「物理重要問題集2026」徹底解説(49〜51問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題49 振り子の運動 (24 富山県大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)〜(5)の別解: 遠心力(慣性力)を用いた力のつりあいによる解法
      • 模範解答は静止系(外から見る視点)での運動方程式を用いていますが、別解では小球と共に運動する観測者の視点(回転座標系)に立ち、遠心力を導入して力のつりあいとして解きます。
    • 設問(1)〜(5)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 極座標形式の運動方程式(接線方向および法線方向)から出発し、積分によってエネルギー保存則を導出し、張力の一般式を得るプロセスを一括して解説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 遠心力の解法: 「力がつりあっている」という静的なイメージで捉えられるため、直感的に理解しやすく、立式ミス(特に力の向き)を防ぎやすい利点があります。
    • 微積分の解法: 半径が途中で変化する複雑な設定であっても、運動方程式という基本原理から全ての物理法則(エネルギー保存則など)が一貫して導かれることを理解でき、応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「途中で半径が変化する振り子の運動」です。
糸が釘にかかることで回転半径が急激に変化する際、速度や張力がどのように振る舞うかを解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 空気抵抗や摩擦がないため、重力による位置エネルギーと運動エネルギーの和は保存されます。
  2. 円運動の運動方程式: 円運動をする物体には、円の中心に向かう力(向心力)が必要です。半径方向の力の合力が向心力 \(m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) となります。
  3. 半径の変化と速度の連続性: 糸が釘にかかる瞬間、回転半径は変化しますが、重力以外の外力が仕事をしないため、小球の速さは瞬間的には変化しません。
  4. 最高点通過条件: 糸がたるまずに円運動を続けるためには、張力 \(T\) が常に \(0\) 以上である必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 力学的エネルギー保存則を用いて、最下点での速さを求めます。
  2. (2)(3) 釘にかかる直前(半径 \(L\))と直後(半径 \(L/2\))でそれぞれ運動方程式を立て、張力の違いを計算します。
  3. (4) 任意の角度 \(\theta\) での速さをエネルギー保存則で求め、運動方程式から張力を導出します。
  4. (5) 最高点(点A)まで到達するための条件(張力 \(T \ge 0\))を考えます。

問(1)

思考の道筋とポイント
小球は点Bから静かに放され、最下点Cまで運動します。
糸の張力は常に運動方向と垂直にはたらくため仕事をしません。したがって、力学的エネルギー保存則が成立します。
位置エネルギーの基準点を最下点C(高さ \(0\))に設定します。

この設問における重要なポイント

  • 高さの定義: 点Bは点Aと同じ高さであり、最下点Cからの高さは糸の長さ \(L\) に等しいです。
  • 初速度: 「静かにはなした」ので初速度は \(0\) です。

具体的な解説と立式
点B(始点)と点C(最下点)について、力学的エネルギー保存則を適用します。
小球の質量を \(m\)、重力加速度を \(g\)、点Cでの速さを \(v_{\text{C}}\) とします。

点Bにおける力学的エネルギー \(E_{\text{B}}\):

  • 運動エネルギー: \(0\)
  • 位置エネルギー: \(mgL\)

$$
\begin{aligned}
E_{\text{B}} &= 0 + mgL
\end{aligned}
$$

点Cにおける力学的エネルギー \(E_{\text{C}}\):

  • 運動エネルギー: \(\displaystyle\frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2\)
  • 位置エネルギー: \(0\)

$$
\begin{aligned}
E_{\text{C}} &= \frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2 + 0
\end{aligned}
$$

エネルギー保存則 \(E_{\text{B}} = E_{\text{C}}\) より、以下の式を立てます。
$$
\begin{aligned}
0 + mgL &= \frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2 + 0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(K_1 + U_1 = K_2 + U_2\)
  • 位置エネルギー: \(U = mgh\)
  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

式①を \(v_{\text{C}}\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2 &= mgL
\end{aligned}
$$
両辺に \(\displaystyle\frac{2}{m}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{C}}^2 &= 2gL
\end{aligned}
$$
\(v_{\text{C}} > 0\) より平方根をとります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{C}} &= \sqrt{2gL}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

高いところにある物体が低いところに行くと、その分だけスピードが出ます。
高さ \(L\) 分の位置エネルギーが、すべて運動エネルギー(スピード)に変わったと考えて計算しました。

結論と吟味

答えは \(\sqrt{2gL}\) です。
これは自由落下で距離 \(L\) 落ちたときの速さと同じであり、妥当な結果です。

解答 (1) \(\sqrt{2gL}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
糸が釘にかかる「直前」の張力を求めます。
この瞬間、小球は点Aを中心とする半径 \(L\) の円運動をしています。
最下点Cにおける運動方程式を立てます。

この設問における重要なポイント

  • 回転の中心と半径: 直前なので、中心は点A、半径は \(L\) です。
  • 力の向き: 張力 \(T_1\) は上向き(中心向き)、重力 \(mg\) は下向き(中心と逆向き)です。

具体的な解説と立式
点Cにおける鉛直方向(中心向きを正)の運動方程式を立てます。

  • 質量: \(m\)
  • 加速度: \(\displaystyle\frac{v_{\text{C}}^2}{L}\) (中心向き)
  • 力(中心向き): 張力 \(T_1\) \(-\) 重力 \(mg\)

運動方程式 \(ma = F\) より、
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_{\text{C}}^2}{L} &= T_1 – mg \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 円運動の運動方程式: \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = F\)
計算過程

式②に問(1)の結果 \(v_{\text{C}}^2 = 2gL\) を代入して \(T_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{2gL}{L} &= T_1 – mg \\[2.0ex]
2mg &= T_1 – mg
\end{aligned}
$$
\(T_1\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= 2mg + mg \\[2.0ex]
&= 3mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

最下点では、小球は「重力」に加えて「遠心力のような勢い(向心加速度を生むために必要な力)」で外側に引っ張られます。
糸はこれら両方を支える必要があるため、重力 \(mg\) よりも大きな力(ここでは \(3mg\))で引っ張る必要があります。

結論と吟味

答えは \(3mg\) です。
静止していれば \(mg\) ですが、円運動の底では遠心効果により張力が増大します。

解答 (2) \(3mg\)
別解: 遠心力を用いた力のつりあい

思考の道筋とポイント
小球と共に運動する観測者から見ると、小球には重力と張力に加え、下向き(外向き)の遠心力がはたらき、力がつりあっています。

この設問における重要なポイント

  • 力のつりあい: 上向きの張力が、下向きの重力と遠心力を支えています。

具体的な解説と立式
点Cにおける力のつりあいを考えます(図a参照)。

  • 上向き: 張力 \(T_1\)
  • 下向き: 重力 \(mg\) \(+\) 遠心力 \(m \displaystyle\frac{v_{\text{C}}^2}{L}\)

力のつりあいの式:
$$
\begin{aligned}
T_1 &= mg + m \frac{v_{\text{C}}^2}{L}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力: \(F_{\text{遠心}} = m \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
  • 力のつりあい
計算過程

\(v_{\text{C}}^2 = 2gL\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= mg + m \frac{2gL}{L} \\[2.0ex]
&= mg + 2mg \\[2.0ex]
&= 3mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

小球に乗っている人から見ると、自分は止まっています。
しかし、外側(下)に向かって引っ張られる力(遠心力)を感じます。
この遠心力と重力の合計を、糸が引っ張り上げていると考えました。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が得られました。
「上向きの力 = 下向きの力」という直感的な式で解くことができます。

解答 (2) \(3mg\)

問(3)

思考の道筋とポイント
糸が釘にかかった「直後」の張力を求めます。
この瞬間、回転の中心が点Aから点O(釘)に切り替わります。
半径は \(L\) から \(L/2\) に急変しますが、小球の速さ \(v_{\text{C}}\) は瞬間的には変化しません。

この設問における重要なポイント

  • 回転の中心と半径: 直後なので、中心は点O、半径は \(L/2\) です。
  • 速さの連続性: 直前と直後で速さは \(v_{\text{C}}\) のままです。

具体的な解説と立式
点Cにおける鉛直方向(中心向きを正)の運動方程式を立てます。

  • 質量: \(m\)
  • 加速度: \(\displaystyle\frac{v_{\text{C}}^2}{L/2}\) (中心向き)
  • 力(中心向き): 張力 \(T_2\) \(-\) 重力 \(mg\)

運動方程式 \(ma = F\) より、
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_{\text{C}}^2}{L/2} &= T_2 – mg \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 円運動の運動方程式
計算過程

式③の左辺を整理し、\(v_{\text{C}}^2 = 2gL\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
m \frac{2 v_{\text{C}}^2}{L} &= T_2 – mg \\[2.0ex]
\frac{2m}{L} (2gL) &= T_2 – mg \\[2.0ex]
4mg &= T_2 – mg
\end{aligned}
$$
\(T_2\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
T_2 &= 4mg + mg \\[2.0ex]
&= 5mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

釘に糸が引っかかると、回転半径が半分になります。
同じスピードでも、カーブがきつくなる(半径が小さくなる)と、曲がるために必要な力(向心力)は急激に大きくなります。
そのため、糸の張力は \(3mg\) から \(5mg\) へと一気に跳ね上がります。

結論と吟味

答えは \(5mg\) です。
半径が半分になると向心項(\(mv^2/r\))は2倍になります。\(2mg \to 4mg\) と増え、重力 \(mg\) と合わせて \(5mg\) となるのは妥当です。

解答 (3) \(5mg\)
別解: 遠心力を用いた力のつりあい

思考の道筋とポイント
半径が \(L/2\) になったことによる遠心力の変化を考慮して、力のつりあいを立てます。

この設問における重要なポイント

  • 遠心力の変化: 半径が小さくなると、同じ速度でも遠心力は大きくなります。

具体的な解説と立式
点Cにおける力のつりあいを考えます(図b参照)。

  • 上向き: 張力 \(T_2\)
  • 下向き: 重力 \(mg\) \(+\) 遠心力 \(m \displaystyle\frac{v_{\text{C}}^2}{L/2}\)

力のつりあいの式:
$$
\begin{aligned}
T_2 &= mg + m \frac{v_{\text{C}}^2}{L/2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力
  • 力のつりあい
計算過程

\(v_{\text{C}}^2 = 2gL\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_2 &= mg + \frac{2m}{L} (2gL) \\[2.0ex]
&= mg + 4mg \\[2.0ex]
&= 5mg
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

半径が半分になったので、遠心力(外に飛び出そうとする力)が2倍になりました。
その分だけ、糸が強く引っ張る必要があります。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が得られました。
遠心力が半径に反比例して大きくなることが式から直接読み取れます。

解答 (3) \(5mg\)

問(4)

思考の道筋とポイント
釘を中心とした円運動の途中の点D(角度 \(\theta\))での張力を求めます。
まず力学的エネルギー保存則で点Dでの速さ \(v_{\text{D}}\) を求め、次に運動方程式で張力 \(T_3\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 点Dの高さ: 最下点Cを基準(高さ \(0\))とすると、点Dの高さは \(h_{\text{D}} = \frac{L}{2}(1 – \cos\theta)\) です(図c参照)。
  • 力の分解: 重力 \(mg\) を半径方向(\(mg \cos\theta\))と接線方向に分解します。

具体的な解説と立式
ステップ1: 速さ \(v_{\text{D}}\) の導出
点Cと点Dについて、力学的エネルギー保存則を適用します。

点Cにおけるエネルギー:
$$
\begin{aligned}
E_{\text{C}} &= \frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2 + 0
\end{aligned}
$$
点Dにおけるエネルギー:
$$
\begin{aligned}
E_{\text{D}} &= \frac{1}{2} m v_{\text{D}}^2 + mg \cdot \frac{L}{2}(1 – \cos\theta)
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則 \(E_{\text{C}} = E_{\text{D}}\) より、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v_{\text{C}}^2 &= \frac{1}{2} m v_{\text{D}}^2 + \frac{1}{2} mgL(1 – \cos\theta) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

ステップ2: 張力 \(T_3\) の導出
点Dにおける半径方向(中心向き正)の運動方程式を立てます。

  • 力(中心向き): 張力 \(T_3\) \(-\) 重力の半径方向成分 \(mg \cos\theta\)

運動方程式:
$$
\begin{aligned}
m \frac{v_{\text{D}}^2}{L/2} &= T_3 – mg \cos\theta \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
  • 円運動の運動方程式
計算過程

まず式④から \(v_{\text{D}}^2\) を求めます。\(v_{\text{C}}^2 = 2gL\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m (2gL) &= \frac{1}{2} m v_{\text{D}}^2 + \frac{1}{2} mgL(1 – \cos\theta)
\end{aligned}
$$
両辺に \(\displaystyle\frac{2}{m}\) を掛けます。
$$
\begin{aligned}
2gL &= v_{\text{D}}^2 + gL(1 – \cos\theta) \\[2.0ex]
v_{\text{D}}^2 &= 2gL – gL + gL \cos\theta \\[2.0ex]
&= gL(1 + \cos\theta)
\end{aligned}
$$
次に、これを式⑤に代入して \(T_3\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
m \frac{gL(1 + \cos\theta)}{L/2} &= T_3 – mg \cos\theta \\[2.0ex]
\frac{2m}{L} \cdot gL(1 + \cos\theta) &= T_3 – mg \cos\theta \\[2.0ex]
2mg(1 + \cos\theta) &= T_3 – mg \cos\theta \\[2.0ex]
2mg + 2mg \cos\theta &= T_3 – mg \cos\theta
\end{aligned}
$$
\(T_3\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
T_3 &= 2mg + 2mg \cos\theta + mg \cos\theta \\[2.0ex]
&= 2mg + 3mg \cos\theta \\[2.0ex]
&= mg(2 + 3 \cos\theta)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

角度 \(\theta\) の場所まで上がると、スピードが落ちるため遠心力は減ります。また、重力が糸を引っ張る成分も変化します。
これらを計算して合わせると、張力は角度 \(\theta\) に依存する式になります。

結論と吟味

答えは \(mg(2 + 3 \cos\theta)\) です。
\(\theta=0\)(最下点)を代入すると \(mg(2+3) = 5mg\) となり、問(3)の結果と一致します。これは計算が正しいことの強力な証拠です。

解答 (4) \(mg(2 + 3 \cos\theta)\)
別解: 遠心力を用いた力のつりあい

思考の道筋とポイント
点Dにおいて、半径方向の力のつりあいを考えます。

この設問における重要なポイント

  • 力のつりあい: 張力が、重力の半径方向成分と遠心力を支えています。

具体的な解説と立式
点Dにおける力のつりあい(図c参照):

  • 中心向き: 張力 \(T_3\)
  • 外向き: 重力の分力 \(mg \cos\theta\) \(+\) 遠心力 \(m \displaystyle\frac{v_{\text{D}}^2}{L/2}\)

力のつりあいの式:
$$
\begin{aligned}
T_3 &= mg \cos\theta + m \frac{v_{\text{D}}^2}{L/2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力
  • 力のつりあい
計算過程

\(v_{\text{D}}^2 = gL(1 + \cos\theta)\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
T_3 &= mg \cos\theta + \frac{2m}{L} \cdot gL(1 + \cos\theta) \\[2.0ex]
&= mg \cos\theta + 2mg(1 + \cos\theta) \\[2.0ex]
&= mg \cos\theta + 2mg + 2mg \cos\theta \\[2.0ex]
&= mg(2 + 3 \cos\theta)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

斜めの位置にいるので、重力の一部だけが外向きに働きます。
これと、スピードによる遠心力の合計を、糸が支えています。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が得られました。

解答 (4) \(mg(2 + 3 \cos\theta)\)

問(5)

思考の道筋とポイント
小球を点Bに戻し、下向きの初速 \(V\) を与えます。
小球が点Aに到達するためには、途中で糸がたるまないことが条件です。
点Aは釘Oを中心とする円運動の最高点にあたります。
最高点Aで張力 \(T_4 \ge 0\) となる条件を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 点Aの位置: 点Aは点Bと同じ高さですが、釘Oを中心とする半径 \(L/2\) の円軌道の最高点でもあります。
  • 点Aでの速さ: 点Bと点Aは同じ高さなので、エネルギー保存則より、点Aでの速さは初速 \(V\) と等しくなります。

具体的な解説と立式
ステップ1: 点Aでの速さ \(v_{\text{A}}\) の確認
点B(高さ \(L\))と点A(高さ \(L\))は同じ高さなので、位置エネルギーの変化はありません。
したがって、運動エネルギーも変化せず、点Aでの速さ \(v_{\text{A}}\) は初速 \(V\) に等しいです。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{A}} &= V
\end{aligned}
$$

ステップ2: 点Aでの張力 \(T_4\) の導出
点Aにおける鉛直下向き(中心向き正)の運動方程式を立てます(図d参照)。

  • 半径: \(L/2\)
  • 力(中心向き): 張力 \(T_4\) \(+\) 重力 \(mg\)

運動方程式:
$$
\begin{aligned}
m \frac{V^2}{L/2} &= T_4 + mg \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

ステップ3: 到達条件の適用
糸がたるまずに点Aを通過する条件は \(T_4 \ge 0\) です。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則
  • 円運動の運動方程式
  • 糸がたるまない条件: \(T \ge 0\)
計算過程

式⑥から \(T_4\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2mV^2}{L} &= T_4 + mg \\[2.0ex]
T_4 &= \frac{2mV^2}{L} – mg
\end{aligned}
$$
条件 \(T_4 \ge 0\) を適用します。
$$
\begin{aligned}
\frac{2mV^2}{L} – mg &\ge 0
\end{aligned}
$$
\(V\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{2mV^2}{L} &\ge mg \\[2.0ex]
V^2 &\ge \frac{gL}{2}
\end{aligned}
$$
\(V > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
V &\ge \sqrt{\frac{gL}{2}}
\end{aligned}
$$
したがって、最小の速さは \(\sqrt{\displaystyle\frac{gL}{2}}\) です。

この設問の平易な説明

最高点(点A)では、重力が下向きに引っ張るため、スピードが遅いと糸がたるんでしまいます。
重力に負けないだけの遠心力を生み出すために必要なスピードを計算しました。
スタート地点とゴール地点の高さが同じなので、最初のスピードがそのまま最高点でのスピードになります。

結論と吟味

答えは \(\sqrt{\displaystyle\frac{gL}{2}}\) です。
通常の半径 \(R\) の円運動の最高点通過条件は \(v \ge \sqrt{gR}\) です。ここで \(R=L/2\) を代入すると \(\sqrt{g(L/2)}\) となり、公式通りの結果であることが確認できます。

解答 (5) \(\sqrt{\displaystyle\frac{gL}{2}}\)
別解: 遠心力を用いた力のつりあい

思考の道筋とポイント
点A(最高点)において、上向きの遠心力が下向きの重力を支えきれれば、糸はたるみません。

この設問における重要なポイント

  • 力のつりあい: 遠心力が、重力と張力を支えています。

具体的な解説と立式
点Aにおける力のつりあい(図d参照):

  • 上向き(外向き): 遠心力 \(m \displaystyle\frac{V^2}{L/2}\)
  • 下向き(内向き): 重力 \(mg\) \(+\) 張力 \(T_4\)

力のつりあいの式:
$$
\begin{aligned}
m \frac{V^2}{L/2} &= T_4 + mg
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 遠心力
  • 力のつりあい
計算過程

\(T_4 \ge 0\) となる条件を求めます。
$$
\begin{aligned}
T_4 &= \frac{2mV^2}{L} – mg \ge 0 \\[2.0ex]
\frac{2mV^2}{L} &\ge mg \\[2.0ex]
V &\ge \sqrt{\frac{gL}{2}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

最高点では、遠心力が重力に勝てば、糸はピンと張ったままになります。
そのためのスピードを計算しました。

結論と吟味

メイン解法と同じ結果が得られました。

解答 (5) \(\sqrt{\displaystyle\frac{gL}{2}}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(問1〜問5の一括解説)

思考の道筋とポイント
運動方程式から出発し、積分によってエネルギー保存則を導出することで、全ての問題を一貫して解きます。
半径 \(r\) の円運動として一般化し、各設問で \(r=L\) や \(r=L/2\) を代入します。

この設問における重要なポイント

  • 極座標の運動方程式: 接線方向と法線方向(中心向き)の運動方程式を立てます。
  • エネルギー積分: 接線方向の式を積分してエネルギー保存則を導きます。

具体的な解説と立式
鉛直下向きからの角度を \(\phi\)(反時計回り正)、半径を \(r\) とします。
速度を \(v\)、張力を \(T\) とします。

1. 接線方向の運動方程式
接線方向の力は重力の成分 \(-mg \sin\phi\) です。
$$
\begin{aligned}
m \frac{dv}{dt} &= -mg \sin\phi \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

2. 法線方向(中心向き)の運動方程式
中心向きの力は、張力 \(T\) と重力の成分 \(-mg \cos\phi\) の和です。
$$
\begin{aligned}
m \frac{v^2}{r} &= T – mg \cos\phi \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(m\vec{a} = \vec{F}\)
  • 積分の連鎖律: \(\displaystyle\frac{dv}{dt} = \frac{v}{r} \frac{dv}{d\phi}\)
計算過程

エネルギー保存則の導出
式⑦の両辺に \(v = r \frac{d\phi}{dt}\) を掛けて時間積分すると、以下のエネルギー保存則が得られます(導出詳細は省略しますが、重力の仕事が位置エネルギー変化になります)。
最下点(\(\phi=0\))を基準とした高さ \(z = r(1 – \cos\phi)\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} m v^2 + mg r(1 – \cos\phi) &= \text{一定} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

各設問への適用

  • 問(1): 半径 \(r=L\)。点B(\(\phi=\pi/2\))で \(v=0\)。点C(\(\phi=0\))での速さ \(v_{\text{C}}\)。
    式⑨より \(0 + mgL = \frac{1}{2}mv_{\text{C}}^2 + 0 \rightarrow v_{\text{C}} = \sqrt{2gL}\)。
  • 問(2): 半径 \(r=L\)。点C(\(\phi=0\))での張力 \(T_1\)。
    式⑧より \(m\frac{v_{\text{C}}^2}{L} = T_1 – mg \cos 0\)。
    \(T_1 = m\frac{2gL}{L} + mg = 3mg\)。
  • 問(3): 半径 \(r=L/2\)。点C(\(\phi=0\))での張力 \(T_2\)。速さは \(v_{\text{C}}\) のまま。
    式⑧より \(m\frac{v_{\text{C}}^2}{L/2} = T_2 – mg \cos 0\)。
    \(T_2 = m\frac{2gL}{L/2} + mg = 4mg + mg = 5mg\)。
  • 問(4): 半径 \(r=L/2\)。角度 \(\phi=\theta\) での張力 \(T_3\)。
    式⑨より \(\frac{1}{2}mv_{\text{C}}^2 = \frac{1}{2}mv_{\text{D}}^2 + mg\frac{L}{2}(1-\cos\theta)\)。
    これより \(v_{\text{D}}^2 = gL(1+\cos\theta)\)。
    式⑧より \(m\frac{v_{\text{D}}^2}{L/2} = T_3 – mg \cos\theta\)。
    \(T_3 = \frac{2m}{L} \cdot gL(1+\cos\theta) + mg \cos\theta = mg(2+3\cos\theta)\)。
  • 問(5): 半径 \(r=L/2\)。点A(\(\phi=\pi\))での張力 \(T_4\)。
    式⑧より \(m\frac{v_{\text{A}}^2}{L/2} = T_4 – mg \cos\pi = T_4 + mg\)。
    \(T_4 \ge 0\) より \(m\frac{v_{\text{A}}^2}{L/2} – mg \ge 0 \rightarrow v_{\text{A}} \ge \sqrt{gL/2}\)。
    エネルギー保存より \(v_{\text{A}} = V\) なので、\(V \ge \sqrt{gL/2}\)。
この設問の平易な説明

運動方程式という一つの原理から、エネルギー保存則も張力の式もすべて導き出せることを示しました。
半径 \(r\) が変わっても、基本的な物理法則(運動方程式)の形は変わらないため、同じ手順で解くことができます。

結論と吟味

個別の公式を覚えることなく、運動方程式という原理から全ての答えが導かれることが確認できました。
結果はメイン解法と完全に一致します。

解答 メイン解法と同じ

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 力学的エネルギー保存則
    • 核心: 糸の張力は常に運動方向と垂直にはたらくため仕事をせず、重力のみが仕事をする系であるため、力学的エネルギーは保存されます。
    • 理解のポイント:
      • 半径が途中で変化しても、外力が仕事をしない限り、エネルギー保存則は成立し続けます。
      • 「高さ」と「速さ」の関係を直接結びつける最強のツールです。
  • 円運動の運動方程式と向心力
    • 核心: 円運動を維持するためには、常に中心に向かう力(向心力)が必要です。この向心力は、張力 \(T\) と重力の中心方向成分の合力によって供給されます。
    • 理解のポイント:
      • 半径 \(r\) が小さくなると、同じ速さでも必要な向心力 \(mv^2/r\) は大きくなります。これが張力急増の原因です。
      • 運動方程式 \(ma = F\) を立てることで、未知の力(張力)を逆算できます。
  • 束縛条件(糸がたるまない条件)
    • 核心: 糸がピンと張っている限り、張力 \(T\) は正の値(\(T \ge 0\))を持ちます。糸がたるむ瞬間、張力は \(0\) になります。
    • 理解のポイント:
      • 最高点を通過するための条件は、最高点での張力が \(0\) 以上であることです。
      • 「速さが \(0\) 以上」ではなく「張力が \(0\) 以上」が正しい条件です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ジェットコースターのループ: 糸の張力 \(T\) をレールの垂直抗力 \(N\) に置き換えるだけで、全く同じ物理現象として扱えます。最高点通過条件も \(N \ge 0\) となります。
    • 円筒面の内側を滑る運動: これも垂直抗力 \(N\) を考える問題で、重力と垂直抗力の合力が向心力となる点は共通です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「速さ」を問われたら: まず力学的エネルギー保存則を立式します。高さの差を見つけることが第一歩です。
    2. 「力(張力・垂直抗力)」を問われたら: その地点での円運動の運動方程式(または遠心力とのつりあい)を立式します。
    3. 「通過できるか」「離れるか」を問われたら: 張力 \(T\) や垂直抗力 \(N\) を求め、\(T \ge 0\) や \(N \ge 0\) の不等式を解きます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 最高点通過の条件ミス:
    • 誤解: 「最高点で速さが \(0\) なら通過できる」あるいは「位置エネルギーまで上がればよい」と思い込んでしまう。
    • 対策: 円運動を維持するには、重力に打ち勝つだけの遠心力(速さ)が必要です。必ず「張力 \(T \ge 0\)」または「遠心力 \(\ge\) 重力」から条件を導きましょう。
  • 半径の変化を見落とす:
    • 誤解: 釘にかかった後も、半径 \(L\) のままで計算してしまう。
    • 対策: 問題文の「釘の位置」をよく読み、回転の中心がどこに移ったかを図に書き込みましょう。半径が \(L\) から \(L/2\) に変わることで、運動方程式の \(r\) が変わります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 力学的エネルギー保存則(問1, 4, 5):
    • 選定理由: 時間や加速度、途中の経路に関係なく、始点と終点の状態(高さと速さ)だけで関係式を作れるため、計算が最も効率的だからです。
    • 適用根拠: 非保存力である張力が仕事をしないため、力学的エネルギーが保存されることが保証されています。
  • 遠心力を用いた力のつりあい(別解):
    • 選定理由: 運動方程式における加速度の向き(中心向き)を意識しにくい場合でも、「外向きに引っ張られる力」と「内向きの力」のバランスとして捉えることで、直感的に立式できるからです。
    • 適用根拠: 物体と共に回転する座標系(非慣性系)では、慣性力として遠心力を導入することで、静力学と同じ「つりあい」の式として扱えるためです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 導き出した一般式が、特殊な状況(角度 \(0\) や \(90^\circ\))で正しい値になるか確認する。
    • 実践: 問(4)で求めた張力の式 \(T = mg(2 + 3 \cos\theta)\) に \(\theta=0\) を代入すると \(5mg\) になり、問(3)の結果と一致します。このように、前の設問の結果と整合性が取れているか確認する癖をつけましょう。
  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 文字式の計算結果が、物理的な次元(単位)として正しいか常に疑う。
    • 実践: 例えば張力の答えが \(mg(2 + 3 \cos\theta)\) なら、全体として \([\text{力}]\) の次元になっています。もし \(g\) が抜けていたり、\(L\) が残っていたりしたら間違いです。
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問題50 半円形状の面にそった円運動 (25 岡山大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)および(6)の別解: 遠心力(慣性力)を用いた力のつりあいによる解法
      • 模範解答は静止系(外から見る視点)での運動方程式を用いていますが、別解では小球と共に運動する観測者の視点(回転座標系)に立ち、遠心力を導入して力のつりあいとして解きます。
    • 設問(3)〜(5)の別解: 重心運動と相対運動を用いた解法
      • 運動量保存則を「重心速度が \(0\) であること」と読み替え、重心系でのエネルギー保存則(換算質量を用いた相対運動エネルギー)を利用して一気に速度を求めます。
    • 設問(1)〜(6)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 運動方程式(水平・鉛直方向および極座標)から出発し、積分によって運動量保存則やエネルギー保存則を導出し、垂直抗力の式を得るプロセスを一括して解説します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 遠心力の解法: 「力がつりあっている」という静的なイメージで捉えられるため、直感的に理解しやすく、立式ミスを防ぎやすい利点があります。
    • 重心運動の解法: 2物体問題において、重心運動と相対運動に分離することで、連立方程式を解く手間を省き、物理的な構造(重心は動かない、相対運動は単振動的など)を深く理解できます。
    • 微積分の解法: 公式を暗記するのではなく、運動方程式という基本原理から全ての物理法則が導かれる論理構造を理解することで、応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「動く台の上での円運動」です。
前半は台が固定されている単純な円運動ですが、後半は台も動くため「2体問題」となります。
運動量保存則とエネルギー保存則を連立させて解く、入試物理の王道とも言える重要問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 摩擦がないため、重力や垂直抗力(保存力または仕事をしない力)のみが関与し、エネルギーは保存されます。
  2. 運動量保存則: 水平方向には外力が働かないため、小球と台の運動量の和は保存されます。
  3. 相対運動と円運動: 台から見ると小球は円運動をしていますが、外から見ると複雑な軌道を描きます。円運動の運動方程式は「台と共に動く観測者(相対速度)」で考えるのが基本です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)(2) 台が固定されている場合。エネルギー保存則で速さを求め、運動方程式で垂直抗力を求めます。
  2. (3) 台が動く場合。水平方向の運動量保存則を立式します。
  3. (4)(5) 運動量保存則とエネルギー保存則を連立させて、小球と台の速度を求めます。
  4. (6) 台から見た相対速度を用いて、円運動の運動方程式(または遠心力とのつりあい)を立てて垂直抗力を求めます。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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