますが、平地(無限遠)よりは高い位置にあります。
グラフを描くと、2本の高い塔が立っているような形になります。
\(|x|<a\) で \(V(x) = \frac{2kQa}{a^2 – x^2}\)、\(|x|>a\) で \(V(x) = \frac{2kQ|x|}{x^2 – a^2}\) です。
\(x=0\) での値は \(\frac{2kQ}{a}\) です。
これは、原点から距離 \(a\) にある2つの電荷 \(Q\) による電位 \(k\frac{Q}{a} \times 2\) と一致し、妥当です。
グラフは模範解答図c参照, \(V(0) = \displaystyle \frac{2kQ}{a}\)
思考の道筋とポイント
電位 \(V\) は、基準点(無限遠)からその点まで、単位電荷を運ぶ際に外力がする仕事(=電場による仕事のマイナス)として定義されます。
$$
\begin{aligned}
V(\vec{r}) &= – \int_{\infty}^{\vec{r}} \vec{E} \cdot d\vec{r}
\end{aligned}
$$
この定義から出発すると、なぜ電位が「スカラー和」で計算できるのかが明確になります。
この設問における重要なポイント
- 積分の線形性: 電場 \(\vec{E}\) が複数の電荷による電場の和 \(\vec{E} = \vec{E}_{\text{A}} + \vec{E}_{\text{B}}\) であるとき、その積分(電位)も個々の積分の和になります。
$$
\begin{aligned}
\int (\vec{E}_{\text{A}} + \vec{E}_{\text{B}}) \cdot d\vec{r} &= \int \vec{E}_{\text{A}} \cdot d\vec{r} + \int \vec{E}_{\text{B}} \cdot d\vec{r}
\end{aligned}
$$
これが、電位の重ね合わせの原理の数学的根拠です。
具体的な解説と立式
点電荷 \(Q\) が原点にあるとき、位置 \(r\) での電場は動径方向を向き、大きさは \(E(r) = k\frac{Q}{r^2}\) です。
無限遠を基準(\(V(\infty)=0\))とした距離 \(r\) の点の電位 \(V(r)\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V(r) &= – \int_{\infty}^{r} E(r’) dr’ \\[2.0ex]
&= – \int_{\infty}^{r} k\frac{Q}{r’^2} dr’
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ガウスの法則(点電荷の電場): \(E = k\frac{Q}{r^2}\)
- 電位の定義: \(V = – \int \vec{E} \cdot d\vec{r}\)
- べき乗の積分: \(\int x^{-2} dx = -x^{-1}\)
$$
\begin{aligned}
V(r) &= – kQ \left[ -\frac{1}{r’} \right]_{\infty}^{r} \\[2.0ex]
&= – kQ \left( -\frac{1}{r} – (-\frac{1}{\infty}) \right) \\[2.0ex]
&= k\frac{Q}{r}
\end{aligned}
$$
これにより、点電荷の電位の公式が導かれました。
本問では2つの電荷がありますが、電位は「電場の線積分」であり、電場はベクトル和 \(\vec{E}_{\text{合}} = \vec{E}_{\text{A}} + \vec{E}_{\text{B}}\) で表されます。
積分の線形性により、
$$
\begin{aligned}
V_{\text{合}} &= – \int (\vec{E}_{\text{A}} + \vec{E}_{\text{B}}) \cdot d\vec{r} \\[2.0ex]
&= \left( – \int \vec{E}_{\text{A}} \cdot d\vec{r} \right) + \left( – \int \vec{E}_{\text{B}} \cdot d\vec{r} \right) \\[2.0ex]
&= V_{\text{A}} + V_{\text{B}}
\end{aligned}
$$
となり、個別に計算した電位 \(k\frac{Q}{r_{\text{A}}}\) と \(k\frac{Q}{r_{\text{B}}}\) を単純に足せばよいことが証明されます。
あとはメインの解法と同様に、\(r_{\text{A}} = |x-a|\), \(r_{\text{B}} = |x+a|\) を代入して計算します。
「電位は足し算できる」というルールは、実は「仕事は足し算できる」という当たり前の事実から来ています。
Aさんが押す力とBさんが押す力を合わせて荷物を運ぶとき、必要な仕事は「Aさんの力に対抗する仕事」と「Bさんの力に対抗する仕事」の合計になります。
だから、複雑なベクトル計算をしなくても、それぞれの電気の山(電位)の高さを単純に足し合わせるだけで、全体の高さが求まるのです。
定義から出発しても、当然ながら同じ結果 \(V(x) = k\frac{Q}{|x-a|} + k\frac{Q}{|x+a|}\) に至ります。
問(3)
思考の道筋とポイント
点Cに置かれた点電荷 \(q\) が受ける静電気力(クーロン力)を求めます。
電場 \(\vec{E}\) がある場所に電荷 \(q\) を置くと、力 \(\vec{F} = q\vec{E}\) を受けます。
問(1)ですでに点Cの電場 \(E_{\text{C}}\) を求めているので、これを利用するのが最短ルートです。
この設問における重要なポイント
- 電場と力の関係: 電場 \(\vec{E}\) 中の電荷 \(q\) が受ける力は \(\vec{F} = q\vec{E}\) です。
- 力の向き: \(q > 0\) ならば電場と同じ向き、\(q < 0\) ならば逆向きです。今回は \(q\) は正電荷です。
具体的な解説と立式
点Cにおける電場の大きさは、問(1)より以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{C}} &= \frac{2kQb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
質点Pの電荷は \(q\) なので、受ける静電気力の大きさ \(F_{\text{C}}\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{C}} &= q E_{\text{C}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 静電気力: \(F = qE\)
\(E_{\text{C}}\) の式を代入します。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{C}} &= q \times \frac{2kQb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQqb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}}
\end{aligned}
$$
電荷 \(q\) は正なので、力の向きは電場の向きと同じく、\(y\) 軸の正の向きです。
「電場」とは「\(+1\,\text{C}\) の電荷が受ける力」のことです。
今、点Cには \(q\,\text{C}\) の電荷を置きました。
なので、受ける力は単純に電場の \(q\) 倍になります。向きも電場と同じ上向きです。
答えは \(F_{\text{C}} = \frac{2kQqb}{(a^2 + b^2)^{\frac{3}{2}}}\)、向きは \(y\) 軸の正の向きです。
\(q=1\) とすれば電場の式と一致し、次元(単位)も \([\text{C}] \times [\text{N}/\text{C}] = [\text{N}]\) となり正しいです。
問(4)
思考の道筋とポイント
質点Pを点Cから点Dまで「静かにゆっくり」運びます。
「ゆっくり運ぶ」とは、運動エネルギーを変化させずに(常に速度ほぼゼロで)移動させることを意味します。
このとき、外力がする仕事 \(W_{\text{外力}}\) は、系の静電エネルギー(位置エネルギー)の増加分に等しくなります。
つまり、始点と終点の電位差を求めれば計算できます。
この設問における重要なポイント
- 外力の仕事と電位: 電荷 \(q\) を電位 \(V_{\text{始}}\) から \(V_{\text{終}}\) までゆっくり運ぶとき、外力がする仕事は \(W_{\text{外力}} = q(V_{\text{終}} – V_{\text{始}})\) です。
- 座標の確認:
- 始点 C: \((0, \frac{3a}{4})\) (\(b = \frac{3a}{4}\) を代入)
- 終点 D: \((-\frac{a}{3}, 0)\)
具体的な解説と立式
まず、始点Cと終点Dの電位 \(V_{\text{C}}, V_{\text{D}}\) をそれぞれ求めます。
1. 点C \((0, \frac{3a}{4})\) の電位 \(V_{\text{C}}\)
点A \((a, 0)\) および点B \((-a, 0)\) から点Cまでの距離 \(r_{\text{C}}\) は等しく、三平方の定理より求まります。
$$
\begin{aligned}
r_{\text{C}} &= \sqrt{a^2 + \left( \frac{3a}{4} \right)^2}
\end{aligned}
$$
電位 \(V_{\text{C}}\) は2つの電荷による電位の和です。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{C}} &= k\frac{Q}{r_{\text{C}}} + k\frac{Q}{r_{\text{C}}} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQ}{r_{\text{C}}}
\end{aligned}
$$
2. 点D \((-\frac{a}{3}, 0)\) の電位 \(V_{\text{D}}\)
点Dは \(x\) 軸上の点であり、\(|x| = |-\frac{a}{3}| = \frac{a}{3} < a\) なので、問(2)で求めた \(|x|<a\) の場合の式を利用できます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{D}} &= V\left( -\frac{a}{3} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2kQa}{a^2 – (-\frac{a}{3})^2}
\end{aligned}
$$
3. 外力の仕事 \(W_{\text{外力}}\)
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外力}} &= q(V_{\text{D}} – V_{\text{C}})
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事と電位差の関係: \(W = q\Delta V\)
まず \(r_{\text{C}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
r_{\text{C}} &= \sqrt{a^2 + \frac{9a^2}{16}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{16a^2 + 9a^2}{16}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{25a^2}{16}} \\[2.0ex]
&= \frac{5a}{4}
\end{aligned}
$$
これより \(V_{\text{C}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{C}} &= \frac{2kQ}{\frac{5a}{4}} \\[2.0ex]
&= \frac{8kQ}{5a}
\end{aligned}
$$
次に \(V_{\text{D}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{D}} &= \frac{2kQa}{a^2 – \frac{a^2}{9}} \\[2.0ex]
&= \frac{2kQa}{\frac{8a^2}{9}} \\[2.0ex]
&= 2kQa \times \frac{9}{8a^2} \\[2.0ex]
&= \frac{9kQ}{4a}
\end{aligned}
$$
最後に仕事を計算します。
$$
\begin{aligned}
W_{\text{外力}} &= q \left( \frac{9kQ}{4a} – \frac{8kQ}{5a} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{a} \left( \frac{9}{4} – \frac{8}{5} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{a} \left( \frac{45 – 32}{20} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{13kQq}{20a}
\end{aligned}
$$
点Cと点D、どちらが「電気的な高さ(電位)」が高いかを計算しました。
計算の結果、点Dの方が高いことが分かりました。
低い場所から高い場所へ荷物を持ち上げるには、外から力を加えて仕事をする必要があります。
その仕事の量は、「高さの差(電位差)」に「荷物の量(電荷)」を掛けたものになります。
答えは \(\frac{13kQq}{20a}\) です。
正の値になったので、電位の高い方へ運ぶために正の仕事をしたことを意味し、物理的に妥当です。
問(5)
思考の道筋とポイント
点Dで質点Pを静かに放すと、静電気力を受けて運動を始めます。
このとき働く力は静電気力(保存力)のみなので、力学的エネルギー保存則が成立します。
点D(初状態)と原点O(終状態)でのエネルギーを比較して、原点での速さ \(v_0\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 力学的エネルギー保存則: \((\text{運動エネルギー}) + (\text{静電エネルギー}) = \text{一定}\)
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 + qV &= \text{一定}
\end{aligned}
$$ - 電位の大小関係: 問(2)のグラフより、原点Oは電位の「谷(極小点)」です。点Dは原点より電位が高いため、正電荷Pは電位の低い原点に向かって加速します。
具体的な解説と立式
点Dでの速さは \(0\)、電位は \(V_{\text{D}} = \frac{9kQ}{4a}\)(問(4)の結果)です。
原点Oでの速さを \(v_0\)、電位は \(V(0) = \frac{2kQ}{a}\)(問(2)の結果)です。
エネルギー保存則の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{点Dでのエネルギー}) &= (\text{原点Oでのエネルギー}) \\[2.0ex]
0 + qV_{\text{D}} &= \frac{1}{2}mv_0^2 + qV(0)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則: \(\frac{1}{2}mv^2 + qV = \text{const.}\)
式を変形して \(v_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv_0^2 &= q(V_{\text{D}} – V(0)) \\[2.0ex]
&= q \left( \frac{9kQ}{4a} – \frac{2kQ}{a} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{a} \left( \frac{9}{4} – \frac{8}{4} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{4a}
\end{aligned}
$$
両辺を2倍して \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= \frac{2kQq}{4ma} \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{2ma} \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{\frac{kQq}{2ma}}
\end{aligned}
$$
点Dという「高い場所」からボール(電荷)を転がしました。
ボールは坂(電位の勾配)を下って加速し、一番低い場所である原点Oを通過します。
「高さの差」に相当する位置エネルギーの減少分が、すべて運動エネルギー(速さ)に変わったとして計算しました。
答えは \(v_0 = \sqrt{\frac{kQq}{2ma}}\) です。
ルートの中身は正であり、質量 \(m\) が大きいほど遅くなるなど、物理的な直感とも合致します。
思考の道筋とポイント
エネルギー保存則は、天から降ってきた公式ではなく、運動方程式を積分することで導かれる定理です。
ここでは、運動方程式から出発し、数学的な操作によってエネルギー保存則を導出し、問題を解いてみます。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式: \(m \frac{dv}{dt} = F(x)\)
- エネルギー積分の手法: 両辺に速度 \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けて時間積分するか、あるいは空間積分 \(\int dx\) を行います。
- 保存力とポテンシャル: 静電気力 \(F(x)\) は電位 \(V(x)\) を用いて \(F(x) = -q \frac{dV}{dx}\) と表されます。
具体的な解説と立式
\(x\) 軸上を運動する質点Pの運動方程式を立てます。位置 \(x\) で受ける力は \(F(x)\) です。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= F(x)
\end{aligned}
$$
ここで、\(F(x)\) は保存力なので、電位 \(V(x)\) の傾き(微分)で表せます。
$$
\begin{aligned}
F(x) &= -q \frac{dV(x)}{dx}
\end{aligned}
$$
運動方程式の両辺に \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
m v \frac{dv}{dt} &= -q \frac{dV}{dx} \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
この式を時刻 \(t\) で積分(または位置 \(x\) で積分)します。
左辺は \(\frac{d}{dt}(\frac{1}{2}mv^2)\)、右辺は \(-q \frac{dV}{dt}\) と見なせます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2}mv^2 \right) &= – \frac{d}{dt} (qV) \\[2.0ex]
\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2}mv^2 + qV \right) &= 0
\end{aligned}
$$
時間変化率が \(0\) なので、括弧の中身は一定です。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv^2 + qV &= \text{一定}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 合成関数の微分: \(\frac{d}{dt} f(x(t)) = f'(x) \frac{dx}{dt}\)
- 積分の基本: \(\int v dv = \frac{1}{2}v^2\)
これでエネルギー保存則が導かれました。
あとはメインの解法と同様に、点Dと原点Oでの値を代入して計算するだけです。
$$
\begin{aligned}
0 + qV_{\text{D}} &= \frac{1}{2}mv_0^2 + qV(0)
\end{aligned}
$$
この式を解くことで、全く同じ結果が得られます。
「力=質量×加速度」という運動の基本ルール(運動方程式)を変形していくと、自然と「エネルギー保存則」という便利なルールが現れます。
つまり、エネルギー保存則を使って解くということは、運動方程式を積分した結果を使って解いているのと同じことなのです。
原理から導出した保存則を用いることで、物理現象の理解がより深まります。結果はもちろん一致します。
問(6)
思考の道筋とポイント
電荷の配置が変わりました。
点B \((-a, 0)\) に \(+Q\)、点E \((\frac{2a}{3}, 0)\) に \(+Q\) があります。
この非対称な電場の中で、質点Pの速さが最大になる場所を探します。
エネルギー保存則 \(\frac{1}{2}mv^2 + qV = \text{一定}\) より、速さ \(v\) が最大になるのは、位置エネルギー \(qV\) が最小(電位 \(V\) が最小)になるときです。
2つの正電荷の間では、電位が極小になる点は「電場が \(0\) になる点(力がつりあう点)」と一致します。
この設問における重要なポイント
- 速さ最大条件: 位置エネルギー(電位)が最小の場所で、運動エネルギー(速さ)は最大になります。
- 極値と微分: 電位 \(V(x)\) が極値をとる場所では、その傾き(微分)である電場 \(E = -\frac{dV}{dx}\) が \(0\) になります。つまり、静電気力のつりあいの位置を探せばよいのです。
具体的な解説と立式
1. 速さが最大になる座標 \(x_{\text{M}}\) の導出
点B \((-a, 0)\) からの斥力と、点E \((\frac{2a}{3}, 0)\) からの斥力がつりあう点 \(x_{\text{M}}\) を探します。
点Pは2つの電荷の間(\(-a < x < \frac{2a}{3}\))を動くので、左の電荷からは右向き、右の電荷からは左向きの力を受けます。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの力}) &= (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
k\frac{Qq}{(x_{\text{M}} – (-a))^2} &= k\frac{Qq}{(\frac{2a}{3} – x_{\text{M}})^2}
\end{aligned}
$$
両辺の \(kQq\) を消去し、平方根をとります(距離は正なのでそのまま外せます)。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{x_{\text{M}} + a} &= \frac{1}{\frac{2a}{3} – x_{\text{M}}}
\end{aligned}
$$
これを解いて \(x_{\text{M}}\) を求めます。
2. 最大速さ \(v_{\text{M}}\) の導出
点D(スタート地点)と点M(速さ最大地点)でエネルギー保存則を立てます。
まず、新しい配置における点Dと点Mの電位 \(V_{\text{D}}, V_{\text{M}}\) を計算する必要があります。
配置: \(+Q\) at \(x=-a\), \(+Q\) at \(x=\frac{2a}{3}\)。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{D}} &= k\frac{Q}{|-\frac{a}{3} – (-a)|} + k\frac{Q}{|-\frac{a}{3} – \frac{2a}{3}|} \\[2.0ex]
V_{\text{M}} &= k\frac{Q}{|x_{\text{M}} – (-a)|} + k\frac{Q}{|x_{\text{M}} – \frac{2a}{3}|}
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則:
$$
\begin{aligned}
0 + qV_{\text{D}} &= \frac{1}{2}mv_{\text{M}}^2 + qV_{\text{M}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- クーロンの法則(力のつりあい)
- 点電荷の電位
- 力学的エネルギー保存則
座標 \(x_{\text{M}}\) の計算
$$
\begin{aligned}
\frac{2a}{3} – x_{\text{M}} &= x_{\text{M}} + a \\[2.0ex]
2x_{\text{M}} &= \frac{2a}{3} – a \\[2.0ex]
&= -\frac{a}{3} \\[2.0ex]
x_{\text{M}} &= -\frac{a}{6}
\end{aligned}
$$
電位 \(V_{\text{D}}\) の計算
点D \((-\frac{a}{3}, 0)\) と各電荷の距離を確認します。
Bとの距離: \(|-\frac{a}{3} – (-a)| = \frac{2a}{3}\)
Eとの距離: \(|-\frac{a}{3} – \frac{2a}{3}| = |-a| = a\)
$$
\begin{aligned}
V_{\text{D}} &= \frac{kQ}{\frac{2a}{3}} + \frac{kQ}{a} \\[2.0ex]
&= \frac{3kQ}{2a} + \frac{2kQ}{2a} \\[2.0ex]
&= \frac{5kQ}{2a}
\end{aligned}
$$
電位 \(V_{\text{M}}\) の計算
点M \((-\frac{a}{6}, 0)\) と各電荷の距離を確認します。
Bとの距離: \(|-\frac{a}{6} – (-a)| = \frac{5a}{6}\)
Eとの距離: \(|-\frac{a}{6} – \frac{2a}{3}| = |-\frac{5a}{6}| = \frac{5a}{6}\)
(中点なので距離は等しくなります)
$$
\begin{aligned}
V_{\text{M}} &= \frac{kQ}{\frac{5a}{6}} + \frac{kQ}{\frac{5a}{6}} \\[2.0ex]
&= \frac{6kQ}{5a} \times 2 \\[2.0ex]
&= \frac{12kQ}{5a}
\end{aligned}
$$
速さ \(v_{\text{M}}\) の計算
エネルギー保存則より:
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}mv_{\text{M}}^2 &= q(V_{\text{D}} – V_{\text{M}}) \\[2.0ex]
&= q \left( \frac{5kQ}{2a} – \frac{12kQ}{5a} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{a} \left( \frac{25}{10} – \frac{24}{10} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{10a}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{\text{M}}^2 &= \frac{2kQq}{10ma} \\[2.0ex]
&= \frac{kQq}{5ma} \\[2.0ex]
v_{\text{M}} &= \sqrt{\frac{kQq}{5ma}}
\end{aligned}
$$
2つの電荷の位置が変わりましたが、やることは同じです。
「速さが最大になる」=「一番低い場所(電位の谷底)に来る」ということです。
2つの山(正電荷)の間にある谷底は、ちょうど両側からの押し返す力が釣り合う場所です。
その場所を見つけ、そこでの「高さ(電位)」を計算し、スタート地点との落差からスピードを求めました。
座標は \(x_{\text{M}} = -\frac{a}{6}\)、速さは \(v_{\text{M}} = \sqrt{\frac{kQq}{5ma}}\) です。
\(x_{\text{M}}\) は \(-a\) と \(2a/3\) の中点になっており、等しい電荷の間では中点で力が釣り合うという直感と一致します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電位の重ね合わせの原理(スカラー和)
- 核心: 電位は「高さ」を表すスカラー量であるため、複数の電荷がある場合、それぞれの電荷が作る電位を単純に足し合わせるだけで全体の電位が求まります。
- 理解のポイント:
- 電場(ベクトル)のように矢印の向きや成分分解を考える必要がありません。
- ただし、点電荷の電位の公式 \(V=k\frac{Q}{r}\) における距離 \(r\) は必ず正の値(絶対値)で扱う必要があります。
- 静電気力による力学的エネルギー保存則
- 核心: 静電気力は保存力であるため、運動エネルギーと静電ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー \(qV\))の和は、電荷がどのように動いても一定に保たれます。
- 理解のポイント:
- 重力による位置エネルギー \(mgh\) と同様に、電位 \(V\) を「電気的な高さ」とみなすことで、物体が「高いところから低いところへ落ちる(加速する)」イメージで捉えられます。
- 外力が仕事をする場合、その仕事の分だけ力学的エネルギーが変化します(\(W_{\text{外力}} = \Delta E\))。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 対称配置された電荷の電場: 今回のように左右対称な配置では、合成電場の特定の成分(今回は \(x\) 成分)が打ち消し合って \(0\) になることが頻出です。計算前に図形的な対称性を見抜くことが時短の鍵です。
- 荷電粒子の最高速度を求める問題: 「速さが最大になる場所」を問われたら、エネルギー保存則の式を微分するのではなく、「力のつりあいの位置(=電位の極値)」を探すのが定石です。
- 初見の問題での着眼点:
- ベクトルかスカラーかの識別: 問われている量が「電場・力(ベクトル)」なのか「電位・エネルギー(スカラー)」なのかを最初に確認し、図に矢印を描くべきか、数値を足すべきかを判断します。
- 座標軸の領域分け: 絶対値記号を含む関数(距離 \(r=|x-a|\) など)が出てくる場合、電荷の位置を境界として数直線上の領域を分割し、符号ミスを防ぎます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電場と電位の計算方法の混同:
- 誤解: 電位を求めるときに、電場のようにベクトル分解して成分ごとに足そうとしてしまう、あるいは逆に電場をスカラー和で求めてしまう。
- 対策: 「電場=矢印(ベクトル合成)」「電位=高さ(単純な足し算)」と、物理量の性質を強く意識して区別します。
- 距離 \(r\) の符号ミス:
- 誤解: 公式 \(V=k\frac{Q}{r}\) の \(r\) に、座標 \(x\) をそのまま代入してしまい、\(x\) が負の領域で分母が負になってしまう。
- 対策: 公式の \(r\) は「距離」なので常に正です。必ず \(|x-a|\) のように絶対値を意識し、図を描いて「座標 \(x\) が負なら距離は \(-x\)」のように具体的に確認します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(5)(6)での力学的エネルギー保存則の選択:
- 選定理由: 運動方程式 \(ma=F\) を立てて加速度から速度を求めることも可能(別解参照)ですが、力が位置によって変化するため積分計算が複雑になります。時間 \(t\) を問われておらず、位置と速さの関係のみを知りたい場合は、エネルギー保存則が最短ルートです。
- 適用根拠: 働く力が静電気力(保存力)のみであり、摩擦や空気抵抗などの非保存力が仕事をしないため。
- 問(1)での成分分解による合成:
- 選定理由: 電場はベクトル量であり、単純な足し算ができないため。
- 適用根拠: クーロンの法則と重ね合わせの原理により、各電荷からのベクトル和として記述できるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(ディメンションチェック):
- 意識: 答えが出たら、文字式の次数を確認します。
- 実践:
- 電場 \(E\) や力 \(F\) は、分母が距離の2乗(\([\text{L}]^{-2}\))の次元を持ちます(例: 分母が \((a^2+b^2)^{3/2} \approx (\text{L}^2)^{3/2} = \text{L}^3\)、分子に \(b(\text{L})\) があるので \(\text{L}/\text{L}^3 = \text{L}^{-2}\) でOK)。
- 電位 \(V\) やエネルギー \(U\) は、分母が距離の1乗(\([\text{L}]^{-1}\))の次元を持ちます。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 極端な場所での振る舞いが物理的直感と合うか確認します。
- 実践:
- \(x \to \infty\)(無限遠)で電位や電場が \(0\) になるか?
- \(x=0\)(原点)で対称性(左右からの力が釣り合うなど)が式に現れているか?(例: 問(1)で \(b=0\) なら \(E=0\) になるか確認)。
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問題104 荷電粒子の運動 (22 電気通信大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解: 反発係数の式を用いた解法
- 模範解答は運動量保存則とエネルギー保存則を連立して解いていますが、別解では静電気力による相互作用を「弾性衝突」とみなし、反発係数 \(e=1\) の式を利用して計算量を大幅に削減します。
- 設問(1)〜(3)の別解1: 重心座標系を用いた解法
- 2物体の運動を「重心の運動」と「重心から見た相対運動」に分離して考えることで、最接近時の速度や衝突後の速度を直感的に導出します。
- 設問(1)〜(3)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
- 運動方程式から出発し、それを時間積分して運動量保存則を、空間積分してエネルギー保存則を導出します。これにより、保存則が成り立つ理由を原理から理解します。
- 設問(3)の別解: 反発係数の式を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 反発係数の利用: 連立方程式の計算ミスを防ぎ、迅速に解答にたどり着くための実戦的なテクニックです。
- 重心座標系: 2体問題の本質的な構造が見えやすくなり、複雑な計算を回避できるため、難関大入試で非常に強力な武器となります。
- 微積分の解法: 公式の暗記ではなく、ニュートンの運動方程式という基本原理から全ての物理法則が導かれる体系性を理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「保存力のみが働く2粒子系の運動」です。
摩擦や空気抵抗などの外力が働かず、内力である静電気力のみが作用するため、系全体として保存則が成立します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動量保存則: 外力が働かないため、系全体の運動量の総和は保存されます。
- 力学的エネルギー保存則: 静電気力は保存力であるため、運動エネルギーと静電ポテンシャルエネルギーの和は保存されます。
- 相対速度と最接近: 2物体が最も近づく瞬間、互いの相対速度は \(0\) になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、運動量保存則と「相対速度 \(0\)」の条件を用いて、最接近時の速度を求めます。
- (2)では、力学的エネルギー保存則を用いて、最接近距離を計算します。
- (3)では、再び遠ざかった状態(ポテンシャルエネルギー \(0\))について、運動量保存則とエネルギー保存則を連立させて速度を求めます。
- (4)では、得られた結果を質量比の関数としてグラフ化します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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