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講義ノート(板書PDF)
「力の図示→運動方程式→解く」を根本から組み直すドクター型講義
講義ノート
【今回のポイント】
- エネルギーとは 「仕事をする潜在能力(貯金)」 のこと。力学的エネルギーには 運動エネルギー・重力による位置エネルギー・弾性エネルギー の \(3\) 種類がある。
- 第12講の「した仕事の分だけエネルギーが変わる」が、本講の 「はじめのエネルギー + 外力のした仕事 = あとのエネルギー」 という関係式になる。
- 関係式の 「外力のした仕事」に、重力と弾性力の仕事は含めない。その仕事はすでに位置E・弾性Eに入っているからだ(二重計上の禁止)。
- 運動E・弾性Eは 常にプラス。位置Eだけは 基準の取り方で符号が変わる(地下ならマイナス)。
【講義解説】
前回の「仕事」が、そのまま「エネルギー」につながる
第12講「仕事」では、力が物体に 「した仕事の分だけ、エネルギーが移る・変わる」 という関係を学んだ。本講で扱う「力学的エネルギー」と「仕事とエネルギーの関係式」は、その第12講の仕事概念の 直接の続き である。
結論から言えば、前回の「仕事」は エネルギーを出し入れする量 であり、今回の「エネルギー」は その仕事をする潜在能力の貯金 だ。財布にたとえれば、仕事は「入金・出金の金額」、エネルギーは「財布の残高」にあたる。した仕事の分だけ残高が増えたり減ったりする——この当たり前の関係を式にしたものが、本講の主役である「仕事とエネルギーの関係式」になる。
新しい公式をもう \(1\) つ抱え込むのではなく、前回学んだ「仕事」を残高の言葉で言い換えるだけだ、という視点で読み進めてほしい。
では、なぜわざわざ「残高」という言い方に置き換えるのか。理由は \(3\) 段になっている。①仕事は「力 × 力の向きに動いた距離」で、力ごとに \(1\) 本ずつ数える量だった。②ところが問題で問われるのは、たいてい「あとの速さ」や「上がった高さ」——つまり 物体そのものの状態 である。
③そこで「いまの状態が、どれだけ仕事をする力を蓄えているか」を \(1\) つの数にまとめておけば、力を \(1\) 本ずつ追いかけずに、はじめの状態とあとの状態を直接つなげられる。エネルギーとは、力の追跡を、状態の比較に置き換えるための道具 なのだ。
ここで自己診断をひとつ。「エネルギー」と聞いたとき、あなたの頭に最初に浮かぶのは \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) という文字の並びだろうか。それとも「動いているボールが紙を破る」という場面だろうか。文字の並びが先に出てくるなら、それは 式を先に思い出す思考のクセ がついているサインだ。
それ自体は悪いクセではないが、そのままだと関係式を立てる段で「どの項を書くべきか」で必ず迷う。本講の処方箋は、\(3\) 種類の式を覚え直すことではなく、「いまこの物体は、どんな形で仕事をする力を蓄えているか」を場面で言えるようにする ことだ。場面で言えれば、式はその翻訳として後からついてくる——この順序こそが 考えて解ける物理 への入口になる。
🩺 要点整理
この節でつかんでおくのは、次の \(2\) 点だけでよい。
この \(2\) 点が言えていれば、次の節で出てくる \(3\) 種類のエネルギーは「残高の内訳」として読める。逆にここを飛ばすと、\(3\) つの式を別々に暗記する羽目になる。
🧠 見ずに思い出そう
ここで一度この画面を閉じて、次の \(2\) つを声に出して言ってみてほしい。① 第12講で学んだ「仕事」と、本講の「エネルギー」は、財布のたとえでいうとそれぞれ何にあたるか。② その言い換えができると、本講の関係式は「新しく増えた公式」ではなく何になるのか。
①で詰まったなら、まだ仕事を \(W = Fx\) という計算の手続きとしてしか持っていない。②で詰まったなら、たとえは言えても「だから式が \(1\) 本増えただけだ」という結論まで届いていない。①は第12講の仕事の意味づけ、②は本講の入口——どちらで詰まったかによって、戻る場所が変わる。①なら第12講「仕事」の定義へ、②ならこの節の「入金・出金と残高」のたとえへ戻ればよい。
講をまるごと読み直す必要はない。
力学的エネルギーの3種類
物理学において「エネルギー」とは、結論から言えば 「仕事をする潜在能力」 のことである。例えば、動いているボールが紙にぶつかると、紙に力を加えて動かす(仕事をする)ことができる。このように、物体が何らかの理由で「他の物体に仕事をする能力」を持っているとき、その物体は 「エネルギーを持っている」 と表現する。
ここを「エネルギー=仕事をする能力」という一文で通り過ぎないでほしい。大事なのは、上の説明にある「何らかの理由で」の中身が 高校物理では \(3\) 通りしかない という点だ。動いているから(速さ)、高い所にあるから(高さ)、ばねが変形しているから(伸び縮み)——力学で蓄えられる形はこの \(3\) つに尽きる。
だから「\(3\) 種類の公式がある」のではなく、蓄え方が \(3\) 通りだから \(3\) 種類になる。この順序で持っておくと、問題文を読んだ瞬間に「この場面ではどれが \(0\) でないか」を先に選別できるようになる。
力学で扱うエネルギー(力学的エネルギー)には、大きく分けて以下の \(3\) 種類が存在する。
① 運動エネルギー
動いている物体が持つエネルギーである。質量 \(m\)、速さ \(v\) の物体が持つ運動エネルギーは以下の式で表される。
$$
\displaystyle\frac{1}{2}mv^2
$$
ここで注意すべきは、\(v\) は速度(向きを持つ)ではなく「速さ(大きさのみ)」であるという点だ。したがって、物体がどの向きに動いていようと、運動エネルギーの値は 常にプラス となる。マイナスの運動エネルギーは存在しない。
この「向きを持たない」という一点が、あとで効いてくる。関係式を立てるとき、物体が左へ動いていようと右へ動いていようと、運動エネルギーの項の書き方は変わらないからだ。速度の符号で悩まなくてよい ——これが、運動方程式ではなくエネルギーで解く道を選ぶときの大きな利点になる。
② 重力による位置エネルギー
高いところにある物体が持つエネルギーである。質量 \(m\) の物体が、基準となる高さから \(h\) だけ高い位置にあるとき、そのエネルギーは以下の式で表される。
$$
mgh
$$
(\(g\) は重力加速度)
このエネルギーの符号は、基準とする高さ(高さ \(0\))をどこに設定するかで変わる。基準より上にあればプラス(\(+h\))となるが、基準より下(地下など)にある場合は、高さをマイナス(\(-h\))として扱うため、エネルギーも マイナス となる。
ここで多くの生徒が「基準は問題側で決まっているもの」と思い込む。実際は逆で、基準は解く人が自分で決めてよい。決めてよいからこそ、決めたことを宣言しないと、同じ物体なのに人によって答えが食い違う。処方箋は単純だ——\(mgh\) と書く前に、図に「高さ \(0\)」の線を引いてしまう。
この一手だけで、位置エネルギーの符号事故はほとんど消える。
③ 弾性エネルギー(弾性力による位置エネルギー)
ばねが伸びたり縮んだりしているときに持つエネルギーである。ばね定数 \(k\) のばねが、自然の長さから \(x\) だけ伸び縮みしているときのエネルギーは以下の式で表される。
$$
\displaystyle\frac{1}{2}kx^2
$$
ばねは伸びているとき(\(+x\))も、縮んでいるとき(\(-x\))も、元に戻ろうとして仕事をする能力を持つ。式に \(x^2\) が含まれているため、伸びていても縮んでいても、弾性エネルギーの値は 常にプラス となる。
運動Eと弾性Eは常にプラス、位置Eだけは符号を持つ——この非対称を「そういうものだ」で済ませないでほしい。理由は式の形そのものにある。\(v^2\) と \(x^2\) は \(2\) 乗なので符号が消えるが、\(h\) は \(1\) 乗のまま残る からだ。
つまり「\(2\) 乗が入っているか」を見るだけで、符号で迷ってよい項がどれかを自分で言い当てられる。覚える対象は \(3\) 種の符号ではなく、この見分け方 \(1\) つでよい。
エネルギーを 「いつでも仕事に変えられる貯金」 だと考えるとつかみやすい。重力による位置エネルギーは、物体を高い所まで持ち上げたときに 「持ち上げた高さの分だけ貯めたチャージ」 だ——手を離せば、そのチャージは落下しながら仕事として戻ってくる。運動エネルギーは「いま動いている勢いが持つ貯金」、弾性エネルギーは「ばねが縮んで/伸びてためたバネ仕掛けの貯金」。
どれも共通して「あとで仕事をするために蓄えられた残高」だ。第12講で学んだ「仕事」が入金・出金、このエネルギーが残高——そう読めば、次に出てくる関係式は家計簿そのものだとわかる。
そして、このたとえは本講最大のつまずきにもそのまま効く。重力や弾性力がした仕事は、すでに残高(位置E・弾性E)に反映されている入金だ。入金欄にもう一度書けば、家計簿の合計は当然合わなくなる。
図: 仕事=入金・出金、エネルギー=残高。重力と弾性力の入金は、すでに残高の側に書き込まれている
運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) には速さ \(v\) が \(2\) 乗で入っている。これが何を意味するかを数値で確かめよう。質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体が、速さ \(3.0\,\text{m}/\text{s}\) のときと、その \(2\) 倍の \(6.0\,\text{m}/\text{s}\) のときで運動エネルギーを比べる。
$$
\begin{aligned}
K_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 3.0^2 \\[2.0ex]
&= 9.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
K_2 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 6.0^2 \\[2.0ex]
&= 36\,\text{J}
\end{aligned}
$$
速さは \(2\) 倍なのに、運動エネルギーは \(9.0\) から \(36\) へ、\(4\) 倍 になっている。\(v\) が \(2\) 乗で効くので、速さが \(2\) 倍なら \(2^2 = 4\) 倍、\(3\) 倍なら \(9\) 倍だ。スピードが少し増えるだけでエネルギーが急に大きくなる、と実感できる。
位置エネルギー \(mgh\) の値は「どこを高さ \(0\) と決めたか」で変わる。質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体が床から \(3.0\,\text{m}\) の高さにあるとき、床を基準にすれば \(h = 3.0\,\text{m}\) なので
$$
\begin{aligned}
U_1 &= 2.0 \times 9.8 \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 58.8\,\text{J}
\end{aligned}
$$
となる(有効数字 \(2\) 桁で \(59\,\text{J}\))。ところが、床から \(1.0\,\text{m}\) のテーブル上面を基準にすると \(h = 2.0\,\text{m}\) だから
$$
\begin{aligned}
U_2 &= 2.0 \times 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 39.2\,\text{J}
\end{aligned}
$$
になる。同じ物体なのに値が違う——これは矛盾ではない。関係式で意味を持つのは位置エネルギーの 「差」 であり、途中で基準を変えないかぎり最終的な答えは一致するからだ。だから最初に「基準はここ」と宣言してしまえば、それで済む。
弾性エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) にも、伸び \(x\) が \(2\) 乗で入っている。ばね定数 \(k = 200\,\text{N}/\text{m}\) のばねを \(0.10\,\text{m}\) 伸ばしたときと、その \(2\) 倍の \(0.20\,\text{m}\) 伸ばしたときを比べよう。
$$
\begin{aligned}
U_1 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 200 \times 0.10^2 \\[2.0ex]
&= 1.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
U_2 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 200 \times 0.20^2 \\[2.0ex]
&= 4.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
伸びは \(2\) 倍なのに、蓄えられる弾性エネルギーは \(4\) 倍。ばねを「もう少しだけ」引くたびに必要な仕事が急に増える——伸ばすほど手が重くなる、あの感覚と一致する。運動エネルギーとまったく同じ構造(\(2\) 乗)がここにも出ていることに気づけたら、\(3\) 種のエネルギーはばらばらの公式ではなくなる。
🔗 関連単元
\(3\) 種類のエネルギーは、どれも既習の力から生まれている。弾性エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) のばね定数 \(k\) は、第8講「弾性力・張力・摩擦力」で扱ったばねの力 \(F = kx\) の \(k\) と同じものだ。重力による位置エネルギー \(mgh\) の \(g\) は、第6講「落体の運動」で使った重力加速度そのものである。
つまり新しい記号が \(3\) つ増えたのではなく、すでに知っている力に「貯金」という読み方を足しただけだ。式が覚えられないと感じたら、暗記量を増やす前に、その \(k\) や \(g\) がどの講から来たものかを言えるか確かめてほしい。
🩺 要点整理
\(3\) 種類のエネルギーは「式・文字の意味・符号」の \(3\) 点セットで押さえる。
単位はいずれも \(\text{J}\)(ジュール)で共通だ。だから \(3\) つを足して「いまの残高」としてひとまとめに扱える——この点が、次の節の関係式を立てる土台になる。
🧠 見ずに思い出そう
ここも画面を閉じて確かめよう。① \(3\) 種類のエネルギーを、式のかたちまで含めて \(3\) つ挙げられるか。② そのうち「常にプラス」なのはどれとどれで、なぜそう言えるのかを、式のどこを指さして説明するか。
①だけ言えて②が出てこないなら、\(3\) つの式を並べて覚えただけの状態である。「\(v^2\) と \(x^2\) は \(2\) 乗だから、中身がマイナスでも \(2\) 乗した時点でプラスになる。\(mgh\) の \(h\) だけは \(2\) 乗されていないから、基準より下ならマイナスのまま残る」——ここまで言えて初めて、符号を \(1\) つずつ覚え直す必要がなくなる。①で詰まったのは式そのものの記憶、②で詰まったのは \(2\) 乗の意味づけ。
前者なら \(3\) 種類を並べたこの節の冒頭へ、後者は位置エネルギーの符号を説明した箇所へ戻ればよい。
- 赤いおもりを上下にドラッグして離すと、単振動が始まります。
- 右側のグラフで、運動エネルギー \(K\)、重力による位置エネルギー \(U_g\)、弾性力による位置エネルギー \(U_e\) が互いに移り変わりながらも、その合計(力学的エネルギー \(E\))が常に一定に保たれる様子を観察しましょう。
\(K = \frac{1}{2}mv^2\) , \(\quad U_g = mgh\) , \(\quad U_e = \frac{1}{2}kx^2\)
仕事とエネルギーの関係式
物体の運動を考える上で最も重要となるのが、仕事とエネルギーの関係式である。
$$
\text{はじめのエネルギー} + \text{外力のした仕事} = \text{あとのエネルギー}
$$
これは、第12講で学んだ「した仕事の分だけエネルギーが変わる」を式にしたものだ。日常の買い物に例えるとわかりやすい。「はじめの財布の中身(エネルギー)」 に、「もらったお小遣い(外力からされたプラスの仕事)」を足すか、あるいは「使ったお金(外力からされたマイナスの仕事)」を引けば、「あとの財布の中身(エネルギー)」 になる、という当たり前の関係を表している。
この式を立てる際、ここだけは外せないルールが一つある。それは、「外力のした仕事」の中に、「重力」と「弾性力(ばねの力)」の仕事は含めない ということである。
なぜなら、重力や弾性力がする仕事は、すでに「位置エネルギー」や「弾性エネルギー」として、式の左辺や右辺の「エネルギー」の項目に組み込まれているからだ。ここで仕事としてもカウントしてしまうと、二重に計算することになってしまう ため注意が必要である。
なぜ重力と弾性力だけが特別扱いされるのか。ここも「そういう決まり」で終わらせないでほしい。理由は、この \(2\) つの力が 位置だけで仕事が決まる力 だからだ。
重力の仕事は「どれだけ高さが変わったか」だけで決まり、途中の経路によらない。弾性力の仕事も「自然の長さからのずれがいくつからいくつになったか」だけで決まる。位置だけで決まるなら、その仕事は最初から「位置の関数」=位置エネルギーとして先払いで書いておける。先払いで書いてあるものを、あとから仕事欄にもう一度書くのが二重計上である。
逆に、手で引く力や摩擦力は「どう動かしたか」で仕事が変わるので、先払いにできない。だから外力の仕事として、そのつど書く必要がある。
そこで、立式の手順を \(3\) 手に固定してしまおう。
ステップ1:高さの基準を決めて図に書き込む。
次に ステップ2:はじめとあとで「運動E・位置E・弾性E」の \(3\) 項を、\(0\) のものも \(0\) と書き出す。
最後に ステップ3:残った力を \(1\) つずつ見て、『この力の仕事は、もう位置Eか弾性Eに入っていないか?』を日本語で確かめてから外力の仕事に足す。
この順で手が動くかぎり、力の数が増えても崩れない。書き終えたら、直後の経過観察として「いま外力の仕事に書いたのは、どの力とどの力か」を口に出して言えるか確かめてほしい。言えないまま数値を代入し始めたときが、いちばん崩れやすい。
ここでつまずく生徒の典型症状は 「関係式を立てるとき、位置エネルギーや弾性エネルギーも書いたのに、さらに重力やばねの力の仕事まで『外力のした仕事』に足してしまう」 ことだ。診断すると、原因は「重力の仕事=位置エネルギーの変化」「弾性力の仕事=弾性エネルギーの変化」だという対応関係が腑に落ちていない点にある。同じ仕事を、エネルギーの項と仕事の項の \(2\) 回数えてしまうから、答えが合わなくなる。
処方箋はシンプルだ——立式の前に、ある力を『外力の仕事』に入れる前に、必ず「この力の仕事は、もう位置Eや弾性Eに入っていないか?」を日本語で確認する。重力なら位置Eに、弾性力なら弾性Eに、すでに含まれている。
だから外力の仕事として書くのは、手で引く力・摩擦力・押す力など、位置E・弾性Eに含まれない力だけ。「もう貯金に計上した入金を、また入金欄に書かない」と読み替えれば、二重計上は起きない。
よくあるつまずき
症状:摩擦のある面の問題で、動摩擦力の大きさ \(\mu N\) を正しく求められたのに、それを「外力のした仕事」にプラスのまま足してしまい、答えが本来より大きく出てしまう。垂直抗力についても、大きさ \(N\) を求めた勢いで仕事の項に書き込んでしまう。
診断:原因は「仕事=力 × 距離」というかけ算だけが手に残り、第12講「仕事」で学んだ符号の判定——移動を手伝う力はプラス、邪魔する力はマイナス、移動と垂直な力は \(0\)——が立式の手順から抜け落ちていることにある。動摩擦力は必ず移動と逆向きにはたらくので、その仕事は必ずマイナス。垂直抗力は移動と垂直なので必ず \(0\) だ。大きさを求める作業と、符号を決める作業は別の工程である。
処方箋:外力の仕事を書くときは、力の大きさを求めた直後に「この力は移動を手伝ったか、邪魔したか、それとも垂直か」を必ず一言で口に出す。邪魔する向きなら、距離の側を \((-l)\) のように括弧つきのマイナスで書き込んでから計算に入ること。符号を後から付け足そうとするから落ちる。
🩺 要点整理
関係式は、次の順序で機械的に埋めれば必ず立つ。
「\(3\) 点セットを書く → 外力の仕事を重力・弾性力を除いて足す → 等号で結ぶ」。この順序を口に出しながら書けば、二重計上も符号落ちも起きない。
🧠 見ずに思い出そう
最後にもう一度画面を閉じて試そう。① 関係式の左辺と右辺の「エネルギー」を、それぞれ何の合計として書くか。② 「外力のした仕事」に入れてよい力と、入れてはいけない力を分け、その理由まで言えるか。
①で詰まったなら、\(3\) 点セットで書く型がまだ手に入っていない。②で「重力と弾性力はダメ」と結論だけ言えて理由が出てこないなら、それは暗記の状態である。「重力の仕事はすでに位置Eとして、弾性力の仕事はすでに弾性Eとして数えてある。
だからもう一度足すと、同じ入金を \(2\) 回書くことになる」——ここまで降りられて初めて、次の第14講「力学的エネルギー保存則」にも同じ考え方のまま入っていける。①で詰まったのは立式の型、②で詰まったのは二重計上の理由づけ。前者ならこの節の関係式の説明へ、後者は真上の診断の箇所へ戻ること。詰まり方によって戻る場所が違うと分かること自体が、自分を診断できている証拠だ。
- スライダーで力の大きさ \(F\) と力の向き(角度 \(\theta\))を設定します。
- 手(✋)のマークを左右にドラッグして、移動距離 \(x\) を変えてみましょう。
- 「スタート」ボタンを押すと、物体が加速します。移動方向(水平)と同じ向きの力の成分 \(F \cos \theta\) だけが仕事をします。
練習問題の解説
ここからは、関係式「はじめのエネルギー + 外力のした仕事 = あとのエネルギー」を実際の図で回していく。各問とも、まず自分で 「外力の仕事に入れてよいのはどの力か(重力・弾性力は除く)」 を口に出してから、解説と照合してほしい。
このとき照合するのは、答えの数値ではない。基準をどこに置き、どの力を外力の仕事に入れたか という判断のほうである。答えが合っていても、判断の順番が違っていたなら、力が \(1\) つ増えただけの次の問題で必ず崩れる。
逆に、順番さえそろっていれば、かけ算や約分のつまずきは処方箋を出しやすい軽症だ。ここを毎回そろえていく作業が、公式の在庫を増やさずに 考えて解ける物理 へ進む最短ルートになる。
① 運動エネルギーと仕事の関係(問1)
問題
速さ \(2.0\,\text{m}/\text{s}\) で進む質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体に、運動の向きに \(6.0\,\text{N}\) の力を加え続け、\(10\,\text{m}\) 移動させた。このとき、物体の速さは何 \(\text{m}/\text{s}\) になるか。
解説
「はじめのエネルギー + 外力のした仕事 = あとのエネルギー」の関係式を立てる。
エネルギーは「運動エネルギー + 重力による位置エネルギー + 弾性エネルギー」の \(3\) つの合計で考える。今回は水平面上の運動であり、高さの変化やばねはないため、位置エネルギーと弾性エネルギーは常に \(0\) である。
はじめのエネルギーは、速さ \(2.0\,\text{m}/\text{s}\) の運動エネルギーのみである。
外力のした仕事は、進行方向と同じ向きに \(6.0\,\text{N}\) の力で \(10\,\text{m}\) 移動させたので、プラスの仕事となる。
あとのエネルギーは、求める速さを \(v\) としたときの運動エネルギーのみである。
これらを式にまとめると以下のようになる。
$$
\begin{aligned}
\left(\displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 2.0^2 + 0 + 0\right) + 6.0 \times 10 &= \left(\displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times v^2 + 0 + 0\right) \\[2.0ex]
4.0 + 60 &= v^2 \\[2.0ex]
64 &= v^2
\end{aligned}
$$
速さ \(v\) はプラスの値であるため、\(v > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
v &= 8.0\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
したがって、答えは \(8.0\,\text{m}/\text{s}\) となる。
\(v = 8.0\,\text{m}/\text{s}\)
② 重力による位置エネルギーと仕事の関係(問2)
問題
傾角 \(\theta\) のあらい斜面上を、物体が最大傾斜線に沿って初速 \(0\) で滑り落ちる。この物体が斜面上を距離 \(l\) だけすべり落ちた瞬間の速さはいくらか。ただし、物体の質量 \(m\)、重力加速度の大きさを \(g\)、物体と斜面の動摩擦係数を \(\mu\) とする。
解説
斜面上の運動であるため、高さの変化を伴う。計算を簡単にするため、一番低い位置(あとの位置)を高さの基準(高さ \(0\)) に設定する。
すると、はじめの位置は、直角三角形の辺の比を用いて、基準から \(l\sin\theta\) だけ高い位置にあることがわかる。
物体にはたらく力は、重力 \(mg\)、垂直抗力 \(N\)、動摩擦力 \(\mu N\) である。斜面に垂直な方向の力のつりあいより、\(N = mg\cos\theta\) となる。
関係式を立てる際、重力の仕事は位置エネルギーとして処理するため「外力のした仕事」には含めない。垂直抗力は移動方向と垂直なので仕事は \(0\) である。動摩擦力は進行方向と逆向きにはたらくため、マイナスの仕事をする。
求める速さを \(v\) として関係式を立てる。
$$
\begin{aligned}
(0 + mgl\sin\theta + 0) + \mu N \times (-l) &= \left(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 + 0 + 0\right) \\[2.0ex]
mgl\sin\theta – \mu (mg\cos\theta) l &= \displaystyle\frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
両辺の \(m\) を約分し、両辺を \(2\) 倍して整理する。
$$
\begin{aligned}
2gl\sin\theta – 2\mu gl\cos\theta &= v^2 \\[2.0ex]
2gl(\sin\theta – \mu\cos\theta) &= v^2
\end{aligned}
$$
\(v > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{2gl(\sin\theta – \mu\cos\theta)}
\end{aligned}
$$
これが求める速さとなる。
\(v = \sqrt{2gl(\sin\theta – \mu\cos\theta)}\)
③ 弾性エネルギーと仕事の関係(問3)
問題
あらい水平面上に質量 \(m\) の物体を置き、壁との間をばね定数 \(k\) のばねでつないだ。ばねが自然の長さの状態から、手で水平に物体に力を加え、ばねの伸びが \(x\) になるまでゆっくりと引き伸ばした。手によってなされた仕事はいくらか。面と物体の間の動摩擦係数を \(\mu’\)、重力加速度の大きさを \(g\) とする。
解説
「ゆっくりと引き伸ばした」という表現は、常に速さがほぼ \(0\)(運動エネルギーが \(0\))のまま移動させた ことを意味する。
物体にはたらく力は、重力 \(mg\)、垂直抗力 \(N\)、手が引く力 \(T\)、動摩擦力 \(\mu’ N\)、弾性力 \(kx\) である。鉛直方向の力のつりあいより、\(N = mg\) となる。
関係式において、弾性力の仕事は弾性エネルギーとして処理するため「外力のした仕事」には含めない。手が引く力 \(T\) はプラスの仕事、動摩擦力はマイナスの仕事をする。
手がした仕事を \(W\)(\(= Tx\))として関係式を立てる。
$$
\begin{aligned}
(0 + 0 + 0) + (W + \mu’ N \times (-x)) &= \left(0 + 0 + \displaystyle\frac{1}{2}kx^2\right) \\[2.0ex]
W – \mu’ (mg) x &= \displaystyle\frac{1}{2}kx^2 \\[2.0ex]
W &= \displaystyle\frac{1}{2}kx^2 + \mu’mgx
\end{aligned}
$$
したがって、手によってなされた仕事は \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2 + \mu’mgx\) となる。
\(W = \displaystyle\frac{1}{2}kx^2 + \mu’mgx\)
🔗 関連単元
本講の関係式「はじめのエネルギー + 外力のした仕事 = あとのエネルギー」は、第12講「仕事」で身につけた \(W = Fx\) と仕事の符号(手伝う+/邪魔する−/垂直0) がそのまま土台になっている。その仕事を「エネルギーの出し入れ」として読み替えたのが本講だ。
そして本講で学んだ \(3\) 種のエネルギーは、次の第14講「力学的エネルギー保存則」で、外力の仕事が \(0\) のとき \(K + U\) が一定に保たれる という強力な法則へ発展する。本講で「重力・弾性力は外力に含めない」が手になじめば、保存則は半分解けたようなものだ。
【重要公式まとめ】
動いている物体が持つ運動エネルギーは、質量 \(m\) と速さ \(v\) だけで決まる。
$$
\displaystyle\frac{1}{2}mv^2
$$
(\(m\):質量 \([\text{kg}]\)、\(v\):速さ \([\text{m}/\text{s}]\))
図: \(m\)=物体の質量、\(v\)=その物体の速さ。\(v\) は向きを持たない「速さ」なので、どちら向きに動いても値はプラス
基準からの高さ \(h\) にある物体が持つ、重力による位置エネルギーは次式で表される。
$$
mgh
$$
(\(m\):質量 \([\text{kg}]\)、\(g\):重力加速度 \([\text{m}/\text{s}^2]\)、\(h\):基準からの高さ \([\text{m}]\))
図: \(h\)=自分で決めた基準からの高さ。基準より下なら \(h\) は負になり、位置エネルギーも負になる
自然の長さから \(x\) だけ変形したばねが持つ弾性エネルギーは次式で表される。
$$
\displaystyle\frac{1}{2}kx^2
$$
(\(k\):ばね定数 \([\text{N}/\text{m}]\)、\(x\):自然の長さからの伸び・縮み \([\text{m}]\))
図: \(x\)=自然の長さからのずれ。式に \(x^2\) が入るので、伸ばしても縮めても値はプラスになる
力学的エネルギーとは、運動エネルギー・重力による位置エネルギー・弾性エネルギーの合計のことである。
$$
\displaystyle\frac{1}{2}mv^2 + mgh + \displaystyle\frac{1}{2}kx^2
$$
(力学的エネルギーのうち、その場面に該当しない項は \(0\) と書く。水平面上でばねがなければ、位置Eと弾性Eはどちらも \(0\))
図: 蓄え方が「速さ・高さ・伸び」の \(3\) 通りしかないので、力学的エネルギーはこの \(3\) 項の合計で書ける
仕事とエネルギーの関係式は、はじめの状態とあとの状態を、外力のした仕事でつなぐ。
$$
\text{はじめのエネルギー} + \text{外力のした仕事} = \text{あとのエネルギー}
$$
(※外力のした仕事に、重力と弾性力の仕事は含めない)
図: 両端の箱が \(3\) 項の合計=残高。矢印に書けるのは、位置Eにも弾性Eにも計上されていない力(手・摩擦・押す力)の仕事だけ
【記事限定 演習問題】
動画と板書で終わらせず、ここで実際に手を動かして「外力の仕事に入れてよい力はどれか(重力・弾性力は除く)」を自分で判断する工程を入れる。エネルギーの関係式が立てられるようになるかは、解説を眺めた回数ではなく、自分の手で「3種のエネルギー → 外力の仕事 → 等号で結ぶ」を書き出した回数 で決まる。各問、まず解答を見ずに立式の方針を口に出してから、折りたたみを開いて思考プロセスを照合してほしい。
詰まった問題こそ、あなたの「思考のクセ」が見つかった場所=伸びしろであり、後日もう一度解き直す経過観察の対象になる。なお、特に断りがなければ重力加速度は \(g = 9.8\,\text{m}/\text{s}^2\)、\(\sin 30^\circ = 0.50\)、\(\cos 30^\circ \approx 0.87\) とする。
質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体が、速さ \(4.0\,\text{m}/\text{s}\) で動いている。この物体の運動エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
運動エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)。
$$
\begin{aligned}
K &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 4.0^2 \\[2.0ex]
&= 16\,\text{J}
\end{aligned}
$$
\(v\) を \(2\) 乗してから \(\displaystyle\frac{1}{2}m\) をかける、という順番を間違えなかったか。
質量 \(3.0\,\text{kg}\) の物体が、速さ \(2.0\,\text{m}/\text{s}\) で動いている。この物体の運動エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
$$
\begin{aligned}
K &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 3.0 \times 2.0^2 \\[2.0ex]
&= 6.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
運動エネルギーの単位 \(\text{J}\)(ジュール)をつけ忘れなかったか。
ある物体の速さが \(2\) 倍になった。質量は変わらないとして、運動エネルギーは何倍になるか。解答と思考プロセスを見る
運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) は \(v\) が \(2\) 乗で入る。速さが \(2\) 倍なら、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{K’}{K} &= \displaystyle\frac{v’^2}{v^2} \\[2.0ex]
&= 2^2 \\[2.0ex]
&= 4
\end{aligned}
$$
で \(4\) 倍。「速さに比例(\(2\) 倍)」と早とちりしなかったか。\(2\) 乗だから \(4\) 倍。
質量 \(3.0\,\text{kg}\) の物体が、床から \(2.5\,\text{m}\) の高さにある。床を基準(高さ \(0\))としたとき、この物体の重力による位置エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
位置エネルギーは \(mgh\)。基準が床で、物体は基準より上にあるので \(h = +2.5\,\text{m}\)。
$$
\begin{aligned}
U &= 3.0 \times 9.8 \times 2.5 \\[2.0ex]
&= 73.5\,\text{J}
\end{aligned}
$$
有効数字 \(2\) 桁なら \(74\,\text{J}\)。基準をどこに置いたかを自分で宣言できたか。
④と同じ物体(床から \(2.5\,\text{m}\))について、今度は床から \(1.5\,\text{m}\) の高さのテーブル上面を基準(高さ \(0\))とした。このときの位置エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
基準がテーブル上面(床から \(1.5\,\text{m}\))なので、物体の基準からの高さは \(h = 2.5 – 1.5 = 1.0\,\text{m}\)。
$$
\begin{aligned}
U &= 3.0 \times 9.8 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 29.4\,\text{J}
\end{aligned}
$$
有効数字 \(2\) 桁なら \(29\,\text{J}\)。同じ物体でも 基準の取り方で位置エネルギーの値が変わる と確認できたか。
地面を基準(高さ \(0\))としたとき、質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体が地面より \(2.0\,\text{m}\) 低い井戸の底にある。この物体の重力による位置エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
基準より 下 にあるので、高さは \(h = -2.0\,\text{m}\) として扱う。
$$
\begin{aligned}
U &= 2.0 \times 9.8 \times (-2.0) \\[2.0ex]
&= -39.2\,\text{J}
\end{aligned}
$$
有効数字 \(2\) 桁なら \(-39\,\text{J}\)。「位置エネルギーは基準より下ならマイナス」を、運動E・弾性Eが常にプラスなのと区別できたか。
ばね定数 \(k = 150\,\text{N}/\text{m}\) のばねを、自然の長さから \(0.20\,\text{m}\) だけ伸ばした。このときの弾性エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
弾性エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)。
$$
\begin{aligned}
U &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 150 \times 0.20^2 \\[2.0ex]
&= 3.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
\(x\) を \(2\) 乗(\(0.20^2 = 0.040\))してからかけたか。\(0.20\) のまま入れて \(15\,\text{J}\) としなかったか。
⑦と同じばね(\(k = 150\,\text{N}/\text{m}\))を、今度は自然の長さから \(0.20\,\text{m}\) だけ「縮めた」。このときの弾性エネルギーを求めよ。解答と思考プロセスを見る
縮みは \(x = -0.20\,\text{m}\) と読めるが、式に \(x^2\) が入るので符号は消える。
$$
\begin{aligned}
U &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 150 \times (-0.20)^2 \\[2.0ex]
&= 3.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
⑦と同じ \(3.0\,\text{J}\)。「弾性Eは伸びても縮んでも常にプラス」を \(x^2\) から説明できたか。
なめらかな水平面上で、静止していた質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体に、運動の向きに \(5.0\,\text{N}\) の力を加え、\(4.0\,\text{m}\) 動かした。動かしたあとの速さ \(v\) を求めよ。解答と思考プロセスを見る
水平面・ばねなしなので位置E・弾性Eは \(0\)。はじめの運動Eは \(0\)(静止)。
外力の仕事 \(= 5.0 \times 4.0 = 20\,\text{J}\)。
$$
\begin{aligned}
0 + 5.0 \times 4.0 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times v^2 \\[2.0ex]
20 &= v^2 \\[2.0ex]
v &= 2\sqrt{5} \approx 4.5\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
「はじめのE + 外力の仕事 = あとのE」の \(3\) 点を埋められたか。
なめらかな水平面上を速さ \(3.0\,\text{m}/\text{s}\) で進む質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体に、運動の向きに \(7.0\,\text{N}\) の力を加え、\(4.0\,\text{m}\) 動かした。動かしたあとの速さ \(v\) を求めよ。解答と思考プロセスを見る
はじめの運動E \(= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times 3.0^2 = 9.0\,\text{J}\)。外力の仕事 \(= 7.0 \times 4.0 = 28\,\text{J}\)。
$$
\begin{aligned}
9.0 + 28 &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times v^2 \\[2.0ex]
37 &= v^2 \\[2.0ex]
v &\approx 6.1\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
「はじめのE」に初速の運動Eを入れ忘れなかったか。
鉛直方向の運動でエネルギーの関係式を立てるとき、重力がする仕事を「外力のした仕事」の項に書き込んでよいか。理由とともに答えよ。解答と思考プロセスを見る
書き込んではいけない。重力がする仕事は、すでに「重力による位置エネルギー \(mgh\)」の変化としてエネルギーの項に組み込まれている。
外力の仕事にも入れると 二重計上になる。「もう位置Eに計上した入金を、また入金欄に書かない」と読み替えられたか。
ばねにつながれた物体のエネルギーの関係式を立てるとき、弾性力(ばねの力)がする仕事を「外力のした仕事」の項に書き込んでよいか。理由とともに答えよ。解答と思考プロセスを見る
書き込んではいけない。弾性力がする仕事は、すでに「弾性エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)」の変化としてエネルギーの項に入っている。
外力の仕事にも入れると二重計上になる。外力の仕事に入れてよいのは、手で引く力・摩擦力など 位置E・弾性Eに含まれない力だけ だと判定できたか。
質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体を、地面から \(5.0\,\text{m}\) の高さで静かに離した。空気抵抗は無視する。地面に達する直前の速さ \(v\) を、エネルギーの関係式で求めよ(地面を高さの基準とする)。解答と思考プロセスを見る
外力(手・摩擦・空気抵抗)の仕事はなし。
重力の仕事は位置Eで処理するので外力に入れない。はじめは高さ \(5.0\,\text{m}\) で速さ \(0\)、あとは高さ \(0\) で速さ \(v\)。
$$
\begin{aligned}
(0 + 2.0 \times 9.8 \times 5.0) + 0 &= \left(\displaystyle\frac{1}{2} \times 2.0 \times v^2 + 0\right) \\[2.0ex]
98 &= v^2 \\[2.0ex]
v &\approx 9.9\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
位置Eが運動Eに移った、と式で追えたか。
傾角 \(30^\circ\) のあらい斜面上を、質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体が初速 \(0\) で斜面に沿って \(4.0\,\text{m}\) 滑り落ちた。動摩擦係数を \(\mu = 0.20\) とする。滑り落ちた瞬間の速さ \(v\) を求めよ。解答と思考プロセスを見る
最下点を基準。
はじめの高さ \(= 4.0 \times \sin 30^\circ = 2.0\,\text{m}\)。垂直抗力 \(N = mg\cos 30^\circ\)、動摩擦力の仕事 \(= \mu N \times (-4.0)\)(外力の仕事)。重力は位置Eで処理。
$$
\begin{aligned}
(0 + mg \times 2.0) + \mu mg\cos 30^\circ \times (-4.0) &= \displaystyle\frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
9.8 \times 2.0 \times 2.0 – 0.20 \times 9.8 \times 0.87 \times 4.0 \times 2.0 &= v^2 \\[2.0ex]
39.2 – 13.6 &\approx v^2 \\[2.0ex]
v &\approx 5.1\,\text{m}/\text{s}
\end{aligned}
$$
(両辺の \(m = 2.0\) を約分し \(2\) 倍した形。)重力を外力の仕事に二重計上しなかったか。
傾角 \(\theta\) のあらい斜面上を、質量 \(m\) の物体が初速 \(0\) で斜面に沿って距離 \(l\) だけ滑り落ちた。動摩擦係数を \(\mu\)、重力加速度を \(g\) とする。滑り落ちた瞬間の速さ \(v\) を文字で表せ。解答と思考プロセスを見る
練習問題②と同じ立式。
最下点を基準、はじめの高さ \(l\sin\theta\)、外力の仕事は動摩擦力 \(\mu mg\cos\theta \times (-l)\)。
$$
\begin{aligned}
mgl\sin\theta – \mu mg\cos\theta \cdot l &= \displaystyle\frac{1}{2}mv^2 \\[2.0ex]
v &= \sqrt{2gl(\sin\theta – \mu\cos\theta)}
\end{aligned}
$$
数値問題⑭と同じ手順を、文字のまま最後まで通せたか。
なめらかな水平面上で、自然の長さのばね(ばね定数 \(k = 100\,\text{N}/\text{m}\))を、手でゆっくり \(0.20\,\text{m}\) だけ押し縮めた。摩擦はないものとする。手がした仕事 \(W\) を求めよ。解答と思考プロセスを見る
「ゆっくり」なので運動Eは \(0\)。
摩擦なし。弾性力は弾性Eで処理(外力に入れない)。はじめの弾性E \(0\)、あとの弾性E \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)。
$$
\begin{aligned}
0 + W &= \displaystyle\frac{1}{2} \times 100 \times 0.20^2 \\[2.0ex]
W &= 2.0\,\text{J}
\end{aligned}
$$
手がした仕事がそのまま弾性Eの貯金になった、と読めたか。
あらい水平面上の質量 \(m\) の物体を、ばね定数 \(k\) のばねにつなぎ、自然の長さからゆっくり \(x\) だけ伸ばした。動摩擦係数 \(\mu’\)、重力加速度 \(g\) とする。手がした仕事 \(W\) を文字で表せ。解答と思考プロセスを見る
練習問題③と同じ。
鉛直のつり合いで \(N = mg\)、動摩擦力 \(\mu’ mg\)。弾性力は弾性Eで処理。手の力と摩擦が外力の仕事。
$$
\begin{aligned}
0 + (W + \mu’ mg \times (-x)) &= \displaystyle\frac{1}{2}kx^2 \\[2.0ex]
W &= \displaystyle\frac{1}{2}kx^2 + \mu’mgx
\end{aligned}
$$
弾性力を外力の仕事に入れず、摩擦と手だけを入れられたか。
エネルギーの単位 \(\text{J}\)(ジュール)が、第12講で学んだ「仕事」の単位と同じであることを、関係式の意味から説明せよ。解答と思考プロセスを見る
関係式は「エネルギー + 仕事 = エネルギー」。足し算・引き算は同じ単位どうしでしかできない から、エネルギーと仕事は同じ単位 \(\text{J}\)(= \(\text{N}\cdot\text{m}\))でなければならない。運動E \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) も \(\text{kg}\cdot(\text{m}/\text{s})^2 = \text{N}\cdot\text{m} = \text{J}\) になる。
仕事とエネルギーが同じ通貨だと説明できたか。
次の \(3\) つの量を「常にプラス」と「符号が変わりうる」に分け、符号が変わるものはその理由を述べよ。(ア) 運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) (イ) 重力による位置エネルギー \(mgh\) (ウ) 弾性エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)。解答と思考プロセスを見る
常にプラス=(ア) 運動E(\(v^2\) が入る)と (ウ) 弾性E(\(x^2\) が入る)。符号が変わりうる=(イ) 位置E。
理由は、高さ \(h\) が基準より上ならプラス、基準より下(地下など)ならマイナスになるから。\(2\) 乗が入る量は常にプラス、と機械的に見抜けたか。
傾角 \(30^\circ\) のあらい斜面に沿って、質量 \(2.0\,\text{kg}\) の物体を、斜面上向きの一定の力で初速 \(0\)・終速 \(0\) のままゆっくり \(3.0\,\text{m}\) 引き上げた。動摩擦係数を \(\mu = 0.20\) とする。手(引く力)がした仕事 \(W\) を求めよ。解答と思考プロセスを見る
「ゆっくり(初速 \(0\)・終速 \(0\))」なので運動Eの変化は \(0\)。
重力は位置Eで処理。外力の仕事=引く力の仕事 \(W\) + 動摩擦力の仕事。上がった高さ \(= 3.0 \times \sin 30^\circ = 1.5\,\text{m}\)、垂直抗力 \(N = mg\cos 30^\circ\)、動摩擦力 \(= \mu mg\cos 30^\circ\)(移動と逆向き)。
$$
\begin{aligned}
0 + \left(W + \mu mg\cos 30^\circ \times (-3.0)\right) &= mg \times 1.5
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
W &= mg \times 1.5 + \mu mg\cos 30^\circ \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 9.8 \times 1.5 + 0.20 \times 2.0 \times 9.8 \times 0.87 \times 3.0 \\[2.0ex]
&\approx 29.4 + 10.2 \\[2.0ex]
&\approx 40\,\text{J}
\end{aligned}
$$
位置Eの増加分(重力に逆らう分)と摩擦で奪われる分の両方を、手が補う、と \(2\) 項に分けて立式できたか。ここまでできれば、外力の仕事に重力・弾性力を混ぜない判断軸が身についている。
よくあるつまずき
症状:同じ物体なのに、ある人は位置エネルギーを \(+59\,\text{J}\)、別の人は \(-39\,\text{J}\) と答えてしまい、どちらが正しいのか分からなくなる。
診断:原因は「高さの基準(高さ \(0\))を自分で宣言していない」こと。位置エネルギー \(mgh\) の値は、基準をどこに置くかで変わる——基準より上ならプラス、基準より下(地下・井戸の底など)ならマイナスになる。基準を決めずに数値だけ出すから食い違う。一方で、運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) と弾性エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\) は \(2\) 乗が入るため、向きや伸び縮みによらず常にプラスで、基準の影響を受けない。
処方箋:位置エネルギーを書く前に、必ず「高さの基準はここ(例:床/最下点)」と一言で宣言してから \(h\) の符号を決める。運動E・弾性Eは常にプラスと割り切り、符号で迷うのは位置Eだけ、と対象を絞ること。
🩺 要点整理
この講の核心を、ひとことで言えばこうなる。
「3種のEを書く → 外力の仕事は重力・弾性力を除いて足す → 等号で結ぶ」。この流れを毎回声に出せば、立式で迷わない。そしてこの関係式が、次の第14講で「外力の仕事が \(0\) なら \(K + U\) は一定」という力学的エネルギー保存則に発展する。
以下のテキストをコピーして、「まことAI」にそのまま貼り付けてみてください。別の角度からわかりやすく解説してくれます。
タップ(クリック)すると答えが表示されます。
Q1. 運動エネルギーの公式 \(\frac{1}{2}mv^2\) に含まれる \(v\) は「速度(向きがある)」と「速さ(大きさのみ)」のどちらでしょうか?また、運動エネルギーがマイナスになることはありますか?
物体が右に進んでいようと左に進んでいようと、\(v\) は必ずプラスの「速さ」として代入します(仮にマイナスを入れても \(2\) 乗されるのでプラスになります)。運動エネルギーは常に \(0\) 以上の値をとると覚えておきましょう。
Q2. 運動エネルギーや弾性エネルギーと違い、「重力による位置エネルギー」はマイナスの値になることがあります。それは物体がどのような場所にあるときでしょうか?
位置エネルギーは「どこを高さ \(0\) とするか」を自分で決めることができます。基準より上ならプラス、基準より下ならマイナス(\(-mgh\))として計算します。一番低い場所を基準にすると、マイナスが出なくて計算が楽になりますよ。
Q3. 「はじめのエネルギー + 外力のした仕事 = あとのエネルギー」という関係式を立てる際、「外力のした仕事」の中に絶対に含めてはいけない(計算してはいけない)力は、重力ともう一つは何でしょうか?
重力と弾性力の仕事は、すでに「位置エネルギー」と「弾性エネルギー」という形で式に組み込まれています。ここでさらに「仕事」として計算してしまうと二重計算になって答えがズレてしまうので、絶対に除外してください。
「AIを使ったことがない」「どう質問していいか分からない」という方も大丈夫!以下のステップに沿って進めるだけで、まこと先生の分身があなたのスマホに現れ、分かるまでトコトン付き合ってくれます。
まずは、無料のAIを「まこと先生」に変身させるための呪文(プロンプト)をコピーしましょう。以下の「コピーする」ボタンを1回タップしてください。
普段お使いのブラウザやアプリで、無料のAI(ChatGPTやGeminiなど)を開きます。
入力欄に先ほどコピーした文章をそのまま貼り付け、一番下の入力欄を自分の言葉に書き換えてから送信してください。
💡 ヒント:「自分なりに考えたこと」は、「公式に代入しようとしたけど数字が合わなかった」「波のイメージが頭の中で動かない」など、素直な気持ちでOKです!
まことAIから返信が来たら、そこからが本番です!一度の質問で終わらせず、LINEで先生と話すように会話を続けてみましょう。
💬 こんな風に返信してみて!(質問のコツ)
今のりんごの例え話は分かったけど、摩擦力が入るとどうなるの? → 分かった部分と、分からない部分を切り分けて伝える!
ごめん、やっぱりイメージできない!野球の例え話で説明してみて! → 自分の好きなスポーツや趣味に例えてもらう!
要するに、〇〇ってことだよね? → 自分の言葉でまとめ直して、合っているか確認してもらう!
まことAIは絶対に怒りませんし、呆れません。「なんかフワッとしてるな…」と思ったら、無理矢理飲み込まずに「まだ腑に落ちない!」と伝えてください。あなたが「完璧!そういうこと!」とスッキリするまで、様々な角度からアプローチし続けます。
PREMIUM
この問題の「なぜそう解くのか」も
全て言語化されています。
問題集の解答が省略する思考プロセスを、現役講師が1人で書き続けています。650問超の「なぜ」を、1週間無料で読めます。
