問題55 2本のばねによる単振動 (香川大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: グラフの概形を用いた解法
- 模範解答が円運動の正射影を用いるのに対し、別解では \(x-t\) グラフを描き、その形状から関数形を決定します。
- 設問(2)の別解1: 微分の定義を用いた解法
- 速度 \(v\) や加速度 \(\alpha\) を、位置 \(x\) の時間微分として導出します。
- 設問(2)の別解2: 合成ばね定数(並列接続)を用いた解法
- 2つのばねを「並列に接続された1つの合成ばね」とみなして、力を一気に求めます。
- 設問(3)の別解: 三角方程式を用いた代数的解法
- 参考円を用いず、変位の式 \(x(t)\) を直接解いて時間を求めます。
- 設問(4)の別解: 力学的エネルギー保存則を用いた解法
- 最大運動エネルギーと最大弾性エネルギーが等しいことを利用して計算を省略します。
- 設問(5)の後の別解: 微積分を用いた体系的解法(全設問一括解説)
- 運動方程式を立式し、それを微分方程式として解くことで、設問(1)〜(5)の全ての結果を第一原理から一貫して導出します。
- 設問(1)の別解: グラフの概形を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- グラフや微分の視点: 公式の暗記に頼らず、物理量の変化の様子(傾きなど)を直感的に捉える力が身につきます。
- 合成ばね定数: 複雑なばねの組み合わせ問題を単純化する強力なツールとなり、計算ミスを減らせます。
- 微積分を用いた解法: 「なぜ単振動になるのか」「なぜエネルギーが保存するのか」といった物理の根本原理を理解でき、応用問題への対応力が飛躍的に向上します。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「2本のばねに挟まれた物体の単振動」です。一見複雑に見えますが、合成ばね定数の考え方や単振動の基本原理を使えば、シンプルな単振動として扱うことができます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 単振動の変位と速度: 単振動は等速円運動の正射影として理解でき、\(x = A\sin(\omega t + \phi)\) の形で表されます。
- 運動方程式と復元力: 物体にはたらく力は、変位 \(x\) に比例し向きが逆の復元力 \(F = -Kx\) となります。
- 力学的エネルギー保存則: 摩擦がないため、運動エネルギーと弾性エネルギーの和は一定に保たれます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、初期条件(\(t=0\) での位置と速度の向き)から、単振動の式を決定します。
- (2)では、単振動の加速度の公式と、物体にはたらく力のつりあいを考えます。
- (3)では、単振動を等速円運動の正射影(参考円)に対応させ、回転角から時間を求めます。
- (4)(5)では、力学的エネルギー保存則を用いて、エネルギーの最大値や速度と位置の関係式(軌道)を導きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
単振動の変位 \(x\) と速度 \(v\) を時間の関数として表します。
ポイントは「初期位相」の決定です。時刻 \(t=0\) における物体の状態(位置と動く向き)に注目し、\(\sin\) 型か \(\cos\) 型かを判断します。
この設問における重要なポイント
- 初期条件の読み取り: 問題文より、\(t=0\) で「原点 \(O\) (\(x=0\))」を「正の向き」に通過しています。
- 円運動の正射影: 単振動は、角速度 \(\omega\)、半径 \(a\)(振幅)の等速円運動を \(x\) 軸に投影した動きとみなせます。
具体的な解説と立式
振幅は、原点からずらした距離 \(a\) に等しくなります。
時刻 \(t=0\) で \(x=0\) を正の向き(速度 \(v > 0\))に通過するので、変位 \(x\) は原点から始まり増加するサインカーブ(正弦波)となります。
したがって、変位 \(x\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に速度 \(v\) を考えます。
等速円運動の速度の大きさは \(a\omega\) です。
単振動の速度は、円運動の速度ベクトルの \(x\) 成分(正射影)です。
\(t=0\) で速度は最大値 \(a\omega\) をとり、その後減少していくため、コサインカーブ(余弦波)となります。
あるいは、変位の位相 \(\omega t\) よりも位相が \(\frac{\pi}{2}\) 進んでいると考えてもよいでしょう。
$$
\begin{aligned}
v &= a \omega \cos \omega t \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動の変位: \(x = A \sin(\omega t + \phi)\)
- 単振動の速度: \(v = A \omega \cos(\omega t + \phi)\)
式①、②は立式の時点で既に答えの形になっています。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t \\[2.0ex]
v &= a \omega \cos \omega t
\end{aligned}
$$
物体は原点からスタートして、右(プラス方向)へ動き出しました。
このような動き出しの場合、位置のグラフは原点を通る波(サインカーブ)になります。
速度は、原点で一番速く、端っこに行くと一瞬止まるので、原点で最大値をとる波(コサインカーブ)になります。
円運動を横から見た動きと同じなので、円運動の半径 \(a\) と回転の速さ \(\omega\) を使って式を作りました。
\(t=0\) を代入すると \(x=0, v=a\omega\) となり、問題文の「原点を正の向きに通過」という条件と一致します。
また、\(x\) の最大値は \(a\) であり、振幅が \(a\) であることとも整合します。
思考の道筋とポイント
数式から入るのではなく、まず横軸を時間 \(t\)、縦軸を位置 \(x\) としたグラフ(\(x-t\) 図)を描き、その形から関数を決定します。
この設問における重要なポイント
- グラフの形状: \(t=0\) で \(x=0\) かつ傾きが正なら \(+\sin\) 型、\(x=A\) なら \(+\cos\) 型です。
- 速度と傾き: \(x-t\) グラフの接線の傾きが速度 \(v\) を表します。
具体的な解説と立式
\(t=0\) で \(x=0\) であり、その後 \(x\) は正の方向に増加します。
この挙動を示すグラフは、原点を通る正弦曲線(サインカーブ)です。
振幅は \(a\) なので、以下の形になります。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t
\end{aligned}
$$
次に速度 \(v\) について考えます。
\(x-t\) グラフの傾きが速度に対応します。
\(t=0\) で傾きは最大(正の値)となり、\(x=a\) の頂点で傾きは \(0\) になります。
このような変化をするグラフは余弦曲線(コサインカーブ)です。
最大値は円運動の速度 \(a\omega\) に対応するので、以下の形になります。
$$
\begin{aligned}
v &= a \omega \cos \omega t
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 正弦波・余弦波のグラフ特性
立式により直ちに求まります。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t \\[2.0ex]
v &= a \omega \cos \omega t
\end{aligned}
$$
物体の動きをグラフに描いてみました。
スタート地点がゼロで、そこから上がっていくグラフは「サイン」の形です。
速度はグラフの坂道の急さを表します。スタート地点が一番急な上り坂で、頂上で平らになるので、これは「コサイン」の形になります。
メイン解法と同じ結果が得られました。グラフを描くことで、動きのイメージがより明確になります。
問(2)
思考の道筋とポイント
加速度 \(\alpha\) は単振動の公式から求めます。
力 \(F\) は、物体が位置 \(x\) にあるとき、2つのばねがそれぞれどれだけ伸び縮みしているかを考え、それらの弾性力を合成して求めます。
この設問における重要なポイント
- 加速度と変位の関係: 単振動では常に \(\alpha = -\omega^2 x\) が成り立ちます。
- ばねの変形量: 物体が右に \(x\) ずれると、左のばねは \(x\) 伸び、右のばねは \(x\) 縮みます。
- 力の向き: どちらのばねも、物体を元の位置(左向き)に戻そうとする力を及ぼします。
具体的な解説と立式
まず、加速度 \(\alpha\) について立式します。
単振動の加速度は、変位 \(x\) に比例し、向きが逆になります。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= -\omega^2 x \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
次に、物体にはたらく力 \(F\) を考えます。
物体が原点から右へ \(x\) の位置にあるとき(\(x>0\) と仮定):
1. 左側のばねAは、自然長から \(x\) だけ伸びています。
したがって、物体を左向き(負の向き)に引く力 \(F_A\) がはたらきます。
$$
\begin{aligned}
F_A &= -kx
\end{aligned}
$$
2. 右側のばねBは、自然長から \(x\) だけ縮んでいます。
したがって、物体を左向き(負の向き)に押す力 \(F_B\) がはたらきます。
$$
\begin{aligned}
F_B &= -kx
\end{aligned}
$$
物体にはたらく合力 \(F\) は、これらの和となります。
$$
\begin{aligned}
F &= F_A + F_B
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動の加速度: \(\alpha = -\omega^2 x\)
- フックの法則: \(F = -kx\)
加速度は式③そのものです。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= -\omega^2 x
\end{aligned}
$$
力 \(F\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= (-kx) + (-kx) \\[2.0ex]
&= -2kx
\end{aligned}
$$
加速度は、「中心から離れるほど、中心に引き戻される勢いが強くなる」という単振動の性質を表す式 \(\alpha = -\omega^2 x\) そのままです。
力については、物体が右に動くと、左のばねは「伸びて引き戻そう」とし、右のばねは「縮んで押し戻そう」とします。
どちらも「左に戻れ!」という力をかけるので、2つのばねの力が協力して2倍の強さで物体を押し返します。
力 \(F = -2kx\) は、変位 \(x\) に比例し符号が逆の復元力となっています。
見かけのばね定数(復元力定数)が \(K=2k\) になっていることがわかります。
加速度 \(\alpha\) も単振動の定義通りです。
思考の道筋とポイント
物理量の定義に従い、位置 \(x\) を時間 \(t\) で微分して速度 \(v\) を、さらに速度 \(v\) を時間 \(t\) で微分して加速度 \(\alpha\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 微分の物理的意味: 位置の微分は速度、速度の微分は加速度です。
- 合成関数の微分: \(\sin \omega t\) の微分で \(\omega\) が前に出ることに注意します。
具体的な解説と立式
(1)で求めた位置 \(x\) の式を用います。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t
\end{aligned}
$$
加速度 \(\alpha\) は、\(x\) を時間 \(t\) で2回微分することで得られます。
まず速度 \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
次に加速度 \(\alpha\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= \frac{dv}{dt}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 速度の定義: \(v = \frac{dx}{dt}\)
- 加速度の定義: \(\alpha = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2}\)
- 三角関数の微分: \((\sin ax)’ = a \cos ax, \quad (\cos ax)’ = -a \sin ax\)
まず \(x\) を微分して \(v\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{d}{dt}(a \sin \omega t) \\[2.0ex]
&= a \omega \cos \omega t
\end{aligned}
$$
次に \(v\) を微分して \(\alpha\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= \frac{d}{dt}(a \omega \cos \omega t) \\[2.0ex]
&= a \omega \cdot (-\omega \sin \omega t) \\[2.0ex]
&= -a \omega^2 \sin \omega t
\end{aligned}
$$
ここで、\(x = a \sin \omega t\) の関係を用いて式を変形します。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= -\omega^2 (a \sin \omega t) \\[2.0ex]
&= -\omega^2 x
\end{aligned}
$$
位置の式を時間の変化率(微分)で見ると速度になり、速度の変化率を見ると加速度になります。
計算してみると、加速度の式の中に元の位置の式 \(x\) が隠れていることがわかります。これを置き換えることで、加速度と位置のシンプルな関係式が出てきます。
メイン解法と同じ結果 \(\alpha = -\omega^2 x\) が導かれました。公式を忘れても微分ができれば導出可能です。
思考の道筋とポイント
2つのばねが物体に対してどのように作用しているかを回路的に見ます。
物体を挟んで両側に壁がある配置は、力学的には「並列接続」と等価です。
この設問における重要なポイント
- ばねの並列接続: 物体を少し動かしたとき、両方のばねから復元力を受ける場合、それらは並列とみなせます。
- 合成ばね定数: 並列の場合、合成ばね定数 \(K\) は各ばね定数の和になります。
具体的な解説と立式
物体Pが変位 \(x\) だけ動いたとき、ばねAもばねBも共に \(x\) だけ変形し、共に復元力を発生させます。
このように変位が共通で力が加算される場合、2つのばねは「並列」に接続されているとみなせます。
合成ばね定数を \(K\) とすると、並列接続の公式より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
K &= k + k
\end{aligned}
$$
この合成ばねによる復元力 \(F\) は、フックの法則を用いて表されます。
$$
\begin{aligned}
F &= -Kx
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ばねの並列合成: \(K = k_1 + k_2\)
- フックの法則: \(F = -Kx\)
合成ばね定数を計算します。
$$
\begin{aligned}
K &= 2k
\end{aligned}
$$
これを力の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= -2kx
\end{aligned}
$$
このシステムは、強さ \(k\) のばねが2本束になって物体を支えているのと同じことです。
だから、ばねの強さは単純に足し算で2倍になります。
2倍の強さのばねが \(x\) だけ伸び縮みしたときの力なので、\(-2kx\) とすぐにわかります。
個別に力を計算して足し合わせたメイン解法と同じ結果になりました。系全体を俯瞰する視点として非常に有効です。
問(3)
思考の道筋とポイント
単振動の時間変化を追うには、対応する「等速円運動」の回転角を考えるのが定石です。
「\(x=a\) から原点まで」と「\(x=a\) から \(x=a/2\) まで」の2つの区間について、回転角を求め、それを周期 \(T\) と関連付けます。
この設問における重要なポイント
- 参考円の利用: 単振動の1周期 \(T\) は、円運動の1周(\(360^\circ\) または \(2\pi\))に対応します。
- 位相の特定:
- \(x=a\)(右端)は、円運動の位相 \(\frac{\pi}{2}\)(または \(90^\circ\))に対応します。
- \(x=0\)(原点、戻り)は、位相 \(\pi\)(または \(180^\circ\))に対応します。
- \(x=\frac{1}{2}a\)(戻り)は、位相 \(\frac{5\pi}{6}\)(または \(150^\circ\))に対応します。
- 周期の導出: 復元力 \(F=-2kx\) より、運動方程式 \(ma = -2kx\) となるため、角速度 \(\omega’ = \sqrt{\frac{2k}{m}}\) となります。
具体的な解説と立式
まず、この単振動の周期 \(T\) を求めます。
復元力定数が \(K=2k\) なので、角速度 \(\omega\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \sqrt{\frac{2k}{m}}
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
次に、各区間の時間を回転角の割合から立式します。
1. 時間 \(t_0\): \(x=a\) から初めて原点 \(O\) を通過するまで。
参考円上では、最上点(\(90^\circ\))から左端(\(180^\circ\))までの移動です。
回転角は \(90^\circ\) なので、周期の \(\frac{1}{4}\) 倍となります。
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{1}{4} T \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
2. 時間 \(t_1\): \(x=a\) から初めて \(x=\frac{1}{2}a\) を通過するまで。
参考円上では、最上点(\(90^\circ\))から、\(x\) 座標が \(\frac{1}{2}a\) となる第2象限の点までの移動です。
\(x = a \cos \theta\)(円運動の角度を \(x\) 軸正方向から測った場合)または図形的に考えると、\(x=\frac{1}{2}a\) となる角度は \(60^\circ\)(\(x\) 軸から)または \(150^\circ\)(始線から)です。
右端(\(90^\circ\))から \(x=a/2\)(\(150^\circ\))までの回転角は \(60^\circ\) です。
したがって、周期の \(\frac{60}{360} = \frac{1}{6}\) 倍となります。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{1}{6} T \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動の周期: \(T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}}\)
- 円運動と時間の関係: \(t = \frac{\theta}{2\pi} T\)
まず周期 \(T\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= 2\pi \sqrt{\frac{m}{2k}} \\[2.0ex]
&= \pi \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$
これを式⑤に代入して \(t_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{1}{4} \cdot \pi \sqrt{\frac{2m}{k}} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi}{4} \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$
次に式⑥に代入して \(t_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{1}{6} \cdot \pi \sqrt{\frac{2m}{k}} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi}{6} \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$
単振動の往復運動は、円運動がぐるっと1周する時間(周期)と同じリズムです。
「端っこから真ん中まで」戻る動きは、円運動でいうとちょうど \(1/4\) 周分なので、時間は周期の \(1/4\) です。
「端っこから半分戻るまで」の動きは、円運動の角度でいうと \(60^\circ\) 分(ピザの \(1/6\) カット分)に相当します。だから時間は周期の \(1/6\) です。
ばねが2本あるので、周期の計算でばね定数を \(2k\) にすることを忘れないようにしましょう。
\(t_0\) は \(1/4\) 周期、\(t_1\) は \(1/6\) 周期という結果は、単振動の対称性や三角関数の値(\(\sin 30^\circ = 1/2\))から妥当です。
\(t_1 < t_0\) となっており、途中までの時間の方が短いことも整合しています。
思考の道筋とポイント
図形的な参考円を使わず、変位の時間関数 \(x(t)\) を直接解いて時間を求めます。
ただし、時間の基準点(\(t=0\))を「\(x=a\) に達した瞬間」に再設定すると計算が楽になります。
この設問における重要なポイント
- 初期位相の再設定: \(x=a\) からスタートするコサイン型 \(x = a \cos \omega t\) として考えます。
- 逆三角関数の計算: \(\cos \omega t = \text{値}\) を満たす最小の正の \(t\) を探します。
具体的な解説と立式
\(x=a\) の瞬間を新たな時刻 \(t’=0\) とします。
このとき、運動は端からのスタートとなるため、変位は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
x(t’) &= a \cos \omega t’
\end{aligned}
$$
1. \(t_0\) について: 原点 \(x=0\) を通過する時刻です。
$$
\begin{aligned}
0 &= a \cos \omega t_0
\end{aligned}
$$
2. \(t_1\) について: \(x=\frac{1}{2}a\) を通過する時刻です。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}a &= a \cos \omega t_1
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動の変位(端点スタート): \(x = A \cos \omega t\)
\(t_0\) の式を解きます。
$$
\begin{aligned}
\cos \omega t_0 &= 0
\end{aligned}
$$
最小の正の解は \(\omega t_0 = \frac{\pi}{2}\) です。
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{\pi}{2\omega}
\end{aligned}
$$
\(t_1\) の式を解きます。
$$
\begin{aligned}
\cos \omega t_1 &= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
最小の正の解は \(\omega t_1 = \frac{\pi}{3}\) です。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{\pi}{3\omega}
\end{aligned}
$$
ここで \(\omega = \sqrt{\frac{2k}{m}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
t_0 &= \frac{\pi}{2} \sqrt{\frac{m}{2k}} = \frac{\pi}{2\sqrt{2}} \sqrt{\frac{m}{k}} = \frac{\pi}{4} \sqrt{\frac{2m}{k}} \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{\pi}{3} \sqrt{\frac{m}{2k}} = \frac{\pi}{3\sqrt{2}} \sqrt{\frac{m}{k}} = \frac{\pi}{6} \sqrt{\frac{2m}{k}}
\end{aligned}
$$
スタート地点を「右端」に変えて、コサインの式を使って計算しました。
「コサインがゼロになるのはいつ?」「コサインが半分になるのはいつ?」という数学の問題を解くだけで、同じ答えが出てきます。
メイン解法と完全に一致しました。図を描くのが苦手な場合は、この代数的な方法が確実です。
問(4)
思考の道筋とポイント
運動エネルギー \(K\) は速度 \(v\) が最大のときに最大となり、弾性エネルギー \(U\) は変位 \(x\) が最大のときに最大となります。
それぞれの最大値を数式から直接計算します。
この設問における重要なポイント
- 最大値の条件:
- 速度最大: 振動の中心(\(x=0\))で \(v_{\text{最大}} = a\omega\)。
- 変位最大: 振動の端(\(x=\pm a\))で \(|x|_{\text{最大}} = a\)。
- 弾性エネルギーの定義: 2本のばねがあるので、それぞれのエネルギーの和を考えるか、合成ばね定数 \(2k\) を用います。
具体的な解説と立式
まず、運動エネルギー \(K\) の最大値を考えます。
速度の最大値 \(v_{\text{最大}}\) は、(1)の結果より \(a\omega\) です。
そのときの位置は、振動の中心である原点 \(O\) (\(x=0\)) です。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} m (v_{\text{最大}})^2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
次に、弾性エネルギー \(U\) の最大値を考えます。
変位の大きさの最大値は振幅 \(a\) です。
そのときの位置は \(x = \pm a\) です。
このとき、2つのばねの弾性エネルギーの和、あるいは合成ばね(定数 \(2k\))のエネルギーとして計算します。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} (2k) a^2 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動エネルギー: \(K = \frac{1}{2}mv^2\)
- 弾性エネルギー: \(U = \frac{1}{2}kx^2\)
式⑦に \(v_{\text{最大}} = a\omega\) と \(\omega = \sqrt{\frac{2k}{m}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} m (a \sqrt{\frac{2k}{m}})^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} m a^2 \frac{2k}{m} \\[2.0ex]
&= ka^2
\end{aligned}
$$
式⑧を計算します。
$$
\begin{aligned}
U_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} \cdot 2k \cdot a^2 \\[2.0ex]
&= ka^2
\end{aligned}
$$
一番速く動いているのは真ん中を通るときです。その時のスピードを使って運動エネルギーを計算しました。
一番ばねが縮んだり伸びたりしているのは端っこにいるときです。その時のばねのエネルギーを計算しました。
計算してみると、運動エネルギーの最大値とばねのエネルギーの最大値はぴったり同じ値になりました。これはエネルギーが交互に入れ替わっていることを示しています。
\(K_{\text{最大}} = U_{\text{最大}} = ka^2\) となり、力学的エネルギー保存則と整合します。
位置についても、速度最大は中心、変位最大は端点と、物理的に正しい結果です。
思考の道筋とポイント
単振動では、力学的エネルギーが保存されます。
「全エネルギー」は、「最大の運動エネルギー」と等しく、かつ「最大の弾性エネルギー」とも等しいという性質を利用します。
この設問における重要なポイント
- エネルギーの変換: 端点では運動エネルギーが0で全て弾性エネルギー、中心では弾性エネルギーが0(基準)で全て運動エネルギーになります。
- 保存則: \(K_{\text{最大}} = U_{\text{最大}} = E_{\text{全}}\)。
具体的な解説と立式
力学的エネルギー保存則より、運動エネルギーの最大値 \(K_{\text{最大}}\) と弾性エネルギーの最大値 \(U_{\text{最大}}\) は等しくなります。
最も計算しやすいのは、端点 \(x=a\) における弾性エネルギーです。
合成ばね定数が \(2k\) であることを利用して立式します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= \frac{1}{2} (2k) a^2
\end{aligned}
$$
保存則より、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
K_{\text{最大}} &= E_{\text{全}} \\[2.0ex]
U_{\text{最大}} &= E_{\text{全}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則: \(K + U = \text{一定}\)
- 合成ばねの弾性エネルギー: \(U = \frac{1}{2}Kx^2\)
全エネルギーを計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{全}} &= ka^2
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
K_{\text{最大}} &= ka^2 \\[2.0ex]
U_{\text{最大}} &= ka^2
\end{aligned}
$$
エネルギーは消えたり増えたりせず、形を変えるだけです。
一番端っこにあるときの「ばねのエネルギー」を計算すれば、それがそのまま、真ん中を通るときの「運動エネルギー」の最大値になります。
わざわざ速度を計算しなくても、ばねの縮み具合だけで答えが出せます。
メイン解法と同じ結果が、より少ない計算量で得られました。
問(5)
思考の道筋とポイント
速度 \(v\) と位置 \(x\) の関係式を求め、それをグラフにします。
力学的エネルギー保存則の式を変形して、\(x\) と \(v\) の方程式を導くのが王道です。
この設問における重要なポイント
- 楕円の方程式: \(\frac{x^2}{A^2} + \frac{y^2}{B^2} = 1\) の形を目指します。
- 軌道の向き: 時間経過とともに \(x\) と \(v\) がどう変化するか(位相空間上の動き)を考えます。
具体的な解説と立式
任意の時刻における力学的エネルギー保存則を立式します。
運動エネルギーと弾性エネルギー(合成ばね定数 \(2k\))の和は、全エネルギー \(ka^2\) に等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 + \frac{1}{2} (2k) x^2 &= ka^2 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
この式を整理して、楕円の標準形に変形します。
使用した物理公式
- 力学的エネルギー保存則
- 楕円の方程式: \(\frac{x^2}{A^2} + \frac{y^2}{B^2} = 1\)
式⑨の両辺を \(ka^2\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{mv^2}{2ka^2} + \frac{kx^2}{ka^2} &= 1 \\[2.0ex]
\frac{m}{2k} \frac{v^2}{a^2} + \frac{x^2}{a^2} &= 1
\end{aligned}
$$
第1項を整理して、分母にまとめます。
$$
\begin{aligned}
\frac{v^2}{\frac{2k}{m} a^2} + \frac{x^2}{a^2} &= 1
\end{aligned}
$$
分母を平方の形にします。
$$
\begin{aligned}
\frac{x^2}{a^2} + \frac{v^2}{\left( \sqrt{\frac{2k}{m}} a \right)^2} &= 1
\end{aligned}
$$
これは、横軸切片が \(\pm a\)、縦軸切片が \(\pm \sqrt{\frac{2k}{m}} a\) の楕円を表します。
軌道の向きについて:
\(v > 0\)(上半分)のとき、速度は正なので位置 \(x\) は増加します(右へ動く)。
\(v < 0\)(下半分)のとき、速度は負なので位置 \(x\) は減少します(左へ動く)。
したがって、楕円上を「時計回り」に回る向きとなります。
エネルギー保存の式をグラフの式に変形すると、楕円の形になりました。
横幅は振幅 \(a\)、縦幅は最大速度を表しています。
グラフ上の矢印は、物体がどう動くかを表します。上のエリア(速度プラス)では右へ進み、下のエリア(速度マイナス)では左へ戻るので、ぐるっと時計回りに回ることになります。
式は楕円の方程式となっており、交点も(4)で求めた最大値と一致します。
物理的にも、位相空間上の単振動の軌道は楕円(適切なスケール変換で円)になることが知られています。
思考の道筋とポイント
運動方程式という物理の第一原理から出発し、それを微分方程式として解くことで、位置、速度、エネルギーなど全ての物理量を数学的に導出します。
この方法は、公式を忘れてもゼロから答えを作り出せる最強のアプローチです。
この設問における重要なポイント
- 運動方程式の立式: \(ma = F\) に復元力 \(F=-2kx\) を代入します。
- 単振動の微分方程式: \(\frac{d^2x}{dt^2} = -\omega^2 x\) の形になれば、解は単振動です。
- 初期条件の適用: 積分定数を決定するために \(t=0\) の条件を使います。
具体的な解説と立式
物体にはたらく力は、(2)で考察した通り \(F = -2kx\) です。
運動方程式 \(ma = F\) を立式します。加速度 \(a\) を \(\frac{d^2x}{dt^2}\) と書きます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2x}{dt^2} &= -2kx
\end{aligned}
$$
この式を変形して、標準的な単振動の微分方程式の形にします。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= -\frac{2k}{m} x \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
ここで、\(\omega^2 = \frac{2k}{m}\) (\(\omega > 0\))とおきます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= -\omega^2 x
\end{aligned}
$$
この微分方程式の一般解は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= A \sin \omega t + B \cos \omega t \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
速度 \(v(t)\) はこれを時間微分して求めます。
$$
\begin{aligned}
v(t) &= \frac{dx}{dt} \\[2.0ex]
&= A\omega \cos \omega t – B\omega \sin \omega t \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(m \frac{d^2x}{dt^2} = F\)
- 微分方程式の解法: \(\ddot{x} = -\omega^2 x \Rightarrow x = A \sin \omega t + B \cos \omega t\)
1. 定数の決定 (問1相当)
初期条件 \(t=0\) で \(x=0\)、\(v > 0\) を適用します。
式⑪に \(t=0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
0 &= A \cdot 0 + B \cdot 1 \\[2.0ex]
B &= 0
\end{aligned}
$$
式⑫に \(t=0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v(0) &= A\omega \cdot 1 – 0 \\[2.0ex]
&= A\omega
\end{aligned}
$$
ここで、振幅が \(a\) であることから、最大変位(\(A\))は \(a\) となります。
よって \(A=a\) です。
これらを式⑪、⑫に戻すと、問(1)の答えが得られます。
$$
\begin{aligned}
x &= a \sin \omega t \\[2.0ex]
v &= a \omega \cos \omega t
\end{aligned}
$$
ただし、\(\omega = \sqrt{\frac{2k}{m}}\) です。
2. 加速度と力の導出 (問2相当)
式⑩より、加速度 \(\alpha = \frac{d^2x}{dt^2}\) は直ちに求まります。
$$
\begin{aligned}
\alpha &= -\frac{2k}{m} x = -\omega^2 x
\end{aligned}
$$
力 \(F\) は運動方程式の右辺そのものです。
$$
\begin{aligned}
F &= -2kx
\end{aligned}
$$
3. エネルギー保存則の導出 (問4, 5相当)
運動方程式(式⑩)の両辺に速度 \(v = \frac{dx}{dt}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{d^2x}{dt^2} \cdot \frac{dx}{dt} &= -2kx \cdot \frac{dx}{dt}
\end{aligned}
$$
これを時間 \(t\) で積分します。
左辺は \(\frac{d}{dt}(\frac{1}{2}mv^2)\)、右辺は \(\frac{d}{dt}(-\frac{1}{2} \cdot 2k x^2)\) と変形できます。
$$
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m v^2 \right) &= \frac{d}{dt} \left( -k x^2 \right) \\[2.0ex]
\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m v^2 + k x^2 \right) &= 0
\end{aligned}
$$
したがって、括弧の中身は一定値(保存量)となります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 + k x^2 &= \text{一定}
\end{aligned}
$$
これが力学的エネルギー保存則であり、問(5)の楕円の式の元となります。
「力=質量×加速度」というニュートンの法則だけからスタートしました。
この式を数学のルール(微積分)に従って解いていくと、自然と「サイン・コサインの動き」や「エネルギー保存の法則」が導き出されます。
物理の公式はバラバラに存在するのではなく、すべてこの一つの式から生まれてくる兄弟のようなものだとわかります。
全ての設問の答えが、運動方程式という一つの種から論理的に導かれました。これが物理学の体系的な美しさであり、強力な武器となります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 単振動の運動方程式と復元力
- 核心: 物体にはたらく合力が変位 \(x\) に比例し、向きが逆向きの力(復元力 \(F=-Kx\))になるとき、物体は単振動を行います。
- 理解のポイント:
- 合成ばね定数: 複数のばねがある場合、それらを1つの「合成ばね」として扱うことで、問題を単純化できます。今回は並列接続なので \(K = k+k=2k\) となります。
- 運動方程式: \(ma = -Kx\) という形を作ることが、単振動解析のスタート地点です。ここから角速度 \(\omega = \sqrt{K/m}\) や周期 \(T\) が自動的に決まります。
- 単振動と等速円運動の対応(正射影)
- 核心: 単振動の時間変化は、等速円運動を横から見た動き(正射影)と数学的に完全に一致します。
- 理解のポイント:
- 参考円: 時間 \(t\) を求めるときは、円運動の図(参考円)を描き、回転角 \(\theta\) を求めることで、\(t = \frac{\theta}{2\pi}T\) として計算できます。
- 初期位相: スタート地点が「端」ならコサイン型、「中心」ならサイン型になることを、円上の位置から判断します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ばねの直列接続: ばねが縦につながっている場合、合成ばね定数は逆数の和 \(\frac{1}{K} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2}\) で求めます。
- 浮力による単振動: 水に浮かぶ物体を押し下げて離す問題。浮力の変化分 \(-\rho S g x\) が復元力となり、\(K = \rho S g\) の単振動として扱えます。
- 振り子の微小振動: 復元力が \(-mg \sin \theta \approx -mg \frac{x}{l}\) と近似できる場合、\(K = \frac{mg}{l}\) の単振動となります。
- 初見の問題での着眼点:
- つりあいの位置を探す: 振動の中心(\(x=0\))は、力がつりあっている場所です。まずここを見つけます。
- 変位 \(x\) での力を書く: つりあいの位置から \(x\) ずらした状態で、物体にはたらく合力 \(F\) を計算します。
- \(F = -Kx\) の形を作る: 計算した合力を整理し、\(x\) の係数 \(K\)(復元力定数)を特定します。これができれば勝ったも同然です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ばねの力の向きと符号のミス:
- 誤解: 「右のばねは縮んでいるからプラス?」などと混乱し、符号を間違える。
- 対策: 常に「復元力」として考えます。右にずれたら左に戻そうとするのでマイナス、左にずれたら右に戻そうとするのでプラス。あるいは、座標軸の正負と力の向きを矢印で書いて確認します。
- 周期の公式の \(k\) の取り違え:
- 誤解: 公式 \(T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{k}}\) の \(k\) に、問題文の個別のばね定数 \(k\) をそのまま代入してしまう。
- 対策: 公式の \(k\) は「復元力定数 \(K\)」のことです。必ず運動方程式 \(ma = -Kx\) を立てて \(K\)(今回は \(2k\))を確認してから代入する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(3)での解法選択(参考円 vs 三角方程式):
- 選定理由: 模範解答やメイン解説では「参考円」を採用しました。これは視覚的に理解しやすく、計算ミス(特に位相の取り違え)を防ぎやすいためです。
- 適用根拠: 単振動が円運動の正射影であるという定義に基づいています。特に「初めて通過する」といった順序関係が図から一目瞭然です。
- 問(5)での解法選択(エネルギー保存則):
- 選定理由: \(x\) と \(v\) の関係式を求める際、時間 \(t\) を消去する必要があります。エネルギー保存則は元々 \(t\) を含んでいないため、最短ルートで関係式にたどり着けます。
- 適用根拠: 摩擦や空気抵抗などの非保存力が仕事をしていないため、力学的エネルギーが保存される系であることから適用できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元解析(単位チェック):
- 意識: 答えの式の単位が合っているか常に確認する。
- 実践: 例えば周期 \(T\) のルートの中身は \(\frac{m}{k}\) ですが、これは \(\frac{[\text{M}]}{[\text{M}][\text{T}]^{-2}} = [\text{T}]^2\) となり、ルートをとると時間の次元になります。もし \(\frac{k}{m}\) になっていたら逆だと気づけます。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 「もし質量がすごく大きかったら?」「ばねがすごく硬かったら?」と想像する。
- 実践: \(m \to \infty\) なら動きは遅くなるはず \(\to\) 周期 \(T\) は大きくなるはず(分子に \(m\) があるのでOK)。\(k \to \infty\) ならビヨンビヨンと速く動くはず \(\to\) 周期 \(T\) は小さくなるはず(分母に \(k\) があるのでOK)。
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問題56 あらい面上で振動する物体の運動 (23 横浜市大 改)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 運動エネルギーと仕事の関係(積分による導出)
- 模範解答は公式として「エネルギー変化=仕事」を用いていますが、別解では運動方程式を位置で積分することで、この関係式を数学的に導出します。
- 設問(7)の別解: エネルギー収支を用いた解法
- 模範解答は「振動の中心の対称性」を利用していますが、別解では「往復による力学的エネルギーの減少量=往復での動摩擦力の仕事」というエネルギー保存則の視点から停止位置を求めます。
- 設問(3)〜(9)の別解: 微積分を用いた体系的解法(一括解説)
- 運動方程式を微分方程式として解き、摩擦力によって振動中心が移動する様子を数式で記述します。これにより、振動の折り返しごとの位置関係(漸化式)やグラフの概形を一貫した論理で導きます。
- 設問(2)の別解: 運動エネルギーと仕事の関係(積分による導出)
- 上記の別解が有益である理由
- エネルギー収支: 振動中心の位置関係が複雑になっても、「摩擦で失われたエネルギー分だけ振幅が減る」という直感的な理解で計算できるため、検算としても有効です。
- 微積分を用いた解法: 「なぜ振動中心がずれるのか」「なぜ振幅が等差数列的に減衰するのか」という現象の本質を、運動方程式という第一原理から理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「一定の非保存力(動摩擦力)がはたらく減衰振動」です。
通常の単振動と異なり、運動の向きが変わるたびに力の向き(振動の中心)が切り替わる点が特徴です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 摩擦力の性質: 静止しているときは力のつりあいに応じた静止摩擦力(最大値は \(\mu N\))、動いているときは運動方向と逆向きに一定の動摩擦力 \(\mu’ N\) がはたらきます。
- 振動中心の移動: 一定の力(重力や摩擦力)が加わると、単振動の中心は「力がつりあう位置」にずれます。
- エネルギー原理: 非保存力(摩擦力)が仕事をするため、力学的エネルギーは保存せず、仕事の分だけ変化します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、静止し続ける限界の条件(力のつりあい)から静止摩擦係数を求めます。
- (2)では、エネルギーの変化と摩擦力の仕事の関係式を立てます。
- (3)〜(6)では、運動方程式を立てて振動中心を特定し、単振動の性質(周期、振幅、最大速度)を解析します。
- (7)〜(9)では、折り返しごとに振動中心が入れ替わる規則性を利用して、停止位置やグラフの概形を導きます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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