今回の問題
wave09【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の干渉」です。2つの波源から出た波が重なり合うとき、その点が強め合うか弱め合うかを判断し、合成波の振幅を求める問題です。干渉の結果は「2つの波源からの距離の差(経路差)」と「波源の振動状態(同位相か逆位相か)」の2つの要因で決まります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 経路差と干渉条件: 経路差が波長の整数倍か半整数倍かによって、強め合い・弱め合いが決まります。
- 波源の位相: 波源が同位相か逆位相かによって、上記の干渉条件が逆転します。
- 合成波の振幅: 振幅\(A_0\)の波が2つ強め合うと振幅は\(2A_0\)、弱め合うと\(0\)になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 各点(P, Q)について、2つの波源A, Bからの経路差\(\Delta L\)を計算します。
- 計算した経路差\(\Delta L\)が、波長\(\lambda\)の整数倍(\(m\lambda\))か半整数倍(\((m+1/2)\lambda\))かを判定します。
- 各設問の「同位相」または「逆位相」という条件に応じて、強め合うか弱め合うかを判断し、合成波の振幅を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
波源A, Bが同位相の場合の点Pにおける合成波の振幅を求めます。まず点Pの経路差を計算し、それが波長\(\lambda=4\) cmの整数倍か半整数倍かを判定します。波源が同位相なので、「経路差が整数倍なら強め合い、半整数倍なら弱め合い」という基本ルールを適用します。
この設問における重要なポイント
- 同位相の強め合い条件: 経路差 \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 強め合う場合、合成波の振幅は元の振幅の和になる。
具体的な解説と立式
点Pについて、波源Aからの距離は\(r_A = 7\) cm、波源Bからの距離は\(r_B = 15\) cmです。
経路差\(\Delta L_P\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_P &= |r_B – r_A| \\[2.0ex]&= |15 – 7| \\[2.0ex]&= 8 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
この経路差が波長\(\lambda=4\) cmの何倍かを調べます。
$$ \frac{\Delta L_P}{\lambda} = \frac{8}{4} = 2 $$
経路差は\(\Delta L_P = 2\lambda\)となり、波長の整数倍(\(m=2\))です。
波源A, Bは同位相なので、経路差が波長の整数倍のとき、2つの波は強め合います。
元の波の振幅は\(A_0 = 1\) cmなので、合成波の振幅\(A_P\)は、
$$
\begin{aligned}
A_P &= A_0 + A_0 \\[2.0ex]&= 2A_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 同位相の強め合い条件: \(\Delta L = m\lambda\)
$$
\begin{aligned}
A_P &= 2A_0 \\[2.0ex]&= 2 \times 1 \\[2.0ex]&= 2 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
点Pまでの距離の差は \(15 – 7 = 8\) cmです。波長が4 cmなので、距離の差はちょうど波長の2倍(\(8 = 4 \times 2\))です。波源が同じタイミング(同位相)で波を出している場合、距離の差が波長の整数倍だと波は強め合います。元の振幅が1 cmなので、強め合った振幅は \(1+1=2\) cmになります。
点Pは同位相の波源に対して経路差が\(2\lambda\)となるため、強め合いの点(腹)となり、振幅は2 cmです。
問(2)
思考の道筋とポイント
波源A, Bが同位相の場合の点Qにおける合成波の振幅を求めます。点Qの経路差を計算し、それが波長\(\lambda=4\) cmの整数倍か半整数倍かを判定します。波源が同位相なので、「経路差が半整数倍なら弱め合い」というルールを適用します。
この設問における重要なポイント
- 同位相の弱め合い条件: 経路差 \(\Delta L = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合う場合、合成波の振幅は元の振幅の差(の絶対値)になる。
具体的な解説と立式
点Qについて、波源Aからの距離は\(r_A = 7\) cm、波源Bからの距離は\(r_B = 17\) cmです。
経路差\(\Delta L_Q\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_Q &= |r_B – r_A| \\[2.0ex]&= |17 – 7| \\[2.0ex]&= 10 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
この経路差が波長\(\lambda=4\) cmの何倍かを調べます。
$$ \frac{\Delta L_Q}{\lambda} = \frac{10}{4} = 2.5 = 2 + \frac{1}{2} $$
経路差は\(\Delta L_Q = (2 + \frac{1}{2})\lambda\)となり、波長の半整数倍(\(m=2\))です。
波源A, Bは同位相なので、経路差が波長の半整数倍のとき、2つの波は弱め合います。
元の波の振幅は\(A_0 = 1\) cmなので、合成波の振幅\(A_Q\)は、
$$
\begin{aligned}
A_Q &= |A_0 – A_0| \\[2.0ex]&= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 同位相の弱め合い条件: \(\Delta L = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\)
上記の立式により、\(A_Q = 0\) cmと直接計算されます。
点Qまでの距離の差は \(17 – 7 = 10\) cmです。波長が4 cmなので、距離の差は波長の2.5倍(\(10 = 4 \times 2.5\))です。このように距離の差が「波長の(整数+0.5)倍」のとき、同位相の波源からの波は弱め合います。元の振幅が1 cmなので、弱め合った振幅は \(|1-1|=0\) cmになります。
点Qは同位相の波源に対して経路差が\((2+1/2)\lambda\)となるため、弱め合いの点(節)となり、振幅は0 cmです。
問(3)
思考の道筋とポイント
波源A, Bが逆位相の場合の点Pにおける合成波の振幅を求めます。点Pの経路差は(1)と同じく波長の整数倍です。しかし、波源が逆位相なので、干渉条件が同位相の場合と逆転します。「経路差が整数倍なら弱め合い」というルールを適用します。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の弱め合い条件: 経路差 \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 干渉条件が同位相の場合と逆になる。
具体的な解説と立式
点Pの経路差は\(\Delta L_P = 8\) cmであり、\(\Delta L_P = 2\lambda\)です((1)の計算より)。
波源A, Bは逆位相なので、干渉条件が逆転します。経路差が波長の整数倍のとき、2つの波は弱め合います。
したがって、点Pは弱め合いの点(節)となります。
合成波の振幅\(A_P\)は、
$$
\begin{aligned}
A_P &= |A_0 – A_0| \\[2.0ex]&= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 逆位相の弱め合い条件: \(\Delta L = m\lambda\)
上記の立式により、\(A_P = 0\) cmと直接計算されます。
点Pまでの距離の差は8 cmで、波長の2倍です。しかし、今度は波源が逆のタイミング(逆位相)で波を出しています。この場合、ルールが逆になり、距離の差が波長の整数倍だと波は弱め合います。したがって、振幅は \(|1-1|=0\) cmになります。
点Pは逆位相の波源に対して経路差が\(2\lambda\)となるため、弱め合いの点(節)となり、振幅は0 cmです。
問(4)
思考の道筋とポイント
波源A, Bが逆位相の場合の点Qにおける合成波の振幅を求めます。点Qの経路差は(2)と同じく波長の半整数倍です。波源が逆位相なので、干渉条件が逆転し、「経路差が半整数倍なら強め合い」というルールを適用します。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の強め合い条件: 経路差 \(\Delta L = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 干渉条件が同位相の場合と逆になる。
具体的な解説と立式
点Qの経路差は\(\Delta L_Q = 10\) cmであり、\(\Delta L_Q = (2 + \frac{1}{2})\lambda\)です((2)の計算より)。
波源A, Bは逆位相なので、干渉条件が逆転します。経路差が波長の半整数倍のとき、2つの波は強め合います。
したがって、点Qは強め合いの点(腹)となります。
合成波の振幅\(A_Q\)は、
$$
\begin{aligned}
A_Q &= A_0 + A_0 \\[2.0ex]&= 2A_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 逆位相の強め合い条件: \(\Delta L = \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\)
$$
\begin{aligned}
A_Q &= 2A_0 \\[2.0ex]&= 2 \times 1 \\[2.0ex]&= 2 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
点Qまでの距離の差は10 cmで、波長の2.5倍です。波源が逆位相の場合、ルールが逆になり、距離の差が「波長の(整数+0.5)倍」だと波は強め合います。したがって、振幅は \(1+1=2\) cmになります。
点Qは逆位相の波源に対して経路差が\((2+1/2)\lambda\)となるため、強め合いの点(腹)となり、振幅は2 cmです。
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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の干渉条件:
- 核心: この問題のすべては、2つの波が干渉した結果(強め合い or 弱め合い)が、「経路差」と「波源の位相」という2つの要因で決まることを理解しているかどうかにかかっています。
- 理解のポイント:
- 経路差: 2つの波が観測点にたどり着くまでに生じる「波の数のずれ」を表します。経路差が\(\lambda\)の整数倍なら波の数は整数個ずれ、半整数倍なら半端な数だけずれます。
- 波源の位相: 2つの波がスタート時点で「揃っている(同位相)」か「半周期ずれている(逆位相)」かを表します。
この2つの「ずれ」を総合して、観測点で波が揃う(強め合う)か、逆向きになる(弱め合う)かが決まります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 腹や節の数を数える問題: ある領域(線分上や平面上)に、強め合う点(腹)や弱め合う点(節)がいくつ存在するかを数える問題。経路差が取りうる範囲を考え、その中に条件を満たすものがいくつあるかを数えます。
- 光の干渉(ヤングの実験、回折格子、薄膜): 光も波なので、同様に干渉します。スクリーン上にできる明線(強め合い)や暗線(弱め合い)の位置や間隔を求める問題は頻出です。考え方の基本は全く同じです。
- 音の干渉: 2つのスピーカーから出る音の干渉も同じ原理です。「音が大きく聞こえる場所」が強め合い、「小さく聞こえる場所」が弱め合いに対応します。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の位相を最優先で確認: 問題文を読み、まず「同位相」か「逆位相」かを丸で囲むなどして明確にします。これが全ての判断の基準になります。
- 経路差を計算: 次に、問われている点までの経路差を計算します。
- 経路差を波長で規格化: 計算した経路差が、与えられた波長の「整数倍」なのか「半整数倍」なのかを、割り算をして判断します。(\(\Delta L / \lambda\) を計算する)
- 条件式と照合: 1で確認した位相の条件と、3で判断した経路差の種類を組み合わせて、強め合うか弱め合うかを結論付けます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 同位相と逆位相の条件の混同:
- 誤解: 最も多いミスです。同位相の問題なのに逆位相の条件を適用してしまう、など。
- 対策: 「同位相なら、経路差ゼロ(波源の真ん中)は強め合う。だから強め合いが\(m\lambda\)。」「逆位相なら、経路差ゼロは弱め合う。だから弱め合いが\(m\lambda\)。 」というように、経路差がゼロの点を基準に理屈で覚えると、単なる暗記よりも間違いにくくなります。
- 計算ミス:
- 誤解: 経路差の計算(引き算)や、経路差を波長で割る計算での単純なミス。
- 対策: 計算は焦らず、一度見直す癖をつけましょう。特に、\(\Delta L / \lambda\) の計算は、分数や小数で正確に行うことが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 干渉条件の論理的背景:
- 選定理由: 干渉条件の公式は、波の位相という概念から導かれる普遍的な法則です。
- 適用根拠:
- 同位相波源: スタートが同じなので、観測点での位相のずれは経路差のみで決まります。経路差が\(\lambda\)の整数倍なら、波の山と山(または谷と谷)が重なり強め合います。経路差が\(\lambda\)の半整数倍なら、山と谷が重なり弱め合います。
- 逆位相波源: スタート時点で既に位相が\(\pi\)(半周期)ずれています。この「初期のずれ」に「経路差によるずれ」が加わります。経路差が\(\lambda\)の整数倍だと、初期のずれがそのまま残り、弱め合います。経路差が\(\lambda\)の半整数倍だと、初期のずれと経路差によるずれが合わさって位相が\(2\pi\)の整数倍となり、結果的に位相が揃って強め合います。
この「初期位相」と「経路差による位相」の足し算で最終的な位相差が決まる、という考え方が本質です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 情報を整理する表を作る: 特に設問が多い場合、以下のような簡単な表を作るとミスが減ります。
点 経路差 \(\Delta L\) \(\Delta L / \lambda\) (1,2)同位相 (3,4)逆位相 P 8 cm \(2\) (整数倍) 強 弱 Q 10 cm \(2.5\) (半整数倍) 弱 強 - 指差し確認: 「波源は同位相」「経路差は整数倍」「だから強め合い」というように、一つ一つのステップを指で差し示しながら確認することで、ケアレスミスを防げます。
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