「物理重要問題集2026」徹底解説(142〜144問):未来の得点力へ!完全マスター講座

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問題142 交流の送電 (九州工大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法
      • 模範解答が区間ごとの変化率を個別に計算するのに対し、別解では誘導起電力の定義式 \(v_2 = -M \frac{di_1}{dt}\) を用いて、電流グラフの傾き(微分係数)から瞬時に電圧グラフの概形を決定します。
    • 設問(6)の別解: エネルギー保存則(損失電力)を用いた解法
      • 模範解答が受電端の電力 \(P’\) を電圧と電流の積から計算するのに対し、別解では送電線でのジュール熱(損失電力)を計算し、全電力から差し引くことで効率を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 物理現象の変化の様子を「傾き」として視覚的・直感的に捉えることができ、複雑な計算を回避してグラフの形状を即座に判断できるためです。
    • エネルギー保存則の解法: 「送電とはエネルギーの輸送である」という物理的本質に基づき、損失分に着目することで計算ミスを減らし、効率の意味を深く理解できるためです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「交流の送電と変圧器の原理」です。電磁誘導による変圧の仕組みから、送電線での電力損失と効率まで、送電システム全体を物理的に考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が生じます。
  2. 相互誘導: 一方のコイルの電流変化が、他方のコイルに誘導起電力を生じさせます。
  3. 変圧器の原理: 共通の鉄心を通る磁束の変化により、巻数比に応じた電圧変換が行われます。
  4. 電力とエネルギー保存則: 送電線での抵抗による電圧降下と電力損失(ジュール熱)を考慮し、エネルギーの収支を計算します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)では、電磁誘導と相互誘導の基本公式を用いて、起電力の大きさや向きを決定します。
  2. (4)では、電流の時間変化グラフから、誘導起電力の時間変化グラフを導きます。
  3. (5)〜(7)では、送電回路を抵抗を含む回路として扱い、オームの法則と電力の式を用いて、電圧降下や送電効率を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
1次コイルに交流電圧をかけると、コイル内の磁束 \(\Phi\) が時間とともに変化します。
ファラデーの電磁誘導の法則により、この磁束の変化を妨げる向きに誘導起電力が生じます。
ここでは起電力の「大きさ」を問われているため、符号(向き)を気にする必要はなく、変化率の絶対値に着目します。

この設問における重要なポイント

  • ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束 \(\Phi\) が \(\Delta t\) の間に \(\Delta \Phi\) 変化するとき、巻数 \(N\) のコイルに生じる誘導起電力 \(V\) は \(V = -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) です。
  • 絶対値の扱い: \(\Delta \Phi\) は正負の値をとり得ますが、大きさ \(|v_1|\) を求める際は絶対値をつけます。

具体的な解説と立式
1次コイルの巻数は \(n_1\) です。
時間 \(\Delta t\) の間に磁束が \(\Delta \Phi\) だけ変化したとき、1次コイルに生じる誘導起電力 \(v_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_1 &= -n_1 \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
\end{aligned}
$$
求めるのはこの大きさ \(|v_1|\) です。巻数 \(n_1\) は正の定数なので、絶対値記号の外に出せます。
$$
\begin{aligned}
|v_1| &= \left| -n_1 \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
計算過程

絶対値記号を整理して計算します。
$$
\begin{aligned}
|v_1| &= n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コイルの中を通る磁石の力(磁束)が変化すると、コイルは発電機になります。その電圧の強さは、「コイルの巻き数」と「磁束の変化の激しさ(スピード)」の掛け算で決まります。ここでは単にその公式に当てはめるだけです。

結論と吟味

答えは \(n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) です。
巻き数 \(n_1\) が多いほど、また磁束の変化が激しいほど電圧が大きくなるという物理的直感と一致します。

解答 (1) \(\displaystyle n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\)

問(2)

思考の道筋とポイント
理想的な変圧器では、鉄心の中を通る磁束 \(\Phi\) が漏れることなく、1次コイルと2次コイルの両方を貫きます。
つまり、単位時間あたりの磁束の変化量 \(\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) は、1次コイルでも2次コイルでも共通です。
この共通項を利用して、電圧の比を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 共通の磁束変化: 理想的な変圧器では、全てのコイルで \(\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\) が等しくなります。
  • 変圧比: 電圧の比は巻き数の比に等しくなります。

具体的な解説と立式
問(1)と同様に、2次コイル(巻数 \(n_2\))に生じる誘導起電力の大きさ \(|v_2|\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
|v_2| &= n_2 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|
\end{aligned}
$$
問(1)の結果 \(|v_1| = n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\) との比をとります。
$$
\begin{aligned}
\left| \frac{v_2}{v_1} \right| &= \frac{|v_2|}{|v_1|}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則
計算過程

式を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
\left| \frac{v_2}{v_1} \right| &= \frac{n_2 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|}{n_1 \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|} \\[2.0ex]
&= \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

1次コイルも2次コイルも、同じ鉄心の中の磁束変化を感じ取って発電しています。
違うのは「巻き数」だけです。1回巻くごとに同じ電圧が発生するので、全体の電圧は巻き数に単純に比例します。
だから、電圧の比はそのまま巻き数の比になります。

結論と吟味

答えは \(\frac{n_2}{n_1}\) です。
これは変圧器の基本公式そのものであり、巻き数が多いほうに高い電圧が生じることを示しています。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{n_2}{n_1}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
ここでは「相互インダクタンス \(M\)」を用いて誘導起電力を表します。
また、単なる大きさではなく、符号(プラスかマイナスか)を含めた式を答える必要があります。
符号の決定には「レンツの法則」を用いますが、問題の設定(図の電流の向きと電圧の基準)と相互誘導の定義式との整合性を確認することが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 相互誘導の公式: 1次コイルの電流 \(i_1\) が変化するとき、相互インダクタンス \(M\) の2次コイルに生じる誘導起電力 \(v_2\) は \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) です。
  • 符号の意味: マイナス符号は、電流の変化を妨げる向き(レンツの法則)に起電力が生じることを表しています。

具体的な解説と立式
相互誘導の法則より、1次コイルの電流変化 \(\Delta i_1\) によって2次コイルに生じる誘導起電力 \(v_2\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 相互誘導の法則: \(V = -M \frac{\Delta I}{\Delta t}\)
計算過程

立式そのものが答えとなります。
$$
\begin{aligned}
v_2 &= -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

一方のコイルの電流が変化すると、もう一方のコイルに電圧が発生する現象を「相互誘導」と呼びます。
このとき発生する電圧は、電流の変化スピード \(\frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) に比例します。その比例定数が \(M\) です。
マイナスがついているのは、「変化に逆らう」という天邪鬼な性質(レンツの法則)を表しています。電流が増えようとすると減らす方向に、減ろうとすると増やす方向に電圧が生じます。

結論と吟味

答えは \(-M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) です。
電流変化率に比例し、変化を妨げる向きに生じるという物理法則を正しく表現しています。

解答 (3) \(\displaystyle -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
問(3)で求めた式 \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) を使って、与えられた \(i_1 – t\) グラフ(図2)から \(v_2 – t\) グラフ(図3)を描きます。
\(i_1 – t\) グラフの「傾き」が \(\frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) に相当することに着目し、区間ごとに計算します。

この設問における重要なポイント

  • グラフの傾きの読み取り: \(i_1 – t\) グラフの傾きが電流の変化率 \(\frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) です。
  • 値の代入: \(M = 5\,\text{H}\) を代入して具体的な電圧値を計算します。

具体的な解説と立式
式 \(v_2 = -5 \times \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\) に基づき、各区間の傾きを計算して \(v_2\) を求めます。

1. 区間 \(0 \le t \le 1\) [s]
グラフより、\(1\,\text{s}\) 間に電流は \(0\,\text{A}\) から \(2\,\text{A}\) に増加しています。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= \frac{2 – 0}{1 – 0}
\end{aligned}
$$

2. 区間 \(1 \le t \le 3\) [s]
電流は \(2\,\text{A}\) で一定です。変化がないため傾きは \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= 0\,\text{A}/\text{s}
\end{aligned}
$$

3. 区間 \(3 \le t \le 5\) [s]
\(2\,\text{s}\) 間に電流は \(2\,\text{A}\) から \(0\,\text{A}\) に減少しています。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= \frac{0 – 2}{5 – 3}
\end{aligned}
$$

4. 区間 \(5 \le t \le 7\) [s]
電流は \(0\,\text{A}\) で一定です。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= 0\,\text{A}/\text{s}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 直線の傾き: \(m = \frac{y_2 – y_1}{x_2 – x_1}\)
  • 相互誘導: \(v_2 = -M \frac{\Delta i_1}{\Delta t}\)
計算過程

各区間の \(v_2\) を計算します。

1. \(0 \le t \le 1\) [s]:
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= 2\,\text{A}/\text{s} \\[2.0ex]
v_2 &= -5 \times 2 \\[2.0ex]
&= -10\,\text{V}
\end{aligned}
$$

2. \(1 \le t \le 3\) [s]:
$$
\begin{aligned}
v_2 &= -5 \times 0 \\[2.0ex]
&= 0\,\text{V}
\end{aligned}
$$

3. \(3 \le t \le 5\) [s]:
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta i_1}{\Delta t} &= \frac{-2}{2} \\[2.0ex]
&= -1\,\text{A}/\text{s} \\[2.0ex]
v_2 &= -5 \times (-1) \\[2.0ex]
&= 5\,\text{V}
\end{aligned}
$$

4. \(5 \le t \le 7\) [s]:
$$
\begin{aligned}
v_2 &= 0\,\text{V}
\end{aligned}
$$

これらをグラフにプロットします。

この設問の平易な説明

電流のグラフの「坂道の急さ」を見てください。
最初の1秒間は急な上り坂なので、大きなマイナスの電圧が発生します(変化を嫌がるので逆向き)。
次の2秒間は平坦な道なので、変化がなく電圧はゼロです。
その次の2秒間は緩やかな下り坂なので、プラスの電圧が発生します(減るのを嫌がって補う向き)。下り坂の傾斜は上り坂の半分くらいなので、電圧の大きさも半分(5V)になります。

結論と吟味

電流が増加しているときは負の電圧、減少しているときは正の電圧、一定のときは0Vとなっており、レンツの法則と整合します。
また、急激に変化するほど電圧が大きい点も物理的に妥当です。

解答 (4) 下図参照
・\(0 \le t \le 1\): \(v_2 = -10\) の水平線
・\(1 < t \le 3\): \(v_2 = 0\) の水平線(t軸上)
・\(3 < t \le 5\): \(v_2 = 5\) の水平線
・\(5 < t \le 7\): \(v_2 = 0\) の水平線(t軸上)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
物理学において、変化率は「微分」として定義されます。
相互誘導の公式を微分形式 \(v_2(t) = -M \frac{di_1}{dt}\) で捉えると、\(v_2\) は \(i_1-t\) グラフの「接線の傾き」に \(-M\) を掛けたものであることが直感的に理解できます。

この設問における重要なポイント

  • 微分の物理的意味: 時間グラフにおける微分係数 \(\frac{dx}{dt}\) は、その瞬間のグラフの傾きを表します。
  • 一次関数の微分: \(i_1(t) = at + b\) (直線)のとき、その微分 \(\frac{di_1}{dt} = a\) (定数)となります。

具体的な解説と立式
各区間における電流 \(i_1(t)\) を時間の関数として式で表し、それを時間 \(t\) で微分します。

1. \(0 < t < 1\) のとき
グラフは原点を通る傾き2の直線です。
$$
\begin{aligned}
i_1(t) &= 2t
\end{aligned}
$$
これを時間微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{di_1}{dt} &= 2
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
v_2 &= -5 \times 2 \\[2.0ex]
&= -10
\end{aligned}
$$

2. \(3 < t < 5\) のとき
グラフは点 \((3, 2)\) と \((5, 0)\) を通る直線です。
$$
\begin{aligned}
i_1(t) &= -1(t – 3) + 2 \\[2.0ex]
&= -t + 5
\end{aligned}
$$
これを時間微分します。
$$
\begin{aligned}
\frac{di_1}{dt} &= -1
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
v_2 &= -5 \times (-1) \\[2.0ex]
&= 5
\end{aligned}
$$

使用した物理・数学公式

  • 微分の公式: \(\frac{d}{dt}(at+b) = a\)
  • 相互誘導(微分形): \(v_2 = -M \frac{di_1}{dt}\)
計算過程

上記解説内で計算済み。

この設問の平易な説明

「微分する」とは、グラフの傾きを求める操作そのものです。
電流のグラフが直線のときは傾きが一定なので、微分すると定数(一定の電圧)になります。
数式で関数を作って微分することで、複雑なグラフでも機械的に正しい答えを導き出せます。

結論と吟味

メインの解法と同じ結果が得られました。
微分を用いることで、物理現象(電圧)が原因(電流)の変化率に依存している構造がより明確になります。

解答 (4) メイン解法と同じグラフ

問(5)

思考の道筋とポイント
ここからは送電回路全体の計算です。
交流回路ですが、問題文に「電力は電圧と電流の実効値の積」とあり、負荷が抵抗のみであるため、直流回路と同じようにオームの法則や電力の式 \(P=VI\) を使って計算できます。
変圧器Aから送り出された電圧 \(V_2\) が、送電線の抵抗 \(R\) で電圧降下を起こし、残りが変圧器Bに届く電圧 \(V_3\) になると考えます。

この設問における重要なポイント

  • 理想的な変圧器の電力保存: 入力電力と出力電力は等しくなります(\(P_{\text{in}} = P_{\text{out}}\))。
  • 送電線での電圧降下: 抵抗 \(R\) に電流 \(I\) が流れると、\(V = IR\) だけ電圧が下がります。
  • 実効値の扱い: 抵抗負荷のみの場合、位相差を考慮せずスカラー量として計算可能です。

具体的な解説と立式
まず、変圧器Aの2次側(送電線側)を流れる電流 \(I_2\) を求めます。
変圧器Aは理想的なので、1次側の電力 \(P\) はそのまま2次側に伝わります。
$$
\begin{aligned}
P &= V_2 I_2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に、送電線での電圧の関係を考えます。
送り出し電圧 \(V_2\) から、送電線の抵抗 \(R\) による電圧降下 \(I_2 R\) を引いたものが、受電端電圧 \(V_3\) となります。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= V_2 – I_2 R \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電力の式: \(P = VI\)
  • オームの法則(電圧降下): \(V = IR\)
  • キルヒホッフの第2法則的な考え方: \(V_{\text{元}} – V_{\text{降下}} = V_{\text{先}}\)
計算過程

式①より \(I_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{P}{V_2}
\end{aligned}
$$
これを式②に代入して \(I_2\) を消去します。
$$
\begin{aligned}
V_3 &= V_2 – \left( \frac{P}{V_2} \right) R \\[2.0ex]
&= V_2 – \frac{PR}{V_2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

発電所から \(V_2\) という電圧で電気を送り出しましたが、途中の電線が抵抗(邪魔もの)を持っているため、電気を運ぶ電流 \(I_2\) が流れるときに電圧の一部が消費されてしまいます(電圧降下)。
目的地に届く電圧 \(V_3\) は、出発時の電圧から、この「途中で減った分」を引いた残りになります。

結論と吟味

答えは \(V_2 – \frac{PR}{V_2}\) です。
抵抗 \(R\) が大きいほど、また送る電力 \(P\) が大きい(電流が大きい)ほど、電圧降下が大きくなり \(V_3\) が下がるという結果は、実際の送電現象と合致します。

解答 (5) \(\displaystyle V_2 – \frac{PR}{V_2}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
送電効率 \(e\) は、発電所から送り出した電力 \(P\) に対する、受電端(変圧器Bの入力)での電力 \(P’\) の比率です。
\(P’\) を直接計算する方法(メイン解法)と、損失電力に着目する方法(別解)があります。

この設問における重要なポイント

  • 送電効率の定義: \(e = \frac{\text{受け取った電力}}{\text{送り出した電力}} = \frac{P’}{P}\)
  • 受電電力の計算: \(P’ = V_3 I_2\)

具体的な解説と立式
受電端での電力 \(P’\) は、受電電圧 \(V_3\) と電流 \(I_2\) の積です。
$$
\begin{aligned}
P’ &= V_3 I_2
\end{aligned}
$$
これに問(5)で求めた \(V_3\) と \(I_2 = \frac{P}{V_2}\) を代入して \(P’\) を \(P, V_2, R\) で表します。
その後、効率 \(e\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{P’}{P}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電力の式: \(P = VI\)
計算過程

まず \(P’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P’ &= \left( V_2 – \frac{PR}{V_2} \right) \cdot \frac{P}{V_2} \\[2.0ex]
&= V_2 \cdot \frac{P}{V_2} – \frac{PR}{V_2} \cdot \frac{P}{V_2} \\[2.0ex]
&= P – \frac{P^2 R}{V_2^2}
\end{aligned}
$$
次に効率 \(e\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{P – \frac{P^2 R}{V_2^2}}{P} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{PR}{V_2^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

効率とは、「送った荷物のうち、どれだけ無事に届いたか」の割合です。
ここでは、届いた電力 \(P’\) を計算し、それを元の電力 \(P\) で割ることで求めました。
計算の結果、効率は1(100%)からある値を引いた形になりました。引かれている部分が「ロスの割合」です。

結論と吟味

答えは \(1 – \frac{PR}{V_2^2}\) です。
抵抗 \(R\) がゼロなら効率は1(100%)になり、電圧 \(V_2\) が大きいほどロスが減って効率が良くなることが式から読み取れます。

解答 (6) \(\displaystyle 1 – \frac{PR}{V_2^2}\)
別解: エネルギー保存則(損失電力)を用いた解法

思考の道筋とポイント
「届いた電力」を計算する代わりに、「途中で消えた電力(損失)」を計算して全体から引くアプローチです。
送電線での損失は、抵抗 \(R\) で発生するジュール熱です。

この設問における重要なポイント

  • ジュール熱(損失電力): 抵抗 \(R\) に電流 \(I\) が流れるとき、消費される電力は \(P_{\text{損失}} = I^2 R\) です。
  • エネルギー保存則: \((\text{届いた電力}) = (\text{送った電力}) – (\text{損失電力})\)

具体的な解説と立式
送電線を流れる電流は \(I_2 = \frac{P}{V_2}\) です。
送電線の抵抗 \(R\) で失われる電力 \(P_{\text{損失}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{損失}} &= I_2^2 R \\[2.0ex]
&= \left( \frac{P}{V_2} \right)^2 R \\[2.0ex]
&= \frac{P^2 R}{V_2^2}
\end{aligned}
$$
受電電力 \(P’\) は、元の電力 \(P\) からこの損失を引いたものです。
$$
\begin{aligned}
P’ &= P – P_{\text{損失}} \\[2.0ex]
&= P – \frac{P^2 R}{V_2^2}
\end{aligned}
$$
効率 \(e\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
e &= \frac{P’}{P}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ジュール熱の式: \(P = I^2 R\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
e &= \frac{P – \frac{P^2 R}{V_2^2}}{P} \\[2.0ex]
&= 1 – \frac{PR}{V_2^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「どれだけ届いたか」を計算するより、「どれだけこぼしたか」を計算する方が早い場合があります。
電線が熱くなって逃げていくエネルギー(ジュール熱)を計算し、それを全体から差し引くことで、効率をスマートに導き出せます。

結論と吟味

メイン解法と全く同じ結果が得られました。
この方法は計算量が少なく、物理的な意味(何がロスなのか)も明確になるため、非常に推奨される解法です。

解答 (6) \(\displaystyle 1 – \frac{PR}{V_2^2}\)

問(7)

思考の道筋とポイント
問(6)で求めた効率の式 \(e = 1 – \frac{PR}{V_2^2}\) を分析します。
効率 \(e\) を大きくする(1に近づける)ためには、引く値 \(\frac{PR}{V_2^2}\) を小さくすればよいことがわかります。

この設問における重要なポイント

  • 数式の定性分析: 変数 \(V_2\) が分母にあるため、\(V_2\) を大きくすると分数は小さくなります。
  • 高圧送電の原理: 電圧を上げると電流が小さくなり(\(I=P/V\))、ジュール熱損失(\(I^2 R\))が劇的に減少します。

具体的な解説と立式
効率の式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
e &= 1 – \frac{PR}{V_2^2}
\end{aligned}
$$
ここで、送る電力 \(P\) と送電線の抵抗 \(R\) は一定とします。
\(e\) を最大値 \(1\) に近づけるためには、右辺第2項の \(\frac{PR}{V_2^2}\) を限りなく \(0\) に近づける必要があります。
そのためには、分母にある送電電圧 \(V_2\) の値を大きくすればよいことがわかります。

使用した物理公式

  • 特になし(数式の考察)
計算過程

計算は不要です。式から論理的に導きます。

この設問の平易な説明

効率の式を見ると、電圧 \(V_2\) が分母の2乗に入っています。
つまり、電圧を2倍にすれば、ロスは \(\frac{1}{4}\) に減り、効率はグンと良くなります。
これが、実際の社会で数万ボルトという「高電圧」で送電を行っている理由です。

結論と吟味

結論は「送電する電圧 \(V_2\) の値を大きくする」です。
これは現代の電力網が高圧送電を採用している事実と完全に一致する、物理的に極めて重要な結論です。

解答 (7) 送電する電圧 \(V_2\) の値を大きくすればよい。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ファラデーの電磁誘導の法則と相互誘導
    • 核心: コイルを貫く磁束が時間変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力が発生します。変圧器はこの原理を利用して、共通の鉄心を通る磁束変化により電圧を変換します。
    • 理解のポイント:
      • 磁束の共有: 理想的な変圧器では、1次コイルと2次コイルを貫く磁束の変化率 \(\Delta \Phi / \Delta t\) が等しくなります。
      • レンツの法則: 電圧の向き(符号)は「変化を妨げる方向」に生じます。
  • 電力輸送とエネルギー保存則
    • 核心: 送電とは電気エネルギーの輸送であり、送電線の抵抗で発生するジュール熱は「輸送コスト(損失)」としてエネルギー保存則から差し引かれます。
    • 理解のポイント:
      • 電圧降下: 電流が抵抗を流れると、オームの法則 \(V=IR\) に従い、電位が下がります。これが受電電圧が下がる原因です。
      • 高圧送電の意義: 同じ電力 \(P\) を送る場合、電圧 \(V\) を高くすると電流 \(I\) が小さくなり(\(P=VI\))、抵抗での損失(\(I^2 R\))を劇的に減らせます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 実効値を用いた交流回路: 抵抗のみの回路や、力率が1とみなせる送電問題では、交流の実効値を直流の電圧・電流と同様に扱って計算できます。
    • グラフ描画問題: 電流グラフから電圧グラフを描く(またはその逆)問題は、物理量の定義式(微分・積分関係)を見ることで、傾きや面積から形状を即座に特定できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 損失の場所を特定する: 回路図の中で「どこでエネルギーが熱として逃げているか(抵抗はどこか)」をマークします。
    2. 電圧降下の可視化: 送り出し電圧 \(V_{\text{in}}\) と受け取り電圧 \(V_{\text{out}}\) の間に、抵抗 \(R\) がある場合、必ず \(V_{\text{out}} = V_{\text{in}} – IR\) という式を立てます。
    3. 電力保存の立式: 「入力電力 \(=\) 出力電力 \(+\) 損失電力」というエネルギー保存の式を立てることで、複雑な計算をショートカットできる場合があります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 損失電力の計算における電圧の取り違え:
    • 誤解: 送電線での電力損失 \(P_{\text{損失}}\) を計算する際、公式 \(P = V^2/R\) の \(V\) に、誤って送電電圧 \(V_2\) を代入してしまう(\(P_{\text{損失}} = V_2^2/R\) と計算してしまう)。
    • 対策: 公式 \(P = V^2/R\) の \(V\) は「抵抗の両端にかかる電圧(電圧降下分)」です。送電電圧 \(V_2\) は抵抗にかかる電圧ではありません。ミスを防ぐため、損失計算では必ず電流 \(I\) を用いた公式 \(P_{\text{損失}} = I^2 R\) を使う習慣をつけましょう。
  • 変圧器の巻数比と電流比の混同:
    • 誤解: 電圧比と同様に、電流比も \(I_1/I_2 = n_1/n_2\) だと思い込んでしまう。
    • 対策: 変圧器ではエネルギー保存則 \(V_1 I_1 = V_2 I_2\) が成り立ちます。電圧と電流は反比例するため、電流比は巻数比の逆数(\(I_1/I_2 = n_2/n_1\))になることを常に意識してください。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(6)別解:損失電力 \(I^2 R\) を用いた効率計算:
    • 選定理由: 受電電力 \(P’\) を真面目に展開して計算するよりも、損失分を引くほうが項数が少なく、計算ミスが起きにくいため。また、「何がロスなのか」という物理的意味が明確になるため。
    • 適用根拠: エネルギー保存則 \(P_{\text{受電}} = P_{\text{送電}} – P_{\text{損失}}\) が常に成立するため。
  • 問(4)別解:微分を用いたグラフ描画:
    • 選定理由: 区間ごとに数値を代入して計算する手間を省き、グラフの概形(傾きが一定なら値は一定、など)を瞬時に判断できるため。
    • 適用根拠: 誘導起電力の定義式 \(v = -L \frac{di}{dt}\) が、数学的な微分の形そのものであるため。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 導出した文字式が、求めたい物理量の単位(次元)を持っているか確認する。
    • 実践: 例えば問(5)の電圧 \(V_3\) の答え \(V_2 – \frac{PR}{V_2}\) において、第2項 \(\frac{PR}{V_2}\) の単位を確認します。\([W][\Omega]/[V] = [V][A][\Omega]/[V] = [A][\Omega] = [V]\) となり、電圧の次元を持っているため、計算が正しい可能性が高いと判断できます。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 変数を極端な値(0や無限大)にしたとき、物理的に当たり前の結果になるか確認する。
    • 実践: 問(6)の効率 \(e = 1 – \frac{PR}{V_2^2}\) において、抵抗 \(R=0\) とすると \(e=1\)(ロスなし)になります。また、電圧 \(V_2 \to \infty\) とすると \(e \to 1\) になります。これらは物理的直感と一致するため、式が正しいことの強力な裏付けとなります。
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問題143 RLC直列回路 (25 東京農工大 改)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問[A], [B]の別解: 微分方程式を用いた過渡現象の体系的解法
      • 模範解答が「スイッチを入れた直後」や「十分時間が経過した後」の素子の振る舞い(導線や断線とみなす)を定性的に判断しているのに対し、別解では回路方程式(微分方程式)を立式して電流や電荷の時間変化 \(i(t), q(t)\) を厳密に導出し、そこから \(t=0\) や \(t \to \infty\) の状態を数学的に決定します。
    • 設問[C]の別解: ベクトル図(フェーザ図)を用いた解法
      • 模範解答が三角関数の加法定理と合成公式を用いて数式的に解いているのに対し、別解では電圧と電流の位相関係をベクトル図として描画し、図形的な性質(ピタゴラスの定理など)からインピーダンスや位相差を直感的に導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微分方程式の解法: 「なぜ直後は抵抗のように振る舞うのか」「なぜ十分後は導線になるのか」という物理的挙動の根拠を、基本原理から数学的に理解できるためです。
    • ベクトル図の解法: 複雑な三角関数の計算を回避し、回路全体の電圧・電流・位相の関係を視覚的かつ瞬時に把握できるため、計算ミスを減らし、応用力を高めるのに極めて有効です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「RLC回路における過渡現象と交流特性」です。
スイッチ操作による回路の変化を追いながら、直流電源接続時の過渡的な応答([A], [B])と、交流電源接続時の定常的な応答([C])の両方を考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの性質: 電荷 \(Q\) が蓄えられると電位差 \(V=Q/C\) を生じます。電流は電荷の時間変化率 \(I = \frac{dQ}{dt}\) です。
  2. コイルの性質: 電流が変化すると、その変化を妨げる向きに誘導起電力 \(V = -L\frac{dI}{dt}\) を生じます。
  3. 交流回路のインピーダンス: 抵抗、コイル、コンデンサーにおける電圧と電流の位相差(同相、\(\pi/2\)進み、\(\pi/2\)遅れ)と、リアクタンス(抵抗成分)の概念が重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. [A], [B]では、スイッチを入れた「直後」と「十分時間が経過した後」という極限的な状態における各素子の振る舞い(導線とみなせるか、断線とみなせるか)に着目します。
  2. [C]では、キルヒホッフの第2法則に基づいて回路全体の電圧方程式を立て、三角関数の合成を用いて電流の振幅と位相を決定します。

問[A]

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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