「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅵ 章 22】発展例題~発展問題557

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発展例題

発展例題46 RLC直列回路

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: インピーダンスのベクトル図(直角三角形)を用いた解法
      • 模範解答がインピーダンスの公式に数値を代入して2次方程式を解くのに対し、別解では抵抗とリアクタンスが作る直角三角形の辺の比(ベクトル図)に着目して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 視覚的理解の促進: 交流回路における抵抗、コイル、コンデンサーの電圧・インピーダンスの関係を、数式だけでなく図形(ベクトル)としてイメージする力が養われます。
    • 計算の効率化: 「3:4:5」などの有名な直角三角形の比を利用することで、複雑な2乗の計算や2次方程式を解く手間を省き、素早く答えにたどり着けます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「RLC直列回路におけるインピーダンスと共振」です。抵抗、コイル、コンデンサーを直列につないだ回路における電流の流れにくさ(インピーダンス)や、特定の周波数で電流が最大になる現象(共振)について扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. オームの法則の拡張: 交流回路でも、電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\)、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\)、インピーダンス \(Z\) の間に \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) の関係が成り立ちます。
  2. インピーダンスの構成: 抵抗 \(R\)、コイルのリアクタンス \(X_L\)、コンデンサーのリアクタンス \(X_C\) を直列にした場合、合成インピーダンス \(Z\) は \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) で表されます。
  3. 位相のずれ: コイルの電圧は電流より位相が \(\pi/2\) 進み、コンデンサーの電圧は電流より位相が \(\pi/2\) 遅れます。このずれがインピーダンスの式に反映されています。
  4. 共振回路: \(X_L = X_C\) となるとき、インピーダンス \(Z\) は最小値 \(R\) となり、流れる電流は最大になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた電源電圧と電流の実効値から、回路全体のインピーダンスを求めます。
  2. (2)では、(1)で求めたインピーダンスと、既知の抵抗値、コイルのリアクタンスを用いて、コンデンサーのリアクタンスを逆算します。
  3. (3)では、電流が最大になる条件(共振条件)を用いて、必要なコンデンサーのリアクタンスを求め、そこから電気容量を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
交流回路においても、直流回路のオームの法則と同様の関係式が成り立ちます。回路全体にかかる電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) と、回路全体を流れる電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) がわかっていれば、回路全体の電流の流れにくさを表す「インピーダンス \(Z\)」を求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 電源電圧の実効値 \(V_{\text{実効}} = 100\,\text{V}\)。
  • 電流の実効値 \(I_{\text{実効}} = 1.0\,\text{A}\)。
  • オームの法則 \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) が成立する。

具体的な解説と立式
回路全体について、オームの法則を適用します。
求めるインピーダンスを \(Z\) とすると、電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) と電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) の関係は以下のようになります。
$$ V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}} $$
この式を \(Z\) について解く形に変形して数値を代入します。

使用した物理公式

  • 交流回路のオームの法則: \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\)
計算過程

式に値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
100 &= Z \times 1.0 \\[2.0ex]
Z &= \frac{100}{1.0} \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2\,\Omega
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「電圧 \(100\,\text{V}\) をかけたら、\(1.0\,\text{A}\) の電流が流れた」という状況です。これはつまり、回路全体として「電流を妨げる能力(抵抗のようなもの)」が \(100\,\Omega\) 分あるということです。交流回路では、この総合的な電流の妨げ具合を「インピーダンス」と呼びます。

結論と吟味

答えは \(1.0 \times 10^2\,\Omega\) です。電圧と電流の比として単純に求まります。単位は抵抗と同じオーム \(\Omega\) です。

解答 (1) \(1.0 \times 10^2\,\Omega\)

問(2)

思考の道筋とポイント
RLC直列回路のインピーダンス \(Z\) は、抵抗 \(R\)、コイルのリアクタンス \(X_L\)、コンデンサーのリアクタンス \(X_C\) によって決まります。これらは単純な足し算ではなく、三平方の定理のような関係式(ベクトル和)で結ばれています。(1)で求めた \(Z\) と、問題文で与えられた \(R\)、\(X_L\) を公式に代入して、未知数 \(X_C\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • インピーダンスの公式 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) を用いる。
  • \(Z = 100\,\Omega\)、\(R = 80\,\Omega\)、\(X_L = 100\,\Omega\) である。
  • \(X_C\) についての2次方程式となるため、解が2つ出てくる可能性がある。

具体的な解説と立式
RLC直列回路のインピーダンス \(Z\) の公式は以下の通りです。
$$ Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2} $$
ここに、\(Z=100\)、\(R=80\)、\(X_L=100\) を代入します。
$$ 100 = \sqrt{80^2 + (100 – X_C)^2} $$

使用した物理公式

  • RLC直列回路のインピーダンス: \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\)
計算過程

根号を外すために両辺を2乗して計算を進めます。
$$
\begin{aligned}
100^2 &= 80^2 + (100 – X_C)^2 \\[2.0ex]
10000 &= 6400 + (100 – X_C)^2 \\[2.0ex]
(100 – X_C)^2 &= 10000 – 6400 \\[2.0ex]
(100 – X_C)^2 &= 3600
\end{aligned}
$$
ここで、\(3600 = 60^2\) なので、平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
100 – X_C &= \pm 60
\end{aligned}
$$
場合分けをして \(X_C\) を求めます。
(i) \(100 – X_C = 60\) のとき
$$
\begin{aligned}
X_C &= 100 – 60 \\[2.0ex]
&= 40\,\Omega
\end{aligned}
$$
(ii) \(100 – X_C = -60\) のとき
$$
\begin{aligned}
X_C &= 100 + 60 \\[2.0ex]
&= 160\,\Omega
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。\(160\) は \(1.6 \times 10^2\) と表記します。

この設問の平易な説明

抵抗、コイル、コンデンサーは、それぞれ電流を妨げる働きをしますが、コイルとコンデンサーは互いに打ち消し合う性質があります(位相が逆だからです)。
全体の妨げ具合(インピーダンス)が \(100\) になるようなコンデンサーの妨げ具合(リアクタンス)を探します。計算すると、コイルの働きを少し弱める場合(\(40\,\Omega\))と、コイルの働きを完全に打ち消してさらに逆方向に強く働く場合(\(160\,\Omega\))の2つのパターンが見つかります。

結論と吟味

\(X_C = 40\,\Omega, 1.6 \times 10^2\,\Omega\) の2つが答えとなります。どちらの値も正の値であり、物理的にあり得る設定です。

解答 (2) \(40\,\Omega, 1.6 \times 10^2\,\Omega\)
別解: インピーダンスのベクトル図(直角三角形)を用いた解法

思考の道筋とポイント
インピーダンス \(Z\) の式 \(Z^2 = R^2 + (X_L – X_C)^2\) は、直角三角形の三平方の定理 \((\text{斜辺})^2 = (\text{底辺})^2 + (\text{高さ})^2\) と同じ形をしています。これを利用して、図形的に解くことができます。
この設問における重要なポイント

  • 抵抗 \(R\) を底辺、リアクタンスの差 \(|X_L – X_C|\) を高さ、インピーダンス \(Z\) を斜辺とする直角三角形を考える。
  • 比が簡単な整数(ピタゴラス数)になっていないか確認する。

具体的な解説と立式
抵抗 \(R=80\)、インピーダンス \(Z=100\) です。
直角三角形の斜辺が \(100\)、底辺が \(80\) なので、高さにあたるリアクタンス成分の大きさ \(|X_L – X_C|\) を \(X_{\text{合計}}\) とすると、
$$ 100^2 = 80^2 + X_{\text{合計}}^2 $$
という関係が成り立ちます。

使用した物理公式

  • 三平方の定理(ピタゴラスの定理)
計算過程

辺の比を見ると、
$$ R : Z = 80 : 100 = 4 : 5 $$
となっています。これは有名な「\(3:4:5\)」の直角三角形です。
したがって、残りの辺(高さ)の比は \(3\) に相当します。
$$
\begin{aligned}
X_{\text{合計}} : R &= 3 : 4 \\[2.0ex]
X_{\text{合計}} : 80 &= 3 : 4 \\[2.0ex]
X_{\text{合計}} &= 60\,\Omega
\end{aligned}
$$
つまり、コイルとコンデンサーのリアクタンスの差の絶対値が \(60\,\Omega\) であればよいことになります。
$$ |100 – X_C| = 60 $$
これより、
$$ 100 – X_C = 60 \quad \text{または} \quad 100 – X_C = -60 $$
よって、
$$ X_C = 40\,\Omega, \quad 160\,\Omega $$

この設問の平易な説明

「斜めの長さが100、横の長さが80の直角三角形の、縦の長さは?」という問題に置き換えることができます。「3:4:5」の三角形を知っていれば、計算しなくても縦の長さが60だとすぐにわかります。あとは、コイルとコンデンサーの差が60になればよいので、足し算と引き算だけで答えが出せます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。検算としても非常に有効な方法です。

解答 (2) \(40\,\Omega, 1.6 \times 10^2\,\Omega\)

問(3)

思考の道筋とポイント
「電流の実効値が最大となる」という条件は、回路のインピーダンス \(Z\) が最小になることを意味します。インピーダンスの式 \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) を見ると、\(R\) は定数なので、\((X_L – X_C)^2\) が \(0\) になるとき、つまり \(X_L = X_C\) のときに \(Z\) は最小値 \(R\) をとります。これを「共振」と呼びます。
この設問における重要なポイント

  • 電流最大 \(\Leftrightarrow\) インピーダンス最小 \(\Leftrightarrow\) 共振状態。
  • 共振条件: \(X_L = X_C\)。
  • コンデンサーのリアクタンスの公式: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)。

具体的な解説と立式
電流が最大になるのは、インピーダンス \(Z\) が最小になるときです。
$$ Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2} $$
において、\(Z\) が最小になるのは \(X_L – X_C = 0\)、すなわち \(X_C = X_L\) のときです。
与えられた条件より \(X_L = 100\,\Omega\) なので、
$$ X_C = 100\,\Omega $$
となります。
コンデンサーのリアクタンスの公式 \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) より、電気容量 \(C\) を求める式を立てます。
$$ 100 = \frac{1}{2\pi f C} $$
これを \(C\) について解きます。
$$ C = \frac{1}{2\pi f \times 100} $$

使用した物理公式

  • 共振条件: \(X_L = X_C\)
  • コンデンサーのリアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi f C}\)
計算過程

数値(\(\pi=3.1\), \(f=50\))を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
C &= \frac{1}{2 \times 3.1 \times 50 \times 100} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{310 \times 100} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{31000} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3.1 \times 10^4} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{3.1} \times 10^{-4}
\end{aligned}
$$
ここで、\(1 \div 3.1\) を計算します。
$$ 1 \div 3.1 \approx 0.3225… $$
したがって、
$$
\begin{aligned}
C &\approx 0.322 \times 10^{-4} \\[2.0ex]
&= 3.22 \times 10^{-5}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$ C = 3.2 \times 10^{-5}\,\text{F} $$

この設問の平易な説明

コイルとコンデンサーが互いの働きを完全に打ち消し合う状態(共振)になれば、電流を邪魔するものは抵抗だけになり、電流は一番流れやすくなります。
コイルの邪魔具合が \(100\) なので、コンデンサーの邪魔具合も \(100\) になるように容量 \(C\) を調整します。あとは公式を使って逆算するだけです。

結論と吟味

答えは \(3.2 \times 10^{-5}\,\text{F}\) です。コンデンサーの容量として、マイクロファラド(\(\mu\text{F} = 10^{-6}\,\text{F}\))のオーダーに近い値であり、現実的な数値です。分母が大きくなる計算なので、指数の扱いに注意が必要です。

解答 (3) \(3.2 \times 10^{-5}\,\text{F}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 交流回路におけるインピーダンスのベクトル的性質
    • 核心: 交流回路では、抵抗 \(R\)、コイルのリアクタンス \(X_L\)、コンデンサーのリアクタンス \(X_C\) は、単純な足し算ではなく、位相のずれを考慮した「ベクトル和」として合成されるという点です。
    • 理解のポイント:
      • 抵抗の電圧は電流と同位相。
      • コイルの電圧は電流より \(\pi/2\) 進む。
      • コンデンサーの電圧は電流より \(\pi/2\) 遅れる。
      • これにより、コイルとコンデンサーの効果は互いに逆向き(\(180^\circ\) の位相差)となり、打ち消し合います。この結果、インピーダンス \(Z\) は直角三角形の斜辺として \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) と計算されます。
  • 共振現象の物理的意味
    • 核心: 特定の条件(\(X_L = X_C\))において、コイルとコンデンサーの電圧が完全に打ち消し合い、回路があたかも「抵抗のみ」のように振る舞う現象です。
    • 理解のポイント:
      • このときインピーダンス \(Z\) は最小値 \(R\) となり、電源電圧が一定なら電流は最大になります。
      • エネルギーの視点で見ると、コイルの磁気エネルギーとコンデンサーの静電エネルギーが、電源からの供給なしに互いに行き来している状態(振動)と捉えることもできます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 周波数が変化する問題: 今回は \(C\) を変えましたが、周波数 \(f\) を変える問題も頻出です。\(X_L = 2\pi f L\)(周波数に比例)と \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\)(周波数に反比例)のグラフを描き、交点が共振周波数であることを視覚的に理解しましょう。
    • 並列回路の問題: RLC並列回路では、電圧が共通で電流の位相がずれます。この場合、インピーダンスではなく「アドミタンス(流れやすさ)」をベクトル合成するか、電流のベクトル図を描いて考えるのが定石です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. ベクトル図(フェーザ図)をラフに描く: 抵抗を右向き、コイルを上向き、コンデンサーを下向きのベクトルとして描くと、全体のインピーダンスや電圧の関係が一目でわかります。
    2. 「最大・最小」のキーワードに反応する: 「電流が最大」「電圧が最大」といった言葉があれば、十中八九「共振」か「微分の利用」です。まずは共振条件 \(X_L = X_C\) を疑いましょう。
    3. 単位に注意する: コンデンサーの容量は \(\mu\text{F}\)(マイクロファラド)などで与えられることが多いです。計算時は必ず \(\text{F}\)(ファラド)に直すことを忘れずに。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • インピーダンスを単純な足し算で求めてしまう
    • 誤解: 直流回路の合成抵抗のように、\(Z = R + X_L + X_C\) と計算してしまう。
    • 対策: 「交流ではコイルとコンデンサーは喧嘩する(逆向きになる)」と覚えましょう。必ず三平方の定理の形(ルートと2乗)になります。
  • 2次方程式の解の片方を見落とす
    • 誤解: (2)のような問題で、\((100 – X_C)^2 = 3600\) を解く際に、\(100 – X_C = 60\) だけを考えて、\(100 – X_C = -60\) のケース(\(X_C\) が大きい場合)を忘れてしまう。
    • 対策: 2乗を外すときは必ず \(\pm\) をつける癖をつけましょう。物理的にも「コイルより弱いコンデンサー」と「コイルより強いコンデンサー」の2パターンがあり得るとイメージすることが大切です。
  • 共振条件の式を丸暗記して適用ミスをする
    • 誤解: 共振周波数の公式 \(f = \displaystyle\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) だけを覚えていて、今回のように \(C\) を求める問題で式変形を間違える。
    • 対策: 公式の丸暗記ではなく、根本原理である \(X_L = X_C\)(リアクタンスが等しい)からスタートする習慣をつけましょう。そこから \(2\pi f L = \displaystyle\frac{1}{2\pi f C}\) と立式すれば、どんな未知数に対しても柔軟に対応できます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での公式選択(交流のオームの法則)
    • 選定理由: 電圧と電流の「実効値」の関係を結びつけるのは、インピーダンス \(Z\) を比例定数としたオームの法則の拡張形 \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) です。
    • 適用根拠: 問題文で \(V_{\text{実効}}\) と \(I_{\text{実効}}\) が与えられており、回路全体の特性(\(Z\))を問われているため、この式が直結します。
  • (2)での公式選択(インピーダンスの定義式)
    • 選定理由: RLC直列回路の構成要素(\(R, L, C\))と合成インピーダンス \(Z\) の関係を表す唯一の式が \(Z = \sqrt{R^2 + (X_L – X_C)^2}\) です。
    • 適用根拠: (1)で求めた \(Z\) を構成要素に分解して解析する必要があるため、この定義式を用います。別解のベクトル図も、この数式を幾何学的に表現したものです。
  • (3)での公式選択(共振条件)
    • 選定理由: 「電流が最大」という現象は、インピーダンスが最小になることであり、数式上 \((X_L – X_C)^2 = 0\) となることです。
    • 適用根拠: 微分などを使わなくても、平方完成された式の形から明らかに最小値の条件が \(X_L = X_C\) であると判断できるため、これを第一原理として採用します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 大きな桁と小さな桁の分離
    • \(C\) の計算では、分母に \(100\) や \(50\) があり、答えは \(10^{-5}\) のオーダーになります。数値(\(3.1, 2, 5\) など)と、\(10\) のべき乗(\(10^2, 10^{-1}\) など)を分けて計算するとミスが減ります。
    • 例: \(\displaystyle\frac{1}{2 \times 3.1 \times 50 \times 100} = \frac{1}{(2 \times 50) \times 3.1 \times 100} = \frac{1}{100 \times 3.1 \times 100} = \frac{1}{3.1 \times 10^4}\)
  • \(\pi\) の計算は最後に行う
    • 途中で \(\pi = 3.1\) を代入して掛け算や割り算を繰り返すと、計算量が増えて誤差も出やすくなります。できるだけ \(\pi\) のまま式変形を進め、最後に1回だけ代入して計算しましょう。今回は分母にきれいな数字が並んでいたので早めに代入しても良いですが、原則は「代入は最後」です。
  • 概算による検算
    • (2)で \(X_C = 40, 160\) と出たとき、\(|100 – 40| = 60\)、\(|100 – 160| = 60\) となり、\(R=80\) と合わせて \(60:80:100\)(\(3:4:5\))が成立しているかを暗算で確認します。これにより、計算ミスを即座に発見できます。

発展例題47 電気振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 力学的な単振動とのアナロジー(類推)を用いた解法
      • 模範解答が電圧の変化から直接グラフを描いているのに対し、別解では電気振動を「ばね振り子の単振動」に対応させ、物理的な直感を用いてグラフの形を導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 目に見えない電気現象(電荷の移動)を、目に見える力学現象(おもりの振動)に置き換えて理解することで、現象のイメージが具体化されます。
    • 思考の柔軟性向上: 全く異なる分野(電磁気と力学)に共通する数学的構造(微分方程式)に気付くことで、物理学全体の統一的な理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答え(グラフの形状)は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「LC回路における電気振動」です。コンデンサーとコイルだけで構成された回路では、エネルギーが電場と磁場の間を行き来し、電流や電圧が周期的に変化する「電気振動」という現象が起こります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電気振動の周期性: コンデンサーの電圧や電荷、コイルを流れる電流は、単振動と同じように時間とともに正弦波(サインカーブやコサインカーブ)を描いて変化します。
  2. 固有周期の公式: LC回路が振動する周期 \(T\) は、コイルの自己インダクタンス \(L\) とコンデンサーの電気容量 \(C\) によって決まり、\(T = 2\pi\sqrt{LC}\) で表されます。
  3. エネルギー保存則: コンデンサーの静電エネルギー \(\frac{1}{2}CV^2\) とコイルの磁気エネルギー \(\frac{1}{2}LI^2\) の和は一定に保たれます(抵抗がない場合)。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、電圧が変化する時間的な情報から振動の周期 \(T\) を特定し、固有周期の公式を用いて自己インダクタンス \(L\) を逆算します。
  2. (2)では、初期条件(スイッチを入れた瞬間の電荷)と振動の周期性をもとに、電荷 \(Q\) の時間変化を表すグラフを描きます。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、問題文の「電圧がはじめて \(0\) となった」という情報が、振動のサイクルのどの部分に当たるかを読み取ります。
電気振動では、電圧は「最大値 \(\rightarrow\) \(0\) \(\rightarrow\) 最小値(負の最大) \(\rightarrow\) \(0\) \(\rightarrow\) 最大値」という変化を1周期として繰り返します。
したがって、最大値(初期状態)から初めて \(0\) になるまでの時間は、周期 \(T\) の \(1/4\) に相当します。
この設問における重要なポイント

  • 初期状態(\(t=0\))でコンデンサーは充電されており、電圧は最大値 \(10\,\text{V}\)。
  • 電圧が最大値から \(0\) になるまでの時間は \(1/4\) 周期である。
  • 固有周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{LC}\) が成立する。
  • \(\pi = 3.1\) という近似値が与えられているため、計算の工夫が必要。

具体的な解説と立式
まず、周期 \(T\) を求めます。
電圧が最大値から \(0\) になるまでの時間が \(6.2 \times 10^{-3}\,\text{s}\) なので、これが \(1/4\) 周期に相当します。
$$ \frac{T}{4} = 6.2 \times 10^{-3} $$
これより、周期 \(T\) を求める式は以下のようになります。
$$ T = 4 \times (6.2 \times 10^{-3}) \quad \cdots ① $$

次に、自己インダクタンス \(L\) を求めます。
LC回路の固有周期の公式は以下の通りです。
$$ T = 2\pi\sqrt{LC} $$
この式を \(L\) について解くために、両辺を2乗して変形します。
$$ T^2 = 4\pi^2 LC $$
$$ L = \frac{T^2}{4\pi^2 C} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 電気振動の周期: \(T = 2\pi\sqrt{LC}\)
計算過程

まず、式①より周期 \(T\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= 4 \times 6.2 \times 10^{-3} \\[2.0ex]
&= 24.8 \times 10^{-3} \\[2.0ex]
&= 2.48 \times 10^{-2}\,\text{s}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(T = 2.5 \times 10^{-2}\,\text{s}\) です。

次に、\(L\) を計算します。ここで、\(T\) の値をそのまま代入するのではなく、\(6.2 = 2 \times 3.1 = 2\pi\) であることに注目して計算を工夫すると、劇的に楽になります。
式①より \(T = 4 \times (2 \times 3.1 \times 10^{-3}) = 8\pi \times 10^{-3}\) とみなせます(\(\pi=3.1\) なので)。
これを式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{(8\pi \times 10^{-3})^2}{4\pi^2 \times (1.0 \times 10^{-3})} \\[2.0ex]
&= \frac{64\pi^2 \times 10^{-6}}{4\pi^2 \times 10^{-3}}
\end{aligned}
$$
分母と分子の \(\pi^2\) が約分されて消えます。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{64}{4} \times \frac{10^{-6}}{10^{-3}} \\[2.0ex]
&= 16 \times 10^{-3} \\[2.0ex]
&= 1.6 \times 10^{-2}\,\text{H}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コンデンサーに溜まった電気が一気に放出されて空っぽになる(電圧が0になる)までの時間が、振動の「4分の1拍子」に当たります。そこから「1拍子(周期)」の長さを計算しました。
また、この周期はコイルの大きさ(\(L\))とコンデンサーの大きさ(\(C\))だけで決まるという性質を使って、逆算してコイルの大きさを求めました。計算の際、与えられた数値 \(6.2\) が \(\pi\) の2倍であることに気づくと、面倒な計算を回避できます。

結論と吟味

周期は \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{s}\)、自己インダクタンスは \(1.6 \times 10^{-2}\,\text{H}\) です。
単位はそれぞれ秒(\(\text{s}\))とヘンリー(\(\text{H}\))で正しいです。計算結果も無理のない数値範囲に収まっています。

解答 (1) 周期: \(2.5 \times 10^{-2}\,\text{s}\), 自己インダクタンス: \(1.6 \times 10^{-2}\,\text{H}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
コンデンサーの上側の極板の電荷 \(Q\) の時間変化をグラフにします。
まず、初期状態(\(t=0\))での電荷 \(Q_0\) を求めます。
次に、電気振動において電荷 \(Q\) が時間とともにどのように変化するか(コサインカーブ)を考え、周期 \(T\) の情報を使ってグラフの概形を描きます。
この設問における重要なポイント

  • 初期電荷 \(Q_0 = CV\)。
  • \(t=0\) で電圧が正の最大値なので、電荷も正の最大値からスタートする。
  • グラフは周期 \(T\) の余弦曲線(コサインカーブ)となる。

具体的な解説と立式
まず、最大電荷(初期電荷)\(Q_0\) を求めます。
電気容量 \(C = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{F}\)、初期電圧 \(V = 10\,\text{V}\) より、
$$ Q_0 = CV = (1.0 \times 10^{-3}) \times 10 $$

次に、グラフの形状を決定します。
\(t=0\) で \(Q = Q_0\)(最大値)です。
その後、\(t = T/4\) で \(Q = 0\)、\(t = T/2\) で \(Q = -Q_0\)(負の最大値)、\(t = 3T/4\) で \(Q = 0\)、\(t = T\) で \(Q = Q_0\) と変化します。
これは余弦関数 \(Q = Q_0 \cos(\omega t)\) の形です。

使用した物理公式

  • コンデンサーの電気量: \(Q = CV\)
計算過程

最大電荷 \(Q_0\) の計算:
$$
\begin{aligned}
Q_0 &= 1.0 \times 10^{-3} \times 10 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^{-2}\,\text{C}
\end{aligned}
$$
グラフの重要ポイントの座標:

  • \(t=0\): \(Q = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{C}\)
  • \(t=T/4 \approx 0.62 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(Q = 0\)
  • \(t=T/2 \approx 1.2 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(Q = -1.0 \times 10^{-2}\,\text{C}\)
  • \(t=T \approx 2.5 \times 10^{-2}\,\text{s}\): \(Q = 1.0 \times 10^{-2}\,\text{C}\)

これらを滑らかな曲線で結びます。

この設問の平易な説明

最初にコンデンサーに溜まっていた電気の量(\(Q_0\))を計算します。
スイッチを入れると、電気はコイルを通って反対側の極板へ移動し始めます。最初は満タン(最大値)ですが、だんだん減ってゼロになり、今度は逆向きに溜まってマイナスの満タン(最小値)になります。この様子は、バネにつけたおもりを引っ張って離したときの動きと同じで、波のような形(コサインカーブ)になります。

結論と吟味

縦軸の最大値が \(1.0 \times 10^{-2}\)、横軸の1周期が \(2.5 \times 10^{-2}\) となる余弦曲線を描きます。初期値が正の最大値から始まっていることを確認してください。

解答 (2) (グラフの概形)
縦軸 \(Q\,[\times 10^{-2}\,\text{C}]\)、横軸 \(t\,[\times 10^{-2}\,\text{s}]\) で、\(t=0\) で \(Q=1.0\)、\(t=0.62\) 付近で \(Q=0\)、\(t=1.24\) 付近で \(Q=-1.0\)、\(t=2.48\) 付近で \(Q=1.0\) となる余弦曲線(コサインカーブ)。
別解: 力学的な単振動とのアナロジー(類推)を用いた解法

思考の道筋とポイント
電気振動の方程式は、力学の単振動の方程式と全く同じ形をしています。この対応関係(アナロジー)を利用すると、計算しなくても直感的にグラフの形がわかります。
この設問における重要なポイント

  • 電荷 \(Q\) は、ばね振り子の変位 \(x\) に対応する。
  • 電流 \(I\) は、ばね振り子の速度 \(v\) に対応する。
  • コイル \(L\) は質量 \(m\)、コンデンサー \(1/C\) はばね定数 \(k\) に対応する。
  • 初期条件「\(Q\)が最大、\(I=0\)」は、「ばねを最大まで伸ばして静止させた状態」に対応する。

具体的な解説と立式
電気振動の回路方程式(キルヒホッフの法則)は以下のようになります。
$$ L\frac{dI}{dt} + \frac{Q}{C} = 0 $$
ここで \(I = \frac{dQ}{dt}\) なので、
$$ L\frac{d^2Q}{dt^2} + \frac{1}{C}Q = 0 $$
これは、単振動の運動方程式 \(m\frac{d^2x}{dt^2} + kx = 0\) と完全に同じ形です。
対応関係は以下の通りです。

  • \(Q \leftrightarrow x\) (電荷 \(\leftrightarrow\) 変位)
  • \(L \leftrightarrow m\) (自己インダクタンス \(\leftrightarrow\) 質量)
  • \(\frac{1}{C} \leftrightarrow k\) (電気容量の逆数 \(\leftrightarrow\) ばね定数)

今回の初期条件は、「\(t=0\) で \(Q\) が最大値 \(Q_0\)、電流 \(I=0\)」です。
これを力学に置き換えると、「\(t=0\) でおもりを平衡点から距離 \(A\) だけ引っ張り(\(x=A\))、静かに手を離した(\(v=0\))」という状況です。
このとき、おもりの変位 \(x\) は \(x = A \cos(\omega t)\) という動きをします。
したがって、対応する電荷 \(Q\) も \(Q = Q_0 \cos(\omega t)\) というグラフになることが、計算せずとも物理的な直感から導けます。

この設問の平易な説明

電気の振動は、目に見えない現象ですが、実は「ばねにつるしたおもりの振動」と全く同じルールで動いています。
「コンデンサーに電気を溜めてスイッチオン」は、「ばねを引っ張ってパッと手を離す」のと同じです。
引っ張って離した直後のおもりの動きを想像してください。一番端っこからスタートして、真ん中を通り過ぎ、反対側の端っこまで行って戻ってきますよね。その動きをグラフにすると、今回の答えと同じ形になります。

結論と吟味

数式による厳密な導出をしなくても、物理現象の類似性(アナロジー)を利用することで、正しいグラフの形状(コサインカーブ)を自信を持って描くことができます。

解答 (2) メインの解法と同じグラフになります。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 電気振動と単振動の数学的等価性
    • 核心: LC回路における電荷 \(Q\) の時間変化は、力学におけるばね振り子の単振動と全く同じ微分方程式(\(L\ddot{Q} + \frac{1}{C}Q = 0\))に従います。
    • 理解のポイント:
      • コンデンサーの静電エネルギー \(\frac{1}{2}CV^2\) はばねの弾性エネルギー \(\frac{1}{2}kx^2\) に、コイルの磁気エネルギー \(\frac{1}{2}LI^2\) は運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) に対応します。
      • エネルギーが形を変えながら保存されるため、永遠に(抵抗がなければ)振動が続きます。
  • 固有周期の決定要因
    • 核心: 振動の周期 \(T\) は、回路の定数である \(L\) と \(C\) のみによって決まり、初期電荷や電圧の大きさには依存しません(単振り子の等時性と同じ)。
    • 理解のポイント:
      • \(T = 2\pi\sqrt{LC}\) という公式は、次元解析(単位の確認)でも導けるほど重要です。\(L\) が大きい(慣性が大きい)ほど、\(C\) が大きい(ばねが柔らかい)ほど、周期は長くなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電流 \(I\) のグラフを描く問題: 電荷 \(Q\) のグラフが描けたら、その傾き(微分)が電流 \(I\) になります(ただし符号に注意)。\(Q\) がコサインなら \(I\) はサイン(またはマイナスサイン)になります。
    • エネルギーのグラフを描く問題: 静電エネルギー \(U_E \propto Q^2\) と磁気エネルギー \(U_M \propto I^2\) のグラフは、周期が半分の正弦波の2乗の形(山が2倍の頻度で現れる)になります。和は常に一定です。
    • 振動中心がずれる問題: 電池を含んだ回路では、振動の中心が \(Q=0\) ではなく \(Q=CV\)(電池電圧まで充電された状態)になることがあります。力学で言う「鉛直ばね振り子」と同じ扱いです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 初期条件を確認する: \(t=0\) でコンデンサーが充電済み(\(Q\)最大、\(I=0\))なのか、それともスイッチを入れた瞬間に電流が流れているのか。これがグラフのスタート地点(サインかコサインか)を決めます。
    2. 周期の何分の一かを判定する: 「初めて0になる」「初めて逆向きに最大になる」といった記述から、それが \(T/4\) なのか \(T/2\) なのかを読み取ります。
    3. \(\pi\) の処理を工夫する: 問題文に \(\pi=3.1\) や \(\pi^2=10\) などの近似値が与えられている場合、計算の最終段階まで \(\pi\) を文字のまま残しておくと、約分できて計算が楽になることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 周期と時間の取り違え
    • 誤解: 「電圧が0になるまでの時間」をそのまま周期 \(T\) だと思い込んでしまう。
    • 対策: 正弦波のグラフを必ずラフに描き、問題文の時間が1サイクルのどの部分(1/4, 1/2など)に相当するかを視覚的に確認しましょう。
  • 電流の向きと符号の混乱
    • 誤解: \(I = \frac{dQ}{dt}\) なのか \(I = -\frac{dQ}{dt}\) なのか迷い、グラフの位相が反転してしまう。
    • 対策: コンデンサーから電荷が「減る」ときに電流が流れるなら \(I = -\frac{dQ}{dt}\)、回路の向きの設定によってはプラスになります。物理的に「電荷が減ると電流が増える」というエネルギーの移動をイメージすると間違いにくいです。
  • 計算時の単位変換ミス
    • 誤解: \(\mu\text{F}\)(マイクロ)や \(\text{mH}\)(ミリ)をそのまま計算に使ってしまう。
    • 対策: 必ず基本単位(\(\text{F}, \text{H}, \text{A}, \text{V}, \text{s}\))に直してから公式に代入する癖をつけましょう。特に2乗の計算が含まれる場合、指数のミスが命取りになります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での公式選択(固有周期の公式)
    • 選定理由: LC回路の振動周期を求めるための唯一にして絶対的な公式が \(T = 2\pi\sqrt{LC}\) です。
    • 適用根拠: 問題文から周期 \(T\) の値が間接的に(\(T/4\) として)与えられており、\(C\) も既知であるため、この式を変形して \(L\) を求めるのが最短ルートです。
  • (2)での公式選択(電荷の定義式と三角関数)
    • 選定理由: 電荷の最大値を求めるには \(Q=CV\) が必要です。また、時間変化を記述するには、単振動の変位を表す三角関数(\(\sin\) または \(\cos\))が最適です。
    • 適用根拠: 初期条件が「最大変位からスタート」なので、\(\cos\) 型の関数を選択します。振幅は \(Q_0\)、角周波数は \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) で決定されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • \(\pi\) を味方につける
    • 今回のように \(6.2 \approx 2\pi\) という数値設定は物理の問題では頻出です。\(3.14\) を代入して筆算する前に、「これは \(\pi\) の倍数ではないか?」と疑うだけで、計算時間を大幅に短縮し、ミスを減らせます。
  • 指数の計算を丁寧に行う
    • \(10^{-3}\) や \(10^{-6}\) が頻繁に出てくるので、数値部分と指数部分を分けて計算用紙に書くことをお勧めします。
    • 例: \(L = \frac{(8\pi \times 10^{-3})^2}{4\pi^2 \times 10^{-3}} = \frac{64\pi^2}{4\pi^2} \times \frac{10^{-6}}{10^{-3}} = 16 \times 10^{-3}\)
  • グラフの概形チェック
    • 描いたグラフが \(t=0\) で最大値になっているか、\(t=T/4\) で0を通っているか、極大・極小の値が \(\pm Q_0\) になっているかを確認します。これだけで符号ミスや位相のずれを防げます。
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発展問題

553 磁場中のコイル

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: ファラデーの電磁誘導の法則を用いる解法
      • 模範解答が各辺に生じる誘導起電力(ローレンツ力由来)を足し合わせるのに対し、別解ではコイルを貫く磁束の時間変化から一気にコイル全体の誘導起電力を求めます。
    • 設問(5)の別解: エネルギー保存則(仕事率と消費電力の関係)を用いる解法
      • 模範解答が力のモーメントのつりあいから解くのに対し、別解では「外力がする仕事率=抵抗での消費電力」というエネルギー収支の関係を用いて解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 局所的な力(ローレンツ力)の視点と、大局的な場(磁束変化)やエネルギーの視点を行き来することで、電磁気学の深い理解につながります。
    • 計算の効率化: 特に(5)のエネルギー保存則を用いる方法は、力の向きやモーメントの腕の長さを考える必要がなく、計算ミスを減らせる強力な武器になります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「磁場中を回転するコイル(交流発電機の原理)」です。電磁誘導の法則と力学的な運動(円運動、力のモーメント)が融合した、入試頻出の重要テーマです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ローレンツ力と誘導起電力: 磁場中を運動する導体棒には、ローレンツ力によって誘導起電力が生じます(\(V = vBL \sin \theta\))。
  2. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じます(\(V = – \Delta \Phi / \Delta t\))。
  3. オームの法則: 回路に流れる電流は、起電力と抵抗によって決まります(\(V = RI\))。
  4. 力のモーメントとエネルギー保存: 一定の角速度で回転させるためには、電磁力による抵抗モーメントに打ち勝つ外力のモーメントが必要です。これはエネルギー収支の観点からも理解できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、回転運動の幾何学的な関係から速度と角度を求めます。
  2. (2)(3)では、導体棒(コイルの辺)が磁場を横切ることで生じる誘導起電力を計算します。
  3. (4)では、キルヒホッフの法則(オームの法則)を用いて電流を求め、レンツの法則で向きを判断します。
  4. (5)では、電流が磁場から受ける力(電磁力)を求め、その力のモーメントと外力のモーメントがつりあう条件から外力を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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