未来の得点力へ!物理基礎 問題演習「仕事と仕事率の基本計算」【高校物理対応】

今回の問題

dynamics#41

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「仕事と仕事率の計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 仕事の定義: 物体に力\(F\)を加えて、力の向きに距離\(x\)だけ動かしたときの仕事\(W\)は、\(W = Fx\)で与えられます。
  • 仕事率の定義: 時間\(t\)の間に仕事\(W\)をしたときの仕事率\(P\)は、\(P = \displaystyle\frac{W}{t}\)で与えられます。
  • 重力による位置エネルギー: 質量\(m\)の物体を高さ\(h\)だけ持ち上げたとき、物体が得る位置エネルギーは\(U=mgh\)です。これは、物体を持ち上げるのに必要な仕事に等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、それぞれの設問で「された仕事\(W\)」を計算します。
  2. 次に、その仕事をするのに「かかった時間\(t\)」を確認し、単位を秒に直します。
  3. 最後に、仕事率の定義式 \(P = \displaystyle\frac{W}{t}\) に代入して、仕事率を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
仕事率\(P\)を求めるには、仕事\(W\)とかかった時間\(t\)が必要です。まず、仕事\(W\)を計算します。仕事は「力\(F\) \(\times\) 力の向きに動いた距離\(x\)」で計算できます。問題文には、力\(F=20 \, \text{N}\)、距離\(x=10 \, \text{m}\)と、仕事の計算に必要な情報がすべて与えられています。かかった時間\(t=5.0\)秒も与えられているので、これらを使って仕事率を計算します。この問題では、トランクの質量\(25 \, \text{kg}\)は仕事率の計算には直接関係しない「使わない情報」である点に注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 仕事の公式 \(W=Fx\) を使って、まず仕事の量を計算する。
  • 仕事率の公式 \(P = W/t\) に、計算した仕事\(W\)と時間\(t\)を代入する。
  • 問題文中の不要な情報(この場合は質量)に惑わされない。

具体的な解説と立式
まず、引く力がした仕事\(W\)を計算します。
$$ W = Fx \quad \cdots ① $$
与えられた値は、

  • 力 \(F = 20 \, \text{N}\)
  • 距離 \(x = 10 \, \text{m}\)

次に、この仕事\(W\)をするのにかかった時間\(t\)で割って、仕事率\(P\)を求めます。
$$ P = \frac{W}{t} \quad \cdots ② $$
与えられた時間は、

  • 時間 \(t = 5.0 \, \text{s}\)
使用した物理公式

  • 仕事の定義: \(W = Fx\)
  • 仕事率の定義: \(P = \displaystyle\frac{W}{t}\)
計算過程

まず、式①を用いて仕事\(W\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
W &= 20 \times 10 \\[2.0ex]&= 200 \, \text{[J]}
\end{aligned}
$$
次に、式②を用いて仕事率\(P\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{200}{5.0} \\[2.0ex]&= 40
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると、与えられた数値はすべて2桁なので、答えも \(40 \, \text{W}\) となります。

この設問の平易な説明

仕事率は「1秒あたりの仕事量」です。まず、全部でどれだけの仕事をしたかを計算します。仕事は「力 \(\times\) 距離」なので、\(20 \, \text{N} \times 10 \, \text{m} = 200 \, \text{J}\) です。この \(200 \, \text{J}\) の仕事を \(5.0\) 秒かけて行ったので、1秒あたりでは \(200 \div 5.0 = 40 \, \text{J/s}\) となります。これが仕事率 \(40 \, \text{W}\) です。

結論と吟味

仕事率は \(40 \, \text{W}\) です。単位も正しく、計算も問題ありません。

解答 (1) \(40 \, \text{W}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
揚水ポンプの仕事率を求めます。これも(1)と同様に、まずポンプがした仕事\(W\)を計算し、それをかかった時間\(t\)で割るという手順で進めます。
ポンプがした仕事は、水を高さ\(9.0 \, \text{m}\)まで持ち上げることです。これは、水の重力に逆らってする仕事であり、水の増加した位置エネルギーに等しくなります。したがって、仕事\(W\)は位置エネルギーの公式 \(U=mgh\) を使って計算できます。
かかった時間\(t\)は49分なので、これを秒に変換することを忘れないように注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 物体を持ち上げる仕事は、その物体の位置エネルギーの増加分に等しい (\(W = mgh\))。
  • 時間の単位を「分」から「秒」に変換する。

具体的な解説と立式
まず、ポンプがした仕事\(W\)を計算します。これは、質量\(m\)の水を高さ\(h\)だけ持ち上げたときの、位置エネルギーの増加分に等しいです。
$$ W = mgh \quad \cdots ③ $$
与えられた値は、

  • 水の質量 \(m = 6.0 \times 10^3 \, \text{kg}\)
  • 高さ \(h = 9.0 \, \text{m}\)
  • 重力加速度の大きさ \(g\) は、特に指定がない場合、通常 \(9.8 \, \text{m/s}^2\) を用います。

次に、仕事率\(P\)を計算します。
$$ P = \frac{W}{t} \quad \cdots ④ $$
かかった時間\(t\)は49分なので、秒に直します。
$$ t = 49 \text{ [分]} = 49 \times 60 \text{ [秒]} $$

使用した物理公式

  • 重力による位置エネルギー: \(U = mgh\)
  • 仕事率の定義: \(P = \displaystyle\frac{W}{t}\)
計算過程

まず、式③を用いて仕事\(W\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
W &= mgh \\[2.0ex]&= (6.0 \times 10^3) \times 9.8 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 6000 \times 9.8 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 529200 \, \text{[J]}
\end{aligned}
$$
次に、時間\(t\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
t &= 49 \times 60 \\[2.0ex]&= 2940 \, \text{[s]}
\end{aligned}
$$
最後に、式④を用いて仕事率\(P\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{W}{t} \\[2.0ex]&= \frac{529200}{2940} \\[2.0ex]&= \frac{52920}{294} \\[2.0ex]&= 180
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、\(1.8 \times 10^2 \, \text{W}\) と表すのが適切です。

この設問の平易な説明

まず、ポンプが合計でどれだけの仕事をしたかを計算します。これは、水を持ち上げたことで増加した位置エネルギーと同じです。位置エネルギーは「質量 \(\times\) 重力加速度 \(\times\) 高さ」で計算できます。次に、この仕事を終えるのにかかった時間(49分を秒に直したもの)で割り算すれば、1秒あたりの仕事量、すなわち仕事率が求まります。

結論と吟味

揚水ポンプの仕事率は \(1.8 \times 10^2 \, \text{W}\) です。計算過程も正しく、物理的に妥当な値です。

解答 (2) \(1.8 \times 10^2 \, \text{W}\)

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 仕事率の定義 (\(P=W/t\)) の徹底理解:
    • 核心: この問題のすべては、仕事率が「仕事量を時間で割ったもの」であるという基本定義を理解しているかどうかにかかっています。どのような状況であっても、まず「総仕事量\(W\)はいくらか?」、次に「かかった時間\(t\)はいくらか?」という2つのステップで考え、最後に割り算するという思考プロセスが最も重要です。
    • 理解のポイント: (1)と(2)は異なる状況設定ですが、解法の本質は全く同じです。仕事\(W\)の計算方法が「\(Fx\)」なのか「\(mgh\)」なのかが変わるだけで、仕事率を求める流れは普遍的であることを掴むことが大切です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 速さが与えられている場合: もし「力\(F\)で物体を速さ\(v\)で動かす」という設定であれば、仕事率\(P\)は \(P=Fv\) という公式で直接計算できます。この公式は \(P = W/t = Fx/t = F(x/t) = Fv\) から導かれます。
    • 運動エネルギーの変化を含む場合: 物体を加速させながら動かす場合、された仕事は位置エネルギーの増加だけでなく、運動エネルギーの増加にも使われます。その場合は「エネルギーと仕事の関係」を考慮する必要があります。
    • 電気との融合問題: モーターの仕事率が、消費電力と効率から与えられる問題もあります。例えば「消費電力500W、効率80%のモーター」なら、仕事率は \(500 \times 0.8 = 400 \, \text{W}\) となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 最終的に求めるのは何かを確認: まず「仕事率\(P\)[W]」を求めるのだと意識します。
    2. 仕事\(W\)を計算する方法を探る: 問題文の情報から、仕事\(W\)を計算する方法を考えます。
      • 「力\(F\)と距離\(x\)」が与えられていれば \(\rightarrow\) \(W=Fx\)
      • 「質量\(m\)と高さ\(h\)」が与えられていれば \(\rightarrow\) \(W=mgh\)
    3. 時間\(t\)を確認し、単位を変換: かかった時間\(t\)を見つけ出し、単位が「分」や「時間」であれば、必ず「秒」に直します。
    4. 不要な情報に注意: (1)の質量のように、計算に直接関係ない数値が含まれていることがあります。何が必要な情報かを見極めることが重要です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 仕事\(W\)と仕事率\(P\)の混同:
    • 誤解: 仕事\(W\)を計算した段階で満足してしまい、それを答えとしてしまう。
    • 対策: 単位を意識する癖をつけましょう。仕事の単位はジュール[\(\text{J}\)]、仕事率の単位はワット[\(\text{W}\)]です。問題が[\(\text{W}\)]を求めていることを確認し、時間で割る操作を忘れないようにします。
  • 時間の単位換算ミス:
    • 誤解: (2)で時間を「49分」のまま計算してしまう。
    • 対策: 仕事率の単位[\(\text{W}\)]は[\(\text{J/s}\)](ジュール毎秒)の別名である、と覚えましょう。「毎秒」なので、時間は必ず秒に直す、と機械的に反応できるように訓練します。
  • 重力加速度\(g\)の掛け忘れ:
    • 誤解: (2)で仕事\(W\)を \(mh\) として計算してしまう。
    • 対策: 位置エネルギーの公式は \(mgh\) であり、\(mg\)で「力(重力)」を表していることを意識しましょう。質量\(m\)[\(\text{kg}\)]は力ではない、と明確に区別することが大切です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 仕事の定義式 (\(W=Fx\)):
    • 選定理由: (1)では、物体を動かす「力」と「距離」が直接与えられています。これは仕事の定義そのものの状況設定なので、この公式を選択するのが最も直接的です。
    • 適用根拠: これは物理学における「仕事」という概念の定義式です。力が物体の運動状態を変化させる(あるいは支える)効果を、移動距離にわたって累積したものとして定量化する基本的な考え方です。
  • 仕事と位置エネルギーの関係 (\(W=mgh\)):
    • 選定理由: (2)では、水を「持ち上げる」という、重力に逆らう運動が主題です。重力に逆らって物体を移動させる仕事は、その物体の位置エネルギーの変化量に等しいという関係があるため、\(mgh\)で仕事を計算するのが合理的です。
    • 適用根拠: これはエネルギー保存則の一つの現れです。外から加えた仕事が、系のエネルギー(この場合は位置エネルギー)として蓄えられる、という物理学の基本原則に基づいています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 計算手順を明確にする: 「①仕事Wを計算 \(\rightarrow\) ②時間tを秒に変換 \(\rightarrow\) ③P=W/tで割り算」という手順を頭の中で確立し、それに従って計算を進めると、混乱しにくくなります。
  • 大きな数は指数で扱う: (2)の質量 \(6.0 \times 10^3\) のように、大きな数は指数のまま計算を進めると、ゼロの数を間違えるミスを防げます。
  • 計算しやすい順序を考える: (2)の仕事率の計算では、先に数値を代入して大きな数を出すよりも、文字式のまま \(P = \displaystyle\frac{mgh}{t}\) としてから最後に代入する方が、計算の見通しが良くなる場合があります。
    \(P = \displaystyle\frac{(6.0 \times 10^3) \times 9.8 \times 9.0}{49 \times 60}\) のように一つの分数式にしてから約分を考えると、計算が楽になることもあります。例えば、\(9.8/49 = 0.2\), \(6000/60 = 100\) のように部分的に計算を進めることができます。
  • 有効数字の確認: 計算を終えた後、答えの有効数字が問題文のそれに合っているかを確認する習慣をつけましょう。この問題では、ほとんどの数値が2桁なので、答えも2桁(例: \(180\) は \(1.8 \times 10^2\))で表現するのが適切です。

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