基本問題
438 静電気力と電場
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 座標軸を設定して電場を符号付きで計算する解法
- 模範解答が電場の大きさを個別に求めて図形的に合成(引き算)しているのに対し、別解では座標軸(右向き正)を設定し、電場を符号付きの値(成分)として扱い、代数的に和を計算します。
- 設問(3)の別解: クーロンの法則を用いて直接力を合成する解法
- 模範解答が(2)で求めた電場を用いて \(F=qE\) から力を求めているのに対し、別解では点Cの電荷がA、Bそれぞれの電荷から受けるクーロン力を個別に計算し、それらを合成して求めます。
- 設問(2)の別解: 座標軸を設定して電場を符号付きで計算する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 汎用性の向上: 座標軸を設定する方法は、電荷の数が増えたり配置が複雑になったりした場合でも、符号のミスを防ぎ機械的に計算できる強力なツールです。
- 物理的本質の理解: 「電場を経由して力を求める方法」と「個々の電荷からの力を直接合成する方法」が同じ結果になることを確認することで、電場という概念の有用性とクーロンの法則との整合性を深く理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答え(大きさ・向き)は模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「点電荷がつくる電場と静電気力の重ね合わせ」です。複数の電荷が存在する空間で、特定の点における電場の強さを求めたり、その点に置かれた電荷が受ける力を計算したりする手順をマスターします。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- クーロンの法則: 2つの点電荷の間にはたらく静電気力の大きさは、電気量の積に比例し、距離の2乗に反比例すること。
- 点電荷のつくる電場: 点電荷の周囲には電場ができ、その強さは距離の2乗に反比例すること。正電荷からは湧き出し、負電荷へは吸い込まれる向きであること。
- 重ね合わせの原理: 複数の電荷が作る電場(または力)は、それぞれの電荷が単独で作る電場(または力)のベクトル和になること。
- 電場と静電気力の関係: 電場 \(\vec{E}\) の中にある電荷 \(q\) は、\(\vec{F} = q\vec{E}\) の力を受けること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、クーロンの法則の公式に値を代入して、2つの電荷間にはたらく力の大きさを計算します。
- (2)では、点Aと点Bにある電荷がそれぞれ点Cに作る電場ベクトル(大きさと向き)を求めます。それらを合成(ベクトル和)して、点Cにおける合成電場を求めます。
- (3)では、(2)で求めた電場を用いて、点Cに置かれた電荷が受ける力を計算します。負電荷は電場と逆向きに力を受ける点に注意します。
問(1)
思考の道筋とポイント
2つの点電荷の間にはたらく静電気力の大きさを求める問題です。クーロンの法則の公式をそのまま適用します。電荷の符号(プラス・マイナス)は力の向き(引力か斥力か)に関係しますが、ここでは「大きさ」を問われているので、電気量の絶対値を用いて計算します。
この設問における重要なポイント
- クーロンの法則の公式 \(F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) を正確に覚えていること。
- 距離 \(r\) はメートル単位、電気量 \(q\) はクーロン単位で代入すること。
- 指数を含む計算(\(10^9\) や \(10^{-9}\) など)を正確に行うこと。
具体的な解説と立式
点Aにある電荷の電気量を \(q_A\)、点Bにある電荷の電気量を \(q_B\)、2点間の距離を \(r\) とします。
与えられた値は以下の通りです。
- 比例定数 \(k = 9.0 \times 10^9\,\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}^2\)
- 電気量の大きさ \(|q_A| = |q_B| = 1.6 \times 10^{-9}\,\text{C}\)
- 距離 \(r = 1.00\,\text{m}\)
求める静電気力の大きさを \(F\) とすると、クーロンの法則より以下の式が成り立ちます。
$$ F = k \frac{|q_A q_B|}{r^2} $$
使用した物理公式
- クーロンの法則: \(F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{(1.6 \times 10^{-9}) \times (1.6 \times 10^{-9})}{1.00^2} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 1.6 \times 1.6 \times \frac{10^9 \times 10^{-9} \times 10^{-9}}{1} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 2.56 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 23.04 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 2.304 \times 10^{-8}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えます。
$$ F \approx 2.3 \times 10^{-8}\,\text{N} $$
電気を持った粒同士は、離れていても力を及ぼし合います。この力の大きさは、それぞれの電気の量が多いほど強く、距離が離れるほど急激に(距離の2乗で)弱くなります。公式に数字を当てはめて計算するだけの基本的な問題ですが、\(10^{-9}\) のような非常に小さい数の計算ミスに気をつけましょう。
静電気力の大きさは \(2.3 \times 10^{-8}\,\text{N}\) です。非常に小さな値ですが、原子レベルや微小な粒子の世界では支配的な力となります。
問(2)
思考の道筋とポイント
点Cにおける電場を求めます。電場はベクトル(大きさと向きを持つ量)なので、Aが作る電場 \(\vec{E}_A\) とBが作る電場 \(\vec{E}_B\) をそれぞれ求め、それらを合成(ベクトル和)する必要があります。
AもBも負電荷であることに注意します。負電荷は「自分に向かって吸い込む向き」に電場を作ります。
この設問における重要なポイント
- 点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) 離れた点の電場の強さは \(E = k \frac{|Q|}{r^2}\) で表される。
- 電場の向きのルール:正電荷からは遠ざかる向き、負電荷へは近づく向き。
- 点Cの位置:Aから \(0.40\,\text{m}\) なので、Bからは \(1.00 – 0.40 = 0.60\,\text{m}\) の距離にある。
- ベクトルの合成:一直線上のベクトルなので、向きを考慮して足し引きを行う。
具体的な解説と立式
まず、AとBそれぞれが点Cに作る電場の強さと向きを考えます。
- Aによる電場 \(\vec{E}_A\)
- 距離: \(r_A = 0.40\,\text{m}\)
- 向き: Aは負電荷なので、点CからAに向かう向き(左向き、B→Aの向き)。
- 強さ \(E_A\) の式:
$$ E_A = k \frac{|q_A|}{r_A^2} $$
- Bによる電場 \(\vec{E}_B\)
- 距離: \(r_B = 1.00 – 0.40 = 0.60\,\text{m}\)
- 向き: Bは負電荷なので、点CからBに向かう向き(右向き、A→Bの向き)。
- 強さ \(E_B\) の式:
$$ E_B = k \frac{|q_B|}{r_B^2} $$
- 合成電場 \(\vec{E}\)
- \(\vec{E}_A\)(左向き)と \(\vec{E}_B\)(右向き)は逆向きです。
- 合成電場の大きさ \(E\) は、大きい方から小さい方を引いて求めます。向きは大きい方と同じです。
使用した物理公式
- 点電荷のつくる電場の強さ: \(E = k \frac{|Q|}{r^2}\)
まず \(E_A\) と \(E_B\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_A &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.40^2} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.16} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times \frac{1.6}{0.16} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 10 \\[2.0ex]
&= 90\,\text{N/C} \quad (\text{B} \to \text{Aの向き})
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
E_B &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.60^2} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.36} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times \frac{1.6}{0.36} \\[2.0ex]
&= 9.0 \times \frac{160}{36} \\[2.0ex]
&= \frac{1440}{36} \\[2.0ex]
&= 40\,\text{N/C} \quad (\text{A} \to \text{Bの向き})
\end{aligned}
$$
\(E_A = 90\,\text{N/C}\)、\(E_B = 40\,\text{N/C}\) なので、\(E_A > E_B\) です。
したがって、合成電場の大きさ \(E\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E &= E_A – E_B \\[2.0ex]
&= 90 – 40 \\[2.0ex]
&= 50\,\text{N/C}
\end{aligned}
$$
向きは、大きい \(E_A\) と同じ「B \(\to\) Aの向き」です。
「電場」とは、そこに電気を置いたときにどれくらい強い力を受けるかを表す「場の勢い」のようなものです。点Cには、Aによる「左向きに引っ張る場」と、Bによる「右向きに引っ張る場」の2つが重なっています。計算してみると、Aの方が距離が近いため影響力が強く(\(90\) 対 \(40\))、綱引きの結果、左向き(Aの方向)の場が勝つことになります。
電場の強さは \(50\,\text{N/C}\)、向きは B \(\to\) A の向きです。距離が近いAの影響が支配的であるため、Aに向かう向きになるのは妥当です。
思考の道筋とポイント
ベクトルの向きを「矢印の向き」ではなく「プラス・マイナスの符号」で管理する方法です。直線上(1次元)の問題では、座標軸を設定することで、向きの判断ミスを減らし、機械的に計算することができます。
この設問における重要なポイント
- Aを原点とし、A \(\to\) B の向き(右向き)を正とする \(x\) 軸を設定する。
- 電場ベクトルを \(x\) 成分として扱う。右向きなら正、左向きなら負の値とする。
- 合成電場は、各成分の単純な足し算で求められる。
具体的な解説と立式
右向き(A \(\to\) B)を正とします。
- Aによる電場 \(E_A\) の成分
- 大きさは \(90\,\text{N/C}\)。
- 向きはAに向かう向き(左向き)なので、負です。
- 成分: \(-90\,\text{N/C}\)
- Bによる電場 \(E_B\) の成分
- 大きさは \(40\,\text{N/C}\)。
- 向きはBに向かう向き(右向き)なので、正です。
- 成分: \(+40\,\text{N/C}\)
合成電場の成分 \(E_x\) は、これらの和になります。
$$ E_x = (\text{Aによる電場の成分}) + (\text{Bによる電場の成分}) $$
$$
\begin{aligned}
E_x &= -90 + 40 \\[2.0ex]
&= -50\,\text{N/C}
\end{aligned}
$$
結果が負になったので、合成電場の向きは「負の向き」、つまり左向き(B \(\to\) A)であることがわかります。
大きさはその絶対値をとって \(50\,\text{N/C}\) です。
右向きをプラス、左向きをマイナスと決めて計算する方法です。「左に90」を \(-90\)、「右に40」を \(+40\) と表して足し算すると、答えは \(-50\) になります。マイナスがついているので「左向きに50」だとすぐにわかります。
メインの解法と同じく、強さ \(50\,\text{N/C}\)、向き B \(\to\) A が得られました。
問(3)
思考の道筋とポイント
点Cに置かれた小球が受ける静電気力を求めます。(2)ですでに点Cの電場を求めているので、これを利用するのが最も効率的です。
重要なのは、置かれた小球が「負電荷」であることです。正電荷は電場と同じ向きに力を受けますが、負電荷は電場と「逆向き」に力を受けます。
この設問における重要なポイント
- 電場 \(\vec{E}\) 中にある電荷 \(q\) が受ける力 \(\vec{F}\) の公式 \(\vec{F} = q\vec{E}\) を利用する。
- \(q < 0\)(負電荷)の場合、力 \(\vec{F}\) の向きは電場 \(\vec{E}\) と逆向きになる。
- 点Cに置く電荷の電気量の大きさ \(|q| = 1.6 \times 10^{-9}\,\text{C}\)。
具体的な解説と立式
点Cの電場の強さを \(E\)、置く電荷の電気量を \(q\) とします。
静電気力の大きさ \(F’\) は、電気量の絶対値と電場の強さの積で求められます。
$$ F’ = |q|E $$
向きについては、電場の向きが「B \(\to\) A(左向き)」であり、電荷 \(q\) が負であることから判断します。
使用した物理公式
- 電場から受ける力: \(F = |q|E\)
(2)より \(E = 50\,\text{N/C}\) です。
$$
\begin{aligned}
F’ &= (1.6 \times 10^{-9}) \times 50 \\[2.0ex]
&= 1.6 \times 50 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 80 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 8.0 \times 10^{-8}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
向きの判定:
電場の向きは「左(B \(\to\) A)」です。
負電荷は電場と逆向きに力を受けるので、力の向きは「右(A \(\to\) B)」となります。
(2)で求めた「電場」は、「\(+1\,\text{C}\) の電荷を置いたら \(50\,\text{N}\) の力を左向きに受ける場所」という意味でした。ここにマイナスの電気を置くと、プラスの場合とは逆向き、つまり右向きに力を受けます。力の大きさは、電気量の大きさに比例するので、掛け算で求められます。
力の大きさは \(8.0 \times 10^{-8}\,\text{N}\)、向きは A \(\to\) B の向きです。
思考の道筋とポイント
電場という概念を使わずに、点Cの電荷が「Aの電荷から受ける力」と「Bの電荷から受ける力」をそれぞれ計算し、それらを合力として求める方法です。原理的には(2)と同じ計算を行っていることになりますが、力のつりあいや運動方程式の問題として捉える場合に直感的です。
この設問における重要なポイント
- 点Cの電荷(負)とAの電荷(負)の間には斥力(反発力)がはたらく。
- 点Cの電荷(負)とBの電荷(負)の間には斥力(反発力)がはたらく。
- これらの2つの力をベクトル合成する。
具体的な解説と立式
点Cの電荷を \(q_C\) (\(|q_C| = 1.6 \times 10^{-9}\,\text{C}\))とします。
- Aから受ける力 \(F_A\)
- A(負)とC(負)は反発し合うので、CはAから遠ざかる向き(右向き、A \(\to\) B)に力を受けます。
- 大きさ:
$$ F_A = k \frac{|q_A q_C|}{r_A^2} $$
- Bから受ける力 \(F_B\)
- B(負)とC(負)は反発し合うので、CはBから遠ざかる向き(左向き、B \(\to\) A)に力を受けます。
- 大きさ:
$$ F_B = k \frac{|q_B q_C|}{r_B^2} $$
合成力 \(F’\) は、右向きの \(F_A\) と左向きの \(F_B\) の差になります。
$$
\begin{aligned}
F_A &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{(1.6 \times 10^{-9}) \times (1.6 \times 10^{-9})}{0.40^2} \\[2.0ex]
&= \left( 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.40^2} \right) \times (1.6 \times 10^{-9}) \\[2.0ex]
&= 90 \times (1.6 \times 10^{-9}) \quad (\text{※カッコ内は}E_A\text{と同じ値}) \\[2.0ex]
&= 144 \times 10^{-9}\,\text{N} \quad (\text{右向き})
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
F_B &= 9.0 \times 10^9 \times \frac{(1.6 \times 10^{-9}) \times (1.6 \times 10^{-9})}{0.60^2} \\[2.0ex]
&= 40 \times (1.6 \times 10^{-9}) \quad (\text{※}E_B\text{を利用}) \\[2.0ex]
&= 64 \times 10^{-9}\,\text{N} \quad (\text{左向き})
\end{aligned}
$$
右向きの力 \(F_A\) の方が大きいので、合力の大きさ \(F’\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F’ &= F_A – F_B \\[2.0ex]
&= 144 \times 10^{-9} – 64 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 80 \times 10^{-9} \\[2.0ex]
&= 8.0 \times 10^{-8}\,\text{N}
\end{aligned}
$$
向きは、大きい \(F_A\) と同じ「A \(\to\) B の向き」です。
真ん中の小球は、左の小球Aからは「あっち行け!」と右へ押され、右の小球Bからは「こっち来るな!」と左へ押されています。Aの方が近いので、右へ押す力の方が強く、結果として小球は右へ動こうとする力を受けます。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。電場を経由しても、直接力を計算しても、物理現象としては同じであることを確認できました。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- クーロンの法則と電場の定義の使い分け
- 核心: この問題の根幹は、2つの電荷間に直接はたらく力(クーロン力)と、電荷が空間につくる場(電場)という2つの概念を正しく理解し、使い分けることです。
- 理解のポイント:
- 直接的な相互作用: (1)のように、2つの電荷が与えられたとき、それらの間に直接はたらく力を計算するのがクーロンの法則 \(F = k \frac{q_1 q_2}{r^2}\) です。
- 場を介した相互作用: (2)(3)のように、まず電荷が周囲の空間に「電場」という歪みを作り、その電場の中に置かれた別の電荷が力を受ける、という2段階のプロセスで考えるのが電場の概念です。電場 \(\vec{E}\) を先に求めておけば、どんな電荷 \(q\) を置いても \(\vec{F} = q\vec{E}\) で力が求まるため、汎用性が高くなります。
- ベクトルの重ね合わせ(合成)
- 核心: 複数の電荷が存在する場合、ある点における電場や力は、個々の電荷が単独で作る電場や力の「ベクトル和」になるという原理です。
- 理解のポイント:
- 向きの重要性: 電場や力は大きさだけでなく向きを持つベクトル量です。単純な足し算ではなく、向きを考慮した合成が必要です。一直線上の場合は、正の向きを決めて符号付きで足し合わせるか、図を描いて矢印の向きを確認しながら大きい方から小さい方を引く操作を行います。
- 独立性: Aが作る電場は、Bが存在するかどうかに関わらず計算できます。Bについても同様です。それぞれを独立に計算してから最後に合成するという手順が鉄則です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 平面上の点電荷の配置: 電荷が正三角形や正方形の頂点に配置されている場合。この場合、電場や力は一直線上ではなく平面上のベクトル合成になるため、\(x\) 成分と \(y\) 成分に分解して計算するか、図形的な性質(三平方の定理や三角比)を利用して合成します。
- 複数の点電荷による電位: 電場(ベクトル)ではなく電位(スカラー)を求める問題。電位の場合は向きを考える必要がなく、単純な数値の足し算(正電荷は正の電位、負電荷は負の電位)になるため、計算が楽になります。電場と電位の違いを明確に区別することが鍵です。
- 帯電体による電場: 点電荷ではなく、棒状や板状に電荷が分布している場合。積分を用いて微小電荷が作る電場を足し合わせるか、ガウスの法則を利用します。
- 初見の問題での着眼点:
- 電荷の符号と配置を確認する: まず図を描き、正電荷(湧き出し)か負電荷(吸い込み)かを確認して、電場の向きを矢印で書き込みます。
- 求める物理量を特定する: 「力」を求めたいのか、「電場」を求めたいのか、「電位」を求めたいのかを明確にします。それぞれ使う公式が異なります(\(F\), \(E\), \(V\))。
- 対称性を利用する: 電荷の配置に対称性がある場合(例:等しい距離に等しい電荷がある)、電場の成分が打ち消し合ってゼロになる方向がないかを探します。これにより計算量を大幅に減らせます。
- 単位を確認する: 距離が \(\text{cm}\) で与えられている場合は必ず \(\text{m}\) に、電気量が \(\mu\text{C}\) で与えられている場合は \(\text{C}\) に換算してから計算に入ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電場の向きと力の向きの混同:
- 誤解: 電場の向きと、その場所に置いた電荷が受ける力の向きは常に同じだと思い込んでしまう。
- 対策: 正電荷は電場と同じ向きに力を受けますが、負電荷は電場と「逆向き」に力を受けます。このルールを常に意識し、問題文で置かれた電荷の符号(プラスかマイナスか)を指差し確認しましょう。
- 距離の2乗の計算ミス:
- 誤解: クーロンの法則や電場の公式の分母 \(r^2\) を、単に \(r\) として計算したり、2倍(\(2r\))してしまったりする。
- 対策: 公式を書くときに \(r^2\) を強調して書く、あるいは代入する際に \((0.40)^2\) のように括弧をつけて2乗であることを視覚的に明確にする習慣をつけましょう。
- 合成時の符号ミス:
- 誤解: ベクトルの向きを考慮せず、単に大きさだけを足してしまう(\(90 + 40 = 130\) とするなど)。
- 対策: 必ず図を描き、矢印の向きが逆であれば「引き算」、同じであれば「足し算」になることを視覚的に確認します。あるいは、別解のように座標軸を設定し、符号付きの成分計算を行うことで機械的にミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- (1)での公式選択(クーロンの法則):
- 選定理由: 2つの点電荷の電気量 \(q_1, q_2\) と距離 \(r\) が与えられ、直接はたらく「力の大きさ」を求められているため。
- 適用根拠: 点電荷間の静電気力を記述する法則はクーロンの法則 \(F = k \frac{q_1 q_2}{r^2}\) です。ここでは大きさのみが必要なので、電気量の絶対値を用います。
- (2)での公式選択(点電荷の電場の式と重ね合わせ):
- 選定理由: 特定の点における「電場」を求められているため。
- 適用根拠: 点電荷が作る電場の公式 \(E = k \frac{Q}{r^2}\) を用いて、個々の電荷が作る電場を計算します。その後、電場がベクトル量であることに基づき、重ね合わせの原理(ベクトル和)を適用して合成電場を求めます。
- (3)での公式選択(\(F=qE\)):
- 選定理由: すでにその点の「電場 \(E\)」が求まっており、そこに置かれた電荷が受ける「力 \(F\)」を知りたいため。
- 適用根拠: 電場の定義そのものが「単位電荷あたりの静電気力」であるため、電荷 \(q\) を掛けるだけで力が求まります。別解のようにクーロンの法則から再度計算することも可能ですが、(2)の結果を利用する方が計算量が少なく、論理的にもスマートです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 指数計算を分離して行う:
- \(9.0 \times 10^9 \times \frac{1.6 \times 10^{-9}}{0.40^2}\) のような計算では、係数部分(\(9.0, 1.6, 0.40\))と \(10\) のべき乗部分(\(10^9, 10^{-9}\))を分けて計算整理するとミスが減ります。特に \(10^9 \times 10^{-9} = 1\) となって消えるパターンは頻出です。
- 分数のまま計算を進める:
- 割り算を早まって小数にするのではなく、分数の形のまま約分を行うと計算が楽になります。例えば \(0.40^2 = 0.16 = \frac{16}{100}\) と見て、分子の \(1.6\) と約分するなどの工夫が有効です。
- 物理的な直感で検算する:
- (2)の結果について、点CはAからの距離が \(0.40\,\text{m}\)、Bからの距離が \(0.60\,\text{m}\) です。電荷の大きさは同じなので、距離が近いAの影響(左向きの電場)の方が強くなるはずです。計算結果が「左向き(B \(\to\) A)」になっているかを確認することで、明らかなミスを発見できます。
- 単位の確認:
- 力の単位は \(\text{N}\)、電場の単位は \(\text{N/C}\)(または \(\text{V/m}\))です。答えを書く前に単位が正しいか一瞬確認するだけで、ケアレスミスを防げます。
439 電気力線の本数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) とガウスの法則を用いた解法
- 模範解答は、電場の強さと電気力線の密度の定義に基づいて計算していますが、別解では、より一般的な「ガウスの法則」の知識(\(N = \frac{q}{\varepsilon_0}\))を出発点とし、クーロンの法則の比例定数 \(k\) と真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) の関係式を用いて答えを導きます。
- 設問(2)の別解: 真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) とガウスの法則を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理定数の関係性の理解: クーロンの法則の比例定数 \(k\) と真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) が、\(k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\) という関係で結ばれていることを確認できます。
- 公式の背景理解: 教科書によって電気力線の本数が \(4\pi k q\) 本と書かれていたり、\(\frac{q}{\varepsilon_0}\) 本と書かれていたりする理由が、単なる定数の置き換えであることを理解できます。
- 結果への影響
- どちらのアプローチでも、最終的に得られる電気力線の総本数は一致します。
この問題のテーマは「点電荷がつくる電場と電気力線の定義」です。電磁気学の基礎となる「場」の概念と、それを視覚的に表す「電気力線」の関係を数式で理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- クーロンの法則と点電荷の電場: 点電荷 \(q\) から距離 \(r\) 離れた点の電場の強さは \(E = k\frac{q}{r^2}\) で表されること。
- 電気力線の定義(本数密度): 電場の強さが \(E\) の場所では、電場の向きに垂直な面 \(1\,\text{m}^2\) あたり \(E\) 本の電気力線が通っていると約束すること。
- 球の幾何学: 半径 \(r\) の球の表面積が \(S = 4\pi r^2\) であること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、点電荷がつくる電場の公式をそのまま適用して、球面上での電場の強さを求めます。
- (2)では、(1)で求めた電場の強さ \(E\) が「\(1\,\text{m}^2\) あたりの本数」であることを利用し、これに球の表面積を掛けることで、球全体を貫く電気力線の総本数を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
点電荷 \(q\) を中心とする半径 \(r\) の球面上での電場の強さを求めます。点電荷がつくる電場の公式を適用するだけの基本的な問題ですが、電場の定義(\(+1\,\text{C}\) の電荷が受ける力)を意識することが大切です。
この設問における重要なポイント
- 電荷 \(q\) は正の点電荷である。
- 求める場所は、電荷から距離 \(r\) 離れた点である。
- クーロンの法則の比例定数は \(k\) である。
具体的な解説と立式
点電荷 \(q\) から距離 \(r\) 離れた点における電場の強さ \(E\) は、クーロンの法則より以下の式で表されます。
$$ E = k\frac{q}{r^2} $$
使用した物理公式
- 点電荷の電場: \(E = k\frac{q}{r^2}\)
この問題では数値を代入する計算はなく、公式そのものが答えとなります。
$$ E = k\frac{q}{r^2} $$
単位は \(\text{N/C}\)(ニュートン毎クーロン)または \(\text{V/m}\)(ボルト毎メートル)ですが、問題文の指定に従い \(\text{N/C}\) とします。
電気のプラスの粒(点電荷)があると、その周りの空間は電気的な力が働く特別な空間(電場)になります。その力の強さは、粒からの距離が遠くなるほど弱くなります。具体的には、距離の2乗に反比例して弱くなるというルールがあります。このルールを式で書いたものが答えです。
電場の強さは \(k\frac{q}{r^2}\,\text{N/C}\) です。
距離 \(r\) が大きくなると分母が大きくなるため電場は小さくなり、電荷 \(q\) が大きくなると分子が大きくなるため電場は大きくなります。これは直感とも一致します。
問(2)
思考の道筋とポイント
「電気力線の総本数」を求める問題です。電気力線は目に見えない電場の様子を矢印で表したモデルですが、その本数には厳密な定義があります。「電場の強さが \(E\) の場所では、\(1\,\text{m}^2\) あたり \(E\) 本の線が通る」という定義を使います。球面上ではどこでも電場の強さが等しいので、単純な掛け算で総本数を求められます。
この設問における重要なポイント
- 電気力線の定義: 電場の強さ \(E\) = 電気力線の密度(本/\(\text{m}^2\))。
- 考える面: 点電荷を中心とする半径 \(r\) の球面。
- 球面の表面積: \(S = 4\pi r^2\)。
- 電気力線は球面を垂直に貫いている(点電荷から放射状に出ているため)。
具体的な解説と立式
まず、電気力線の総本数を \(N\) とします。
電気力線の定義より、電場の強さ \(E\) は、単位面積あたりの電気力線の本数に等しいです。
したがって、総本数 \(N\) は、「単位面積あたりの本数 \(E\)」に「球面の総面積 \(S\)」を掛けたものになります。
$$ N = E \times S $$
ここで、球の表面積の公式より、
$$ S = 4\pi r^2 $$
これらを組み合わせて立式します。
使用した物理公式
- 電気力線の総本数: \(N = E \times S\)
- 球の表面積: \(S = 4\pi r^2\)
(1)の結果 \(E = k\frac{q}{r^2}\) と、表面積 \(S = 4\pi r^2\) を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
N &= \left( k\frac{q}{r^2} \right) \times (4\pi r^2) \\[2.0ex]
&= 4\pi k q
\end{aligned}
$$
途中で \(r^2\) が約分されて消えることに注目してください。
「電場の強さ」という数値を、「\(1\,\text{m}^2\) という広さを通る線の本数」だと読み替えるのがこの問題のルールです。(1)で求めた電場の強さに、ボール(球面)全体の表面積を掛ければ、ボール全体から吹き出している線の合計本数が分かります。計算してみると、不思議なことに半径 \(r\) が消えてしまい、線の本数は距離に関係なく一定であることが分かります。
電気力線の総本数は \(4\pi k q\) 本です。
この結果に距離 \(r\) が含まれていないことは非常に重要です。これは、「点電荷から出た電気力線は、途中で消えたり増えたりせず、どこまでも伸びていく」ことを意味しており、電気力線の性質として妥当です。また、電荷 \(q\) に比例しており、電荷が多いほどたくさんの線が出るという直感とも一致します。
思考の道筋とポイント
大学レベルの電磁気学や一部の教科書では、クーロンの法則の比例定数 \(k\) の代わりに、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を用いて議論を進めます。この体系では「ガウスの法則」という強力な法則があり、これを使うと計算なしで瞬時に電気力線の本数を答えることができます。
この設問における重要なポイント
- ガウスの法則: 任意の閉曲面を貫く電気力線の総本数 \(N\) は、その内部に含まれる総電荷 \(Q\) を誘電率 \(\varepsilon_0\) で割ったものに等しい(\(N = \frac{Q}{\varepsilon_0}\))。
- クーロン定数と誘電率の関係: \(k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\)。
具体的な解説と立式
ガウスの法則によれば、電荷 \(q\) を囲む閉曲面(ここでは球面)を貫く電気力線の総本数 \(N\) は以下の式で与えられます。
$$ N = \frac{q}{\varepsilon_0} $$
一方、クーロンの法則の比例定数 \(k\) は、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を用いて次のように定義されます。
$$ k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} $$
この関係式を変形して \(\varepsilon_0\) を \(k\) で表し、\(N\) の式に代入します。
使用した物理公式
- ガウスの法則: \(N = \frac{Q}{\varepsilon_0}\)
- 定数の関係式: \(k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\)
まず、定数の関係式を \(\frac{1}{\varepsilon_0}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
k &= \frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \\[2.0ex]
4\pi k &= \frac{1}{\varepsilon_0}
\end{aligned}
$$
これをガウスの法則の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
N &= q \times \frac{1}{\varepsilon_0} \\[2.0ex]
&= q \times (4\pi k) \\[2.0ex]
&= 4\pi k q
\end{aligned}
$$
物理の世界には、同じ現象を説明するのにいくつかの「流儀」があります。高校物理の教科書では \(k\) を使う流儀が主流ですが、より進んだ物理では \(\varepsilon_0\) という定数を使う流儀が一般的です。この別解では、その進んだ流儀の公式(ガウスの法則)を使って、一瞬で答えを出しています。もちろん、定数を変換すれば答えは同じになります。
メインの解法と同じく \(4\pi k q\) 本という結果が得られました。この解法を知っていると、電気力線の本数が「電荷 \(q\) だけで決まり、距離 \(r\) には無関係である」という本質がより明確に理解できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電場の定義と電気力線の関係
- 核心: この問題の根幹は、「電場」という目に見えない空間の歪みを、「電気力線」という視覚的なモデルに変換する際の翻訳ルールを理解することです。そのルールとは、「電場の強さ \(E\) の数値が、そのまま \(1\,\text{m}^2\) あたりの電気力線の本数(密度)になる」という約束事です。
- 理解のポイント:
- 密度の概念: 電気力線は、電場が強い場所ほど「密」に(ぎっしりと)、弱い場所ほど「疎」に(スカスカに)描かれます。この「混み具合」を数学的に定義したのが \(E\) です。
- 保存性: 点電荷から出た電気力線の総本数が距離 \(r\) によらず一定(\(4\pi k q\))になるという結果は、電気力線が途中で消滅したり分裂したりせず、電荷から無限遠まで連続して伸びていることを示唆しています。これは、水流の保存則(湧き出し口から出た水の総量は、どこで測っても変わらない)と似た概念です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ガウスの法則に関連する問題: 平板コンデンサーの極板間の電場や、無限に長い直線電荷がつくる電場を求める問題。これらの問題でも、「閉じた面を貫く電気力線の総本数は、中の電荷量に比例する」という考え方が基礎になります。
- 電束密度の問題: 大学入試の難問や大学物理では、誘電体中での電場を考える際に「電束密度 \(D = \varepsilon E\)」という概念が登場します。これも本問の「電気力線の密度」の概念を拡張したものです。
- 初見の問題での着眼点:
- 対称性を見抜く: 今回の問題では「球対称」な電場を扱いました。電場の大きさが場所によって変わらず(球面上ならどこでも一定)、向きが面に垂直である場合、複雑な積分計算をせずに単純な掛け算(\(E \times S\))で総本数を求められます。
- 定義に戻る: 「電気力線の本数を求めよ」と聞かれたら、迷わず「\(N = ES\)(電場×面積)」または「\(N = 4\pi k Q\)(ガウスの法則)」のどちらかを使います。特に、具体的な距離 \(r\) が与えられていない場合や、複雑な形状の場合は、後者のガウスの法則的アプローチ(総電荷量だけで決まる)が有効な場合が多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 面積の公式の取り違え:
- 誤解: 球の表面積 \(S = 4\pi r^2\) と、球の体積 \(V = \frac{4}{3}\pi r^3\) や円の面積 \(S = \pi r^2\) を混同してしまう。
- 対策: 次元(単位)を確認しましょう。面積は \(r^2\)(長さの2乗)、体積は \(r^3\)(長さの3乗)です。また、球の表面積は「心配ある事情(\(4\pi r^2\))」などの語呂合わせで確実に暗記しておきましょう。
- 電気力線の本数の単位:
- 誤解: 電気力線の本数 \(N\) の単位を \(\text{N/C}\) や \(\text{V}\) と答えてしまう。
- 対策: 求めるものは「本数」なので、単位は「本」です。ただし、物理量としての次元は \(\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{C}\) です。解答欄には単に「本」と書くのが一般的ですが、何を聞かれているかを常に意識しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(点電荷の電場):
- 選定理由: 問題設定が「点電荷」がつくる電場であり、求める場所が電荷から距離 \(r\) の点であるため、クーロンの法則から導かれる点電荷の電場の公式 \(E = k\frac{q}{r^2}\) が唯一の選択肢です。
- 適用根拠: 電荷が球状に分布している場合などでも、球の外側では点電荷と同じ式が使えますが、今回は純粋な点電荷なので、そのまま適用できます。
- 問(2)での公式選択(電気力線の定義):
- 選定理由: 「電気力線の総本数」を求める問題であり、手元には(1)で求めた「電場の強さ \(E\)」があります。電場の強さと電気力線の本数を結びつけるのは「定義(\(1\,\text{m}^2\) あたり \(E\) 本)」しかありません。
- 適用根拠: 球面上では、電場の向きが常に面に垂直であり、かつ電場の大きさ \(E\) が一定であるため、微積分を使わずに単純な積 \(N = E \times S\) として計算できます。この「垂直かつ一定」という条件が、この公式を単純適用できる根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の約分を見逃さない:
- 問(2)の計算 \(N = k\frac{q}{r^2} \times 4\pi r^2\) において、分母と分子にある \(r^2\) がきれいに約分されて消えます。このように、物理の計算では途中で変数が消えてシンプルな定数になることがよくあります。計算途中で展開しすぎず、約分のチャンスを待つ姿勢が大切です。
- 定数の係数を前に出す:
- \(4\pi k q\) のように、定数(\(4, \pi, k\))を前に、変数(\(q\))を後ろに書くのが一般的です。また、\(\pi\) や \(k\) の書き忘れがないか、最後に指差し確認をしましょう。
- 単位の確認:
- (1)の答えには \(\text{N/C}\)、(2)の答えには「本」という単位が必要です。特に記述式試験では、単位がないと減点対象になることがあるので、必ず最後に単位をチェックしてください。
440 金属板間の電場と電位
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解: 電位グラフの傾きから電場を求める解法
- 模範解答は公式 \(E = V/d\) に数値を代入して計算していますが、別解では設問(2)で描いた電位グラフ(\(V-x\) グラフ)の「傾き」に着目して電場の強さを求めます。
- 設問(3)の別解: 電位グラフの傾きから電場を求める解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の理解: 「電場の強さは電位のグラフの傾きの大きさに等しい(\(E = -\frac{dV}{dx}\))」という、電磁気学における重要な微分関係を視覚的に理解できます。
- グラフの相互関係の把握: 電位のグラフと電場のグラフが独立したものではなく、微分・積分の関係にあることを学ぶ良い機会となります。
- 結果への影響
- どちらのアプローチでも、最終的に得られる電場の強さの値は一致します。
この問題のテーマは「一様な電場と導体の静電的性質」です。コンデンサーの極板間のような一様な電場における電位の分布と、電場の中に置かれた導体(金属板)の振る舞いを理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 一様な電場の公式: 電場の強さが一定の空間では、距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) と電場の強さ \(E\) の間に \(V = Ed\) の関係が成り立つこと。
- 導体の静電的性質: 静電場中の導体内部では電場は \(0\) であり、導体全体は等電位となること。
- 接地の意味: 接地された点の電位は \(0\,\text{V}\)(基準)となること。
- 電場と電位の関係: 電場は電位の高い方から低い方へ向き、その強さは単位距離あたりの電位の変化量(勾配)に等しいこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、極板間の距離と電位差から、等電位線の間隔を計算して図示します。
- (2)では、導体部分(厚みがあることに注意)と空間部分に分けて電位の変化を考えます。導体部分は等電位(平ら)、空間部分は一様な電場なので電位は直線的に変化(坂道)します。
- (3)では、(2)の考察に基づき、導体内部は電場 \(0\)、空間部分は公式 \(E = V/d\) を用いて電場の強さを求め、グラフにします。
問(1)
思考の道筋とポイント
金属板AとBの間には一様な電場ができています。一様な電場では、電位は距離に比例して変化します。電池の電圧が \(10\,\text{V}\) で、極板間の距離が \(10\,\text{cm}\) なので、この空間での「電位の傾き具合」を考えれば、等電位線をどこに引けばよいかが分かります。
この設問における重要なポイント
- 金属板AとBの間隔は \(10\,\text{cm}\) である。
- 金属板間の電位差は \(10\,\text{V}\) である。
- 一様な電場なので、等電位線は等間隔に並ぶ。
- \(2\,\text{V}\) ごとの等電位線を描く必要がある。
具体的な解説と立式
まず、金属板間の距離 \(1\,\text{cm}\) あたり、電位が何 \(\text{V}\) 変化するか(電位の勾配)を \(k\) とします。
全体の電位差が \(10\,\text{V}\)、距離が \(10\,\text{cm}\) なので、以下の式が成り立ちます。
$$ k = \frac{10\,\text{V}}{10\,\text{cm}} $$
求められているのは \(2\,\text{V}\) ごとの等電位線なので、その間隔 \(x\) は以下の式で求められます。
$$ x = \frac{2\,\text{V}}{k} $$
使用した物理公式
- 一様な電場の性質(電位の変化率は一定)
まず \(k\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
k &= \frac{10}{10} \\[2.0ex]
&= 1\,\text{V/cm}
\end{aligned}
$$
次に \(x\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{2}{1} \\[2.0ex]
&= 2\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
したがって、金属板A(高電位側)から \(2\,\text{cm}\) ごとに線を引けばよいことになります。
金属板の間隔は \(10\,\text{cm}\) なので、\(2\,\text{cm}, 4\,\text{cm}, 6\,\text{cm}, 8\,\text{cm}\) の位置に計4本の等電位線が引かれます。
\(10\,\text{cm}\) の距離で高さ(電位)が \(10\,\text{V}\) 変わる一定の坂道をイメージしてください。この坂道は \(1\,\text{cm}\) 進むごとに高さが \(1\,\text{V}\) 変わります。今回は「高さが \(2\,\text{V}\) 変わるごとの地点」に線を引くので、\(2\,\text{cm}\) 進むごとに線を引けばOKです。
金属板と平行に、\(2\,\text{cm}\) 間隔で4本の直線を引きます。これは、一様な電場において等電位面が電場に垂直な等間隔の平面になることと整合します。
問(2)
思考の道筋とポイント
グラフを描くためには、XからYまでの各領域(金属板Aの中、空間、金属板Bの中)での電位の様子を整理する必要があります。
1. 電位の基準: 金属板Bは接地されているので、電位は \(0\,\text{V}\) です。
2. 金属板Aの電位: 電池の電圧が \(10\,\text{V}\) なので、Aの電位は \(10\,\text{V}\) です。
3. 導体の性質: 金属板A、Bは導体なので、それぞれの内部は等電位です。つまり、厚さ \(1\,\text{cm}\) の間は電位が変化しません。
4. 空間の電位: 一様な電場なので、AからBに向かって電位は一定の割合で下がっていきます(グラフは直線)。
この設問における重要なポイント
- 金属板の厚さ \(1\,\text{cm}\) を無視しないこと。
- X点は金属板Aの外側表面(厚みの外側)にあるが、グラフの横軸はXからの距離ではなく位置を表しているため、図のX点の位置を原点や基準として考える。問題図の目盛りを見ると、X点は金属板Aの左端(外側表面)にある。
- 金属板Aの内部(幅 \(1\,\text{cm}\))は \(10\,\text{V}\) 一定。
- 金属板Bの内部(幅 \(1\,\text{cm}\))は \(0\,\text{V}\) 一定。
- その間の空間(幅 \(10\,\text{cm}\))は \(10\,\text{V}\) から \(0\,\text{V}\) へ直線的に変化。
具体的な解説と立式
グラフの概形を決定する要素を書き出します。
- 区間 \(0 \le x \le 1\,\text{cm}\) (金属板A内部):
導体内部は等電位なので、電位 \(V\) は一定です。
$$ V = 10\,\text{V} $$ - 区間 \(1\,\text{cm} \le x \le 11\,\text{cm}\) (極板間の空間):
一様な電場なので、電位は距離に対して一次関数的に減少します。始点は \((1\,\text{cm}, 10\,\text{V})\)、終点は \((11\,\text{cm}, 0\,\text{V})\) です。 - 区間 \(11\,\text{cm} \le x \le 12\,\text{cm}\) (金属板B内部):
導体内部は等電位であり、接地されているため \(0\,\text{V}\) です。
$$ V = 0\,\text{V} $$
使用した物理公式
- 導体の等電位性
- 一様な電場の電位降下: \(V = V_0 – Ex\)
空間部分のグラフの傾き(変化の割合)を確認します。
$$
\begin{aligned}
\text{傾き} &= \frac{0\,\text{V} – 10\,\text{V}}{11\,\text{cm} – 1\,\text{cm}} \\[2.0ex]
&= \frac{-10\,\text{V}}{10\,\text{cm}} \\[2.0ex]
&= -1\,\text{V/cm}
\end{aligned}
$$
これに基づき、\(10\,\text{V}\) の平らな部分、右下がりの直線、\(0\,\text{V}\) の平らな部分をつなげます。
XからYへ歩いていくときの「電気的な高さ(電位)」の変化をグラフにします。
最初の \(1\,\text{cm}\)(金属板Aの中)は、平らな高台(\(10\,\text{V}\))です。
そこから金属板を出ると、次の \(10\,\text{cm}\)(空間)は一定の急さの下り坂です。
最後の \(1\,\text{cm}\)(金属板Bの中)は、平らな地面(\(0\,\text{V}\))です。
これらを折れ線グラフとして描きます。
グラフは台形のような形(左上がりの台形ではなく、左側が高く右側が低い形)になります。導体部分で電位が一定であること、空間で直線的に変化すること、接地点が0Vであることが全て反映されているか確認します。
問(3)
思考の道筋とポイント
次は「電場の強さ」のグラフです。電場の強さは、電位のグラフの「傾きの急さ」に対応します。
1. 金属板内部: 電位が一定(平ら)だったので、傾きはありません。つまり電場は \(0\) です。これは「静電場中の導体内部の電場は \(0\)」という基本性質とも一致します。
2. 空間部分: 電位のグラフは一定の傾きの直線でした。つまり、電場は一定の値(一様な電場)になります。
この設問における重要なポイント
- 導体内部の電場 \(E = 0\)。
- 一様な電場の公式 \(V = Ed\) における \(d\) は、極板間の距離(空間の距離)である \(10\,\text{cm}\) を使う。
- 単位を \(\text{cm}\) から \(\text{m}\) に換算して計算する(電場の単位が \(\text{V/m}\) なので)。
具体的な解説と立式
空間部分(\(1\,\text{cm} \le x \le 11\,\text{cm}\))における電場の強さ \(E\) を求めます。
極板間の電位差を \(V\)、極板間の距離を \(d\) とすると、一様な電場の公式より、
$$ E = \frac{V}{d} $$
ここで、\(V = 10\,\text{V}\)、\(d = 10\,\text{cm} = 0.10\,\text{m}\) です。
使用した物理公式
- 一様な電場の強さ: \(E = \frac{V}{d}\)
数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
E &= \frac{10}{0.10} \\[2.0ex]
&= 100 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2\,\text{V/m}
\end{aligned}
$$
金属板内部(\(0 \le x < 1\,\text{cm}\) および \(11 < x \le 12\,\text{cm}\))では、
$$ E = 0\,\text{V/m} $$
電場の強さは、(2)で描いた「坂道の急さ」のことです。
金属板の中(平らな場所)は、坂の急さがゼロなので、電場もゼロです。
金属板の間(下り坂)は、どこでも同じ急さなので、電場は一定の値になります。その値は、「高さの差 \(10\,\text{V}\)」を「水平距離 \(0.1\,\text{m}\)」で割れば求まります。
グラフは、金属板の位置で \(0\)、空間部分で \(1.0 \times 10^2\) となる「凸」の字のような形(矩形波のような形)になります。導体内部で電場がないこと、空間で一様であることが表現されています。
思考の道筋とポイント
電場 \(E\) と電位 \(V\) の間には、\(E = -\frac{dV}{dx}\)(1次元の場合)という関係があります。これは「電場の強さは、電位グラフの傾きの大きさ(絶対値)に等しい」ことを意味します。この関係を使えば、(2)のグラフから直接(3)の値を読み取ることができます。
この設問における重要なポイント
- 電位 \(V\) のグラフの傾きの大きさ \(|\frac{\Delta V}{\Delta x}|\) が電場の強さ \(E\) になる。
- 単位の換算(\(\text{cm} \to \text{m}\))に注意する。
具体的な解説と立式
(2)で描いたグラフの空間部分(\(1\,\text{cm} \le x \le 11\,\text{cm}\))に注目します。
この区間でのグラフの傾きの大きさ \(|\text{傾き}|\) を計算し、それを電場の強さ \(E\) とします。
$$ E = \left| \frac{\Delta V}{\Delta x} \right| $$
$$ E = \left| \frac{V_{\text{終点}} – V_{\text{始点}}}{x_{\text{終点}} – x_{\text{始点}}} \right| $$
使用した物理公式
- 電場と電位の微分関係: \(E = -\frac{dV}{dx}\) (大きさとしては \(E = |\frac{\Delta V}{\Delta x}|\))
グラフより、始点は \((0.01\,\text{m}, 10\,\text{V})\)、終点は \((0.11\,\text{m}, 0\,\text{V})\) です(単位を \(\text{m}\) に直しています)。
$$
\begin{aligned}
E &= \left| \frac{0 – 10}{0.11 – 0.01} \right| \\[2.0ex]
&= \left| \frac{-10}{0.10} \right| \\[2.0ex]
&= 100 \\[2.0ex]
&= 1.0 \times 10^2\,\text{V/m}
\end{aligned}
$$
(2)のグラフを見てください。真ん中の斜めになっている線の「傾き具合」を計算してみましょう。縦に \(10\) 下がる間に、横に \(10\,\text{cm}\)(つまり \(0.1\,\text{m}\))進んでいます。\(10 \div 0.1 = 100\) なので、傾きの大きさは \(100\) です。これがそのまま電場の強さになります。
メインの解法と同じ \(1.0 \times 10^2\,\text{V/m}\) が得られました。この方法は、電場が一様でない(グラフが曲線になる)場合でも、その点での接線の傾きを調べることで電場を求められるため、より応用範囲の広い考え方です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 一様な電場と電位の関係
- 核心: この問題の根幹は、一様な電場(電場の強さ \(E\) が一定の空間)において、電位 \(V\) が距離 \(x\) に対して直線的に変化する(\(V = V_0 – Ex\))という性質を理解することです。これは、重力場における「高さ」と「位置エネルギー」の関係(\(U = mgh\))と全く同じ構造をしています。
- 理解のポイント:
- 電場は「坂の急さ」: 電場の強さ \(E\) は、電位のグラフ(\(V-x\) グラフ)における「傾きの大きさ」そのものです。坂が急であればあるほど、電場は強くなります。
- 導体は「平地」: 静電場中の導体内部では、自由電子の移動によって電場が打ち消され \(0\) になります。電場(坂の急さ)が \(0\) ということは、電位(高さ)は変化せず一定(平地)になるということです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- コンデンサーの極板間: 本問と全く同じ状況です。誘電体を挿入した場合などは、誘電体内部での電場の変化(弱まる)と電位の傾きの変化(緩やかになる)をグラフにする問題が頻出です。
- 半導体のpn接合: 空乏層における電位分布や電場分布を考える際にも、ポアソン方程式(電位の2階微分が電荷密度に比例)の基礎として、この「電場=電位の傾き」という概念が不可欠です。
- 初見の問題での着眼点:
- 導体を見つける: 問題図の中に「金属板」や「導体球」があれば、即座に「内部は電場ゼロ」「全体が等電位」という条件を書き込みましょう。これがグラフを描く際の強力なヒント(平らな部分)になります。
- 基準点(0V)を探す: 「接地(アース)」の記号があれば、そこが電位 \(0\,\text{V}\) の基準点です。そこから出発して、電場に逆らって進めば電位は上がり、電場に沿って進めば電位は下がります。
- グラフの対応関係: \(V-x\) グラフと \(E-x\) グラフを描く問題では、片方が描ければもう片方は「微分(傾き)」または「積分(面積)」の関係を使って導けることを思い出してください。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 導体の厚みの無視:
- 誤解: 金属板の厚さ \(1\,\text{cm}\) を無視して、\(0 \sim 10\,\text{cm}\) の範囲だけでグラフを描いてしまう。
- 対策: 問題文の「厚さ \(1\,\text{cm}\)」や図の目盛りを注意深く読み取りましょう。特にグラフ問題では、横軸の定義域(どこからどこまでか)を最初に確認することが重要です。
- 単位換算の忘れ:
- 誤解: 距離 \(d = 10\,\text{cm}\) をそのまま計算に使ってしまい、電場 \(E = 10/10 = 1\,\text{V/m}\) と答えてしまう。
- 対策: 電磁気学の公式(\(E=V/d\) など)は、基本的にSI単位系(\(\text{m}, \text{A}, \text{s}, \text{kg}\))で成り立っています。計算前に必ず \(\text{cm} \to \text{m}\) の換算を行う癖をつけましょう。
- 電場の向きと符号:
- 誤解: 電位のグラフの傾きが負(右下がり)なので、電場の値もマイナスにしてしまう。
- 対策: 「電場の強さ」を聞かれた場合は大きさ(絶対値)を答えます。向きを聞かれた場合や、ベクトルとして扱う場合にのみ符号を考慮します。通常、電場のグラフの縦軸は「強さ(大きさ)」をとることが多いです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(等電位線の間隔):
- 選定理由: 一様な電場では電位の変化率が一定であるため、単純な比例計算(比の計算)で解くことができます。公式というよりは、一様な場の性質そのものを利用しています。
- 適用根拠: 「一様な電場」という条件があるため、電位は距離の一次関数になります。したがって、「\(10\,\text{cm}\) で \(10\,\text{V}\) 変わるなら、\(2\,\text{V}\) 変わるには何 \(\text{cm}\) 必要か?」という線形な推論が正当化されます。
- 問(3)での公式選択(一様な電場の強さ):
- 選定理由: 一様な電場における電場 \(E\)、電位差 \(V\)、距離 \(d\) の関係式 \(V = Ed\) は、この単元の最も基本的な公式です。
- 適用根拠: 空間部分では電場が一様であるため、この公式がそのまま適用できます。ただし、\(d\) には「電位差 \(V\) が生じている区間の距離(空間の幅)」を代入する必要があります。金属板の厚みを含めた距離を使わないように注意が必要です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフの概形を先にイメージする:
- 計算を始める前に、「導体部分は平ら」「空間は斜め」といったグラフの形を頭の中で(あるいは余白に)描いておきましょう。計算結果がそのイメージと大きく異なれば、どこかでミスをしていると気づけます。
- 傾きの検算:
- (2)で描いたグラフの傾きを計算して、(3)の答えと一致するか確認しましょう。例えば、グラフ上で \(10\,\text{cm}\) 進んで \(10\,\text{V}\) 下がっているなら、傾きは \(1\,\text{V/cm} = 100\,\text{V/m}\) です。これが(3)の計算結果と合っていれば、両方の設問が正解である可能性が高いです。
- 端点の確認:
- グラフを描く際は、始点(X点)と終点(Y点)の値が正しいか必ず確認します。X点は \(10\,\text{V}\)、Y点は \(0\,\text{V}\) になっているか? 接地されているのはどちらか? といった境界条件のチェックは、ミスの防止に非常に有効です。
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441 電場と仕事
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)(3)の別解: 仕事の定義 \(W = Fx\) を用いた定性的な解法
- 模範解答は電位差と位置エネルギーの変化から仕事を計算していますが、別解では「力(静電気力や外力)の向き」と「移動の向き」の関係に着目し、仕事の正負を直感的に判断する方法を解説します。
- 設問(2)(3)の別解: 仕事の定義 \(W = Fx\) を用いた定性的な解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的直感の養成: 数式計算だけでなく、力がどちらを向いていて、物体がどちらに動くかという力学的な視点から仕事の符号を判断する力が身につきます。
- 検算としての利用: 計算結果の符号が正しいかどうかを、直感的にチェックする手段として有効です。
- 結果への影響
- どちらのアプローチでも、最終的な答え(区間の選択と仕事の大きさ)は一致します。
この問題のテーマは「静電場における電位と仕事」です。等電位線で表された電場の様子を読み取り、電荷を移動させる際のエネルギーのやり取り(仕事)を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 静電気力による位置エネルギー: 電荷 \(q\) が電位 \(V\) の点にあるとき、その電荷は \(U = qV\) の位置エネルギーを持つこと。
- 仕事とエネルギーの関係:
- 外力がする仕事 \(W_{\text{外力}}\) は、位置エネルギーの増加量に等しい(\(W_{\text{外力}} = \Delta U = q\Delta V\))。
- 静電気力(電場)がする仕事 \(W_{\text{静電気力}}\) は、位置エネルギーの減少量に等しい(\(W_{\text{静電気力}} = -\Delta U = -q\Delta V\))。
- 等電位線の読み方: 正電荷付近は電位が高く、負電荷付近は電位が低いこと。等電位線の間隔が狭いほど電場が強いこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、図から点Bの電位を読み取り、公式 \(U = qV\) に代入して位置エネルギーを求めます。
- (2)では、「外力が正の仕事をする」=「位置エネルギーが増加する(電位が上がる)」区間を探し、その変化量を計算します。
- (3)では、「電場が正の仕事をする」=「位置エネルギーが減少する(電位が下がる)」区間を探し、その変化量を計算します。
- (4)では、点D付近の等電位線の間隔から電場の強さを求め、\(F = qE\) で静電気力の大きさを計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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