問題58 たてばねによる単振動 (22 千葉大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(3)の別解1: 力学的エネルギー保存則(重力位置エネルギーを含む)を用いた解法
- 模範解答の別解でも触れられていますが、単振動のエネルギー保存則(復元力の位置エネルギー)ではなく、重力と弾性力の位置エネルギーを個別に扱う、より一般的な保存則を用いた解法を詳述します。
- 設問(2)(3)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の解)
- 運動方程式を微分方程式として解き、変位 \(x(t)\) と速度 \(v(t)\) を時間の関数として導出することで、周期や最大速さを体系的に求めます。
- 設問(8)の別解: 微積分を用いた体系的解法(エネルギー積分)
- 運動方程式を空間積分(エネルギー積分)することで、エネルギー保存則を数学的に導出し、計算を行います。
- 設問(3)の別解1: 力学的エネルギー保存則(重力位置エネルギーを含む)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 力学的エネルギー保存則: 「単振動のエネルギー保存則」の公式(\(\frac{1}{2}kx^2\) の基準がつりあいの位置)を忘れてしまったり、適用条件に不安がある場合でも、物理の基本原理である「重力+弾性力」の保存則に立ち返ることで確実に正解を導けます。
- 微積分の解法: 公式 \(T=2\pi\sqrt{m/k}\) や \(v=A\omega\) を暗記に頼らず、運動方程式という第一原理から導き出す力を養えます。特に、変位や速度が時間とともにどう変化するかを関数として可視化できるため、現象の深い理解につながります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「2物体の単振動と離れる条件」です。
ばねにつながれた物体Aと、それに接着された物体Bが一体となって単振動し、特定の条件下で分離する現象を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動の運動方程式: 復元力 \(F = -Kx\) がはたらく物体は、角振動数 \(\omega = \sqrt{K/m}\) の単振動を行います。
- 2物体の運動方程式: 複数の物体が連動して動く場合、それぞれの物体について運動方程式を立て、内力(作用・反作用)を考慮して連立させます。
- 離れる条件: 接触している2物体が離れる瞬間、互いに及ぼし合う垂直抗力(または接着力による引力)が特定の条件(\(N=0\) や引力の限界)を満たします。
- 力学的エネルギー保存則: 摩擦がない系では、運動エネルギーと位置エネルギー(重力・弾性力)の総和が保存されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、AとBを質量 \(2m\) の一体の物体とみなし、単振動の基本量(周期、最大速さ)を求めます。
- (4)〜(6)では、AとBを別々の物体として扱い、それぞれの運動方程式を立てて内力 \(T\) を導出します。
- (7)〜(8)では、導出した内力 \(T\) の式に基づき、物体が離れる位置と、その時の速さをエネルギー保存則から求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずは静止している状態、つまり「力のつりあい」を考えます。
物体Aと物体Bは一体となって静止しており、全体の質量は \(m + m = 2m\) です。
ばねは自然長から \(d_1\) だけ縮んでいるので、鉛直上向きに弾性力を及ぼしています。
この設問における重要なポイント
- 一体として見る: AとBは静止しているので、まとめて一つの物体(質量 \(2m\))として扱えます。
- 力の向き: 重力は下向き、縮んだばねの弾性力は「元に戻ろうとする」ので上向きです。
具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。
物体AとBを一体(質量 \(2m\))として考えると、はたらく力は以下の通りです。
- 重力: \(2mg\) (下向き)
- ばねの弾性力: ばねの縮みが \(d_1\) なので、\(k d_1\) (上向き)
力がつりあっているため、力の大きさについて以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{上向きの力}) &= (\text{下向きの力}) \\[2.0ex]
k d_1 &= 2mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- フックの法則: \(F = kx\)
- 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = 0\)
式①を \(d_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
d_1 &= \frac{2mg}{k}
\end{aligned}
$$
重たい荷物(AとB)をばねの上に乗せたら、ばねが縮んで止まりました。
「荷物の重さ」と「ばねが押し返す力」がちょうど同じ大きさになったところで止まっています。そのバランスの式から、ばねがどれだけ縮んだかを計算しました。
\(d_1 = \frac{2mg}{k}\) となりました。
質量 \(m\) が大きいほど縮み \(d_1\) は大きくなり、ばね定数 \(k\) が大きい(硬い)ほど縮みは小さくなるため、物理的に妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
物体Bを手で押し下げて放すと、AとBは一体となって単振動を始めます。
単振動の周期を求めるには、任意の位置 \(x\) における運動方程式を立て、加速度 \(a\) と変位 \(x\) の関係 \(a = -\omega^2 x\) を導くのが定石です。
この設問における重要なポイント
- 座標の定義: つりあいの位置を原点 \(x=0\) とし、鉛直上向きを正としています。
- ばねの縮み: 位置 \(x\) にあるとき、ばねの縮みは \(d_1 – x\) となります。(\(x\) が正なら縮みは減り、\(x\) が負なら縮みは増えます)
- 復元力の確認: つりあいの式 \(kd_1 = 2mg\) を利用して、定数項(重力とつりあう分の弾性力)を消去します。
具体的な解説と立式
物体AとBが一体(質量 \(2m\))となって、位置 \(x\) にある瞬間を考えます。加速度を \(a\) (上向き正)とします。
はたらく力は以下の通りです。
- 重力: \(2mg\) (下向きなので \(-2mg\))
- ばねの弾性力: ばねの縮みは \(d_1 – x\) なので、\(k(d_1 – x)\) (上向き正)
運動方程式 \(ma = F\) を立てます。
$$
\begin{aligned}
2m a &= k(d_1 – x) – 2mg
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
- 単振動の加速度: \(a = -\omega^2 x\)
- 単振動の周期: \(T = \frac{2\pi}{\omega}\)
運動方程式を展開し、つりあいの式 \(k d_1 = 2mg\) を用います。
$$
\begin{aligned}
2m a &= k d_1 – kx – 2mg \\[2.0ex]
&= (k d_1 – 2mg) – kx
\end{aligned}
$$
\(k d_1 – 2mg = 0\) なので、
$$
\begin{aligned}
2m a &= -kx \\[2.0ex]
a &= -\frac{k}{2m} x
\end{aligned}
$$
これは単振動の加速度の式 \(a = -\omega^2 x\) の形です。
角振動数 \(\omega\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{k}{2m} \\[2.0ex]
\omega &= \sqrt{\frac{k}{2m}}
\end{aligned}
$$
よって、周期 \(T\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$
つりあいの位置からズレた場所 \(x\) で、物体にどんな力がはたらくかを計算しました。
すると、重力と「ばねの縮みの基本分」が打ち消し合い、結局「ズレた距離 \(x\) に比例して引き戻す力(復元力)」だけが残ることがわかります。
この復元力の強さ(ばね定数 \(k\))と物体の重さ(質量 \(2m\))から、振動のリズム(周期)が決まります。
周期 \(T = 2\pi \sqrt{\frac{2m}{k}}\) です。
質量 \(2m\) が大きいほど周期は長く(ゆっくりに)なり、ばね定数 \(k\) が大きいほど周期は短く(速く)なるため、妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
単振動している物体の速さが最大になるのは、力がつりあっている「振動の中心(\(x=0\))」を通過する瞬間です。
単振動の最大速さの公式 \(v_{\text{最大}} = A\omega\) を使うのが最も早いです。
この設問における重要なポイント
- 振幅の特定: つりあいの位置から \(b\) だけ押し下げて放したので、振幅 \(A = b\) です。
- 最大速さの位置: 端(\(x=\pm b\))で速さは \(0\)、中心(\(x=0\))で速さは最大になります。
具体的な解説と立式
振幅を \(A\)、角振動数を \(\omega\) とすると、単振動の最大速さ \(v_{\text{最大}}\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{最大}} &= A \omega
\end{aligned}
$$
本問では、振幅 \(A = b\) です。また、問(2)より \(\omega = \sqrt{\frac{k}{2m}}\) です。
使用した物理公式
- 単振動の最大速さ: \(v_{\text{最大}} = A\omega\)
値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{最大}} &= b \sqrt{\frac{k}{2m}}
\end{aligned}
$$
ブランコを想像してください。一番高く上がったところ(端っこ)で一瞬止まり、一番低いところ(真ん中)を通るときに一番速くなります。
この問題でも同じで、真ん中を通る瞬間の速さを計算しました。「どれだけ大きく揺れているか(振幅 \(b\))」と「どれだけ速いリズムで揺れているか(角振動数 \(\omega\))」の掛け算で求まります。
答えは \(b \sqrt{\frac{k}{2m}}\) です。
振幅 \(b\) が大きいほど、またばねが硬い(\(k\)が大きい)ほど速くなるので妥当です。
思考の道筋とポイント
単振動の公式を使わず、エネルギー保存則から解くこともできます。
ここでは、重力による位置エネルギーと弾性力による位置エネルギーを個別に扱う、最も基本的な保存則を用います。
この設問における重要なポイント
- 状態の比較: 「スタート地点(最下点 \(x=-b\))」と「速さ最大の地点(振動中心 \(x=0\))」を比較します。
- 基準の設定: 重力の位置エネルギーの基準を振動中心(\(x=0\))とします。
- ばねの縮み: \(x=-b\) での縮みは \(d_1 + b\)、\(x=0\) での縮みは \(d_1\) です。
具体的な解説と立式
最下点(\(x=-b\))と振動中心(\(x=0\))の間で、力学的エネルギー保存則を立てます。
質量は \(2m\) であることに注意します。
- 最下点 (\(x=-b\)):
- 運動エネルギー: \(0\) (静止)
- 重力位置エネルギー: \(2mg(-b)\)
- 弾性エネルギー: \(\frac{1}{2}k(d_1 + b)^2\)
- 振動中心 (\(x=0\)):
- 運動エネルギー: \(\frac{1}{2}(2m)v_{\text{最大}}^2\)
- 重力位置エネルギー: \(0\) (基準)
- 弾性エネルギー: \(\frac{1}{2}k d_1^2\)
保存則の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
0 + 2mg(-b) + \frac{1}{2}k(d_1 + b)^2 &= \frac{1}{2}(2m)v_{\text{最大}}^2 + 0 + \frac{1}{2}k d_1^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則: \(K + U = \text{一定}\)
- 弾性エネルギー: \(U = \frac{1}{2}kx^2\)
- 重力位置エネルギー: \(U = mgh\)
左辺を展開し、\(2mg = k d_1\) (問(1)の結果)を利用して整理します。
$$
\begin{aligned}
\text{左辺} &= -2mgb + \frac{1}{2}k(d_1^2 + 2d_1 b + b^2) \\[2.0ex]
&= -k d_1 b + \frac{1}{2}k d_1^2 + k d_1 b + \frac{1}{2}k b^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}k d_1^2 + \frac{1}{2}k b^2
\end{aligned}
$$
これを保存則の式に戻します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k d_1^2 + \frac{1}{2}k b^2 &= m v_{\text{最大}}^2 + \frac{1}{2}k d_1^2
\end{aligned}
$$
両辺から \(\frac{1}{2}k d_1^2\) を引いて整理します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k b^2 &= m v_{\text{最大}}^2 \\[2.0ex]
v_{\text{最大}}^2 &= \frac{k}{2m} b^2 \\[2.0ex]
v_{\text{最大}} &= b \sqrt{\frac{k}{2m}}
\end{aligned}
$$
「ばねのエネルギー」と「重力のエネルギー」の合計が、動き出す前と一番速いときで変わらないというルールを使いました。
計算の途中で、つりあいの関係式を使うと、重力の影響がばねのエネルギーの一部と打ち消し合って消えることが確認できます。
メインの解法と全く同じ結果が得られました。
エネルギー保存則は、力のつりあいや運動方程式と整合性が取れていることが確認できます。
思考の道筋とポイント
運動方程式を微分方程式として解くことで、物体の位置 \(x(t)\) と速度 \(v(t)\) を時間の関数として完全に記述します。
これにより、周期も最大速さも一つの数式から自然に導かれます。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式の微分形: 加速度 \(a\) を位置 \(x\) の時間による2階微分 \(\frac{d^2x}{dt^2}\) と表します。
- 単振動の一般解: \(\frac{d^2x}{dt^2} = -\omega^2 x\) の解は \(x(t) = A \sin(\omega t + \phi)\) です。
具体的な解説と立式
問(2)で立てた運動方程式 \(2m a = -kx\) において、\(a = \frac{d^2x}{dt^2}\) とします。
$$
\begin{aligned}
2m \frac{d^2x}{dt^2} &= -kx \\[2.0ex]
\frac{d^2x}{dt^2} &= -\frac{k}{2m} x
\end{aligned}
$$
ここで、\(\omega = \sqrt{\frac{k}{2m}}\) と置くと、以下の単振動の微分方程式になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= -\omega^2 x
\end{aligned}
$$
この一般解は、積分定数 \(A, \phi\) を用いて以下のように書けます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= A \sin(\omega t + \phi)
\end{aligned}
$$
速度 \(v(t) = \frac{dx}{dt}\) はこれを時間微分して求めます。
$$
\begin{aligned}
v(t) &= A\omega \cos(\omega t + \phi)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式(微分形): \(m \frac{d^2x}{dt^2} = F\)
- 微分の公式: \(\frac{d}{dt}\sin(\omega t) = \omega \cos(\omega t)\)
初期条件を用いて定数を決定します。
手を離した時刻を \(t=0\) とすると、このとき物体は最下点(\(x=-b\))にあり、初速度は \(0\) です。
- \(v(0) = A\omega \cos\phi = 0\) より、\(\phi = -\frac{\pi}{2}\) (または \(\frac{\pi}{2}\))
- \(x(0) = A \sin(-\frac{\pi}{2}) = -A = -b\) より、\(A = b\)
よって、変位と速度の式が確定します。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= -b \cos(\omega t) \\[2.0ex]
v(t) &= b\omega \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
これより、以下の結論が得られます。
- 周期 \(T\): 三角関数の周期性より
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$ - 最大速さ \(v_{\text{最大}}\): \(v(t)\) の最大値は \(\sin(\omega t) = 1\) のときなので、
$$
\begin{aligned}
v_{\text{最大}} &= b\omega \\[2.0ex]
&= b \sqrt{\frac{k}{2m}}
\end{aligned}
$$
「力と加速度の関係」を表す運動方程式を、「位置の時間変化」を表す式に変形して解きました。
すると、位置 \(x\) も速度 \(v\) も、サインやコサインといった波の式で表せることがわかります。
この波の式を見れば、一回揺れるのにかかる時間(周期)や、一番速いときのスピードが一目でわかります。
微分方程式を解くことで、周期と最大速さを同時に導出できました。
結果はメインの解法と一致しており、物理現象をより深く記述できていることがわかります。
解答 (3) \(\displaystyle b \sqrt{\frac{k}{2m}}\)
問(4)
思考の道筋とポイント
ここからは物体AとBを別々の物体として考えます。
物体B(上にある物体)に着目し、はたらく力をすべて書き出します。
問題文の定義に従い、力の向きと符号に注意が必要です。
この設問における重要なポイント
- 力の定義: 「物体Aが物体Bから受ける力を \(T\)」とし、「\(x\) 軸の正の向き(上向き)を \(T\) の正の向き」としています。
- 作用・反作用: 物体Bにはたらく力は「物体Bが物体Aから受ける力」です。これは \(T\) の反作用なので、大きさは同じで向きは逆、つまりベクトルとしては \(-T\) となります。
- 重力: 質量 \(m\) の物体Bにはたらく重力は \(mg\) (下向き)です。
具体的な解説と立式
物体Bにはたらく力を、\(x\) 軸の正の向き(鉛直上向き)を正として考えます。
- 重力: 鉛直下向きに大きさ \(mg\) なので、\(-mg\)。
- Aから受ける力:
- 問題文より、AがBから受ける力が \(T\) (上向き正)です。
- 作用・反作用の法則より、BがAから受ける力は \(-T\) となります。
- (補足: \(T>0\) ならAはBに引かれているので、BはAに引かれる(下向き)。\(T<0\) ならAはBに押されているので、BはAに押される(上向き)。式 \(-T\) はこれらを含んでいます。)
よって、物体Bにはたらく合力 \(F_B\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F_B &= -mg – T
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 作用・反作用の法則: \(\vec{F}_{AB} = -\vec{F}_{BA}\)
立式そのものが答えとなります。
上の箱(B)にはたらく力を考えます。
地球が引っ張る力(重力)と、下の箱(A)との間で及ぼし合う力(接着力や垂直抗力)の2つがあります。
問題文で決められた \(T\) という記号を使って、これらの力を足し合わせました。AとBの間の力は「お互いに逆向き」にはたらく点に注意しました。
\(F_B = -mg – T\) です。
例えば \(T\) が正(引き合っている)なら、Bは下に引かれるので力は \(-mg – T\) (より強い下向き)となり、直感と一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
物体Aと物体B、それぞれの運動方程式を立てて連立させ、内力 \(T\) を求めます。
加速度 \(a\) は共通です。
この設問における重要なポイント
- Aの運動方程式: 重力、ばねの力、Bからの力 \(T\) がはたらきます。
- Bの運動方程式: 重力、Aからの力 \(-T\) がはたらきます(問(4)の結果)。
- 連立: 2つの式から加速度 \(a\) を消去して \(T\) を導きます。
具体的な解説と立式
加速度を \(a\) (上向き正)とします。
物体A(下)の運動方程式:
はたらく力は、重力 \(-mg\)、ばねの力 \(k(d_1 – x)\)、Bからの力 \(T\) です。
$$
\begin{aligned}
ma &= k(d_1 – x) – mg + T \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
物体B(上)の運動方程式:
はたらく力は、問(4)より \(-mg – T\) です。
$$
\begin{aligned}
ma &= -mg – T \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(ma = F\)
式②から式③を引いて、\(ma\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
(ma) – (ma) &= \{k(d_1 – x) – mg + T\} – \{-mg – T\} \\[2.0ex]
0 &= k(d_1 – x) – mg + T + mg + T \\[2.0ex]
0 &= k d_1 – kx + 2T
\end{aligned}
$$
ここで、問(1)より \(k d_1 = 2mg\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= 2mg – kx + 2T
\end{aligned}
$$
\(T\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2T &= kx – 2mg \\[2.0ex]
T &= \frac{1}{2}kx – mg
\end{aligned}
$$
上の箱と下の箱、それぞれについて「力と動きの式(運動方程式)」を作りました。
2つの箱はくっついて一緒に動いているので、加速度(動きの変化の激しさ)は同じです。
この関係を使って式を整理し、箱同士の間にはたらいている力 \(T\) を計算しました。
\(T = \frac{1}{2}kx – mg\) です。
\(x\) が大きい(上にいく)ほど \(T\) は大きくなります。上にいくとばねが縮まなくなり(あるいは伸びて)、Aが落ちようとするのをBが支える(引き上げる)必要が出てくるため、\(T\)(引力)が増えるのは妥当です。
問(6)
思考の道筋とポイント
問(5)で求めた \(T\) の式は \(x\) の一次関数です。
指定された範囲 \(-3d_1 \le x \le 3d_1\) における端点と、\(T=0\) となる点(切片)を計算してグラフを描きます。
この設問における重要なポイント
- 関数の形: \(T = \frac{k}{2}x – mg\) なので、傾き正の直線です。
- 特徴的な点: \(x = -3d_1\), \(x = 0\), \(x = 3d_1\) での値を求めます。また、\(d_1 = \frac{2mg}{k}\) を用いて \(k, m, g\) の関係を整理します。
具体的な解説と立式
式 \(T = \frac{1}{2}kx – mg\) に値を代入して座標を求めます。
\(k d_1 = 2mg\) より、\(mg = \frac{1}{2}k d_1\) や \(k = \frac{2mg}{d_1}\) の関係を使います。
使用した物理公式
- 一次関数のグラフ描画
- \(x = 0\) のとき:
$$
\begin{aligned}
T &= -mg
\end{aligned}
$$ - \(T = 0\) のとき:
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}kx &= mg \\[2.0ex]
x &= \frac{2mg}{k} \\[2.0ex]
x &= d_1
\end{aligned}
$$ - \(x = -3d_1\) のとき:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{2}k(-3d_1) – mg \\[2.0ex]
&= -\frac{3}{2}(k d_1) – mg \\[2.0ex]
&= -\frac{3}{2}(2mg) – mg \\[2.0ex]
&= -3mg – mg \\[2.0ex]
&= -4mg
\end{aligned}
$$ - \(x = 3d_1\) のとき:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{1}{2}k(3d_1) – mg \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2}(2mg) – mg \\[2.0ex]
&= 3mg – mg \\[2.0ex]
&= 2mg
\end{aligned}
$$
これらの点 \((-3d_1, -4mg), (0, -mg), (d_1, 0), (3d_1, 2mg)\) を通る直線を描きます。
計算した式をグラフにする問題です。
\(x\)(位置)が変わると \(T\)(箱同士の力)がどう変わるかを、いくつかのポイントで計算して直線で結びました。
\(x\) が低いときは押し合い(\(T<0\))、高いときは引き合い(\(T>0\))になることがグラフから読み取れます。
直線グラフとなり、計算値も模範解答のグラフと一致します。
(グラフは以下の点を通る直線)
横軸 \(x\)、縦軸 \(T\)
点 \((-3d_1, -4mg)\) から始まり、点 \((0, -mg)\)、点 \((d_1, 0)\) を通り、点 \((3d_1, 2mg)\) で終わる線分。
(図は模範解答の図eを参照)
問(7)
思考の道筋とポイント
「引きあう力の大きさが \(mg\) 以上になると離れる」という条件を数式にします。
引き合う力は \(T > 0\) のときであり、その大きさが \(mg\) 以上なので、\(T \ge mg\) となります。
この条件を満たす \(x\) の範囲を求め、振動の最高点(振幅 \(b\))がその範囲に入る条件を考えます。
この設問における重要なポイント
- 離れる条件: \(T \ge mg\)
- 振動の範囲: 単振動は \(x = -b\) から \(x = b\) の間を往復します。
- 離れるための条件: 振動の途中で \(T \ge mg\) となる場所に到達すればよいので、最高点 \(x=b\) がその境界値以上であればよいことになります。
具体的な解説と立式
離れる条件は \(T \ge mg\) です。
これに問(5)の式を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}kx – mg &\ge mg
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 不等式の計算
不等式を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}kx &\ge 2mg \\[2.0ex]
x &\ge \frac{4mg}{k}
\end{aligned}
$$
物体AとBが離れるためには、単振動の最高点(\(x=b\))がこの位置に到達する必要があります。
よって、振幅 \(b\) が満たすべき条件は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
b &\ge \frac{4mg}{k}
\end{aligned}
$$
求める最小値 \(b_1\) は、
$$
\begin{aligned}
b_1 &= \frac{4mg}{k}
\end{aligned}
$$
箱同士が強く引き合うと、接着剤が剥がれてしまいます。
その限界の力(\(mg\))を超えるのが、どの高さ(\(x\))なのかを計算しました。
振動の揺れ幅(\(b\))が小さすぎるとその高さまで届きませんが、揺れ幅がある値(\(b_1\))以上なら、一番高いところで限界を超えて剥がれてしまいます。
\(b_1 = \frac{4mg}{k}\) です。
\(d_1 = \frac{2mg}{k}\) なので、\(b_1 = 2d_1\) の位置です。自然長 \(d_1\) よりもさらに高い位置まで行かないと離れないということで、接着剤がある程度の強さを持っていることを示唆しており妥当です。
問(8)
思考の道筋とポイント
物体Bが離れるのは、問(7)で求めた限界の位置 \(x = \frac{4mg}{k}\) に達した瞬間です。
この位置での速さ \(v\) を求めます。
エネルギー保存則を使うのが最適です。
この設問における重要なポイント
- 状態の比較: 「スタート地点(\(x=-b\))」と「離れる地点(\(x = \frac{4mg}{k}\))」を比較します。
- 保存則の選択: 単振動のエネルギー保存則(\(\frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}Kx^2 = \text{一定}\))を使うと計算が楽です。ここでの \(K\) は全体のばね定数 \(k\)、質量は \(2m\) です。
具体的な解説と立式
単振動のエネルギー保存則を用います。
- スタート地点 (\(x=-b\)):
- 速さは \(0\)。
- エネルギー: \(\frac{1}{2}k(-b)^2\)
- 離れる地点 (\(x = \frac{4mg}{k}\)):
- 速さを \(v\) とします。
- エネルギー: \(\frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}k\left(\frac{4mg}{k}\right)^2\)
保存則の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k b^2 &= \frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}k \left( \frac{4mg}{k} \right)^2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動のエネルギー保存則: \(E = \frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}kx^2\)
式を整理して \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}k b^2 &= m v^2 + \frac{1}{2}k \cdot \frac{16m^2g^2}{k^2} \\[2.0ex]
\frac{1}{2}k b^2 &= m v^2 + \frac{8m^2g^2}{k}
\end{aligned}
$$
\(m v^2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
m v^2 &= \frac{1}{2}k b^2 – \frac{8m^2g^2}{k}
\end{aligned}
$$
両辺を \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= \frac{k}{2m} b^2 – \frac{8mg^2}{k}
\end{aligned}
$$
平方根をとります(\(v>0\))。
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{\frac{k}{2m} b^2 – \frac{8mg^2}{k}}
\end{aligned}
$$
一番下からスタートして、接着剤が剥がれる高さまで上がってきたときのスピードを計算しました。
「最初にばねに蓄えられていたエネルギー」が、「剥がれる場所でのばねのエネルギー」と「その時のスピードのエネルギー」に分配されるというルール(エネルギー保存則)を使いました。
答えは \(\sqrt{\frac{k}{2m} b^2 – \frac{8mg^2}{k}}\) です。
ルートの中身が正であるためには \(\frac{k}{2m} b^2 > \frac{8mg^2}{k}\)、つまり \(b^2 > \frac{16m^2g^2}{k^2}\)、\(b > \frac{4mg}{k}\) が必要です。これは問(7)の条件 \(b \ge b_1\) と一致しており、物理的に整合しています。
思考の道筋とポイント
運動方程式からエネルギー保存則を数学的に導出します。
「運動方程式の両辺に速度 \(v\) をかけて時間積分する」という操作は、物理学におけるエネルギー定義の根源です。
この設問における重要なポイント
- エネルギー積分: \(\int ma v \, dt = \int F v \, dt\) を計算します。
- 置換積分: \(v \, dt = dx\) を利用して、時間積分を空間積分に変換します。
具体的な解説と立式
問(2)の運動方程式 \(2m \frac{dv}{dt} = -kx\) の両辺に、速度 \(v = \frac{dx}{dt}\) をかけます。
$$
\begin{aligned}
2m v \frac{dv}{dt} &= -kx \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
この式を、スタート時刻 \(t=0\) から離れる時刻 \(t_1\) まで時間積分します。
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{t_1} 2m v \frac{dv}{dt} \, dt &= \int_{0}^{t_1} -kx \frac{dx}{dt} \, dt
\end{aligned}
$$
左辺は \(v\) での積分、右辺は \(x\) での積分に置換できます。
スタート時: \(x=-b, v=0\)
離れる時: \(x=x_1, v=v_1\) (ここで \(x_1 = \frac{4mg}{k}\))
$$
\begin{aligned}
\int_{0}^{v_1} 2m v \, dv &= \int_{-b}^{x_1} -kx \, dx
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 積分の公式: \(\int x \, dx = \frac{1}{2}x^2\)
- 置換積分法
積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
\left[ \frac{1}{2}(2m)v^2 \right]_{0}^{v_1} &= \left[ -\frac{1}{2}kx^2 \right]_{-b}^{x_1} \\[2.0ex]
m v_1^2 – 0 &= -\frac{1}{2}k x_1^2 – \left( -\frac{1}{2}k (-b)^2 \right) \\[2.0ex]
m v_1^2 &= \frac{1}{2}k b^2 – \frac{1}{2}k x_1^2
\end{aligned}
$$
これは単振動のエネルギー保存則そのものです。
\(x_1 = \frac{4mg}{k}\) を代入して解きます。
$$
\begin{aligned}
m v_1^2 &= \frac{1}{2}k b^2 – \frac{1}{2}k \left( \frac{4mg}{k} \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}k b^2 – \frac{8m^2g^2}{k}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
v_1 &= \sqrt{\frac{k}{2m} b^2 – \frac{8mg^2}{k}}
\end{aligned}
$$
運動方程式という「力のルール」を積分(足し合わせる計算)することで、「エネルギーのルール」を自分で作り出しました。
結果として、公式を使った場合と全く同じ式が得られ、エネルギー保存則が運動方程式から導かれるものであることが確認できました。
微積分を用いても同じ結果が得られました。
これにより、エネルギー保存則の物理的背景がより明確になります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 運動方程式の分離と連立(2物体の運動)
- 核心: 複数の物体が一体となって動く場合、加速度 \(a\) は共通ですが、物体間にはたらく内力(\(T\) や垂直抗力)を求めるには、必ず個々の物体について運動方程式を立てて連立する必要があります。
- 理解のポイント:
- 一体の視点: 周期や振動中心を求める際は、全体を質量 \(2m\) の1つの物体とみなすと計算が速い。
- 個別の視点: 内力 \(T\) を求める際は、AとBを切り離し、作用・反作用の法則(\(T\) と \(-T\))を正しく図示して立式する。
- 単振動における復元力とエネルギー保存則
- 核心: 重力が関与する鉛直ばね振り子では、「つりあいの位置」を原点とすることで、重力の影響を弾性力の項に吸収させ、シンプルな単振動 \(ma = -kx\) として扱えます。
- 理解のポイント:
- 保存則の選択: 「重力+弾性力(自然長基準)」で考えるか、「復元力(つりあい位置基準)」で考えるか。どちらを選んでも正解ですが、混在させないことが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 接触物体の分離(\(N=0\)問題): 本問は接着剤による引力 \(T\) の限界を扱いましたが、単に上に乗っている物体が離れる場合は、垂直抗力 \(N\) が \(0\) になる瞬間を条件とします。解法プロセス(運動方程式 \(\to\) 内力の式 \(\to\) 条件適用)は完全に同一です。
- 摩擦力による一体運動: 摩擦のある台の上で物体が滑らずに振動する場合、「静止摩擦力 \(\le\) 最大静止摩擦力」という条件式を立てます。これも内力を求めて不等式を解く流れは同じです。
- 初見の問題での着眼点:
- つりあいの位置の特定: まず静止状態で力がつりあう位置を求め、そこを座標の原点 \(x=0\) に設定します。これが全ての計算の基準になります。
- 内力の可視化: 「離れる」「滑る」といったキーワードが出たら、すぐに物体を分離して図を描き、内力(垂直抗力、摩擦力、張力など)を矢印で書き込みます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 「離れる位置」の勘違い:
- 誤解: 「ばねが自然長に戻った瞬間に離れる」と直感で思い込んでしまう。
- 対策: 離れる条件は「位置」ではなく「力」で決まります。必ず運動方程式から内力 \(T\)(または \(N\))の式を導き、\(T \ge mg\)(または \(N=0\))という力の条件式を解いて位置 \(x\) を逆算する手順を徹底してください。
- 質量 \(m\) と \(2m\) の取り違え:
- 誤解: 一体で動いているのに質量を \(m\) としてしまったり、Bだけの式なのに \(2m\) としてしまう。
- 対策: 運動方程式を立てる際、主語(どの物体に着目しているか)を明確にし、その物体の質量を指差し確認しながら代入する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 単振動のエネルギー保存則(問8):
- 選定理由: 「ある位置での速さ」を求める問題では、運動方程式を時間積分して解くよりも、始点と終点のエネルギーを比較する保存則の方が、計算量が圧倒的に少なくミスも防げるため。
- 適用根拠: 摩擦などの非保存力が仕事をしておらず、系全体の力学的エネルギーが保存されるため。
- 運動方程式の連立(問5):
- 選定理由: 内力 \(T\) はエネルギー保存則からは直接求められません。力と加速度の瞬時的な関係を記述する運動方程式こそが、内力を導出できる唯一の基本原理だからです。
- 適用根拠: ニュートンの運動法則は、マクロな物体の運動において常に成立するため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 関係式の活用(\(k d_1 = 2mg\)):
- 意識: 問題の初期条件で得られたつりあいの式は、後の計算で定数項を消去するための強力な武器になります。
- 実践: 計算中に \(k d_1\) や \(2mg\) が出てきたら、互いに書き換えて式が簡単にならないか常に試します。特に単振動の運動方程式では、定数項が必ずキャンセルされるはずだと予測して計算を進めます。
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 導出した文字式の単位が、求めたい物理量の単位と一致しているか確認します。
- 実践: 例えば \(T\)(力)の式 \(T = \frac{1}{2}kx – mg\) において、\(kx\) は「ばね定数\(\times\)長さ=力」、\(mg\) は「質量\(\times\)加速度=力」となっており、次元が整合していることを確認します。
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問題59 単振り子 (武蔵工大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(ウ)(エ)の別解: ベクトル図(力の三角形)を用いた解法
- 運動方程式を成分ごとに立てて連立する代わりに、力のつりあいを幾何学的な「直角三角形」として捉え、三平方の定理や三角比を用いて直感的に解きます。
- 設問(ア)〜(カ)の別解: 微積分を用いた体系的解法(回転運動の方程式)
- 単振り子の運動を、静止系・加速系を問わず統一的に扱える「接線方向の運動方程式(回転運動の方程式)」から出発し、微小振動近似を経て単振動の微分方程式を導出します。これにより、復元力の式や周期の公式が第一原理からどのように導かれるかを体系的に解説します。
- 設問(キ)(ク)の別解: 慣性系(地上)から見た相対運動による解法
- 模範解答は「電車内の人(非慣性系)」の視点で慣性力を用いて解いていますが、別解では「地上の人(慣性系)」の視点で、小球の水平投射と電車の等加速度運動として解きます。
- 設問(ウ)(エ)の別解: ベクトル図(力の三角形)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- ベクトル図: 計算量が少なく、力の大きさや角度の関係を視覚的に把握できるため、検算やスピードアップに役立ちます。
- 微積分の解法: 公式 \(T=2\pi\sqrt{l/g}\) の暗記に留まらず、なぜ単振動になるのか、なぜ \(g\) が \(g’\) に置き換わるのかという物理的背景を深く理解できます。
- 慣性系の解法: 「慣性力」という見かけの力を使わず、実在する力と運動のみで現象を記述することで、物理現象の客観的な理解を深めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「慣性力がはたらく場での単振り子」です。
電車が加速することで、車内の物体には重力に加えて「慣性力」がはたらき、見かけ上の重力の向きと大きさが変化します。この環境下での静止(つりあい)、振動、そして落下運動を解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振り子の復元力: 重力の接線方向成分が復元力となり、微小角 \(\theta\) においては変位 \(x\) に比例します。
- 慣性力: 加速度 \(\vec{a}\) で運動する観測者から見ると、質量 \(m\) の物体には \(-m\vec{a}\) の力がはたらいているように見えます。
- 見かけの重力: 重力 \(m\vec{g}\) と慣性力 \(-m\vec{a}\) の合力を「見かけの重力」と呼びます。この方向がつりあいの位置(振動の中心)となります。
- 等価原理: 加速系における物理現象は、重力加速度を「見かけの重力加速度 \(\vec{g}’\)」に置き換えることで、静止系と同様に扱えます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア)(イ)では、静止した電車内での基本的な単振り子の式を導きます。
- (ウ)(エ)では、加速中の電車内で小球が静止する角度と張力を、力のつりあいから求めます。
- (オ)(カ)では、見かけの重力加速度を用いて、加速中の単振り子の復元力と周期を求めます。
- (キ)(ク)では、糸が切れた後の小球の運動を、車内の観測者視点(慣性力あり)で解析します。
問(ア)・(イ)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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